JP3894254B2 - 反射防止膜およびそれを配置した表示装置 - Google Patents
反射防止膜およびそれを配置した表示装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置の表面の反射率低下に有効な反射防止膜および反射防止膜を有する画像表示装置に関する。特に、量産性と高い膜強度を実現する反射防止膜およびそれを配置した表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置の普及、大型化や野外使用化に伴い、その使用条件下でのタフネス化、例えば、反射光耐性(視認性確保)、防汚性や耐熱性の向上が求められている。表示装置の視認性向上は該装置の主機能に関わる課題であり、当然その重要性も高く、活発に視認性向上のための施策が検討されている。一般に視認性を低下させるのは外光の表面反射による景色の写り込みであり、これらに対する対処として最表面に反射防止膜を設ける方法が一般的に行われる。しかしながら、この反射防止膜はその機能発現のために最表面に設けられるため、必然的に反射防止膜の性能に対してタフネス化の観点から多くの高品質化の課題が集中してくる。例えば、極限までの反射率低下(反射率1%以下)、指紋や油脂等の付着防止や易除去性、炎天下や自動車室内のような高温環境下での諸性能の維持、高い表面硬度および耐擦傷性などである。
【0003】
従来、高い表面硬度を有する反射防止膜としては、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムのような無機化合物の多層蒸着膜が用いられてきた。しかしながら蒸着法は高コストでありまた大量製造適性に乏しいため、近年塗布法による反射防止膜製造の試みが盛んに行われている。例えば、アルコキシシラン化合物の加水分解部分縮合物の塗布(ゾルゲル法)により得られる反射防止膜は、無機マトリックスが得られるため非常に高い膜強度が期待できる。このような技術としては、特公平6−98703号、特開昭63−21601号には、アルコキシシラン化合物の加水分解部分縮合物からなる組成物をプラスチック表面に塗布して反射光を低減させる技術が開示されている。しかしながらこれらの無機マトリックスは一般に多くの基材との密着性に乏しく、剥離故障が生じやすい欠点を有する。上記の公報では、基板の上に0.5μm程度の膜厚のコーティング層を設け、更に必要に応じて活性化ガス処理や薬品処理を行うことにより密着の改良を行っている。しかしながら該コーティング層とオルガノシラン層との屈折率差が小さいため、反射防止性能が不十分であり、膜強度と反射防止性能の高いレベルでの両立が実現できていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、広範な波長領域において一様に低い反射率(反射率1%以下)を示し、同時に膜強度、密着性、耐久性、耐汚れ付着性、耐熱性に優れた反射防止膜を低コストで、大量かつ大面積製造の適性のある方法で提供することにある。また、その反射防止膜を配置した表示装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の上述の課題は、支持体の上にオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜であって、該低屈折率層の下に膜厚が50〜200nmであり、屈折率が1.70〜2.20である高屈折率層を有し、該高屈折率層が3官能以上の多官能エポキシ化合物の光カチオン重合硬化膜であることを特徴とする反射防止膜によって達成された。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の態様について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(1)支持体の上にオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜であって、該低屈折率層の下に膜厚が50〜200nmであり、屈折率が1.70〜2.20である高屈折率層を有し、該高屈折率層が3官能以上の多官能エポキシ化合物の光カチオン重合硬化膜であることを特徴とする反射防止膜。
(2)該高屈折率層が酸化チタンを主成分とする無機物微粒子を含有することを特徴とする項1記載の反射防止膜。
(3)該低屈折率層が金属キレート化合物を含有することを特徴とする項1または2記載の反射防止膜。
(4)該反射防止膜が、少なくとも表層より順に、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層を有し、該中屈折率層は低屈折率層と高屈折率層の中間の屈折率を有し、膜厚が50〜200nmであることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜。
(5)項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする表示装置。
【0007】
以下に本発明によって得られる優れた反射防止膜について詳細に説明する。
以下本発明においては、オルガノシランの加水分解およびその部分縮合物からなる塗布液をゾル液、ゾル液を塗設して形成される膜をゾルゲル膜と称する。
【0008】
本発明では、反射防止膜の最上層の低屈折率層用素材として、低屈折率かつ高い強度を有するゾルゲル膜を使用し、更にこのゾルゲル膜の下層に、高屈折率層として高屈折率かつゾルゲル膜との密着に優れたエポキシバインダー層を使用することにより、ゾルゲル膜の密着不良による膜強度損失を防ぎ、優れた膜強度を有する反射防止膜を得ることを特徴とする。
【0009】
本発明の最上層に設けられる低屈折率層について以下に説明する。本発明では低屈折率層としてゾルゲル膜を用いることを特徴とし、その原料となるオルガノシランについて以下に説明する。
オルガノシランは分子内に少なくとも1つの加水分解によりシラノールを与えることのできる官能基を有するシラン化合物を表し、本発明の組成物中では、加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをするものである。
一般的には式(R9)4Si で表される化合物である。式中、R9 は炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基、炭素数1〜5のアルコキシル基または炭素数1〜4のオキシアシル基、ハロゲン原子を表す。1分子中の4個のR9 はこの定義の範疇であれば互いに同じであっても異なっていても良く、自由に組み合わせて選択することができるが、4つが同時に炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基になることはない。
【0010】
R9 の具体例は、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、 CF3- 、CF3CH2CH2-、CF3CH2CH2CH2- 、C2F5CH2CH2CH2-、C3F7CH2CH2CH2-、C2F5CH2CH2- 、CF3OCH2CH2CH2-、C2F5OCH2CH2CH2- 、C3F7OCH2CH2CH2- 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2- 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2- 、H(CF2)4CH2CH2CH2- 、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。炭素数1〜5のアルコキシ基または炭素数1〜4のオキシアシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert−ブトキシ基、アセトキシ基、ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などを挙げられる。
【0011】
これらのオルガノシランの具体例としては、以下で説明する(a) 〜(c) 成分のものを挙げることができる。
(a) 成分
(a) 成分は、一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランであり、本発明の組成物中では、加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをするものである。かかるアルコキシシラン中のR1 は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。
【0012】
これらのアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラ-i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−アセトキシシランなどを挙げることができる。上記アルコキシシランは1種単独でも、その2種以上を併用しても良い。
