JP4875232B2 - エステル化物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エステル化物の製造方法に関するものである。詳しくは、酸触媒の存在下、アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させて高品質のエステル化物を効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セメント分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等に使用される重合体成分の原料となる各種(メタ)アクリル酸エステル系単量体成分は、酸触媒の存在下、アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応することにより得られる。
【0003】
例えば、特開平9−328346号公報(比較例1、2)には、アルコールにメトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:10モル)を使用し、該アルコールとメタクリル酸、酸触媒として硫酸(比較例1)またはパラトルエンスルホン酸(比較例2)、重合禁止剤としてフェノチアジン、溶剤としてシクロヘキサンを所定量づつ仕込み攪拌しながら加熱し、常圧下にシクロヘキサン−水共沸物を留出させ、反応生成水を除去しながらシクロヘキサンを還流させ、25時間でエステル化反応を終了し、反応後、常圧下に、シクロヘキサンおよび過剰のメタクリル酸を留去し、目的とするメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートを合成する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、同時にポリエチレングリコールジメタクリレートが、得られるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートに対して12.0%(比較例1)、14.6%(比較例1)の割合で副生される。該副生物は、酸触媒によるエステル化反応ではアルコキシポリアルキレングリコールのエーテル開裂により両末端に水酸基を持つ(ポリ)アルキレングリコールが副生し、これが、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応で二官能のジ(メタ)アクリル酸エステル系単量体となる。そして、これは、セメント分散剤等に使用される重合体成分の重合反応で架橋剤として作用し、セメント分散性能等の乏しい、高分子量架橋ポリマーを与える。
【0005】
そのため、上記公報に記載の発明のように塩基性触媒での開発が進められる反面、酸触媒を使用する発明については上記課題が未解決なため、現在までに酸触媒を使って高品質のエステル化物を製造する方法に関しては特に報告はなされていない。
【0006】
これに対し、本発明者らは、セメント等の分散性能や増粘特性の乏しい、高分子量架橋ポリマーを与えるとする酸触媒存在下でのエステル化反応における上記技術的課題についての解決方法を見出し、特願平10−268123号、特願平10−268124号に提案したばかりである。
【0007】
一方、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法において、エステル化反応後の処理内容としては、常圧下に、シクロヘキサンおよび過剰のメタクリル酸を留去すること以外は、特に上記公報等に開示されておらず、かかる処理工程上における技術的課題に関しても現在までに何ら報告されていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法におけるエステル化反応後の処理工程において、反応時に脱水溶剤を使用した場合には、該溶剤に水を加えて共沸させて留去する際に、あるいは反応時に無溶媒とした場合には、さらに重合を行うために、エステル反応後に調整水を加えて生成されたエステル化物の水溶液を作製する際に、酸触媒による加水分解が生じ、エステル化物の品質及び性能の低下を招くほか、エステル化物の加水分解により生じたもの(以下、単に加水分解生成物ともいう)がエステル化物中に残留し、当該エステル化物を用いてセメント分散剤等の各種分散剤や増粘剤等に使用される重合体を合成する場合には、該加水分解生成物は、重合には関与しない不純物となり、重合率(ひいては生産性)が低下し、また重合体の品質や性能の劣化にもつながる等の問題があることを見出したものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法におけるエステル化反応後の処理工程において、加水分解生成物の発生を抑制することにより、高品質のエステル化物を効率よく製造することのできるエステル化物の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明の目的は、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法において、反応生成物であるエステル化物中に、該エステル化物を用いてセメント分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等に使用される重合体を合成する場合に、重合に関与しない加水分解生成物のような不純物が含有されることのない、高品質、高純度のエステル化物の製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法におけるエステル化反応後の加水分解生成物の発生を防止すべく、鋭意検討した結果、酸成分である酸触媒ならびにエステル化反応を速めるためにおよび目的のエステル化物の精製面を考慮して通常過剰に使用される蒸留留去し易いより低沸点の原料である(メタ)アクリル酸のうち、酸触媒がエステル化物と強く反応し、これによりエステル化物が酸触媒により加水分解されて加水分解生成物を生じて上記したような問題が発生することを知得し、さらには(メタ)アクリル酸に比べて酸触媒の方が酸強度が強いため、一定の温度条件下で部分中和することにより当該酸触媒を選択的に中和することができることを見出した。
【0012】
上記知見に加えて、本発明者らはさらに、中和時間及び温度を一定の関係を満たすように設定することによって、エステル化反応後の中和工程温度をエステル化反応温度に比べて極端に下げることなく、また、酸触媒による加水分解を有効に防止して、酸触媒及び場合によっては原料たる(メタ)アクリル酸の一部を短時間にかつ選択的に中和できることを知得し、さらに、このような特定の条件により加水分解生成物が生じることなくエステル化反応温度から中和温度への冷却時間及び中和工程時間が有意に短縮でき、大量生産の点で非常に好ましいことをも見出した。これらの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明の諸目的は、下記(1)〜(6)に記載の方法により達成することができるものである。
【0014】
(1) 酸触媒の存在下、一般式(1)
【0015】
【化3】
【0016】
(ただし、Rは炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、ROは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ROの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびROが2種以上の混合物の形態である場合には各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数である)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方法において、
エステル化反応終了後、90℃以下で触媒をアルカリで中和することを特徴とするエステル化物の製造方法。
【0017】
(2) 酸触媒の存在下、脱水溶剤中で、一般式(1)
【0018】
【化4】
【0019】
