JP4892790B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性および透明性に優れた積層体、およびそれからなる反射防止膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止し、画質を向上させるために、低反射率性、帯電防止性、低ヘイズ性、さらには、耐スチールウール性に代表される、耐擦傷性が良好な積層体が求められている。
【0003】
特開平8−94806号公報に開示されているように、基材上に、微粒子を高屈折率バインダー樹脂中に極在化させた高屈折率膜と、フッ素系共重合体からなる低屈折率膜とを順次に積層した反射防止膜が提案されている。
より具体的には、高屈折率膜を形成するのに、金属酸化物粒子等の微粒子層を工程紙上に予め形成しておき、それを基材上の高屈折率バインダー樹脂に対して圧接することにより、高屈折率バインダー樹脂中に微粒子層を埋設して、極在化させている。
また、低屈折率膜については、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンからなるフッ素含有共重合体と、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物と、重合開始剤とからなる樹脂組成物を硬化して、薄膜としている。
【0004】
一方、特開平8−231222号公報、特開平8−319118号公報および特開平9−12314号公報には、針状金属酸化物の微粉末が開示されているが、かかる微粉末を用いた反射防止膜は開示されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、特開平8−94806号公報に示されるように積層体に含まれる金属酸化物粒子の形状は球状であり、一般にその形状および導電性について何等考慮されておらず、積層体の帯電防止性、および透明性が不十分であるという課題が見られた。
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、最上側にある第1層と、第1層の下側にある第2層とを含む積層体において、第2層中に針状の金属酸化物粒子を含むことにより、上述した課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、簡易な構造でありながら、帯電防止性、耐擦傷性および透明性に優れた積層体、およびそれからなる反射防止膜を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、最上側にある第1層と、第1層の下側にある第2層とを含む積層体であって、第2層が針状アンチモン含有酸化錫を含む積層体が提供され、上述した課題を解決することができる。
ここで、第2層は第1層の下側にあればよく、第1層と第2層の間に他の層が介在していてもよい。
第2層が針状アンチモン含有酸化錫を含むことにより、帯電防止性、耐擦傷性および透明性に優れた積層体を容易に得ることができる。
【0007】
また、本発明を構成するにあたり、第2層が、全固形分中に、下記化合物(A−1)〜(D)を含有し、全固形分濃度が0.5〜75%である有機溶剤系硬化性組成物を硬化させた硬化物であることが好ましい。
(A−1) 40〜80重量%の針状アンチモン含有酸化錫
(B) 5〜40重量%の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物
(C) 5〜30重量%の多官能(メタ)アクリレート
(D) 0.5〜10重量%の光重合開始剤
ここで「全固形分」とは、硬化性組成物を120℃のホットプレートで1時間乾燥したときの残渣物である。
このように構成することにより、帯電防止性、耐擦傷性および透明性等に優れた積層体を容易に得ることができる。
【0008】
また、本発明を構成するにあたり、第2層が、全固形分中に、下記化合物(A−2)〜(D)を含有し、全固形分中の針状アンチモン含有酸化錫の含有量が40〜80重量%であり、全固形分濃度が0.5〜75%である有機溶剤系硬化性組成物を硬化させた硬化物であることが好ましい。
(A−2) 40〜89.5重量%の表面処理された針状アンチモン含有酸化錫
(B) 5〜40重量%の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物
(C) 5〜30重量%の多官能(メタ)アクリレート
(D) 0.5〜10重量%の光重合開始剤
針状アンチモン含有酸化錫に表面処理を施すことにより、硬化物の耐擦傷性を向上することができる。
また、このように表面処理された針状アンチモン含有酸化錫中の針状アンチモン含有酸化錫の含有量を規定することにより、帯電防止性、耐擦傷性および透明性等に優れた積層体を確実に得ることができる。
【0009】
本発明の積層体を構成するにあたり、表面処理が、針状アンチモン含有酸化錫を、重合性不飽和基を有する有機化合物と結合させることであることが好ましい。
このような重合性不飽和基を有する有機化合物と結合した針状アンチモン含有酸化錫を用いることにより、硬化性組成物中の針状アンチモン含有酸化錫の分散性を向上させることができるだけでなく、硬化させた場合に、針状アンチモン含有酸化錫の表面上に結合させた有機化合物由来の重合性不飽和基を利用して、硬化性組成物中の他の成分との間の結合力をより強固なものにすることができる。
【0010】
また、本発明の積層体を構成するにあたり、化合物(D)が、少なくとも1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含むことが好ましい。
このような光重合開始剤を含んだ硬化性組成物とすることにより、硬化性組成物をより確実に硬化させることができる。
【0011】
上述した本発明の積層体は、帯電防止性、耐擦傷性および透明性等に優れ、反射防止膜、防汚膜、撥水膜、電子部品、光学部品、包装容器、または帯電防止膜に使用できる。
【0012】
本発明の積層体は、帯電防止効果に優れている。すなわち、本発明の積層体は表面抵抗が低い。表面抵抗が低い程、帯電防止性に優れる。表面抵抗が1012オーダーより低いと、帯電防止性が特に高まり、ほこり等の付着を顕著に防止する。帯電防止の観点から、表面抵抗が1010オーダーより低いのがより好ましい。
【0013】
また、本発明の積層体は、耐擦傷性および密着性に優れている。
さらに、本発明の積層体は、従来の球状アンチモン含有酸化錫を含有する積層体に比べて、アンチモン含有酸化錫を少量添加するだけで所望の帯電防止効果が得られる。この理由は、アンチモン含有酸化錫の形状が針状であるため、少量の添加でも、硬化物中に導電路を有効に形成することができるためである。したがって、積層体におけるアンチモン含有酸化錫の含有量が減り透明性が高まる。
【0014】
また、本発明の別の態様は、上記の積層体からなり、第1層が低屈折率膜であり、第2層が高屈折率膜である反射防止膜である。
【0015】
反射防止膜に本発明の積層体を用いれば、上述したような積層体の優れた帯電防止性、耐擦傷性および透明性を発揮することができる。
【0016】
また、本発明の反射防止膜を構成するにあたり、低屈折率膜がフッ素原子を含む化合物で構成されることが好ましい。
このように低屈折率膜の構成材料を選択することにより、優れた反射防止効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明の反射防止膜を構成するにあたり、さらに、高屈折率膜の下側にハードコート層と基材を含むことが好ましい。
このようにハードコート層と基材を含むことにより、高屈折率膜をより強固に固定することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層体または反射防止膜に使用する、有機溶剤系硬化性組成物(以下、硬化性組成物と称する場合がある。)の各化合物、および硬化方法等について説明する。
1.化合物(A−1)、針状アンチモン含有酸化錫
針状アンチモン含有酸化錫(以下、針状ATOと称する場合がある。)は、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の帯電防止性を高めるために用いられる。
【0019】
(1)形状
針状ATOの形状としては、微粉末状の、細長い形状であれば特に限定されず、繊維状、柱状、棒状およびその他の類似形状のものも含まれる。
アスペクト比が5以上の値のものが好ましく、10以上の値のものがより好ましい。