【0013】
(b) 成分
(b) 成分は、一般式R2Si(OR3)3で表されるオルガノシランであり、本発明の組成物中では、加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをするものである。かかるオルガノシラン中のR2 は、炭素数1〜10の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、CF3-、CF3CH2- 、CF3CH2CH2-、CF3CH2CH2CH2- 、C2F5CH2CH2CH2-、C3F7CH2CH2CH2-、C2F5CH2CH2- 、CF3OCH2CH2CH2-、C2F5OCH2CH2CH2- 、C3F7OCH2CH2CH2- 、(CF3)2CHOCH2CH2CH2- 、C4F9CH2OCH2CH2CH2-、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2- 、H(CF2)4CH2CH2CH2- 、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。また、オルガノシラン中のR3 は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。
【0014】
これらのオルガノシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C2H5CH2CH2CH2Si(OCH3)3、C2F5CH2CH2Si(OCH3)3 、C3F7CH2CH2CH2Si(OCH3)3、C2F5OCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C3F7OCH2CH2CH2Si(OC2H5)3、(CF3)2CHOCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、C4F9CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H(CF2)4CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3 、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルシラン等を挙げることができる。
【0015】
このうち、フッ素原子を有するオルガノシランが好ましい。また、R2 としてフッ素原子を有さないオルガノシランを用いる場合、メチルトリメトキシシランまたはメチルトリエトキシシランを用いる事が好ましい。
上記のオルガノシランは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用する事もできる。
【0016】
(c) 成分
(c) 成分は、一般式R4 2Si(OR5)2 (式中、R4 およびR5 は前記(b) 成分に使用されるオルガノシランで定義されたR2 およびR3 と同義)で表されるジオルガノシランである。ただし、R4 およびR5 は(b) 成分と同じ置換基でなくてもよい。本発明の組成物中では加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり、組成物中における結合剤としての働きをするとともに、塗膜を柔軟化し耐アルカリ性を向上させるものである。
【0017】
これらのジオルガノシランの具体例は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、(CF3CH2CH2)2Si(OCH3)2 、(CF3CH2CH2CH2)2Si(OCH3)2、(C3F7OCH2CH2CH2)2Si(OCH3)2、〔H(CF2)6CH2OCH2CH2CH2〕2 Si(OCH3)2 、(C2F5CH2CH2)2Si(OCH3)2などを挙げる事ができ、好ましくはフッ素原子を有するオルガノシランである。またR4 としてフッ素原子を有さないオルガノシランを用いる場合には、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
このようなR4 2Si(OR5)2 で表されるオルガノシランは、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0018】
本発明のオルガノシランとして、上記(a) 〜(c) 成分を用いる場合、混合して用いることができる。混合割合は、それぞれ(a) 0〜90重量%、(b) 0〜90重量%、(c) 0〜50重量%、かつ(a) と(b) の合計が50〜100重量%、であることが好ましく、より好ましくは、(a) 0〜70重量%、(b) 20〜90重量%、(c) 0〜30重量%、かつ(a) と(b) の合計が60〜100重量%、である。
【0019】
本発明の低屈折率層には、上記(a) 〜(c) のオルガノシラン類の他に以下に説明するような(d) シリル基含有ビニルポリマーを添加して用いることも好ましい。この(d) シリル基含有ビニルポリマーは上記(a) 〜(c) のオルガノシラン類とともにゾルゲル反応を行ない、低屈折率層ゾルゲル膜中に組みこまれるものであり、塗膜の製膜性や脆性の改良に効果がある。以下に本発明の(d) シリル基含有ビニルポリマーについて説明する。
【0020】
(d) シリル基含有ビニルポリマー
(d) シリル基含有ビニルポリマーは、主鎖がビニル系重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上含有するものであり、該シリル基の多くは、下記一般式
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、アミノ基などの加水分解性基および/または水酸基、R10は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアラルキル基、aは1〜3の整数である)で表される。
【0023】
(d) シリル基含有ビニルポリマーは、(イ)ヒドロシラン化合物を炭素−炭素二重結合を有するビニルポリマーと反応させることにより製造してもよく、また(ロ)下記一般式
【0024】
【化2】
【0025】
(ただし、X、R10、aは前記に同じ、R11は重合性二重結合を有する有機基である)で表されるシラン化合物と、各種ビニル系化合物とを重合することにより製造してもよく、その製造方法は限定されるものではない。
【0026】
ここで、前記(イ)で示される製造方法で使用されるヒドロシラン化合物としては、例えばメチルジクロルシラン、トリクロルシラン、フェニルジクロルシランなどのハロゲン化シラン類;メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン、ジメチルアミノキシシラン、トリアミノシランなどのアミノシラン類が挙げられる。
【0027】
また、(イ)で示される製造方法で使用されるビニルポリマーとしては、水酸基を含むビニルポリマーを除く以外に特に限定はなく、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
などから選ばれるビニル系化合物をアリルメタクリレートのような側鎖に二重結合を有するモノマーと共重合したビニルポリマーが好ましく、共重合モノマーとして含フッ素モノマーを少くとも1種用いたものが特に好ましい。
【0032】
一方、(ロ)で示される製造方法で使用されるシラン化合物としては、次のものが挙げられる。
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
また、(ロ)で示される製造方法で使用されるビニル系化合物としては、前記(イ)の製造方法でビニルポリマーの重合時に用いられるビニル系化合物を使用することが可能であるが、かかる(イ)の製造方法に記載された以外に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミドなどの水酸基を含むビニル系化合物を挙げることもできる。また、含フッ素モノマーを1種用いたものが特に好ましい。
【0036】
以上のようなシリル基含有ビニルポリマーの好ましい具体例としては、例えば下記一般式
【0037】
【化8】
【0038】
