JP4888948B2 - アルミニウム材の高速陽極酸化皮膜形成方法 - Google Patents

アルミニウム材の高速陽極酸化皮膜形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法に関し、より詳しくは、従来に比して格段に厚い陽極酸化皮膜をアルミニウム材表面に短時間で形成するための方法に関するものである。
尚、本明細書において、「アルミニウム」という文言は、アルミニウム及びアルミニウム合金の両方を含む意味で用いる。
近年、家電業界や自動車業界等に代表される幅広い業界において、アルミニウムの需要が増大している。このことは、アルミニウムが、軽量、高加工性(高展伸性・高鍛造性)、高熱電導性等の優れた特性を有することに起因している。
しかしながら、アルミニウムは、上記のような優れた特性を有する反面、表面硬度及び耐食性が充分ではないという欠点を有している。
かかる欠点を解消するための方法として、アルミニウムを陽極酸化処理することにより表面に耐食性の酸化皮膜(陽極酸化皮膜)を形成する方法がアルマイト処理として公知であり、アルマイト処理品は各種分野で幅広く使用されている。
アルミニウムに陽極酸化皮膜を形成する方法としては、酸性浴もしくはアルカリ性浴中で電解を行う方法が一般的に知られている。
中でも、硫酸浴を用いた方法は最も多用されている方法であり、硫酸浴により作製した皮膜は、高い耐食性及び耐摩耗性を示すだけでなく、低コストで作製することが可能であるという利点も有する。また、シュウ酸浴により作製した皮膜は、硫酸浴により作製した皮膜に比べて、高硬度で孔径も大きな陽極酸化皮膜となる。
上記したような陽極酸化皮膜形成における電解方法としては、直流電解法、交流電解法、交直重畳法およびパルス電解法が知られており、例えば、下記特許文献1には、直流電圧と交流電圧を重畳して印加して電圧制御を行う交直重畳法により陽極酸化皮膜を形成する構成が開示されている。しかし、この電圧制御手法では、電解時間の経過とともに、電流密度が徐々に低下することが抑制できず、したがって、厚い皮膜の作製が不可能である問題点がある。
しかしながら、上記したような従来の電解方法による陽極酸化皮膜形成では、膜厚の増加に伴って皮膜抵抗が大きくなって電圧が上昇することにより、時間の経過とともに成膜の速度が著しく低下してしまうという問題と同時に、電圧の上昇に伴った皮膜表面温度の上昇による生成皮膜の溶解が起こる問題の2つの問題があった。特に、前者の問題は、生成する孔形に原因し、電解開始時に約50nmあった孔径が徐々に小さくなり、電解時間の経過とともに、約30nmとなることに起因している。
そのため、従来の方法では、短時間での厚い膜の生成が困難である上に、作製できる膜厚に限界があり、過酷な腐食環境下で使用されるアルミニウム製品に対する耐食処理としては不十分なものであった。
特開2003−155595号公報
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、過酷な腐食環境下での使用に耐え得る厚い陽極酸化皮膜を短時間で形成することができるアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法を提供せんとするものである。
請求項1に係る発明は、アルミニウム材を酸性浴中で電解することにより、該アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成するアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法であって、前記電解を、直流電流に交流電流を重畳させて印加し、経時的に電流密度を制御することにより行い、前記アルミニウム材の表面に膜厚150μm以上の陽極酸化皮膜を形成し、前記電流密度の制御は、前記直流電流からなる基底電流の密度を、電解開始後から一定時間は増加させ、その後一定時間は減少させ、その後は一定に維持するという制御であることを特徴とするアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法に関する。
請求項2に係る発明は、前記電解時において、基底電流密度を0.5〜20A/dmの範囲、振幅を0.5〜15A/dmの範囲で夫々変化させることを特徴とする請求項記載のアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法に関する。
請求項3に係る発明は、前記酸性浴が硫酸浴であって、前記電解時において、印加電流密度を以下の一般式に従って制御することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法に関する。
i=0.33t−0.32(0<t≦t
i=−0.16t+16.2(t<t≦t
i=5.6(t<t)
(但し、i:電流密度(A/dm)、t:電解時間(分)、前記交流電流の周波数:1kHz一定)
