JP5598448B2 - 耐擦傷性シリコーンコーティング組成物並びに被覆物品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このほか、金属化合物の添加(特許文献2:特開2010−111787号公報)や金属アルコキシドをバインダーに導入する方法(特許文献3:特開平7−304873号公報)なども開示されているが、樹脂基材への密着性など、なお課題が多い。
〔1〕 (A)下記一般式(1):
(R3O)3-aR1 aSiR2SH (1)
(式中、R1及びR3は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、aは0又は1である。)
で表されるメルカプト基含有アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種20〜99質量%と、下記一般式(2):
R4 bR5 cSi(OR6)4-b-c (2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又はメルカプト基を含有しない非置換もしくは置換の一価の飽和炭化水素基で、置換基同士が相互に結合していてもよく、R6は、炭素数1〜3のアルキル基であり、b及びcは、各々独立に、0又は1であり、かつb+cは0、1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種1〜80質量%とを共加水分解・縮合することにより得られた共加水分解縮合物、
(B)ポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のウレタン変性ビニル系重合体、
(D)硬化触媒、
(E)溶剤
を含有し、(B)ウレタン変性ビニル系重合体の固形分量が、(A)共加水分解縮合物の固形分総量に対して、1〜30質量%であることを特徴とする耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔2〕 (A)下記一般式(1):
(R3O)3-aR1 aSiR2SH (1)
(式中、R1及びR3は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、aは0又は1である。)
で表されるメルカプト基含有アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種20〜99質量%と、下記一般式(2):
R4 bR5 cSi(OR6)4-b-c (2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又はメルカプト基を含有しない非置換もしくは置換の一価の飽和炭化水素基で、置換基同士が相互に結合していてもよく、R6は、炭素数1〜3のアルキル基であり、b及びcは、各々独立に、0又は1であり、かつb+cは0、1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種1〜80質量%とを共加水分解・縮合することにより得られた共加水分解縮合物、
(B)ポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のウレタン変性ビニル系重合体、
(C)ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種、
(D)硬化触媒、
(E)溶剤
を含有し、(B)ウレタン変性ビニル系重合体の固形分量が、(A)共加水分解縮合物の固形分総量に対して、1〜30質量%であり、(C)ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種の固形分量が、(A)共加水分解縮合物の固形分総量に対して、1〜30質量%であることを特徴とする耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔3〕 (A)成分が、一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシラン及びそれらの部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して50質量部以上150質量部未満のpH1〜7の水にて共加水分解縮合し、生成するアルコールを液温80℃以上にて留去することにより得られ、かつGPC分析によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,500以上であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔4〕 (A)成分が、上記一般式(1)及び(2)と、更に下記一般式(3):
(R7O)3-dR8 dSiR9SiR8 d(OR7)3-d (3)
(式中、R7及びR8は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R9は、炭素数1〜6の非置換又は置換の二価の飽和炭化水素基であり、該飽和炭化水素基の1つ以上の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、dは、各々独立に、0又は1である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種とを共加水分解・縮合することにより得られた共加水分解縮合物であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔5〕 (A)成分が、一般式(1)、(2)及び(3)で表されるアルコキシシラン及びそれらの部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して50質量部以上150質量部未満のpH1〜7の水にて共加水分解縮合し、生成するアルコールを液温80℃以上にて留去することにより得られ、かつGPC分析によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,500以上であることを特徴とする〔4〕記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔6〕 (B)成分が、ポリカーボネート系のウレタン変性ビニル系重合体であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔7〕 (B)成分のポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による重量平均分子量が5,000〜50,000であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔8〕 (B)成分の水酸基価が10以上であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔9〕 (C)成分が、ポリ酢酸ビニルであることを特徴とする〔2〕〜〔8〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔10〕 (C)成分のポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による重量平均分子量が5,000〜100,000であることを特徴とする〔2〕〜〔9〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔11〕 更に、(F)金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔12〕 更に、(G)ブロック化された脂肪族ポリイソシアネートを含むことを特徴とする〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
〔13〕 有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、直接、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
〔14〕 有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、直接、〔2〕〜〔12〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなり、該硬化被膜の表面に印刷による加飾が施されていることを特徴とする被覆物品。
〔15〕 有機樹脂基材がポリカーボネートである〔13〕又は〔14〕記載の被覆物品。
〔16〕 有機樹脂基材上に下塗りなしに直接〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物を塗工し、硬化することを特徴とする被覆物品の製造方法。
(A)成分
本発明に用いられる(A)成分は、ハードコート塗膜におけるバインダー成分としての機能を有する。
(A)成分は、下記一般式(1):
(R3O)3-aR1 aSiR2SH (1)
(式中、R1及びR3は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、aは0又は1である。)
で表されるメルカプト基含有アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(2):
R4 bR5 cSi(OR6)4-b-c (2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又はメルカプト基を含有しない非置換もしくは置換の一価の飽和炭化水素基であり、置換基同士が相互に結合していてもよく、R6は炭素数1〜3のアルキル基であり、b及びcは、各々独立に、0又は1であり、かつb+cは0,1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種
を共加水分解・縮合することにより得られた加水分解縮合物である。
(R7O)3-dR8 dSiR9SiR8 d(OR7)3-d (3)
(式中、R7及びR8は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R9は、炭素数1〜6の非置換又は置換の二価の飽和炭化水素基であり、該飽和炭化水素基の1つ以上の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、dは、各々独立に、0又は1である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種とを共加水分解・縮合してもよい。
なお、式(3)の化合物を配合する場合、1質量%以上とすることが好ましく、この場合、式(1)の化合物は20〜98質量%、式(2)の化合物は1〜79質量%、式(3)の化合物は1〜20質量%とすることが好ましい。
本発明で用いられる(B)成分は、密着向上剤として作用するもので、ポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のウレタン変性ビニル系重合体である。(B)成分は、硬化被膜中で(A)成分のシリコーンバインダーと層分離し、被膜の厚さ方向で濃度勾配することで、耐擦傷性能を低下することなく、有機樹脂基材への親和性が増し、密着性が発現するものと考えられる。(B)成分のポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のウレタン変性ビニル系重合体は、ビニル系重合体にポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のポリウレタンをグラフトさせたものであり、具体的には、脂肪族ポリカーボネートジオール及び/又は脂肪族ポリエステルジオールと芳香族ジイソシアネートとの反応から得られるポリカーボネート系及び/又はポリエステル系ポリウレタンを側鎖に有するビニル系重合体が好ましい。より好ましくは、脂肪族ポリカーボネートジオールと芳香族ジイソシアネートとの反応から得られるポリカーボネート系ウレタンを側鎖に有するビニル系重合体である。
