JP4880974B2 - 記録用インク、並びにインクカートリッジ、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

記録用インク、並びにインクカートリッジ、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好な記録用インク、並びに該記録用インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェットプリンタは、普通紙への印字が可能で、カラー化が容易であり、かつ小型で価格も安価であり、しかも、ランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。このようなインクジェットプリンタに用いられる記録用インクに要求される特性としては、(1)高画質を達成するための色調や画像濃度を有し、滲みのないこと、(2)信頼性を達成するためのインク中での着色剤の溶解乃至分散安定性、保存安定性、及び吐出安定性、(3)記録画像の保存性を確保するための耐水性、及び耐光性、(4)高速化を達成するためのインクの速乾性、などが挙げられ、これらの要求を満たすように、様々な提案がなされている。
前記記録用インクの着色剤としては、当初は、発色性の良さや信頼性の高さ等の点から、は染料インクが主流であったが、近年、記録画像に耐光性や耐水性を持たせるためにカーボンブラック等の顔料を用いた顔料インクにも注目が集まっている。
また、印字品質の高画質化、及び高速印字を達成するため、最近では、インクを小滴化する傾向にあり、そのためノズル径が小径化される方向にある。更に、画像の定着性を確保するため、インク中に樹脂成分を添加することが数多く検討されている。しかし、これらに伴って、インク中の固形分濃度が高くなるため、ノズル径が小径化されたプリンタでの吐出安定性等の信頼性を確保することは極めて困難となっている。
これまではプリンタの信頼性の向上を図るためには、粘度の上昇を極力抑える方向でインクが設計されていた。例えば、特許文献1では、インクの2倍濃縮時の粘度変化を10倍以内とし、かつ粒径変化を3倍以内にすることにより、顔料の凝集がインクの広がりを抑制することを防ぎ、白抜けを防止できるインクが提案されている。しかし、この提案のインクでは、普通紙上で高画質画像を形成することは困難である。
また、特許文献2では、インク中の揮発成分を蒸発した後の残留分が液体であり、かつその粘度が初期粘度の10倍以内であるインクが提案されている。しかし、この提案のインクは染料インクであり、信頼性は高いものの、普通紙での画質が劣るものである。
また、特許文献3では、60℃環境下で水分蒸発させたときの、インク粘度が蒸発前の粘度の600倍以下であるインクが提案されている。しかし、この提案のインクも染料インクであり、水溶性高分子を添加することによって、インクの信頼性と画像品質の耐久性とのバランスをとっているが、耐水性に問題がある。
また、特許文献4には、高画質を確保するためには粘度の高いインク(5〜15mPa・s)が必要であり、信頼性を確保するために初期の蒸発速度を調整し、かつ粘度を調整するための粘度調整剤として特定の化合物を添加したインクが提案されている。しかし、この提案では、用いる顔料の粒径の安定性については何ら記載がなく、24時間放置後の信頼性を有するとされているが、インクを吐出するヘッドの構成とノズル径の大きさによっては、長期放置された場合には、信頼性に劣るインク処方となる。
このように高速で高品位な印字品質を確保するためには粘度の高いインクを使用する必要があるが、このような高粘度のインクは信頼性を確保するのが困難であり、したがって普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好な記録用インク、並びに該記録用インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法については、未だ充分満足できるものが提供されていないのが現状である。
特開2002−337449号公報 特開2000−95983号公報 特開平9−111166号公報 特開2001−262025号公報
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好な記録用インク、並びに、該記録用インクを用いたインクカートリッジ、吐出安定性の高い、高品位な画像記録が可能なインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも水、着色剤、湿潤剤、及び樹脂エマルジョンを含有する記録用インクであって、
前記記録用インクは、下記数式1で表される比粘度変化率が、20時間未満では100以下であり、かつ20〜40時間では100を超える点を有し、かつ前記記録用インクの初期粘度が、6.0mPa・s以上であることを特徴とする記録用インクである。
<数式1>
比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
<2> 着色剤が、顔料を含む水分散性着色剤である前記<1>に記載の記録用インクである。
<3> 水分散性着色剤が、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料である前記<2>に記載の記録用インクである。
<4> 水分散性着色剤が、ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンである前記<2>に記載の記録用インクである。
<5> 水分散性着色剤が、界面活性剤及び重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物のいずれかにより分散された顔料である前記<2>に記載の記録用インクである。
<6> 樹脂エマルジョンが、アクリルシリコーンエマルジョンである前記<1>から<5>のいずれかに記載の記録用インクである。
<7> 記録用インク中の水分量が35質量%以上であり、かつ該記録用インク中の着色剤と樹脂エマルジョンの合計含有量が、固形分で10〜30質量%である前記<1>から<6>のいずれかに記載の記録用インクである。
<8> 湿潤剤が少なくとも1種の多価アルコールを含有し、かつ該多価アルコールの少なくとも1種は、温度20℃、60%RHの環境下で、平衡水分量が25質量%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の記録用インクである。
<9> 多価アルコールの1つがグリセリンであり、かつ該グリセリンの含有量が、湿潤剤全体の20〜80質量%である前記<8>に記載の記録用インクである。
<10> 湿潤剤の記録用インクにおける合計含有量が10〜40質量%である前記<1>から<9>のいずれかに記載の記録用インクである。
<11> 更に、界面活性剤及び浸透剤を含有する前記<1>から<10>のいずれかに記載の記録用インクである。
<12> 界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種である前記<11>に記載の記録用インクである。
<13> 浸透剤は、20℃の水に対する溶解度が0.2〜5.0質量%のポリオール化合物である前記<11>から<12>のいずれかに記載の記録用インクである。
<14> 更にアミノプロパンジオール化合物を含有し、かつ該アミノプロパンジオール化合物が2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールである前記<1>から<13>のいずれかに記載の記録用インクである。
<15> シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクから選択される少なくとも1種である前記<1>から<14>のいずれかに記載の記録用インクである。
<16> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の記録用インクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
<17> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
<18> 刺激が、熱、圧力、振動及び光から選択される少なくとも1種である前記<17>に記載のインクジェット記録装置である。
<19> インク飛翔手段が、ノズル径35μm以下のノズルを有し、かつ印字速度が8ppm以上である前記<17>から<18>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<20> 複数の加圧液室と、該加圧液室に連通する孔径35μm以下のノズル及びインク供給路と、振動板と、該振動板を変位させる電気機械変換手段とを有する記録ヘッドを備え、かつ複数のインク滴を連続に吐出させて記録媒体に着弾する前にマージさせて大きなインク滴を形成するインクジェット記録装置であって、
前記インク滴を形成するインクが、前記<1>から<15>のいずれかに記載の記録用インクであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
<21> 印写中のノズル近傍の記録用インクにおける、下記数式1で表される比粘度変化率が100を超える前に、ノズル孔内部の記録用インクを排出させるインク排出手段を有する前記<17>から<20>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<数式1>
比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
<22> インク排出手段が、非印字領域に記録用インクを吐出させる手段である前記<21>に記載のインクジェット記録装置である。
<23> 排出される記録用インク量が、1ノズルにつき1分間に、2,000〜30,000plである前記<21>から<22>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<24> 排出される記録用インク量が、温湿度センサの値によって可変である前記<21>から<23>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<25> 排出される記録用インク量が、記録用インクの比粘度変化率によって可変である前記<21>から<23>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<26> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
<27> 刺激が、熱、圧力、振動及び光から選択される少なくとも1種である前記<26>に記載のインクジェット記録方法である。
<28> 記録媒体上に前記<1>から<15>のいずれかに記載の記録用インクを用いて記録された画像を有してなることを特徴とするインク記録物である。
本発明の記録用インクは、少なくとも水、着色剤、湿潤剤、及び樹脂エマルジョンを含有してなり、
前記記録用インクは、下記数式1で表される比粘度変化率が、20時間未満では100以下であり、かつ20〜40時間では100を超える点を有し、かつ前記記録用インクの初期粘度が、6.0mPa・s以上である。
<数式1>
比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
本発明の記録用インクによれば、従来のようにインクの水分蒸発量に対する粘度上昇及び粒径変化を制御するだけでなく、更にインクの蒸発速度も加味した比粘度変化率を制御することによって、インクがノズルより吐出されてから紙に着弾する前、及び着弾時にインクの増粘が起こることになり、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ比粘度変化率が急激に上がる点においてもインクの体積平均粒子径の変化を小さく抑えることにより、短期及び長期における保存安定性及び吐出安定性が良好となる。