(ただし、Rは炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、ROは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ROの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびROが2種以上の混合物の形態である場合には各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数である)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方法において、
エステル化反応終了後、以下の関係:
0<X<(B−C)/Aの場合には、Y≦B−AX
(B−C)/A≦Xの場合には、Y≦C
(ただし、Xは中和時間(分)を表わし、Yは中和温度(℃)を表わし、Aは0.17〜0.39の数であり、Bは140〜100の数であり、およびCは90〜50の数である)
を満足する条件下で酸触媒をアルカリで中和することを特徴とするエステル化物の製造方法。
【0020】
(3) 酸触媒の全量と(メタ)アクリル酸の一部とをアルカリで中和する、上記(1)または(2)に記載のエステル化物の製造方法。
【0021】
(4) (メタ)アクリル酸の中和量がエステル化反応に使用された(メタ)アクリル酸の量の10質量%以下である、上記(3)に記載のエステル化物の製造方法。
【0022】
(5) アルカリの添加量が酸触媒1当量に対して1.0〜100当量である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のエステル化物の製造方法。
【0023】
(6) 酸触媒、または酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一部とを濃度の低いアルカリ水溶液で中和する、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のエステル化物の製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
第一の概念によると、本発明のエステル化物の製造方法は、酸触媒の存在下、一般式(1)
【0025】
【化5】
【0026】
(ただし、Rは炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、ROは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ROの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびROが2種以上の混合物の形態である場合には各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数である)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方法において、エステル化反応終了後、90℃以下で酸触媒をアルカリで中和することを特徴とするものである。これにより、エステル化反応後の処理過程で、加水分解生成物を生じることもなく、高純度で高品質のエステル化物を得ることができる。
【0027】
すなわち、本発明では、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法におけるエステル化反応後の処理工程において、(1)反応時に脱水溶剤を使用した場合には、該溶剤に水を加えて共沸させて留去するため、あるいは(2)反応時に無溶媒とした場合には、さらに重合を行うために、エステル反応後に調整水を加えて生成されたエステル化物の水溶液を作製する際に、酸触媒により目的物たるエステル化物の加水分解が促進され加水分解生成物が発生し、これによりエステル化物の品質及び性能の低下が招かれるのを防止する目的で、エステル化反応終了後の中和温度を、90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらにより好ましくは60℃以下、および最も好ましくは50℃以下で酸触媒をアルカリで中和することを特徴とするものである。この際、エステル化反応終了後の中和温度の下限は、以下に述べるように、0℃であることが好ましいが、より好ましくは10℃、さらにより好ましくは20℃、及び最も好ましくは30℃である。すなわち、本発明において、好適な中和温度の範囲としては、0〜90℃、0〜80℃、0〜70℃、0〜60℃、0〜50℃、10〜90℃、10〜80℃、10〜70℃、10〜60℃、10〜50℃、20〜90℃、20〜80℃、20〜70℃、20〜60℃、20〜50℃、30〜90℃、30〜80℃、30〜70℃、30〜60℃、及び30〜50℃などが挙げられ、これらのうち、より好ましい中和温度の範囲は、20〜90℃、20〜80℃、20〜70℃、20〜60℃、20〜50℃、30〜90℃、30〜80℃、30〜70℃、30〜60℃、及び30〜50℃であり、最も好ましい中和温度の範囲は、室温以上の温度範囲でかつ本発明による中和温度の低温領域である、即ち、30〜70℃、30〜60℃、及び30〜50℃である。
【0028】
本発明において、上記中和処理工程での中和温度は、上述したような範囲であるが、この際、中和温度は、エステル化反応終了後の系の液温を意味する。ここで、上記中和温度が90℃を超える場合には、添加されるアルカリが加水分解の触媒として作用し、加水分解生成物を多量に生成するようになるため好ましくない。さらに、50℃以下では、アルカリが加水分解の触媒として作用することはなく、加水分解生成物の発生をほぼ完全に抑えることができる。一方、0℃未満の場合には、エステル化反応液が粘稠になり、中和時の撹拌がしづらくなるほか、エステル化反応後に所定の温度まで降温するのに長時間を要するほか、室温よりも低い温度まで降温するには、新たに冷却手段(装置)を設ける必要があり、コストアップになるためあまり望ましくない。
【0029】
本発明において、上記中和処理工程での中和時間は、酸触媒、好ましくは以下に説明するように酸触媒及び(メタ)アクリル酸の一部をアルカリで中和できる時間であれば特に制限されず、中和温度ならびに酸触媒や(メタ)アクリル酸の種類や量によって異なるが、中和時間は、通常、10時間以下であり、好ましくは8時間以下、より好ましくは7時間以下、最も好ましくは6時間以下である。この際、中和温度が90℃以下であっても、50℃を超える比較的高温域での中和工程の場合には、加水分解が徐々に進行して加水分解生成物量が増加するため、10時間を超える中和時間は好ましくない。一方、中和温度が50℃以下の場合には、加水分解反応速度は著しく低下するため、中和時間が10時間を超える場合であっても加水分解生成物の発生はほぼ完全に抑えることができるが、中和工程に要する時間が長くなり、生産性が低下するため実用的ではない。
【0030】
また、本発明による中和処理工程で中和剤として使用することのできるアルカリとしては、特に制限されるものではなく、水に溶解し、塩基性を示す物質であればよく、例えば、M(OH)mの水酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩や燐酸塩、アンモニア、及びアミン等の形態が挙げられる。この場合のMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属やアンモニウム基を表わし、また、「m」の値はMの種類によって決定される。よって、アルカリとしては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アンモニア、アミン等が挙げられるが、セメントに配合した場合に異臭が発生しないとの理由から、好ましくはアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、燐酸塩等であり、より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。また、本発明では、これらアルカリを1種若しくは2種以上を適当な比率で混合して使用してもよい。
【0031】