請求項4に係る発明は、前記酸性浴がシュウ酸浴であって、前記電解時において、印加電流密度を以下の一般式に従って制御することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法に関する。
i=0.21t−0.20(0<t≦t
i=−0.10t+10.6(t<t≦t
i=3.7(t<t)
(但し、i:電流密度(A/dm)、t:電解時間(分)、前記交流電流の周波数:1kHz一定)
請求項1に係る発明によれば、アルミニウム材の表面に膜厚150μm以上の陽極酸化皮膜を形成することから、過酷な腐食環境下での使用に耐え得る高耐食性のアルミニウム材となるだけでなく、今後、カーボンナノチューブ、ナノワイヤー等のテンプレート、ナノリアクターおよびイオン分離膜への適用が可能となる。
請求項に係る発明によれば、アルミニウム材を酸性浴中で電解する工程における電解を、直流電流に交流電流を重畳させて印加するとともに電流密度を制御して行うことにより、膜厚の増加に伴う皮膜抵抗の増加が抑制され、時間の経過とともに成膜速度の著しい低下が生じることがない。そのため、従来の方法では困難であった150μm以上の厚い陽極酸化皮膜を短時間で形成することができる。
請求項に係る発明によれば、電解時において、基底電流密度を0.5〜20A/dmの範囲、振幅を0.5〜15A/dmの範囲で夫々変化させることにより、膜厚の増加に伴う皮膜抵抗の増加を効果的に抑制できる制御が可能となり、同時に、印加する電流密度を制御するため、電解時に発生するジュール熱の制御も可能となるため、発熱による生成皮膜の溶解を最小限に抑制することができる。
請求項に係る発明によれば、硫酸浴を用いた電解時において、印加電流密度を所定の数値関数に従って制御することにより、長時間に亘って膜厚を連続的に増加させることができ、高い耐食性及び耐摩耗性を示す陽極酸化皮膜を短時間で非常に厚く形成することが可能となる。また、適切に電流密度が制御されることによって、電流密度の偏りによって生じる焼けや、応力の増加によるクラックの発生を防ぐことができる。
請求項に係る発明によれば、シュウ酸浴を用いた電解時において、印加電流密度を所定の数値関数に従って制御することにより、長時間に亘って膜厚を連続的に増加させることができ、硫酸浴により作製した皮膜に比べて高硬度で孔径も大きな陽極酸化皮膜を短時間で非常に厚く形成することが可能となる。また、適切に電流密度が制御されることによって、電流密度の偏りによって生じる焼けや、応力の増加によるクラックの発生を防ぐことができる。
以下、本発明に係るアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明において用いられるアルミニウム材は、上述の如くアルミニウム材とアルミニウム合金材の両方を含み、具体的には、JISの1000番系(純アルミニウム)、2000番系(Al−Cu系合金)、3000番系(Al−Mn系合金)、4000番系(Al−Si系合金)、5000番系(Al−Mg系合金)、6000番系(Al−Mg−Si系合金)、7000番系(Al−Zn−Mn系合金)、8000番系(上記以外の合金)、9000番系のアルミニウム材及びアルミニウム合金材を含む。
本発明に係る方法により得られるアルミニウム材は、表面に膜厚150μm以上、より好ましくは200μm以上、更に好ましくは300μm以上の陽極酸化皮膜が形成されてなるものであり、このような厚い陽極酸化皮膜は、以下に説明する本発明に係るアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法を用いて生成することが可能である。
本発明に係るアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法は、上記したようなアルミニウム材を酸性浴中で電解することにより、該アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成する方法であって、酸性浴中での電解を、直流電流に交流電流を重畳させて印加するとともに、電流密度を制御することによって行うものである。
酸性浴には、硫酸、シュウ酸、燐酸、硼酸、クロム酸等の水溶液、或いはこれらの混合溶液を用いることができるが、本発明においては、特に、硫酸浴及びシュウ酸浴が好適に用いられる。
硫酸浴を用いる場合、硫酸濃度が0.001〜1.0モル/リットル、硫酸アルミニウム濃度が1.0〜10.0グラム/リットルの混合浴とし、この混合浴の温度を−5〜45℃とすることが好ましい。
シュウ酸浴を用いる場合、シュウ酸濃度を1〜10%、浴の温度を−5〜45℃とすることが好ましい。
本発明では、このような酸性浴の前処理として、水酸化ナトリウム及び硝酸によりアルミニウム材の脱脂・エッチング・デスマットを行う。
そして、このような前処理を行ったアルミニウム材を酸性浴に浸漬し、白金板あるいはチタン板を対向配置した電極を用いて電解処理を行う。