これら単量体を公知の方法で重合することで、ビニル系重合体が得られる。
本発明で用いられる(C)成分は、コーティング塗膜に対する印刷インクの濡れ性及び付着性を向上させるもので、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種である。(C)成分は、硬化被膜中で(A)成分のシリコーンバインダーと層分離し、塗膜表面で微細な海島構造をとることで、耐擦傷性能を低下することなく、印刷インクに対する濡れ性及び付着性が発現するものと考えられる。(C)成分の1つであるポリ酢酸ビニルは、酢酸ビニルを主成分モノマーとして、(共)重合させたものであり、もうひとつのポリビニルアルコールは、アルカリ触媒を用いてポリ酢酸ビニルのアセトキシ基を水酸基に変換、いわゆるケン化することで得ることができる。ポリビニルアルコールは、このケン化の程度(ケン化度)により、完全ケン化型、部分ケン化型とに分けられる。具体的には、ポリ酢酸ビニル、完全ケン化型ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは、ポリ酢酸ビニルである。
(D)成分は、通常、シリコーンコーティング組成物に用いられる硬化触媒が使用できる。具体的には、加水分解縮合物(A)中に含まれる、シラノール基、アルコキシ基等の縮合可能基が縮合する反応を促進する硬化触媒であり、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムアセテート、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート等の含金属化合物類;p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸等の酸性化合物類などが挙げられる。これらの中でも特に、プロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。
下記一般式(4):
〔R10R11R12R13M〕+・X- (4)
(式中、R10,R11,R12,R13は、各々独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基であって、R10,R11,R12,R13における各々のTaft−Duboisの置換基立体効果定数Esの合計が−0.5以下であり、Mは、アンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオンであり、X-は、ハロゲンアニオン、ヒドロキシドアニオン、アセテートアニオン又は炭素数1〜4のカルボキシレートアニオンである。)
で表される分子中に芳香族基を含まない化合物である。
Es=log(k/k0)
(式中、kは、特定条件下での置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度であり、k0は、同一条件下でのメチル基置換カルボン酸の酸性下エステル化反応速度である。)
(E)成分は溶剤であり、(A)〜(D)成分を溶解する又は分散するものであれば特に限定されるものではないが、極性の高い有機溶剤が主溶剤であることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等のエステル類などを挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
本発明で用いられる(F)成分は金属酸化物微粒子である。具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、インジウム錫酸化物(ITO)等である。(F)成分は、塗膜の硬度、耐擦傷性を付与する充填剤の役割と、粒子表面でバインダーとしての(A)成分中のシラノール基と結合を形成するため、架橋剤としての役割、場合によっては更に屈折率を調整し、干渉縞を低減する役割を果たす。(F)成分の金属酸化物微粒子の粒子径は、塗膜の透明性が維持できる程度に小さいものであれば使用可能であるが、好ましくは、粒子径5〜100nm、特に8〜50nm程度のナノサイズがよい。また(F)成分は、水や有機溶剤の媒体にコロイド分散している形態であり、市販されている水分散、有機溶剤分散タイプが使用可能である。例えば、商品名「スノーテックスO」(水分散コロイダルシリカ;日産化学工業(株)製)、商品名「メタノールシリカゾル」(メタノール分散コロイダルシリカ;日産化学工業(株)製)、商品名「IPA−ST」(イソプロパノール分散コロイダルシリカ;日産化学工業(株)製)、商品名「MEK−ST」(メチルエチルケトン分散コロイダルシリカ;日産化学工業(株)製)、商品名「ZNTANB15WT%−E34」(アルコール分散酸化亜鉛;CIKナノテック(株)製)、商品名「ナノユースZR−30AL」(水分散酸化ジルコニウム;日産化学工業(株)製)、商品名「オプトレイク1120Z」(メタノール分散酸化チタン;日揮触媒化成(株)製)等が挙げられる。
本発明の(G)成分であるブロック化された脂肪族ポリイソシアネートは、基材への密着性において、(B)成分による密着性を補強するために用いられる。
(G)成分のブロック化された脂肪族ポリイソシアネートは、脂肪族骨格にイソシアネート基がブロック剤で保護されているブロックイソシアネート基を1つ以上有していれば、特に制限はない。ブロック化された脂肪族ポリイソシアネートは、一般的に無黄変タイプのポリイソシアネートに分類され、耐候性が良好である。ブロック化された脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジ(メチルイソシアネート)、ヘキサメチレントリイソシアネート、リジントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、及びこれらの環状2量体(ウレチジオン)、3量体(イソシアヌレート)、及び重合体;前記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とを反応させたアダクト体及びアロハネート体;前記イソシアネネート化合物とジアミン化合物とを反応させたウレア体及びビュレット体;これらのイソシアネート基をブロック剤で保護したものを挙げることができる。