上記アルカリを用いて中和する酸は、酸触媒、好ましくは酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一部である。ここで、中和される(メタ)アクリル酸は、エステル化反応に使用した(メタ)アクリル酸の10質量%以下、好ましくは0.01〜5質量%の範囲である。従って、アルカリ(中和剤)の添加量は、酸触媒1当量に対して1.0〜100当量、好ましくは1.0〜10当量、さらに好ましくは1.01〜2当量である。中和すべき酸が、酸触媒である理由は上述したように酸触媒が、エステル化反応後に溶剤を水と共沸する際に、水と強く反応し、エステル化物の加水分解生成物を生じさせるため、酸触媒を不活性にする必要があるためである。なお、酸成分としては、酸触媒以外にも(メタ)アクリル酸が存在し得るが、酸触媒の方が酸強度が大きいので、酸触媒から中和されるため問題ない。従って、酸触媒を中和できれば所期の目的は達成できるが、実際に使用する酸触媒の種類の違い(=酸強度の違い)や工業的に大量に処理するような場合には、酸触媒の全量を中和するまでに、(メタ)アクリル酸の一部が中和されるおそれがあるため、こうした危険性(リスク)をなくす観点から、酸触媒の全量と(メタ)アクリル酸の一部を中和してもよい。ただし、中和される(メタ)アクリル酸が、エステル化反応に使用した(メタ)アクリル酸の10質量%を超える場合には、おそらく(メタ)アクリル酸塩の重合速度が(メタ)アクリル酸に比べて遅いために、得られたエステル化物を用いて重合する際の重合率が低下するため好ましくない。また、アルカリ(中和剤)の添加量が酸触媒1当量に対して1.0当量未満の場合には、酸触媒を完全に中和できず、エステル化物の加水分解生成物を多量に生じるようになるため好ましくない。逆に、アルカリ(中和剤)の添加量が酸触媒1当量に対して100当量を超える場合にも、大量の(メタ)アクリル酸が中和され、やはり、(メタ)アクリル酸塩の重合速度は(メタ)アクリル酸に比べて遅いために、得られたエステル化物を用いて重合する際の重合率が低下するため好ましくない。
【0032】
なお、添加されるアルカリの形態としては、特に制限されるものではないが、低濃度のアルカリ水溶液の形態とすることが、エステル化物の加水分解を防止する観点から好ましいといえる。
【0033】
特に、エステル化反応に脱水溶剤を用いる際には、アルカリと共に多量の水を反応系に添加することが、エステル化物の加水分解を防止するためには好適である。すなわち、多量の水が無い反応系では、アルカリが脱水溶剤に難溶であるために濃い状態で系内に浮遊し、この高濃度アルカリの浮遊は中和に消費されるまでの長持間にわたって消失せず、エステル化物の加水分解を引き起こす。
【0034】
酸触媒、好ましくは酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一部を中和するのに使用されるアルカリ水溶液の濃度は、上述したように低い濃度であり、また、中和熱をアルカリ水溶液の顕熱により奪うことができるような濃度であることが好ましいが、具体的には、通常、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、および最も好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。アルカリ水溶液が0.01質量%未満の場合、中和に要するアルカリ水溶液の添加量が多くなり、生産性を確保するために中和槽が別途必要になるなどコスト高につながり好ましくない。また、50質量%を超える場合には、高濃度のアルカリがエステル化物の加水分解を引き起こすため好ましくない。
【0035】
次に、本発明のエステル化物の製造方法におけるエステル化反応につき、説明する。
【0036】
本発明のエステル化物の製造方法では、酸触媒の存在下、一般式(1)で表されるアルコール(以下、単に「アルコール」ともいう)と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応を行うものである。特に本発明では、酸触媒と重合禁止剤の存在下、脱水溶剤中でエステル化反応を行う事が望ましい。
【0037】
以下、本発明のエステル化物の製造方法におけるエステル化反応の一実施態様を以下に簡単に記載する。まず、反応系(反応槽)に、原料としての一般式(1)のアルコール及び(メタ)アクリル酸、脱水溶剤、酸触媒及び重合禁止剤を仕込み、これらの混合物を所定温度で所定のエステル化率になるまで、エステル化反応を行う。
【0038】
上記エステル反応に使用することのできるアルコール原料は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0039】
【化6】
【0040】
上記一般式(1)において、Rは、炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わす。Rが炭素原子数30を超える炭化水素基である場合には、一般式(1)のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を、例えば、(メタ)アクリル酸と共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、用途性能、例えば、セメント分散性能などが低下する。好適なRの範囲はその使用用途により異なるものであり、例えば、セメント分散剤の原料として用いる場合には、Rは、炭素原子数1〜18の直鎖若しくは枝分かれ鎖のアルキル基およびアリール基が好ましい。Rとしては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基などのアルキルフェニル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基などが挙げられる。これらのうち、セメント分散剤の原料として用いる場合には、上述したように、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましいものである。
【0041】
また、ROは、炭素原子数2〜18、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基である。ROが炭素原子数18を超えるオキシアルキレン基である場合には、一般式(1)のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を、例えば、(メタ)アクリル酸と共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、用途性能、例えば、セメント分散性能等が低下する。ROとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基などが挙げられ、これらのうち、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基であることが好ましい。また、ROの繰り返し単位は、同一であってもあるいは異なっていてもよい。このうち、ROの繰り返し単位が異なる場合、すなわち、2種以上の異なる繰り返し単位を有する場合には、各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよい。
【0042】
さらに、nは0〜300、好ましくは2〜300の数であり、RO(オキシアルキレン基)の繰り返し単位の平均付加モル数を表わす。nが300を超える場合には、一般式(1)のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物の重合性が低下する。この平均付加モル数nも、エステル化反応により得られるエステル化物の使用目的に応じて、その最適範囲は異なるものであり、例えば、セメント分散剤の原料として使用する場合には、平均付加モル数nは、好ましくは1〜300、より好ましくは2〜300、さらにより好ましくは5〜200、および最も好ましくは8〜150の数である。また、増粘剤などとして用いる場合には、平均付加モル数nは、10〜250の数が好ましく、より好ましくは50〜200である。また、n=0の場合には、水との溶解性および沸点の観点から、上記Rは炭素原子数4以上の炭化水素基が好ましい。すなわち、一般式(1)のn=0の場合、特にメタノールやエタノールなどのアルコールでは低沸点のため生成水とともに蒸発し、さらに生成水に溶解することから当該アルコール原料の一部が系外に留去され、目的とするエステル化物の収率が低下するためである。
【0043】
