JP2011252072A - インキ - Google Patents

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淳 越智
Mitsuyoshi Yugawa
光好 湯川
Hiroshi Kobayashi
博 小林
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栄治 葭田
Fumihiro Saito
文宏 斎藤
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Abstract

【課題】シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、基板等の被印刷体の表面にムラや欠陥等のない厚みが均一なインキパターンを形成できる反転印刷法用のインキを提供する。
【解決手段】最大泡圧法によって求められる25℃での動的表面張力を、気泡の発生周期を0.05Hzに設定して測定したとき16mN/m以上、23mN/m以下で、かつ前記発生周期を10.0Hzに設定して測定したとき20mN/m以上、27mN/m以下としたインキである。
【選択図】なし

Description

本発明は、いわゆる反転印刷法に用いるインキに関するものである。
液晶ディスプレイ(LCD)を構成するカラーフィルタ等の、基板の面積と比較してごく微細なインキパターンを、前記基板のほぼ全面に形成して前記カラーフィルタ等を製造するために、従来はいわゆるフォトリソグラフ法を利用した形成方法が採用されてきた。
しかし近時、前記フォトリソグラフ法に代えてできるだけ工程数を少なく、消費エネルギーを小さく、使用する材料の無駄を少なく、そして短時間で生産性良くパターン形成をするために印刷法、特に凹版オフセット印刷法を利用することが普及しつつある。
前記凹版オフセット印刷法では、印刷するインキパターンに対応した凹部を有する版(凹版)の前記凹部に充填したインキを、前記版から印刷用ブランケットの表面に転写させ、次いで前記印刷用ブランケットの表面から被印刷体としての基板の表面に再転写させることで、前記基板の表面にインキパターンが形成される。
しかし凹版オフセット印刷法によって基板の表面に形成されるインキパターンは厚みのばらつきが大きくなる傾向がある。すなわち凹版オフセット印刷法では、前記工程から明らかなようにインキの転写が2度行われ、それぞれの転写の度に、インキが転写先に転写される分と転写元に残る分とに引き裂かれるいわゆるインキの分離を生じるため、最終的に基板の表面に転写されるインキパターンに、前記分離の痕跡として高低差の大きい凹凸が残留して厚みのばらつきが大きくなる傾向があるのである。
そこで、特に各画素内および各画素間で色濃度を均一化するために厚みができるだけ均一であることが求められるカラーフィルタ等を形成するために、凹版オフセット印刷法に代わる新たな印刷法として反転印刷法が開発された(特許文献1〜4等参照)。
前記反転印刷法では、印刷用ブランケットの表面の略全面にインキを供給してベタのインキ層を形成し、前記インキ層を、表面に所定のインキパターンに対応した凹部を有する版の前記表面に接触させて前記凹部以外のインキ層を前記版の表面に転写させることで前記印刷用ブランケットの表面から選択的に除去して、前記印刷用ブランケットの表面に前記凹部に対応したインキパターンを形成したのち、前記インキパターンを基板の表面に転写させることで、前記基板の表面にインキパターンが形成される。
かかる反転印刷法によれば、基板の表面にインキパターンを形成するのに要するインキの転写回数を、印刷用ブランケットの表面から基板の表面への転写時の1回に減らすことができるため、従来の凹版オフセット印刷法に比べてインキパターンの表面に残留する凹凸の高低差を小さく、厚みのばらつきを小さくすることができる。
印刷用ブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴムによって形成されたシリコーンブランケットが広く用いられる。シリコーンブランケットはインキの離型性に優れるため、その表面から基板の表面へのインキパターンの転写性を向上できる。