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記記録用インクを容器中に収容してなる。該インクカートリッジは、インクジェット記録方式によるプリンタ等に好適に使用される。該インクカートリッジに収容されたインクを用いて記録を行うと、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好であり、鮮明な印刷物に近い画像記録が行える。
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の前記記録用インクにエネルギーを印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有してなる。該インクジェット記録装置においては、前記インク飛翔手段が、本発明の前記記録用インクにエネルギーを印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録する。その結果、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好であり、吐出安定性の高い、高品位な画像記録が可能となる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の前記記録用インクにエネルギーを印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含んでなる。該インクジェット記録方法においては、前記インク飛翔工程において、本発明の前記記録用インクにエネルギーを印加し、該記録用インクを飛翔させて画像が記録される。その結果、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好であり、鮮明な印刷物に近い画像が得られる。
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好な記録用インク、並びに、該記録用インクを用いたインクカートリッジ、吐出安定性の高い、高品位な画像記録が可能なインクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
(記録用インク)
本発明の記録用インクは、少なくとも水、着色剤、湿潤剤、及び樹脂エマルジョンを含有してなり、好ましくは界面活性剤、浸透剤、アミノプロパンジオール化合物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記記録用インクは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験による下記数式1で表される比粘度変化率が、20時間未満では100以下であり、かつ20〜40時間では100を超える点を有する。この要件を満たすことによって、インクがノズルより吐出されてから記録媒体に着弾する前及び着弾時にインクの増粘が起こることになり、普通紙においても高画質を形成することができる。前記比粘度変化率が100を超える点が20時間より速いインクは吐出安定性が悪くなることがあり、40時間を超えるところで比粘度変化率が100を超えるインクは、インクが記録媒体に着弾した時点での粘度が低いため、滲みを生じやすいことがある。
<数式1>
比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
また、前記記録用インクは、蒸発試験を行う前の25℃での初期粘度(η)が、6.0mPa・s以上であり、7.5〜10mPa・sが好ましい。前記初期粘度を6.0mPa・s未満にするには、顔料濃度をある程度抑える必要があるので、画像濃度の高い印字品質の確保が困難となる。また、インクによっては、初期粘度が6.0mPa・s未満となると、紙の繊維に沿った滲みが発生し易くなることがある。
ここで、前記比粘度変化率は、インクの一定量を25℃、50%RHの環境下で放置し、一定時間放置後のインクの質量変化を測定し、またその時点でのインクの粘度(25℃)を測定し、上記数式1から求めることができる。前記粘度は、例えば、東機産業株式会社製の粘度計RL−500を用いることができる。
前記記録用インクは、上述した通り、少なくとも水、着色剤、湿潤剤、及び樹脂エマルジョンが基本要素であり、必要に応じて、界面活性剤、浸透剤、アミノプロパンジオール化合物を含有してなり、これらの組み合わせ、配合比などが重要である。これらの中でも、湿潤剤の平衡水分量の影響は大きく、また、記録用インク中の固形分濃度と水分量のバランス、湿潤剤量とのバランスなどが重要である。
以下、それぞれの成分について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
−着色剤−
前記着色剤としては、水分散性であり、顔料を含む水分散性着色剤が好適である。
前記水分散性着色剤としては、(1)表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料、(2)ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョン、(3)界面活性剤及び重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物のいずれかにより分散された顔料、などが挙げられる。
前記(1)〜(3)の水分散性着色剤について、便宜上顔料に限定して説明すると以下の通りである。
前記(1)は、一般的に、自己分散顔料と言われ、主にカーボンブラックなどを表面酸化処理して親水化し、顔料単体が水に分散するようにしたものである。
前記(2)は、一般的に、カプセル顔料と言われ、親水性水不溶性の樹脂で顔料を被覆してやり、顔料表面の樹脂層にて親水化することで顔料を水に分散するようにしたものである。
前記(3)は、一般的に、界面活性剤分散顔料、樹脂分散顔料と呼ばれ、界面活性能を持つ化合物(ここでは界面活性剤や水溶性高分子化合物)により、顔料と水との界面を取り持つことで、顔料の分散を行っているものである。前記(2)との違いは、樹脂が水に溶けているか否かの点であり、顔料分散体の耐溶剤性や発色性に影響を与えている。
このような水分散性着色剤は、色材分子が集合状態(結晶状態を含む)であるか樹脂分子と共存しており単分子で存在していないため、耐水性、耐光性、及び耐ガス性に優れており、このような着色剤を用いると画像保存性を向上することが可能となる。特に、顔料表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するような処理がなされたことにより分散剤なしに水に分散可能となった顔料、又は樹脂微粒子に水不溶性または難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンを用いた場合、着色剤固形分に対するインク粘度を低く抑えることができるので、水不溶性樹脂や湿潤剤を多く添加することが可能となる。
前記(1)では、顔料の表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するように表面改質されたものである。そのためには、顔料の表面に、ある特定の官能基(スルホン基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸及びその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基が結合され、水中に分散されている形態が特に好ましい。これも顔料が表面改質されカルボキシル基が結合しているために、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録媒体の耐水性がより向上する。
また、この形態のインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドのノズル付近のインクの水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行えるようになる。またこの自己分散型の顔料は、後述する界面活性剤及び浸透剤と組み合わせた時に、特に相乗効果が大きく、より信頼性の高い、高品位な画像を得ることが可能となる。
前記自己分散型顔料の体積平均粒径は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
ここで、例えば、自己分散型のカーボンブラックとしては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SOM、−POHM、−PO、−SONH、−SONHCOR(ただし、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表す)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SOMがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
また、前記親水基中における「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、等が挙げられる。前記有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。前記アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
前記カチオン性親水基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましく、下記に挙げる第4級アンモニウム基がより好ましく、本発明においては、これらのいずれかがカーボンブラック表面に結合されたものが色材として好適である。
前記親水基が結合されたカチオン性の自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式で表されるN−エチルピリジル基を結合させる方法として、カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。
前記親水基は、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。上記した親水基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合する場合の具体例としては、例えば、−CCOOM(ただし、Mはアルカリ金属、第4級アンモニウムを表す)、−PhSOM(ただし、Phはフェニル基を表す。Mはアルカリ金属、第4級アンモニウムを表す)、−C10NH3+等が挙げられる。
前記(2)では、色材を含有したポリマーエマルジョンとは、ポリマー微粒子中に顔料を封入したもの、及びポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させたものの少なくともいずれかである。この場合、全ての顔料が封入及び/又は吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で該顔料がエマルジョン中に分散にしていてもよい。
前記ポリマーエマルジョンを形成するポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマーが特に好ましい。
前記色材を含有させたポリマー微粒子(着色微粒子)の体積平均粒径は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