上記一般式(1)で示されるアルコール原料は、1種のものを単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。一般式(1)で示されるアルコール原料が2種以上の混合物での使用形態は、特に制限されるものではなく、R、ROまたはnの少なくともいずれか1つが異なる2種以上の混合物での使用形態であればよいが、好ましくは▲1▼Rがメチル基とブチル基の2種で構成されている場合、▲2▼ROがオキシエチレン基とオキシプロピレン基の2種で構成されている場合、▲3▼nが1〜10のものと11〜100のものの2種で構成されている場合、および▲1▼〜▲3▼を適宜組み合わせたもの等が挙げられる。
【0044】
上記エステル反応に使用することのできる(メタ)アクリル酸に関しても、アクリル酸およびメタクリル酸を、それぞれ単独で使用しても、あるいは混合して使用してもよく、その混合比率に関しても任意の範囲を採用する事ができる。
【0045】
エステル化反応で使用される上記原料の混合比率は、化学量論的には1:1(モル比)であるが、実際には、アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応が効率良く進行する範囲であれば特に制限されるものではないが、通常、一方の原料を過剰に使用してエステル化反応を速めたり、目的のエステル化物の精製面からは、蒸留留去し易いより低沸点の原料を過剰に使用する。また、本発明では、エステル化反応時に反応生成水と脱水溶媒を共沸する際に、低沸点の(メタ)アクリル酸の一部も留出され、反応系外に持ち出されるため、アルコールの使用量(仕込み量)に対して(メタ)アクリル酸の使用量(仕込み量)を化学量論的に算出される量よりも過剰に加えることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸の使用量は、通常、アルコール1モルに対して、1.0〜30モル、好ましくは1.2〜10モルである。(メタ)アクリル酸の使用量がアルコール1モルに対して1.0モル未満であると、エステル化反応が円滑に進行せず、目的とするエステル化物の収率が不十分であり、逆に30モルを超えると、添加に見合う収率の向上が認められず、不経済であり、やはり好ましくない。
【0046】
本発明のエステル化反応において使用することのできる酸触媒としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion」レジン、「Amberlyst 15」レジン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、塩酸などが挙げられる。この際、酸触媒は単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0047】
これらのうち、以下に詳述する脱水溶剤と水との共沸温度、エステル化反応温度などを考慮すると、酸触媒は、常圧における沸点が高いものであることが好ましい。具体的には、本発明に好ましく使用される酸触媒の常圧における沸点は、150℃以上、より好ましくは200℃以上である。ゆえに、硫酸(常圧における沸点:317℃)、パラトルエンスルホン酸(沸点:185〜187℃/13.3Pa(0.1mmHg))、パラトルエンスルホン酸水和物及びメタンスルホン酸(沸点:167℃/1333.2Pa(10mmHg))などが好ましく使用される。さらに、本発明者らは、エステル化物の品質および性能の低下の原因となる不純物のジエステルの生成原因の1つが、アルコキシポリアルキレングリコールの切断によるものであり、さらに当該切断が酸触媒によっても起こり得ることを知得した。かかる知見に基づき、当該切断のしにくい酸触媒がより望ましいこと見出したものである。上記点を考慮すると、本発明において特に好ましく使用される酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物が例示できる。
【0048】
上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒作用を有効に発現する事ができる範囲であれば特に制限されるものではないが、本発明者らは、上述したように、セメント等の分散性能や増粘特性の乏しい、高分子量架橋ポリマーを与えるとする酸触媒存在下でのエステル化反応における技術的課題についての解決方法として、酸触媒の使用量を、0.4ミリ当量/g以下、好ましくは0.36〜0.01ミリ当量/g、より好ましくは0.32〜0.05ミリ当量/gの範囲内とすることで、こうした技術的課題を解決する事ができる事を見出したものである。
【0049】
すなわち、酸触媒の使用量が0.4ミリ当量/gを超えると、エステル化反応時に反応系内で形成されるジエステルの量が増加し、エステル化反応により得られるエステル化物を用いて合成されるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下する。ここで、酸触媒の使用量(ミリ当量/g)は、反応に使用した酸触媒のHの当量数(ミリ当量)を、原料であるアルコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込み量(g)で割った値で表される。より具体的には下記式によって算出される値である。
【0050】
【数1】
【0051】
上記酸触媒の反応系への添加のし方は、一括、連続、または順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応槽に、原料と共に一括で仕込むのが好ましい。
【0052】
または、本発明において、酸触媒を水和物および/または水溶液の形態で用いてもよい。
【0053】
上記態様において使用することのできる酸触媒としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion」レジン、「Amberlyst 15」レジン、リンタングステン酸、塩酸などを水和物および/または水溶液の形態で用いるものが挙げられ、これらのうち、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などを水和物および/または水溶液のかたちで用いるものが好ましく使用される。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに、本発明者らは、上述したように、エステル化物の品質および性能の低下の原因となる不純物のジエステルの生成原因の1つが、アルコール原料の切断によるものであり、さらに当該切断が酸触媒によっても起こり得ることを知得し、かかる知見に基づき、当該切断のしにくい酸触媒がより望ましいこと見出したものである。当該酸触媒としては、具体的には、パラトルエンスルホン酸を水和物および/または水溶液のかたちで用いるものである。
【0054】
上記態様による酸触媒の使用量は、所望の触媒作用を有効に発現することができる範囲であれば特に制限されるものではないが、アルコール原料の切断作用の抑制、各種用途、例えば、セメント分散剤、炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等に使用される重合体成分の原料となるエステル化物としての有用性、このような使用用途に要求される基本性能である分散性能などに悪影響を及ぼす原因となる分散性能の乏しい高分子量架橋ポリマーを発生させる原因となるゲル発生の防止・抑制を考慮すると、該酸触媒の使用量が、原料のアルコールと(メタ)アクリル酸の合計質量に対する該酸触媒中の酸の質量の比をP(質量%)とし、該酸触媒中の水和物および/または水溶液として存在する水分の質量の比をQ(質量%)とした場合に、
0<Q<1.81P−1.62
の関係を満足することが好ましい。なお、誤解がないように具体例を挙げて説明すれば、例えば、パラトルエンスルホン酸一水和物を例にとれば、原料の合計質量に対するパラトルエンスルホン酸の質量の比がP(質量%)であり、原料の合計質量に対する一水和物として存在する水分の質量の比がQ(質量%)であるのであって、決して、酸触媒以外の酸成分(例えば、原料の(メタ)アクリル酸など)や水分(例えば、エステル化反応により生ずる生成水など)は、ここでいうPおよびQの対象物となりえない。
【0055】