しかしシリコーンブランケットの表面はインキの濡れ性が低く、工程の最初に前記シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成する際にはじき等を生じやすいため、前記はじき等が原因で生じる欠陥やムラのない厚みが均一なインキ層を形成するのが難しいという問題がある。
そこで、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備えた反転印刷法用のインキを得るべく、前記インキの表面張力を低下させることが検討されている。
またインキの表面張力を低下させることで、シリコーンブランケットの表面にベタのインキ層を形成してから、基板の表面に転写されたインキパターンが乾燥して固化されるまでの間にいわゆるセルフレベリング効果によって、インキパターンのムラを小さくして厚みをより一層均一化する効果も期待されている。
インキの表面張力を低下させるためには、例えばn−ヘキサン、イソプロピルアルコール、フッ素系溶剤等の表面張力の低い溶剤(以下「低張力溶剤」と記載することがある)を単独で用いるか、あるいは他の溶剤と併用したり、さらにシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤を含有させたりすることが考えられる。
しかしインキの表面張力を低下させるほど、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを供給してベタのインキ層を形成する際に、インキ中にエアを巻き込む泡噛みや、前記インキ層を形成するために用いるスリットダイコータのノズルの汚れ等を生じやすくなるとともに、前記泡噛みやノズルの汚れ等が原因となって前記インキ層、ひいてはインキパターンに欠陥を生じやすくなる。
ノズルの汚れとは、表面張力の低いインキがスリットダイコータの先端部分から上面へ不規則に濡れ拡がる現象を指す。適度な表面張力を有するインキは、スリットダイコータの先端部分において一定幅に付着してそれ以上濡れ拡がらない上、垂れたりするおそれがないのに対し、前記のように不規則に濡れ拡がったインキは、それ自体の表面張力が低いことと相まって、その一部が液滴として塗布面上に垂れたりしやすい。そして垂れたインキがインキ層に混入することでインキ層に例えばブツ状の欠陥を生じやすくなる。また泡噛みが原因となって、インキ層にピンホール等の欠陥を生じやすくなる。
特開平11−58921号公報 特開平11−198337号公報 特開2000−289320号公報 特開2006−111725号公報
本発明の目的は、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、基板等の被印刷体の表面に前記ムラや欠陥等のない厚みが均一なインキパターンを形成できる反転印刷法用のインキを提供することにある。
本発明は、シリコーンブランケットの表面の略全面に形成したインキ層を、表面に所定のインキパターンに対応した凹部を有する版の前記表面に接触させて前記凹部以外のインキ層を前記版の表面に転写させることで前記シリコーンブランケットの表面から選択的に除去して、前記シリコーンブランケットの表面に前記凹部に対応したインキパターンを形成したのち、前記インキパターンを被印刷体の表面に印刷する反転印刷法に用いるインキであって、前記インキ中に挿入したプローブから気泡を連続的に発生させたときの最大泡圧を計測する最大泡圧法によって求められる25℃でのインキの動的表面張力が、気泡の発生周期を0.05Hzに設定して測定したとき16mN/m以上、23mN/m以下で、かつ前記発生周期を10.0Hzに設定して測定したとき20mN/m以上、27mN/m以下であることを特徴とするインキである。
発明者の検討によると、前記最大泡圧法において、気泡の発生周期を低速(0.05Hz)に設定して測定した時のインキの動的表面張力が小さいほど、前記インキはセルフレベリング効果に優れるため、最終的に被印刷体の表面にムラのない厚みが均一なインキパターンを形成できる。
しかし、かかる低速での動的表面張力が小さいインキは、一般に気泡の発生周期を高速(10.0Hz)に設定して測定した時のインキの動的表面張力も小さくなる傾向にある。そして高速での動的表面張力が小さいインキは、シリコーンブランケットの表面の略全面に供給してベタのインキ層を形成する際に泡噛みやノズルの汚れ等を生じやすい。そのため前記インキ層やインキパターンに、前記泡噛みや汚れ等による欠陥が生じやすい。