前記(3)では、分散剤としての界面活性剤及び水溶性高分子化合物のいずれかにはカルボキシル基が結合していることが好ましい。前記分散剤にカルボキシル基が結合していると、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録媒体の耐水性がより向上する。更に、裏抜けを防止する効果が得られる。特に、カルボキシル基が結合している分散剤で分散した顔料と、浸透剤とを併用した場合においては、普通紙などの比較的サイズ度の高い記録媒体に印字した場合においても、充分な乾燥速度が得られ、かつ裏抜けが少ないという効果が得られる。これは、カルボン酸の解離定数が他の酸基に比較して小さいため、顔料が記録媒体に付着した後、インクのpH価の低下や、記録媒体表面近傍に存在するカルシウムなどの多価金属イオンとの相互作用などにより、分散剤自体の溶解度が低下し、分散剤自体や顔料が凝集するためであると推定される。
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。また、非イオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、などが挙げられる。
このような界面活性剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、日本油脂(株)、日光ケミカルズ(株)、日本エマルジョン(株)、日本触媒(株)、第一工業製薬(株)、東邦化学(株)、花王(株)、アデカ(株)、ライオン(株)、青木油脂(株)、三洋化成工業(株)などから容易に入手できる。
前記重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
これら水溶性高分子化合物の重量平均分子量は3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましく、7,000〜15,000更に好ましい。
このような水溶性高分子化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、ジョンソンポリマー(株)、ナガセケムテックス(株)、東亞合成(株)、三菱レーヨン(株)、住友精化(株)、JSR(株)、昭和高分子(株)、荒川化学工業(株)、日本触媒(株)、日本合成化学(株)、(株)クラレなどから容易に入手できる。
前記分散剤の添加量は、前記顔料を安定に分散させ、本発明の他の効果を失わせない範囲で適宣添加することができ、両者の混合質量比(顔料:分散剤)は1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:3の範囲がより好ましい。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、主として顔料が用いられるが、色調調整の目的で耐候性を劣化させない範囲内で染料を含有しても構わない。
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、有機顔料のいずれであってもよい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックなどが好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。
前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、などが挙げられる。
前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記着色剤の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用のもの、カラー用のもの、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記カラー用のものとしては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、138、150、151、153、183、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、などが挙げられる。
ブラック用の顔料はカーボンブラックであることが好ましい。ブラックインクとしてカーボンブラックは色調に優れるとともに、耐水性、退光性、分散安定性に優れ、且つ安価である。
その他顔料(例えば、カーボン)の表面を樹脂等で処理し、水中に分散可能としたグラフト顔料や、顔料(例えば、カーボン)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした加工顔料等が使用できる。
また、顔料をマイクロカプセルに包含させ、該顔料を水中に分散可能なものとしたものであってもよい。
前記着色剤には、上述したように、主として顔料が用いられるが、色調調整の目的で染料を耐光性を劣化させない範囲内で含有しても構わない。前記染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、などが挙げられる。
前記酸性染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、食用染料として知られているものなどが挙げられ、例えば、C.I.アシッド・イエロー17、23、42、44、79、142;C.I.アシッド・レッド1、8、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、87、89、92、97、106、111、114、115、134、186、249、254、289;C.I.アシッド・ブルー9、29、45、92、249;C.I.アシッド・ブラック1、2、7、24、26、94;C.I.フード・イエロー2、3、4;C.I.フード・レッド7、9、14;C.I.フード・ブラック1、2、などが挙げられる。
前記直接性染料としては、例えば、C.I.ダイレクト・イエロー1、12、24、26、33、44、50、86、120、132、142、144;C.I.ダイレクト・レッド1、4、9、13、17、20、28、31、39、80、81、83、89、225、227;C.I.ダイレクト・オレンジ26、29、62、102;C.I.ダイレクト・ブルー1、2、6、15、22、25、71、76、79、86、87、90、98、163、165、199、202;C.I.ダイレクト・ブラック19、22、32、38、51、56、71、74、75、77、154、168、171、などが挙げられる。
前記塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシック・イエロー1、2、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、40、41、45、49、51、53、63、65、67、70、73、77、87、91;C.I.ベーシック・レッド2、12、13、14、15、18、22、23、24、27、29、35、36、38、39、46、49、51、52、54、59、68、69、70、73、78、82、102、104、109、112;C.I.ベーシック・ブルー1、3、5、7、9、21、22、26、35、41、45、47、54、62、65、66、67、69、75、77、78、89、92、93、105、117、120、122、124、129、137、141、147、155;C.I.ベーシック・ブラック2、8、などが挙げられる。
前記反応性染料としては、例えば、C.I.リアクティブ・ブラック3、4、7、11、12、17;C.I.リアクテイブ・イエロー1、5、11、13、14、20、21、22、25、40、47、51、55、65、67;C.I.リアクティブ・レッド1、14、17、25、26、32、37、44、46、55、60、66、74、79、96、97;C.I.リアクティブ・ブルー1、2、7、14、15、23、32、35、38、41、63、80、95、などが挙げられる。
これら染料の中でも、酸性染料、直接性染料が特に好ましい。
前記着色剤の前記記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3〜15質量%が好ましく、5〜12質量%がより好ましい。前記含有量が3質量%未満であると、画像の濃度が薄く、コントラストのない画像となることがあり、15質量%を超えると、前記着色剤の分散安定性を確保することが難しく、ノズル等の目詰まりが生じ易く、信頼性が悪くなることがある。
−樹脂エマルジョン−
前記記録用インク中には、画像定着性向上のために樹脂エマルジョンを添加する。ここで、前記樹脂エマルジョンとは、樹脂微粒子を連続相としての水中に分散したものであり、必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有してもよい。分散相成分としての樹脂微粒子の含有量(樹脂エマルジョン中の樹脂微粒子の含有量)は、一般的には10〜70質量%程度が好ましい。
前記樹脂微粒子の粒径は、インクジェット記録装置に使用することを考慮すると、体積平均粒径で10〜1,000nmが好ましく、20〜300nmがより好ましい。
前記分散相の樹脂微粒子成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられ、これらの中でも、定着性が良好である点からアクリルシリコーン樹脂が特に好ましい。
前記樹脂エマルジョンとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、例えば、マイクロジェルE−100、E−2002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業社製)、ジョンクリル775(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー社製)、SAE1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、プライマルAC−22、AC−61(アクリル系樹脂エマルジョン、ローム・アンド・ハース社製)、ナノクリルSBCX−2821、3689(アクリル−シリコーン系樹脂エマルジョン、東洋インキ製造株式会社製)、#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂エマルジョン、御国色素社製)、ペスレジンA210(ポリエステル樹脂エマルジョン、高松油脂社製)、などが挙げられる。
前記樹脂エマルジョンの含有量は、有効成分(固形分)として0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
前記記録用インク中の水分量は、35質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましい。この場合、上限値は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、70質量%が好ましい。前記水分量が35質量%未満であると、蒸発時の粘度上昇が大きくなりすぎ、吐出安定性が悪くなることがある。
また、前記記録用インク中の前記着色剤と前記樹脂エマルジョンの合計含有量は、固形分で10〜30質量%が好ましく、12〜18質量%がより好ましい。前記合計含有量が10質量%未満であると、画像濃度が低くなり、また、定着性も不十分となることがあり、30質量%を超えると、蒸発時の粘度上昇が大きくなりすぎ、目詰まりし易くなることがある。
−湿潤剤−