この際、酸触媒の使用量が上記式の関係を満足しない場合には、以下のような問題が生じる。すなわち、Q=0の場合には、酸触媒中に水和物および/または水溶液として存在する水分が存在しないこととなり、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲル状の不純物の量が増加し、エステル化反応により得られるエステル化物を用いて合成されるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下する。また、Q≧1.81P−1.62となる場合には、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲル状の不純物の量がやはり増加し、エステル化反応により得られるエステル化物を用いて合成されるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下する。
【0056】
上記態様において、酸触媒の反応系への添加のし方は、一括、連続、または順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応槽に、原料と共に一括で仕込むのが好ましい。
【0057】
本発明のエステル化反応においては、反応系に脱水溶剤を加えてエステル化反応を脱水溶剤中で行うのが望ましい。ここで、脱水溶剤とは、水と共沸する溶剤として規定されるものである。すなわち、脱水溶剤を用いることにより、エステル化反応により生成する反応生成水を効率よく共沸させることができるものである。脱水溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、イソプロピルエーテルなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上のものを混合溶剤として使用することができる。これらのうち水との共沸温度が150℃以下、より好ましくは60〜90℃の範囲であるものが好ましく、具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。水との共沸温度が150℃を超える場合には、取り扱いの面(反応時の反応系内の温度管理および共沸物の凝縮液化処理などの制御等を含む)から好ましくない。
【0058】
上記脱水溶剤は、反応系外に反応生成水と共沸させ、反応生成水を凝縮液化して分離除去しながら還流させることが望ましく、この際、脱水溶剤の使用量は、原料としてのアルコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込量に対して、1〜100質量%、好ましくは2〜50質量%の範囲内である。脱水溶剤の使用量が1質量%未満であると、エステル化反応中に生成する反応生成水を共沸により反応系外に十分除去できず、エステル化の平衡反応が進行しにくくなるため、好ましくなく、脱水溶剤の使用量が100質量%を超えると、過剰に添加することに見合う効果が得られず、また、反応温度を一定に維持するために多くの熱量が必要となり、経済的な観点から好ましくない。
【0059】
なお、本発明において、エステル化反応を脱水溶剤中で行う際には、上記エステル化反応を行った後、本発明による中和工程の前または後、好ましくは本発明による中和工程の後に、反応液から脱水溶剤を留去する溶剤留去工程を設けることが好ましい。
【0060】
また、上記エステル化反応においては、重合禁止剤が反応系(反応槽)内に加えられている事が望ましい。重合禁止剤を用いることにより、原料のアルコール及び(メタ)アクリル酸、生成物のエステル化物またはこれらの混合物の重合を防止することできる。上記エステル化反応において使用できる重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき特に制限されるものではなく、例えば、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)などが挙げられる。これらのうち、脱水溶剤や生成水の溶解性の理由から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンが好ましく使用される。これらの重合禁止剤は、単独で使用してもよいほか、2種以上を混合して使用することもできる。
【0061】
また、上記のように酸触媒を水和物および/または水溶液の形で用いる場合には、フェノチアジンが、反応系内に存在する水溶液中のゲル形成物質に対して有効に機能することができるほか、前述したようにエステル化反応を脱水溶剤中で行う場合には、エステル化反応終了後に、脱水溶剤を水との共沸により留去する際に、弱いながらも重合活性のあるハイドロキノンやメトキノン等の水溶性重合禁止剤を用いなくても極めて有効に重合禁止能を発揮することができ、不純物たる高分子量体の形成を有効に抑えることができる点から極めて有用である。
【0062】
上記重合禁止剤の使用量は、原料としてのアルコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込量に対して、0.001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.1質量%の範囲内である。重合禁止剤の使用量が0.001質量%未満であると、重合禁止能の発現が十分でなく、原料としてのアルコール、(メタ)アクリル酸、生成物としてのエステル化物またはこれらの混合物の重合を有効に防止しにくくなるため好ましくなく、重合禁止剤の使用量が1質量%を超えると、生成物であるエステル化物中に残留する重合禁止剤量が増えるため、品質及び性能面から好ましくなく、また、過剰に添加することに見合うさらなる効果も得られず、経済的な観点からも好ましくない。
【0063】
本発明において、エステル化反応は、回分または連続いずれによっても行ないうるが、回分式で行うことが好ましい。
【0064】
また、エステル化反応における反応条件は、エステル化反応が円滑に進行する条件であればよいが、例えば、反応温度は30〜140℃、好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは90〜125℃、特に好ましくは100〜120℃である。なお、上記反応温度は、本発明の一般的なエステル化反応の条件であり、例えば、脱水溶剤を反応系外に反応生成水と共沸させ、反応生成水を凝縮液化して分離除去しながら還流させる態様は、その1例であり、これらの範囲内に含まれるが、完全に一致するものではない。反応温度が30℃未満では、脱水溶剤の還流が遅くて脱水に時間がかかるほか、エステル化反応が進行しづらく、好ましくない。逆に、反応温度が140℃を超えると、アルコール原料の切断によって過大量のジエステルが生成してセメント分散性能のほか、各種用途における分散性能や増粘特性が低下するほか、原料の重合が生じたり、共沸物への原料の混入量が増すなど、生成物であるエステル化物の性能及び品質の劣化が生じるなど、やはり好ましくない。また、反応時間は、後述するようにエステル化率が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%に達するまでであるが、通常、1〜50時間、好ましくは3〜40時間である。さらに、本発明によるエステル化反応は、常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが望ましい。
【0065】
本発明によるエステル化反応におけるエステル化率は、70%以上、より好ましくは70〜99%、最も好ましくは80〜98%であることが好ましい。エステル化率が70%未満であると、製造されるエステル化物の収率が不十分であり、これを原料として得られるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下する。なお、本明細書において使用される「エステル化率」は、下記に示すエステル化測定条件で、エステル化の出発物質であるアルコールの減少量を測定することにより、下記式によって算出される値として定義されるものである。
【0066】
【数2】
【0067】
なお、上記の式によりエステル化率を決定しているため、エステル化率が100%を越えることはない。従って、本発明においては、エステル化率が規定以上に達した時点でエステル化反応が終了したものとする。
【0068】
第二の概念によると、本発明のエステル化物の製造方法は、酸触媒の存在下、脱水溶剤中で、一般式(1)
【0069】
【化7】
【0070】