これに対し本発明では、前記のように測定温度25℃の環境下、気泡の発生周期を0.05Hz、つまり1秒間に0.05個の気泡を発生させながら測定した低速での動的表面張力を16mN/m以上、23mN/m以下とすることで、インキの濡れ性が高くなりすぎるのを抑制しながら前記インキのセルフレベリング効果を高めて、被印刷体の表面にムラのない厚みが均一なインキパターンを形成できる。
また測定温度25℃の環境下、気泡の発生周期を10.0Hz、つまり1秒間に10.0個の気泡を発生させながら測定した高速での動的表面張力を20mN/m以上、27mN/m以下とすることで、シリコーンブランケットの表面にベタのインキ層を形成する際に泡噛みやノズルの汚れ、あるいは濡れ性の不足によるはじき等が生じるのを抑制して前記インキ層や、ひいてはインキパターンに、前記泡噛みや汚れ、はじき等によるムラや欠陥が生じるのを防止することができる。
本発明によれば、シリコーンブランケットの表面に対して適度の濡れ性と離型性とを兼ね備え、基板等の被印刷体の表面に前記ムラや欠陥等のない厚みが均一なインキパターンを形成できる反転印刷法用のインキを提供することが可能となる。
本発明のインキは、印刷用ブランケットとしてシリコーンブランケットを用いた反転印刷法に用いるものであって、前記インキ中に挿入したプローブから気泡を連続的に発生させたときの最大泡圧を計測する最大泡圧法によって求められるインキの25℃での動的表面張力が、気泡の発生周期を0.05Hzに設定して測定したとき16mN/m以上、23mN/m以下で、かつ前記発生周期を10.0Hzに設定して測定したとき20mN/m以上、27mN/m以下であることを特徴としている。
前記本発明のインキにおいて、25℃での動的表面張力が、気泡の発生周期を0.05Hzの低速に設定して測定したとき16mN/m以上、23mN/m以下に限定されるのは下記の理由による。
すなわち、前記低速での動的表面張力が16mN/m未満であるインキは、シリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性が高くなりすぎて、インキパターンを、前記シリコーンブランケットの表面から基板の表面に良好に転写させることができず、転写されたインキパターンの形状に乱れを生じる。
一方、前記低速での動的表面張力が23mN/mを超えるインキはセルフレベリンク効果が不十分であり、先に説明したようにシリコーンブランケットの表面にベタのインキ層を形成してから、基板の表面に転写されたインキパターンが乾燥して固化されるまでの間にムラを小さくして厚みを均一化する効果が得られない。
これに対し、前記低速での動的表面張力が16mN/m以上、23mN/m以下の範囲内であれば、インキの濡れ性が高くなりすぎるのを抑制しながら前記インキのセルフレベリング効果を高めて、ムラのない厚みが均一なインキパターンを形成できる。
なおこれらの効果をさらに向上することを考慮すると、低速での動的表面張力は、前記範囲内でも17mN/m以上であるのが好ましく、22mN/m以下であるのが好ましい。
また本発明のインキにおいて、25℃での表面張力が、気泡の発生周期を10.0Hzの高速に設定して測定したとき20mN/m以上、27mN/m以下に限定されるのは下記の理由による。
すなわち、前記高速での動的表面張力が20mN/m未満であるインキはインキ層の形成時に泡噛みやノズルの汚れ等を生じやすいため、前記インキ層やインキパターンに、前記泡噛みや汚れ等による欠陥が生じるのを防止する効果が得られない。
一方、前記高速での動的表面張力が27mN/mを超える場合には、シリコーンブランケットの表面に対するインキの濡れ性が不足して、前記表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成する際にはじき等を生じたり、前記はじき等が原因となってインキ層にムラや欠陥等を生じたりするおそれがある。
これに対し、前記高速での動的表面張力が20mN/m以上、27mN/m以下であれば、前記泡噛みやノズルの汚れ、あるいは濡れ性の不足によるはじき等を生じにくくして前記インキ層、ひいてはインキパターンに、前記泡噛みや汚れ、はじき等によるムラや欠陥が生じるのを確実に防止することができる。
