JP3004622B2 - アルミニウムの高速陽極酸化方法 - Google Patents

アルミニウムの高速陽極酸化方法

Info

Publication number
JP3004622B2
JP3004622B2 JP10059036A JP5903698A JP3004622B2 JP 3004622 B2 JP3004622 B2 JP 3004622B2 JP 10059036 A JP10059036 A JP 10059036A JP 5903698 A JP5903698 A JP 5903698A JP 3004622 B2 JP3004622 B2 JP 3004622B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
flow rate
electrolytic
electrolytic bath
current density
aluminum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP10059036A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11236696A (ja
Inventor
重夫 星野
哲 菊池
信幸 佐藤
誠 小山田
Original Assignee
中小企業事業団
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 中小企業事業団 filed Critical 中小企業事業団
Priority to JP10059036A priority Critical patent/JP3004622B2/ja
Publication of JPH11236696A publication Critical patent/JPH11236696A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3004622B2 publication Critical patent/JP3004622B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルミニウムの陽極
酸化方法に関し,特にこれを高速に行うアルミニウムの
高速陽極酸化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム(アルミニウム合金,アル
ミニウムダイカストを含む,以下同じ)に陽極酸化皮膜
を形成するために陽極酸化を施すとき,特に硬質の陽極
酸化皮膜を厚膜に形成するために,陽極酸化を高速で行
う場合には,皮膜厚さの不均一化や皮膜が部分的な焼け
たような外観不良を招来する焼け(皮膜やけ)を発生す
ることが多い。
【0003】この焼けの発生原因は,本発明者中の星野
がそのメカニズムを解明しており,これによれば,例え
ばしゅう酸の電解浴においては陽極酸化皮膜の成長に伴
って,電解浴成分が皮膜溶解に消費されるため,陽極酸
化皮膜のポア底部と表面近傍との間で電解浴成分の濃度
勾配ができ,電解浴成分は濃度拡散によってポア底部に
供給され,陽極酸化皮膜成長のアノード電流は電解浴成
分の拡散律速となるところ,陽極酸化皮膜が厚くなるに
従ってポア底部の濃度が低下し,皮膜溶解作用も下がる
が,電解浴成分の拡散は温度によって変化し,被処理物
は浴電圧のジュール熱を発生しているため,浴温との温
度差の不均一を生じ,温度差の大きい部分に局部的に電
流集中が流れることによるものとされる。
【0004】これに対して同じく星野は,特開昭56−
158893号(特公昭60−23196号)により,
星野法といわれる,焼け発生防止の高速陽極酸化方法を
提案済であり,これによれば,用いる電流密度と焼けの
発生する陽極酸化皮膜の厚さの関係を解明することによ
り,これに基づく電流密度の時間的関係を示す,一般に
焼け曲線(焼け発生曲線)として知られる曲線に従い,
例えば連続的又は段階的に電流密度を急上昇するように
高い初期電流密度の定電流による陽極酸化をスタート
し,電解時間が焼け曲線に近づいた際に,これに近接し
又はその折線に沿って電流密度を連続的又は段階的に低
減して陽極酸化を行うことにより,焼け領域を回避して
可及的な短時間で被処理物に陽極酸化を施す陽極酸化方
法であり,従前に長時間の電解時間を要した,厚膜にし
て硬質のアルミニウムやそのダイカストに対する陽極酸
化皮膜を,短時間の高速陽極酸化によって,均一膜厚に
して外観良好の焼けのない状態に形成し得るとするもの
である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】星野法は焼けの発生を