例えば、針状ATOとして、短軸平均粒子径が0.005〜0.05μm、長軸平均粒子径が0.1〜3μmおよび平均アスペクト比が5以上の値のものが挙げられる。
針状ATOの形状は、所望の効果、硬化性組成物中における分散性等により適宜選択できる。
【0020】
(2)製造方法
針状ATOの製造方法についても特に制限されるものではないが、例えば、錫成分、アンチモン成分、ケイ素成分およびアルカリ金属のハロゲン化物を含む被焼成処理物を焼成した後、得られた焼成物の可溶性塩類を除去する方法や、針状酸化錫微粉末の粒子表面に含水酸化アンチモンを沈着させた後、これを分別回収し、焼成する方法等を挙げることができる。
【0021】
(3)添加量
本発明に使用する硬化性組成物では、針状ATOの添加量が40〜80重量%の範囲内の値であることを必要とする。
この理由は、添加量が40重量%未満の場合には、硬化させた場合に、優れた帯電防止性、耐擦傷性等が得られない場合があるためであり、添加量が80重量%を超える場合には、硬化性組成物の塗布、乾燥時に製膜性が不十分な場合や、硬化物の透明性が低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、添加量を45〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましく、50〜80重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0022】
2.化合物(B)、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物(以下、単に化合物(B)と称する場合がある。)は、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の耐擦傷性および硬度を高めるために用いられる。
【0023】
(1)水酸基含有多官能(メタ)アクリレート
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートは、特に制限されるものではないが、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート等を好適に用いることができる。水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA、PET−30、東亞合成(株)製 商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
なお、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートは、一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(2)ジイソシアネート
ジイソシアネートは、上記水酸基含有多官能(メタ)アクリレートと反応することが可能なイソシアネート基を有しているものであれば特に制限されるものではない。このような例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ビフェニレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネ−ト、4−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、水添ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等を挙げることができる。これらの中では、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
なお、ジイソシアネートは、一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(3)化合物(B)の態様
上述の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートとを反応させて得られる化合物であれば特に制限されるものではない。化合物(B)としては、少なくとも分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するとともに、当該(メタ)アクリロイル基当たりの分子量が400以下で、かつ2以上のウレタン結合(−O−C(=O)−NH−)を有するものが好ましい。ジイソシアネート1モルに対して水酸基含有多官能(メタ)アクリレート2モルを反応させて得られる下記一般式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0026】
R1−OC(=O)NH−R2−NHCOO−R3 (1)
[一般式(1)中、置換基R1およびR3は、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート由来の(メタ)アクリロイル基を含む一価の有機基であり、置換基R2は、ジイソシアネート由来の二価の有機基である。]
【0027】
このような化合物(B)の例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートとの反応物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートとの反応物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
合成方法の例として、ジイソシアネートおよび水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを一括で仕込んで反応させる方法、ジイソシアネート中に水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを滴下して反応させる方法、ジイソシアネートおよび水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを等モル仕込んで反応させた後に再び水酸基含有多官能(メタ)アクリレートを反応させる方法などを挙げることができる。
【0029】
(4)添加量
本発明に使用する硬化性組成物では、化合物(B)の添加量が5〜40重量%の範囲内の値であることを必要とする。
この理由は、添加量が5重量%未満の場合には、硬化性組成物を硬化させた時に、得られる硬化物の耐擦傷性が不十分になる場合があるためであり、添加量が40重量%を超える場合には、硬化物の硬度が不十分になる場合があるためである。
また、上記の理由により、化合物(B)の添加量を10〜30重量%の範囲内とすることが好ましく、10〜25重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0030】
3.化合物(C)、多官能(メタ)アクリレート
多官能(メタ)アクリレートは、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の耐擦傷性および硬度を高めるために用いられる。
【0031】
(1)多官能(メタ)アクリレート
多官能(メタ)アクリレートは、分子内に少なくとも二つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物である。その例としては、上述のペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートならびにジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トトリ(メタ)アクリレ−ト等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0032】
(2)添加量
本発明に使用する硬化性組成物では、多官能(メタ)アクリレートの添加量が5〜30重量%の範囲内の値であることを必要とする。
この理由は、添加量が5重量%未満となると、硬化性組成物を硬化させた時に、得られる硬化物の耐擦傷性が不十分になる場合があるためであり、一方、添加量が30重量%を超えると、硬化性組成物の塗布、乾燥時に製膜性が不十分になる場合があるためである。
また、上記の理由により、多官能(メタ)アクリレートの添加量を5〜30重量%の範囲内の値とするのがより好ましく、8〜28重量%の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0033】