前記湿潤剤としては、特に制限はなく、水素結合しやすく、単独では粘度が高いものであり、かつ平衡水分量が高く、水分の存在下では粘度が低下するものであれば目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオールなどが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリコールなどが挙げられる。
これらの中でも、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールが特に好ましい。
前記湿潤剤は、インクの水分蒸発速度を緩め、インクの吐出信頼性を向上させる効果が得られる点から、多価アルコールを少なくとも1種含有し、かつ該多価アルコールの少なくとも1種が、温度20℃、相対湿度60%の環境下で、平衡水分量が25質量%以上のであることが好ましい。該多価アルコールの中でも、グリセリンは、水分蒸発に伴い粘度が急激に上昇するが、着色剤の凝集を押さえ、粒径が大きくなるのを防ぐ効果が高い点から特に好ましい。
前記湿潤剤としてのグリセリンの含有量は、湿潤剤全体の20〜80質量%であることが好ましい。
前記グリセリンと併用される湿潤剤としては、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオールが特に好ましい。前記1,3−ブタンジオール及び3−メチル−1,3−ブタンジオールは、グリセリン同様に平衡水分量が高く、信頼性が高いうえに、インクが紙に着弾した際の画素の広がりを均一にし、更には着色剤を紙表面にとどめる効果も高い。グリセリンは信頼性向上効果が高いが、多量に添加すると画質が悪くなり、また、水分蒸発後の粘度上昇が大きくなりすぎて、吐出安定性も悪くなる場合があるため、これらの混合質量比(ブタンジオール:グリセリン)は1:4〜4:1が好ましく、1:3〜3:1がより好ましく、1:1〜3:1が更に好ましい。
前記湿潤剤の前記記録用インクにおける含有量は10〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。前記含有量が10質量%未満であると、インクの保存安定性、及び吐出安定性が悪くなり、ノズルの目詰まりが起こりやすくなり、40質量%を超えると、乾燥性が悪くなり、文字の滲みや色境界の滲みが発生し、画像品質が低下することになる。
前記記録用インクには、界面活性剤及び浸透剤を含有する。前記界面活性剤は、特に1000msec付近の静的な表面張力を下げ、紙にインクが着弾した際に、紙内部への浸透を促進する目的を持つものである。これに対し、前記浸透剤は、特に10〜100msecc付近のより動的な表面張力を下げ、インクが紙に着弾した瞬間の、紙表面での広がりを促進する目的を持つものである。これらの界面活性剤と浸透剤を併用することで、より画素の広がりも適切で、紙内部への浸透性も高い(従って速乾性のある)インクを得ることが可能となり、より高品位な画像が高速で得られることとなる。
−界面活性剤−
前記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアリル、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテルエステル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルカルボキシレート、スルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ナフテン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ジアルキルスルホコハク塩が特に好ましい。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系界面活性剤が好適である。該アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、例えば、エアープロダクツ社(米国)製のサーフィノール104、82、465、485、TGなどが挙げられる。
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、イミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン誘導体、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシンなどが挙げられる。
また、画像品質をより向上させるためには、高浸透特性を有するフッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤のいずれかを使用することが更に好ましく、これらの中でも、フッ素系界面活性剤が特に好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は、起泡性が少なく、近年問題視されているフッ素化合物の生体蓄積性についても低く、安全性が高いので、特に好ましい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
これらの中でも、下記構造式(1)〜(2)の少なくともいずれかで表される化合物が好適に挙げられる。
ただし、前記構造式(1)中、jは、0〜10の整数を表す。kは、1〜40の整数を表す。
前記構造式(2)において、Rfはフッ素含有基を表し、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
前記パーフルオロアルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、1〜3のものがより好ましく、例えば、−C2n−1(ただし、nは1〜10の整数を表す)などが挙げられる。該パーフルオロアルキル基としては、例えば、−CF、−CFCF、−C、−C、などが挙げられ、これらの中でも、−CF、−CFCFが特に好ましい。
m、n、及びpは、整数を表し、nは1〜4、mは6〜25、pは1〜4が好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも住友スリーエム社製)、メガファックF−470、F1405、F−474(いずれも大日本インキ化学工業社製)、ゾニールTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれもデュポン社製)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも株式会社ネオス製)、PF−151N(オムノバ社製)などが挙げられ、これらの中でも、信頼性と発色性の向上に関して良好な点から、ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれもデュポン社製)が特に好ましい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、ビックケミー(株)、信越シリコーン(株)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)などから容易に入手できる。
前記界面活性剤の前記記録用インクにおける含有量は、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、添加した効果はなく、5.0質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けの発生といった問題が発生することがある。
−浸透剤−
浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.2〜5.0質量%のポリオール化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。このようなポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類;エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
前記浸透剤の前記記録用インクにおける含有量は、0.1〜4.0質量%が好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
−アミノプロパンジオール化合物−
前記アミノプロパンジオール化合物は、水溶性の有機塩基性化合物であり、pH調整剤としても働くものであり、顔料の分散安定性が向上し、吐出安定性等の信頼性が確保される点から、アミノプロパンジオール誘導体が好ましい。
前記アミノプロパンジオール誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1−アミノ−2,3−プロパンジオール、1−メチルアミノ−2,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられ、これらの中でも、インク流路に使用されている部材への接液信頼性が高い点から、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
前記アミノプロパンジオール化合物の前記記録用インクにおける添加量は、0.01〜2質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.1〜1.0質量%が更に好ましい。前記添加量が多すぎると、pHが高くなり、粘度が上昇する等のデメリットが生じることがある。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤、キレート試薬、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、粘度調整剤、などが挙げられる。
前記消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点でシリコーン系消泡剤が好ましい。
前記シリコーン系消泡剤としては、例えば、オイル型シリコーン消泡剤、コンパウンド型シリコーン消泡剤、自己乳化型シリコーン消泡剤、エマルジョン型シリコーン消泡剤、変性シリコーン消泡剤、などが挙げられる。該変性シリコーン系消泡剤としては、例えば、アミノ変性シリコーン消泡剤、カルビノール変性シリコーン消泡剤、メタクリル変性シリコーン消泡剤、ポリエーテル変性シリコーン消泡剤、アルキル変性シリコーン消泡剤、高級脂肪酸エステル変性シリコーン消泡剤、アルキレンオキサイド変性シリコーン消泡剤、などが挙げられる。これらの中でも、水系媒体である前記記録用インクへの使用を考慮すると、前記自己乳化型シリコーン消泡剤、前記エマルジョン型シリコーン消泡剤などが好ましい。
前記消泡剤としては、市販品を使用してもよく、該市販品としては、信越化学工業株式会社製のシリコーン消泡剤(KS508、KS531、KM72、KM85等)、東レ・ダウ・コーニング株式会社製のシリコーン消泡剤(Q2−3183A、SH5510等)、日本ユニカー株式会社製のシリコーン消泡剤(SAG30等)、旭電化工業株式会社製の消泡剤(アデカネートシリーズ等)、などが挙げられる。
前記消泡剤の前記記録用インクにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.001〜3質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
前記防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、などが挙げられる。