なおこれらの効果をさらに向上することを考慮すると、高速での動的表面張力は、前記範囲内でも21mN/m以上であるのが好ましく、26mN/m以下であるのが好ましい。
インキとしては、バインダ樹脂と、前記バインダ樹脂を溶解させる溶剤と、着色剤とを基本成分として含み、前記基本成分に、先に説明したように表面張力を調整するための低張力溶剤や界面活性剤等を必要に応じて含有させたものが一般的である。
このうちバインダ樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステルメラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
特にLCD用のカラーフィルタ等の耐久性を向上することを考慮すると、バインダ樹脂としては熱硬化性、紫外線硬化性、光硬化性等を有するバインダ樹脂が好ましい。
また溶剤としては、前記バインダ樹脂を良好に溶解させて析出を防止しうる種々の溶剤が挙げられる。
前記溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル(別名「メチルセロソルブ」「2−メトキシエタノール」)、エチレングリコールモノエチルエーテル(別名「セロソルブ」「2−エトキシエタノール」)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名「1−メトキシ−2−プロピルアセテート」、以下「PGMEA」と略記する場合がある)、エチレングリコールモノブチルエーテル(別名「ブチルセロソルブ」「2−ブトキシエタノール」)等の1種または2種以上が挙げられる。
着色剤としては、種々の顔料、染料が挙げられる。特にLCD用のカラーフィルタの場合は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐光性等に優れたインキパターンを形成することを考慮すると有機、無機の各種顔料が好ましい。
低張力溶剤としては、前記最大泡圧法によって求められる25℃での表面張力が、気泡の発生周期を10.0Hzの高速に設定して測定したとき12mN/m以上、21mN/m以下程度である種々の溶剤が挙げられる。
前記低張力溶剤としては、例えばn−ペンタン(16.0mN/m)、n−ヘキサン(18.4mN/m)、n−ヘプタン(19.6mN/m)、イソプロピルアルコール(20.8mN/m)、フッ素系溶剤、低分子量シリコーンオイル(18〜19mN/m)等が挙げられる。
またフッ素系溶剤としては、分子中にフッ素原子を含み、前記表面張力の範囲を満足する種々のフッ素系溶剤が使用可能であるが、特に塩素を含まないハイドロフルオロポリエーテル類、およびハイドロフルオロカーボン類からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
このうちハイドロフルオロポリエーテル類としては、例えばエチルノナフルオロブチルエーテル(13.6mN/m)、メチルノナフルオロブチルエーテル(13.6mN/m)等の1種または2種以上が挙げられる。またハイドロフルオロエーテル類としては、例えば住友スリーエム(株)製のNOVEC(登録商標)HFE−7200(13.6mN/m)等も挙げられる。HFE−7200は、ともにハイドロフルオロエーテル類であるエチルノナフルオロイソブチルエーテルとエチルノナフルオロブチルエーテルとの混合物である。
またハイドロフルオロカーボン類としては、例えばトリデカフルオロペンタン(14.1mN/m)、トリデカフルオロヘキサン(12.5mN/m)等の1種または2種以上が挙げられる。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられ、特にインキの表面張力を低下させる効果の点でフッ素系界面活性剤が好ましい。またフッ素系界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としてアニオン系もしくはカチオン系のものを用いた場合には、例えばLCDのカラーフィルタの場合、前記界面活性剤が液晶中に混入すると前記液晶の配向に影響を及ぼして表示の不良等を生じるおそれがあるが、ノニオン系のフッ素系界面活性剤であればかかる問題を生じるおそれはない。
前記フッ素系界面活性剤は、重量平均分子量Mwが6000以上、特に20000以上であるのが好ましく、80000以下、特に60000以下であるのが好ましい。