図1は、本発明に係る方法において、電解時に印加される電流の基底電流密度、振幅、周波数の関係の一例を示す図であって、基底電流密度を2A/dm、振幅を2A/dm、周波数を1Hz、波形を正弦波としたものである。
本発明においては、電解時において、このように直流電流に交流電流を重畳させて印加した上で電流密度の制御を行う。
本発明において行われる電流密度の制御には、電流密度を一定に制御する場合と、電流密度を経時的に変化させる制御を行う場合の両方が含まれる。
電流密度を一定とする場合の例としては、図1に示した例が挙げられる。
電流密度を変化させる場合の例としては、基底電流密度を0.5〜20A/dmの範囲、振幅を0.5〜15A/dmの範囲で夫々変化させる例を挙げることができる。
尚、いずれの場合でも、周波数は1〜100kHzの範囲、好ましくは500〜2000Hzの範囲で設定することができる。また、波形については、正弦波、三角波、矩形波等の任意の波形とすることができる。
本発明においては、このように、酸性浴中での電解を、直流電流に交流電流を重畳させて印加し、電流密度を制御することにより行うことによって、膜厚の増加に伴う皮膜抵抗の増加が抑制されて電圧の上昇が抑えられる結果、時間の経過とともに成膜速度が著しく低下することがない。すなわち、周波数の印加によって電流回復現象を発現させ、電流密度の制御によって電解開始時の孔径が、電解時間の経過とともに小さくなることなく、厚い膜になっても電解初期の孔径を保持し続ける。そのため、従来の方法では困難であった150μm以上の厚い陽極酸化皮膜を短時間で形成することが可能となる。
電流密度を変化させる制御を行う場合、印加電流密度(基底電流密度)を予め定められた時間関数に従って制御する。
この制御は、電流密度を電解開始から終了まで大きく三段階で印加する。すなわち、電解開始後から一定時間は増加させ、その後一定時間は減少させ、その後は一定に維持するという制御である。
具体的には、硫酸浴を用いて最短時間で300μm以上の皮膜を作製するには、以下の一般式(以下、まとめて式1と称す)に表される時間関数に従って制御することが好ましい。ただし、この式1は好適な一例であって、初期に印加する基底電流密度と振幅などの電解条件の違いによって異なる。
i=0.33t−0.32(0<t≦t
i=−0.16t+16.2(t<t≦t
i=5.6(t<t)
(但し、i:電流密度(A/dm)、t:時間(分)、前記交流電流の周波数:1kHz一定)
また、シュウ酸浴を用いて最短時間で180μm以上の皮膜を作製するには、以下の一般式(以下、まとめて式2と称す)に表される時間関数に従って制御することが好ましい。ただし、この式2は好適な一例であって、初期に印加する基底電流密度と振幅などの電解条件の違いによって異なる。
i=0.21t−0.20(0<t≦t
i=−0.10t+10.6(t<t≦t
i=3.7(t<t)
(但し、i:電流密度(A/dm)、t:時間(分)、前記交流電流の周波数:1kHz一定)
上記した式1及び式2において、t及びtは定数であって、例えば、t=35分、t=65分に設定することができる。しかし、この数値のみに限定されるものではなく、例えばtは35分以上、tは65分以上の範囲で設定することができる。
式1において、t=35分、t=65分に設定して180分間電解を行った場合、電解時におけるアルミニウム材1dm当たりの電気量の積分値は、電解開始時から35分は12500C、35〜65分は11500C、65〜180分は34000Cに制御される。
但し、本発明においては、上述したように、tは35分以上、tは65分以上の範囲で任意に設定することができ、この場合において、電解開始時からt分は12500C、t〜t分は11500C、t〜180分は34000Cに制御して電解を行うことができる。
式2において、t=35分、t=65分に設定して80分間電解を行った場合、電解時におけるアルミニウム材1dm当たりの電気量の積分値は、電解開始時から35分は15000C、35〜65分は4800C、65〜80分は3200Cに制御される。
但し、本発明においては、上述したように、tは35分以上、tは65分以上の範囲で任意に設定することができ、この場合において、電解開始時からt分は15000C、t〜t分は4800C、t〜80分は3200Cに制御して電解を行うことができる。
電解時において、上記式1、式2に示した電流密度制御を行うことによって、成膜速度を向上させることができるとともに長時間に亘って皮膜の成長を持続させることができ、300μm以上の厚い陽極酸化皮膜を迅速に形成することが可能となる。
上記式1と式2の相違点は、式2では電流密度iが式1の2/3に設定されている点である。この設定は、硫酸の皮膜生成定数はK=0.31であるのに対し、シュウ酸の皮膜生成定数はK=0.22であって硫酸の約2/3であることに基づいたものである。
従って、酸性浴に用いる酸として、硫酸及びシュウ酸以外の他の酸を用いる場合には、硫酸の皮膜生成定数を1としたときの他の酸の皮膜生成定数の値を式1に乗じることによって、当該他の酸について印加電流密度を制御するための式(時間関数)を求めることが可能となり、求められた式に従って電解時に印加電流密度を制御すればよいことになる。
以下、本発明に係る方法と従来の方法を比較した結果を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
図2は、本発明に係る方法と従来の方法について、硫酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図であり、(1)は従来の方法の場合、(2)は本発明に係る方法の場合である。
本発明に係る方法では、図1に示すような電流密度を一定にする制御を行い、基底電流密度を1A/dm、振幅を2A/dm、周波数を1kHz、波形を正弦波とした。
一方、従来の方法は、定電流(直流)電解法により行い、定電流密度を1A/dmとした。
図2に示されるように、本発明に係る方法では、600分(10時間)経過後も膜厚の成長が持続し、約200μmの厚膜を作製することができた。これに対して、従来の方法では400分を経過した付近から皮膜の成長速度が著しく低下し、その後、皮膜の成長は約140μmで停止した。
図3は、図2の電解処理における電解時間に伴う電圧の変化の測定結果を示す図であり、(1)は従来の方法の場合、(2)は本発明に係る方法の場合である。
本発明に係る方法では、電圧の経時的変化が少なく略一定である。これにより、時間の経過に伴う膜抵抗の増加が殆ど起こらず、その結果、図2に示した如く皮膜成長が停止せず、厚膜化が可能となったものと考えられる。
これに対して、従来の方法では、電解開始直後に電圧が上昇している。これにより、時間とともに膜抵抗が大きくなり、図2に示した如く皮膜成長が停止してしまったものと考えられる。
図4は、本発明に係る方法と従来の方法について、シュウ酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図であり、(1)は従来の方法の場合、(2)は本発明に係る方法の場合である。
本発明に係る方法は、図1に示すような電流密度を一定とする制御を行い、基底電流密度を3A/dm、振幅を2A/dm、周波数を1kHz、波形を正弦波とした。
一方、従来の方法は、定電流(直流)電解法により行い、定電流密度を3A/dmとした。
図4に示されるように、本発明に係る方法では、電解開始後約5時間程度で皮膜生成速度は減少したが、その後も皮膜は成長を続け、10時間で皮膜は約180μmに達し、それ以降も皮膜の成長は続いた。
これに対して、従来の方法では、電解開始約6時間後に膜厚が約140μmとなったが、それ以降、皮膜の成長は停止した。
図5は、本発明に係る方法と従来の方法について、硫酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図であり、(1)は従来の方法の場合、(2)は本発明に係る方法の場合である。
本発明に係る方法は、図5中のtにピークをもつ曲線に示すように電流密度を経時的に変化させた制御を行った。この制御は、印加電流密度を式1に従って制御したものであって、t=35分、t=65分、最大電流密度=11A/dm、周波数1000Hzに設定した。電解時におけるアルミニウム材1dm当たりの電気量の積分値は、電解開始時から35分は12500C、35〜65分は11500C、65〜180分は34000Cであった。
一方、従来の方法は、定電流(直流)電解法において、電流密度を式1に従って制御したものであって、t=35分、t=65分、最大電流密度=11A/dm、周波数1000Hzに設定した。
図5に示されるように、本発明に係る方法では、電解開始約150分後に膜厚が約300μmに達した。
これに対して、従来の方法では、電解開始約80分後に膜厚が約140μmとなったが、それ以降、皮膜の成長は停止した。
図6は、本発明に係る方法について、シュウ酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図である。
本発明に係る方法は、図6中の山形の曲線に示すように電流密度を経時的に変化させた制御を行った。この制御は、印加電流密度を式2に従って制御したものであって、t=35分、t=65分、最大電流密度=7A/dm、周波数1000Hzに設定した。電解時におけるアルミニウム材1dm当たりの電気量の積分値は、電解開始時から35分は15000C、35〜65分は4800C、65〜180分は3200Cであった。
図6に示されるように、本発明に係る方法では、電解開始約80分後に膜厚が約100μmに達し、その後も皮膜の成長は続き、150μm以上の膜厚をもつ皮膜が得られた。
図7は、図5及び図6に示した本発明に係る方法で生成された陽極酸化皮膜(1)及び(1)’と従来の方法で生成された陽極酸化皮膜(2)及び(2)’の電子顕微鏡(SEM)による表面観察写真であり、図8はこのうち本発明に係る方法で生成された陽極酸化皮膜の断面観察写真である。尚、図7における従来の方法は、定電流(直流)電解法において、電流密度を式1(硫酸浴の場合)又は式2(シュウ酸浴の場合)に従って制御したものであって、t=35分、t=65分、最大電流密度=11A/dm、周波数1000Hzに設定したものである。