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができる。前記pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム、などが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどが挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイドなどが挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイトなどが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、などが挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
本発明の記録用インクは、水、着色剤、湿潤剤、樹脂エマルジョン、好ましくは界面活性剤、浸透剤、アミノプロパンジオール化合物、更に必要に応じてその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、必要に応じて攪拌混合して製造する。前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
本発明の記録用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
前記記録用インクの粘度は、25℃で、20mPa・s以下が好ましく、15mPa・s以下がより好ましい。前記粘度が20mPa・sを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがある。
前記記録用インクにおける、25℃、10〜100msecでの動的な表面張力は、20〜35mN/mが好ましく、25〜33mN/mがより好ましい。
前記記録用インクにおける、25℃、1000msec付近の静的な表面張力は20〜35mN/mが好ましく、22〜28mN/mがより好ましい。
前記記録用インクのpHとしては、例えば、7〜10が好ましい。
本発明の記録用インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を記録することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を記録することができる。
本発明の記録用インクは、インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで,インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などいずれのインクジェットヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
本発明の記録用インクは、各種分野において好適に使用することができ、インクジェット記録方式による画像記録装置(プリンタ等)において好適に使用することができ、例えば、印字又は印字前後に被記録用紙及び前記記録用インクを50〜200℃で加熱し、印字定着を促進する機能を有するもののプリンタ等に使用することもでき、以下の本発明のインクカートリッジ、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に特に好適に使用することができる。
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記記録用インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で
形成されたインク袋などを少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
次に、インクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は、本発明のインクカートリッジの一例を示す図であり、図2は、図1のインクカートリッジのケース(外装)も含めた図である。
インクカートリッジ200は、図1に示すように、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図2に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記記録用インク(又はインクセット)を収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができ、また、後述する本発明のインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いるのが特に好ましい。
(インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段、などを有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、刺激発生工程、制御工程、などを含んでなる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
−インク飛翔工程及びインク飛翔手段−
前記インク飛翔工程は、前記本発明の記録用インクに、刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録する工程である。
前記インク飛翔手段は、前記本発明の記録用インクに、刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録する手段である。該インク飛翔手段としては、特に制限はなく、例えば、インク吐出用の各種のノズル、などが挙げられる。
本発明においては、該インクジェットヘッドの液室部、流体抵抗部、振動板、及びノズル部材の少なくとも一部がシリコン及びニッケルの少なくともいずれかを含む材料から形成されることが好ましい。
また、前記ヘッドはインク吐出面に撥水加工処理を施したノズルプレートを有することが好ましく、該撥水加工処理が、PTFE−Ni共析加工、フッ素樹脂加工、及びシリコーン樹脂加工から選択されるいずれかが好ましい。
また、前記インクジェットノズルのノズル径は、35μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、15〜25μmが更に好ましい。また、印字速度は、8ppm以上であるとよい。これにより、より安定した高品位な画像記録を行うことができる。
また、前記インクジェットヘッド上にインクを供給するためのサブタンクを有し、該サブタンクにインクカートリッジから供給チューブを介してインクが補充されるように構成することが好ましい。
前記刺激は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
なお、前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ、などが挙げられる。
前記記録用インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記記録用インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記記録用インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば、記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
前記飛翔させる前記記録用インクの液滴は、その大きさとしては、例えば、2〜40plとするのが好ましく、その吐出噴射の速さとしては5〜20m/秒とするのが好ましく、その駆動周波数としては1kHz以上とするのが好ましく、その解像度としては300dpi以上とするのが好ましい。
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体の記録面を反転させて両面印刷可能とする反転手段を有することが好ましい。該反転手段としては、静電気力を有する搬送ベルト、空気吸引により記録媒体を保持する手段、搬送ローラと拍車との組み合わせなどが挙げられる。
無端状の搬送ベルトと、該搬送ベルト表面を帯電させて記録媒体を保持しながら搬送する搬送手段を有することが好ましい。この場合、帯電ローラに±1.2kV〜±2.6kVのACバイアスを加えて搬送ベルトを帯電させることが特に好ましい。
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
本発明のインクジェット記録装置は、複数の加圧液室と、該加圧液室に連通する孔径35μm以下のノズル及びインク供給路と、振動板と、該振動板を変位させる電気機械変換手段とを有する記録ヘッドを備え、かつ複数のインク滴を連続に吐出させて記録媒体に着弾する前にマージさせて大きなインク滴を形成し、前記インク滴を形成するインクが、本発明の前記記録用インクであることが好ましい。これにより、粘度の高いインクにおいても、吐出安定性を確保することができる。
この場合、印写中のノズル近傍の記録用インクにおける、下記数式1で表される比粘度変化率が100を超える前に、ノズル孔内部の記録用インクを排出させるインク排出手段を有することが好ましい。
<数式1>
比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
前記本発明の記録用インクは、印字環境にもよるが、ある一定時間を超えると急激に粘度が上昇するため、その前にノズル孔内部のインクを排出させるインク排出手段を備えていることが好ましい。前記インク排出手段としては、非印字領域へインクを吐出させる方法が好ましく、ヘッドを搭載しているキャリッジのスキャン数をカウントし、その値がある閾値を超えた場合(あるいは一定時間毎)に、インクを非印字領域に吐出させるように、ヘッドを駆動させ、ある一定量のインクを吐出させる方法が採用される。非印字領域へ排出させるインクの量は、インクを吐出させる際のヘッドの駆動回数を変更することと、閾値を制御することとで、任意に設定できるが、印字速度を落とさずに、かつ信頼性が保てる範囲内で、最小量のインクを吐出するよう、設定するのが好ましい。本発明の前記記録用インクに対しては、1ノズルにつき1分間あたり、2,000〜30,000pl量のインクが排出されると、信頼性が確保されることが確認されている。
前記記録用インクの蒸発速度は温湿度環境に影響されること、また、色間で若干差異があるため、本発明のインクジェット記録装置では、温湿度計センサを備え、また、色によってノズル孔内部から排出させるインク量を変化させることができる。
また、本発明のインクジェット記録装置では、排出される記録用インク量を、記録用インクの比粘度変化率によって可変とすることが好ましく、例えば、温湿度センサで環境をみて、更にヘッドごと(色ごと)にインク排出の間隔及び1回の排出滴数を変えることによって、ノズル孔内部から排出させるインク量を変化させることができる。
また、排出された記録用インクを受けるインク受けを設ける一例としては、記録媒体を搬送するベルトの外側に、記録装置の構造上許容される範囲で設けることができる。このようにして、ある一定スキャン回数を超えた際(あるいは一定時間毎)に、非印字領域に設けられたインク受けに対し、一定量のインクを排出させることで、より吐出安定性の確保されたインクジェット記録装置の提供が可能となる。
本発明のインクジェット記録装置により本発明のインクジェット記録方法を実施する一の態様について、図面を参照しながら説明する。図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ201の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
装置本体101内には、図4及び図5に示すように、図示を省略している左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図5で矢示方向に移動走査する。