防止し,高速処理を可能とする陽極酸化方法として高い
評価を受けているが,アルミニウムの用途の拡大とその
陽極酸化皮膜の硬質化,厚膜化の要請に基づいて,これ
を大量処理に適するように工業的に実用化しようとする
と,なお焼けの発生を防止し得ないことがあり,特に比
較的大きな電解槽を用いたり,被処理物の形状が,例え
ばアルミニウムダイカストのエンジンの如くに,比較的
複雑形状のものであったりすると,上記星野法に従って
電流密度を低減制御しても,得られる陽極酸化皮膜に焼
けの発生が見られることがあり,実用化に際しては,こ
れを改良して,歩留りを高度に確保する必要がある。
【0006】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
で,その解決課題とするところは,第1に上記星野法に
よって提案された高速陽極酸化方法を工業的に実用化し
得るように改良し,被処理物に焼けの発生を防止し,高
度な歩留りを安定して確保し得るようにしたアルミニウ
ムの高速陽極酸化方法を提供するにあり,第2にこれを
可及的容易且つ確実になし得るようにするにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題に添って
工業的に実用化しようとした際の焼けの発生原因を更に
究明すると,星野法はエア攪拌を併用して所定の初期電
流密度の低減制御を行うものとするが,電解槽を実用化
に適した容積のものとすると,エア攪拌のエアが泡とな
って上方に上昇放出するため,電解槽内の攪拌効果が著
しく不充分となり,被処理物に生じるジュール熱が被処
理物に滞留し易くなる結果,電解浴との温度差のバラツ
キを生じる傾向が出て,特に複雑形状の被処理物にあっ
てはこの傾向が拡大するため,浴電圧によるジュール熱
との関係において被処理物に電流の局部的集中を招くこ
とがあること,その対策として電解浴の攪拌を行うこと
で可及的にジュール熱を放熱して電解浴との温度差を平
準化し得るので,電解浴を攪拌するについて,被処理物
に対する攪拌効果を得られるように,電解浴自体を循環
することによって流速を付して攪拌する,電解浴循環攪
拌が被処理物の上記ジュール熱による影響を防止する上
で望ましいこと,更に電解浴循環攪拌を行うについて
は,電解浴が硫酸,しゅう酸等の強酸のものであるた
め,特に電解槽の壁面から離れた被処理物に対する流速
を含めた電解浴中の流速は意識されないが,被処理物に
対する電解浴流速を30cm/sec 以上300cm/sec 以
下に規制し,その流速管理を行うことが,上記ジュール
熱による影響を解消する上で望ましく,このときアルミ
ニウムの組成,形状等によっては,必ずしも上記星野法
に厳密に準拠することなく,このうち電流密度の連続的
又は段階的な低減制御下で陽極酸化を行うことが可能で
あること,このとき上記低減制御を行う初期電流密度
は,これを急速スタ−トによって一気に急激に上昇し,
又はソフトスタ−トによって緩やかに上昇する双方が適
用可能であること,の4点についての知見を得るに至
り,本発明を行ったものである。
【0008】即ち請求項1に記載の発明は,上記知見に
基づいて,これを,被処理物に対する電解浴流速を30
cm/sec 以上300cm/sec 以下に規制した電解浴循環
攪拌の流速管理下において所定の初期電流密度を低減制
御して上記被処理物に陽極酸化を施すことを特徴とする
アルミニウムの高速陽極酸化方法とし,請求項2に記載
の発明は,これに加えて上記所定の電流密度の低減制御
を,焼け曲線を基準とする形態とするように,これを上
記所定の初期電流密度の低減制御を,焼け曲線に沿って
行うことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムの
高速陽極酸化方法とし,請求項3に記載の発明は,同じ
く上記に加えて,上記初期電流密度の上昇の形態を示す
ように,これを上記所定の初期電流密度を,連続的又は
段階的に電流密度を急上昇する急速スタ−ト又は連続的
又は段階的又は段階的に緩上昇するソフトスタ−トによ
って上昇することを特徴とする請求項1又は2に記載の
アルミニウムの高速陽極酸化方法とし,請求項4乃至8
に記載の発明は,それぞれこれに加えて,上記第2の課
題に添って,このうち請求項4に記載の発明は,電解浴
中に流速計を用いるとともに電解浴循環攪拌のために電
解液噴出ノズルを用いるようにして,その相互によって
上記流速管理を行うように,これを,上記電解浴循環攪
拌の流速管理を,電解浴の被処理物位置又はその近傍の
流速を陽極酸化前に測定する位置可動又は定位置にして
多数点を測定可能な流速計と,電解液を電解槽内に噴出
する多数の電解液噴出ノズルを有する電解浴循環系とを