(ただし、Rは炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、ROは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ROの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびROが2種以上の混合物の形態である場合には各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数である)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方法において、
エステル化反応終了後、以下の関係:
0<X<(B−C)/Aの場合には、Y≦B−AX
(B−C)/A≦Xの場合には、Y≦C
(ただし、Xは中和時間(分)を表わし、Yは中和温度(℃)を表わし、Aは0.17〜0.39の数であり、Bは140〜100の数であり、およびCは90〜50の数である)
を満足する条件下で酸触媒をアルカリで中和することを特徴とするものである。すなわち、本発明者らは、酸触媒を使用するエステル化物の製造方法におけるエステル反応後の処理工程において、(1)反応時に脱水溶剤を使用する場合には、該溶剤を水と共沸させて留去するため、あるいは(2)反応時に無溶媒とした場合には、さらに重合を行うために、エステル化反応後に調整水を加えて生成されたエステル化物の水溶液を作製する際に、酸触媒によりエステル化物の加水分解が促進されることを知得し、さらに、このようにして加水分解生成物が生じるのを防止できる手段について鋭意検討を行った結果、この酸触媒によるエステル化物の加水分解を有効に防止でき、ゆえにエステル化物の品質及び性能の低下を防ぐことができる中和時間及び中和温度に関する特定の条件を見出したものである。
【0071】
上記概念において、エステル化反応を脱水溶剤中で行うことを必須とする点、ならびに中和工程における中和時間及び中和温度が上記特定の関係を満たす以外は、上記第一の概念における定義と同様である。
【0072】
以下に、本発明の第二の概念による中和時間及び中和温度の関係について説明する。
【0073】
本発明によるエステル化反応終了後の中和工程において、中和時間及び中和温度は下記関係:
0<X<(B−C)/Aの場合には、Y≦B−AX
(B−C)/A≦Xの場合には、Y≦C
を満足することを必須とする。この際、Xは中和時間(分)を表わし、およびYは中和温度(℃)を表わす。Aは、0.17〜0.39の数であり、好ましくは0.17、より好ましくは0.19、さらにより好ましくは0.23、特に好ましくは0.29、及び最も好ましくは0.39である。また、Bは、140〜100の数であり、好ましくは140、より好ましくは130、さらにより好ましくは120、特に好ましくは110、及び最も好ましくは100である。さらに、Cは、90〜50の数であり、好ましくは90、より好ましくは80、さらにより好ましくは70、特に好ましくは60、及び最も好ましくは50である。この際、A、B及びCの組合せの例としては、(A,B,C)として記載する場合において、(0.17,140,90)、(0.17,140,70)、(0.17,130,90)、(0.17,130,70)、(0.17,120,90)、(0.17,120,70)、(0.17,110,90)、(0.17,110,70)、(0.17,100,90)、(0.17,100,70)、(0.23,140,90)、(0.23,140,70)、(0.23,130,90)、(0.23,130,70)、(0.23,120,90)、(0.23,120,70)、(0.23,110,90)、(0.23,110,70)、(0.23,100,90)、(0.29,140,90)、(0.29,140,70)、(0.29,130,90)、(0.29,130,70)、(0.29,120,90)、(0.29,120,70)、(0.29,110,90)、(0.29,110,70)、(0.39,140,90)、(0.39,140,70)、(0.39,130,90)、(0.39,130,70)、(0.39,120,90)、(0.39,120,70)、及び(0.39,110,90)などが挙げられる。これらのうち、Aの値が大きく、B及びCの値が小さい程、加水分解生成物の発生が抑制されるため、(0.17,130,70)、(0.17,120,70)、(0.17,110,70)、(0.23,140,70)、(0.23,130,70)、(0.23,120,70)、(0.23,110,70)、(0.29,140,70)、(0.29,130,70)、(0.29,120,70)、(0.29,110,70)、(0.39,140,70)、(0.39,130,70)、及び(0.39,120,70)の組合せが本発明において好ましく使用され、また、より好ましい組合せは、(0.17,120,70)、(0.17,110,70)、(0.23,120,70)、(0.23,110,70)、(0.29,130,70)、(0.29,120,70)、(0.29,110,70)、(0.39,130,70)、及び(0.39,120,70)の組合せであり、さらにより好ましい組合せは、(0.23,120,70)、(0.23,110,70)、(0.29,120,70)、(0.29,110,70)、及び(0.39,120,70)の組合せがであり、最も好ましい組合せは、(0.29,110,70)である。
【0074】
本発明において、中和時間及び中和温度が上記関係式を満たさない場合には、下記のような問題が生じる。すなわち、本発明による中和工程における中和時間X(分)及び中和温度Y(℃)が上記関係式を満たす際には、酸触媒の活性化を効果的に抑制することができ、ゆえに、加水分解生成物の量を有意に低減できるが、逆に、本発明による中和工程における中和時間X(分)において中和温度Y(℃)が上記範囲の上限を超える際には、酸触媒の活性が非常に高く、加水分解を促進して加水分解生成物が多量に生成してしまうため、好ましくない。
【0075】
このため、本発明において、中和時間X(分)及び中和温度Y(℃)が上記関係式を満たしている限り、加水分解生成物の発生が抑制できるため、中和時間X(分)としては特に制限されることはない。しかしながら、中和時間Xが長時間の場合には、中和工程に要する時間が非常に長くなってしまい、ゆえに生産性が低下し、産業上の観点から実用的ではないため、中和時間X(分)は600分以下であることが好適であり、好ましくは480分以下、より好ましくは360分以下、最も好ましくは300分以下である。特に、中和温度Y(℃)が0℃未満である場合には、上記したように、エステル化反応液が粘稠になり、中和時の攪拌が困難になるほか、エステル化反応後に所定の温度まで恒温するのに長時間を要するため、中和温度Y(℃)は0℃以上であることが好適であり、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、最も好ましくは30℃以上である。
【0076】
以上、本発明のエステル化物の製造方法について簡単に説明してきたが、本発明のエステル化物の製造方法により得られるエステル化物のうち、アルコール原料にアルコキシポリアルキレングリコール(一般式(1)のnが1以上の場合)を用いてなる場合には、得られたエステル化物を単量体成分として、例えば、特公昭59−18338号公報、特開平9−86990号公報や特開平9−286645号公報に記載の方法などの公知の方法と同様にして、(メタ)アクリル酸(塩)、および必要によりこれらの単量体と共重合可能な単量体と共に重合反応に供することによって、セメント分散能に優れたセメント分散剤とすることができるほか、炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等への利用が可能である。
【0077】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中、特にことわりのない限り、%は質量%を、また、部は質量部を表わすものとする。
【0078】
実施例1
