JP4868020B2 - アルミニウムの陽極酸化方法、および陽極酸化アルミニウム - Google Patents
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Description
2Al3+ + 3O2- → Al2O3 (アルマイト皮膜)
に従って、ジュール熱の発生を伴いながら酸化させ、深さ方向に、Al2O3 皮膜(アルマイト皮膜)を生成するものである。即ち、図1に示すように、この際被処理物1におけるアルマイト皮膜2は処理面3において体積膨張を示すため、無処理面4に対し、上下に成長した皮膜となる。また、被処理物10に出来る皮膜は、通常図2に示すように細孔11と呼ばれる孔の空いた、セル径12を有するセル形状を持つ多孔質層13とその下のバリヤー層14からなる構造を示す。
皮膜厚さ(μm)=K(皮膜生成係数)× 電流密度(A/dm2)× 電解時間(分)
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、以下の実施例、比較例および参考例を実施した。図3に示されるアルマイト処理装置において、アルマイト処理槽20(内側水平断面の形状;長方形、内側水平断面の面積;100cm2)が恒温槽21中に備えられており、恒温槽21中の電解液22がポンプ23によって所定の流量(約3L/分、又は必要に応じてそれ以下)で汲み上げられ配管24の開口部32,33から、アルマイト処理槽20の底部から上方に向けて噴出されて、アルマイト処理槽20内を上昇(被処理物29の外表面側での電解液25の平均上昇速度;約0.5cm/秒、又は必要に応じてそれ以下)し、アルマイト処理槽20中の電解液25がアルマイト処理槽20の上部からあふれ出て恒温槽21に戻る。恒温槽21中の電解液22は、温度調節機26に連結された冷却管27によって冷却されて一定温度に保たれている。アルマイト処理槽20内の電解液25おいて、陽極の先に固定された被処理物29の表面が、陰極30,31との間(例えば、電極28,30の間および電極28,31の間の距離;約50mm、各陰極30,31の被処理物29側面積の、被処理物29のその陰極側の外表面積に対する比;約2、又は必要に応じてそれ以上)で陽極酸化される。尚、被処理物29の外表面上には、被処理物29の外表面の温度を測定するための熱伝対が固定されている(図示せず)。
本願における表面粗度は、例えば内面が見えるように、先端周辺部で部分的に半分を切り取った円筒形の形状を有する被処理物を用いて、その内面を触針式の表面粗度計(東京精密社製の型番SURFCOM480A)を用いて測定した。
本願における表面硬度の測定では、アルマイト皮膜の膜厚が2.5μm程度であるため、通常のビッカース硬度計では圧痕が皮膜厚さより大きくなり測定が困難であるので、ここでは2.5μmでも硬度が測定できる超微小硬度計(島津製作所社製の型番DUH−W201S)を用いて測定した。尚、超微小硬度計とビッカース硬度計では測定原理が異なり、得られる値も異なるため、まず、あらかじめ膜厚を約10μmに作成した、硬度を変えた種々のアルマイト皮膜サンプル40を用いて、図4(a)に示すように荷重41を加え、そのときにサンプル40の表面に形成された圧痕の大きさ(圧痕の広がり)からビッカース硬度値を求め、また図4(b)に示すように、負荷時においてサンプル40の表面での圧痕による変位量(圧痕の深さ)と荷重の関係を求め、それによって図5に示すような超微小硬度計による硬度とビッカース硬度の相関関係式を求め、ビッカース硬度値に換算した。
(超微小硬度計による硬度)=1.3057×(ビッカース硬度)+24.069
尚、R2=0.9055は良い相関があることを示すものである。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、アルミニウムが80.7〜88.9重量%、シリカが9.6〜12.0重量%のアルミニウム合金からなる円筒形の形状(外径;18mm、内径;9.5mm、長さ;55mm)を有する被処理物29を、硫酸(H2SO4)を200g/Lの濃度で含み、溶存Al3+が3〜4g/Lの電解液中、被処理物29の外表面の初期温度が15℃(終期温度が80℃以下)で、電流密度が0.3A/dm2(比較例1)、1A/dm2(比較例2)、2A/dm2(比較例3)、10A/dm2(比較例4)および20A/dm2(比較例5)で、陽極酸化処理を行った。尚、ポンプ23による流量は、3L/分(被処理物29の外表面側での電解液25の平均上昇速度;約0.5cm/秒)であった。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、アルミニウムが80.7〜88.9重量%、シリカが9.6〜12.0重量%のアルミニウム合金からなる円筒形の形状(外径;18mm、内径;9.5mm、長さ;55mm)を有する被処理物29を、アルマイト処理槽20の、シュウ酸((COOH)2・2H2O)を50g/L((COOH)2で36g/L)の濃度で含み、溶存Al3+が1g/L以下の電解液25中で、被処理物29の外表面の初期温度を26℃(終期温度が80℃以下)、電流密度を10A/dm2、ポンプ23による流量を0L/分(被処理物29の外表面側での電解液25の平均上昇速度;約0cm/秒)(参考例1)、2L/分(電解液25の平均上昇速度;約0.3cm/秒)(参考例2)、3L/分(電解液25の平均上昇速度;約0.5cm/秒)(参考例3)、5L/分(電解液25の平均上昇速度;約0.8cm/秒)(参考例4)及び10L/分(電解液25の平均上昇速度;約1.7cm/秒)(参考例5)として、陽極酸化処理を行った。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、アルミニウムが80.7〜88.9重量%、シリカが9.6〜12.0重量%のアルミニウム合金からなる円筒形の形状(外径;18mm、内径;9.5mm、長さ;55mm)を有する被処理物29を、シュウ酸((COOH)2・2H2O)を50g/L((COOH)2で36g/L)の濃度で含み、溶存Al3+が1g/L以下の電解液中、被処理物29の外表面の初期温度が26℃(終期温度が80℃以下)で、ポンプ23による流量が3L/分(被処理物29の外表面側での電解液25の平均上昇速度;約0.5cm/秒)で、電流密度が1A/dm2(比較例6)、10A/dm2(比較例7)、40A/dm2(実施例1)、60A/dm2(実施例2)、80A/dm2(実施例3)、100A/dm2(実施例4)、120A/dm2(実施例5)および150A/dm2(実施例6)で、陽極酸化処理を行った。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、アルミニウムが80.7〜88.0重量%、シリカが9.6〜12.0重量%のアルミニウム合金からなる円筒形の形状(外径;18mm、内径;9.5mm、長さ;55mm)を有する被処理物29を、以下の表1に示す条件下で陽極酸化処理を行った。尚、被処理物29の外表面の初期温度が18℃(終期温度が80℃以下)で、ポンプ23による流量は、3L/分(被処理物29の外表面側での電解液25の平均上昇速度;約0.5cm/秒)であった。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、電解液25中のシュウ酸濃度を、50g/L(実施例18)、80g/L(実施例19)、100g/L(実施例20)とした以外は、上記の実施例7と同様の条件下で陽極酸化処理を行った。その結果、図11に示すように、実施例18〜20において、50g/L〜100g/Lの間では大きな変化が無いことが判明した。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、被処理物29の外表面の初期温度を、15℃(終期温度が約45℃)(実施例21)、20℃(終期温度が約55℃)(実施例22)、26℃(終期温度が約70℃)(実施例23)、40℃(終期温度が約90℃)(比較例12)とした以外は、上記の実施例7と同様の条件下で陽極酸化処理を行った。その結果、図12に示すように、実施例21〜23において、被処理物29の外表面の初期温度を15℃まで下げると面粗度がばらつき易い傾向が少し見られたが、実用的には特に問題が無い範囲であると思われる。但し、被処理物29の外表面の初期温度を40℃とした比較例12では、終期温度が約90℃となり表面硬度の低下が見られた。
図3に示されるアルマイト処理装置を使用して、アルミニウムが80.7〜88.9重量%、シリカが9.6〜12.0重量%のアルミニウム合金からなる円筒形の形状(外径;18mm、内径;9.5mm、長さ;55mm)を有する被処理物29を、シュウ酸((COOH)2・2H2O)を50g/L((COOH)2で36g/L)の濃度で含み、溶存Al3+が1g/L以下の電解液中で、被処理物29の外表面の初期温度が15℃(実施例24)、20℃(実施例25)、25℃(実施例26)で、ポンプ23による流量が3L/分(被処理物29の外表面側での電解液25の平均上昇速度;約0.5cm/秒)で、電流密度が80A/dm2の条件下で、陽極酸化処理を行って、被処理物29の外表面の経時変化を求めた。その結果、図13に示すように、被処理物29の外表面の終期温度が、実施例24では約50℃、実施例25では約60℃、実施例26では約75℃であり、いずれもアルマイト皮膜の厚さが1〜4μmで、表面粗度が2.4μm以下の範囲内にあり、目的とする陽極酸化アルミニウムが得られた。
Claims (2)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなる被処理物(29)を電解液(25)中で陽極酸化して該被処理物(29)の表面にアルマイト皮膜を形成することによる、該アルマイト皮膜の厚さが0.5〜5μm、平均表面粗度が2.4μm以下、ビッカース硬度が250Hv以上である、陽極酸化アルミニウムの製造方法であって、該電解液(25)に2個以上のカルボキシル基を持つ有機酸から選択される少なくとも一種の酸を含有せしめ、該電解液(25)が該被処理物(29)の少なくとも外表面側を15cm/秒以下の平均速度で移動し、該被処理物(29)の外表面の温度が80℃以下で、電流密度が10〜170A/dm2の範囲内における条件下で該陽極酸化を行うことを特徴とする、陽極酸化アルミニウムの製造方法。
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなる被処理物(29)を、2個以上のカルボキシル基を持つ有機酸から選択される少なくとも一種の酸を含有させた電解液(25)中で、該電解液(25)が該被処理物(29)の少なくとも外表面側を15cm/秒以下の平均速度で移動し、該被処理物(29)の外表面の温度が80℃以下で、電流密度が10〜170A/dm2の範囲内における条件下で陽極酸化して該被処理物(29)の表面にアルマイト皮膜を形成させた、陽極酸化アルミニウムであって、形成された該アルマイト皮膜の厚さが0.5〜5μm、平均表面粗度が2.4μm以下、ビッカース硬度が250Hv以上である、陽極酸化アルミニウム。
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