用い,上記流速計の流速データに基づき電解液噴出ノズ
ルからの電解浴噴出流量の調整によって行うことを特徴
とする請求項1,2又は3に記載のアルミニウムの高速
陽極酸化方法とし,請求項5に記載の発明は,その流速
計を電解浴に適して,その流速を測定するに好適とする
ように,これを,上記流速計を,熱電対間の温度差を電
位差計で測定する熱式流速計で行うことを特徴とする請
求項4に記載のアルミニウムの高速陽極酸化方法とし,
請求項6に記載の発明は,電解浴循環攪拌に上記電解液
噴出ノズルを用いるについて,上記流速を確保するに好
適とするように,これを,上記多数の電解液噴出ノズル
を,電解槽の対向する壁面にそれぞれ幅方向及び深さ方
向に配置してなることを特徴とする請求項4又は5に記
載のアルミニウムの高速陽極酸化方法とし,請求項7に
記載の発明は,電解浴循環攪拌の流速管理を,電解浴に
適して,電解槽内の流速分布図を肉視によって確認して
行い得るように管理に好適な流速管理装置を用いるよう
に,これを,上記電解浴循環攪拌の流速管理を,流速管
理装置を用いて行うとともに該流速管理装置を,電解槽
内に設置した位置可動又は定位置にして多数点を測定可
能な,熱電対間の温度差を電位差計で測定する熱式流速
計と,該熱式流速計の流速データを電解槽内の流速分布
図として肉視可能にディスプレイ表示するコンピュータ
と,上記電解槽内に電解液を循環噴出するように電解槽
内に設置した多数の電解液噴出ノズルの噴出流量を制御
可能な流量計とを備えて構成してなることを特徴とする
請求項1,2又は3に記載のアルミニウムの高速陽極酸
化方法とし,請求項8に記載の発明を,電流密度の低減
制御の自動化を促進し得るように,上記所定の初期電流
密度の低減制御を,被処理物の材質因子及び形状因子を
関数条件とし,陽極酸化皮膜の目標膜厚を入力すること
により電流の関数制御を行うコンピュータによって制御
することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又
は7に記載のアルミニウムの高速陽極酸化方法とし,こ
れらをそれぞれ発明の要旨として,上記第1又は第2の
課題解決の手段としたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において被処理物に対する
電解浴流速は,上記のとおり30cm/sec 以上300cm
/sec 以下に規制する,この範囲中から選定して設定し
た所定の流速によるものとするが,これは30cm/sec
を下廻ると,上記ジュール熱の影響を解消すること,即
ちジュール熱による被処理物の温度上昇を防止して,そ
の放熱を行うことによって被処理物の全体に亘って電解
浴との温度差を平準化し,これを解消し,電流の局部的
な集中を防止することが,困難になり,焼け発生の可能
性を残すことになる一方,300cm/sec を上廻ると,
電解浴中の被処理物が過大な抵抗を受け,流速に抗し切
れずに治具(ラック)から外れて電解浴中に落下したり
するトラブルの可能性を招くことになるからである。
【0010】この点上記ジュール熱の影響を解消するた
めには,一般に上記30cm/sec を下限とし,好ましく
は50cm/sec 以上,更に好ましくは80cm/sec 以上
とすることにより凹凸面を有する複雑形状のものについ
ても可及的にその全体に亘る電解浴との温度差を平準化
し,これを解消し得るものとなり,特に好ましくは10
0cm/sec 以上とすることにより凹凸面が著しく多いよ
うな極めて複雑形状のものについても可及的にその全体
に亘る電解浴との温度差を平準化し,これを解消し得る
ものとなる一方,被処理物の治具外れの防止を行うため
には,治具の改良等の対処によって一般に300cm/se
c を上限とするが,好ましくは250cm/sec 以下とす
ることにより,通常用いられる治具を用いても,治具外
れの可能性を解消し得ることになり,従って本発明にあ
って被処理物に対する電解浴流速は,これを50cm/se
c 以上250cm/sec 以下の範囲とすることが好まし
く,80cm/sec 以上250cm/sec 以下とすることが
更に好ましく,また100cm/sec 以上250cm/sec
以下の範囲とすることが特に好ましい。
【0011】電解浴流速は,上記凹凸のある形状のもの
を含めて被処理物に対するものとされるが,陽極酸化の
電解中は通電がなされるため,一般には陽極酸化前の被
処理物設置状態又は更に被処理物設置前の非通電状態で
の流速によるものとすればよく,この場合,特に後者に
あっては被処理物の設置による抵抗で流速が幾分低下す
ることがあるが,その形状,大きさ,更には数等を勘案
して上記流速を得られるようにその管理を行えばよく,