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びブラック(Bk)の各色の記録用インク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等を記録用インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、図示しない記録用インク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部105に装填された本発明のインクカートリッジ201から、本発明の前記記録用インクが供給されて補充される。
一方、給紙トレイ102の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ143)、及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられ、また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない厚み40μm程度の樹脂、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配設されている。
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱可能に装着されている。両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に、先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト157が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。
そして、サブタンク135内の記録用インクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ201から所要量の記録用インクがサブタンク135に補給される。
このインクジェット記録装置においては、本発明のインクカートリッジ201中の記録用インクを使い切ったときには、インクカートリッジ201における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ201は、縦置きで前面装填構成としても、安定した記録用インクの供給を行うことができる。したがって装置本体101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ201の交換を容易に行うことができる。
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
また、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
以下、本発明のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドについて説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの要素拡大図、図7は、同ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図である。
このインクジェットヘッドは、インク供給口(不図示)と、共通液室1bとなる彫り込みを形成したフレーム10と、流体抵抗部2aと、加圧液室2bとなる彫り込みと、ノズル3aに連通する連通口2cを形成した流路板20と、ノズル3aを形成するノズル板と、凸部6a、ダイヤフラム部6b及びインク流入口6cを有する振動板60と、該振動板60に接着層70を介して接合された積層圧電素子50と、該積層圧電素子50を固定しているベース40と、を備えている。
ベース40は、例えば、チタン酸バリウム系セラミックからなり、積層圧電素子50を2列配置して接合している。
積層圧電素子50は、厚み10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚みが数μm/1層の銀・パラジウム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層している。この内部電極層は両端で外部電極に接続する。
積層圧電素子50はハーフカットのダイシング加工により櫛歯上に分割され、1つ毎に駆動部5f及び支持部5g(非駆動部)として使用する。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工により分割されるように、切り欠き等の加工によって長さを制限しており、これらは複数の個別電極となる。他方はダイシングでは分割されずに導通しており共通電極となる。
駆動部の個別電極にはFPC8が半田接合されている。また、共通電極は積層圧電素子50の端部に電極層を設けて回し込んでFPC8のGnd電極に接合している。FPC8にはドライバIC(不図示)が実装されている。これにより、駆動部5fへの駆動電圧印加を制御している。
振動板60は、薄膜のダイヤフラム部6bと、このダイヤフラム部6bの中央部に形成した駆動部5fとなる積層圧電素子50と接合する島状凸部(アイランド部)6aと、支持部に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口6cとなる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。ダイヤフラム部の厚みは3μm、幅は35μm(片側)である。
この振動板60の島状凸部6aと、積層圧電素子50の駆動部5fと、振動板50と、フレーム10との結合は、ギャップ材を含有する接着層70をパターニングして接着している。
流路板20は、シリコン単結晶基板を用いて、流体抵抗部2a、加圧液室2bとなる彫り込み、及びノズル3aに対する位置に連通口2cとなる貫通口をエッチング工法でパターニングしている。
エッチングで残された部分が加圧液室2bの隔壁2dとなる。また、このヘッドではエッチング幅を狭くする部分を設けて、これを流体抵抗部2aとした。
ノズルプレート30は、金属材料、例えば、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル3aを多数形成している。このノズル3aの内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル3aの径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmである。また、各列のノズルピッチは150dpiとした。
このノズルプレート30のインク吐出面(ノズル表面側)には、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層3bを設けている。PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えば、フッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質が得られるようにしている。また、これらの中でも、例えば、フッ素系樹脂としては、色々な材料が知られているが、変性パーフルオロポリオキセタン(ダイキン工業株式会社製、商品名:オプツールDSX)を厚みが30〜100Åとなるように蒸着することで良好な撥水性を得ることができる。
インク供給口及び共通液室1bとなる彫り込みを形成するフレーム10は、樹脂成形により作製される。
以上のような構成のインクジェットヘッドにおいては、記録信号に応じて駆動部5fに駆動波形(10〜50Vのパルス電圧)を印加することによって、駆動部5fに積層方向の変位が生じ、振動板30を介して加圧液室2bが加圧されて圧力が上昇し、ノズル3aからインク滴が吐出される。
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室2b内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室2b内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室1bに流入し、共通液室1bからインク流入口6cを経て流体抵抗部2aを通り、加圧液室2b内に充填される。
流体抵抗部2aは、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部2aを適宜に選択することにより、残留圧力の減衰とリフィル時間とのバランスが取れ、次のインク滴の吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くすることができる。
<インク記録物>
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録されたインク記録物は、記録媒体上に本発明の前記記録用インクを用いて形成された画像を有してなる。前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−ブラックインクの作製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.5μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、実施例1のブラックインクを作製した。
<インク組成>
・KM−9036(東洋インキ製造株式会社製、自己分散型カーボンブラック)・・・40質量%
・湿潤剤としてのグリセリン・・・10質量%
・湿潤剤としての3−メチル−1,3−ブタンジオール・・・15質量%
・湿潤剤としての2−ピロリドン・・・2質量%
・浸透剤としての2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2質量%
・下記構造式で表されるフッ素系界面活性剤・・・1質量%
ただし、前記構造式中、jは2、kは8を表す。
・アクリルシリコーン系樹脂エマルジョン(東洋インキ製造株式会社製、ナノクリルSBCX−2821)・・・15質量%
・シリコーン消泡剤(信越化学工業株式会社製、KS508)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
(実施例2)
<イエローインクの作製>
−ポリマー溶液Aの調製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。次に、65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
−顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調製−
得られたポリマー溶液Aを28g、C.I.ピグメントイエロー74を26g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを充分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、イエローポリマー微粒子の水分散体を得た。
−イエローインクの調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.5μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、実施例2のイエローインクを作製した。
・上記調製したイエローポリマー微粒子分散体・・・40質量%
・湿潤剤としてのグリセリン・・・8質量%
・湿潤剤としての1,3−ブタンジオール・・・20質量%
・浸透剤としての2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2質量%
・下記構造式で表されるフッ素系界面活性剤・・・1質量%
ただし、前記構造式中、jは2、kは8を表す。
