JP2022155917A - アルミニウム合金の陽極酸化処理方法および陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材 - Google Patents

アルミニウム合金の陽極酸化処理方法および陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材 Download PDF

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Abstract

【課題】ケイ素が添加されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の硬度、弾性率を向上させ、さらには耐食性を向上させるアルミニウム合金の陽極酸化処理方法および陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材を提供する。【解決手段】硫酸を電気分解して得られる電解硫酸浴を用いて、処理時間60分以内に、かつ10μm以上25μm以下の酸化膜厚を生成する。【選択図】図1

Description

本発明は、ケイ素を含有するアルミニウム合金の陽極酸化処理方法および陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材に関するものである。
アルミニウムまたはアルミニウム合金は私達の身の回りで広く使われている。しかし、空気中においては緻密で安定的な自然酸化皮膜を形成しているものの、その膜厚は2nm程度と非常に薄く、使用環境によっては容易に腐食してしまう。そこで、十分な酸化皮膜を得るために人工的な酸化処理(陽極酸化処理)が行われている。
しかし、ケイ素が添加されたアルミニウム合金(例えばADC12合金)を材料として使用した場合には、硫酸浴を用いた陽極酸化処理を行うと、処理時間とともにアルミニウム合金中のケイ素が電気抵抗として作用して、いずれ陽極酸化皮膜の生成を著しく阻害する。その結果、処理時間が長くなるとともに材料の表面に生成される陽極酸化皮膜の平坦性を確保できなくなり、材料の耐食性、耐摩耗性などが部分的に大きく異なる弊害を生じさせることとなる。
また処理時間を短くしようと電流密度を高めると、電圧も高くなるため、バリア層で大きなジュール熱が発生し、「焼け」と呼ばれる酸化皮膜が形成されない部分ができるという不具合が生じる。
そこで、従来より、陽極酸化処理時の電流波形を変更する方法、例えば、交流法、パルス電解法、極性反転パルス法、交直重畳電解法(特許文献1及び2に記載)などによって、「焼け」を防止することが行われている。これらの方法では、陽極酸化電流が流れていないときにバリア層で発生するジュール熱を被処理物及び溶液中に拡散させることができるので、成膜速度の向上が可能となる。
特開2000-282294号公報 特開2004-35930号公報
小野幸子ら、表面技術、Vol.66、No.8、p.p.364-371(2015)
上記従来の陽極酸化処理方法では、酸化皮膜の厚さに視点が置かれている。使用用途によって必要な膜厚は決まるものの、その膜厚が決められる背景には、酸化皮膜の耐食性や耐摩耗性といった酸化皮膜性状がある。成膜速度重視の従来法では、以下の問題がある。
(1)耐塩酸性試験等の酸性雰囲気での耐食性に欠ける
(2)複合サイクル試験(CCT試験)では短時間で腐食する
(3)一般的な直流電源に比べ、高電圧かつ直流波形を変更できる電源は高価である
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の硬度、弾性率を向上させ、さらには耐食性を向上させるアルミニウム合金の陽極酸化処理方法および陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材を提供することを目的とする。
すなわち、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法のうち、第1の形態は、ケイ素が4.0~24.0質量%添加されたアルミニウム合金の陽極酸化処理をする際、処理時間を60分以内とし、前記処理時間内に10μm以上25μm以下の膜厚の陽極酸化皮膜を生成する。
他の形態のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法の発明は、前記形態の発明において、電流密度1.0~2.5A/dmで陽極酸化処理を行う。
他の形態のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法の発明は、前記形態の発明において、硫酸濃度15~35質量%の硫酸浴を用いる。