温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管を備えたガラス製反応容器にメトキシポリ(n=25)エチレングリコール16500部、メタクリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸水和物235部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1060部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応を行った。約20時間でエステル化率が99%に達したのを確認した後、降温を開始し、反応容器内の温度(液温)が37℃になるまで冷却した。6時間の冷却時間を必要とした。その後、反応容器内の温度(液温)を37〜40℃の範囲に維持しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液135部と水4890部を充分攪拌しながら加えてパラトルエンスルホン酸を中和した。このように水酸化ナトリウム水溶液及び水を滴下するために、2時間の中和時間を必要とした。次に、ハイドロキノン8部を加えて100℃までに昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。そして、シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%のエステル物の水溶液(1)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表1に示す。なお、加水分解率の測定条件については、下記に示すとおりである。
【0079】
・加水分解率測定条件
解析装置;Waters製 Millennium クロマトグラフィーマネージャー
検出器;Waters製 410 RI検出器
使用カラム;GLサイエンス製 イナートシルODS−2 3本
カラム温度;40℃
溶離液;水8946g、アセトニトリル6000g及び酢酸54gを混合して、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH4.0に調整した
流速;0.6ml/min
上記の加水分解率測定条件で、加水分解率を測定した。
【0080】
本実施例の場合、▲1▼エステル化反応終了時(水酸化ナトリウムで中和前の降温された反応混合物)のサンプル、▲2▼水酸化ナトリウムで中和後、さらにシクロヘキサンを留去した80%に調製されたサンプルのアルコール(アルキレングリコール)を液体クロマトグラフィー(LC)で測定した。加水分解率は、▲1▼及び▲2▼の測定により得られた値をもとに下記式によって算出される値とした。
【0081】
【数3】
【0082】
実施例2
エステル化反応後、47℃まで降温するために3時間の冷却時間を必要としたことおよび中和温度を47〜50℃の範囲に維持しながら中和した以外は、実施例1と同様にして80%のエステル化物水溶液(2)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表1に示す。なお、加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0083】
実施例3
温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管を備えたガラス製反応容器にメトキシポリ(n=25)エチレングリコール23300部、メタクリル酸2660部、パラトルエンスルホン酸水和物290部、フェノチアジン6部およびシクロヘキサン1300部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応を行った。約30時間でエステル化率が100%に達したのを確認した後、降温を開始し、反応容器内の温度(液温)が37℃になるまで冷却した。6時間の冷却時間を必要とした。反応容器内の温度(液温)を37〜40℃の範囲に維持しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液150部を充分攪拌しながら加えてパラトルエンスルホン酸を中和した。このように水酸化ナトリウム水溶液を滴下するために、2時間の中和時間を必要とした。次に、水6050部とハイドロキノン8部を加えて100℃に昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。そして、シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%のエステル物の水溶液(3)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表1に示す。なお、加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0084】
実施例4
エステル化反応後、52℃まで降温するために2時間の冷却時間を必要としたこと、中和温度を52〜55℃の範囲に維持しながら中和したこと、および水酸化ナトリウム水溶液を滴下するために、8時間の中和時間を必要とした以外は、実施例3と同様にして80%のエステル化物水溶液(4)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表1に示す。なお、加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例5
温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管を備えたガラス製反応容器にメトキシポリ(n=25)エチレングリコール16500部、メタクリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸水和物470部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1060部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応を行った。約20時間でエステル化率が99%に達したのを確認した後、降温を開始し、反応容器内の温度(液温)を35℃になるまで冷却した。6時間の冷却時間を必要とした。その後、反応容器内の温度(液温)を35〜40℃の範囲に維持しながら、4%水酸化ナトリウム水溶液2880部を充分攪拌しながら加えてパラトルエンスルホン酸を中和した。水酸化ナトリウム水溶液を滴下するために、2時間の中和時間を必要とした。次に、水1940部、ハイドロキノン8部を加えて100℃までに昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。そして、シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%のエステル物の水溶液(5)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表2及び表3に示す。なお加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0087】
実施例6
エステル化反応後の冷却時間を1.5時間必要としたこと、中和温度を57〜60℃の範囲に維持しながら中和したこと、0.5時間の中和時間を必要としたこと以外は、実施例1と同様にして80%のエステル化物水溶液(6)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表2及び表3に示す。なお加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0088】
実施例7〜18
下記表3に示される冷却時間、中和温度、アルカリとしての水酸化ナトリウムの濃度及び量、中和時間、ならびに中和工程後に添加した水の量を使用した以外は、実施例5と同様にして80%のエステル化物水溶液(7)〜(18)を得た。本実施例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表2及び表3に要約する。なお加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0089】
比較例1