・アクリルシリコーン系樹脂エマルジョン(東洋インキ製造株式会社製、ナノクリルSBCX−2821)・・・10質量%
・シリコーン消泡剤(信越化学工業株式会社製、KS508)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
(実施例3)
<マゼンタインクの作製>
−顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調製−
実施例2において、顔料としてのC.I.ピグメントイエロー74を、C.I.ピグメントレッド122に変えた以外は、実施例1と同様にして、マゼンタポリマー微粒子の水分散体を調製した。
−マゼンタインクの作製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.5μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、実施例3のマゼンタインクを作製した。
・上記調製したマゼンタポリマー微粒子の分散体・・・50質量%
・湿潤剤としてのグリセリン・・・10質量%
・湿潤剤としての1,3−ブタンジオール・・・18質量%
・浸透剤としての2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2質量%
・下記構造式で表されるフッ素系界面活性剤・・・1質量%
ただし、前記構造式中、jは2、kは8を表す。
・アクリルシリコーン系樹脂エマルジョン(東洋インキ製造株式会社製、ナノクリルSBCX−2821)・・・10質量%
・シリコーン消泡剤(KS508、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
(実施例4)
<シアンインクの作製>
−顔料含有ポリマー微粒子水分散体の調製−
実施例2において、顔料としてのC.I.ピグメントイエロー74を、C.I.ピグメントブルー15:3に変えた以外は、実施例1と同様にして、シアンポリマー微粒子の水分散体を調製した。
−シアンインクの調製−
下記処方のインク組成物を作製し、室温にて充分に攪拌した後、平均孔径1.5μmのメンブレンフィルターにて濾過を行い、実施例4のシアンインクを作製した。
・シアンポリマー微粒子分散体・・・40質量%
・湿潤剤としてのグリセリン・・・8質量%
・湿潤剤としての1,3−ブタンジオール・・・20質量%
・浸透剤としての2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2質量%
・下記構造式で表されるフッ素系界面活性剤・・・1質量%
ただし、前記構造式中、jは2、kは8を表す。
・アクリルシリコーン系樹脂エマルジョン(東洋インキ製造株式会社製、ナノクリルSBCX−2821)・・・10質量%
・シリコーン消泡剤(KS508、信越化学工業株式会社製)・・・0.1質量%
・イオン交換水・・・残量
(比較例1)
Epson社製市販品(PXインク)のイエローインクカートリッジから抜き取ったインクを、比較例1のイエローインクとした。このインクの25℃での初期粘度は3.1mPa・sであった。
(比較例2)
Epson社製市販品(PXインク)のマゼンタインクカートリッジから抜き取ったインクを、比較例2のマゼンタインクとした。このインクの25℃での初期粘度は3.5mPa・sであった。
(比較例3)
Epson社製市販品(PXインク)のシアンインクカートリッジから抜き取ったインクを、比較例3のシアンインクとした。このインクの25℃での初期粘度は3.3mPa・s以下であった。
(比較例4)
Epson社製市販品(PXインク)のブラックインクカートリッジから抜き取ったインクを、比較例4のブラックインクとした。このインクの25℃での初期粘度は3.4mPa・s以下であった。
次に、実施例1〜4の各インク及び比較例1〜4の各インクについて、以下のようにして、評価(1)を行った。
<評価(1):蒸発時間に伴う比粘度変化率の測定>
実施例1〜4の各インク及び比較例1〜4の各インクの一定量を、25℃、50%RHの環境下で放置し、一定時間放置後のインク質量変化を測定し、その時点でのインクの粘度(25℃)を測定した。そして、下記数式1から比粘度変化率を求めた。
<数式1>
比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
前記インクの粘度の測定は、東機産業株式会社製の粘度計RL−500を用いて行った。経過時間と比粘度変化率との関係(25℃)を図8に示す。
図8の結果から、実施例1〜4の各インクは、いずれも20〜40時間の間に比粘度変化率が100を超える点を有する。これに対し、比較例1〜4の各インクは、比粘度変化率が100を超える点が40時間よりも長いところにあった。
また、実施例1のインクの初期粘度は、25℃で、8.3mPa・s、実施例2のインクの初期粘度は、25℃で、8.0mPa・s、実施例3のインクの初期粘度は、25℃で、8.2mPa・s、実施例4のインクの初期粘度は、25℃で、8.1mPa・sであり、いずれも6mPa・sを超えていた。
(実施例5及び比較例5)
−インクセットの調製及び評価−
次に、実施例1〜4の各インクを組み合わせて実施例5のインクセットを調製した。また、比較例1〜4のインクを組み合わせて比較例5のインクセットを調製した。これら実施例5及び比較例5のインクセットについて、以下のようにして、評価(2)を行った。結果を表1に示す。
<評価(2):印字品質>
実施例5のインクセットについては、インクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSiO G707)を使用した。また、比較例5のインクセットについては、インクジェットプリンタ(PM−4000PX、エプソン社製)を用い、カラー画像を印字速度が同じになるようなモードで印字した。なお、評価用紙は普通紙を使用した。
印字した画像の文字滲み、及び色境界滲みについて目視観察を行い、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:滲みがない
○:滲みがほとんどない
△:滲みが若干ある(実使用可能レベル)
×:滲みが明確にある(実使用不能レベル)
表1の結果から、実施例5のインクセットは、比較例5のインクセットに比べて、インクが紙に着弾する前及び着弾時の水分蒸発でインクの増粘が起こるため、特に文字の滲みのない鮮明な画像が得られることが判った。
(比較例6)
−インクセットの作製−
実施例5のインクセットにおける各インクから、それぞれフッ素系界面活性剤及び浸透剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール又は2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)を除いた以外は、実施例5のインクセットと同様にして、比較例6のインクセットを作製した。
(実施例6)
−インクセットの作製−
実施例5のインクセットにおける各インクから、それぞれ浸透剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール又は2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)を除いた以外は、実施例5のインクセットと同様にして、実施例6のインクセットを作製した。
(実施例7)
−インクセットの作製−
実施例5のインクセットにおける各インクから、それぞれフッ素系界面活性剤を除いた以外は、実施例5のインクセットと同様にして、実施例7のインクセットを作製した。
<評価>
次に、比較例6、実施例6、及び実施例7のインクセットの各ブラックインクと、実施例5のインクセットにおけるブラックインク(実施例1)の動的表面張力を測定した。
ここで、動的表面張力は、クルス社製の動的表面張力測定装置BP−2を使用し、25℃で測定を行った。
浸透剤を添加していない実施例6のブラックインクでは、10〜100msecでの動的な表面張力が38mN/mであり、下がらなかった。1,000msec付近の静的な表面張力が25mN/mであった。
また、フッ素系界面活性剤を添加していない実施例7のブラックインクは、10〜100msecでの動的な表面張力が40mN/mであり、1,000msec付近の静的な表面張力が37mN/mであり、全体的に表面張力が高いままであった。
また、実施例5のブラックインクは、10〜100msecでの動的な表面張力が33mN/mであり、1,000msec付近の静的な表面張力が25mN/mであった。
また、比較例6のブラックインクは、10〜100msecでの動的な表面張力が47mN/mであり、1,000msec付近の静的な表面張力が46.5mN/mであった。
また、比較例6、実施例6、及び実施例7のインクセットの各インクについて、上記評価(1)を行ったところ、比較例6のインクセットの各インクは比粘度変化率が100を超える点が40時間以降であった。また、実施例6及び7のインクセットの各インクは比粘度変化率が100を超える点が20〜40時間の間にあった。
また、比較例6の各インクの初期粘度は、いずれも25℃で、6.5mPa・s近辺であり、実施例6の各インクの初期粘度は、いずれも25℃で、7.0mPa・s近辺であり、実施例7の各インクの初期粘度は、いずれも25℃で、7.5mPa・s近辺であった。
また、比較例6、実施例6、及び実施例7のインクセットの各インクセットについて、上記評価(2)を行った。結果を表2に示す。
表2の結果から、界面活性剤及び浸透剤を添加していない比較例6のインクセットは、実施例6及び7に比べて、文字滲み及び色境界滲みともに大きいことが認められた。なお、実施例6及び7のインクセットは、実施例5のインクセットに比べて、文字滲み及び色境界滲みともやや劣る結果となったが、実使用は可能レベルであった。
(比較例7)
−シアンインクの作製−
実施例4のシアンインクにおいて、湿潤剤としてのグリセリンを5質量%、及び1,3−ブタンジオールを23質量%とした以外は、実施例4と同様にして、比較例7のシアンインクを作製した。
(比較例8)
−シアンインクの作製−
実施例4のシアンインクにおいて、湿潤剤としてのグリセリンを23質量%、及び1,3−ブタンジオールを5質量%とした以外は、実施例4と同様にして、比較例8のシアンインクを作製した。
次に、実施例4及び比較例7〜8の各シアンインクについて、上記評価(1)を行ったところ、比較例7のシアンインクは比粘度変化率が100を超える点が20時間よりもかなり手前であったのに対し、比較例8のシアンインクは粘度上昇率が100を超える点が40時間以降であった。比較例7のインクの初期粘度は、25℃で、8.3mPa・s、比較例8のインクの初期粘度は、25℃で、6.9mPa・sであった。
また、これらのシアンインクについて、上記評価(2)の文字滲みの評価、及び下記の評価(3)の連続印字性の評価を行った。結果を表3に示す。
<評価(3):連続印字性評価>
上記評価(2)で使用したプリンタを使って、単色ベタのチャートを30枚連続印字させ、吐出不良が発生した時の印字枚数をカウントした。なお、50枚印字しても吐出不良が発生しなかった場合には50枚以上とした。
表3の結果から、比較例7のインクは、実施例4のインクに比べて、連続吐出安定性が劣ることが認められた。また、比較例8のインクは、実施例4のインクに比べて、文字滲みがやや悪く、連続吐出安定性もやや劣る結果となった。
(実施例8)
−イエローインクの作製−
実施例2のイエローインクにおいて、更に2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールを0.5質量%添加した以外は、実施例2と同様にして、実施例8のイエローインクを作製した。
(実施例9)
−シアンインクの作製−