他の形態のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法の発明は、前記形態の発明において、硫酸溶液を電気分解して得られる溶液を電解硫酸浴として前記陽極酸化処理を行う。
他の形態のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法の発明は、前記形態の発明において、前記電解硫酸浴の酸化剤濃度が2~30g/Lであることを特徴とする。
本発明の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材の発明は、ケイ素を含有するアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成されており、前記陽極酸化皮膜が硬度105MPa以上、弾性率が10.5GPa以上である。
他の形態の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材の発明は、前記形態の発明において、前記酸化皮膜の硬度200MPa以上、弾性率が15GPa以上である。
他の形態の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材の発明は、前記形態の発明において、前記アルミニウム合金が、質量%でケイ素を4.0~24.0%含有している。
他の形態の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材の発明は、前記形態の発明において、前記アルミニウム合金がダイキャスト合金である。
以下に、本発明で規定する内容について説明する。
[陽極酸化処理工程]
・陽極酸化処理時間;60分以内
<作用機構>
アルミニウムまたはアルミニウム合金は空気中の酸素と化合し、約2nmという薄い自然酸化皮膜が形成されている。この酸化皮膜形態をバリア型酸化皮膜というが、酸化皮膜そのものは電気を通さないので、陽極酸化処理において、絶縁破壊する電圧以上を印加し、細孔を深さ方向に成長させながら酸化皮膜を厚くする。この酸化皮膜形態をポーラス型酸化皮膜という。電圧が低いほど絶縁破壊される箇所の数が少ない、かつ電流密度も低いので、アルミニウムイオンの溶出も少なく、細孔の孔径が小さくなる(非特許文献1)。
通電を開始し電流が流れ始めると、アルミニウムがアルミニウムイオンAl3+となって溶解する。溶出したアルミニウムイオンは、陽極反応のもう1つの反応である水分解反応によって発生する酸素と反応し、酸化アルミニウム(酸化皮膜)となる。酸化アルミニウムは絶縁性なので、表面よりより深いアルミニウムが溶解・酸化の反応を繰り返し、酸化皮膜が成長する。
自然酸化膜の絶縁破壊以上の電圧をかけ、電流が流れ始めると、その欠陥を通って、
Al → Al+ + 3e ・・・・・・・・・・(1)
の反応に従ってアルミニウムAlが溶解する。溶出したアルミニウムイオンAl3+は、陽極反応のもう1つの反応(2)で表される水分解反応によって発生する酸素と反応し、Alとなる(式(3))。
3HO → 3(O) + 6H + 6e ・・・・・・・・・(2)
式(1)と(2)の総括反応は次式(3)となる。
2Al + 3HO → Al + 6H + 12e ・・・・・(3)
式(1)からわかるように、通電する電流値で決まるアルミニウムの溶解速度と、溶出したアルミニウムイオンが式(3)で酸化される速度、すなわち酸化速度のバランスで陽極酸化処理はなされている。
非特許文献1で書かれているポーラス型酸化皮膜となるのは展伸アルミニウム合金の場合で、ケイ素が添加されたアルミニウム合金では、細孔で成長する酸化皮膜の形態をとらない。
ケイ素が添加されたアルミニウム合金の陽極酸化においては、上記の現象に加え、最初に生成された酸化皮膜最表面の溶解現象についても注意を払う必要があることを発明者らは見出した。
酸化皮膜最表面では酸化アルミニウムが溶解し、処理浴に溶解しないケイ素が残るという現象が連続的に起こっている。処理時間が60分を超えると、表面におけるケイ素の含有率が大きくなり、表面が荒れるだけでなく、空隙率が大きくなり、硬度が低くなり、耐食性も低下する。
例えば、硫酸濃度15~35質量%の硫酸浴または電解硫酸浴のpHは0くらいなので、図2のプルベイ線図からわかるように、酸化アルミニウムは溶解し、添加されたケイ素が表面に残り、表面に生成される陽極酸化皮膜の平坦性を確保できなくなる。その結果、酸化皮膜の耐食性、耐摩耗性などが低下していく。陽極酸化処理時間が60分を超えるとその低下が大きくなる。
・陽極酸化皮膜厚さ;10μm以上25μm以下