またインキには、さらに顔料分散剤、レベリング剤、チキソトロピック粘性付与剤、消泡剤等の各種添加剤を任意の割合で含有させてもよい。
前記各成分からなるインキの、低速および高速での動的表面張力を先に説明した範囲内に調整するためには、前記各成分の種類および組み合わせや、前記各成分の含有割合等を調整すればよい。
例えばバインダ樹脂として重量平均分子量Mwが8000以上、12000以下程度のポリエステルメラミン樹脂を用い、かつ溶剤としてPGMEAを用いるとともに、着色剤として一次粒子径が100nm以下程度の顔料を用いる系では、前記ポリエステルメラミン樹脂100質量部に対して、PGMEAの含有割合を280質量部以上、320質量部以下、顔料の含有割合を18質量部以上、22質量部以下に設定し、また低張力溶剤としてのハイドロフルオロエーテル類を30質量部以上、50質量部以下、重量平均分子量Mwが40000以上、48000以下程度のフッ素系界面活性剤を1.5質量部以上、5質量部以下の割合で含有させることにより、前記低速および高速での動的表面張力がいずれも先に説明した範囲内に調整されたインキを得ることができる。
なおインキの組成は前記例示には限定されず、低速での動的表面張力が16mN/m以上、23mN/m以下で、かつ高速での動的表面張力が20mN/m以上、27mN/m以下となる種々の組成を採用することができる。
またインキの、25℃での粘度は、シリコーンブランケットを用いた反転印刷法によって良好なインキパターンを形成することを考慮すると0.5mPa・s以上、特に1mPa・s以上であるのが好ましく、5mPa・s以下、特に3mPa・s以下であるのが好ましい。
本発明のインキは、前記シリコーンブランケットを用いた反転印刷法に用いて、例えばLCD用のカラーフィルタ等を、先に説明した様々な問題を生じることなく、効率よく製造するのに適している。
シリコーンブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴムからなるブランケットが挙げられる。
前記シリコーンブランケットとしては、その全体が単層のシリコーンゴムからなるものや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、金属箔等からなる基材の片面にシリコーンゴムの層を積層した積層構造を有するもの等が挙げられる。
このうち全体が単層のシリコーンゴムからなるシリコーンブランケットは、例えば平盤上に液状のシリコーンゴムをコーティングし、架橋反応させたのち前記平盤から剥離する等して形成できる。
また積層構造を有するシリコーンブランケットは、例えば金型内に基材を装着した状態で、前記金型内に液状のシリコーンゴムを注入して架橋反応させたり、基材の表面に液状のシリコーンゴムをコーティングしたのち架橋反応させたりして形成できる。
版としては、鉄−ニッケル合金(42アロイ等)、ステンレス鋼等の金属や、ソーダガラス、無アルカリガラス等のガラスからなり、片面に、先に説明したようにフォトリソグラフ法等によって、印刷するインキパターンの形状に対応した凹部を形成したものを用いることができる。
また版の耐久性を向上するため、前記版の、凹部の内面を含む表面には、例えば硬質クロムめっき等を施してもよい。
シリコーンブランケットの表面の略全面にインキを塗布してインキ層を形成するには、従来同様にスリットダイコータ等を用いればよい。
本発明のインキを用いてLCD用のカラーフィルタを製造するためには、まずインキとして赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に着色されたものを用意する。
次いでガラス基板等の基板の表面に、任意の形成方法で、LCDの画素を区画するブラックマトリクス層を形成する。
そして前記ブラックマトリクスで区画された基板の表面に、前記3色のインキを順次、反転印刷法によって印刷したのち乾燥させて溶剤を除去し、さらに必要に応じて焼き付けることでカラーフィルタが製造される。
以下の実施例、比較例におけるインキの調製、および試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈ベースインキの調製〉