更に、(G)成分は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物には、必要に応じて、pH調整剤、レベリング剤、増粘剤、顔料、染料、金属粉、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、熱線反射・吸収性付与剤、可撓性付与剤、帯電防止剤、防汚性付与剤、撥水性付与剤等を本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で添加することができる。なお、本発明の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物には、塩化亜鉛は配合しないことが好ましい。塩化亜鉛を配合すると密着性、特に煮沸密着性が低下したり、塗膜外観も膨れ等の異常が発生する場合があるため、配合するとしても(A)成分中の固形分総量に対して5質量%以下とすることが好ましい。
[合成例1]
1Lのフラスコに、KBM−803(信越化学工業(株)製:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)155.3g(0.792モル)を仕込み、0.25Nの酢酸水溶液−98.4gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら第1の加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで、60℃にて2時間撹拌した。次に、0.25Nの酢酸水溶液32.8g、KBM−13(信越化学工業(株)製:メチルトリメトキシシラン)35.9g(0.264モル)を順次投入し、60℃にて3時間撹拌し、第2の加水分解を行った。
その後、シクロヘキサノン150gを投入し、加水分解で生成したメタノールを、常圧にて液温が92℃になるまで加熱留去すると共に、縮合させた後、希釈剤としてイソブタノール209g、レベリング剤としてKP−341(信越化学工業(株)製)0.7g、酢酸0.8g、及び20%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)1.0gを加え、撹拌した後、濾紙濾過を行い、不揮発分濃度23.7%、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析による重量平均分子量2,510、分散度1.81の無色透明の溶液を得た。更に不揮発分濃度20%になるようイソブタノールで希釈し、加水分解縮合物溶液(ADE−1)を得た。
合成例1と同様な操作で、表1に示した原料を用いて、加水分解縮合物溶液(ADE−2〜7)を得た。
KBM−103:信越化学工業(株)製フェニルトリメトキシシラン
KBE−846:信越化学工業(株)製1,10−ビス(トリエトキシシリル)−4,5,6,7−テトラチアデカン
KBM−3026:信越化学工業(株)製1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン
KBM−13:信越化学工業(株)製メチルトリメトキシシラン
B−1:大成ファインケミカル(株)製アクリット8UA−347(ポリカーボネート系ウレタン変性ビニル系重合体溶液(固形分濃度30%、固形分の水酸基価33、重量平均分子量20,200)をジアセトンアルコールで固形分濃度20%にした溶液
B−2:大成ファインケミカル(株)製アクリット8UA−301(ポリエステル系ウレタン変性ビニル系重合体溶液(固形分濃度30%、固形分の水酸基価11、重量平均分子量40,300)をジアセトンアルコールで固形分濃度20%にした溶液
C−1:日本酢ビ・ポバール(株)製JZ−05−50M(ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液、固形分濃度60%)をメタノールで固形分濃度30%にした溶液
C−2:日本酢ビ・ポバール(株)製JF−05(完全ケン化型ポリビニルアルコール)を水で固形分濃度30%にした溶液
F−1:日産化学工業(株)製 スノーテックスO(水分散コロイダルシリカ、固形分濃度20%)
F−2:CIKナノテック(株)製 ZNTANB15WT%−E34(アルコール分散酸化亜鉛、固形分濃度15%)
G−1:三井化学ポリウレタン(株)製タケネートB−882N(ブロック剤で保護されたヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体(イソシアヌレート)、固形分濃度70%、イソシアネート含有率10.7%)
H−1:塩化亜鉛のエチルセロソルブ溶液(固形分濃度20%、公知の干渉縞低減し得る添加剤)
[実施例1]
合成例1で得られた加水分解縮合物溶液(ADE−1)100部(固形分)に対し、(B)成分のポリカーボネート系ウレタン変性ビニル系重合体溶液(B−1)5部(固形分)を添加、混合することにより、コーティング組成物(1)を得た。
表2,3に示した比率にて上記各成分を混合することによって、コーティング組成物(2)〜(9)を調製した。
表面を清浄化した0.5mm厚のポリカーボネート樹脂板(ユーピロンシート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)に、実施例1で得られたコーティング組成物(1)を硬化塗膜として約3〜5μmになるようにフローコートし、120℃にて60分加熱硬化させた。このようにして得られた塗膜を試験片とし、下記の物性評価の結果を表4に示した。
実施例2〜5で得られたコーティング組成物(2)〜(5)を用いて、実施例6と同様に塗工して、試験片を得た。これらの物性評価の結果を表4に示した。