耐食性を確保するために、10μm以上の酸化皮膜が必要である。10μm未満では十分な耐食性が確保されない。一方、25μmを超える酸化皮膜を生成するには60分以上の陽極酸化処理時間が必要となり、上述のように酸化皮膜の耐食性、耐摩耗性などが低下する。60分以内に25μm以上の酸化皮膜を生成することも可能だが、生成速度をここまで速くすると、酸化皮膜中の空隙率が大きくなり、この場合も耐食性、耐摩耗性等の低い酸化皮膜になる。すなわち膜性状が悪くなる。
・陽極酸化処理の処理浴;硫酸濃度;15~35質量%
硫酸濃度は15~35質量%が好ましい。硫酸濃度が低過ぎると処理時間が長くなり、高過ぎると酸化皮膜最表面の溶解が進み、膜性状が悪くなる。
なお、本発明としては、硫酸濃度の範囲が上記に限定されるものではない。
・陽極酸化処理電流密度;1.0~2.5A/dm
陽極酸化処理における電流密度を適正に管理することで、陽極酸化処理を効率よく行い、かつ良好な陽極酸化処理膜を形成する。
電流密度が低過ぎると処理時間が長くなり、高過ぎるとアルミニウムの溶解速度が速くなり欠陥での空隙率が大きくなるので、上記電流密度の範囲が望ましい。
定電流で陽極酸化するため電圧はなりゆきだが、30~50Vの範囲が望ましい。
なお、電流密度、電圧の条件は適正なものとして示されるが、本発明としては係る範囲に限定されるものではない。
<電解硫酸浴>
見かけの成膜速度を速くするためだけでなく、空隙率の小さな緻密な酸化皮膜を生成するためには、溶出したアルミニウムイオンの酸化効率、すなわち酸化速度を高めることである。酸化速度は陽極酸化浴の酸化還元電位が高いほど速い。本実施形態では、硫酸を電気分解して得られる電解硫酸浴を用いるのが望ましい。電解硫酸浴は、電解硫酸塩を用いるものであってもよい。
硫酸を電気分解すると、硫酸溶液中の硫酸水素イオン(HSO )が式(4)の反応により、
2HSO → 2H + S 2- + 2e ・・・・(4)
図3に示すように高い酸化還元電位を有しているペルオキソ二硫酸(S 2―)が生成される。この電解硫酸浴中で陽極酸化処理すれば、アルミニウムイオンの酸化速度が速まり、空隙率の小さな緻密な酸化皮膜を得ることができる。
・電解硫酸浴の酸化剤濃度;2~30g/L
陽極酸化処理で電解硫酸浴を用いる場合、酸化剤濃度;2~30g/Lとするのが好ましい。
酸化剤濃度が低過ぎるとアルミニウムイオンの酸化速度が硫酸浴と差がない。酸化剤濃度が30g/Lを超えても陽極酸化処理に何ら悪影響を及ぼさないが、アルミニウムイオンの酸化速度は十分に速くなっており、これ以上の酸化剤を生成するための電力等コスト面で不利となる。なお、本発明としては、酸化剤濃度が上記範囲に限定されるものではない。
・陽極酸化皮膜;硬度105MPa以上、弾性率10.5GPa以上
硬度や弾性率は、外力によって引き起こされる変形に対しての材料の抵抗力を表す指標であるが、陽極酸化皮膜においてはほぼ同質の酸化物が生成するため、硬度および弾性率は酸化皮膜中に存在する欠陥(空隙)率の指標となる。すなわち硬度または弾性率が高いということは欠陥(空隙)率が小さく、高い耐食性を得ることにつながる。
・アルミニウム合金;質量%でケイ素を4.0~24.0%含有
非特許文献1で書かれているポーラス型酸化皮膜となるのは展伸アルミニウム合金の場合で、ケイ素を4.0質量%以上含有する鋳造用アルミニウム合金では細孔で成長する酸化皮膜の形態をとらない。圧力を掛けて金型に高速で注入し成型する鋳造方法ではあるが、実際には欠陥(空隙)が多数存在する。
この鋳造用アルミニウム合金で成型された部品に対し本発明の効果は顕著となる。したがって、本願発明としてはケイ素を質量%で4.0%以上含有するものに好適に適用される。ただし、本発明としては適用されるアルミニウム合金のケイ素の含有量が上記に限定されるものではない。
<アルミニウム合金がダイキャスト合金>
ADC12やAC4Cなどダイキャスト合金では、ダイキャスト後において、細孔で成長する酸化皮膜の形態をとらない。溶湯に圧力を掛けて金型に高速度で注入し成型する鋳造方法であるため、他の鋳造方法に比較して精密な成型ができると言われているが、実際には欠陥(空隙)が多数存在する。このため、本発明をより好適に適用することができる。ただし、本発明としてはダイキャスト用のアルミニウム合金に適用が限定されるものではない。
本発明によれば、アルミニウム合金の陽極酸化処理方法において、処理時間を60分以内とし、かつ10μm以上25μm以下の酸化膜厚を生成することにより、良好な硬度及び弾性率を得、さらには耐食性に優れたアルミニウム合金材が得られる。
本発明の実施形態に用いられる装置の一例を示す模式的な断面図である。 アルミニウムのプルベイ線図である。 酸化還元電位の一例である。