現実にはこのように被処理物に対する直接の流速を厳密
に測定し,また管理することなく,上記流速の範囲に含
まれるように流速を管理することによって,流速の確保
とその効果を得ることができる。
【0012】電解浴流速を管理するには,電解浴中に流
速計を用いてその流速を測定することが,適格な管理を
行う上で有効であり,このとき流速計は被処理物位置又
はその近傍の流速を陽極酸化前,即ち上記非通電状態で
測定する可動又は多数のものとし,可動又は多数のもの
とすることにより,被処理物位置の流速を,例えばその
数,大きさ,形状に応じて2次元的乃至3次元的に測定
することが可能となり,流速管理の向上を期することが
できる。
【0013】流速計は,電解浴として硫酸,しゅう酸等
の強酸性液中においてその流速を測定するものとして,
これに耐えるものとすることが好ましく,例えば熱電対
間の温度差を電位差計で測定する熱式流速計を用いるの
が好適であり,即ち図示して後述する如くに,流速検出
用と液温検出用の一対の熱電対を直列に結線し,流速検
出用の熱電対を,例えばニクロム線を用いて抵抗加熱す
ると一対の熱電対間に温度差を生じるところ,その温度
差は,電解浴の流速によって変化するから,流速に対す
る温度差の変化率を予め求め,これを電位差として設定
することにより,その電位差として,またはこれを更に
直接的な流速として換算することによって測定するよう
にしたものを用いることにより,例えば熱電対を,熱伝
導性のよい金属,例えば陽極酸化することによって絶縁
措置を施したアルミニウムに埋込み,エポキシ樹脂被膜
を形成したニクロム線をその流速検出側の表面に巻付け
設置して,耐薬品性を有する検出部を形成して電解浴中
に使用するについて耐久性を有するとともに可及的に高
精度の流速を測定し得るものとすることができる。
【0014】電解浴流速を得るには,エア攪拌に代えて
(もとより必要あればエア攪拌を併用することもでき
る)電解浴循環攪拌を行うものとする必要があり,この
電解浴循環攪拌を行うために電解浴循環系を電解槽内又
は電解槽外に用い,電解浴を循環することにより,電解
浴に流速を与えるようにすればよいが,このとき上記被
処理物に対する流速は,比較的速いものであるため,電
解浴を電解槽内に復帰するためには,電解液を噴出する
ノズルを用いて,加圧下で槽内に強く噴出して,電解浴
に噴流を与えることが有効であり,このため,例えば噴
出方向にラッパ状に拡開した多数の電解液噴出ノズルを
電解浴循環系に配設して,可及的に電解浴の全体に亘っ
て均一な流速を付与するように電解液を噴出して,電解
浴に噴流を生じるようにすることが好ましい。
【0015】このとき電解液噴出ノズルは,例えば電解
槽の対向する壁面にそれぞれ幅方向及び深さ方向に配置
するようにすることにより,電解槽内にその全体に亘る
対向する壁面からの均一な噴流を得られることになり,
例えば電解槽の上記対向する壁面に沿って直列多数に配
置した被処理物に対して,その両面を含む全面に亘る流
速を確保し得るようになり,更に電解液噴出ノズルの方
向を可変とすることにより,上記噴流の均一性を向上す
ることができ,例えば上記対向する壁面に沿って並列多
数に配置した被処理物に対しても,その流速を確保し得
るようになる。
【0016】位置可動又は定位置にして多数点を測定可
能な流速計と,電解液噴出ノズルを有する電解浴循環系
とを用いたとき,電解浴循環攪拌の管理は,流速計を電
解槽内で移動し又は多数点で同時に電解槽内の電解浴流
速,特に被処理物位置又はその近傍の電解浴流速を測定
し,その流速計の流速データに基づき電解液噴出ノズル
からの電解浴噴出流量の調整によってこれを行うものと
すればよく,電解浴噴出流量の調整は,噴出圧の調整と
して電解浴循環系のポンプの加圧力の調整や電解液噴出
ノズルの絞り込みの調整等によってこれを行うように
し,また必要に応じて流速計の流速データに基づき,上
記ポンプの加圧力の調整や電解液噴出ノズルの絞り込み
の調整を自動的に行うように,これをコンピュータ管理
するようにしてもよい。
【0017】上記電解浴循環攪拌の流速管理は,これを
上記熱電対を用いた熱式流速計を備えた流速管理装置を
用いて行うのが,簡便にして好ましいが,このとき流速
管理装置は,上記熱式流速計に加えて,その流速データ
を電解槽内の流速分布図として肉視可能にディスプレイ
表示するコンピュータと,上記電解槽内に設置した多数
の電解液噴出ノズルの噴出流量を制御可能な流量計とを
備えたものとして構成することができ,このときコンピ
ュータでディスプレイ表示した流速分布図を肉視するこ
とによって,流量計の流量目盛を,例えばそのバルブを
手動操作することによって調整し,或いは更にコンピュ
ータ制御による自動操作によって調整して電解液噴出ノ