比較例1〜4で調製したコーティング組成物(6)〜(9)を実施例6と同様に塗工した。得られた塗膜に関して、下記の評価を行い、その結果を表5に示す。
<干渉縞、塗膜異物>
蛍光灯の下で、試験片を目視にて、干渉縞の目立ち易さ及び塗膜異物の有無を観察した。干渉縞の判定基準を下記に示す。
◎:干渉縞はほとんどない。
○:干渉縞はあるが、ほとんど目立たない。
×:干渉縞があり、目立つ。
メトリコン社製 モデル2010プリズムカプラーを用いて、検出波長633nmにおける塗膜の屈折率(25℃)を測定した。
日本電色工業(株)製 ヘイズメーターNDH2000を用いて、塗膜のヘイズ(Hz)を測定した。
ASTM1044に準じ、テーバー摩耗試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着、荷重500g下での500回転後のヘイズ(Hz)を日本電色工業(株)製 ヘイズメーターNDH2000を用いて測定し、試験後と試験前のヘイズ差(ΔHz)を測定した。
JIS K5400に準じ、カミソリ刃を用いて、塗膜に2mm間隔で縦、横6本ずつ切れ目を入れて25個の碁盤目を作製し、セロテープ(登録商標、ニチバン(株)製)をよく付着させた後、90°手前方向に急激に剥がしたとき、塗膜が剥離せずに残存したマス目数(X)を、X/25で表示した。
試験片を沸騰水中に2時間浸漬した後に目視にて外観観察及び前記初期密着性と同様にして密着性試験を行った。
合成例1で得られた加水分解縮合物溶液(ADE−1)100部(固形分)に対し、(B)成分のポリカーボネート系ウレタン変性ビニル系重合体溶液(B−1)5部(固形分)、(C)成分のポリ酢酸ビニル溶液(C−1)10部(固形分)を添加、混合することにより、コーティング組成物(10)を得た。
表6,7に示した比率にて上記各成分を混合することによって、コーティング組成物(11)〜(18)を調製した。
表面を清浄化した0.5mm厚のポリカーボネート樹脂板(ユーピロンシート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)に、実施例11で得られたコーティング組成物(10)を硬化塗膜として約3〜5μmになるようにフローコートし、120℃にて60分加熱硬化させた。このようにして得られた塗膜を試験片とし、下記の物性評価の結果を表8に示した。
実施例12〜15で得られたコーティング組成物(11)〜(14)を用いて、実施例16と同様に塗工して、試験片を得た。これらの物性評価の結果を表8に示した。
比較例9〜12で調製したコーティング組成物(15)〜(18)を実施例16と同様に塗工した。得られた塗膜に関して、下記の評価を行い、その結果を表10に示す。
実施例16で得られた塗膜の表面に、帝国インキ(株)製のインキであるセリコールVG−911及び希釈溶剤D−002を質量比8対2の割合で混合したものを、T−250メッシュを用いて印刷した。この時、インキのはじきは見られなかった。その後、50℃にて10分乾燥させたところ、インキの剥離などは見られなかった。印刷特性評価の結果を表9に示した。
実施例12〜15で得られたコーティング組成物(11)〜(14)を用いて、実施例16と同様に塗工した。得られた塗膜を用いて、実施例21と同様に印刷特性の評価を行い、その結果を表9に示した。
比較例9〜12で得られたコーティング組成物(15)〜(18)を用いて、実施例16と同様に塗工した。得られた塗膜を用いて、実施例21と同様に印刷特性の評価を行い、その結果を表11に示した。(C)成分が添加されていないコーティング組成物の硬化塗膜では、インキのはじきが見られ、また乾燥後には部分的にインキの剥離が見られた。
<濡れ張力>
JIS K 6768に準じ、濡れ張力試験用標準液No31〜36(和光純薬工業(株)製)を綿棒にて、塗膜に塗布、2秒以上濡れている状態を保っている標準液の表面張力を塗膜の塗れ張力とした。
塗膜への印刷インキのはじきの有無を目視にて観察した。
塗膜への印刷インキの付着性を、インキの剥離の有無について目視にて観察した。
Claims (16)
- (A)下記一般式(1):
(R3O)3-aR1 aSiR2SH (1)
(式中、R1及びR3は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、aは0又は1である。)
で表されるメルカプト基含有アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種20〜99質量%と、下記一般式(2):
R4 bR5 cSi(OR6)4-b-c (2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又はメルカプト基を含有しない非置換もしくは置換の一価の飽和炭化水素基で、置換基同士が相互に結合していてもよく、R6は、炭素数1〜3のアルキル基であり、b及びcは、各々独立に、0又は1であり、かつb+cは0、1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種1〜80質量%とを共加水分解・縮合することにより得られた共加水分解縮合物、
(B)ポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のウレタン変性ビニル系重合体、
(D)硬化触媒、
(E)溶剤
を含有し、(B)ウレタン変性ビニル系重合体の固形分量が、(A)共加水分解縮合物の固形分総量に対して、1〜30質量%であることを特徴とする耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。 - (A)下記一般式(1):
(R3O)3-aR1 aSiR2SH (1)
(式中、R1及びR3は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、aは0又は1である。)
で表されるメルカプト基含有アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種20〜99質量%と、下記一般式(2):
R4 bR5 cSi(OR6)4-b-c (2)