以下に、本発明の一実施形態によるアルミニウム合金の陽極酸化処理方法について、詳細に説明する。
図1に陽極酸化処理に用いる処理装置の概略を示す。
処理装置1は、処理槽2を有し、処理に際しては、処理槽2内に収容した処理浴2A中に、陽極酸化処理の対象とするアルミニウム合金板8と、その両側に陰極9、9が浸漬される。アルミニウム合金板8と、陰極9、9には、アルミニウム合金板8を陽極として、直流電源器3が接続される。処理浴2Aには、気泡発生器10が設置されており、外部のエアポンプ4に接続されている。アルミニウム合金板としてはケイ素を4.0質量%以上含有するものが好適に使用され、ダイキャスト合金に特に有用とされる。
なお、この実施形態では、処理浴2Aとして、硫酸濃度が15~35質量%の硫酸浴を用いる。
処理槽2には、処理浴導入路11Aと、処理浴送出路11Bの一端が配置されており、処理槽2内への硫酸浴の導入、処理槽2内からの硫酸浴の送出が可能になっている。
処理浴導入路11Aと、処理浴送出路11Bの他端側は、電解セル6に接続されており、処理浴送出路11Bには、循環ポンプ5が介設されている。循環ポンプ5を電解セル側に送液する動作によって、処理槽2と電解セル6間で、処理浴導入路11Aと処理浴送出路11Bとによって、処理浴の循環が可能になっている。
電解セル6では、セルの下端側に処理浴送出路11Bが接続され、セルの上端側に処理浴導入路11Aが接続されており、その間に、陽極6A、陰極6Bが設置され、陽極6Aと陰極6Bの間にバイポーラ電極6Cが設置されており、各電極間で処理浴が下方から上方に移動する。陽極6Aと陰極6Bには電解用直流電源器7が介設されている。
なお、この実施形態では、バイポーラ電極を有する装置について説明したが、本実施系としては、バイポーラ電極の有無は特に限定されるものではない。
以下に陽極酸化処理について説明する。
<硫酸浴での処理条件>
上記実施形態では、処理浴を電解した電解硫酸を用いることができるが、本実施形態では、硫酸を電解することなく硫酸浴として陽極酸化処理に用いるものであってもよい。
硫酸浴による陽極酸化処理の浴温度(処理温度)は、5~30℃が好ましい。処理温度が低過ぎると処理時間が長くなり、高過ぎると酸化皮膜最表面の酸化アルミニウムの溶解速度が速くなり、表面が荒れるだけでなく、空隙率が大きくなり、硬度が低くなり、耐食性も低下する。
また、陽極酸化処理の電流密度は1.0~2.5A/dmが好ましく、硫酸濃度は15~35質量%が好ましい。
<酸化剤の生成>
陽極酸化処理で、電解硫酸を用いることができる。
電解セル6において電解用直流電源器7に通電することで処理浴が陽極6A、陰極6B、バイポーラ電極6C間で電気分解されて過硫酸が生成される。
硫酸を電気分解してペルオキソ二硫酸等の過硫酸を得るわけだが、このペルオキソ二硫酸は不安定なため自己分解し、ペルオキソ一硫酸になる。このペルオキソ一硫酸も図3からわかるように高い酸化還元電位を有するので、この両酸化剤を合わせた濃度が2~30g/Lとなるように電気分解する。
この実施形態では、図1に示す装置を使用するものとして説明したが、電気分解する方法としては特に制限はなく、図1の装置に限定されない。
<電解硫酸浴での処理条件>
電解硫酸による陽極酸化処理の浴温度(処理温度)は、5~30℃が好ましい。処理温度が低過ぎると処理時間が長くなり、高過ぎると酸化皮膜最表面の酸化アルミニウムの溶解速度が速くなり、表面が荒れるだけでなく、空隙率が大きくなり、硬度が低くなり、耐食性も低下する。
また、陽極酸化処理の電流密度は1.0~2.5A/dmが好ましい。電流密度が低過ぎると処理時間が長くなり、高過ぎるとアルミニウムの溶解速度が速くなり欠陥での空隙率が大きくなる。定電流で陽極酸化するため電圧はなりゆきだが、30~50Vの範囲となる。
電解硫酸を用いる場合、電解セル6で生成された電解硫酸は、ポンプ5によって処理浴導入路11Aを通って処理槽2内に送られ、これとともに処理槽2内から送出される処理浴が処理浴送出路11Bを通って電解セル6内に送られて電解に供される。
処理槽2内では、処理浴導入路で送られた電解硫酸の酸化剤濃度が次第に低下するものの、電解セル6に処理浴送出路11Bで送られて再度電解を受けることによって酸化剤濃度が上昇するので、処理槽2内の酸化剤濃度を維持することができる。
処理槽2内では、直流電源器3によってアルミニウム板8、陰極9間に電圧を印加することで処理浴による電解処理が行われ、アルミニウム板の表面に陽極酸化処理膜が形成される。この際に、エアポンプ4で送られるエアを気泡発生器10によって処理浴内に気泡を発生させるようにしてもよい。気泡の発生によって処理効率を向上させることができる。
[硬度及び弾性率測定]