図7の表面観察写真に示すように、本発明に係る方法の硫酸浴処理及びシュウ酸浴処理ともに表面の溶解が認められなかったのに対して、従来の方法では皮膜表面の溶解が著しく、電解中の表面温度の上昇が伺える。
また、図8の断面観察写真に示すように、本発明に係る方法の硫酸浴処理では、膜厚300μm程度の酸化アルミニウムの層が確認でき、中心にはバリアー層及び金属アルミニウム層(133μm厚)が残存していることが確認できた。また、シュウ酸浴処理による方法では、膜厚140μm程度の酸化アルミニウムの層が確認でき、中心にはバリアー層及び金属アルミニウム層(311μm厚)が残存していることが確認できた。
以上のように、本発明に係る方法によれば、従来の方法に比べて、膜厚の増加に伴う皮膜抵抗の増加が少ないため、時間の経過に伴って成膜速度の著しい低下が生じることがなく、その結果として、従来の方法では困難であった150μm以上の厚い陽極酸化皮膜を短時間で形成することが可能であることが実験的に確認された。
本発明は、過酷な腐食環境下で使用されるアルミニウム材への耐食処理方法として好適に利用され、例えば、カーボンナノチューブ、ナノワイヤー等のテンプレート、ナノリアクターおよびイオン分離膜への適用が可能である。また、本発明により得られる陽極酸化皮膜は、新たな機能性薄膜を作製する上で重要な基板としての利用可能性がある。
本発明に係る方法において、電解時に印加される電流の基底電流密度、振幅、周波数の関係の一例を示す図である。 本発明に係る方法と従来の方法について、硫酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図である。 図2の電解処理における電解時間に伴う電圧の変化の測定結果を示す図である。 本発明に係る方法と従来の方法について、シュウ酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図である。 本発明に係る方法と従来の方法について、硫酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図である。 本発明に係る方法について、シュウ酸浴中における電解時間と陽極酸化皮膜の膜厚の関係を示す図である。 図5及び図6に示した本発明に係る方法で生成された陽極酸化皮膜と従来の方法で生成された陽極酸化皮膜の電子顕微鏡(SEM)による表面観察写真である。 本発明に係る方法で生成された陽極酸化皮膜の電子顕微鏡(SEM)による断面観察写真である。

Claims (4)

  1. アルミニウム材を酸性浴中で電解することにより、該アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成するアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法であって、前記電解を、直流電流に交流電流を重畳させて印加し、経時的に電流密度を制御することにより行い、前記アルミニウム材の表面に膜厚150μm以上の陽極酸化皮膜を形成し、
    前記電流密度の制御は、前記直流電流からなる基底電流の密度を、電解開始後から一定時間は増加させ、その後一定時間は減少させ、その後は一定に維持するという制御であることを特徴とするアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法。
  2. 前記電解時において、基底電流密度を0.5〜20A/dmの範囲、振幅を0.5〜15A/dmの範囲で夫々変化させることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法。
  3. 前記酸性浴が硫酸浴であって、前記電解時において、印加電流密度を以下の一般式に従って制御することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法。
    i=0.33t−0.32(0<t≦t
    i=−0.16t+16.2(t<t≦t
    i=5.6(t<t)
    (但し、i:電流密度(A/dm)、t:電解時間(分)、前記交流電流の周波数:1kHz一定)
  4. 前記酸性浴がシュウ酸浴であって、前記電解時において、印加電流密度を以下の一般式に従って制御することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム材の陽極酸化皮膜形成方法。
    i=0.21t−0.20(0<t≦t
    i=−0.10t+10.6(t<t≦t
    i=3.7(t<t)
    (但し、i:電流密度(A/dm)、t:電解時間(分)、前記交流電流の周波数:1kHz一定)
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