(式中、R12、R14は水素原子、フッ素原子またはメチル基、R13は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、アリル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンテル、n−ヘキシル、ベンジル、(CF3)2CH- 、CF3CH2- 、C7F15CH2- 、C2F15CH2CH2-、等の(a) 成分で説明したフッ素原子を含むアルキル基)を表し、R15はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基、R16はR13と同様であり、m/(1+m)=0.01〜0.4、好ましくは0.02〜0.2である)で表されるトリアルコキシシリル基含有アクリル重合体を挙げることができる。このシリル基含有ビニルポリマーの数平均分子量は、好ましくは2,000 〜100,000 、さらに好ましくは4,000 〜50,000である。
【0039】
以上のような本発明に使用される(d) シリル基含有ビニルポリマーの具体例としては、鐘淵化学工業(株)製、カネカゼムラックや下記のポリマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
P−1 メチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(90/10:重量比)
P−2 n−ブチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(85/15:重量比)
P−3 メチルメタクリレート/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(80/20:重量比)
P−4 メチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(70/30:重量比)
P−5 メチルメタクリレート/エチルアクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(50/35/15:重量比)
【0041】
P−6 エチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(80/20:重量比)
P−7 n−ブチルメタクリレート/スチレン/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(50/35/15:重量比)
P−8 メチルメタクリレート/シクロヘキシルアクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(40/45/15:重量比)
P−9 メチルメタクリレート/メチルアクリレート/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(40/40/20:重量比)
P−10 メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/ビニルトリメトキシシラン(60/30/10:重量比)
【0042】
P−11 FM-1/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(85/15:重量比)
P−12 FM-4/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(85/15:重量比)
P−13 FM-2/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(85/15:重量比)
P−14 FM-4/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(70/30:重量比)
P−15 FM-4/FM-7/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(30/55/15:重量比)
【0043】
P−16 FM-2/FM-4/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(30/50/20:重量比)
P−17 FM-3/FM-4/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(25/60/15:重量比)
P−18 FM-9/メチルメタクリレート/γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(60/25/15:重量比)
P−19 FM-7/メチルメタクリレート/γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(40/45/15:重量比)
P−20 FM-4/メチルメタクリレート/ビニルトリメトキシシラン(65/20/15:重量比)
(d) シリル基含有ビニルポリマーの組成物中の割合は、(a) 〜(c) 成分の原料であるオルガノシランに対し、0〜100重量%、好ましくは0〜80重量%、さらに好ましくは0〜50重量%であり、100重量%を超えると得られる塗膜の耐久性の悪化を招く。
【0044】
本発明の低屈折率層は上述の方法で調製した有機珪素を主成分とする網目高分子構造により形成されている。この網目構造を構築する主成分(モノマー)は上述の(a) ないし(d) の化合物である。これら有機珪素モノマー化合物の本発明における好ましい組み合わせについて下記および実施例に例示する。混合比はゾル液調製時に使用した各化合物の重量(g) を示す。
【0045】
LN−1
メチルトリメトキシシラン 10g、ジメチルジメトキシシラン 5g、上記化合物P−12 2.5g
LN−2
メチルトリメトキシシラン 12g、ジメチルジエトキシシラン 8g、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 4g、上記化合物P−12 3g
LN−3
テトラエトキシシラン 15g、3,3,3−トリフルオロブチルトリエトキシシラン 15g
LN−4
テトラエトキシシラン 10g、ジメチルジメトキシシラン 5g、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン 10g、上記化合物P−121.5g
LN−5
メチルトリメトキシシラン 10g、ジメチルジメトキシシラン 5g、3−パーフルオロエトキシプロピルトリメトキシシラン 5g、上記化合物P−52.5g
【0046】
LN−6
テトラエトキシシラン 10g、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジエトキシシラン 5g、上記化合物P−7 3g
LN−7
テトラエトキシシラン 5g、メチルトリメトキシシラン 10g、ジメチルジメトキシシラン 5g、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 12g
LN−8
シクロヘキシルトリメトキシシラン 18g、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン 12g、テトラエトキシシラン 15g
LN−9
テトラエトキシシラン 12g、ジメチルジクロロシラン 10g、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン 15g
LN−10
メチルトリエトキシシラン 12g、ジメチルジメトキシシラン 5g、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン 5g、上記化合物P−8 4.5g
【0047】
本発明においては、上記のオルガノシラン類から得られるゾル液に加えて、金属キレート化合物の添加が望ましい。この金属キレート化合物は通常ゾル液の硬化促進剤として用いられるものでもあるが、本発明においては単に低屈折率層の硬化促進のみならず、隣接する高屈折率層がエポキシ基を有するので、このエポキシ基とも反応することにより高屈折率層も含めた硬化促進も行い、この結果両層の密着および膜強度が著しく改善する。
【0048】
本発明に用いられる金属キレート化合物、(e) 成分、について以下に説明する。
(e) 成分
(e) の金属キレート化合物は、一般式R17OH(式中、R17は炭素数1〜6のアルキル基を示す)、で表されるアルコールとR18COCH2 COR19(式中、R18は炭素数1〜6のアルキル基、R19は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜16のアルコキシ基を示す)で表されるジケトンを配位子とした、遷移金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。
本発明の(e) 金属キレート化合物として好ましいものは中心金属にAl、Ti、Zrを有するものであり、一般式 Zr(OR17) p1(R18COCHCOR19) p2 、Ti (OR17) q1(R18COCHCOR19) q2 および Al(OR17) r1(R18COCHCOR19) r2 で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、より好ましくは中心金属にAlを有するものである。