ズルの噴出流動を制御するようにすることが可能とな
り,またこのとき上記電解槽内に設置した電解液噴出ノ
ズルを噴出方向固定のものに代えて,噴出方向可動のも
のとして,これを上記流速分布図に基づき,手動操作し
又はコンピュータ制御による自動操作によって操作し
て,併せて噴出方向を変化させるようにしてもよい。
【0018】被処理物の陽極酸化は,所定の初期電流密
度を低減制御する陽極酸化方法によってこれを行えばよ
く,このとき所定の初期電流密度は,上記星野法のよう
に,可及的短時間で,例えば急傾斜の直線的,2次曲線
の如くに,連続的又は段階的に高い所定の電流密度に一
気に急上昇するように,急速スタートを行うようにする
ことができるが,例えば建浴後の電解浴温度が低いとき
や電解浴の組成上,その濃度が薄いとき等のように電解
浴の導電性が低下する場合等,必要に応じて,上記急速
スタートに代えて,例えば緩傾斜の直線的,2次曲線的
等の如くに,連続的又は段階的に所定の電流密度に緩上
昇するように,ソフトスタートを行うようにすることが
でき,一方このようにスタートした所定の初期電流密度
の低減制御は,これを逆に連続的又は段階的に焼け曲線
を下廻って,焼け領域を回避するように陽極酸化を行え
ばよいが,このときこの低減制御は,例えば上記星野法
のものに準拠して,関数制御によって初期電流密度から
焼け曲線に近接し又はその折線に沿ってこれを連続的又
は段階的に低減して,同じく焼け領域を回避した陽極酸
化を行うようにすればよく,またアルミニウムの高合金
材の如くに一部の被処理物の場合に,電解電圧が高くな
りすぎる傾向があることがあるが,このような場合に
は,被処理物に印加する電流にパルス電流を用い,或い
は電流反転電流を用いて,電解電圧の過大化とこれに基
づく焼け発生の可能性を併せて解消するようにすること
が好ましく,このパルス電流や電流反転電流を印加する
とき,焼け曲線に沿う低減制御は,都度電流密度を所定
の値まで漸増した上,段階的に低減していく関数制御に
よって,順次に全体としての低減を行うようにこれを行
うのがよく,上記制御のインターバルは,焼け曲線に沿
う関数に従って30sec 以下としてその出力制御を行う
ようにすれば,焼けの発生の可能性を完全に解消し且つ
極めて高速の陽極酸化を行うことが可能となる。
【0019】更に所定の初期電流密度の低減制御は,こ
れを被処理物の材質因子及び形状因子を関数条件とし,
陽極酸化皮膜の目標膜厚を入力することにより電流の関
数制御を行うコンピュータによって制御するものとする
ことができ,このとき材質因子(例えば合金組成)や形
状因子(例えば,板,型材,鋳造品)をコンピュータの
記録装置より表示装置に表示選択して,上記目標膜厚を
入力して陽極酸化に際しての自動的な電流密度の制御を
行い得るようにすればよく,例えばこれに加えて上記関
数条件による焼け曲線及びその焼け領域を併せて表示装
置に表示し,自動的な電流密度の制御の状態を,この焼
け曲線及びその焼け領域に対して表示して,その関係を
肉視可能として陽極酸化の状態をビジュアル表示し,こ
れを確認するようにすることができ,上記コンピュータ
による制御は,単独に又は上記流速管理装置に用いたコ
ンピュータで,その流速管理やこれによる制御と共にこ
れを行うことができる。
【0020】以下図面に従って更に本発明を説明すれ
ば,図1は電解槽の対向する壁面に設置した電解液噴出
ノズルの配置状態を示す正面図,図2はその側面図であ
り,図3は熱電対を用いた可動の熱式流速計の要部を破
断面とした正面の概念図,図4及び図5は,上記図1の
電解液噴出ノズルの配置による電解槽に電解浴を建浴し
て,図3の熱式流速計を移動して電解槽内の流速を測定
し,これをコンピュータの表示装置によって表示した流
速図であって,図4は単一の電解液噴出ノズルに対面し
て所定間隔(例えば20〜30cm)離れた位置で電解液
噴出の状態を示す部分縦断面の流速分布図,図5は一方
の電解液噴出ノズル側にしてその中間位置における電解
槽深さ方向縦断面の流速分布図である。
【0021】図1及び図2において1は電解槽,2は,
電解槽外の冷却装置を通り又はこれを通ることなくポン
プ加圧し,図示省略のバルブ付きの流速計を介して電解
槽1に至るように配設した電解浴循環系の電解槽内復帰
管,3はその各分岐管,4は各分岐管3に設置した電解
液噴出ノズル,5は各電解液噴出ノズル間に位置するよ
うに,電解槽に設置する陰極の電極,6は熱式流速計で
あり,図3において,7は熱式流速計6の上記流速検出
部,8は浴温側定部,9はその熱電対,10はそのアル
ミニウム埋込部,11は流速検出部6のニクロム線,1
2は電位差計,13はニクロム線11加熱用電源であ