エステル化反応後の冷却時間を0.1時間必要としたこと、4%水酸化ナトリウム水溶液235部を加えてパラトルエンスルホン酸を中和し、その中和温度を100〜105℃の範囲に維持しながら中和したこと、および6時間の中和時間を必要としたこと以外は、実施例5と同様にして80%の比較用エステル化物水溶液(1)を得た。本比較例のエステル化工程での反応組成、反応条件およびエステル化率、並びに中和工程での中和条件および加水分解率を下記表2及び表3に示す。なお加水分解率は、実施例1と同様にして測定した。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
上記表2及び表3から、以下のことが考察される。すなわち、実施例5及び6の結果の比較から、中和温度及び時間以外は同様の条件下に設定した場合、中和工程を35〜40℃という比較的低い温度で長時間(2時間)行う(実施例5)よりも、中和工程を57〜60℃という比較的高い温度で短時間(30分間)行った(実施例6)方が、エステル化物の加水分解は有意に抑えられることが分かる。また、実施例6〜8の結果の比較から、中和温度などの諸条件を一定にして中和時間のみを変えて中和工程を行った場合、57〜60℃という比較的高い中和温度では、中和時間は短いほどエステル化物の加水分解率は低く、ゆえに、中和時間が有意に短縮できることが示される。さらに、実施例7及び9〜11の結果の比較から、中和時間などの諸条件を一定にして中和温度のみを変えて中和工程を行った場合、低温で中和工程を行うほど、エステル化物の加水分解率は低く抑えられることが示される。さらにまた、実施例7、12及び13の結果の比較から、中和時間及び温度ならびにアルカリ(水酸化ナトリウム水溶液)の添加量などの諸条件を一定にして中和剤としての水溶液におけるアルカリ(水酸化ナトリウム)の濃度のみを変えて中和工程を行った場合、アルカリの濃度が低いほど、エステル化物の加水分解率は低く抑えられることが示される。さらに、実施例14〜18及び比較例1の結果から、90℃を超える高い中和温度であっても、請求項2に記載される関係を満たすように中和時間を設定した場合にはエステル化物の加水分解率は有意に抑制できるが、同じ中和温度でも、中和時間が請求項2に記載される関係から外れて設定された場合にはエステル化物の加水分解が顕著に促進されることが示される。
【0093】
【発明の効果】
本発明のエステル化物の製造方法は、(1) 酸触媒の存在下、上記一般式(1)で示すアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方法において、エステル化反応終了後、90℃以下で酸触媒をアルカリで中和することを特徴とするものであり、これにより、エステル化反応後の処理過程で、▲1▼アルカリにより酸触媒の全量が中和されるため、該酸触媒に起因して、加水分解生成物を生じることもなく、また▲2▼90℃以下、好ましくは90〜0℃の範囲で中和するため、添加されるアルカリが加水分解の触媒として作用し、該アルカリに起因して加水分解生成物を生成することもないため、高純度で高品質のエステル化物を得ることができる。その結果、得られた生成物のエステル化物を用いてセメント分散剤等の各種分散剤や増粘剤等に使用される重合体を合成する場合に、重合に関与しない不純物が含有されていないため、高品質、高性能の各種分散剤や増粘剤用の重合体を得ることができる。
【0094】
また、本発明では、上記(1)に記載のエステル化物の製造方法において、酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一部とをアルカリで中和することを特徴とするため、実際に使用する酸触媒の種類の違い(=酸強度の違い)や工業的に大量に処理するような場合でも、添加したアルカリが、酸触媒の全量を中和するまでに、(メタ)アクリル酸の一部の中和に消費され、酸触媒の一部が中和されずにが残る心配がなく、該酸触媒に起因して、加水分解生成物を生じるさせる危険性(リスク)をより低減する事ができる。
【0095】
さらに、本発明では、上記(1)に記載のエステル化物の製造方法において、中和される(メタ)アクリル酸が、エステル化反応に使用した(メタ)アクリル酸の10質量%以下、好ましくは0.01〜5質量%の範囲であるため、上記に記載したと同様に、該酸触媒に起因して、加水分解生成物を生じるさせる危険性(リスク)をより低減する事ができるほか、中和しても良い(メタ)アクリル酸が規定されている事により、必要以上に過度のアルカリを添加することもないため、得られるエステル化物を用いた重合反応での重合率が低下するのを防止できる点で、有用である。
【0096】
さらにまた、本発明では、上記(1)に記載のエステル化物の製造方法において、アルカリの添加量が、酸触媒1当量に対して1.0〜100当量、好ましくは1.0〜10当量、さらに好ましくは1.01〜2当量であることを特徴とするため、上記に記載したと同様に、該酸触媒に起因して、加水分解生成物を生じるさせる危険性(リスク)をより低減する事ができるほか、明確なアクリルの添加量がきめ細かく規定されている事により、最適な量のアルカリを添加することができるため、得られるエステル化物を用いた重合反応での高い重合率を維持できる点で、極めて有用であるといえる。
【0097】
本発明のエステル化物の製造方法はまた、(2) 酸触媒の存在下、脱水溶剤中で、上記一般式(1)で示すアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方法において、エステル化反応終了後、以下の関係:
0<X<(B−C)/Aの場合には、Y≦B−AX
(B−C)/A≦Xの場合には、Y≦C
(ただし、Xは中和時間(分)を表わし、Yは中和温度(℃)を表わし、Aは0.17〜0.39の数であり、Bは140〜100の数であり、およびCは90〜50の数である)
を満足する条件下で酸触媒をアルカリで中和することを特徴とするものであり、これにより、酸触媒の活性化を効果的に抑制することができ、ゆえに、加水分解生成物の量を有意に低減できるため、高純度で高品質のエステル化物を得ることができる。その結果、得られた生成物のエステル化物を用いてセメント分散剤等の各種分散剤や増粘剤等に使用される重合体を合成する場合に、重合に関与しない不純物が含有されていないため、高品質、高性能の各種分散剤や増粘剤用の重合体を得ることができる。
【0098】
また、本発明では、上記(2)に記載のエステル化物の製造方法において、特に、上記(A,B,C)を(0.17,140,90)とすることにより、より効果的に酸触媒の活性化を抑制することができ、また、中和時間を有意に短縮することができるため、大量生産の観点から非常に好ましい。

Claims (4)

  1. 酸触媒の存在下、脱水溶剤中で、一般式(1)
    (ただし、Rは炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、ROは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ROの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびROが2種以上の混合物の形態である場合には各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数である)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とエステル化反応させ、エステル化反応終了後、90℃以下で酸触媒をアルカリと共に水を添加して中和し、前記中和の後、前記脱水溶剤を水との共沸により留去して、エステル化物の水溶液を得ることを特徴とするエステル化物の水溶液の製造方法。
  2. 酸触媒の全部とエステル化反応に使用された(メタ)アクリル酸の量の10質量%以下とをアルカリで中和する、請求項1に記載のエステル化物の水溶液の製造方法。
  3. アルカリの添加量が酸触媒1当量に対して1.0〜100当量である、請求項1または2に記載のエステル化物の水溶液の製造方法。
  4. 酸触媒、または酸触媒の全部とエステル化反応に使用された(メタ)アクリル酸の量の10質量%以下とを、前記アルカリおよび水である0.01〜50質量%のアルカリ水溶液を添加して中和する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル化物の水溶液の製造方法。
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