【0049】
(e) 金属キレート化合物中のR17およびR18は、同一または異なってもよく炭素数1〜6のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R5 は、前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec −ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基などである。また、(e) 金属キレート化合物中のp1 〜r2 は4あるいは6座配位となる様に決定される整数を表す。
【0050】
これらの(e) 金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。これらの(e) 金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウムであり、より好ましくはトリス(アセチルアセトナート)アルミニウムである。これらの(e) 金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、(e) 成分としては、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0051】
(e) 金属キレート化合物の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるオルガノシランに対し、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。
【0052】
本発明では上記(e) 金属キレート化合物以外に、ゾル液硬化促進剤として他の通常の硬化促進剤もお互いの促進効果が阻害されない範囲内で併用することができる。
本発明に用いられる硬化反応促進剤としては特に制限はなく、用いたゾル液の構成成分に応じて縮合反応を促進可能な成分を有するものであれば好適に用いることができる。
一般的に有効なのは上記(e) および下記(f) 〜(h) の化合物群であり、これらの中から好ましい化合物を必要量添加することができる。また、これらの群の中から2種以上をお互いの促進効果が阻害されない範囲内で適宜選択して併用することができる。なお、硬化反応は促進化合物をオルガノシランに対して1〜20重量%用いることが好ましい。
【0053】
(f) 成分
(f) の無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸など、有機酸化合物としてはカルボン酸類(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、オクタン酸、マレイン酸、2−クロロプロピオン酸、シアノ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、燐酸・ホスホン酸類(燐酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)、ヘテロポリ酸(燐モリブデン酸、燐タングステン酸など)を挙げることができる。
【0054】
(g) 成分
(g) の無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニアなど、有機塩基化合物としてはアミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジンなど)、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィンなど)、金属アルコキサイド(ナトリウムメチラート、カリウムエチラートなど)を挙げることができる。
【0055】
(h) 成分
(h) の好ましい有機金属化合物としては特に制限はないが有機遷移金属が活性が高く、好ましい。中でもスズの化合物は安定性と活性が良く特に好ましい。これらの具体的化合物例としては、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2 、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2 、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8H17)2 、Sn(OCOCC8H17)2などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2 、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2 、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2、
【0056】
【化9】
【0057】
などのメルカプチド型有機スズ化合物
【0058】
【化10】
【0059】
などのスルフィド型有機スズ化合物
【0060】
(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO 、または(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO などの有機スズオキサイドとエチルシリケートマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などを挙げることができる。
【0061】
(i) 成分
(i) の金属塩類としては有機酸のアルカリ金属塩(例えばナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウムなど)が好ましく用いられる。
【0062】
本発明の「ゾル液」には上記成分の他に必要に応じて種々の化合物を添加して使用することができる。
以下に主な併用素材を挙げて説明する。
【0063】
A:溶媒
溶媒は各成分を均一に混合させ、本発明の組成物の固形分調整をすると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性及び保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は上記目的の果たせるものであれば特に限定されない。
これらの溶媒の好ましい例として、例えば水、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等が好適である。
【0064】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec −ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0065】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。有機溶媒の組成物中の割合は特に限定されるものではなく、全固形分濃度を使用目的に応じて調節する量が用いられる。
【0066】
B:キレート配位子化合物
ゾル液に(e)金属キレート化合物を用いる場合、硬化反応速度の調節や液安定性向上の観点でキレート配位能のある化合物を用いることも好ましい。好ましく用いられるものとしては一般式R18COCH2COR19 で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類であり、本発明の組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、(e) 金属キレート化合物(好ましくはジルコニウム、チタニウムおよび/またはアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物による(a) 〜(d) 成分の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる膜の硬化速度をコントロールするものと考えられる。R18およびR19は、前記(g) 金属キレート化合物を構成するR18およびR19と同義であるが、使用に際して同一構造である必要はない。
【0067】
このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec-ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。かかるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、(e) 金属キレート化合物1モルに対し2モル以上、好ましくは3〜20モルであり、2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るものとなる。
【0068】
C:水