り,また図4,図5において濃淡の差異は,例えば平均
流速260cmとしたときの流速分布の差異を示してお
り,図4は中央部から外方に流速分布が段階的に下がる
ように変化する状態を,図5は,各電解液噴出ノズル側
から電解槽に噴出した流速が段階的に変化するも,可及
的に全体に亘って噴流を生じる状態を示している(なお
図4と図5との濃淡は例えば図4で8段階,図5で7段
階で表示可能の流速分布図としてある)。
【0022】
【実 施 例】以下の表1に示す各膜厚を得た電解条件
で,それぞれ電解浴循環攪拌の流速を20cm/sec ,3
0cm/sec ,50cm/sec ,80cm/sec ,100cm/
sec ,200cm/sec ,250cm/sec ,300cm/se
c ,350cm/sec に変化させた流速管理下で,焼け曲
線に沿って所定の初期電流密度を低減制御して陽極酸化
を行った結果を表2に示す。 ◎:特に良好 ■:良好 △:可 ×:不良 なお30cm/sec 以下で△は,被処理物の陽極酸化皮膜
に若干の肌荒れが見られたが,焼けの発生のないもの,
×は焼けの発生が見られたもの,300 cm/sec以上で△
は,電解中に被処理物に接点ズレが見られたもの,×は
電解中に被処理物の落下が見られたものである。
【0023】以上に本発明の概要を示したが,本発明の
実施に当って,被処理物,電解浴,電流波形の種類,電
流密度の付加,必要に応じて用いる流速計,電解液噴出
ノズル,流速管理装置,自動化措置等の各具体的材質,
組成,形状,構造,これらの関係,これらに対する付加
等は,上記発明の要旨に反しない限り変更して,これら
を様々の形態のものとすることができる。
【0024】
【発明の効果】本発明は以上のとおりに構成したので,
請求項1,2及び3に記載の発明は,星野法によって提
案された高速陽極酸化方法を工業的に実用化し得るよう
に改良し,被処理物に焼けの発生を防止し,高度な歩留
りを安定して確保し得る,特に硬質の陽極酸化皮膜を,
従来の1時間以上の電解時間を大幅に短縮し,美麗にし
て厚膜に形成し,実用性に富んだアルミニウムの高速陽
極酸化方法を提供することができ,請求項4乃至8に記
載の発明は,それぞれ上記に加えて,高速陽極酸化に好
適にして有効な設備の手段や管理の手段を提供し,上記
高速陽極酸化方法を可及的容易且つ確実になし得るよう
にしたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解液噴出ノズル及び熱式流速計の配置状態を
示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】熱式流速計の概念図である。
【図4】流速分布図である。
【図5】同じく流速分布図である。
【符号の説明】
1 電解槽 2 電解槽内復帰管 3 分岐管 4 電解液噴出ノズル 5 電極 6 熱式流速計 7 流速検出部 8 浴温測定部 9 熱電対 10 アルミニウム埋込部 11 ニクロム線 12 電位差計 13 加熱用電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小山田 誠 茨城県取手市戸頭9丁目18番3号 軽金 属製品協会取手分室内 (56)参考文献 特開 昭56−44795(JP,A) 特開 昭57−13196(JP,A) 特開 平4−198497(JP,A) 特開 平11−11035(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 11/04,21/12

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被処理物に対する電解浴流速を30cm/
    sec 以上300cm/sec 以下に規制した電解浴循環攪拌
    の流速管理下において所定の初期電流密度を低減制御し
    て上記被処理物に陽極酸化を施すことを特徴とするアル
    ミニウムの高速陽極酸化方法。
  2. 【請求項2】 上記所定の初期電流密度の低減制御を,
    焼け曲線に沿って行うことを特徴とする請求項1に記載
    のアルミニウムの高速陽極酸化方法。
  3. 【請求項3】 上記所定の初期電流密度を,連続的又は
    段階的に電流密度を急上昇する急速スタ−ト又は連続的
    又は段階的に緩上昇するソフトスタ−トによって上昇す
    ることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウ
    ムの高速陽極酸化方法。
  4. 【請求項4】上記電解浴循環攪拌の流速管理を,電解浴
    の被処理物位置又はその近傍の流速を陽極酸化前に測定
    する位置可動又は定位置にして多数点を測定可能な流速