なお、化合物(B)、および化合物(C)は、両者とも硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の耐擦傷性および硬度を高めるために用いられるが、両者を併用することが必要である。化合物(B)および化合物(C)の添加理由としては、それぞれ、硬化膜に適度な弾性を付与し、耐擦傷性および硬度を高めるため、弾性率を付与し硬度を高めるためであり、双方の特性を最大限発揮させるためには、請求項記載の化合物(B)、化合物(C)の添加量が好ましい。
【0034】
4.化合物(D)、光重合開始剤
光重合開始剤は、組成物を硬化させるために用いられる。
(1)光重合開始剤
光重合開始剤の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0035】
なお、これらの光重合開始剤の中では、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドが好ましい。
ただし、本発明に使用する硬化性組成物をより確実に硬化させることができることから、光重合開始剤としては、少なくとも1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含んでいることが特に好ましい。また、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの含有量は1〜5重量%が好ましい。
【0036】
(2)添加量
本発明に使用する硬化性組成物では、光重合開始剤の添加量が0.5〜10重量%の範囲内の値であることを必要とする。
この理由は、添加量が0.5重量%未満となると、硬化組成組成物の硬化が不十分となる場合があるためである。一方、添加量10重量%を超えると、光重合開始剤自身が可塑剤として働き、硬化物の硬度が低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、光重合開始剤の添加量を0.5〜8重量%の範囲内の値とするのが好ましく、0.5〜5重量%の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0037】
5.化合物(A−2)、表面処理された針状ATO
表面処理された針状ATOは、上記の針状ATOをカップリング剤等の表面処理剤を用いて表面処理したものである。表面処理を施すと、分散性がより向上する。ここで、表面処理とは、針状アンチモン酸化錫と表面処理剤とを混合することにより表面を改質する操作を意味するものであり、その方法としては、物理吸着、化学結合を形成する反応のいずれを用いてもよいが、表面処理の効果の観点から、化学結合を形成する反応がより好ましい。
なお、表面処理された針状ATO中の針状ATOの含有量は、全固形分中において、40〜80重量%である。
【0038】
(1)表面処理剤
カップリング剤を用いて表面処理を行なう場合、カップリング剤の例として以下の処理剤が挙げられる。
(i)重合性不飽和基を有する有機化合物
針状ATOと結合させる重合性不飽和基を有する有機化合物としては、分子内にウレタン結合[−O−C(=O)NH−]やチオウレタン結合[−S−C(=O)NH−]、および不飽和二重結合とを有するアルコキシシラン化合物が好ましい。具体例としては、例えば、下記式(2)に示す化合物を挙げることができる。
【0039】
【化1】
【0040】
式(2)中、R4、R5は、同一でも異なっていてもよいが、水素原子またはC1〜C8のアルキル基若しくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここで、pは、1〜3の整数である。
【0041】
[(R4O)pR5 3−pSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基またはトリエトキシシリル基等が好ましい。
R6は、C1からC12の脂肪族または芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状または環状の構造を含んでいてもよい。
また、R7は、2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。
R8は、(q+1)価の有機基であり、好ましくは、鎖状、分岐状または環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
Zは、活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。また、qは、好ましくは、1〜20の整数であり、さらに好ましくは、1〜10の整数、特に好ましくは、1〜5の整数である。
【0042】
本発明で用いられる重合性不飽和基を有する有機化合物の合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。より具体的には、水酸基含有(メタ)アクリレート、アルコキシシラン、およびジイソシアネートを反応させることにより得られる。
【0043】
ここで用いる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、等を好適に用いることができる。水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA、PET−30、東亞合成(株)製 商品名 アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400等として入手することができる。
【0044】
また、アルコキシシランについても、ジイソシアネートと反応する官能基を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン等のチオール基含有アルコキシシランを好適に用いることができる。
【0045】
さらに、ジイソシアネートについても、上記多官能(メタ)アクリレートおよびアルコキシシランと反応することが可能なイソシアネート基を有しているものであれば特に制限されるものではない。このような例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ビフェニレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネ−ト、4−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、水添ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等を挙げることができる。これらの中では、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
なお、上記アルコキシシランおよびジイソシアネートは、それぞれ一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(ii)他のカップリング剤
表面処理に適する他の好ましいカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の分子内に不飽和二重結合を有する化合物群、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の分子内にエポキシ基を有する化合物群、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の分子内にアミノ基を有する化合物群、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の分子内にメルカプト基を有する化合物群、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類、テトラブトキシシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトライソプロポキシアルミニウム等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、これらのカップリング剤の中では、有機樹脂と共重合もしくは架橋反応する官能基を有するものが好ましい。
【0047】
(iii)添加量
なお、針状ATOを表面処理するにあたり、表面処理剤の添加割合を、針状ATO100重量部に対して、0.1〜125重量部の範囲内の値とすることが好ましく、1〜100重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜50重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
その理由は、表面処理剤の添加割合が0.1重量部未満の場合には、硬化物の耐擦傷性が不十分になる場合があるためであり、一方、添加割合が125重量部を越える場合、硬化物の硬度が不十分になる場合があるためである。
【0048】
(2)添加量
本発明に使用する硬化性組成物では、表面処理された針状ATOの添加量が全固形分中40〜89.5重量%の範囲内の値で、かつ全固形分中の針状ATOの含有量が40〜80重量%の範囲内の値であることが好ましい。上述の好ましい範囲にするように表面処理された針状ATOの添加量を調節することが好ましい。
【0049】
6.有機溶剤
本発明に使用する硬化性組成物においては、上記化合物(A−1)または(A−2)〜(D)以外に、有機溶剤を配合することが好ましい。
有機溶剤としては特に制限されるものではないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル基含有アルコール類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のヒドロキシエステル類、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸ブチル等のβ―ケトエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類からなる群から選択される少なくとも一種の有機溶剤を使用することが好ましい。これらの中で、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類がより好ましい。
【0050】
有機溶剤は、硬化性組成物の全固形分濃度が0.5〜75%となるよう添加される。即ち、有機溶剤の添加量としては、全固形分を100重量部としたときに、33.3〜19900重量部の範囲内の値が好ましい。
この理由は、有機溶剤の添加量が33.3重量部未満となると、硬化性組成物の粘度が増加して塗布性が低下する場合があるためであり、一方、19900重量部を越えると得られる硬化物の膜厚が薄すぎて十分な耐擦傷性が発現しない場合があるためである。
【0051】
7.その他
本発明に使用する硬化性組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等の添加剤をさらに含有させてもよい。
【0052】
8.硬化性組成物の調製方法
本発明に使用する硬化性組成物は、上記化合物(A−1)(または(A−2))〜(D)、および有機溶剤と、必要に応じて添加剤をそれぞれ添加して、室温または加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、重合開始剤の分解開始温度以下で行うことが好ましい。また、1μm以下の薄膜を形成する場合、必要に応じて塗布前に本硬化性組成物を有機溶剤で希釈し、塗布してもよい。
【0053】
9.硬化性組成物の硬化条件
硬化性組成物の硬化条件についても特に制限されるものではないが、例えば放射線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。
また、上記の理由により、露光量を0.1〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.3〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0054】
以下、本発明の反射防止膜の各層について説明する。本発明の反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜の下に、ハードコート層および基材を含むことができる。
図1に、かかる反射防止膜10を示す。図1に示すように、基材12の上に、ハードコート層14、高屈折率膜16および低屈折率膜18が積層されている。
このとき、基材12の上に、ハードコート層14を設けずに、直接、高屈折率膜16を形成してもよい。
また、高屈折率膜16と低屈折率膜18の間、または高屈折率膜16とハードコート層14の間に、さらに、中屈折率膜(図示せず。)を設けてもよい。
【0055】
10.低屈折率膜
(1)低屈折率膜用硬化性組成物1
低屈折率膜を形成するための低屈折率膜用硬化性組成物としては、特に制限されるものでないが、主成分として、フッ素系樹脂(フッ素化合物含む。)、シロキサン系樹脂(シリコーン樹脂や、ポリシラザン樹脂を含む。)、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。
これらの樹脂であれば、低屈折率膜として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、低屈折率膜の耐擦傷性を著しく向上させることができるためである。また、これらの樹脂であれば、低屈折率膜における屈折率の値の調節が比較的容易なためである。
【0056】
(2)低屈折率膜用硬化性組成物2
低屈折率膜を形成するための低屈折率膜用硬化性組成物としては、熱硬化性、光硬化性等のいずれの硬化性組成物であっても良いが、製造が容易であることから、熱硬化性の含フッ素組成物であることが好ましい。そして、このような含フッ素組成物の一例として、以下の(a)〜(d)成分から構成された含フッ素組成物を挙げることができる。
(a)水酸基を有する含フッ素共重合体
(b)水酸基と反応し得る官能基を有する熱硬化剤
(c)硬化触媒
(d)有機溶剤
【0057】
▲1▼(a)水酸基を有する含フッ素共重合体
(a)成分としては、分子内に水酸基を有する含フッ素共重合体であれば、好適に使用することができる。より具体的には、フッ素原子を含有する単量体と、水酸基を含有する単量体とを共重合して得ることができる。また、必要に応じて、これらの単量体以外のエチレン性不飽和単量体を添加することも好ましい。
フッ素原子を含有する単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、(フルオロアルコキシアルキル)ビニルエーテル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、フッ素原子を含有する単量体の配合量は特に制限されるものではないが、10〜99モル%の範囲内の値であることが好ましく、15〜97モル%の範囲内の値であることがより好ましい。
【0058】
また、水酸基を含有する単量体としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、水酸基を含有する単量体の配合量は特に制限されるものではないが、1〜20モル%の範囲内の値であることが好ましく、より好ましくは、3〜15モル%の範囲内の値である。
【0059】
▲2▼(b)水酸基と反応し得る官能基を有する熱硬化剤
水酸基と反応し得る官能基を有する熱硬化剤(以下、単に熱硬化剤と称する場合がある。)としては、分子内にメチロール基およびアルコキシ化メチル基あるいはいずれか一方を2個以上有するメラミン化合物を使用することが好ましい。
より具体的には、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン化合物、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン化合物、メチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ブチルエーテル化メチロールメラミン化合物等のメチル化メラミン化合物等がより好ましい。
また、熱硬化剤の添加量を、水酸基を有する含フッ素共重合体100重量部に対して、1〜70重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる熱硬化剤の添加量が、1重量部未満となると、水酸基を有する含フッ素共重合体の硬化が不十分となる場合があるためであり、一方、70重量部を超えると、低屈折率膜用硬化性組成物の保存安定性が低下する場合があるためである。
【0060】
▲3▼(c)硬化触媒
硬化触媒としては、水酸基含有重合体と硬化剤との間の反応を促進するものであれば、好適に使用することができる。