本発明の好ましいゾル液には、前記(a) 〜(d) 成分を主成分した混合物の加水分解・縮合用として水を添加する。水の使用量は、(a) 〜(d) 成分の加水分解基1モルに対し、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル、程度である。
本発明の好ましいゾル液は、その全固形分濃度が、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%であり、50重量%を超えると、組成物の保存安定性が悪化して好ましくない。
【0069】
D:充填剤
本発明のゾル液には、得られる塗膜の硬度向上を目的としてコロイド状シリカを添加することも可能である。このコロイド状シリカとしては、水分散コロイド状シリカ、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイド状シリカを挙げることができる。
【0070】
本発明の組成物には、得られる塗膜の着色、凹凸性の付与、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、上記コロイド状シリカの他に充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑上、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
【0071】
これらの充填材の平均粒径または平均長さは、通常、5〜500nm、好ましくは10〜200nmである。充填材を用いる場合の組成物中の割合は、(a) 〜(d) 成分の全固形分100重量部に対し、10〜300重量部程度である。
【0072】
E:その他の添加物
本発明のゾル液及び促進液には、そのほかオルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0073】
さらに、本発明のゾル液中には、前記溶媒以外の溶剤を含有させることができ、かかる溶剤としては、前記(a) 〜(d) 成分を混合した際に、沈澱を生起しない溶剤であればどのようなものでもよく、一般の塗料、コーティング剤などに用いられる脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類などを挙げることができ、この具体例としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどである。これらの有機溶剤は、本発明の組成物100重量部に対し、通常、100重量部以下程度使用される。
【0074】
本発明のゾル液を調製するに際しては、まず前記(a) 〜(d) 成分を含有する組成物を調製し、これに水を添加して加水分解する方法であれば如何なる方法でもよい。この時必要に応じて加水分解を促進するために触媒を用いても良い。用いる触媒の量は、液の経時安定性を損なわない範囲であれば特に制限はない。
例えば下記▲1▼〜▲4▼の調製方法が好ましい。
▲1▼ (a)〜(c) 成分の混合物にオルガノシラン類の加水分解基1モルに対し0.2〜3モルの塩酸水を加えて加水分解・縮合反応を行う方法。
▲2▼ (a)〜(d) 成分と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、オルガノシラン類の加水分解基1モルに対し0.2〜3モルの水を加えて加水分解・縮合反応を行う方法。
【0075】
▲3▼ (a)〜(c) 成分と溶媒からなる溶液に、オルガノシラン類の加水分解基1モルに対し0.2〜3モルの水を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで(d) シリル基含有ビニルポリマーと加水分解触媒を添加する方法。
▲4▼ (a)〜(c) 成分と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、オルガノシラン類の加水分解基1モルに対し0.2〜3モルの水を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで(d) シリル基含有ビニルポリマーを加えて混合し、さらに縮合反応を行なう方法。
【0076】
本発明のゾル液及び促進液をカーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の方法により塗布することができる。この低屈折率層は、後述の本発明の高屈折率層や中屈折率層等と同時塗布されても良いし、透明フィルム上に予め形成された中屈折率層、高屈折率層の上に塗布する形態であってもよい。塗布後、常温での乾燥、あるいは30〜200℃程度の温度で1分〜100時間程度加熱することにより、低屈折率層を形成することができる。
【0077】
同時重層塗布をする場合には多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液のそれぞれが必要な塗布量になる様に吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的に支持体に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が特に好ましい。
【0078】
次に反発明の高屈折率層について説明する。本発明において高屈折率層は低屈折率層の下層に設置され、反射率低下に寄与するとともに、通常下層との密着が弱いゾルゲル膜を密着させるための接着層の役割も果たす。
上記のような性能を持つ高屈折率層の素材構成としては、高屈折率無機微粒子と多官能エポキシ化合物の光カチオン重合バインダーの混合物が好ましく、両者の混合比により屈折率を調節することができる。ここで該バインダーはゾルゲル膜に対して特に良好な密着性を有し、低屈折率層との密着性に大きく寄与する。
【0079】
まず、本発明の高屈折率層に含まれる高屈折率の無機微粒子について説明する。該無機微粒子は、屈折率が1.80〜2.80、一次粒子の平均粒径が1〜150nmである。屈折率が1.80未満の粒子では、皮膜の屈折率を高める効果が小さく、屈折率が2.80を越える粒子は着色しているため好ましくない。また、一次粒子の平均粒径が150nmを越える粒子では皮膜を形成したときのヘイズ値が高くなり、皮膜の透明性を損なうので好ましくなく、1nm未満で屈折率が1.80〜2.80の無機微粒子は存在しない。
本発明で、より好ましい無機微粒子は屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が1〜100nmの粒子であり、更に好ましいのは屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が1〜80nmの粒子である。
【0080】
好ましい高屈折率無機微粒子の具体例は、酸化チタン(ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛を主成分とする粒子である。ここで、主成分とは粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分をさす。本発明で好ましいのは酸化チタン、酸化錫、酸化インジウムを主成分とする粒子であり、特に酸化チタンが好ましい。
本発明で使用される無機微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない。例えば、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを約5〜20重量%含有させたものが最も好ましい。
本発明で使用される無機微粒子は表面処理されていても構わない。無機化合物による表面処理としてはアルミナ処理、シリカ処理、酸化ジルコニウム処理、酸化鉄処理などがあるが、特にアルミナ処理、シリカ処理が好ましい。また、有機化合物による表面処理としてはポリオール系処理、アルカノールアミン系処理、ステアリン酸処理、シランカップリング剤処理、チタネートカップリング剤処理などが挙げられ、シランカップリング剤処理が最も好ましい。これらの表面処理は公知の手法によって行われ、2種類以上を組み合わせて処理されていても構わない。
【0081】
本発明で使用される無機微粒子の形状は、特に限定されないが米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、不定形状が好ましい。本発明の無機微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
これらの無機粒子は公知の方法により分散されて用いられる。分散剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の何れの界面活性剤も好ましく用いることができるが、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。更にブロック共重合体等の高分子分散剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤などのカップリング剤も好ましく用いることができる。またこれらの分散剤が同一分子中にバインダーと共重合可能な官能基を有する、いわゆる重合性分散剤も好ましく用いることができる。
【0082】
分散に用いる溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸、蟻酸などのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルなど)、炭化水素系(ヘキサン、シクロヘキサンなど)ハロゲン化炭化水素系(メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素など)、芳香族炭化水素系(ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコールなど)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドンなど)、エーテル系(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフランなど)、エーテルアルコール類(1−メトキシ−2−プロパノールなど)などがあげられるが、中でもアルコール類、ケトン類、エステル類が好ましい。特に好ましい溶媒はトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールである。
これらのバインダー、溶媒は、無機微粒子の分散液の保存性を更に高める目的で適宜使用される。
分散機としては、例えば、サンドグラインダーミル(ピン付きビーズミルなど)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミルなどが挙げられ、特に好ましいのは、サンドグラインダーミル、高速インペラーミルである。また、予備分散としてボールミル、三本ロールミル、ニーダー、エクストルーダーなどを用いて分散することも好ましい。
【0083】
該無機微粒子は1〜200nmの粒子サイズに分散する必要がある。粒子サイズが200nmより大きくなると、皮膜の透明性が損なわれるので好ましくなく、一方、粒子サイズを1nmより小さくすることは非常に難しい。無機微粒子は好ましくは5〜150nm、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmの粒子サイズに分散することが好ましい。
無機微粒子の粒子サイズは種々の手法によって評価され、例えば、光散乱法、電子顕微鏡写真などから見積もることができる。
【0084】
次に本発明の高屈折率層のバインダーとして用いられる多官能エポキシ化合物について説明する。本明細書において多官能エポキシ化合物は一分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を表す。本発明においては3官能以上の多官能エポキシ化合物を用いる。4官能以上であると特に好ましい。該多官能エポキシ化合物の光カチオン重合膜は、ゾルゲル膜との密着性に優れ、高屈折率微粒子のバインダーとしてだけでなく、ゾルゲル膜に対する接着層としても機能する。接着層として機能する際には、多官能エポキシ化合物のうち重合に寄与しなかったエポキシ基が、ゾルゲル膜のシラノール基およびゾルゲル硬化剤の金属キレート化合物などと反応することにより密着効果が得られていると考えられる。このような多官能エポキシ化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また2種以上の多官能モノマーを混合して用いてもよい。
【0085】
【化11】
【0086】
【化12】
【0087】
【化13】
【0088】
上記多官能エポキシ化合物はカチオン重合性を有するため、通常のカチオン重合開始剤を用いて重合硬化可能であるが、塗布液安定性、製造適性などの観点では好ましくなく、光カチオン重合開始剤が好ましいことがわかった。光カチオン重合開始剤としてはジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩などのオニウム塩が挙げられる。また上記光カチオン重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。光カチオン重合開始剤の添加量としては全モノマー成分に対して0.1〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0089】
光カチオン重合を行うための光源としては低圧、高圧、超高圧の各種水銀ランプやケミカルランプ、メタルハライドランプなどが使用可能であるが、照射効率が良好な高圧水銀ランプがより好ましい。光照射の条件としては、バインダー及び支持体の光分解及び熱分解が生じない範囲で、なるべく高照度、高照射量であることが望ましく、照度としては100〜1000mW/cm2 、より好ましくは200〜800mW/cm2 、照射量としては100〜1500mJ/cm2 、より好ましくは300〜1000mJ/cm2 である。連続照射による膜面温度の上昇を抑えるために分割して光照射を行うことも好ましい。
【0090】
本発明の高屈折率層のバインダーとしては、上記の多官能エポキシ化合物以外のバインダーも混合して用いることができる。この多官能エポキシ化合物以外のバインダーは上層の低屈折率層との密着不良を生じない範囲で適量用いることが好ましく、好ましい添加量としては全バインダー成分に対して0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%である。
該バインダーとしては、多官能エポキシ化合物と相溶するバインダーであれば特に制限はなく、例えば、ビニルモノマー重合体類、オルガノシラン縮合体、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが使用でき、特にビニルモノマー重合体類、オルガノシラン縮合体が好ましい。ビニルモノマー重合体類としては、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能ビニルモノマーの製膜重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびこれらに架橋性官能基を有するモノマーである、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸グリシジル、メタクリルオキシエチルイソシアナート等を共重合した重合体等が挙げられる。上記ビニルモノマー重合体類に必要なラジカル重合開始剤や硬膜剤などは、多官能エポキシ化合物のカチオン重合を阻害しない範囲で適量用いることが好ましい。オルガノシラン縮合体としては、前述の低屈折率層用素材を同様に用いることができる。
【0091】
以下、本発明の高屈折率層塗布液の調整法について説明する。上述の高屈折率無機微粒子の分散物、高屈折率層用のバインダー、光カチオン重合開始剤その他添加剤などは、高屈折率層塗布液の塗布性、保存性、被膜の屈折率、耐傷性や耐薬品性などの膜強度等を高める目的で適宜調節される。
本発明の高屈折率層塗布液に含有される無機粒子の含有量は、該塗布液に含有される全固形分に対し5〜65体積%である。ここで言う固形分とは塗布液を乾固したときに残存する成分である。無機微粒子の更に好ましい含有量は10〜60体積%で、特に好ましい含有量は20〜55体積%である。5体積%未満では高い屈折率を有する被膜を形成する組成物を得ることができず、また65体積%を越えると被膜にしたときに脆化が起こりやすく好ましくない。
本発明の高屈折率層塗布液は透明基材に塗布して用いることが好ましく、該組成物から作製される被膜も透明であることが好ましい。従って、本発明の組成物から作製される被膜は、ヘイズが5%以下であることが好ましく、更に好ましいヘイズ値は3%以下、特に好ましいヘイズ値は1%以下である。
【0092】
本発明の高屈折率層塗布液はカーテンコート、ディップコート、スピンコート、ロールコートなどの塗布方法によって、透明基材、中屈折率層を有する透明基材等の上に塗布することができる。塗布後加熱乾燥、紫外線照射などの必要に応じた処理を行うことにより本発明の高屈折率層を形成することができる。
【0093】
以下に本発明の高屈折率層組成の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
【化14】
【0095】
【化15】
【0096】
本発明の反射防止膜は、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層(1) が、それよりも高い屈折率を有する高屈折率層(2)の上に形成された2層以上の層により構成される。低屈折率層の屈折率は1.45以下が好ましく、特に1.40以下が好ましい。高屈折率層の屈折率は1.7以上が好ましく、特に1.75以上が好ましい。また、これらの層が支持体、好ましくは透明フィルム上に塗設されていることが好ましい。
【0097】
また、本発明の反射防止膜は、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層(1)が、それよりも高い屈折率を有する高屈折率層(2)の上に形成され、高屈折率層(2)に隣接し、低屈折率層(1) の反対側に支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率の中間の屈折率を有する中屈折率層(3) が形成された3層構造が好ましい。さらに中屈折率層と支持体との間に支持体下塗り層やハードコート層等の層(4) を設けた4層以上の構成としても良い。高屈折率層の屈折率としては、1.7以上が好ましく、特に1.75以上が好ましい。また、これらの層が支持体、好ましくは透明フィルム上に塗設されていることが好ましい。
【0098】
それぞれの層の膜厚は、層(1) が50〜200nm、層(2) が50〜200nm、層(3) が50〜200nm、層(4) が1μm〜100μmが好ましく、更に好ましくは層(1) が60〜150nm、層(2) が50〜150nm、層(3) が60〜150nm、層(4) が5〜20μm、特に好ましくは層(1) が60〜120nm、層(2) が50〜100nm、層(3) が60〜120nm、層(4) が5〜10μmである。
層(4) は屈折率が1.60以下であることが好ましく、層(3) は層(2) と層(4) の中間の屈折率が好ましい。
【0099】
本発明の反射防止膜の代表例を図1に示す。各層はそれぞれ、低屈折率層11、高屈折率層12、支持体13を示す。反射防止膜を構成する層数の増加は、通常反射防止膜が適用可能な光の波長範囲を拡大する。これは、金属化合物を用いる従来の多層膜の形成原理に基づくものである。
【0100】
上記二層を有する反射防止膜では、高屈折率層12及び低屈折率層11がそれぞれ下記の条件(1) 及び(2) を一般に満足する。
mλ/4×0.7<n1 d1 < mλ/4×1.3 (1)
nλ/4×0.7<n2 d2 < nλ/4×1.3 (2)
上記式に於て、mは正の整数(一般に、1、2又は3)を表し、n1 は高屈折率層の屈折率を表し、d1 は高屈折率層の層厚(nm)を表し、nは正の奇数(一般に、1)を表し、n2 は低屈折率層の屈折率を表し、そしてd2 は低屈折率層の層厚(nm)を表す。
高屈折率層の屈折率n1 は、一般に透明フィルムより少なくとも0.05高く、そして、低屈折率層の屈折率n2 は、一般に高屈折率層の屈折率より少なくとも0.1低くかつ透明フィルムより少なくとも0.05低い。更に、高屈折率層の屈折率n1 は、一般に1.7〜2.2の範囲にある。
上記条件(1) 及び(2) は、従来から良く知られた条件であり、例えば、特開昭59−50401号公報に記載されている。
【0101】
本発明の反射防止膜の他の代表例を図2に示す。ハードコート層20と中屈折率層22が透明フィルム(支持体)23上に形成され、高屈折率層24が中屈折層22上に形成され、さらに低屈折率層21が高屈折率層24上に形成されている。中屈折層率22の屈折率は、高屈折率層24とハードコート層20との間の値を有する。図2の反射防止膜は、図1の反射防止膜に比較して、更に適用可能な光の波長領域が拡がっている。
【0102】
四層を有する反射防止膜の場合、中、高及び低屈折率層がそれぞれ下記の条件(3) 〜(5) を一般に満足する。
hλ/4×0.7<n3 d3 <hλ/4×1.3 (3)
kλ/4×0.7<n4 d4 <kλ/4×1.3 (4)
jλ/4×0.7<n5 d5 <jλ/4×1.3 (5)
上記式に於て、hは正の整数(一般に、1、2又は3)を表し、n3 は中屈折率層の屈折率を表し、d3 は中屈折率層の層厚(nm)を表し、kは正の整数(一般に、1、2又は3)を表し、n4 は高屈折率層の屈折率を表し、d4 は高屈折率層の層厚(nm)を表し、jは正の奇数(一般に、1)を表し、n5 は低屈折率層の屈折率を表し、そしてd5 は低屈折率層の層厚(nm)を表す。
中屈折率層の屈折率n3 は、一般に1.5〜1.7の範囲にあり、高屈折率層の屈折率n4 は、一般に1.7〜2.2の範囲にある。
【0103】
本発明の反射防止膜は、一般に、支持体とその上に設けられた反射防止層からなる。支持体は通常、透明フィルムである。透明フィルムを形成する材料としては、セルロース誘導体(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース及びニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート(例、米国特許第3,023,101号に記載のもの)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボキシレート及び特公昭48−40414号公報に記載のポリエステル)、ポリスチレン、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン)、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びポリオキシエチレンを挙げることができる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートが好ましい。
透明フィルムの屈折率は1.40〜1.60が好ましい。
【0104】
本発明の反射防止膜は、表面にアンチグレア機能(即ち、入射光を表面で散乱させて膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を有するように処理することができる。例えば、このような機能を有する反射防止膜は、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止膜(例、低屈折率層等)を形成することにより得られる。上記微細な凹凸の形成は、例えば、無機又は有機の微粒子を含む層を透明フィルム表面に形成することにより行なわれる。50nm〜2μm の粒径を有する微粒子を低屈折率層形成塗布液に、0.1〜50重量%の量で導入し、反射防止膜の最上層に凹凸を形成しても良い。アンチグレア機能を有する(即ち、アンチグレア処理された)反射防止膜は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0105】
本発明の反射防止膜(アンチグレア機能を有する反射防止膜が好ましい)は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エクレトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置に組み込むことができる。このような反射防止膜を有する画像表示装置は、入射光の反射が防止され、視認性が格段に向上する。
本発明の反射防止膜を備えた液晶表示装置(LCD)は、たとえば、下記の構成を有する。
透明電極を有する一対の基板とその間に封入されたネマチック液晶からなる液晶セル、及び液晶セルの両側に配置された偏光板からなる液晶表示装置であって、少なくとも一方の偏光板が表面に本発明の反射防止膜を備えている液晶表示装置。
【0106】
本発明においては、中間層としてハードコート層、防湿防止層、帯電防止層等を、透明フィルム上に設けることもできる。ハードコート層としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー及び/又はオリゴマー及びモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)の他に、シリカ系の材料も使用することができる。
【0107】
【実施例】
以下に実施例を挙げ本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0108】
(1) シリル基含有ビニル系樹脂(P−12)の調製
還流冷却器、攪拌機を装着した1リットル三ツ口フラスコに、フッ素モノマーFM−4を30.6g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.4gを入れ、窒素気流下70℃に加熱攪拌した。2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)よりV−65の名称で市販)4.8gをメチルエチルケトン25mlに溶解した溶液を添加すると同時に、275.4gのFM−4、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン48.6gに19.2gのV−65を溶解した溶液の滴下を開始し、等速で6時間かけて滴下した。滴下終了後、4.8gのV−65と25mlのメチルエチルケトン溶液を加え、80℃でさらに4時間加熱攪拌を行ったのちメチルエチルケトン280mlを加え、冷却する事により標記P−12の溶液635gを得た。固形分含量は54.4%、得られたポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量は9600であった。