    計と,電解液を電解槽内に噴出する多数の電解液噴出ノ
    ズルを有する電解浴循環系とを用い,上記流速計の流速
    データに基づき電解液噴出ノズルからの電解浴噴出流量
    の調整によって行うことを特徴とする請求項1又は2に
    記載のアルミニウムの高速陽極酸化方法。
  5. 【請求項5】 上記流速計を,熱電対間の温度差を電位
    差計で測定する熱式流速計で行うことを特徴とする請求
    項4に記載のアルミニウムの高速陽極酸化方法。
  6. 【請求項6】 上記多数の電解液噴出ノズルを,電解槽
    の対向する壁面にそれぞれ幅方向及び深さ方向に配置し
    てなることを特徴とする請求項4又は5に記載のアルミ
    ニウムの高速陽極酸化方法。
  7. 【請求項7】 上記電解浴循環攪拌の流速管理を,流速
    管理装置を用いて行うとともに該流速管理装置を,電解
    槽内に設置した位置可動又は定位置にして多数点を測定
    可能な,熱電対間の温度差を電位差計で測定する熱式流
    速計と,該熱式流速計の流速データを電解槽内の流速分
    布図として肉視可能にディスプレイ表示するコンピュー
    タと,上記電解槽内に電解液を循環噴出するように電解
    槽内に設置した多数の電解液噴出ノズルの噴出流量を制
    御可能な流量計とを備えて構成してなることを特徴とす
    る請求項1,2又は3に記載のアルミニウムの高速陽極
    酸化方法。
  8. 【請求項8】 上記所定の初期電流密度の低減制御を,
    被処理物の材質因子及び形状因子を関数条件とし,陽極
    酸化皮膜の目標膜厚を入力することにより電流の関数制
    御を行うコンピュータによって制御することを特徴とす
    る請求項1,2,3,4,5,6又は7に記載のアルミ
    ニウムの高速陽極酸化方法。
JP10059036A 1998-02-24 1998-02-24 アルミニウムの高速陽極酸化方法 Expired - Fee Related JP3004622B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10059036A JP3004622B2 (ja) 1998-02-24 1998-02-24 アルミニウムの高速陽極酸化方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10059036A JP3004622B2 (ja) 1998-02-24 1998-02-24 アルミニウムの高速陽極酸化方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11236696A JPH11236696A (ja) 1999-08-31
JP3004622B2 true JP3004622B2 (ja) 2000-01-31

Family

ID=13101680

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10059036A Expired - Fee Related JP3004622B2 (ja) 1998-02-24 1998-02-24 アルミニウムの高速陽極酸化方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3004622B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4868020B2 (ja) 2008-12-26 2012-02-01 株式会社デンソー アルミニウムの陽極酸化方法、および陽極酸化アルミニウム
JP5635419B2 (ja) 2010-02-24 2014-12-03 株式会社神戸製鋼所 陽極酸化皮膜の形成方法
JP5196616B1 (ja) * 2012-06-29 2013-05-15 アイシン軽金属株式会社 部分陽極酸化装置及びそれを用いた陽極酸化処理方法
JP6217312B2 (ja) 2012-12-05 2017-10-25 アイシン精機株式会社 陽極酸化処理装置及び陽極酸化処理方法
JP6390096B2 (ja) * 2013-12-20 2018-09-19 アイシン精機株式会社 陽極酸化皮膜生成方法
JP6612373B2 (ja) 2018-02-02 2019-11-27 本田技研工業株式会社 陽極酸化皮膜形成処理剤及び陽極酸化皮膜形成方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11236696A (ja) 1999-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10835954B2 (en) Mixing eductor nozzle and flow control device