このような硬化剤としては、有機酸、無機酸およびこれらと塩基性化合物との塩をもちいることができ、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、蓚酸、蟻酸、酢酸等の有機酸、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等の無機酸、および、これらのアンモニウム塩を挙げることができる。
また、硬化触媒の添加量についても特に制限されるものでは無いが、上述した水酸基を有する含フッ素共重合体と、水酸基と反応し得る官能基を有する熱硬化剤との合計量を100重量部としたときに、当該硬化触媒の添加量を0.1〜30重量部の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかる硬化触媒の添加量が0.1重量部未満となると、硬化触媒の添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、硬化触媒の添加量が30重量部を超えると、低屈折率膜用硬化性組成物の保存安定性が低下する場合があるためである。
【0061】
▲4▼(d)有機溶剤
低屈折率膜用硬化性組成物に使用する有機溶剤としては、前述した硬化性組成物に使用する有機溶剤と同様の種類を使用することが好ましい。
また、有機溶剤の添加量を、水酸基を有する含フッ素共重合体100重量部に対して、500〜10,000重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる有機溶剤の添加量が500重量部未満となると、均一な膜厚を有する低屈折率膜を形成することが困難となる場合があるためであり、一方、10,000重量部を超えると、低屈折率膜用硬化性組成物の保存安定性が低下する場合があるためである。
【0062】
(3)屈折率
低屈折率膜における屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)を1.35〜1.50の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかる屈折率が1.35未満の値となると、使用可能な材料の種類が過度に制限される場合があり、一方1.5を超えると、高屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果が著しく低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、低屈折率膜の屈折率を、より好ましくは1.35〜1.45の範囲内の値とすることであり、1.35〜1.42の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
また、低屈折率膜を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、高屈折率膜との間の屈折率差を0.05以上の値とするのが好ましい。この理由は、低屈折率膜と、高屈折率膜との間の屈折率差が0.05未満の値となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、低屈折率膜と、高屈折率膜との間の屈折率差を0.1〜0.5の範囲内の値とするのがより好ましく、0.15〜0.5の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0064】
(4)膜厚
また、低屈折率膜の膜厚についても特に制限されるものではないが、0.05〜1μmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる低屈折率膜の膜厚が0.05μm未満となると、反射防止効果や基材に対する密着力が低下する場合があるためである。一方、低屈折率膜の膜厚が1μmを超えると、光干渉が生じて、反射防止効果が低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、膜厚を0.05〜0.5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.06〜0.2μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
(5)形成方法
低屈折率膜用硬化性組成物を高屈折率膜に対して塗布(コーティング)して、低屈折率膜形成用の塗膜を形成することが好ましい。
このようなコーテイング方法としては、特に制限されるものでないが、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、またはインクジェット法等のコーテイング方法を用いることができる。
次いで、高屈折率膜の一部と反応させて、全体として強固な塗膜を形成できることから、低屈折率膜用硬化性組成物からなる塗膜を熱硬化することが好ましい。この場合、30〜200℃、0.1〜180分間の条件で加熱するのが好ましい。この理由は、このような加熱条件であれば、基材や形成される反射防止膜を損傷することなく、より効率的に反射防止性に優れた反射防止膜を得ることができるためである。
また、上記の理由により、低屈折率膜を形成する際の加熱条件としては、50〜160℃で、0.2〜120分間の条件で加熱することがより好ましく、60〜140℃で、0.5〜60分間の条件で加熱することがさらに好ましい。
【0066】
11.高屈折率膜
本発明の反射防止膜において、高屈折率膜は、上記に説明した化合物(A−1)または(A−2)〜(D)を含有する硬化性組成物を硬化させたものを使用する。
【0067】
(1)屈折率
また、高屈折率膜における屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)を1.45〜2.1の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかる屈折率が1.45未満の値となると、低屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果が著しく低下する場合があるためであり、一方、2.1を超えると、使用可能な材料が過度に制限される場合があるためである。
また、上記の理由により、高屈折率膜の屈折率を、より好ましくは1.55〜2.0の範囲内の値とすることであり、1.6〜1.9の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0068】
(2)膜厚
高屈折率膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、0.01〜50μmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる高屈折率膜の膜厚が0.01μm未満となると、低屈折率膜と組み合わせた場合に、反射防止効果や基材に対する密着力が低下して、低屈折率膜における耐擦傷性についても低下する場合があるためである。一方、高屈折率膜の膜厚が50μmを超えると、高屈折率膜における光吸収が大きくなり、光透過率が低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、膜厚を0.02〜10μmの範囲内の値とするのが好ましく、0.05〜2μmの範囲内の値とするのがより好ましく、0.05〜0.2μmの範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0069】
(3)形成方法
高屈折率膜用の塗膜を形成した後、硬化性組成物の硬化について上述したように、硬化させる。
高屈折率膜を形成する工程において、一度塗りで高屈折率膜を形成してもよく、複数回に分けて高屈折率膜を形成してもよい。
【0070】
12.ハードコート層
ハードコート層を設けることにより、高屈折率膜を強固に固定することができる。また、低屈折率膜においても、耐擦傷性をより向上させることができる。
ハードコート層の構成材料についても特に制限されるものでないが、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせを挙げることができる。これらの中で高い硬度を有する材料としては、例えば、特開昭63−117074に示されるアルキルアルコキシシランとコロイド状シリカとを親水性溶媒中で反応させて得られる熱硬化型ハードコート組成物や、特開平9−100111に示される反応性シリカ粒子が分散された紫外線硬化型のハードコート組成物や、ウレタンアクリレートと多官能性アクリレートとを主成分とする公知の紫外線硬化型ハードコート組成物を挙げることができる。
【0071】
また、ハードコート層の膜厚を0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ハードコート層の膜厚が0.1μm未満となると、低屈折率膜を強固に固定することが困難となる場合があるためであり、一方、膜厚が50μmを超えると、製造が困難となったり、あるいは、フィルム用途に用いた場合に屈曲性が低下する場合があるためである。
また、上記の理由により、ハードコート層の膜厚を0.5〜30μmの範囲内の値とするのがより好ましく、1〜20μmの範囲内の値とするのがさらに好ましい。
【0072】
13.基材
かかる高屈折率膜等を設ける基材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリルカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ノルボルネン樹脂、アクリルスチレン樹脂、およびガラス等からなる基材を挙げることができる。
例えば、これらの基材を含む反射防止膜とすることにより、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、あるいは液晶表示装置におけるカラーフィルター等の広範な反射防止膜の利用分野において、反射防止効果はもちろんのこと、優れた耐擦傷性や透明性が得られ、しかも優れた機械的強度や耐久性を得ることができる。
また、例えば、これらの基材を含むガスバリア材とすることにより、トリアセチルセルロース等の吸湿性に問題のある透明基材を使用している液晶表示パネル用偏光フィルムの等の利用分野において、ガスバリア性効果により偏光フィルムの性能が安定する効果が得られる。また、水分、酸素により劣化しやすい太陽電池パネルの長期耐久性が改善される。これらに加え、優れた耐擦傷性や透明性が得られ、しかも優れた機械的強度や耐久性を得ることができる。
【0073】
【実施例】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0074】
[製造例1]
低屈折率膜(第1層)用硬化性組成物の調製
(1)水酸基を有する含フッ素共重合体の調製
内容積1.5リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブ内を窒素ガスで十分置換処理した後、酢酸エチル500gと、エチルビニルエーテル(EVE)34.0gと、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)41.6gと、パーフルオロプロピルビニルエーテル(FPVE)75.4gと、過酸化ラウロイル1.3gと、シリコーン含有高分子アゾ開始剤(和光純薬工業(株)製、商品名:VPS1001)7.5gと、反応性乳化剤(旭電化工業(株)製、商品名:NE−30)1gとを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
次いで、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)119.0gをさらに仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が70℃に達した時点での圧力は、5.5×105Paを示した。その後、攪拌しながら、70℃、20時間の条件で反応を継続し、圧力が2.3×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出し、オートクレーブを開放し、固形分濃度30.0重量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を、メタノールに投入し、ポリマーを析出させた後、メタノールによりさらに洗浄し、50℃で真空乾燥を行い、170gの水酸基を有する含フッ素共重合体を得た。
【0075】
得られた水酸基を有する含フッ素共重合体について、固有粘度(N,N−ジメチルアセトアミド溶剤使用、測定温度25℃)を測定したところ、0.28dl/gであった。
また、かかる含フッ素共重合体について、ガラス転移温度を、DSCを用い、昇温速度5℃/分、窒素気流中の条件で測定したところ、31℃であった。
また、かかる含フッ素共重合体について、フッ素含量を、アリザリンコンプレクソン法を用いて測定したところ、51.7%であった。
さらに、かかる含フッ素共重合体について、水酸基価を、無水酢酸を用いたアセチル法により測定したところ、102mgKOH/gであった。
【0076】
(2)硬化性組成物の調製
攪拌機付の容器内に、(1)で得られた水酸基を有する含フッ素共重合体100gと、サイメル303(三井サイテック(株)製、アルコキシ化メチルメラミン化合物)11.1gと、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと称する。)3,736gとをそれぞれ添加し、110℃、5時間の条件で攪拌し、水酸基を有する含フッ素共重合体とサイメル303とを反応させた。
次いで、キャタリスト4040(三井サイテック(株)製、固形分濃度40重量%)11.1gをさらに添加し、10分間攪拌して、粘度1mPa・s(測定温度25℃)の低屈折率膜用硬化性組成物(以下、塗布液Aと称する場合がある。)を得た。
【0077】
次に、得られた低屈折率膜用硬化性組成物から得られる低屈折率膜の屈折率を以下のように測定した。
まず、低屈折率膜用硬化性組成物を、ワイヤーバーコータ(#3)を用いて、シリコンウエファ(膜厚1μm)上に塗工し、室温で5分間風乾して、塗膜を形成した。
次いで、オーブンを用いて、140℃、1分間の加熱条件で塗膜を熱硬化させ、0.3μmの膜厚の低屈折率膜を形成した。そして、得られた低屈折率膜におけるNa−D線の屈折率を、測定温度25℃の条件で、分光エリプソメーターを用いて測定した。その結果、屈折率は1.40であった。
【0078】
[製造例2]
高屈折率膜(第2層)用硬化性組成物の調製
(1)針状アンチモン含有酸化錫(化合物(A−1))ゾルの調製
針状アンチモン含有酸化錫微粉末(石原テクノ(株)製 FS−12P)300重量部をメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する。)700重量部に添加し、ガラスビーズにて10時間分散を行い、ガラスビーズを除去してMEK針状アンチモン含有酸化錫ゾル(以下、針状ATOゾルと称する場合がある。)950重量部を得た。ここで、得られた針状ATOゾル2gをアルミ皿上で秤量し、120℃のホットプレート上で1時間乾燥して全固形分濃度を求めたところ、30重量%であった。
【0079】
(2)重合性不飽和基を有する有機化合物が結合した(反応性)針状アンチモン含有酸化錫(化合物(A−2))ゾルの調製
(2−1)重合性不飽和基を有する有機化合物の合成
攪拌機付きの容器内のメルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8gおよびジブチルスズジラウレート0.2gの混合溶液に、イソホロンジイソシアネート20.6gを、乾燥空気中、50℃で1時間かけて滴下した後、さらに60℃で3時間攪拌した。
続いて、この反応溶液中にペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業(株)製 商品名 NKエステル A−TMM−3L) 71.4gを30℃で1時間かけて滴下した後、さらに60℃で3時間攪拌して反応液を得た。
この反応液中の生成物、すなわち、重合性不飽和基を有する有機化合物における残存イソシアネート量をFT−IRで測定したところ、0.1重量%以下であり、各反応がほぼ定量的に行われたことを確認した。また、分子内に、チオウレタン結合と、ウレタン結合と、アルコキシシリル基と、重合性不飽和基とを有することを確認した。
【0080】
(2−2)反応性針状アンチモン含有酸化錫ゾルの合成
攪拌機付きの容器内に、針状アンチモン含有酸化錫分散液(石原テクノ(株)製、FSS−10M、分散溶媒:MEK、全固形分濃度30重量%)95g、(2−1)で得られた重合性不飽和基を有する有機化合物4.0g、蒸留水0.1gおよびp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01gを混合し、65℃で、加熱攪拌した。5時間後、この混合物にオルト蟻酸メチルエステル0.7gを添加してさらに1時間加熱し、反応性針状アンチモン含有酸化錫ゾル(以下、反応性針状ATOゾルと称する場合がある。)を得た。ここで、得られた反応性針状ATOゾル2gをアルミ皿上に秤量し、120℃のホットプレート上で1時間乾燥して全固形分濃度を求めたところ、33重量%であった。また、この反応性針状ATOゾル2gを磁性るつぼに秤量し、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥した後、750℃のマッフル炉中で1時間焼成を行ない、得られた無機残渣量、および全固形分濃度から全固形分中の無機含量を求めたところ、79重量%であった。なお、この測定法による無機含量が、全固形分中のATOの含有量に相当する。
【0081】
(3)水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物(化合物(B))および多官能(メタ)アクリレート(化合物(C))の混合物の合成(その1)
乾燥空気中、ヘキサメチレンジイソシアネート6.0gおよびジブチルスズジラウレート0.02gの混合溶液に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(水酸基含有多官能(メタ)アクリレート)(日本化薬(株)製 商品名KAYARAD DPHA ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、C−1と称する。)=4/6)94.0gを20℃で1時間かけて滴下した後、室温下で1時間攪拌し、さらに60℃で3時間加熱攪拌することにより、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物(以下、B−1と称する。)およびC−1の混合物(以下、M−1と称する。)を得た。ここで、反応液中の残存イソシアネ−ト量を分析したところ、その残量は0.1重量%以下であり、反応がほぼ定量的に行なわれたことを確認した。また、M−1中のB−1含有量を、原料の仕込み比より求めたところ44%であった。
【0082】
(4)水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物(化合物(B))および多官能(メタ)アクリレート(化合物(C))の混合物の合成(その2)
乾燥空気中、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有多官能(メタ)アクリレート)(新中村化学工業(株)製 商品名 NKエステル A−TMM−3L ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、C−2と称する。)=6/4)40.9gおよびイソホロンジイソシアネート18.3gの混合溶液に、ジブチルスズジラウレート0.1gを添加し、室温下で1時間攪拌した後、さらに50℃で3時間攪拌した。さらに、ペンタエリスリトールトリアクリレート40.9gを1時間かけて滴下した後、60℃で3時間加熱攪拌することにより、ペンタエリスリトールトリアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物(以下、B−2と称する。)およびC−2の混合物(以下、M−2と称する。)を得た。ここで、反応液中の残存イソシアネ−ト量を分析したところ、その残量は0.1重量%以下であり、反応がほぼ定量的に行なわれたことを確認した。また、M−2中のB−2含有量を、原料の仕込み比より求めたところ67%であった。
【0083】
(5)上記化合物(A−1)または(A−2)〜(D)からなる硬化性組成物の調製
紫外線を遮蔽した容器中に、上記の針状ATO(A−1)ゾル190g(針状ATO微粒子として57.0g)、混合物(M−1)28.9g(B−1として12.7g、C−1として16.2g)、混合物(M−2)10.6g(B−2として7.1g、C−2として3.5g)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、D−1と称する。)3.5gおよびMEK37gをそれぞれ加え、50℃で2時間攪拌して均一な溶液の高屈折膜用硬化性組成物1(以下、塗布液Bと称する場合がある。)を得た。この硬化性組成物中の全固形分濃度、および全固形分中の無機含量を、上記と同様に測定したところ、それぞれ37重量%、57重量%であった。
さらに、表1に示す配合量に従って、針状ATO(A−1)ゾルまたは反応性針状ATO(A−2)ゾル、および化合物(B)〜(D)を加えて、上記と同様に高屈折膜用硬化性組成物2〜6を調製した。ただし、組成物4では、化合物(B)および化合物(C)については、混合物(M−2)を加え、さらにトリメチロールプロパントリアクリレート(以下、C−3と称する。)を加えた。組成物6では組成物1と同様に各化合物を混合した後、ロータリーエバポレーターを用いて全固形分濃度が52重量%になるまで濃縮し硬化性組成物を得た。
また、上記と同様に硬化性組成物中の全固形分濃度、および全固形分中の無機含量を測定した。
【0084】
[比較製造例1]
比較高屈折率膜用硬化性組成物の調製
(1)球状アンチモン含有酸化錫ゾルの調製
球状アンチモン含有酸化錫微粉末(石原テクノ(株)製 SN−102P)300重量部をMEK700重量部に添加し、ガラスビーズにて10時間分散を行い、ガラスビーズを除去してMEK球状アンチモン含有酸化錫ゾル(以下、球状ATOゾルと称する場合がある。)950重量部を得た。ここで、得られた球状ATOゾル2gをアルミ皿上に秤量し、120℃のホットプレート上で1時間乾燥して全固形分濃度を求めたところ、30重量%であった。
(2)球状ATOゾルまたは針状ATO(A−1)ゾル、および化合物(B)〜(D)からなる硬化性組成物の調製
表1に示す配合量に従って、球状ATOゾルまたは針状ATOゾル、および化合物(B)〜(D)を加えて、製造例2(5)と同様に比較高屈折膜用硬化性組成物1〜6を調製した。ただし、比較組成物4では、組成物6と同様に濃縮して硬化性組成物を得た。
また、製造例2と同様に組成物中の全固形分濃度、および全固形分中の無機含量を測定した。
【0085】
[製造例3]
ハードコート材の調製
乾燥空気下、反応性アルコキシシラン8.7gと、メチルエチルケトン分散シリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST、平均粒径22nm、シリカ濃度30重量%)91.3gと、イソプロピルアルコール0.2gと、イオン交換水0.1gとからなる混合液を、80℃、3時間の条件で攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4gを添加し、さらに1時間同一温度で攪拌した。
室温まで冷却後、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステルA−TMPT)21.9gと、トリメチロ−ルプロパントリオキシエチルアクリレ−ト(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステルA−TMPT−3EO)10.95gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184)3.27gを混合して、ハードコート組成物(以下、塗布液Cと称する場合がある。)を調製した。
【0086】
[実施例1]
(1)反射防止膜の作製
製造例3で得られた塗布液Cを、ワイヤーバーコータ(#12)を用いて、ポリエステルフィルムA4300(基材)(東洋紡績(株)製、膜厚188μm、)上に塗工し、オーブン中、80℃、1分間の条件で乾燥し、塗膜を形成した。次いで、大気中、メタルハライドランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で塗膜を紫外線硬化させ、膜厚10μmであって、屈折率1.49のハードコート層を形成した。
次いで、製造例2で得られた組成物1の塗布液Bを、ワイヤーバーコータ(#3)を用いて、当該ハードコート層上に塗工(塗布)した。このとき、組成物中の全固形分濃度が5重量%になるまでメチルイソブチルケトンで希釈した。但し、組成物3に対応する硬化性組成物はメチルイソブチルケトンで希釈することなく塗布した。次に、オーブン中、80℃、1分間の条件で乾燥し、塗膜を形成した。次いで、大気中、メタルハライドランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で塗膜を紫外線硬化させ、膜厚0.05μmであって、屈折率1.68の高屈折率膜(第2層)を形成した。