【0109】
(2) 低屈折率層用ゾル液の調製
(ゾル液A)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器にメチルトリメトキシシラン100g、ジメチルジメトキシシラン50g、シリル基含有ビニル樹脂P−12(固形分50%に調製)50g、エタノール40gを加え混合したのち、0.01N塩酸水溶液30gを加え、60℃で4分間反応させたのち、室温まで冷却し、低屈折率層用ゾル液Aを得た。
【0110】
(ゾル液B)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器にテトラエトキシシラン25g、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン25g、0.01N塩酸水溶液15gを加え、25℃で20時間攪拌し、低屈折率層用ゾル液Bを得た。
【0111】
(3) 高屈折率層塗布液の調製
(イ)下記組成の混合物をサンドグラインダーにて分散し、酸化チタンの分散液を作成した。
上記の酸化チタン分散液にグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業製デコナールEX−314)と光カチオン重合開始剤(ユニオンカーバイド日本製サイラキュアUVI−6990)とメチルエチルケトンを添加し、高屈折率層塗布液(イ)を得た。ここで酸化チタンとバインダーの体積比が40/60(重量比68/32)となるように、また光カチオン重合開始剤はバインダーに対し5重量%となるように添加した。
(ロ)上記(イ)のバインダーをナガセ化成工業製のデコナールEX−411に変更し、高屈折率層塗布液(ロ)を得た。
(ハ)上記(イ)のバインダーをナガセ化成工業製のデコナールEX−521に変更し、高屈折率層塗布液(ハ)を得た。
【0112】
比較用の高屈折率層塗布液の調製
(ニ)上記(イ)のバインダーをポリメチルメタクリレートに変更し、比較用の高屈折率層塗布液(ニ)を得た。
(ホ)上記(イ)で酸化チタンを添加しないこと以外は(イ)と同様にして比較用の高屈折率層塗布液(ホ)を得た。
【0113】
(4) 第1層(ハードコート層)の塗設
25重量部のジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(商品名:DPHA、日本化薬(株)製)、25重量部のウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:UV−6300B、日本合成化学工業(株)製)、2重量部の光重合開始剤(商品名:イルガキュアー907、チバ−ガイギー社製)及び0.5重量部の増感剤(商品名:カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)を50重量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、90μm の厚みを有するTACフィルム上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで塗布膜に紫外線照射してハードコート層(屈折率:1.53、層厚:5μm )を形成した。
【0114】
(5) 第2層(中屈折率層)の塗設
TiO2 の微分散液とバインダーとしてポリメチルメタクリレート(屈折率:1.48)を含む塗布液(固形分:2重量%、TiO2 /バインダー=22/78、重量比)を、ハードコート層の上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で乾燥して、中屈折率層(屈折率:1.62、層厚:78nm)を形成した。
(6) 第3層(高屈折率層)の塗設
上記(3)の高屈折率層塗布液(イ)〜(ハ)および比較用塗布液(ニ)、(ホ)をメチルエチルケトンで希釈し中屈折率層の上に下記表1に示す膜厚になるよ1にワイヤーバーを用いて塗布した。この塗布膜を100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(照射量750mJ/cm2 、照度450mW/cm2)し重合硬化させ高屈折率層を形成した。
【0115】
【表1】
【0116】
(7) 第4層(低屈折率層)の塗設
上記(2) の低屈折率層用ゾル液AおよびBに表1に示す金属キレート化合物をゾル液に対して8重量%加え、さらにメチルエチルケトンで希釈し、表1の高屈折率層の上に膜厚95nmとなる様にワイヤーバーを用いて塗布し、120℃、5分間乾燥して低屈折率層を形成した。層の屈折率は1.3〜1.5の範囲であった。
【0117】
(8) 塗設フィルムの性能評価
こうして得られた第1〜4層を塗設したフィルムについて、表面反射率(光波長400〜650nmの平均反射率)および膜表面強度の測定および剥離試験を実施した。膜表面強度は、ティッシュ、消しゴム、手指爪先、スチールウールでそれぞれこすり、目視観察し、ティッシュこすりで傷付くものを0、消しゴムこすりで傷付くものを1、手指爪先こすりで傷付くものを2、スチールウールこすりで傷付くものを3、どの方法でも傷が認められないものを4とした。剥離試験は、セロハンテープを用いて行ない、全く剥離しないものを○、剥離したものを×、とした。結果を表2に示した。
【0118】
【表2】
【0119】
本実施例から明らかなように、本発明の反射防止膜は非常に低い表面反射率を有し、かつ十分に強靱な膜強度および密着性を有していることがわかる。また、指紋跡もティッシュふき取りで容易に消す事ができ耐汚れ付着性も良好であった。一方、比較例では表面反射率あるいは密着性が不十分のものが多かった。
【0120】
(9) (反射防止フィルムを設置した表示装置の作成)
上記実施例で作成した実施例1〜8、比較例1〜3の反射防止フィルムを日本電気株式会社より入手したパーソナルコンピューターPC9821NS/340Wの液晶ディスプレイ表面に貼り付け、表面装置サンプルを作成し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。
本発明の実施例1〜10の反射防止フィルムを設置した表示装置は周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度および密着性を有するものであった。これに対して、比較例1および3のフィルムを設置した表示装置は周囲の映り込みが多く、視認性が劣るものであった。また、比較例2のフィルムを設置したものは密着性が劣るものであった。
【0121】
【発明の効果】
本発明では、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物からなる低屈折率層を、多官能エポキシ化合物の光カチオン重合硬化バインダーからなる高屈折率層の上に塗設することにより、光学特性と物理的強度を両立させた大面積の反射防止膜を安価にかつ製造適性を有した形で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止膜の代表的な一例の断面図を示す。
【図2】本発明の反射防止膜の代表的な別の一例の断面図を示す。
【符号の説明】
11、21:低屈折率層
12、24:高屈折率層
22 :中屈折率層
13、23:透明フィルム
20 :ハードコート層
Claims (5)
- 支持体の上にオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する組成物を塗設して形成された低屈折率層を有する反射防止膜であって、該低屈折率層の下に膜厚が50〜200nmであり、屈折率が1.70〜2.20である高屈折率層を有し、該高屈折率層が3官能以上の多官能エポキシ化合物の光カチオン重合硬化膜であることを特徴とする反射防止膜。
- 該高屈折率層が酸化チタンを主成分とする無機物微粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
- 該低屈折率層が金属キレート化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載の反射防止膜。
- 該反射防止膜が、少なくとも表層より順に、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層を有し、該中屈折率層は低屈折率層と高屈折率層の中間の屈折率を有し、膜厚が50〜200nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする表示装置。
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