Massing et al. Thermocapillary convection during hydrogen evolution at microelectrodes
De Silva et al. Thermal effects in laser assisted jet electrochemical machining
Arya et al. Investigations on quantification and replenishment of vaporized electrolyte during deep micro-holes drilling using pressurized flow-ECDM process
Kozak et al. Selected problems of micro-electrochemical machining
JP3004622B2 (ja) アルミニウムの高速陽極酸化方法
JP4322010B2 (ja) 最適な加工用パルス幅を用いる電解加工方法及び装置
Datta et al. Electrochemical saw using pulsating voltage
Long et al. Experimental study on the processes of laser-enhanced electrochemical micromachining stainless steel
US8167024B2 (en) Method and associated electromagnetic apparatus for rotating molten metal in a slabs continuous casting ingot mould
CN102842841B (zh) 控制激光器系统的有效工作温度的方法和装置
JP2001262395A (ja) アルミニウム材の陽極酸化方法及び平版印刷版の製造方法
Furuyama et al. Surface finishing achieved by ECM with a moving wire electrode
Zhang et al. The interactive dynamics of flow and directional solidification in a Hele-Shaw cell Part 1. Experimental investigation of parallel shear flow
Denpo et al. Turbulent natural convection along a vertical electrode
Nakano et al. Wire electrochemical finishing of wire electrical discharge machined surface of highly alloyed materials with insoluble precipitates
KR101787906B1 (ko) 다중작업이 가능한 도금장치
JP2002235194A (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化処理における処理液の管理方法
US3434956A (en) Apparatus for the electrolytic thinning of metallic specimens for transmission electron microscopy
CN208472205U (zh) 一种控制铝合金微弧氧化复合膜中强化粒子复合量的装置
Zhang Improvements on the Electrochemical and Pulsed Electrochemical Machining Processes
JP7018405B2 (ja) エレクトロスラグ再溶解法及び溶解容器
US20210268575A1 (en) Apparatus and method to control continuous casting, using electromagnetic brake
JP3901641B2 (ja) 表面積測定方法および表面積測定装置、並びにメッキ方法
CN110825133A (zh) 温度控制方法、装置及计算机可读存储介质

Legal Events

Date Code Title Description
S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees