JP3068619B2 - エステル化物の製造方法 - Google Patents

エステル化物の製造方法

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JP3068619B2 JP26943499A JP26943499A JP3068619B2 JP 3068619 B2 JP3068619 B2 JP 3068619B2 JP 26943499 A JP26943499 A JP 26943499A JP 26943499 A JP26943499 A JP 26943499A JP 3068619 B2 JP3068619 B2 JP 3068619B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エステル化物の製
造方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、
アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応に
より、高品質の(メタ)アクリル酸エステル類(本明細
書中では、単に「エステル化物」ともいう)を効率よく
製造する方法に関するものである。
【0002】本発明はまた、上記方法によって製造され
たエステル化物を用いたセメント分散剤用ポリカルボン
酸系共重合体の製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】セメント分散剤や炭酸カルシウム、カー
ボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止
剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘
剤等に使用される重合体成分の原料となる各種アルコキ
シポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エ
ステル系単量体成分は、アルコキシポリアルキレングリ
コールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応するこ
とにより得られる。こうしたエステル化反応では、同時
に反応生成水が副生するため、この反応生成水を反応系
から除去しないと(すなわち、反応生成水がたまる
と)、平衡反応ゆえにエステル化物を生成する方向に反
応が進まなくなる。そのため、例えば、特開平9−32
8346号公報の比較例1に見られるように、セメント
分散剤に使用される重合体成分の原料となる各種アルコ
キシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸
エステル系単量体成分を合成するのに、水分離器を設
け、反応生成水を分離できるようにする手法がとられて
いる。より詳しくは、エステル化反応によるアルコキシ
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エス
テル系単量体の合成として、反応器(セパラブルフラス
コ)に温度計、攪拌機および水分離器を設け、反応生成
水を分離できるようにした反応装置に、メタクリル酸、
メトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の
平均付加モル数:10モル)、酸触媒として硫酸、重合
禁止剤としてフェノチアジン、溶剤としてシクロヘキサ
ンを仕込み攪拌しながら加熱し、常圧下にシクロヘキサ
ン−水共沸物を留出させ、反応生成水を水分離器で除去
しながらシクロヘキサンを還流させる、というものであ
る。
【0004】しかしながら、上記公報に開示されている
ように、エステル化反応の際に、反応生成水を分離除去
するために水分離器を設けること以外は、該反応生成水
を分離除去する上での技術的課題等に関して現在までに
報告されたものはないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、高品質
のエステル化物を効率よく製造するべく鋭意研究を進め
る過程で、溶剤−反応生成水の共沸物を留出し凝縮する
ときに、ゲル状物が形成され、その一部は溶剤とともに
還流されることにより、反応器内に不純物として留ま
り、最終的な製品中に混入され、該製品(例えば、セメ
ント分散剤、顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水ス
ラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤など)の性能
及び品質を低下させることになるほか、工業化してエス
テル化物を大量生産する場合には、該ゲル状物が、反応
生成水の凝縮−分離除去手段に用いられる配管や装置
(例えば、コンデンサなど)の内壁などに付着してい
き、凝縮時の熱交換効率の低下を招くことにもなり、さ
らに、繰り返し(いわば、連続的に)運転する場合に
は、コンデンサや配管内の流体(主に凝縮後の液体)の
流れを悪くし、ひいては閉塞を招くおそれがあるため、
定期的に運転を止めてコンデンサや配管内部を洗浄し該
ゲル状物を取り除く必要があるなど、ゲル状物に起因す
る多くの技術的課題が生じることがわかってきた。
【0006】したがって、本発明の目的は、反応生成水
を分離除去する際に生ずる技術的課題を解決してなるエ
ステル化物の製造方法を提供するものである。
【0007】本発明の他の目的は、こうした技術的課題
を生じさせる元凶ともいえるゲル状物の発生そのものを
防止し、高品質のエステル化物を効率よく製造すること
のできるエステル化物の製造方法を提供するものであ
る。
【0008】本発明のさらなる目的は、本発明の方法に
よって製造された不純物(ゲル状物)含量の少ないエス
テル化物を用いた優れたセメント分散能を有するセメン
ト分散剤用のポリカルボン酸系共重合体の製造方法に関
するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上記課題を解決するために、高品質のエステル化物を効
率よく製造することのできる方法につき、鋭意検討した
結果、反応生成水を分離除去する際に生ずるゲル状物の
多くはポリ(メタ)アクリル酸であって、かかるゲル状
物は、低沸点の原料の一部が、溶剤−反応生成水の共沸
物とともに留出され凝縮されるときに(液相反応によ
り)形成されるものであるとする、発生メカニズム(発
生原因)を突き止め、これに基づき極めて効果的に該ゲ
ル状物の発生を防止することのできる解決策を見出し、
当該知見に基づき本発明を完成するに至ったものであ
る。
【0010】すなわち、本発明の目的は、以下の(1)
〜(8)に示すエステル化物の製造方法により達成され
るものである。
【0011】(1) 下記式(1):
【0012】
【化4】
【0013】(ただし、R1は炭素原子数1〜30の炭
化水素基を表わし、R2Oは炭素原子数2〜18のオキ
シアルキレン基を表わし、この際、各R2Oの繰り返し
単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、お
よびR2Oが2種以上の混合物の形態である場合には各
2Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあ
るいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnは
オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜3
00の数である)で示されるアルコールと(メタ)アク
リル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方
法において、エステル化反応時に生成する反応生成水を
留出させ、該反応生成水を含む留出物に対してゲル化防
止剤を作用させることを特徴とするエステル化物の製造
方法。
【0014】(2) 前記ゲル化防止剤は反応生成水を
含む留出物を凝縮させる領域で作用させる、上記(1)
に記載の方法。
【0015】(3) 前記ゲル化防止剤はコンデンサ内
で作用させる、上記(1)または(2)に記載の方法。
【0016】(4) 前記ゲル化防止剤は留出物を凝縮
させるコンデンサの塔頂近傍に作用させる、上記(3)
に記載の方法。
【0017】(5) 前記エステル化反応を脱水溶剤中
で行いかつゲル化防止剤を脱水溶剤と同種の溶剤と混合
した形態で作用させる、上記(1)〜(4)のいずれか
1つに記載の方法。
【0018】(6) 前記ゲル化防止剤は溶剤溶解性を
有する、上記(5)に記載の方法。
【0019】(7) 前記式(1)において、nはオキ
シアルキレン基の平均付加モル数を表わし、2〜300
の数である、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載
の方法。
【0020】(8) ゲル化防止剤をエステル化反応時
に生成する反応生成水を含む留出物に対して作用させな
がら、下記式(1):
【0021】
【化5】
【0022】(ただし、R1は炭素原子数1〜30の炭
化水素基を表わし、R2Oは炭素原子数2〜18のオキ
シアルキレン基を表わし、この際、各R2Oの繰り返し
単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、お
よびR2Oが2種以上の混合物の形態である場合には各
2Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあ
るいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnは
オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜3
00の数である)で示されるアルコキシポリアルキレン
グリコールを(メタ)アクリル酸とエステル化反応する
ことにより、アルコキシポリアルキレングリコールモノ
(メタ)アクリル酸系単量体(a)を得、該アルコキシ
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸系単
量体(a)5〜98重量%、下記式(2):
【0023】
【化6】
【0024】(ただし、R3は水素もしくはメチル基を
表わし、M1は水素、一価金属、二価金属、アンモニウ
ム基または有機アミン基を表わす)で示される(メタ)
アクリル酸系単量体(b)95〜2重量%、およびこれ
らの単量体と共重合可能な他の単量体(c)0〜50重
量%(但し、(a)、(b)および(c)の合計は10
0重量%)を共重合することを特徴とする、セメント分
散剤用ポリカルボン酸系共重合体の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】第一の概念によると、本発明は、
下記式(1):
【0026】
【化7】
【0027】(ただし、R1は炭素原子数1〜30の炭
化水素基を表わし、R2Oは炭素原子数2〜18のオキ
シアルキレン基を表わし、この際、各R2Oの繰り返し
単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、お
よびR2Oが2種以上の混合物の形態である場合には各
2Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあ
るいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnは
オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜3
00の数である)で示されるアルコールと(メタ)アク
リル酸とのエステル化反応によるエステル化物の製造方
法において、エステル化反応時に生成する反応生成水を
留出させ、該反応生成水を含む留出物に対してゲル化防
止剤を作用させることを特徴とするエステル化物の製造
方法を提供するものである。これにより、反応系内の反
応生成水を反応系外に留出してから凝縮液化し分離除去
する間に、反応生成水とともに反応系外に留出されてく
る低沸点の原料である(メタ)アクリル酸等により生ず
るゲル状物(ポリ(メタ)アクリル酸等)の発生そのも
のを効果的に防止することができるものである。
【0028】本明細書において、「留出物」とは、反応
槽から留出されてなるもの(混合物)を意味し、エステ
ル化反応工程中あるいはエステル化反応工程終了後の脱
水溶剤留去工程などの工程の種類にかかわらず、反応槽
から留出されるものすべてを包含する。よつて、本発明
による留出物は、存在する状態は特に制限されずに、ガ
ス状または液状のいずれの状態で存在していてもよい。
すなわち、本明細書における「留出物」は、特記しない
かぎり、エステル化反応工程時に生成し、反応槽から留
去される反応生成水、該反応生成水を反応槽から留出す
る際に一緒に留出される原料、特に(メタ)アクリル
酸、さらに必要に応じて反応生成水と共沸させる目的で
反応槽に加えられる脱水溶剤を含む留出物;ならびにエ
ステル化反応工程終了後の脱水溶剤留去工程中に反応槽
から留去される脱水溶剤、及び該脱水溶剤を反応槽から
留出する際に一緒に留出される原料、特に(メタ)アク
リル酸を含む留出物などを包含する。なお、ここでいう
反応槽は、その名称に拘泥されるものではなく、反応
器、反応容器および反応釜などと同じ意味内容で用いら
れるものであって、最も広く解されるべきものである。
以下、説明の都合上、これら中の表現を適当に用いるこ
ともあるが、個々の持つ狭い意味内容に本発明が限定さ
れるべきものではない。同様に、後述するコンデンサ
(凝縮器)も水分離器もその名称に拘泥されるものでは
なく、最も広く解されるべきものである。
【0029】なお、本発明の請求項1において使用され
る「留出物」は、エステル化反応工程中に生成しかつ反
応槽から留去される反応生成水を含むものであり、通
常、上記反応生成水のほかに、該反応生成水を反応槽か
ら留出する際に一緒に留出される原料、特に(メタ)ア
クリル酸、および必要に応じて反応生成水と共沸させる
目的で反応槽に加えられる脱水溶剤を含むものである。
【0030】本発明の製造方法において、エステル化反
応時に生成する反応生成水などの留出物に対して作用さ
せるために用いられるゲル化防止剤としては、反応生成
水と共に留出されてくる低沸点の原料の留出段階、特に
凝縮段階での重合反応を抑えられ、反応槽からコンデン
サへの立ち上がり管のフランジ部などで発生するゲルの
形成、即ち、コンデンサのチューブや反応槽とコンデン
サとの間の連結管のつまりを抑制できるものであれば特
に制限されるものではなく、従来既知の各種ゲル化防止
剤の中から適宜選択して使用することができる。該ゲル
化防止剤としては、具体的には、例えば、フェノチアジ
ン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオ
ロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N
−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリ
デン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノ
ン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼ
ン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペ
ロン、塩化銅(II)などが挙げられる。これらのうち、
脱水溶剤や生成水の溶解性の理由から、フェノチアジ
ン、ハイドロキノン、メトキノンが好ましく使用され
る。これらのゲル化防止剤は、単独で使用してもよいほ
か、2種以上を混合して使用することもできる。
【0031】上記ゲル化防止剤の添加量としては、エス
テル化反応条件、特に反応系に加える熱量や反応系内に
仕込む脱水溶剤量等に応じて、低沸点原料の留出量に見
合う量、すなわち、共沸物の留出開始時からエステル化
反応終了まで逐次留出されてくる低沸点原料に対して常
にゲルの形成を効果的に防止することができる量を適宜
添加すればよく、原料であるアルコールおよび(メタ)
アクリル酸の仕込み量に対して0.1〜1000pp
m、好ましくは1〜500ppmの範囲で添加すること
で上記目的を達成することができる。原料の仕込み量に
対して0.1ppm未満の場合には、ゲル状物が生成す
る場合があり、共沸物の留出開始時からエステル化反応
終了まで逐次留出されてくる低沸点原料に対して、常に
重合禁止能を有効に発現させる上で不十分な量と言え
る。一方、原料仕込み量に対して1000ppmを超え
る場合には、ゲル形成防止(重合禁止)能を有効に発現
させるには十分過ぎる量であり、過剰な添加に見合う更
なる効果の発現が見込めず不経済となる。なお、添加量
の全量を一時に加えたのでは、共沸物の留出開始時から
エステル化反応終了まで逐次留出されてくる低沸点原料
に対してゲルの形成を有効に阻止することができにくい
ため、共沸物の留出に呼応するたかちで、共沸物の留出
開始時からエステル化反応終了まで逐次(連続的に)一
定量づつを添加し、最終的な添加量の総計が上記範囲と
なるように調整することが望ましい。
【0032】上記ゲル化防止剤の作用のさせかた(作用
形態や作用させる領域など)としては、反応系外に留出
された低沸点原料(流体物)に対して有効に作用(接
触)させることができるものであれば、特に制限される
ものではないが、反応生成水を反応系外に留出する場合
に、取り扱いの面からはより低い温度で留出できるのが
望ましい。そのため、反応生成水と共沸する溶剤(本明
細書では、単に脱水溶剤ともいう)を反応系に仕込んで
おき、反応時に脱水溶剤−反応生成水の共沸物(本明細
書では、単に溶剤−水共沸物ともいう)のかたちで留出
させる方法が一般的である。このことから、低沸点の原
料を含有する溶剤−水共沸物に素早く作用する(すなわ
ち、低沸点の原料を含有する溶剤−水共沸物が凝縮(液
化)した際に、この液化物と速やかに接触し、ゲル化す
る低沸点の原料が含有されている脱水溶剤に対して相溶
ないし分散する)ことができるように、ゲル化防止剤を
脱水溶剤と同種の溶剤に溶解したものを添加するのが望
ましい。
【0033】以下に、上記ゲル化防止剤の好適な作用方
法を、作用形態ごとに例を挙げて説明するが、本発明で
は、これらを適当に組み合わせることができるほか、従
来既知の他の作用方法を適宜利用することができる。な
お、下記に例示する作用方法は、当業者が本発明を容易
に理解することができるように代表的なものを例示的に
示したものであり、本発明がこれらに限定されるもので
はないことはいうまでもない。
【0034】液化(溶解)した状態で作用させる方
法;適当な溶剤、好ましくは反応系に仕込む脱水溶剤と
同種の溶剤にゲル化防止剤を溶かして液状にしたもの
を、反応生成水を含む留出物(好ましくは溶剤−水共沸
物)を凝縮させる領域、具体的には、反応生成水を含む
留出物の凝縮液化が行われるコンデンサ内部の凝縮部
に、好ましくはコンデンサの上部(とりわけ塔頂部近
傍)からその内部に該留出物と並流接触するように滴下
ないし噴霧するものである。また、コンデンサのタイプ
等によっては、ゲル化防止剤を含む溶液をコンデンサ内
部に仕込んでおいて、これにガス状の留出物を吹き込む
あるいは液化した留出物を流し込むようにして接触(相
溶ないし分散)させるようにしてもよい。さらに上記態
様では、ゲル化防止剤の作用部位をコンデンサ内部の凝
縮部としたが、上記部位に加えて、反応槽とベーパーの
立ち上がりラインとの間の接合部(フランジ部)やベー
パーラインとコンデンサ塔頂部との間のフランジ部等の
フランジ部、反応槽等に設置された温度計やのぞき窓に
設けられた突起部など、ゲルが形成されやすい部位であ
ってもよい。これらのうち、コンデンサ内部の凝縮部
(とりわけ塔頂部近傍)、反応槽とベーパーの立ち上が
りラインとの間のフランジ部やベーパーラインとコンデ
ンサ塔頂部との間のフランジ部が好ましいゲル化防止剤
の作用部位である。また、上記作用部位は、一箇所でな
くてもよく、必要に応じて、複数箇所を同時に設けても
よい。
【0035】固化した状態で作用させる方法;粉末状
のゲル化防止剤を、反応生成水を含む留出物を凝縮させ
る領域、具体的には、反応生成水を含む留出物の凝縮液
化が行われるコンデンサ内部の凝縮部に、好ましくはコ
ンデンサの上部(とりわけ塔頂部近傍)からコンデンサ
内部に該留出物と並流接触するように投下ないし散布し
て降らせるものである。また、コンデンサのタイプなど
によっては、一定粒度のゲル化防止剤を予めコンデンサ
内部に積載ないし充填などして仕込んでおいて接触させ
るようにしてもよい。さらに上記態様では、ゲル化防止
剤の作用部位をコンデンサ内部の凝縮部としたが、上記
部位に加えて、反応槽とベーパーの立ち上がりラインと
の間の接合部(フランジ部)やベーパーラインとコンデ
ンサ塔頂部との間のフランジ部等のフランジ部、反応槽
等に設置された温度計やのぞき窓に設けられた突起部な
ど、ゲルが形成されやすい部位であってもよい。これら
のうち、コンデンサ内部の凝縮部(とりわけ塔頂部近
傍)、反応槽とベーパーの立ち上がりラインとの間のフ
ランジ部やベーパーラインとコンデンサ塔頂部との間の
フランジ部が好ましいゲル化防止剤の作用部位である。
また、上記作用部位は、一箇所でなくてもよく、必要に
応じて、複数箇所を同時に設けてもよい。
【0036】気化した状態で作用させる方法;ゲル化
防止剤を気化(昇華したものを含む)させて、ガス状の
反応生成水を含む留出物(低沸点原料を含む)を凝縮液
化させる前に、反応系(反応器)とコンデンサとを連通
する配管経路内に、例えば、コンデンサ内部の凝縮部
(とりわけ塔頂部近傍)、反応槽とベーパーの立ち上が
りラインとの間の接合部(フランジ部)やベーパーライ
ンとコンデンサ塔頂部との間のフランジ部等のフランジ
部、反応槽等に設置された温度計やのぞき窓に設けられ
た突起部などのゲルが形成されやすい部位に、好ましく
はコンデンサ内部の凝縮部(とりわけ塔頂部近傍)、反
応槽とベーパーの立ち上がりラインとの間のフランジ部
やベーパーラインとコンデンサ塔頂部との間のフランジ
部に、供給して混合させるものである。
【0037】なお、本発明において、反応槽とベーパー
の立ち上がりラインとの間のフランジ部におけるゲルの
形成を抑制することを目的とする場合には、ゲル化防止
剤を含ませずに脱水溶剤のみを上記フランジ部に供給す
ることにより上記目的を達成してもよい。なお、上記場
合において、脱水溶剤の具体例は、前記脱水溶剤と同様
である。上記態様において、エステル化反応中に使用す
る場合には、同種の脱水溶剤を使用しても若しくは異な
る種類の脱水溶剤をフランジ部に供給しても、または以
下に詳述するが、凝縮液(またはその一部)を循環させ
て使用してもよい。また、脱水溶剤の不存在下でエステ
ル化反応を行う際には、別途、脱水溶剤供給機構を好ま
しくはフランジ部付近に設けて、脱水溶剤をフランジ部
供給すればよい。
【0038】また、上記の液化、ここでは溶解した状
態でゲル化防止剤を作用させる場合に、上記ゲル化防止
剤を溶解することのできる溶剤としては、例えば、ベン
ゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、アセト
ン、メチルエチルケトン、n−ヘキサン、ヘプタン等が
挙げられるが、好ましくは上述したように、反応系に仕
込まれる脱水溶剤と同種のものを用いるのがよい。溶剤
を還流して戻す際に、異なる溶剤を用いた場合には、こ
れらを別途回収するか、あるいは還流して戻す場合に
は、混合溶剤の持つ熱伝達係数が、仕込み溶剤の熱伝達
係数となる場合、反応系に加える熱量等の調整を行い、
反応生成水の留出量(留出速度)が大きく変動しないよ
うにする必要があるなど、反応系の制御管理が複雑化す
ることがあるため、仕込み溶剤と同種のものを用いるの
がよいと言える。
【0039】さらに、上記ゲル化防止剤を溶剤(好まし
くは脱水溶剤)に溶解して作用させる場合、ゲル化防止
剤は、ゲル状物の発生を抑制することができるように、
コンデンサ内を通過する低沸点原料(ガスないし液化
物)に対して、常にゲル化防止剤が存在し、有効に機能
するように供給されればよく、ゲル化防止剤と溶剤との
混合比率としては、特に制限されるものではないが、ゲ
ル化防止剤を、溶剤100重量部に対して、通常、0.