さらに、製造例1で得られた塗布液Aを、当該高屈折率膜上に、ワイヤーバーコータ(#3)を用いて塗工し、室温で5分間風乾して、塗膜を形成した。この塗膜を、オーブンを用いて140℃、1分の条件で加熱し、膜厚0.05μmであって、屈折率1.40の低屈折率膜(第1層)を形成した。
【0087】
[実施例2〜3]
製造例2で調製した組成物1(塗布液B)の代わりに、製造例2で調製した組成物2,3を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0088】
[比較例1〜3]
製造例2で調製した組成物1(塗布液B)の代わりに、比較製造例1で調製した比較組成物1〜3を使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0089】
[参考試験例]
製造例2で調製した組成物1〜6、および比較製造例1で調製した比較組成物1〜6を、実施例1のように硬化させて、その硬化物における表面抵抗を以下に示す測定法により測定した。また、得られた硬化物の密着性、QUV後密着性および耐擦傷性を以下の基準で評価した。
【0090】
(1)表面抵抗
PET未処理面に製膜した硬化物の表面抵抗(Ω/□)を、ハイレジスタンスメーター(ヒューレット・パッカード社製 HP4339)を用い、主電極径26mmΦ、印加電圧100Vの条件で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
(2)密着性およびQUV後密着性
PET易接着処理面上に製膜した硬化物の密着性を、JIS K5400における碁盤目セロハンテ−プ剥離試験に準拠し、1mm角、計100個の碁盤目における残膜率(%)で評価した。
さらに、硬化物フィルムに対してQUV促進耐候試験機(Q−Panel社製)を用いて150時間紫外線を照射した後、同様に密着性を評価した。得られた結果を表1に示す。
尚、密着性は積層体の耐擦傷性に、QUV後密着性は積層体の耐久性の向上に寄与する。
【0092】
(3)耐擦傷性
PET易接着処理面上に製膜した硬化物の表面を#0000スチールウールにより、荷重40g/cm2の条件で10回こすり、硬化物の耐擦傷性を以下の基準から目視にて評価した。得られた結果を表1に示す。
評価5:傷の発生が全く観察されなかった。
評価4:1〜5本の傷の発生が観察された。
評価3:6〜50本の傷の発生が観察された。
評価2:51〜100本の傷の発生が観察された。
評価1:塗膜剥離が観察された。
なお、評価3以上の耐擦傷性であれば、実用上許容範囲であり、評価4以上の耐擦傷性であれば実用上の耐久性が優れていることから好ましく、評価5の耐擦傷性であれば、実用上の耐久性が著しく向上することからさらに好ましいといえる。
【0093】
【表1】
【0094】
なお、表1中の略称は以下のとおりである。
B−1:製造例2で合成した水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物
B−2:製造例2で合成した水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物
C−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
C−2:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
C−3:トリメチロールプロパントリアクリレート
D−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
D−2:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0095】
[試験例]
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた反射防止膜おける耐擦傷性を以下の基準で評価した。
また、得られた反射防止膜における表面抵抗、反射率、全光線透過率、および濁度(ヘイズ値)を以下に示す測定法により測定した。
【0096】
(1)耐擦傷性
得られた反射防止膜の表面を#0000スチールウールにより、荷重200g/cm2の条件で30回こすり、反射防止膜の耐擦傷性を参考試験例と同じ基準から目視にて評価した。得られた結果を表2に示す。
【0097】
(2)反射率および全光線透過率
得られた反射防止膜における反射率(測定波長における最低反射率)および全光線透過率を、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ磁気分光光度計U−3410、日立製作所(株)製)により、JIS K7105(測定法A)に準拠して、波長340〜700nmの範囲で測定した。
すなわち、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止膜における最低反射率および全光線透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
(3)濁度(ヘイズ値)
得られた反射防止膜につき、カラーヘイズメーター(須賀製作所(株)製)を用いて、ASTM D1003に準拠してヘイズ値を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0099】
(4)表面抵抗
得られた反射防止積層体の表面抵抗(Ω/□)を、参考試験例と同様に測定した。得られた結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、最上側にある第1層と、第1層の下側にある第2層とを含む積層体において、第2層に針状アンチモン含有酸化錫を含むことにより、帯電防止性、耐擦傷性および透明性に優れた積層体を提供できるようになった。
さらに、本発明によれば、このような積層体を、反射防止膜に適用した場合、簡易な構造により、優れた帯電防止性、耐擦傷性および透明性を示す反射防止膜を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による反射防止膜の断面図である。
【符号の説明】
10 反射防止膜(積層体)
12 基材
14 ハードコート層
16 低屈折率膜(第1層)
18 高屈折率膜(第2層)
Claims (7)
- 最上側にある第1層と、前記第1層の下側にある第2層とを含む積層体であって、前記第2層が、全固形分中に、下記化合物(A−1)〜(D)を含有し、全固形分濃度が0.5〜75%である有機溶剤系硬化性組成物を硬化させた硬化物であることを特徴とする積層体。
(A−1) 40〜80重量%の針状アンチモン含有酸化錫
(B) 5〜40重量%の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物
(C) 5〜30重量%の多官能(メタ)アクリレート
(D) 0.5〜10重量%の光重合開始剤 - 最上側にある第1層と、前記第1層の下側にある第2層とを含む積層体であって、前記第2層が、全固形分中に、下記化合物(A−2)〜(D)を含有し、全固形分中の針状アンチモン含有酸化錫の含有量が40〜80重量%であり、全固形分濃度が0.5〜75%である有機溶剤系硬化性組成物を硬化させた硬化物であることを特徴とする積層体。
(A−2) 40〜89.5重量%の表面処理された針状アンチモン含有酸化錫
(B) 5〜40重量%の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとジイソシアネートの反応物
(C) 5〜30重量%の多官能(メタ)アクリレート
(D) 0.5〜10重量%の光重合開始剤 - 前記表面処理が、前記針状アンチモン含有酸化錫を重合性不飽和基を有する有機化合物と結合させることを特徴とする請求項2に記載の積層体。
- 前記化合物(D)が、少なくとも1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体からなり、前記第1層が低屈折率膜であり、前記第2層が高屈折率膜であることを特徴とする反射防止膜。
- 前記低屈折率膜がフッ素原子を含む化合物で構成されることを特徴とする請求項5に記載の反射防止膜。
- さらに、前記高屈折率膜の下側にハードコート層と基材を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の反射防止膜。
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