(式中、R4及びR5は、各々独立に、水素原子又はメルカプト基を含有しない非置換もしくは置換の一価の飽和炭化水素基で、置換基同士が相互に結合していてもよく、R6は、炭素数1〜3のアルキル基であり、b及びcは、各々独立に、0又は1であり、かつb+cは0、1又は2である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種1〜80質量%とを共加水分解・縮合することにより得られた共加水分解縮合物、
(B)ポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のウレタン変性ビニル系重合体、
(C)ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種、
(D)硬化触媒、
(E)溶剤
を含有し、(B)ウレタン変性ビニル系重合体の固形分量が、(A)共加水分解縮合物の固形分総量に対して、1〜30質量%であり、(C)ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールから選択される少なくとも1種の固形分量が、(A)共加水分解縮合物の固形分総量に対して、1〜30質量%であることを特徴とする耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。 - (A)成分が、一般式(1)及び(2)で表されるアルコキシシラン及びそれらの部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して50質量部以上150質量部未満のpH1〜7の水にて共加水分解縮合し、生成するアルコールを液温80℃以上にて留去することにより得られ、かつGPC分析によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,500以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- (A)成分が、上記一般式(1)及び(2)と、更に下記一般式(3):
(R7O)3-dR8 dSiR9SiR8 d(OR7)3-d (3)
(式中、R7及びR8は、各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R9は、炭素数1〜6の非置換又は置換の二価の飽和炭化水素基であり、該飽和炭化水素基の1つ以上の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、dは、各々独立に、0又は1である。)
で表されるアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種とを共加水分解・縮合することにより得られた共加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。 - (A)成分が、一般式(1)、(2)及び(3)で表されるアルコキシシラン及びそれらの部分加水分解縮合物の合計100質量部に対して50質量部以上150質量部未満のpH1〜7の水にて共加水分解縮合し、生成するアルコールを液温80℃以上にて留去することにより得られ、かつGPC分析によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,500以上であることを特徴とする請求項4記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- (B)成分が、ポリカーボネート系のウレタン変性ビニル系重合体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- (B)成分のポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による重量平均分子量が5,000〜50,000であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- (B)成分の水酸基価が10以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- (C)成分が、ポリ酢酸ビニルであることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- (C)成分のポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による重量平均分子量が5,000〜100,000であることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- 更に、(F)金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- 更に、(G)ブロック化された脂肪族ポリイソシアネートを含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物。
- 有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、直接、請求項1乃至12のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなる被覆物品。
- 有機樹脂基材の少なくとも一方の面に、直接、請求項2乃至12のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物の硬化被膜を被覆してなり、該硬化被膜の表面に印刷による加飾が施されていることを特徴とする被覆物品。
- 有機樹脂基材がポリカーボネートである請求項13又は14記載の被覆物品。
- 有機樹脂基材上に下塗りなしに直接請求項1乃至12のいずれか1項記載の耐擦傷性シリコーンコーティング組成物を塗工し、硬化することを特徴とする被覆物品の製造方法。
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