001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部の
範囲で添加するような比率である。混合比率が、溶剤1
00重量部に対してゲル化防止剤が0.001重量部未
満の場合には、使用するゲル化防止剤の添加量が上記に
規定するように仕込みの原料に対して一定量であるた
め、結果的に使用する溶剤の量(添加される全量)が大
きくなり、最初に仕込んだ脱水溶剤に対して逐次環流さ
れることで溶剤量が増大していくため、反応系に加える
熱量等の調整を行い、反応生成水の留出量(留出速度)
が大きく変動しないようにする必要があるなど、反応系
の制御管理が複雑化する必要が生じ、また、脱水溶剤と
異なる溶剤を用い、これを分離回収する場合には、その
回収コストが増大製造コストがかさむことになる。一
方、混合比率が、溶剤100重量部に対してゲル化防止
剤が10重量部を超える場合には、逆に使用する溶剤の
量(添加される全量)が少なくなるため、単位時間当た
りの添加量が制限され、低沸点原料との接触頻度が相対
的に低下し、未接触のまま液状化しゲル状物を形成する
のを効果的に抑制するのが困難になる。そのため、単位
時間当たりに必要な添加量を確保するには、仕込みの原
料に対して上記に規定する以上の大量のゲル化防止剤が
必要になり、製造コストが上昇する。
【0040】または、本発明において、エステル化反応
を脱水溶剤中で行う際には、上記ゲル化防止剤の作用の
させかたとして、エステル化反応時に生成する反応生成
水を脱水溶剤と共に留出させ、該反応生成水を含む留出
物を凝縮液化し、該凝縮液化した凝縮液から反応生成水
を分離除去し、該反応生成水を分離除去した後の脱水溶
剤を含有する凝縮残液を反応槽に戻しながらエステル化
反応を行う際に、該凝縮残液の一部とゲル化防止剤とを
含有してなるゲル化防止剤溶液を留出物に作用させるこ
とができる(この態様を、以下、「第二の実施態様」と
も称する)。この際、上記第二の実施態様は、前記した
ようなゲル化防止剤の好適な作用方法に代えてあるいは
これと組み合わせて使用してもよい。これにより反応槽
内に増える凝縮残液の量を極力抑え、かつ留出物に対し
て(特に、留出物に対して該留出物が凝縮液化するコン
デンサの壁面、とりわけ塔頂部の壁面を十分に濡らすこ
とができるだけの)十分な量のゲル化防止剤溶液を常に
供給する(コンデンサの塔頂部から降らせる)ことがで
きる。そのため、反応槽内の反応生成水を反応槽から留
出してから凝縮液化し分離除去する間に、反応生成水と
共に留出されてくる低沸点の原料によるゲル状物の発生
を、常に効果的に防止することができ、高品質のエスル
化物を効率よく低コストで製造することができるもので
ある。なお、上記第二の実施態様においては、留出物
は、通常、エステル化反応により生成した反応生成水を
含むほか、該反応生成水を反応槽から留出する際に一緒
に留出される原料、特に(メタ)アクリル酸、さらに必
要に応じて反応生成水と共沸させる目的で反応槽に加え
られる脱水溶剤を含むものである。
【0041】以下、第二の実施態様について説明する。
【0042】第二の実施態様に用いられるゲル化防止剤
溶液は、留出物に作用させる溶液、より詳しくは留出物
中の低沸点の原料に対してゲル化防止を目的で作用させ
る溶液であって、凝縮液の一部とゲル化防止剤とを含む
ものであるが、この際、ゲル化防止剤はそのままの形態
で用いてもあるいは溶液の形態で用いてもよいが、より
好ましくは凝縮残液の一部と溶液形態のゲル化防止剤と
を含むものである。
【0043】本明細書において、「凝縮液」ということ
ばは、コンデンサの出口から出てきたものを意味する。
また、第二の実施態様によると、ゲル化防止剤溶液をエ
ステル化反応時に生成する反応生成水などの留出物に対
して作用させてもよいため、このような場合には、ゲル
化防止剤溶液が凝縮液に含まれる。さらにその後に水分
離器で凝縮残液と分離水に分離されるため、凝縮残液及
び分離水双方とも、凝縮液の定義に含まれ、これらは相
互独立的に単独で使用することもできる。また、本明細
書において、「凝縮液の一部」とは、凝縮液をただ単に
部分的に分けたもの以外に、該凝縮液を分離して得られ
る凝縮残液および凝縮残液の一部も含まれる。
【0044】また、「凝縮残液」とは、水分離器で分け
た溶剤側の成分をいい、「分離水」とは、水分離手段で
ある水分離器で分けた水側の成分をいう。溶剤側の成分
としては、ゲル化防止剤溶液のほか、必要に応じて使用
される脱水溶剤等が含まれている。水側の成分として
は、反応生成水や原料等がある。なお、上記コンデンサ
および水分離器は本発明のエステル化物の製造方法にお
いて、次のように使用されるものである。すなわち、本
発明のエステル化物の製造方法では、エステル化反応時
に生成する反応生成水を反応槽から留去する必要がある
が、留出物中には上記したように反応生成水以外の成分
も含まれるため、直接大気中に放出することは環境汚染
等の問題からできないため、かかる反応生成水を反応槽
から留出した後に、適当に処理したり再利用したりでき
るようにする必要がある。そこで、反応槽から留出され
てなるものをコンデンサ(凝縮器)に送り、凝縮液化す
るのに使われる。さらにコンデンサの出口から出てきた
ものを、水分離器に送り、その性質の違いを利用して2
層に分離し、一方の層の水側の成分からなる分離水と、
もう一方の層の溶剤側の成分からなる凝縮残液とに分け
るのに使われる。
【0045】また、ゲル化防止剤溶液には、上記凝縮液
の一部のほか、以下に説明するゲル化防止剤(溶液の形
態を含む;以下、同様)、さらに他の添加剤、例えば、
反応槽内への補充目的で適宜追加する酸触媒などが含有
されていてもよい。
【0046】上述したように、ゲル化防止剤は、適当な
溶剤、好ましくは脱水溶剤と同種の溶剤に溶解(ないし
混合、例えば、過飽和状態で一部のゲル化防止剤が溶解
せずに含まれている場合、2種以上のゲル化防止剤を用
いた場合に、その一部のゲル化防止剤が溶剤に溶解せず
に含まれている場合、さらにはゲル化防止剤が混合され
ている場合なども含む)されていることが好ましい。
【0047】本発明において使用されるゲル化防止剤と
しては、反応生成水等と共に留出されてくる低沸点の原
料が、凝縮される段階で起こる重合反応を抑えることが
できるものであれば特に制限されるものではなく、従来
既知の各種ゲル化防止剤の中から適宜選択して利用する
ことができ、その具体例や好ましい例については、上記
ゲル化防止剤に関するものと同様である。
【0048】上記ゲル化防止剤の使用量は、留出物の留
出開始時からエステル化反応終了まで逐次留出されてく
る低沸点原料に対して常にゲルの形成を効果的に防止す
ることができる量(留出物の留出開始時からエステル化
反応終了までの積算量)であることが必要である。さら
に、エステル化反応に脱水溶剤を使用し、該脱水溶剤を
留出し還流させる場合には、該ゲル化防止剤は、留出物
に対して重合防止目的を達成した後、反応生成水を分離
除去後の凝縮残液側に溶解した状態で反応槽に戻され、
反応槽内に漸次蓄積される。その結果、反応により得ら
れたエステル化物を原料として重合を行いセメント分散
剤などの各種製品を製造する際に重合し難くする。よっ
て、ゲル化防止剤の使用量は極力抑えることが望まし
い。以上の観点から、該ゲル化防止剤の使用量は、原料
であるアルコールおよび(メタ)アクリル酸の全使用量
に対して、0.1〜1000重量ppm、好ましくは1
〜500重量ppmの範囲である。ゲル化防止剤の使用
量が、原料の全使用量に対して0.1重量ppm未満の
場合には、反応生成水等を含む留出物の留出開始時から
エステル化反応終了まで逐次留出されてくる低沸点原料
に対して、常に重合禁止能を有効に発現させる上で不十
分な量であるため、ゲル状物が生成する場合がある。一
方、原料の全使用量に対して1000重量ppmを超え
る場合には、重合禁止能を有効に発現させるには十分過
ぎる量であり、過剰な添加に見合う更なる効果の発現が
見込めず不経済となるほか、得られたエステル化物を原
料として重合を行いセメント分散剤などの各種製品を製
造する際に重合が難しくなる。なお、ゲル化防止剤の使
用量の全量を一時に加えたのでは、反応生成水を含む留
出物の留出開始時からエステル化反応終了まで逐次留出
されてくる低沸点原料に対してゲル状物の形成を有効に
阻止することができにくいため、ゲル化防止剤の使用量
が上記に規定する範囲内で連続的に加えるのが望まし
い。この際、逐次留出される低沸点原料に対して、ゲル
化防止剤溶液中のゲル化防止剤濃度が常に下記に規定す
る範囲となるように調整し連続的に加えるのがより望ま
しい。
【0049】ゲル化防止剤を溶液の形態で使用する際に
用いることのできる溶剤としては、特に制限されるもの
ではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シ
クロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、n−ヘ
キサン、ヘプタン等が挙げられる。また、エステル化反
応に脱水溶剤を使用し、該脱水溶剤を留出し還流させる
場合には、ゲル化防止剤溶液に用いた溶剤成分も凝縮残
液側に含有されて反応槽に戻されるため、エステル化反
応槽内で脱水溶剤として有効に作用し得るものであるこ
とが望ましい。特に、反応槽内に仕込んである脱水溶剤
と異なる溶剤を用いた場合には、反応槽内の該溶剤量
(濃度)の漸増により、該溶剤を含む脱水溶剤と反応生
成水との共沸点(およびこれに伴う留出速度)が経時的
に変動するため反応槽内部に加える熱量等の制御管理、
さらには原材料の点数の増加に伴い、設備が増加し、安
全・品質管理や在庫管理などが複雑化ないし煩雑化する
等の点から、反応槽内に仕込んである脱水溶剤と同種の
溶剤がより好ましい。
【0050】ここでの溶剤の主な使用目的は、ゲル化防
止剤の溶液化にあり、凝縮液の一部との混合が容易にな
されるようにし、凝縮液の一部との混合に際し撹拌装置
等(例えば、撹拌槽など)を設けなくともよいようにす
ることにある。そして、エステル化反応に脱水溶剤を使
用し、該脱水溶剤を留出し還流させる場合に、反応槽内
に戻される凝縮残液量の増加を極力抑えるには、ゲル化
防止剤溶液に使用する凝縮液(好ましくは凝縮残液)の
一部の混合比率が高い方がよいことから、ここでの溶剤
使用量は極力抑える事が望ましい。かかる観点から、上
記溶液中のゲル化防止剤濃度としては、該溶液全体に対
して10重量ppm〜飽和濃度、好ましくは100重量
ppm〜飽和濃度、より好ましくは200重量ppm〜
飽和濃度、特に好ましくは200重量ppm〜飽和濃度
の95%に相当する濃度(ただし、飽和濃度は、ゲル化
防止剤および溶剤の種類、温度、圧力等により変動し一
義的に決まるものではないため、具体的な数値は規定し
ていない)である。飽和溶液を用いることにより、溶剤
の使用量を極力少なくすることができる。さらに、コン
デンサから降らせるゲル化防止剤濃度を一定にするため
には温度により変化する飽和濃度より、該飽和濃度より
も少し低濃度の方が良いため、飽和濃度の95%に相当
する濃度以下で用いるのが好ましい。上記ゲル化防止剤
濃度が、該溶液全体に対して10重量ppm未満の場合
には、ゲル化防止剤溶液に使用する凝縮液の一部の混合
比率が低下し、エステル化反応に脱水溶剤を使用し、該
脱水溶剤を留出し還流させる場合には、反応槽に戻され
る凝縮残液の量が増える。あるいは漸増する凝縮残液を
エステル化反応終了時まで貯えておける大きな保存部や
時間とともに凝縮残液の一部を系外に出すための装置・
手段等が必要となる。さらに溶剤の使用量も増えコスト
アップになる。
【0051】また、ゲル化防止剤溶液に用いられるゲル
化防止剤および凝縮液の一部の流量(流速)に関して
も、ゲル化防止剤溶液中のゲル化防止剤の濃度および反
応装置(反応槽や配管、コンデンサ等)の大きさや留出
物の量等により異なるため、一義的に規定することはで
きないが、ゲル化防止剤の量を減らして、これに代えて
十分な量の凝縮液を用いることで、十分な量のゲル化防
止剤溶液を留出物に作用させることができ、さらにエス
テル化反応に脱水溶剤を使用し、該脱水溶剤を留出し還
流させる場合には、反応槽内の溶剤量の増加を極力抑え
ることができるように使用態様に応じて適宜決定(規
定)すれば良い。コンデンサの直径(内径)1mに対す
るゲル化防止剤1分間あたりの流量は、0.01〜40
リットル/分m、好ましくは0.1〜15リットル/分
m、より好ましくは0.1〜5リットル/分mであり、
また、コンデンサの直径(内径)1mに対する凝縮液の
一部の1分間あたりの流量は、1〜1000リットル/
分m、好ましくは5〜500リットル/分m、より好ま
しくは10〜200リットル/分mである。ゲル化防止
剤の流量が0.01リットル/分m未満の場合には、溶
液中のゲル化防止剤濃度が低下し、常に十分な重合禁止
能力を発現させることが困難となる。一方、ゲル化防止
剤の流量が30リットル/分mを超える場合には、新た
に加えられる溶剤量が増加するため、ゲル化防止剤の量
を減らして、これに代えて十分な量の凝縮液を用いると
する本発明の主旨の達成が困難となる。また、凝縮液の
一部の流量が1リットル/分m未満の場合には、留出物
に対して常に十分な量の凝縮液を供給することができ
ず、ゲル状物の発生を招くおそれがあるため好ましくな
い。一方、凝縮液の一部の流量が1000リットル/分
mを超える場合には、これ以上の高流量で供給する事に
見合う更なる効果が得られず、こうした多量の凝縮液を
高流量で供給するための装置(大型のポンプや大口径な
いし耐圧配管など)を設ける必要があり、不経済であ
る。
【0052】このように使用態様に応じて、ゲル化防止
剤の流量を決定(規定)し、凝縮液の一部、好ましくは
凝縮残液の一部の流量を決定(規定)した上で、流量の
組み合わせは規定した流量の範囲内の組み合わせであれ
ば全て可能であるが、本発明の主旨を十分に発揮するに
は、ゲル化防止剤に用いられるゲル化防止剤溶液と凝縮
液の一部との混合比率は、以下の組み合わせがよい。
【0053】ゲル化防止剤1重量部に対して凝縮液の一
部を0.5〜10000重量部、好ましくは1〜100
0重量部、より好ましくは10〜1000重量部、特に
好ましくは10〜100重量部の範囲である。ゲル化防
止剤1重量部に対して凝縮液の一部が0.5重量部未満
の場合には、本発明の上記主旨を十分に満足させること
ができず好ましくない。一方、ゲル化防止剤1重量部に
対して凝縮液の一部が10000重量部を超える場合に
は、両者を安定して混合することが困難となるためであ
る。なお、これらの混合比率は、一定としてもあるいは
可変させてもよく、本発明の上記主旨を満足するように
適宜混合比率を決定すればよい。
【0054】本発明において、ゲル化防止剤溶液を作用
させる方法としては、留出物、特に留出された低沸点原
料に対して有効に作用させることができるものであれ
ば、特に制限されるものではなく、従来既知の方法(手
段)を適宜用いて行うことができる。好ましくはガス状
の留出物を凝縮液化させる領域、具体的には、ガス状の
留出物を凝縮液化する領域である熱交換器、冷却器ある
いは凝縮器等(本明細書中では、これらを総称して単に
コンデンサともいう)、特にガス状の留出物が凝縮液化
し始めるコンデンサの塔頂部のガス入口部分において、
有効にゲル化防止剤溶液が作用できるようにすることが
望ましい。そのためには、ゲル化防止剤溶液が存在する
領域はコンデンサ内には限られず、コンデンサの塔頂近
傍、すなわち、コンデンサの塔頂ないしコンデンサ直前
の留出経路内などにゲル化防止剤溶液を作用させればよ
く、そうすることでコンデンサの内壁を常に濡れた状態
に保てることが望ましいと言える。具体例としては、
コンデンサの塔頂部の中央部に上向きに設置したノズル
部よりコンデンサの塔頂部のガス入口部分の内壁(ここ
で、最初の凝縮液化が生じ、同時に低沸点原料のゲル化
も生ずるためである)にゲル化防止剤溶液を噴霧した
り、吹き出したり、吹き付けたり、吐出させたり、吹き
上げたり、降らせたりすることでコンデンサの内壁を常
に濡れた状態に保たせる方法、あるいはコンデンサ直
前の留出経路(後述する図2の配管503で形成された経
路;オーバーヘッドライン)内にノズル部を設置し(図
3参照)、ここでゲル化防止剤溶液を噴霧し(または吹
き出し)オーバーヘッドラインの壁を伝わせてコンデン
サ内に到達させることでコンデンサの内壁を常に濡れた
状態に保たせる方法などが挙げられるが、これらに限定
されるものではない。さらに、エステル化反応に脱水溶
剤を使用し、該脱水溶剤を留出し還流させる場合には、
留出物が凝縮液化する際に、この液化物と速やかに接触
し、ゲル化する低沸点の原料が含有されている脱水溶剤
に対して相溶ないし分散することができるように、ゲル
化防止剤は、ゲル化防止剤を脱水溶剤と同種の溶剤に溶
解した形態で使用されるのが望ましい。
【0055】また、凝縮液の一部をゲル化防止剤溶液に
用いるべく還流させる方法としても、特に制限されるも
のではなく、従来既知の方法(手段)を適宜用いて行う
ことができる。具体例を以下に示す。
【0056】(1)エステル化反応に脱水溶剤を使用
し、該脱水溶剤を留出し還流させる場合には、凝縮残液
を反応槽に戻す際に凝縮残液の一部を抜き取って、上記
ノズル部に直接的に供給し、該ノズル部でゲル化防止剤
溶液とするか、あるいは上記ノズル部に供給する途中
で、ゲル化防止剤と混合させてゲル化防止剤溶液とする
ことなどができる。具体例としては、後述する図2に示
すように、凝縮残液を反応槽(好ましくは、反応槽とベ
ーパーの立ち上がりラインとの間のフランジ部)に戻す
経路上に必要に応じて凝縮残液を一時的に貯めておく保
存部(タンクなど)を設け、該保存部から該凝縮残液の
一部を抜き取り、ゲル化防止剤の供給経路に抜き取った
凝縮残液の一部を合流させるだけで簡単に混合されたゲ
ル化防止剤溶液とすることができる。そのため、わざわ
ざ両者を混合撹拌するための装置は不要である。ここ
で、保存部を設けるメリットとしては、ゲル化防止剤溶
液用の凝縮残液の抜き取り量を一定量ないし徐々に増や
す際にもその調整が便利であり、かつ反応槽に戻す凝縮
残液の量を反応開始から終了までの間、常に一定量ない
しは極力増加量を抑えながら還流させる事が容易に調整
できる点にある。なお、保存タンクのような保存部を新
たに設けなくともは、例えば、水分離器では、コンデン
サで凝縮液化された凝縮液が一方の室に貯められ、水相
と溶剤相の2層に分離され、下層部の水相はこの室の下
部より配管を通じて逐次抜かれ、上層部の溶剤相は仕切
板をオーバーフローして隣のもう一方の室に貯められる
が、この溶剤相のみが貯められる室を大きくすれば、水
分離器自体が保存部を兼ね備えることもできる(図4参
照)。
【0057】ただし、保存部は必ずしも必要ではない。
従来のゲル化防止剤単独使用の時と比較した場合、例え
ば、凝縮残液を含むゲル化防止剤溶液を使用している
ため、ゲル化防止剤の量は従来と同程度あるいは少ない
量で大きなゲル化防止効果を発揮できるようになった。
そのため、反応槽内での溶剤量の増加も従来と同程度あ
るいは少ない量に抑えられている。特にエステル化時間
が短い場合、反応温度の低下は少なく反応終了時間への
影響も少なくてすむため、保存部を設けない方が経済的
にも有利となるからである。また、反応槽内に戻され
る溶剤量が増加し多くなってきた場合、一部反応槽へ溶
剤を戻さずに系外に抜き取ってもよい。この場合にも、
系外に抜き取られる溶剤量は、大きくなくその処理コス
トも少ないため、わざわざ保存部を設けるよりも、経済
的に有利となり、製品の性能を左右することもないから
である。このように、性能面への影響、さらに費用対効
果を勘案して、保存部を設けるか否か適宜判断する事が
肝要であると言える。
【0058】(2)脱水溶剤を用いずにエステル化反応
を行う場合には、本来的に留出物は反応生成水(僅かに
低沸点原料を含む)だけであり、反応槽に留出物の一部
を還流させることはない。従って、留出物にゲル化防止
剤溶液を作用させた後の凝縮液から反応生成水(低沸点
原料を含む)を分離除去した凝縮残液の全量若しくはそ
の一部を抜き取って、上記ノズル部に直接的に供給し
て、該ノズル部でゲル化防止剤溶液とするか、あるいは
上記ノズル部に供給する途中でゲル化防止剤と混合させ
てゲル化防止剤溶液とすることなどができる。なお、凝
縮残液の一部を利用する場合、あとの凝縮残液は系外に
抜き取れるなどすればよい。
【0059】なお、上記に説明した作用させる方法およ
び還流させる方法は、代表的なものを例示したに過ぎ
ず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0060】次に、本発明のエステル化物の製造方法に
おけるエステル化反応につき、説明する。
【0061】本発明のエステル化物の製造方法では、式
(1)で表されるアルコール(以下、単に「アルコー
ル」ともいう)と(メタ)アクリル酸とのエステル化反
応を行うものである。特に本発明のエステル化物の製造
方法では、酸触媒及び重合禁止剤の存在下、脱水溶剤中
でエステル化反応を行うことが望ましい。
【0062】以下、本発明のエステル化物の製造方法に
おけるエステル化反応の一実施態様を以下に簡単に記載
する。まず、反応系(反応槽)に、原料としてのアルコ
ール及び(メタ)アクリル酸、脱水溶剤、酸触媒及び重
合禁止剤を仕込み、これら混合物を一定温度で所定のエ
ステル化率になるまで、エステル化反応を行う。
【0063】本発明によるエステル反応に原料として使
用されるアルコールは、下記式(1)で示される化合物
である。
【0064】
【化8】
【0065】上記式(1)において、R1は、炭素原子
数1〜30の炭化水素基を表わす。R1が炭素原子数3
0を超える炭化水素基である場合には、式(1)のアル
コールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を、例え
ば、(メタ)アクリル酸と共重合して得られる共重合体
の水溶性が低下し、用途性能、例えば、セメント分散性
能などが低下する。好適なR1の範囲はその使用用途に
より異なるものであり、例えば、セメント分散剤の原料
として用いる場合には、R1は、炭素原子数1〜18の
直鎖若しくは枝分かれ鎖のアルキル基およびアリール基
が好ましい。R 1としては、具体的には、例えば、メチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n
−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシ
ル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、
デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、
テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘ
プタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコ
シル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基などのアルキル
基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基、ノニル
フェニル基などのアルキルフェニル基;シクロヘキシル
基などのシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル
基などが挙げられる。これらのうち、セメント分散剤の
原料として用いる場合には、上述したように、メチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好
ましいものである。
【0066】また、R2Oは、炭素原子数2〜18、好
ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であ
る。R2Oが炭素原子数18を超えるオキシアルキレン
基である場合には、式(1)のアルコールと(メタ)ア
クリル酸とのエステル化物を、例えば、(メタ)アクリ
ル酸と共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、
用途性能、例えば、セメント分散性能等が低下する。R
2Oとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロ
ピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基などが
挙げられ、これらのうち、オキシエチレン基、オキシプ
ロピレン基及びオキシブチレン基であることが好まし
い。また、R2Oの繰り返し単位は、同一であってもあ
るいは異なっていてもよい。このうち、R2Oの繰り返
し単位が異なる場合、すなわち、2種以上の異なる繰り
返し単位を有する場合には、各R2Oの繰り返し単位は
ブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加
していてもよい。
【0067】さらに、nは0〜300、好ましくは2〜
300の数であり、R2O(オキシアルキレン基)の繰
り返し単位の平均付加モル数を表わす。nが300を超
える場合には、式(1)の化合物と(メタ)アクリル酸
とのエステル化物の重合性が低下する。この平均付加モ
ル数nも、エステル化反応により得られるエステル化物
の使用目的に応じて、その最適範囲は異なるものであ
り、例えば、セメント分散剤の原料として使用する場合
には、平均付加モル数nは、好ましくは2〜300、よ
り好ましくは5〜200、最も好ましくは8〜150の
数である。また、増粘剤などとして用いる場合には、平
均付加モル数nは、好ましくは10〜250、より好ま
しくは50〜200の数である。また、n=0の場合に
は、水との溶解性および沸点の観点から、上記R1は炭
素原子数4以上の炭化水素基であることが好ましい。す
なわち、式(1)のn=0の場合、特にメタノールやエ
タノールなどのアルコールでは低沸点のため生成水とと
もに蒸発し、さらに生成水に溶解することから当該アル
コール原料の一部が系外に留去され、目的とするエステ
ル化物の収率が低下するためである。
【0068】本発明の製造方法において、上記式(1)
で示されるアルコール原料は、1種のものを単独で使用
してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよ
い。式(1)で示されるアルコール原料が2種以上の混
合物での使用形態は、特に制限されるものではなく、R
1、R2Oまたはnの少なくともいずれか1つが異なる2
種以上の混合物での使用形態であればよいが、好ましく
はR1がメチル基とブチル基の2種で構成されている
場合;R2Oがオキシエチレン基とオキシプロピレン
基の2種で構成されている場合;nが1〜10のもの
と11〜100のものの2種で構成されている場合;お
よび〜を適宜組み合わせたもの等が挙げられる。
【0069】本発明によるエステル反応に使用すること
のできる(メタ)アクリル酸に関しても、アクリル酸お
よびメタクリル酸を、それぞれ単独で使用しても、ある
いは混合して使用してもよく、その混合比率に関しても
任意の範囲を採用することができる。
【0070】本発明によるエステル化反応で使用される
上記原料の混合比率は、化学量論的には1:1(モル
比)であるが、実際には、アルコールと(メタ)アクリ
ル酸とのエステル化反応が効率良く進行する範囲であれ
ば特に制限されるものではないが、通常、一方の原料を
過剰に使用してエステル化反応を速めたり、目的のエス
テル化物の精製面からは、蒸留留去し易いより低沸点の
原料を過剰に使用する。また、本発明では、エステル化
反応時に反応生成水と脱水溶剤を共沸する際に、低沸点
の(メタ)アクリル酸の一部も留出され、反応系外に持
ち出されるため、アルコールの使用量(仕込み量)に対
して(メタ)アクリル酸の使用量(仕込み量)を化学量
論的に算出される量よりも過剰に加えることが好まし
い。具体的には、(メタ)アクリル酸の使用量は、通
常、アルコール1モルに対して、1.0〜30モル、好
ましくは1.2〜10モル、より好ましくは1.5〜1
0モル、最も好ましくは2〜10モルである。(メタ)
アクリル酸の使用量がアルコール1モルに対して1.0
モル未満であると、エステル化反応が円滑に進行せず、
目的とするエステル化物の収率が不十分であり、逆に3
0モルを超えると、添加に見合う収率の向上が認められ
ず、不経済であり、やはり好ましくない。
【0071】または、ポリアルキレングリコール(式
(1)におけるnが1〜300の数であるアルコールを
意味する)の使用量であるp重量部及び(メタ)アクリ
ル酸の使用量であるq重量部は、下記式: 40≦[(p/n1/2)/q]×100≦200 ただし、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表
わし、1〜300の数である、の関係を満足するように
調節することが好ましい。
【0072】上記関係を満足するようにポリアルキレン
グリコールと(メタ)アクリル酸の使用量を規定するこ
とは、重合方法については以下に詳述するが、(メタ)
アクリル酸をポリアルキレングリコールに比べて過剰に
存在させてエステル化反応を行なうことにより、得られ
たアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)ア
クリル酸系単量体を(メタ)アクリル酸を含む混合物の
形態で存在させ、この混合物を単離せずにそのままある
いは必要により(メタ)アクリル酸(塩)単量体やこれ
らの単量体と共重合可能な単量体を加えて、好ましくは
混合物を単離せずにそのまま共重合反応に供することに
よって、ポリカルボン酸系共重合体が製造できるため好
ましい。すなわち、ポリカルボン酸系共重合体の製造の
際に、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メ
タ)アクリル酸を単離するという工程を省略することが
できるため、量産に適しており、産業上の観点から好ま
しい。
【0073】上記態様においては、式:[(p/
1/2)/q]×100の値(本明細書中では、「K
値」とも称する)は、カルボン酸の重量当たりのポリア
ルキレングリコール鎖の平均数を表わす尺度である。本
発明において、K値は、好ましくは42〜190(42
≦K値≦190)、より好ましくは45〜160(45
≦K値≦160)である、この際、K値が40未満であ
ると、得られるセメント分散剤のセメント分散性能が十
分でない。逆に、K値が200を超えると、得られるセ
メント分散剤のセメント分散性能がやはり低下する上、
エステル化反応時間が著しく増大し、生産性が大幅に低
下するので好ましくない。
【0074】また、本発明のエステル化反応において
は、必要に応じて、反応系に酸触媒を加えて行ってもよ
いが、反応を速やかに進行させることができるため、酸
触媒の存在下で反応を行うことが望ましい。この際使用
することのできる酸触媒としては、例えば、硫酸、メタ
ンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエン
スルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスル
ホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスル
ホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Na
fion」レジン、「Amberlyst 15」レジ
ン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、
塩酸などが挙げられる。この際、酸触媒は単独で使用さ
れてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されても
よい。
【0075】これらのうち、以下に詳述する脱水溶剤と
水との共沸温度、エステル化反応温度などを考慮する
と、酸触媒は、常圧における沸点が高いものであること
が好ましい。具体的には、本発明に好ましく使用される
酸触媒の常圧における沸点は、150℃以上、より好ま
しくは200℃以上である。ゆえに、硫酸(常圧におけ
る沸点:317℃)、パラトルエンスルホン酸(沸点:
185〜187℃/0.1mmHg)、パラトルエンス
ルホン酸水和物及びメタンスルホン酸(沸点:167℃
/10mmHg)などが好ましく使用される。さらに、
本発明者らは、エステル化物の品質および性能の低下の
原因となる不純物のジエステルの生成原因の1つが、ア
ルコキシポリアルキレングリコールの切断によるもので
あり、さらに当該切断が酸触媒によっても起こり得るこ
とを知得した。かかる知見に基づき、当該切断のしにく
い酸触媒がより望ましいこと見出したものである。上記
点を考慮すると、本発明において特に好ましく使用され
る酸触媒としては、パラトルエンスルホン酸、パラトル
エンスルホン酸水和物が例示できる。
【0076】上記態様において、酸触媒の使用量は、所
望の触媒作用を有効に発現することができる範囲であれ
ば特に制限されるものではないが、好ましくは0.4ミ
リ当量/g以下であり、より好ましくは0.36〜0.