バインダ樹脂としてのポリエステルメラミン樹脂〔重量平均分子量Mw=10000〕100質量部、着色剤20質量部、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)300質量部、低張力溶剤としてのフッ素系溶剤〔住友スリーエム(株)製のNOVEC(登録商標)HFE−7200、25℃における高速での表面張力13.6mN/m〕15質量部、フッ素系界面活性剤としてのサーフロン(登録商標)S−611〔AGCセイミケミカル(株)製、(重量平均分子量Mw=44000)〕1質量部、および顔料分散剤5質量部を、プラネタリミキサを用いて混合し、次いでビーズミルを用いて混練してベースインキを調製した。
なお着色剤としては、それぞれ一次粒子径が1〜100nmである赤色顔料〔アントラキノン系顔料〕、緑色顔料〔臭素化フタロシアニン〕、または青色顔料〔銅フタロシアニン〕を用いて赤、緑および青の各色のインキを調製した。
また顔料分散剤としては、リューブリゾル社製のソルスパース(登録商標)5000(顔料誘導体タイプ)と、同社製のソルスパース24000GR(SC)とを質量比1:1で配合した混合物を用いた。
〈実施例1〉
前記で調製したベースインキに対し、前記ベースインキ100質量部あたり35質量部のフッ素系溶剤〔前出の住友スリーエム(株)製のNOVEC HFE−7200〕と、1質量部のフッ素系界面活性剤〔前出のAGCセイミケミカル(株)製のサーフロンS−611〕を追加したのちさらにかく拌してインキを調製した。
〈実施例2〜4、比較例1、2〉
ベースインキに追加するフッ素系溶剤の量を40質量部(比較例1)、30質量部(実施例2)、20質量部(実施例3)、15質量部(実施例4)、および10質量部(比較例2)としたこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
〈比較例3〉
ベースインキに追加するフッ素系溶剤の量を30質量部とし、かつフッ素系界面活性剤を追加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
〈比較例4〉
ベースインキに追加するフッ素系溶剤の量を15質量部とし、かつフッ素系界面活性剤の量を5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてインキを調製した。
〈動的表面張力測定〉
実施例、比較例で調製したインキの動的表面張力を温度25℃の環境下、英弘精機(株)製の動的表面張力計シータt60を用いて、最大泡圧法によって測定した。測定は、それぞれのインキについて気泡の発生周期を0.05Hz(低速)、および10.0Hz(高速)に設定して実施した。
〈印刷試験〉
実施例、比較例で調製した各色のインキを用いて、シリコーンブランケットを用いた反転印刷法によって、ガラス基板上に赤、緑および青の各色のストライプ状のインキパターン(線幅100μm、ピッチ300μm)を順に印刷してLCD用のカラーフィルタを製造した。
前記シリコーンブランケットとしては、厚み0.35mmのPETフィルムの片面に厚み0.6mmのシリコーンゴムの層を積層した積層構造を有するものを用いた。
また、シリコーンブランケットの表面の略全面にインキ層を形成するためにはスリットダイコータを用いた。
そして反転印刷法による先に説明したカラーフィルタの製造工程を通して、下記の各項目を評価した。
(インキ層の状態)
前記スリットダイコータを用いてシリコーンブランケットの表面の略全面に形成されたインキ層を目視、および光学顕微鏡を用いて観察して欠陥の有無を下記の基準で評価した。
○:インキ層に欠陥は見られなかった。
×:インキ層に欠陥が見られた。
(インキパターンの状態)
ガラス基板上に形成されたインキパターンを目視、および光学顕微鏡を用いて観察してムラの有無を下記の基準で評価した。
◎:インキパターンにムラはなく均一であった。
○:インキパターンに光学顕微鏡でわかる程度のわずかなムラが見られたが、実用上差し支えのない程度であった。
×:インキパターンに目視でもわかる程度のムラが見られた。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2011252072
表1より、低速での動的表面張力が16mN/m未満であるとともに、高速での動的表面張力が20mNm未満であった比較例1のインキを用いた場合にはインキ層、ひいてはインキパターンに欠陥を生じるとともに、前記インキパターンにムラを生じることが判った。