<ナノインデンテーション試験>
得られた陽極酸化皮膜においては良好な硬度および弾性率を有しており、アルミニウム合金板では優れた耐食性を示す。
なお、硬度、引張強度、耐摩耗性等の特性を機械特性と呼ぶ。薄膜の強度を求める手法として昨今ナノインデンテーション法が注目されている。ナノインデンテーション法は、装置によって計測される物理量(荷重と押込み深さ)から、計算のみで硬度を評価する手法で、接触剛性と接触深さを求め、硬度及び弾性率を計算する。
ナノインデンテーション法による硬度、弾性率の測定は、国際規格(ISO14577)計装化押し込み試験として標準化されているが、ISOに準拠した方式では特定の深さ1点での硬度及び弾性率が計算されるのみなので、押し込み試験時の材料の影響をとらえることができない。そのため、深さに対し硬度および弾性率がどのように変化するかを見ることでき、押し込み試験時の材料の影響をとらえることができる連続剛性測定法(CSM法)と呼ばれる試験手法で測定することができる。
本実施形態の陽極酸化処理方法は、ケイ素が添加されたアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜を生成するために、100ボルト以上の最高出力を有する直流波形を変更できる電源を用いることなく、硬度及び弾性率に優れた陽極酸化皮膜を生成することを可能にしている。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの記載により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す装置を用いて、電解セルに電流を流さない状態で、ダイキャストで作製されたダイキャスト合金ADC12板(Si含有率11.6質量%)を、硫酸浴を用いて陽極酸化処理し、次いで沸騰水封孔処理を行った。
<硫酸浴での陽極酸化処理>
処理槽2の仕様及び処理条件は以下の通りである。
・処理槽2の容積:25L
・ADC12板(アルミニウム合金板8)の寸法:100mm×50mm×厚さ3mm
・陰極9の寸法:100mm×50mm×厚さ3mm
・陰極9の材質:JIS A1050(工業用純アルミニウム)
・アルミニウム合金板と陰極との距離:20mm
・電流密度:1.5A/dm
・陽極酸化浴
硫酸濃度:15質量%
浴温度:20℃
・処理時間:60分
処理槽2に硫酸濃度15質量%の硫酸溶液を収容し、電解セル6に電流を流さず、循環ポンプ5を作動させ、処理槽2に陽極としてのアルミニウム合金板8を浸漬し、陰極9との間に電流3.0A(電流密度1.5A/dm)を通じて陽極酸化を開始し、60分間陽極酸化を継続した。その後、表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金板8を処理槽2から取り出し、純水で洗浄した後乾燥した。この陽極酸化処理条件を表1に示す。
この陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金板8に対し、続けて沸騰水封孔処理を行った。
<沸騰水封孔条件>
・処理温度:90℃
・処理時間:30分
<ナノインデンテーション試験>
続いて硬度及び弾性率の測定として、ナノインデンテーション試験を実施した。装置及び測定条件は以下の通りであり、圧子を深さ5μmまで押し込み、押込み深さ1~2μmのデータを平均し算出した。その結果を表2に示す。
・測定装置:Keysight Technologies社製Nano Indenter G200
・測定方法:ナノインデンテーション法(連続剛性測定法)
・使用圧子:ダイヤモンド製Berkovich(三角錐型)
・測定雰囲気:室温、大気中
[実施例2]
実施例1において、以下の処理条件を変更し、陽極酸化処理を行った。次いで実施例1と同じとして沸騰水封孔処理、ナノインデンテーション試験を実施した。陽極酸化処理条件を表1に、硬度及び弾性率の測定結果を表2に示す。
・硫酸濃度:30質量%
・電流密度:2.0A/dm
・処理時間:50分
[実施例3]
実施例1において、硫酸を電気分解して得られる電解硫酸浴を用いて陽極酸化処理を行い、次いで実施例1と同じとして沸騰水封孔処理、ナノインデンテーション試験を実施した。陽極酸化処理条件を表1に、硬度及び弾性率の測定結果を表2に示す。
<酸化剤の生成>
硫酸を電気分解する際の処理条件を以下に示す。
・電解セル6の容積:0.5L
・陽極6A及び陰極6Bの材質:ダイヤモンド電極(直径150mm)
・バイポーラ電極6Cの材質:ダイヤモンド電極(直径150mm)
・電流密度:15.0A/dm
・溶液循環流量:3L/分
<電解硫酸浴での陽極酸化処理>
硫酸浴での陽極酸化処理と異なる処理条件を以下に示す。