01ミリ当量/g、特に好ましくは0.32〜0.05
ミリ当量/gの範囲内である。酸触媒の使用量が0.4
ミリ当量/gを超えると、エステル化反応時に反応系内
で形成されるジエステルの量が増加し、エステル化反応
により得られるエステル化物[アルコキシポリアルキレ
ングリコールモノ(メタ)アクリル酸]を用いて合成さ
れるセメント分散剤のセメント分散能が低下する。ここ
で、酸触媒の使用量(ミリ当量/g)は、反応に使用し
た酸触媒のH+ の当量数(ミリ当量)を、原料であるア
ルコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込み量(g)
で割った値で表される。より具体的には下記式によって
算出される値である。
【0077】
【数1】
【0078】本発明において、酸触媒の反応系への添加
のし方は、一括、連続、または順次行ってもよいが、作
業性の面からは、反応槽に、原料と共に一括で仕込むの
が好ましい。
【0079】または、本発明において、酸触媒の存在下
でエステル化反応を行う際に、酸触媒を水和物および/
または水溶液の形態で用いてもよい。
【0080】上記態様において使用することのできる酸
触媒としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラ
トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレン
スルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、「Naf
ion」レジン、「Amberlyst 15」レジ
ン、リンタングステン酸、塩酸などを水和物および/ま
たは水溶液の形態で用いるものが挙げられ、これらのう
ち、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸
などを水和物および/または水溶液のかたちで用いるも
のが好ましく使用される。これらは、1種単独で使用し
てもよいし、2種以上を混合して使用しても良い。さら
に、本発明者らは、上述したように、エステル化物の品
質および性能の低下の原因となる不純物のジエステルの
生成原因の1つが、アルコール原料の切断によるもので
あり、さらに当該切断が酸触媒によっても起こり得るこ
とを知得し、かかる知見に基づき、当該切断のしにくい
酸触媒がより望ましいこと見出したものである。当該酸
触媒としては、具体的には、パラトルエンスルホン酸を
水和物および/または水溶液のかたちで用いるものであ
る。
【0081】上記態様による酸触媒の使用量は、所望の
触媒作用を有効に発現することができる範囲であれば特
に制限されるものではないが、アルコール原料の切断作
用の抑制、各種用途、例えば、セメント分散剤、炭酸カ
ルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散
剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CW
M用分散剤、増粘剤等に使用される重合体成分の原料と
なるエステル化物としての有用性、このような使用用途
に要求される基本性能である分散性能などに悪影響を及
ぼす原因となる分散性能の乏しい高分子量架橋ポリマー
を発生させる原因となるゲル発生の防止・抑制を考慮す
ると、該酸触媒の使用量が、原料のアルコールと(メ
タ)アクリル酸の合計重量に対する該酸触媒中の酸の重
量の比をX(重量%)とし、該酸触媒中の水和物および
/または水溶液として存在する水分の重量の比をY(重
量%)とした場合に、 0<Y<1.81X−1.62 の関係を満足することが好ましい。なお、誤解がないよ
うに具体例を挙げて説明すれば、例えば、パラトルエン
スルホン酸一水和物を例にとれば、原料の合計重量に対
するパラトルエンスルホン酸の重量の比がX(重量%)
であり、原料の合計重量に対する一水和物として存在す
る水分の重量の比がY(重量%)であるのであって、決
して、酸触媒以外の酸成分(例えば、原料の(メタ)ア
クリル酸など)や水分(例えば、エステル化反応により
生ずる生成水など)は、ここでいうXおよびYの対象物
となりえない。
【0082】この際、酸触媒の使用量が上記式の関係を
満足しない場合には、以下のような問題が生じる。すな
わち、Y=0の場合には、酸触媒中に水和物および/ま
たは水溶液として存在する水分が存在しないこととな
り、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量
が増加し、エステル化反応により得られるエステル化物
を用いて合成されるセメント分散剤等の用途性能、例え
ば、セメント分散能等が低下する。また、Y≧1.81
X−1.62となる場合には、エステル化反応時に反応
系内で形成されるゲルの量が増加し、エステル化反応に
より得られるエステル化物を用いて合成されるセメント
分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下
する。
【0083】上記態様において、酸触媒の反応系への添
加のし方は、一括、連続、または順次行ってもよいが、
作業性の面からは、反応槽に、原料と共に一括で仕込む
のが好ましい。
【0084】さらに、本発明においては、取り扱いの面
からより低い温度で反応生成水を反応槽から留出できる
のが望ましいとの観点から、脱水溶剤の存在下でエステ
ル化反応を行うことが望ましい。本明細書中、脱水溶剤
とは、反応生成水と共沸する溶剤として規定されるもの
である。すなわち、脱水溶剤を用いることにより、エス
テル化反応により生成する反応生成水を効率よく共沸さ
せることができるものである。脱水溶剤としては、例え
ば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、
ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベ
ンゼン、イソプロピルエーテルなどが挙げられ、これら
を単独で、あるいは2種以上のものを混合溶剤として使
用することができる。これらのうち水との共沸温度が1
50℃以下、より好ましくは60〜90℃の範囲である
ものが好ましく、具体的には、シクロヘキサン、トルエ
ン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘ
キサン、ヘプタンなどが挙げられる。水との共沸温度が
150℃を超える場合には、取り扱いの面(反応時の反
応槽内の温度管理および共沸物の凝縮液化処理などの制
御等を含む)から好ましくない。
【0085】上記脱水溶剤は、反応系外に反応生成水と
共沸させ、反応生成水を凝縮液化して分離除去しながら
還流させることが望ましく、この際、脱水溶剤の使用量
は、原料としてのアルコール及び(メタ)アクリル酸の
合計仕込量に対して、1〜100重量%、好ましくは2
〜50重量%の範囲内である。脱水溶剤の使用量が1重
量%未満であると、エステル化反応中に生成する反応生
成水を共沸により反応系外に十分除去できず、エステル
化の平衡反応が進行しにくくなるため、好ましくなく、
脱水溶剤の使用量が100重量%を超えると、過剰に添
加することに見合う効果が得られず、また、反応温度を
一定に維持するために多くの熱量が必要となり、経済的
な観点から好ましくない。
【0086】また、本発明によるエステル化反応におい
て、脱水溶剤を使用する際には、エステル化反応中の反
応温度を30〜140℃、より望ましくは60〜130
℃とし、かつエステル化反応中の溶剤循環速度を0.5
サイクル以上/時間、より好ましくは1〜100サイク
ル以上/時間とすることが望ましい。これにより、反応
温度を不純物形成温度領域(130℃超の領域)まで高
くして反応させる必要もなく、反応槽内で不純物が形成
するのを抑えることができる。また、溶剤循環速度を速
めることで、反応槽内に反応生成水を長期間滞留させる
ことなく効率よく反応槽から共沸により留出でき、平衡
反応がエステル化の方向に進むため、反応時間も短くで
きるものである。
【0087】本明細書において、エステル化反応中の溶
剤循環速度とは、次のように定義されるものをいう。す
なわち、反応槽に仕込んだ脱水溶剤の全量(体積量)に
対して、エステル化反応中に、反応槽内の脱水溶剤を反
応槽から循環経路を通して再び反応槽に戻し循環させる
ことにより、反応槽に仕込んだ脱水溶剤の全量に相当す
る量(体積量)が循環されたときを1サイクルと規定
し、エステル化反応中の溶剤循環速度は、単位時間(1
時間)あたりの当該サイクル数で表されるものとし、そ
の単位は「サイクル/時間」とする。したがって、例え
ば、5時間で、反応槽に仕込んだ脱水溶剤の全量に対し
て、これに相当する量の15倍の量が循環されたときに
は、溶剤循環速度は3サイクル/時間となる。同様に、
2時間で、反応系に仕込んだ脱水溶剤の全量に対して、
これに相当する量の半分(0.5倍)の量が循環された
ときには、溶剤循環速度は0.25サイクル/時間とな
る。なお、ここで、反応系内の脱水溶剤を反応系から留
出し凝縮液化して反応系に戻し循環させる際に循環され
るもの(被循環対象物)には、脱水溶剤のほか、その実
施態様によっては、少量ではあるが、留出される低沸点
原料(主に、(メタ)アクリル酸原料)、およびこの留
出原料がゲルを形成して有害な不純物となるのを防止す
るために添加されるゲル化防止剤(重合禁止剤または該
重合禁止剤を含む溶剤等)などの各種添加剤が含まれる
こともあり得る。そのため、ゲル化防止剤等の添加剤を
使用する場合には、これにより溶剤循環速度がエステル
化反応が進むにつれて変動することを考慮して設定条件
を適当に調整するのが望ましい。
【0088】また、上記反応温度および溶剤循環速度
は、反応槽の加熱方法(手段)およびその装置を用いて
反応槽に加えられる温度(熱量)及び反応槽に仕込む原
料に対する脱水溶剤の使用量などによって所望の範囲に
調整することができる。なお、反応温度は、反応槽内で
の最大(MAX)温度である。すなわち、加熱手段とし
て用いられる装置(例えば、外部ジャケット、内部ヒー
タなど)の態様により、反応槽内の温度(反応温度)
は、その位置によりバラツクほか、エステル化反応が進
むにつれても上がり、時間の経過によっても変動する
が、反応温度が高くなることで、不純物の形成を招くた
め、位置的及び時間的な条件に関わらず、如何なる位置
及び時間であれ、上記に規定する上限温度を超えないこ
とが必要であることから、ここでは、最大温度をもって
規定することにしたものである。
【0089】なお、本発明によるエステル化反応は、脱
水溶剤を用いずに無溶媒下で行ってもよい。この場合に
は、生成する反応生成水を除去するために反応液に空
気、不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガ
ス、二酸化炭素)等の気体(好ましくは水蒸気を含まな
い気体)を用いたバブリング処理などを行う必要があ
る。かかるバブリング処理としては、例えば、反応槽内
の下部に設けたエアノズル等から連続して気体(バブ
ル)を反応液内に吹き出させ、反応液内を通過する過程
で反応液内の水分を気泡(バブル)内に取り込ませ、反
応液中を通過してきた水蒸気含有気体を反応槽から留出
する(好ましくは留出したガス状の留出物(水蒸気含有
気体)に含まれる水蒸気を液化除去し、再び乾燥された
気体を循環する)方法などが例示できるが、特にこれに
限定されるものではなく、従来既知のバブリング処理方
法を適宜選択し必要に応じて組み合わせる等して利用す
ることができる。したがって、バブリング処理で使用す
るエア流量は、逐次生成される反応生成水を反応槽内に
長持間滞留することがないように、生成される反応生成
水の生成(速度)量に応じて、必要なエア流量を連続的
に供給すればよい。また、該気体は、反応槽内の温度が
変動しないように、反応液温と同じ温度に加温した気体
を供給するのが好ましい。本実施形態では、反応系外に
留出した留出物(水蒸気含有気体)をコンデンサで液化
する際に、ゲル化防止剤溶液を作用させればよい。
【0090】また、本発明によるエステル化反応は、必
要に応じて、重合禁止剤の存在下で行われてもよい。重
合禁止剤を用いることにより、原料としてのアルコー
ル、(メタ)アクリル酸またはこれらの混合物の重合を
防止することできる。本発明において使用できる重合禁
止剤としては、公知の重合禁止剤が使用できるものであ
り、特に制限されるものではなく、例えば、フェノチア
ジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フル
オロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、
N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチ
リデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキ
ノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼ
ン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペ
ロン、塩化銅(II)などが挙げられる。これらのうち、
脱水溶剤や生成水の溶解性の理由から、フェノチアジ
ン、ハイドロキノン及びメトキノンが好ましく使用され
る。これらの重合禁止剤は、単独で使用してもよいほ
か、2種以上を混合して使用することもできる。
【0091】また、上記のように酸触媒を水和物および
/または水溶液の形で用いる場合には、フェノチアジン
が、反応系内に存在する水溶液中のゲル形成物質に対し
ても有効に機能することができるほか、後述するよう
に、エステル化反応終了後に、脱水溶剤を水との共沸に
より留去する際にも、弱いながらも重合活性のあるハイ
ドロキノンやメトキノン等の水溶性重合禁止剤を用いな
くても極めて有効に重合禁止能を発揮することができ、
高分子量体の形成を効果的におさえることができる点か
ら極めて有用である。
【0092】本発明の方法によると、重合禁止剤を使用
する際の重合禁止剤の使用量は、原料としてのアルコー
ル及び(メタ)アクリル酸の合計仕込量に対して、0.
001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量
%の範囲内である。重合禁止剤の使用量が0.001重
量%未満であると、重合禁止能の発現が十分でなく、原
料としてのアルコール、(メタ)アクリル酸、生成物と
してのエステル化物またはこれらの混合物の重合を有効
に防止しにくくなるため好ましくなく、重合禁止剤の使
用量が1重量%を超えると、生成物であるエステル化物
中に残留する重合禁止剤量が増えるため、品質及び性能
面から好ましくなく、また、過剰に添加することに見合
うさらなる効果も得られず、経済的な観点からも好まし
くない。
【0093】本発明において、エステル化反応は、回分
または連続いずれによっても行ないうるが、回分式で行
うことが好ましい。
【0094】また、エステル化反応における反応条件
は、エステル化反応が円滑に進行する条件であればよ
く、反応温度は30〜140℃、好ましくは60〜13
0℃、さらに好ましくは90〜125℃、特に好ましく
は100〜120℃である。なお、上記反応温度は、本
発明の一般的なエステル化反応の条件であり、脱水溶剤
を反応系外に反応生成水と共沸させ、反応生成水を凝縮
液化して分離除去しながら還流させる場合は、その1例
であり、これらの範囲内に含まれるが、完全に一致する
ものではない。反応温度が30℃未満では、エステル化
反応が進行しづらく、反応生成水の脱水(留出)にも時
間がかかり、また、脱水溶剤の還流が遅くて脱水に時間
がかかり、ゆえに、エステル化反応に要する時間が長く
なり好ましくない。逆に、反応温度が140℃を超える
と、アルコール原料の切断によって過大量のジエステル
が生成してセメント分散性能のほか、各種用途における
分散性能や増粘特性が低下する。また、原料の重合が生
じたり、留出物への原料の混入量が増すなど、生成物で
あるエステル化物の性能及び品質の劣化が生じるなど、
やはり好ましくない。また、反応時間は、後述するよう
にエステル化率が少なくとも70%、好ましくは少なく
とも80%に達するまでであるが、通常、1〜50時
間、好ましくは3〜40時間である。さらに、本発明に
よるエステル化反応は、常圧下または減圧下いずれで行
ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが望まし
い。
【0095】本発明によるエステル化反応におけるエス
テル化率は、70%以上、より好ましくは70〜99
%、最も好ましくは80〜98%であることが好まし
い。エステル化率が70%未満であると、製造されるエ
ステル化物の収率が不十分であり、これを原料として得
られるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント
分散能等が低下する。なお、本明細書において使用され
る「エステル化率」は、下記に示すエステル化測定条件
で、エステル化の出発物質であるアルコールの減少量を
測定することにより、下記式によって算出される値とし
て定義されるものである。
【0096】
【数2】
【0097】 <エステル化率測定条件> 解析装置; Waters製 Millennium クロマトグラフィーマネージャー 検出器; Waters製 410 RI検出器 使用カラム;GLサイエンス製 イナートシルODS−2 3本 カラム温度;40℃ 溶離液; 水 8946g アセトニトリル 6000g 酢酸 54g を混合して30%水酸化ナトリウム水溶液でpH4.0に調整 流速; 0.6ml/min なお、上記の式によりエステル化率を決定しているた
め、エステル化率が100%を越えることはない。従っ
て、本発明においては、エステル化率が規定以上に達し
た時点でエステル化反応が終了したものとする。
【0098】本発明の製造方法によって得られるエステ
ル化物のうち、アルコール原料としてアルコキシポリア
ルキレングリコール(式(1)におけるnが1以上であ
るアルコール)を用いる場合には、例えば、特公昭59
−18338号公報、特開平9−86990号公報や特
開平9−286645号公報に記載の方法などの公知の
方法と同様にして、(メタ)アクリル酸(塩)、および
必要によりこれらの単量体と共重合可能な単量体と共に
重合反応に供されることによって、セメント分散能に優
れたセメント分散剤とすることができるほか、炭酸カル
シウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、
スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用
分散剤、増粘剤等への利用が可能である。
【0099】さらに、本発明に係るエステル化物の製造
方法を、図1を参照しながら説明する。
【0100】図1は、本発明に係るエステル化物の製造
方法に用いられる代表的な装置構成の概略図である。
【0101】図1より、本実施形態の装置構成では、ま
ず、エステル化反応を行うための加熱手段(例えば、内
部ヒータ等の直接加熱方式、外部ジャケット等の間接加
熱方式)として加圧スチーム等を熱媒体に使用する外部
ジャケット102を有する反応槽101が設けられいる。この
際、反応槽の内部の材料は、特に制限されるものではな
く公知の材料が使用できるが、例えば、SUS製、好ま
しくは耐蝕性の面からSUS304、SUS316及び
SUS316L、より好ましくはSUS316及びSU
S316Lが挙げられる。または、反応槽の内部にグラ
スライニング加工等が施され原料及び生成物に対して不
活性なものとしてもよい。該反応槽101には、原料のア
ルコキシポリアルキレングリコール用のステンレススチ
ール(例えば、SUS316)製の原料貯蔵タンク103
および(メタ)アクリル酸用の原料貯蔵タンク105、反
応酸触媒用の触媒貯蔵タンク107、反応系(反応槽101)
内の重合を防止するための重合禁止剤を貯蔵した重合禁
止剤貯蔵タンク109およびエステル化反応後に前記触媒
を中和処理するための中和剤(中和剤水溶液)を貯蔵し