実施例4のシアンインクにおいて、更に2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールを0.5質量%添加した以外は、実施例4と同様にして、実施例9のシアンインクを作製した。
<評価>
次に、実施例8〜9の各インクについて、上記評価(1)を行ったところ、いずれも20〜40時間の間に比粘度変化率が100を超える点を有していた。また、実施例8のインクの初期粘度は、25℃で、8.3mPa・s、実施例9のインクの初期粘度は、25℃で、8.5mPa・sであった。
また、実施例2、実施例4、実施例8、及び実施例9の各インクについて、上記評価(2)の文字滲みの評価、及び上記評価(3)の連続印字性評価を行った。結果を表4に示す。
表4の結果から、実施例8及び9のインクは、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールを添加していない実施例2及び4のインクと同等レベルの良好な結果が得られた。
(実施例10)
−ブラックインクの作製−
実施例1のブラックインクにおいて、湿潤剤としての3−メチル−1,3−ブタンジオールを、1,3−ブタンジオールに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例10のブラックインクを作製した。
得られた実施例10のインクについて、上記評価(1)を行ったところ、20〜40時間の間に比粘度変化率が100を超える点を有し、実施例1よりも遅い時間であった。また、実施例10のインクの初期粘度は、25℃で、7.6mPa・sであった。
(実施例11)
−シアンインクの作製−
実施例4のシアンインクにおいて、湿潤剤としての1,3−ブタンジオールを、3−メチル−1,3−ブタンジオールに変えた以外は、実施例4と同様にして、実施例11のシアンインクを作製した。
得られた実施例11のインクについて、上記評価(1)を行ったところ、20〜40時間の間に比粘度変化率が100を超える点を有し、実施例4よりも遅い時間であった。また、実施例11のインクの初期粘度は、25℃で、8.6mPa・sであった。
次に、実施例1、実施例4、実施例10、及び実施例11の各インクについて、以下のようにして、評価(4)を行った。結果を表5に示す。
<評価(4):空吐出シーケンス評価>
評価機として、インクジェットプリンタ(株式会社リコー製、IPSiO G707、ノズル径26μm)を使用し、各色の吐出させるインクの量とタイミングが同じであるようなチャートを連続印字させた。その際、非印字領域に空吐出をさせる間隔(秒)と空吐出の滴数を変えて、連続500枚印字させた後の噴射曲がりを評価した。印字環境は15℃で30%RH、25℃で65%RHの2環境下で行った。
連続印字後の噴射曲がりについては、インクジェット用光沢フィルム上に全ノズル各20滴印字したものについて拡大写真をとり、目視で判断し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:噴射方向乱れがなく、ドットサイズも正常で1列に並んでいる
○:噴射方向乱れはなく、ドットもほぼ1列に並んでいるが、ドットサイズが若干小さい
△:若干噴射方向が乱れているが、乱れが第2発目の列に及んでいない
×:第1発目のドットが第2発目のドットのラインを超えている
××:第2滴目が吐出していない
表5の結果から、印字環境温湿度及びインクの比粘度変化率に応じて、排出させる間隔及びインクの滴数を最適化することで、印字速度を落とさずに、高品位画像を印字することが可能となることが判った。
(比較例9)
−ブラックインクの作製−
実施例1において、アクリルシリコーン系樹脂エマルジョンを除いた以外は、実施例1と同様にして、比較例9のブラックインクを作製した。
(実施例12)
−ブラックインクの作製−
実施例1において、アクリルシリコーン系樹脂エマルジョンを、ポリエステル樹脂エマルジョン(ペスレジンA210、高松油脂社製)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例12のブラックインクを作製した。
次に、比較例9及び実施例12のインクについて、上記評価(1)を行ったところ、いずれも20〜40時間の間に比粘度変化率が100を超える点を有し、比較例9のインクの初期粘度は、25℃で、7.6mPa・s、実施例12のインクの初期粘度は、25℃で、8.4mPa・sであった。
また、実施例1、比較例9、及び実施例12の各インクについて、以下のようにして、評価(5)定着性を行った。結果を表6に示す。
<評価(5):定着性評価>
上記評価(2)で使用したプリンタを用い、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。1日間室温環境で乾燥させた後、綿布で印字部を一定の圧力で10回擦り、綿布に転写したインクの量を目視観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:綿布へのインクの転写は殆どみられない
△:若干綿布へのインクの転写が見られる
×:明らかにかなりの量のインクが綿布に転写している
表6の結果から、樹脂エマルジョンを添加することで定着性が改良されることが分かった。また、実施例1と実施例12との結果から、アクリルシリコーン系樹脂エマルジョンを用いることで、より定着性が向上することが認められる。
本発明の記録用インクは、普通紙に対する画像品質及び高速印字対応に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性が良好であるので、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
図1は、本発明のインクカートリッジの一例を示す概略図である。 図2は、図1のインクカートリッジのケースも含めた概略図である。 図3は、インクジェット記録装置のインクカートリッジ装填部のカバーを開いた状態の斜視説明図である。 図4は、インクジェット記録装置の全体構成を説明する概略構成図である。 図5は、本発明のインクジェットヘッドの一例を示す概略拡大図である。 図6は、本発明のインクジェットヘッドの他の一例を示す要素概略拡大図である。 図7は、図6のインクジェットヘッドの要部拡大概略断面図である。 図8は、実施例1〜4及び比較例1〜4の各インクにおける蒸発時間と比粘度変化率との関係を示すグラフである。
符号の説明
10 フレーム
20 流路板
30 ノズルプレート
40 ベース
50 積層圧電素子
60 振動板
70 接着層
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
111 上カバー
112 前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
144 分離パッド
151 搬送ベルト
152 再度カウンタローラ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 デンションローラ
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
201 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装

Claims (16)

  1. 少なくとも水、着色剤、湿潤剤、アクリルシリコーンエマルジョン、及びフッ素系界面活性剤を含有する記録用インクであって、
    前記湿潤剤がグリセリンを含有し、該グリセリンの含有量が湿潤剤全体の20〜80質量%であり、更に1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、及び2−ピロリドンから選択される少なくとも1種を含有し、
    前記記録用インクは、下記数式1で表される比粘度変化率が、20時間未満では100以下であり、かつ20〜40時間では100を超える点を有し、かつ前記記録用インクの初期粘度が、6.0mPa・s以上であることを特徴とする記録用インク。
    <数式1>
    比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
    ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
  2. 記録用インク中の水分量が35質量%以上であり、かつ該記録用インク中の着色剤と樹脂エマルジョンの合計含有量が、固形分で10〜30質量%である請求項1に記載の記録用インク。
  3. 着色剤が、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料である請求項1から2のいずれかに記載の記録用インク。
  4. 着色剤が、ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョンである請求項1から2のいずれかに記載の記録用インク。
  5. フッ素系界面活性剤が、下記構造式(1)で表される化合物である請求項1から4のいずれかに記載の記録用インク。
    ただし、前記構造式(1)中、jは、0〜10の整数を表す。kは、1〜40の整数を表す。
  6. 更に、浸透剤を含有する請求項1から5のいずれかに記載の記録用インク。
  7. 浸透剤が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールの少なくともいずれかである請求項6に記載の記録用インク。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の記録用インクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  10. インク飛翔手段が、ノズル径35μm以下のノズルを有し、かつ印字速度が8ppm以上である請求項9に記載のインクジェット記録装置。
  11. インク排出手段を有し、かつ該インク排出手段は、印写中のノズル近傍の記録用インクにおける、下記数式1で表される比粘度変化率が100を超える前に、ノズル孔内部の記録用インクを排出させる請求項9から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
    <数式1>
    比粘度変化率={〔(η−η)/η〕×100}/T
    ただし、前記数式1中、ηは、25℃、50%RHの環境下での蒸発試験を行う前の記録インクの初期粘度(mPa・s)を表す。ηは、前記蒸発試験を行ったときのT時間経過後の粘度(mPa・s)を表す。Tは、蒸発試験における経過時間を表す。
  12. インク排出手段が、非印字領域に記録用インクを吐出させる手段である請求項11に記載のインクジェット記録装置。
  13. インク排出手段から排出される記録用インク量が、1ノズルにつき1分間に、2,000〜30,000plである請求項11から12のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  14. インク排出手段から排出される記録用インク量が、温湿度センサの値によって可変である請求項11から13のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  15. インク排出手段から排出される記録用インク量が、記録用インクの比粘度変化率によって可変である請求項11から13のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  16. 請求項1から7のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
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