・電流密度:0.8A/dm
・硫酸濃度:20質量%
・酸化剤濃度:5g/L
・処理時間:50分
[実施例4~6]
沸騰水封孔処理は実施例1~3と同じとして、陽極酸化処理条件を表1に示すように種々変更し、ナノインデンテーション試験を実施した。硬度及び弾性率の測定結果を表2に合わせて示す。
[比較例1~6]
比較のために、陽極酸化処理条件を表1に示すように種々変更した。その変更点をまとめると、本発明の処理方法の範囲より、比較例1では処理時間が長く、比較例2では硫酸濃度が高く、比較例3では処理時間が長くかつ硫酸濃度が高く、比較例4では処理時間が長く、比較例5では処理時間が長くかつ膜厚が厚く、比較例6では処理時間が長くかつ硫酸濃度が高い処理を行った。続いてナノインデンテーション試験を実施した。その硬度及び弾性率の測定結果を表2に合わせて示す。
Figure 2022155917000002
Figure 2022155917000003
表2から明らかな通り、実施例1~6のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法を実施すると、優れた硬度及び弾性率を得ることができることがわかった。
1 処理装置
2 処理槽
3 直流電源器
4 エアポンプ
5 循環ポンプ
6 電解セル
6A 陽極
6B 陰極
6C バイポーラ電極
7 電解用直流電源器
8 アルミニウム合金板
9 陰極
10 気泡発生器
11A 処理浴導入路
11B 処理浴送出路
すなわち、本発明のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法のうち、第1の形態は、ケイ素が4.0~24.0質量%添加されたアルミニウム合金の陽極酸化処理をする際、硫酸濃度15~35質量%である硫酸溶液を電気分解して得られる溶液を電解硫酸浴とし、前記電解硫酸浴中で、電流密度1.0~2.5A/dm 処理時間を60分以内として前記陽極酸化処理を行い、前記陽極酸化処理時間内に10μm以上25μm以下の膜厚の陽極酸化皮膜を生成させる。
本発明の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材の発明は、ケイ素を4.0~24.0質量%含有するアルミニウム合金の表面に、膜厚が10μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜が形成されており、前記陽極酸化皮膜が硬度200MPa以上、弾性率が15GPa以上である。

Claims (9)

  1. ケイ素が4.0~24.0質量%添加されたアルミニウム合金の陽極酸化処理をする際、処理時間を60分以内とし、前記処理時間内に10μm以上25μm以下の膜厚の陽極酸化皮膜を生成させるアルミニウム合金の陽極酸化処理方法。
  2. 電流密度1.0~2.5A/dmで陽極酸化処理を行う請求項1に記載のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法。
  3. 硫酸濃度15~35質量%の硫酸浴を用いる請求項1または2に記載のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法。
  4. 硫酸溶液を電気分解して得られる溶液を電解硫酸浴として前記陽極酸化処理をする請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法。
  5. 前記電解硫酸浴の酸化剤濃度が2~30g/Lである請求項4に記載のアルミニウム合金の陽極酸化処理方法。
  6. ケイ素を含有するアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成されており、前記陽極酸化皮膜が硬度105MPa以上、弾性率が10.5GPa以上である陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材。
  7. 前記酸化皮膜の硬度200MPa以上、弾性率が15GPa以上である陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材。
  8. 前記アルミニウム合金が、質量%でケイ素を4.0~24.0質量%含有している請求項6~8のいずれか1項に記載の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材。
  9. 前記アルミニウム合金がダイキャスト合金である請求項8記載の陽極酸化皮膜を有するアルミニウム合金材。
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