たカーボンスチール(例えば、高炭素鋼)製の中和剤貯
蔵タンク111がそれぞれ配管113、115、117、119および1
21により連結されている。また、(メタ)アクリル酸
は、重合しやすく、例えば、メタクリル酸では、長期の
保存や熱等によっても重合するため微量の重合禁止剤
(0.1%ハイドロキノンなど)が加えられるほか、結
晶化しても重合しやすくなるので、原料貯蔵タンク105
内で保存する場合、ベンゼンを加え結晶化を防ぐように
してもよいほか、図1に示すように常時30〜40℃に
保温するべく、ポンプ116を用いた外部ジャケット150
(保温手段)を有する循環経路151が形成されており、
(メタ)アクリル酸原料を常に30〜40℃に保持し重
合しないように循環させている。(メタ)アクリル酸用
の原料貯蔵タンク105、配管115およびポンプ116および
循環経路151内部には、腐食性を有する(メタ)アクリ
ル酸による腐食防止目的で、合成樹脂等の耐食性材料に
よるライニング加工が施されているものが使用される。
同様に、触媒貯蔵タンク107およびその配管117内部に
も、酸触媒による腐食防止のため、合成樹脂などの耐酸
性材料によるライニング加工が施されているものが使用
される。また、上記反応槽101の下部には、エステル化
反応により反応槽101内部に合成されたエステル化物
(あるいは、セメント分散剤等では、該エステル化物を
単量体成分として該反応槽101でさらに重合を行い得ら
れた重合体)を回収するための配管153が連結されてい
る。さらに、上記反応槽101内には、反応温度を計測す
るための温度センサ(図示せず)が適当な部位(数カ
所)に取り付けられている。該温度センサは、反応温度
を規定の温度に保つのに必要な装置機構(例えば、反応
槽101に取り付けられたジャケット102の温度)などを制
御するための制御部本体(図示せず)に電気的に接続さ
れている。
【0102】さらに、本実施形態の装置構成では、反応
系内(反応槽101内)でエステル化反応時に生成される
反応生成水を含む留出物を留出し、ゲル状物の発生を防
止しながら凝縮液化した後に、該反応生成水を分離除去
し、残りの留出物を所定のイ溶剤循環速度で戻すための
機構(の装置構成)として、該反応生成水を脱水溶剤と
ともに共沸させた留出物にゲル化防止剤を作用させて凝
縮液化し、該凝縮液化した留出物から反応生成水(水
相)を分離除去し、残りの凝縮物(主に脱水溶剤を含む
溶剤相)を上記溶剤循環速度で還流させて反応槽101に
戻す循環系が形成されている。詳しくは、反応槽101上
部と向流(または並流)接触形式の縦型の多管式円管形
コンデンサ125の塔頂部とが配管123により連結されてい
る。またコンデンサ125の下底部とSUS製の水分離器1
27の上部とが配管129により連結されている。該水分離
器127の内部には仕切板131が設けられており、該仕切板
131で区切られた2つの室133、134が形成されている。
このうち、コンデンサ125で凝縮液化された留出物が貯
められる側の室133の下部と反応生成水の処理タンク135
とが配管137により連結されている。また、該処理タン
ク135には廃水用の配管139が連結されている。また、水
分離器127のもう一方の室134の下部と反応槽101とが配
管141で連結されている。また、この配管141には、反応
槽101内の反応生成水と共沸する脱水溶剤を貯蔵する脱
水溶剤貯蔵タンク143と連結された配管145が合流(連
結)されている。かかる合流点の手前(水分離器127
側)の配管141の経路上には循環ポンプ142が設置されて
いる。また、上記合流点の後方(反応槽101側)の配管1
41の経路上には流量計144が設けられている。そして、
該流量計144には、計測される流量を積算し、溶剤循環
速度を算出するための流量計測システム本体(図示せ
ず)と電気的に接続されている。さらに、コンデンサ12
5の塔頂部には噴霧ノズル126が設けられており、この噴
霧ノズル126は、留出物のゲル化防止用のゲル化防止剤
を貯蔵するゲル化防止剤貯蔵タンク147と配管149により
連結されている。また、水分離器127には配管157を介し
てエステル化反応後にエステル化物を単離するために脱
水溶剤を留出し除去するために真空ポンプ(エゼクタ)
155が取り付けられている。
【0103】本発明において、コンデンサとしては、S
US304、SUS316及びSUS316L等のSU
S製や炭素鋼(CS)等、公知のものが使用できるが、
好ましくは、ゲルの発生をより軽減するために、内面を
鏡面仕上げやグラスライニング加工されたコンデンサを
使用できるが、加工やメンテナンスにかかるコストを考
慮すると、SUS304(JIS規格におけるSUS2
7;以下、省略)、SUS316(JIS規格における
SUS32;以下、省略)及びSUS316L(JIS
規格におけるSUS33;以下、省略)、好ましくはS
US316及びSUS316L等のSUS製のコンデン
サが好ましく使用でき、このようなコンデンサを用いた
場合でも、ゲルの形成を有効に防止できる。また、本発
明において好ましく使用されるコンデンサの伝熱面積
は、反応槽の容積などによって異なるが、例えば、反応
槽30m3では、50〜500m2、好ましくは100〜
200m2である。本発明において、コンデンサに使用
される冷却媒体としては、水やオイルなどが挙げられ
る。
【0104】また、本発明に係るエステル化物の製造方
法では、以上の装置構成を有するエステル化物の製造装
置を用いて次のように行われる。
【0105】まず、反応槽101内部に、各原料貯蔵タン
ク103、105、触媒貯蔵タンク107、重合禁止剤貯蔵タン
ク109、脱水溶剤貯蔵タンク143より配管113、115、11
7、119および配管145を介した配管141を通じて原料のア
ルコールおよび(メタ)アクリル酸、酸触媒、重合禁止
剤および脱水溶剤をそれぞれ上記に規定する所定の量を
送り込み(仕込み)、上記に規定するエステル化条件
(反応温度、ジャケット温度、圧力)でエステル化反応
を行う。エステル化反応により逐次生成する反応生成水
は、反応槽101内に仕込まれた脱水溶剤と共沸され配管1
23を通じて留出されてくる。留出されてきたガス流体で
ある溶剤−水共沸物は、コンデンサ125に通され凝縮液
化される。この凝縮液化時に該共沸物に含まれる低沸点
原料がゲル化するのを防止する目的で、ゲル化防止剤貯
蔵タンク147より配管149を通じて該コンデンサ125の塔
頂部に設けられた噴霧ノズル126から上記に規定する量
のゲル化防止剤を連続的に滴下して、共沸物(ガス流体
物および凝縮液化物の双方をいう)と並流接触させる。
凝縮液化された共沸物(滴下されたゲル化防止剤を含
む)は、該コンデンサ125の下部より配管129を通じて水
分離器127の室133に貯められ、水相と溶剤相の2層に分
離される。このうち、下層部の反応生成水は、室133の
下部より配管137を通じて逐次抜かれ、反応生成水の処
理タンク135に貯められる。そして該処理タンク135内
で、必要に応じて、環境基準(廃水基準)値を満足する
ように化学的ないし生物学的に処理された後、配管139
を通じて、本装置系外に廃水される。一方、上層部の溶
剤相(滴下されたゲル化防止剤および低沸点原料を含
む)は、仕切板131をオーバーフローして隣の室134に貯
められる。そして、該溶剤相は該室134の下部よりポン
プ142により配管141を通じて上記に規定する溶媒循環速
度で還流され反応槽101に戻される。
【0106】なお、本発明において、ゲル化防止剤を供
給するゲル化防止剤貯蔵タンク設置部位は、ゲルが形成
されやすい部位が好ましいものの特に制限されないが、
例えば、図1における態様、即ち、ゲル化防止剤を噴霧
する噴霧ノズル126をコンデンサ125の塔頂部に設ける態
様に加えて、反応槽101とコンデンサ125との間の配管12
3上の少なくとも1箇所にゲル化防止剤を噴霧する噴霧
ノズルを設ける態様などが挙げられる。後者の態様にお
いて、配管123上にゲル化防止剤を噴霧する噴霧ノズル
を設ける部位としては、例えば、コンデンサ内部の凝縮
部(とりわけ塔頂部近傍)、反応槽とベーパーの立ち上
がりラインとの間の接合部(フランジ部)やベーパーラ
インとコンデンサ塔頂部との間のフランジ部等のフラン
ジ部、反応槽等に設置された温度計やのぞき窓に設けら
れた突起部など、ゲルが形成されやすい部位が挙げら
れ、これらのうち、コンデンサ内部の凝縮部(とりわけ
塔頂部近傍)、反応槽とベーパーの立ち上がりラインと
の間のフランジ部やベーパーラインとコンデンサ塔頂部
との間のフランジ部が好ましい。
【0107】エステル化反応終了(エステル化率が規定
以上に達した時点で終了とする)後、中和剤貯蔵タンク
111より配管121を通じて反応槽101内に中和剤水溶液を
添加して、酸触媒を中和し、常圧下に脱水溶剤(および
過剰の(メタ)アクリル酸)を水との共沸で留出し、所
望のエステル化物を単離する。尚、脱水溶剤および過剰
の(メタ)アクリル酸を留出する場合には、上述した、
反応系内(反応槽101内)でエステル化反応時に生成さ
れる反応生成水を含む留出物を留出し、ゲル状物を発生
を防止しながら凝縮液化した後に、該反応生成水を分離
除去し、残りの留出物を還流させるための機構(の装置
構成)の一部を使って行うことができる。なお、この場
合には、脱水溶剤(引き続き、重合せずに単離する場合
には過剰の(メタ)アクリル酸を含む)を還流すること
なく装置系外に除去する必要上、水分離器127に取り付
けられた真空ポンプ(エゼクタ)155を用いて装置系外
に取り出される。なお、これらは廃棄処理されるか、あ
るいは系外の装置を用いて化学処理し再利用してもよ
い。一方、得られたエステル化物は配管153より回収さ
れる。なお、セメント分散剤等の合成に用いる場合に
は、得られたエステル化物を単量体成分の1つとして該
反応槽101でさらに重合を行い、セメント分散剤の主要
組成成分となり得る重合体を合成するようにしてもよ
い。この場合には、過剰に加えられ残っている未反応の
(メタ)アクリル酸をもう一方の単量体成分として分離
・除去せずにそのまま使用することが好ましい。
【0108】以上が、本発明のエステル化物の製造方法
の一実施態様を図1を用いて説明したものであるが、本
発明に係るエステル化物の製造方法は、当該実施態様に
限定されるものではなく、ゲル化防止剤を留出物に作用
させる工程を含むものであれば、その製法(手段)、装
置構成などに関しては何ら制限されるものではなく、従
来既知の製法、装置構成などを適宜組み合わせて利用す
ることができる。
【0109】以上において、本発明によるエステル化反
応について詳述したが、本発明によるエステル化反応を
酸触媒の存在下でかつ脱水溶剤中で行う際には、上記エ
ステル化反応が終了した後、下記に詳述する酸触媒また
は酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一部を中和し
(部分中和工程)、その後、下記に詳述する反応液から
脱水溶剤を水と共沸して留去し(溶剤留去工程)、目的
とするエステル化物を得ることが望ましい。
【0110】まず、本発明による部分中和工程を説明す
る。上記エステル化工程において、酸触媒の存在下でエ
ステル反応を行う場合には、以下に説明する部分中和工
程を行うのが望ましい。すなわち、本発明者らは、エス
テル化反応後に脱水溶剤を留去する工程で水を加えて共
沸する場合、あるいはエステル化物を用いてさらに重合
を行うために、エステル反応後に調整水を加えて生成さ
れたエステル化物水溶液を作製する場合に、酸触媒によ
る加水分解が生じ、エステル化物の品質及び性能の低下
を招くほか、加水分解により生じたもの(以下、単に加
水分解生成物ともいう)がエステル化物中に残留し、当
該エステル化物を用いてセメント分散剤等の各種分散剤
や増粘剤等に使用される重合体を合成する場合には、該
加水分解生成物は、重合には関与しない不純物となり、
重合率(ひいては生産性)が低下し、また重合体の品質
や性能の劣化にもつながることから、かかる課題を解決
するには、上記エステル化工程によるエステル化反応終
了後、90℃以下で酸触媒をアルカリで中和することが
望ましいことを見出したものである。これにより、エス
テル化反応後の処理過程で、加水分解生成物を生じるこ
ともなく、高純度で高品質のエステル化物を得ることが
できる。
【0111】ここで、部分中和工程の好適な実施の形態
につき、以下に説明する。
【0112】本発明の部分中和工程では、エステル化反
応終了後、90℃以下、好ましくは50〜0℃の範囲で
酸触媒をアルカリで中和するものである。
【0113】上記部分中和工程での中和温度(反応系の
液温)が、90℃を超える場合には、添加されるアルカ
リが加水分解の触媒として作用し、加水分解生成物を多
量に生成するようになるため好ましくない。さらに、5
0℃以下では、アルカリが加水分解の触媒として作用す
ることはなく、加水分解生成物の発生を完全に抑えるこ
とができる。一方、0℃未満の場合には、エステル化反
応液が粘稠になり、中和時の撹拌がしずらくなるほか、
エステル化反応後に所定の温度まで降温するのに長時間
を要するほか、室温よりも低い温度まで降温するには、
新たに冷却手段(装置)を設ける必要があり、コストア
ップになるためあまり望ましくない。
【0114】また、上記部分中和工程で使用することの
できるアルカリ(中和剤)としては、特に制限されるも
のではなく、水酸化物M(OH)nの形式をとり、水に
溶解し、塩基性を示す物質であればよく、この場合のM
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属やアンモニウム基
をさす。さらに、アルカリ金属の炭酸塩や燐酸塩、アン
モニア、アミン等もここでいうアルカリに含まれる。よ
って、アルカリとしては、具体的には、例えば、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化
物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカ
リ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン等が挙げら
れるが、セメントに配合した場合に異臭が発生しないと
の理由から、好ましくはアルカリ金属やアルカリ土類金
属の水酸化物、炭酸塩、燐酸塩等である。また、本発明
では、これらアルカリを1種若しくは2種以上を適当な
比率で混合して使用してもよい。
【0115】上記アルカリを用いて中和する酸は、酸触
媒、好ましくは酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一
部である。ここで、中和される(メタ)アクリル酸は、
エステル化反応に使用した(メタ)アクリル酸の10重
量%以下、好ましくは0.01〜5重量%の範囲であ
る。従って、アルカリ(中和剤)の添加量は、酸触媒1
当量に対して1.0〜100当量、好ましくは1.0〜
10当量、さらに好ましくは1.01〜2当量である。
中和すべき酸が、酸触媒である理由は上述したように酸
触媒が、エステル化反応後に添加される水と強く反応
し、加水分解生成物を生じさせるため、酸触媒を不活性
にする必要があるためである。なお、酸成分としては、
酸触媒以外にも(メタ)アクリル酸が存在し得るが、酸
触媒の方が酸強度が大きいので、酸触媒から中和される
ため問題ない。従って、酸触媒を中和できれば所期の目
的は達成できるが、実際に使用する酸触媒の種類の違い
(=酸強度の違い)や工業的に大量に処理するような場
合には、酸触媒の全量を中和するまでに、(メタ)アク
リル酸の一部が中和されるおそれがあるため、こうした
危険性(リスク)をなくす観点から、酸触媒の全量と
(メタ)アクリル酸の一部を中和してもよい。ただし、
中和される(メタ)アクリル酸が、エステル化反応に使
用した(メタ)アクリル酸の10重量%を超える場合に
は、おそらく(メタ)アクリル酸塩の重合速度が(メ
タ)アクリル酸に比べて遅いために、得られたエステル
化物を用いて重合する際の重合率が低下するため好まし
くない。また、アルカリ(中和剤)の添加量は、酸触媒
1当量に対して1.0当量未満の場合には、酸触媒を完
全に中和できず、加水分解生成物を多量に生じるように
なるため好ましくない。逆にアルカリ(中和剤)の添加
量は、酸触媒1当量に対して100当量を超える場合に
も、大量の(メタ)アクリル酸を中和され、やはり、
(メタ)アクリル酸塩の重合速度が(メタ)アクリル酸
に比べて遅いために、得られたエステル化物を用いて重
合する際の重合率が低下するため好ましくない。
【0116】なお、添加されるアルカリの形態として
は、特に制限されるものではないが、アルカリ水溶液の
形態とすることが、エステル化物の加水分解を防止する
観点から好ましいといえる。
【0117】特に、脱水溶剤中でエステル化反応を行う
ため、アルカリと共に多量の水を反応系に添加するの
が、エステル化物の加水分解を防止するためには好適で
ある。すなわち、多量の水が無い反応系では、アルカリ
が脱水溶剤に難溶であるために濃い状態で系内に浮遊
し、この高濃度アルカリの浮遊は中和に消費されるまで
の長持間にわたって消失せず、エステル化物の加水分解
を引き起こす。該水の添加量は、アルカリの使用形態に
もよるが、例えば、40〜60%のアルカリ水溶液を中
和剤として添加する場合には、該アルカリ水溶液とは別
に、該アルカリ水溶液の1重量部に対して通常5〜10
00重量部、好ましくは10〜100重量部である。こ
の場合に、水の添加量が、5重量部未満の場合には、上
記理由でアルカリが反応系内で不均一になり、高濃度の
アルカリがエステル化物の加水分解を引き起こし、10
00重量部を超える場合には、生産性を確保するために
中和槽が別途必要になるなどコスト高につながり好まし
くない。
【0118】次に、本発明による溶剤留去工程を以下に
説明する。すなわち、上記エステル化反応を脱水溶剤中
で行うため、上記エステル化反応を行った後に、反応液
から脱水溶剤を留去するものである。さらに上記エステ
ル化反応を酸触媒の存在下で行う場合には、上記エステ
ル化工程によりエステル化反応を行った後に、上記部分
中和工程により酸触媒、さらには(メタ)アクリル酸の
一部を中和し、次いで、反応液から脱水溶剤を留去する
ものである。
【0119】溶剤留去工程の好適な実施の形態につき、
以下に説明する。
【0120】溶剤留去工程の好適な一実施態様による
と、エステル化反応終了後(必要に応じて、部分中和処
理を行った後)、脱水溶剤を留去する際に、該脱水溶剤
を含む留出物に対してゲル化防止剤を作用させる(この
態様を、以下、「第三の実施態様」とも称する)。これ
により、エステル化反応終了後、脱水溶剤を留去する際
に、脱水溶剤を含む留出物中に混入された低沸点の原料
である(メタ)アクリル酸等により生ずるゲル状物(ポ
リ(メタ)アクリル酸など)の発生そのものを効果的に
防止することができ、高純度で高品質のエステル化物を
得ることができるものである。なお、本態様において、
留出物は、通常、脱水溶剤を含むほか、脱水溶剤を反応
槽から留出する際に一緒に留出される原料、特に(メ
タ)アクリル酸を含むものである。
【0121】上記第三の実施態様において、エステル化
反応終了後、脱水溶剤を留出させ、該脱水溶剤を含む留
出物に対して作用させるために用いられるゲル化防止剤
としては、留出物に含まれる未反応の低沸点原料が、凝
縮液化される段階で起こる重合反応を抑えることができ
るものであれば特に制限されるものではなく、上記と同
様にして、従来既知の各種ゲル化防止剤の中から適宜選
択して利用することができ、その具体例や好ましい例に
ついては、上記ゲル化防止剤に関するものと同様であ
る。
【0122】また、この際のゲル化防止剤の使用量(添
加量)としては、留出温度(熱量)やエステル化反応に
使用された脱水溶剤量(さらにはエステル化終了後に加
えられた水分量)等に応じて、未反応の低沸点原料の留
出量に見合う量、すなわち、脱水溶剤を含む留出物の留
出開始時から脱水溶剤が十分に留去されるまで、逐次留
出されてくる未反応の低沸点原料に対して常にゲル状物
の形成を効果的に防止することができる量を作用させれ
ばよく、原料である式(1)のアルコールおよび(メ
タ)アクリル酸の使用量(仕込み量)に対して通常0.
1〜1000ppm、好ましくは1〜500ppmの範
囲である。原料の使用量に対して0.1ppm未満の場
合には、ゲル状物が生成する場合があり、脱水溶剤を含
む留出物の留出開始時から脱水溶剤が十分に留去される
まで逐次留出されてくる未反応の低沸点原料に対して、
常に重合禁止能を有効に発現させる上で不十分な量と言
える。一方、原料の使用量に対して1000ppmを超
える場合には、重合禁止能を有効に発現させるには十分
過ぎる量であり、過剰な添加に見合う更なる効果の発現
が見込めず不経済となる。なお、使用するゲル化防止剤
の全量を一時に加えたのでは、脱水溶剤を含む留出物の
留出開始時から脱水溶剤が十分に留去されるまで逐次留
出されてくる未反応の低沸点原料に対してゲルの形成を
有効に阻止することができにくいため、留出物に含有さ
れる脱水溶剤量の経時的な変化に呼応するたかちで、脱
水溶剤を含む留出物の留出開始時から脱水溶剤が十分に
留去されるまで逐次(連続的に)必要な量を添加し、最
終的な添加量の総計が上記範囲となるように調整する事
が望ましい。
【0123】上記ゲル化防止剤の留出物への作用のさせ
かた(作用形態や作用させる領域など)としては、逐次
留出されてくる未反応の低沸点原料(流体物)に対して
有効に作用(接触)させる事ができるものであれば、特
に制限されるものではなく、例えば、(a′)凝縮液化
させる前のガス状の留出物に対して作用させてもよい
し、(b′)凝集液化により液化した液状の留出物に対
して作用させてもよい。また、上記(a′)及び
(b′)の双方を活用しても良い。
【0124】以下に、上記ゲル化防止剤の好適な作用の
させかたを、作用形態ごとに例を挙げて説明するが、本
発明では、これらを適当に組み合わせる事ができるほ
か、従来既知の他の作用方法を適宜利用することができ
る。なお、下記に例示する作用のさせかたは、当業者が
本発明を容易に理解することができるように代表的なも
のを例示的に示したものであり、本発明がこれらに限定
されるものではないことはいうまでもない。
【0125】(1′)ゲル化防止剤を液体に混合(溶
解)した状態で作用させる方法;適当な液体(例えば、
溶剤、好ましくは反応で使用した脱水溶剤と同種の溶剤
ないし水)にゲル化防止剤を混合して液状にしたもの
(単に分散されていても良いが、好ましくは溶解されて
いるものが望ましい)を、脱水溶剤を含む留出物(好ま
しくは脱水溶剤と水との共沸による留出物)を凝縮させ
る領域、具体的には、脱水溶剤を含む留出物の凝縮液化
が行われる凝縮液化用装置、例えば、コンデンサの内部
に、好ましくはコンデンサ等の装置の上部(とりわけ塔
頂部近傍)からその内部に該留出物と並流接触するよう
に滴下ないし噴霧するものである。また、凝縮液化用装
置の種類やタイプ等によっては、ゲル化防止剤を含む溶
液をコンデンサ等の装置の内部に仕込んでおいて、これ
にガス状の留出物を吹き込むあるいは液化した留出物を
流し込むようにして接触(相溶ないし分散)させるよう
にしてもよい。さらに上記態様では、ゲル化防止剤の作
用部位をコンデンサ内部としたが、上記部位に加えて、
反応槽とベーパーの立ち上がりラインとの間の接合部
(フランジ部)やベーパーラインとコンデンサ塔頂部と
の間のフランジ部等のフランジ部、反応槽等に設置され
た温度計やのぞき窓に設けられた突起部など、ゲルが形
成されやすい部位であってもよい。これらのうち、コン
デンサ上部(とりわけ塔頂部近傍)、反応槽とベーパー
の立ち上がりラインとの間のフランジ部やベーパーライ
ンとコンデンサ塔頂部との間のフランジ部が好ましいゲ
ル化防止剤の作用部位である。また、上記作用部位は、
一箇所でなくてもよく、必要に応じて、複数箇所を同時
に設けてもよい。
【0126】(2′)ゲル化防止剤を固化した状態で作
用させる方法;粉末状のゲル化防止剤を、脱水溶剤を含
む留出物を凝縮液化させる領域、具体的には、脱水溶剤
を含む留出物の凝縮液化が行われる凝縮液化用装置、例
えば、コンデンサの内部に、好ましくはコンデンサ等の
装置の上部(とりわけ塔頂部)からその内部に該留出物
と並流接触するように投下ないし散布して降らせるもの
である。また、コンデンサ等の装置の種類やタイプ等に
よっては、所定の粒度のゲル化防止剤を予めコンデンサ
等の装置の内部に積載ないし充填などして仕込んでおい
て接触させるようにしてもよい。さらに上記態様におい
ても、ゲル化防止剤の作用部位をコンデンサ内部とした
が、上記部位に加えて、反応槽とベーパーの立ち上がり
ラインとの間の接合部(フランジ部)やベーパーライン
とコンデンサ塔頂部との間のフランジ部等のフランジ
部、反応槽等に設置された温度計やのぞき窓に設けられ
た突起部など、ゲルが形成されやすい部位であってもよ
い。これらのうち、コンデンサ上部(とりわけ塔頂部近
傍)、反応槽とベーパーの立ち上がりラインとの間のフ
ランジ部やベーパーラインとコンデンサ塔頂部との間の
フランジ部が好ましいゲル化防止剤の作用部位である。
また、上記作用部位は、一箇所でなくてもよく、必要に
応じて、複数箇所を同時に設けてもよい。
【0127】(3′)ゲル化防止剤を気化した状態で作
用させる方法;ゲル化防止剤を気化(昇華したものを含
む)させて、ガズ状の凝縮液化を含む留出物(未反応の
低沸点原料を含む)を凝縮液化させる前に、脱水溶剤を
留出させるのに用いる装置(例えば、エステル化反応に
用いた反応装置をそのまま利用するのが望ましい)とコ
ンデンサ等の凝縮液化用装置とを連通する配管経路内に
供給して混合させるものである。
【0128】なお、上記(1′)〜(3′)の中でも以
下に説明する理由から、上記(1′)を採用するのがよ
いと言える。すなわち、経済的な観点および取り扱いの
面からはより低い温度で脱水溶剤を留出し除去するのが
望ましく、そのための手法としては、例えば、適量の水
を用いて(特に、上記部分中和工程で薄い濃度のアルカ
リ水溶液で処理した場合には、大量の水が系内に既に存
在しており、この水を用いてもよい)留出させる方法等
が有効な手段として挙げられる。適量の水を用いて脱水
溶剤と留出(共沸)させる場合には、水相側にも低沸点
原料が移行し、水と共に留出されるほか、脱水溶剤の留
去が漸次進につれて徐々に共沸されてくる留出物中の脱
水溶剤の割合が低下し、最終的にはほとんど水(低沸点
原料を含む)が留出されるようになることから、ゲル化
防止剤を溶剤に溶かしても十分な効果が得られなくなる
ことから、上記(1′)の方法により、ゲル化防止剤を
水と混合して作用させることが望ましく、特に、水溶性
のゲル化防止剤を使用し、該水溶性ゲル化防止剤を水に
溶解して作用させることがより望ましいものである。さ
らには、未反応の低沸点の原料を含有する留出物に有効
に作用する(すなわち、低沸点の原料を含有する留出物
が凝縮(液化)した際に、この液化物と速やかに接触
し、ゲル化する低沸点の原料が含有されている液化物
(水及び有機溶剤)に対して相溶ないし分散する)こと
ができるように、上記(1′)の方法により、留出物の
成分組成に応じてゲル化防止剤を水および/または溶剤
に溶解したものを作用させることが望ましい。例えば、
経時的な留出物の組成変化をセンサ等によりモニタしな
がら、作用させるゲル化防止剤組成(例えば、数種のゲ
ル化防止剤を用い、溶剤、好ましくは脱水溶剤に溶解す
るゲル化防止剤組成と水に溶解するゲル化防止剤組成の
混合比率)を変化させても良く、脱水溶剤に溶解するゲ
ル化防止剤は脱水溶剤に溶解させたものと、水に溶解す
るゲル化防止剤は水に溶解させたものを別々の経路よ
り、コンデンサ等の装置内に設けられたそれぞれの噴霧
ノズルより滴下ないし噴霧するなどして作用させること
が望ましいものである。また、上記(1′)を採用する
理由としては、単位重量あたりのゲル化防止剤に対して
使用される液体の量が多くなるほど、かかるゲル化防止
剤を混合した液体を液化凝縮手段の1つ(=熱交換媒
体)として作用し得るとする利点も挙げられる。
【0129】ここで、水に溶解した状態でゲル化防止剤
を作用させる場合に用いることのできる水溶性のゲル化
防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メトキノン
等が好ましく使用される。
【0130】一方、溶剤に溶解した状態でゲル化防止剤
を作用させる場合に、上記ゲル化防止剤を溶解すること
のできる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、
キシレン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケ
トン、n−ヘキサン、ヘプタン等が挙げられるが、好ま
しくはエステル化反応で使用される脱水溶剤と同種のも
のを用いるのがよい。すなわち、異なる溶剤を用いた場
合には、これら混合溶剤を別途回収し再利用するには、
多段階で分離精製処理を行う必要があり、再利用に要す
るコストが高くなり、使い捨てにした方が低コストであ
る。しかし、こうした使い捨てによる混合溶剤の廃棄処
理(焼却処理あるいは環境基準値以下に希釈化して廃水
処理するなど)にも、一定のコストを要し、かつ少なか
らず大気汚染ないし水質汚染等を招くことから、今日の
良く言われる地球に優しい環境づくりにいわば逆行する
ことになる。一方、脱水溶剤と同種のものを用いる場合
には、簡単な処理により低コストでの再利用が可能とな
り、コストおよび環境面で優れていると言える。
【0131】上記第三の実施態様において、ゲル化防止
剤を液体(水および/または溶剤)に溶解して作用させ
る場合にも、ゲル状物の発生を抑制することができるよ
うに、コンデンサ等の装置内を通過する低沸点原料(ガ
スないし液化物)に対して、常にゲル化防止剤が存在
し、有効に機能するように供給されればよく、ゲル化防
止剤と液体との混合比率としては、特に制限されるもの
ではないが、(ア)水に溶解して作用させる場合には、
水100重量部に対して水溶性のゲル化防止剤を0.0
01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部の範
囲で、(イ)溶剤に溶解して作用させる場合には、溶剤
100重量部に対してゲル化防止剤を0.001〜10
重量部、好ましくは0.01〜5重量部の範囲で溶解す
る。水100重量部に対して水溶性のゲル化防止剤が
0.001重量部未満、若しくは溶剤100重量部に対
してゲル化防止剤が0.001重量部未満の場合には、
留出物中の低沸点原料に対して適当な濃度のゲル化防止
剤を効率よく効果的に接触させることが困難となり虞れ
がある。また、単位重量のゲル化防止剤に対する液体の
量が多くなり、脱水溶剤と共に系外に留去した後の廃棄
等の処理コストが増大するため、経済的に不利となる。
一方、水100重量部に対して水溶性のゲル化防止剤が
10重量部を超える、若しくは溶剤100重量部に対し
てゲル化防止剤が10重量部を超える場合には、使用す
る液体の量(脱水溶剤の留去中に添加される全量)が少
なくなるため、単位時間、単位容積当たりの添加量が制
限され、低沸点原料との接触頻度が相対的に低下し、未
接触のまま液状化しゲル状物を形成するのを効果的に抑
制するのが困難になる。そのため、単位時間、単位体積
当たりに必要な添加量を確保するには、上記に規定する
以上の大量のゲル化防止剤が必要になり、製造コストが
上昇する。なお、水および溶剤にそれぞれ溶解したもの
を併用する場合には、その使用比率に応じて上記(ア)
及び(イ)に規定する範囲にとらわれることなく、これ
らの総計が大体上記(ア)ないし(イ)に規定する範囲
あたりになるように、適宜調整すればよい。
【0132】また、溶剤留去工程で、系内のエステル化
物および脱水溶剤を含有する溶液から脱水溶剤を留出し
てから、凝縮液化して系外に除去するまでの装置機構に
関しては、この間にゲル化防止剤を作用させるための手
段(装置機構)が設けられていれば何ら制限されるもの
ではなく、従来既知の装置機構を適当に組み合わせるこ
とができる。例えば、上述したエステル化工程におい
て、エステル化反応中に、反応系内の脱水溶剤を反応系
から留出し凝縮液化して反応系に戻し循環させるのに使
用した装置機構(単に溶剤循環装置という)の一部を利
用してもよく、装置設備の簡素化・小型化も図れること
から望ましい実施態様の1つと言える。具体的には、ガ
ス状の留出物を凝縮液化するための装置であるコンデン
サ等に関しては先の溶剤循環装置をそのまま利用でき、
凝縮液化された留出物の分離除去装置である液−液分離
装置である水分離器等に関しては先の溶剤循環装置を適
宜使用形態を変更して利用できる。すなわち、留出物の
成分組成に応じて、当該水分離器に輸送されてくる液状
の留出物を、水を系外に除去する輸送経路及び輸送装置
であるポンプ等を利用して、水相部分あるいは液状の留
出物の全てを系外に除去することができるほか、新たに
当該水分離器等に真空ポンプ(エゼクタ)を取り付けて
吸引することで、相対的に揮発性の高い成分等を選択的
に、あるいは液状の留出物の全てを系外に除去するよう
にしてもよい。あるいは凝縮液化した留出物をコンデン
サ等から別途輸送経路を設けてそのまま系外(例えば、
廃棄物処理装置やリサイクル処理装置など)に取り出
し、適当に処理(廃棄ないし再利用)することもでき
る。また、これらの装置にも、適当な制御機構が適宜設
けられているのが望ましい。なお、上記に例示した装置
機構に変えて、系内の脱水溶剤を留出し凝縮液化して系
外に除去させるとする本来的な目的を逸脱しない限り、
従来既知の他の手段及びその装置との組み合わせ、ある
いは他の手段及びその装置による代替えなどによる方法
を適宜採用することができることもいうまでもない。
【0133】また、当該溶剤留去工程では、エステル化
反応終了後(必要に応じて、上記部分中和工程を行
い)、系内のエステル化物および脱水溶剤を含有する溶
液から脱水溶剤を留去する方法に関しては、特に制限さ
れるものではなく、上述したように水を用いて脱水溶剤
と共沸させて留出し除去てもよいし、他の適当な添加剤
を加えて脱水溶剤を効果的に除去するようにしてもよい
ほか、何等の添加剤(水を含む)を用いることなく、留
出させて除去する事もできるが、エステル化反応におい
て、酸触媒を用いることが極めて有用(すなわち、その
後に部分中和しなければならないことを勘案してもその
有用性は極めて高いといえる)であることから、水を用
いて脱水溶剤と共沸させて留出し除去する方法が好まし
い実施態様の1つと言える。なお、当該溶剤留去工程ま
でに、酸触媒の部分中和処理が行われているため、系内
のエステル化物および脱水溶剤を含有する溶液中には、
活性な酸触媒及びアルカリはなく(中和により塩になっ
ている)、水を加えて昇温しても加水分解反応が起こら
ないため、脱水溶剤を留去する上で、水と共沸させる事
ができる。なお、水と共沸させるほうが、より低い温度
で効率よく脱水溶剤を除去することができるものであ
る。
【0134】上記第三の実施態様による溶剤留去工程に
おいて、系内の溶液中から脱水溶剤を留出させるための
条件としては、系内の脱水溶剤を好適に留出(蒸発)さ
せることができるものであれば、特に制限されるもので
はなく、溶剤留去中の系内温度(系内の液温(常圧
下))としては、例えば、(1″)水を用いる場合に
は、通常80〜120℃、好ましくは90〜110℃で
あり、(2″)水を用いない場合には、通常80〜16
0℃、好ましくは90〜150℃である。上記(1″)
ないし(2″)のいずれも場合にも、上記に規定する温
度よりも低い温度の場合には、脱水溶剤を蒸発するのに
十分な温度(熱量)でなく、脱水溶剤の留去に長時間を
要するなど好ましくなく、一方、上記に規定する温度よ
りも高い温度の場合には、重合の危険性があるほか、多
くの熱量が大量の低沸点原料の蒸発に消費されるため好
ましくない。また、系内(装置内)圧力は、常圧下また
は減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下
で行うことが望ましい。また、脱水溶剤を含む溶液から
溶剤の留出を行うための装置系としては、エステル化反
応で使用した装置系(反応槽)をそのまま使用するのが
よい。すなわち、エステルカ反応後、別途他の装置に内
容物を移し変える場合には、設備及び管理費が増加する
ほか、輸送時にエステル化物等が外的要因(熱、光、輸
送温度、輸送圧力、活性な雰囲気ガスの介在)などによ
り劣化したり、輸送経路内に固着したり、逆に輸送時に
装置などから不純物が溶出ないし混入するのを防止する
必要があり、余分なコストが発生するなど好ましくな
い。
【0135】なお、エステル化工程において、(メタ)
アクリル酸の重合を防止すべく重合禁止剤の存在下に、
エステル化反応を行っている場合には、当該重合禁止剤
がエステル化反応後(さらには部分中和処理後)におい
ても有効に機能するため、本溶剤留去工程において、系
内の溶液中に、新たに重合禁止剤を補充する必要はない
が、濃度の薄いアルカリ水溶液を用いて部分中和処理を
行っている場合には、系内の溶液中に比較的多くの水が
存在している。そのため、例えば、エステル化反応を行
う際に使用した重合禁止剤が水に難溶ないし不溶である
ような場合に限り、(メタ)アクリル酸が水に溶けて系
内の溶液内で重合することがあるため、これを防止する
観点から、系内の溶液に水溶性重合禁止剤を加えてから
上記に規定する温度まで昇温することが望ましいもので
ある。
【0136】また、上記水溶性重合禁止剤としては、特
に制限されるものではなく、例えば、ハイドロキノン、
メトキノン、カテコール及びこれらの誘導体(例えば、
p−t−ブチルカテコール等)、ハイドロキノンモノメ
チルエーテル等が挙げられる。なかでもハイドロキノ
ン、メトキノンが好ましい。また、これらの水溶性重合
禁止剤は、1種若しくは2種以上を混合して使用しても
よい。
【0137】上記水溶性重合禁止剤の添加量としては、
原料としてのアルコール及び(メタ)アクリル酸の合計
使用量に対して0.001〜1重量%、好ましくは0.
001〜0.1重量%である。水溶性重合禁止剤の添加
量が、0.001重量%未満の場合には、重合禁止能の
発現が不十分な場合があり、水溶性重合禁止剤の添加量
が、1重量%を超える場合には、過剰に添加することに
見合う重合禁止能が得られず、不経済であり、好ましく
ない。
【0138】または、エステル化反応終了後(必要に応
じて、部分中和処理を行った後)、当該溶剤留去工程に
おいて、反応液から脱水溶剤を留去する際に水溶性重合
禁止剤を反応液に添加してもよい。しかしながら、本発
明者らは、本来的には重合を禁止する目的で添加されて
いた水溶性重合禁止剤を加えることで、この重合禁止剤
が弱いながらも重合活性を有するために、意外にも、未
反応の原料、生成物であるエステル化物またはこれらの
混合物の重合を招き、高分子量体を形成していたことを
見出すとともに、エステル化反応時に添加されていた重
合禁止剤が、当該脱水溶剤の留去時にも有効に機能する
ことを見出した。このため、エステル化反応終了後(必
要に応じて、部分中和処理を行った後)、当該溶剤留去
工程において反応液から脱水溶剤を留去する際の、水溶
性重合禁止剤の添加量は、原料のアルコールと(メタ)
アクリル酸の全使用量に対して1000ppm以下、好
ましくは500ppm以下、より好ましくは300pp
m以下であり、特に好ましくは水溶性重合禁止剤を添加
せずに溶剤留去工程を行う。この際、水溶性重合禁止剤
の使用量が、原料のアルコールと(メタ)アクリル酸の
全使用量に対して1000ppmを超える場合には、該
水溶性重合禁止剤のもつ重合活性により、上記したよう
な高分子量体の発生を招き、これらを含むエステル化物
を単量体成分として利用する場合には、得られる重合体
を用いたセメント分散剤等に影響を及ぼすため好ましく
ない。
【0139】なお、重合禁止剤の存在下にエステル化反
応を行う際には、上記溶剤留去工程では、当該重合禁止
剤が上述したようにエステル化反応後(さらには部分中
和処理後)においても有効に機能するものである場合に
は、本溶剤留去工程において、系内の溶液中に、新たに
重合禁止剤を補充する必要はないが、濃度の薄いアルカ
リ水溶液を用いて部分中和処理を行っている場合には、
反応液中に比較的多くの水が存在している。そのため、
例えば、エステル化反応を行う際に使用した重合禁止剤
が水に難溶ないし不溶であり、エステル化反応後(さら
には部分中和処理後)においてさほど有効に機能しえな
い場合に限り、未反応の原料やエステル化物が水に溶け
て重合することがあるため、これを防止する観点から、
水溶性重合禁止剤のもつ重合活性による重合作用と本来
的に有する重合禁止能との関係から、重合活性以上に有
効に重合禁止能を発現し得る範囲(上記に規定する範
囲)において、反応液に水溶性重合禁止剤を加えてから
下記に規定する温度まで昇温し、脱水溶剤を水との共沸
により留去することが望ましいものである。
【0140】ここで、使用することのできる水溶性重合
禁止剤としては、特に制限されるものではなく、例え
ば、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール及びこれ
らの誘導体(例えば、p−t−ブチルカテコール等)、
ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。な
かでも、比較的重合活性が低いとの理由から、ハイドロ
キノン、メトキノンが好ましい。また、これらの水溶性
重合禁止剤は、1種若しくは2種以上を混合して使用し
てもよい。
【0141】第二の概念によると、本発明は、ゲル化防
止剤をエステル化反応時に生成する反応生成水を含む留
出物に対して作用させながら、下記式(1):
【0142】
【化9】
【0143】(ただし、R1は炭素原子数1〜30の炭
化水素基を表わし、R2Oは炭素原子数2〜18のオキ
シアルキレン基を表わし、この際、各R2Oの繰り返し
単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、お
よびR2Oが2種以上の混合物の形態である場合には各
2Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあ
るいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnは
オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜3
00の数である)で示されるアルコキシポリアルキレン
グリコール(本明細書では、単に「アルコキシポリアル
キレングリコール」と称する)を(メタ)アクリル酸と
エステル化反応することにより、アルコキシポリアルキ
レングリコールモノ(メタ)アクリル酸系単量体(a)
を得、該アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メ
タ)アクリル酸系単量体(a)5〜98重量%、下記式
(2):
【0144】
【化10】
【0145】(ただし、R3は水素もしくはメチル基を
表わし、M1は水素、一価金属、二価金属、アンモニウ
ム基または有機アミン基を表わす)で示される(メタ)
アクリル酸系単量体(b)95〜2重量%、およびこれ
らの単量体と共重合可能な他の単量体(c)0〜50重
量%(但し、(a)、(b)および(c)の合計は10
0重量%)を共重合することを特徴とする、セメント分
散剤用ポリカルボン酸系共重合体(本明細書では、単に
「共重合体」または「重合体」と称する)の製造方法を
提供するものである。
【0146】上記概念において、アルコキシポリアルキ
レングリコールは、nが0を含まない以外は上記第一の
概念におけるアルコールと同様に定義される。また、
(メタ)アクリル酸やエステル化反応など、上記第一の
概念において同様に使われている用語に関しては同様の
意味を有する。
【0147】なお、上記第二の概念によるエステル化反
応において、アルコキシポリアルキレングリコール及び
(メタ)アクリル酸の使用量は、アルコキシポリアルキ
レングリコールの使用量をp重量部と及び(メタ)アク
リル酸の使用量をq重量部とした際に、下記式: 40≦[(p/n1/2)/q]×100≦200 の関係を満足する量であることが好ましい。これによ
り、(メタ)アクリル酸をアルコキシポリアルキレング
リコールに比べて過剰に存在させてエステル化反応を行
なうと、得られたアルコキシポリアルキレングリコール
モノ(メタ)アクリル酸系単量体は(メタ)アクリル酸
を含む混合物の形態で存在するので、この混合物を単離
せずにそのままあるいは必要により(メタ)アクリル酸
(塩)単量体やこれらの単量体と共重合可能な単量体を
加えて、好ましくは混合物を単離せずにそのまま共重合
反応に供することにより、ポリカルボン酸系共重合体が
製造でき、好ましい。すなわち、アルコキシポリアルキ
レングリコール及び(メタ)アクリル酸の使用量を上記
したような範囲内に調節することにより、アルコキシポ
リアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸を単離
するという工程を省略することができるため、量産に適
しており、産業上の観点から好ましい。
【0148】上記好ましい態様において、アルコキシポ
リアルキレングリコールの使用量であるp重量部と(メ
タ)アクリル酸の使用量であるq重量部は、下記式: 40≦[(p/n1/2)/q]×100≦200 (ただし、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を
表わし、1〜300の数である)の関係を満足すること
を必須とする。本明細書においては、式:[(p/n
1/2)/q]×100の値を「K値」とも称し、K値
は、カルボン酸の重量当たりのポリアルキレングリコー
ル鎖の平均数を表わす尺度である。本発明において、K
値は、好ましくは42〜190(42≦K値≦19
0)、より好ましくは45〜160(45≦K値≦16
0)である、この際、K値が40未満であると、得られ
るセメント分散剤のセメント分散性能が十分でない。逆
に、K値が200を超えると、得られるセメント分散剤
のセメント分散性能がやはり低下する上、エステル化反
応時間が著しく増大し、生産性が大幅に低下するので好
ましくない。
【0149】上記第二の概念におけるポリカルボン酸系
共重合体(その塩を含む;以下、同様)の製造方法は、
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アク
リル酸系単量体を単量体成分として、重合反応を行うこ
とにより、所期の用途に応じた、本発明の重合体を得る
ことができるものであれば、特に制限されるものではな
く、所期の用途に応じて重合されてなるものが含まれる
と解されるべきである。例えば、特公昭59−1833
8号公報、特開平9−86990号公報や特開平9−2
86645号公報に記載の方法などの公知の方法と同様
にして、(メタ)アクリル酸(塩)、および必要により
これらの単量体と共重合可能な単量体と共に重合反応に
供されることによって、セメント分散能に優れたセメン
ト分散剤とすることができるが、これらに限定されるも
のではなく、本発明の重合体の詳細な説明において例示
したそれぞれの公報に記載の重合方法が適用できること
はもちろんのこと、これら以外にも従来既知の各種重合
方法を適用できることはいうまでもない。また、上記方
法のほか、炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク
などの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー
用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等への利用が可能で
ある。
【0150】より具体的には、例えば、本発明のポリカ
ルボン酸系共重合体の製造方法では、アルコキシポリア
ルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸系単量体
を、(メタ)アクリル酸(塩)単量体および必要により
これらの単量体と共重合可能な単量体とともに重合反応
する。
【0151】ここで、所望のポリカルボン酸系共重合体
を得るには、重合開始剤を用いてアルコキシポリアルキ
レングリコールモノ(メタ)アクリル酸系単量体成分等
を共重合させれば良い。共重合は、溶媒中での重合や塊
状重合等の方法により行なうことができる。
【0152】溶媒中での重合は、回分式でも連続式でも
行なうことができ、その際使用される溶媒としては、
水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香
族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化
合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合
物;等が挙げられる。原料のエステル化物の単量体成分
および得られる共重合体の溶解性ならびに該共重合体の
使用時の便からは、水および炭素原子数1〜4の低級ア
ルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用い
ることが好ましい。その場合、炭素原子数1〜4の低級
アルコールの中でもメチルアルコール、エチルアルコー
ル、イソプロピルアルコール等が特に有効である。
【0153】水媒体中で重合を行なう時は、重合開始剤
としてアンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩ある
いは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。
この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を
併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族
炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケ
トン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキ
シドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメ
ンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;ア
ゾビスイソブチロニトリル等の芳香族アゾ化合物等が重
合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促
進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコ
ール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始
剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から
適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いる
溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常0〜1
20℃の範囲内で行なわれる。
【0154】塊状重合は、重合開始剤としてベンゾイル
パーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシ
ド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキ
シド;アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合
物等を用い、50〜200℃の温度範囲内で行なわれ
る。
【0155】また、得られる重合体の分子量調節のため
に、チオール系連鎖移動剤を併用することもできる。こ
の際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、一般式HS
−R 5−Eg(ただし、式中R5は炭素原子数1〜2のア
ルキル基を表わし、Eは−OH、−COOM2、−CO
OR6または−SO32基を表わし、M2は水素、一価金
属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表
わし、R6は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わ
し、gは1〜2の整数を表わす。)で表わされ、例え
ば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグ
リコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカ
プトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オ
クチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げ
られ、これらの1種または2種以上を用いることができ
る。
【0156】このようにして得られた重合体は、そのま
までもセメント分散剤等の各種用途の主成分として用い
られるが、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和
して得られる重合体塩をセメント分散剤等の各種用途の
主成分として用いても良い。このようなアルカリ性物質
としては、一価金属および二価金属の水酸化物、塩化物
および炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等が
好ましいものとして挙げられる。
【0157】本発明の重合体の製造方法において、使用
することのできるアルコキシポリアルキレングリコール
モノ(メタ)アクリル酸系単量体成分は、1種単独で用
いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。特
に、2種以上を混合して使用する場合には、使用用途に
応じた特性(機能・性能等)を発現させることができる
ように、発現特性の異なる種類を適当に組み合わせて用
いることが望ましく、以下の2種の組み合わせが有利で
ある。
【0158】すなわち、アルコキシポリアルキレングリ
コールモノ(メタ)アクリル酸系単量体において、式
(1)における平均付加モル数nが1〜97、好ましく
は1〜10の整数である第1のエステル化物(a1
と、式(1)における平均付加モル数nが4〜100、
好ましくは11〜100の整数である第2のエステル化
物(a2)との混合物(ただし、第2のエステル化物
(a2)の平均付加モル数の方が第1のエステル化物
(a1)の平均付加モル数よりも3以上大きいものとす
る)の組み合わせが有利である。
【0159】このような第1のエステル化物(a1)と
第2のエステル化物(a2)との混合物を製造する方法
は、当該エステル化物の製造方法で説明した通りであ
り、これらの第1および第2のエステル化物(a1)お
よび(a2)を別々にエステル化反応により製造しても
よいし、それぞれ相当するアルコールの混合物と、(メ
タ)アクリル酸とのエステル化反応により製造してもよ
く、特に後者の方法は工業的に安価の製造方法を提供で
きる。
【0160】この場合、第1のエステル化物(a1)と
第2のエステル化物(a2)との重量比は5:95〜9
5:5、好ましくは10:90〜90:10である。
【0161】第1のエステル化物(a1)としては、例
えば、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)ブチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ
(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチ
レングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコ
ール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレ
ート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プ
ロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ
(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プ
ロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキ
シ(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロ
ピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ
(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プロピ
レングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコー
ル(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート等が例示される。第1
のエステル化物(a1)は、その側鎖の短鎖アルコール
に疎水性を有することが重要である。
【0162】また、共重合のし易さの面からは、側鎖は
エチレングリコール単位が多く含まれているのが好まし
い。したがって、(a1)としては、平均付加モル数が
1〜97、好ましくは1〜10の(アルコキシ)(ポ
リ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好
ましい。
【0163】第2のエステル化物(a2)としては、例
えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)ア
クリレート、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)
プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メト
キシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレング
リコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリ
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキ
シポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレング
リコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アク
リレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)プ
ロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ
(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0164】高い減水性を得るためには、第2のエステ
ル化物(a2)の平均付加モル数が4〜100のアルコ
ール鎖による立体反発と親水性でセメント粒子を分散さ
せることが重要である。そのためには、ポリアルキレン
グリコール鎖にはオキシエチレン基が多く導入されるこ
とが好ましく、ポリエチレングリコール鎖が最も好まし
い。よって、第2のエステル化物(a2)のアルキレン
グリコール鎖の平均付加モル数nは、4〜100、好ま
しくは11〜100である。
【0165】本発明の重合体の製造方法において、使用
することのできる、上記(メタ)アクリル酸(塩)単量
体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸ならびにこ
れらの酸の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩お
よび有機アミン塩を挙げることができ、これらの1種ま
たは2種以上を用いることができる。
【0166】本発明の重合体の製造方法において、使用
することのできるエステル化物単量体および(メタ)ア
クリル酸(塩)単量体の単量体成分と共重合可能な単量
体の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン
酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;これ
らのジカルボン酸類とHO(R11O)r12ただし、R1
1Oは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基の1種ま
たは2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロ
ック状に付加していてもランダム状に付加していてもよ
く、rはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1
から100の整数を表わし、R12は水素または炭素原子
数1〜22、好ましくは1〜15のアルキル基を表わ
す。)で表わされるアルコールとのモノエステルあるい
はジエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)ア
クリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニ
ル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニル
スルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル
(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸
(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽
和スルホン酸類およびそれらの一価金属塩、二価金属
塩、アルモニウム塩、有機アミン塩類;スチレン、α−
メチルスチレン等の芳香族ビニル類;炭素原子数1〜1
8、好ましくは1〜15の脂肪族アルコールあるいはベ
ンジルアルコール等のフェニル基含有アルコールと(メ
タ)アクリル酸とのエステル類;ポリアルキレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコ
ールモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられ、これら
の1種または2種以上を用いることができる。
【0167】このようにして得られた共重合体を主成分
とする本発明のセメント分散剤では、良好なセメント分
散性能及びスランプ保持性能を発揮することができる。
【0168】また、本発明のセメント分散剤には、上記
に規定する重合体成分の他に、従来公知のナフタレン系
セメント分散剤、アミノスルホン酸系セメント分散剤、
ポリカルボン酸系セメント分散剤およびリグニン系セメ
ント分散剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種のセ
メント分散剤を配合してもよい。すなわち、本発明のセ
メント分散剤では、上記重合体単独で使用しても良い
し、必要に応じて、さらに付加価値を持たせるべく、上
記および下記に示す各種成分を配合することができるも
のであり、これらの配合組成については、目的とする付
加的機能の有無により大きく異なるものであり、上記重
合体成分を100重量%(全量)ないし主成分とするも
のから、上記重合体成分を高付加価値成分として、従来
のセメント分散剤に適量加える態様まで様々であり、一
義的に規定することはできない。しかしながら、本発明
のセメント分散剤におけるポリカルボン酸系共重合体の
配合量は、全成分に対して、通常、5〜100重量%、
好ましくは50〜100重量%である。
【0169】また、本発明のセメント分散剤には、従来
公知のセメント分散剤の他に、空気連行剤、セメント湿
潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子
物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、
硬化促進剤、消泡剤等を配合することができる。
【0170】このようにして得られる重合体を主成分と
するセメント分散剤は、少なくともセメントおよび水よ
りなるセメント組成物に配合することによりセメントの
分散を促進する。
【0171】本発明のセメント分散剤は、ポルトランド
セメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメン
ト、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石
膏などのセメント以外の水硬材料などに用いることがで
きる。
【0172】本発明のセメント分散剤は、上記に記載の
作用効果を奏するため、従来のセメント分散剤に比較し
て少量の添加でも優れた効果を発揮する。たとえば水硬
セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する
場合には、セメント重量の0.001〜5%、好ましく
は0.01〜1%となる比率の量を練り混ぜの際に添加
すればよい。この添加により高減水率の達成、スランプ
ロス防止性能の向上、単位水量の低減、強度の増大、耐
久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされ
る。添加量が0.001%未満では性能的に不十分であ
り、逆に5%を越える多量を使用しても、その効果は実
質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0173】本発明のセメント分散剤は、特定の重量平
均分子量を有し、かつ重量平均分子量からピークトップ
分子量を差し引いた値が特定の値を有する重合体を主成
分とするセメント分散剤であることが望ましい。この
際、本発明によるポリカルボン酸系共重合体の重量平均
分子量は、所期の用途に応じて適宜最適な範囲に決定さ
れるものであり、例えば、ゲルパーミエーションクロマ
トグラフィーによるポリエチレングリコール換算で50
0〜500000、特に5000〜300000の範囲
とすることが好ましい。また、重合体の重量平均分子量
からピークトップ分子量を差し引いた値は、0〜800
0であることが必要であり、好ましくは0〜7000で
ある。重量平均分子量が500未満では、セメント分散
剤の減水性能が低下するために好ましくない。一方、5
00000を越える分子量では、セメント分散剤の減水
性能、スランプロス防止能が低下するために好ましくな
い。また、重量平均分子量からピークトップ分子量を差
し引いた値が8000を越える場合には、得られたセメ
ント分散剤のスランプ保持性能が低下するために好まし
くない。
【0174】
【実施例】以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的
に説明する。なお、例中、特にことわりのない限り、
「%」は「重量%」を、また、「部」は「重量部」を表
わすものとする。
【0175】実施例1 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えた外部ジャケット付ガラス製反応槽(内
容量:30リットル)にメトキシポリ(n=25)エチ
レングリコール16500部、メタクリル酸4740部
(K値=70)、パラトルエンスルホン酸水和物235
部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1060
部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応を行っ
た。別途、シクロヘキサンの還流開始からエステル化反
応終了まで、コンデンサの塔頂部へフェノチアジン0.