また低速での動的表面張力が23mN/mを超えるとともに、高速での動的表面張力が27mN/mを超えた比較例2のインキを用いた場合にもインキ層、ひいてはインキパターンに欠陥を生じるとともに、前記インキパターンにムラを生じることが判った。
また低速での動的表面張力が16mN/m以上、23mN/m以下の範囲内であるものの、高速での動的表面張力が20mN/m未満であった比較例3のインキを用いた場合には、ムラのないインキパターンを形成できるものの、前記インキパターンのもとになるインキ層、ひいてはインキパターンに欠陥を生じることが判った。
また高速での動的表面張力が20mN/m以上、27mN/m以下の範囲内であるものの、低速での動的表面張力が23mN/mを超えた比較例4のインキを用いた場合には、逆に欠陥のないインキ層、ひいてはインキパターンを形成できるものの前記インキパターンにムラを生じることが判った。
これに対し、低速での動的表面張力が16mN/m以上、23mN/m以下の範囲内で、かつ高速での動的表面張力が20mN/m以上、27mN/m以下の範囲内であった実施例1〜4のインキを用いた場合には、いずれもムラや欠陥のないインキパターンを形成できることが判った。
また各実施例を比較すると、低速での動的表面張力は、前記範囲内でも17mN/m以上、22mN/m以下であるのが好ましく、高速での動的表面張力は、前記範囲内でも21mN/m以上、26mN/m以下であるのが好ましいことが判った。
前記低張力溶剤としては、例えばn−ペンタン(16.0mN/m)、n−ヘキサン(18.4mN/m)、n−ヘプタン(19.6mN/m)、イソプロピルアルコール(20.8mN/m)、フッ素系溶剤、低分子量シリコーンオイル(18〜19mN/m)等が挙げられる。
またフッ素系溶剤としては、分子中にフッ素原子を含み、前記表面張力の範囲を満足する種々のフッ素系溶剤が使用可能であるが、特に塩素を含まないハイドロフルオロエーテル類、およびハイドロフルオロカーボン類からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
このうちハイドロフルオロエーテル類としては、例えばエチルノナフルオロブチルエーテル(13.6mN/m)、メチルノナフルオロブチルエーテル(13.6mN/m)等の1種または2種以上が挙げられる。またハイドロフルオロエーテル類としては、例えば住友スリーエム(株)製のNOVEC(登録商標)HFE−7200(13.6mN/m)等も挙げられる。HFE−7200は、ともにハイドロフルオロエーテル類であるエチルノナフルオロイソブチルエーテルとエチルノナフルオロブチルエーテルとの混合物である。
またハイドロフルオロカーボン類としては、例えばデカフルオロペンタン(14.1mN/m)、トリデカフルオロヘキサン(12.5mN/m)等の1種または2種以上が挙げられる。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられ、特にインキの表面張力を低下させる効果の点でフッ素系界面活性剤が好ましい。またフッ素系界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤が好ましい。
Figure 2011252072

Claims (1)

  1. シリコーンブランケットの表面の略全面に形成したインキ層を、表面に所定のインキパターンに対応した凹部を有する版の前記表面に接触させて前記凹部以外のインキ層を前記版の表面に転写させることで前記シリコーンブランケットの表面から選択的に除去して、前記シリコーンブランケットの表面に前記凹部に対応したインキパターンを形成したのち、前記インキパターンを被印刷体の表面に印刷する反転印刷法に用いるインキであって、前記インキ中に挿入したプローブから気泡を連続的に発生させたときの最大泡圧を計測する最大泡圧法によって求められる25℃でのインキの動的表面張力が、気泡の発生周期を0.05Hzに設定して測定したとき16mN/m以上、23mN/m以下で、かつ前記発生周期を10.0Hzに設定して測定したとき20mN/m以上、27mN/m以下であることを特徴とするインキ。
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