5部を含むシクロヘキサン溶液500.5部を滴下し
た。約20時間でエステル化率が100%に達したのを
確認した。以上の操作を数バッチ繰り返したあとコンデ
ンサたる還流冷却管の内部を点検したところ、ゲル状物
は認められなかった。本実施例の反応組成、反応条件お
よび反応結果を下記表1に示す。
【0176】次に、エステル化反応終了後、得られたエ
ステル化反応液22255部に49%水酸化ナトリウム
水溶液135部と水4890部を加えてパラトルエンス
ルホン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて105
℃までに昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去し
た。シクロヘキサンの留去中、コンデンサの塔頂部へハ
イドロキノン1部を含む水301部を滴下した。そし
て、シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%の
エステル化物の水溶液(1)を得た。
【0177】実施例2 実施例1において、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び多管式コンデンサ[胴部(シェル):内径750mm
×長さ4000mm、伝熱管(チューブ):内径24m
m×485本、伝熱面積:150m2]を備えた外部ジ
ャケット付SUS316製反応槽(内容量:30m3
を反応槽として使用する以外は実施例1と同様にしてエ
ステル化反応を行い、反応終了後、コンデンサの内部を
点検したところ、ゲル状物は認められなかった。
【0178】実施例3 実施例1において、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び多管式コンデンサ[胴部(シェル):内径750mm
×長さ4000mm、伝熱管(チューブ):内径24m
m×485本、伝熱面積:150m2]を備えた外部ジ
ャケット付グラスライニング反応槽(内容量:30
3)を反応槽として使用する以外は実施例1と同様に
してエステル化反応を行い、反応終了後、コンデンサの
内部を点検したところ、ゲル状物は認められなかった。
【0179】比較例1 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えた外部ジャケット付ガラス製反応槽(内
容量:30リットル)にメトキシポリ(n=25)エチ
レングリコール16500部、メタクリル酸4740
部、パラトルエンスルホン酸水和物235部、フェノチ
アジン5部およびシクロヘキサン1060部を仕込み、
反応温度115℃でエステル化反応を行った。反応中、
コンデンサの塔頂へのフェノチアジン/シクロヘキサン
溶液の滴下は行わなかった。約20時間でエステル化率
が100%に達したのを確認した。以上の操作を数バッ
チ繰り返したあとコンデンサたる還流冷却管の内部を点
検したところ、多量のゲル状物が認められた。本比較例
の反応組成、反応条件および反応結果を下記表1に示
す。
【0180】
【表1】
【0181】実施例4 温度計、攪拌機、生成水分離器および多管式コンデンサ
[胴部(シェル):内径750mm×長さ4000m
m、伝熱管(チューブ):内径24mm×485本、伝
熱面積:150m2]を備えた外部ジャケット付グラス
ライニング反応槽(内容量:30m3)に、メトキシポ
リ(n=25)エチレングリコール16500部、メタ
クリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸1水和物
235部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1
060部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応
を行った。別途、シクロヘキサンの還流開始からエステ
ル化反応終了まで、フェノチアジンを含むシクロヘキサ
ン溶液(A)(シクロヘキサン中のフェノチアジンの濃
度を1000重量ppmにした。)を0.35部/mi
nの速度で、水分離器から反応槽へ循環させる凝縮残液
(主にシクロヘキサン)の一部(B)を20部/min
の速度で、(A)と(B)を混合後、コンデンサ内に設
けられた上向きノズルを通してコンデンサの塔頂へ降ら
した。
【0182】約20時間でエステル化率が100%に達
したのを確認した。そして49%水酸化ナトリウム水溶
液135部と水4890部を加えてパラトルエンスルホ
ン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、シ
クロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン
の留去中、コンデンサの塔頂へハイドロキノン1部を含
む水301部を滴下した。シクロヘキサン留去後、調整
水を添加して80%のエステル化水溶液を得た。以上の
操作を3バッチ繰り返した後コンデンサ内部を目視で点
検したところ、ゲル状物の発生はなかった。さらに1年
間、上記バッチ操作を継続した後にコンデンサ内部を目
視で点検したところ、極々微量のゲル状物の発生しか確
認されなかった。これは、下記実施例7のものと1年間
で比較した場合、非常に少ないものであり、実施例7の
ものよりも目視で1/10以下まで減少していた。
【0183】本実施例の反応組成、反応条件、コンデン
サの塔頂へ降らせるゲル化防止剤溶液組成、部分中和条
件、溶剤留去条件および実験結果を下記表2〜4に示
す。
【0184】実施例5 実施例4において、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び多管式コンデンサ[胴部(シェル):内径750mm
×長さ4000mm、伝熱管(チューブ):内径24m
m×485本、伝熱面積:150m2]を備えた外部ジ
ャケット付SUS316製反応槽(内容量:30m3
を反応槽として使用する以外は実施例4と同様にしてコ
ンデンサ内部を目視で点検したところ、ゲル状物の発生
はなかった。さらに1年間、上記バッチ操作を継続した
後にコンデンサ内部を目視で点検したところ、極々微量
のゲル状物の発生しか確認されなかった。
【0185】実施例6 実施例4において、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付
ガラス製反応槽(内容量:30リットル)を反応槽とし
て使用する以外は実施例4と同様にしてコンデンサ内部
を目視で点検したところ、ゲル状物の発生はなかった。
さらに1年間、上記バッチ操作を継続した後にコンデン
サである還流冷却管内部を目視で点検したところ、極々
微量のゲル状物の発生しか確認されなかった。
【0186】実施例7 温度計、攪拌機、生成水分離器および多管式コンデンサ
[胴部(シェル):内径750mm×長さ4000m
m、伝熱管(チューブ):内径24mm×485本、伝
熱面積:150m2]を備えた外部ジャケット付グラス
ライニング反応槽(内容量:30m3)に、メトキシポ
リ(n=25)エチレングリコール16500部、メタ
クリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸1水和物
235部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1
060部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応
を行った。別途、シクロヘキサンの還流開始からエステ
ル化反応終了まで、フェノチアジンを含むシクロヘキサ
ン溶液(A)(シクロヘキサン中のフェノチアジンの濃
度を1000重量ppmにした。)を0.35部/mi
nの速度で、水分離器から反応槽へ循環させる凝縮残液
(主にシクロヘキサン)の一部(B)を20部/min
の速度で、(A)と(B)を混合後、コンデンサ内に設
けられた下向きノズルを通してコンデンサの塔頂へ降ら
した。
【0187】約20時間でエステル化率が100%に達
したのを確認した。そして49%水酸化ナトリウム水溶
液135部と水4890部を加えてパラトルエンスルホ
ン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、シ
クロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン
の留去中、コンデンサの塔頂へハイドロキノン1部を含
む水301部を滴下した。シクロヘキサン留去後、調整
水を添加して80%のエステル化水溶液を得た。以上の
操作を3バッチ繰り返した後コンデンサ内部を点検した
ところ、ゲル状物の発生はなかった。さらに1年間、上
記バッチ操作を継続した後にコンデンサ内部を目視で点
検したところ、極少量のゲル状物が発生しているのが確
認された。これは、上記実施例4のものと1年間で比較
した場合、目視で10倍以上の差が認められた。
【0188】本実施例の反応組成、反応条件、コンデン
サの塔頂へ降らせるゲル化防止剤溶液組成、部分中和条
件、溶剤留去条件および実験結果を下記表2〜4に示
す。
【0189】実施例8 実施例7において、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び多管式コンデンサ[胴部(シェル):内径750mm
×長さ4000mm、伝熱管(チューブ):内径24m
m×485本、伝熱面積:150m2]を備えた外部ジ
ャケット付SUS316製反応槽(内容量:30m3
を反応槽として使用する以外は実施例7と同様にしてコ
ンデンサ内部を目視で点検したところ、ゲル状物の発生
はなかった。さらに1年間、上記バッチ操作を継続した
後にコンデンサ内部を目視で点検したところ、極少量の
ゲル状物が発生しているのが確認された。
【0190】実施例9 実施例7において、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付
ガラス製反応槽(内容量:30リットル)を反応槽とし
て使用する以外は実施例7と同様にしてコンデンサ内部
を目視で点検したところ、ゲル状物の発生はなかった。
さらに1年間、上記バッチ操作を継続した後にコンデン
サである還流冷却管内部を目視で点検したところ、極少
量のゲル状物が発生しているのが確認された。
【0191】実施例10 温度計、攪拌機、水分離器および多管式コンデンサ[胴
部(シェル):内径750mm×長さ4000mm、伝
熱管(チューブ):内径24mm×485本、伝熱面
積:150m2]を備えた外部ジャケット付グラスライ
ニング反応槽(内容量:30m3)に、メトキシポリ
(n=25)エチレングリコール16500部、メタク
リル酸4740部、パラトルエンスルホン酸1水和物2
35部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン10
60部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応を
行った。別途、シクロヘキサンの還流開始からエステル
化反応終了まで、フェノチアジンを含むシクロヘキサン
溶液(A)(シクロヘキサン中のフェノチアジンの濃度
を1000重量ppmにした。)だけを0.35部/m
inの速度でコンデンサ内に設けられた下向きノズルを
通してコンデンサの塔頂へ降らした。
【0192】約20時間でエステル化率が100%に達
したのを確認した。そして49%水酸化ナトリウム水溶
液135部と水4890部を加えてパラトルエンスルホ
ン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、シ
クロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン
の留去中、コンデンサの塔頂へハイドロキノン1部を含
む水301部を滴下した。シクロヘキサン留去後、調整
水を添加して80%のエステル化水溶液を得た。以上の
操作を3バッチ繰り返した後コンデンサ内部を点検した
ところ、ゲル状物の発生はなかった。さらに1年間、上
記バッチ操作を継続した後にコンデンサ内部を目視で点
検したところ、ゲル状物が発生しているのが確認され
た。これは、上記実施例4のものと1年間で比較した場
合、目視で1000倍以上の差が認められた。
【0193】本実施例の反応組成、反応条件、コンデン
サの塔頂へ降らせる重合禁止剤溶液組成、部分中和条
件、溶剤留去条件および実験結果を下記表2〜4に示
す。
【0194】比較例2 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えた外部ジャケット付ガラス製反応槽(内
容量:30リットル)に、メトキシポリ(n=25)エ
チレングリコール16500部、メタクリル酸4740
部、パラトルエンスルホン酸1水和物235部、フェノ
チアジン5部およびシクロヘキサン1060部を仕込
み、反応温度115℃でエステル化反応を行った。な
お、シクロヘキサンの還流開始からエステル化反応終了
まで、ゲル化防止対策は行わず、したがって、凝縮残液
はおろか、ゲル化防止剤溶液も作用させなかった。
【0195】約20時間でエステル化率が100%に達
したのを確認した。そして49%水酸化ナトリウム水溶
液135部と水4890部を加えてパラトルエンスルホ
ン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、シ
クロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン
の留去中、コンデンサの塔頂へハイドロキノン1部を含
む水301部を滴下した。シクロヘキサン留去後、調整
水を添加して80%のエステル化水溶液を得た。以上の
操作を3バッチ繰り返した後コンデンサ内部を点検した
ところ、多量のゲル状物の発生が認められた。
【0196】本比較例の反応組成、反応条件、部分中和
条件、溶剤留去条件および実験結果を下記表2〜4に示
す。
【0197】なお、ゲル状物の観察が容易な比較例2に
おいて、定期的にコンデンサである冷却還流管内部を観
察したところ、ゲル状物の生成は、コンデンサの塔頂部
に多く認められが、さらに、ここで生成したゲル状物が
一部流れ落ちるため、ゲル状物はコンデンサ全体で確認
できた。
【0198】
【表2】
【0199】
【表3】
【0200】
【表4】
【0201】実施例11 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えた外部ジャケット付ガラス製反応槽(内
容量:30リットル)にメトキシポリ(n=25)エチ
レングリコール16500部、メタクリル酸4740
部、パラトルエンスルホン酸水和物235部、フェノチ
アジン5部およびシクロヘキサン1060部を仕込み、
反応温度115℃でエステル化反応を行った。別途、シ
クロヘキサンの還流開始からエステル化反応終了まで、
コンデンサの塔頂へフェノチアジン0.5部を含むシク
ロヘキサン溶液500.5部を滴下した。約20時間で
エステル化率が100%に達したのを確認した。得られ
たエステル化反応液22255部に49%水酸化ナトリ
ウム水溶液135部と水4890部を加えてパラトルエ
ンスルホン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて1
05℃までに昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留
去した。シクロヘキサンの留去中、コンデンサの塔頂へ
ハイドロキノン1部を含む水301部を滴下した。そし
て、シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%の
エステル化物の水溶液を得た。以上の操作を数バッチ繰
り返したあとでコンデンサである還流冷却管内部を点検
したところ、ゲルは認められなかった。
【0202】本実施例のエステル化工程での反応組成、
反応条件およびエステル化率、中和工程での中和条件、
およびシクロヘキサン留去工程でのコンデンサへの滴下
組成、並びに本実施例の操作を数バッチ繰り返した後の
コンデンサの状態につき下記表5に示す。
【0203】実施例12 実施例11において、温度計、攪拌機、生成水分離器お
よび多管式コンデンサ[胴部(シェル):内径750m
m×長さ4000mm、伝熱管(チューブ):内径24
mm×485本、伝熱面積:150m2]を備えた外部
ジャケット付SUS316製反応槽(内容量:30
3)を反応槽として使用する以外は実施例11と同様
にして80%のエステル化物水溶液を得、得られたエス
テル化物水溶液について、反応終了後、コンデンサの内
部を点検したところ、ゲル状物は認められなかった。
【0204】実施例13 実施例11において、温度計、攪拌機、生成水分離器お
よび多管式コンデンサ[胴部(シェル):内径750m
m×長さ4000mm、伝熱管(チューブ):内径24
mm×485本、伝熱面積:150m2]を備えた外部
ジャケット付グラスライニング反応槽(内容量:30m
3)を反応槽として使用する以外は実施例11と同様に
して80%のエステル化物水溶液を得、得られたエステ
ル化物水溶液について、反応終了後、コンデンサの内部
を点検したところ、ゲル状物は認められなかった。
【0205】実施例14 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えた外部ジャケット付ガラス製反応槽(内
容量:30リットル)にメトキシポリ(n=25)エチ
レングリコール16500部、メタクリル酸4740
部、パラトルエンスルホン酸水和物235部、フェノチ
アジン5部およびシクロヘキサン1060部を仕込み、
反応温度115℃でエステル化反応を行った。別途、シ
クロヘキサンの還流開始からエステル化反応終了まで、
コンデンサの塔頂へフェノチアジン0.5部を含むシク
ロヘキサン溶液500.5部を滴下した。約20時間で
エステル化率が100%に達したのを確認した。この時
点で、還流冷却管たるコンデンサの内部を点検したとこ
ろ、ゲル状物は認められなかった。
【0206】次に、得られたエステル化反応液2225
5部に49%水酸化ナトリウム水溶液135部と水48
90部を加えてパラトルエンスルホン酸を中和し、ハイ
ドロキノン8部を加えて105℃までに昇温し、シクロ
ヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサンの留
去中、コンデンサの塔頂へのハイドロキノン/水溶液の
滴下は行わなかった。シクロヘキサン留去後、調整水を
添加して80%のエステル化物の水溶液を得た。以上の
操作を数バッチ繰り返したあとでコンデンサである還流
冷却管内部を点検したところ、多量のゲルが認められ
た。
【0207】本実施例のエステル化工程での反応組成、
反応条件およびエステル化率、中和工程での中和条件、
およびシクロヘキサン留去工程でのコンデンサへの滴下
組成、並びに本比較例の操作を数バッチ繰り返した後の
コンデンサの状態につき下記表5に示す。
【0208】
【表5】
【0209】実施例15 温度計、攪拌機、生成水分離器および多管式コンデンサ
[胴部(シェル):内径750mm×長さ4000m
m、伝熱管(チューブ):内径24mm×485本、伝
熱面積:150m2]を備えた外部ジャケット付グラス
ライニング反応槽(内容量:30m3)に、メトキシポ
リ(n=25)エチレングリコール16500部、メタ
クリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸1水和物
235部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1
060部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応
を行った。別途、シクロヘキサンの還流開始からエステ
ル化反応終了まで、貯蔵タンクからフェノチアジンを含
むシクロヘキサン溶液(ゲル化防止剤溶液(A);シク
ロヘキサン中のフェノチアジンの濃度を1000重量p
pmにした溶液)を0.35部/minの速度で、水分
離器から反応槽へ戻す凝縮残液(主にシクロヘキサン)
の一部(B)を20部/minの速度で、(A)と
(B)を混合後、ゲル化防止剤として、コンデンサ内に
設けられた上向きノズルを通してコンデンサの塔頂へ降
らした。同時に、水分離器から反応槽へ戻す凝縮残液の
一部を、ゲル化防止剤として、10〜15部/minの
速度でスプレーノズルを通して反応槽側の付け根(フラ
ンジ)部分に降らせた。
【0210】約20時間でエステル化率が99%に達し
たのを確認した後、49%水酸化ナトリウム水溶液13
5部と水4890部を加えてパラトルエンスルホン酸を
中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、シクロヘ
キサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサンの留去
中、コンデンサの塔頂へハイドロキノン1部を含む水3
01部を滴下した。シクロヘキサン留去後、調整水を添
加して80%のエステル化水溶液を得た。このようにし
てエステル化反応が終了した後、反応槽内の内容物をポ
ールフィルター(100メッシュ)に通したところ、ポ
ールフィルター上に残っているゲル状物を秤量したとこ
ろ、0.3kgであった。
【0211】次に、以上の操作を一年間繰り返した後で
オーバーヘッドラインの反応槽側の付け根の部分および
コンデンサ内部を点検(目視)したところ、ゲル状物は
認められなかった。この結果により、ゲルの詰まりを防
止するためのコンデンサ内部の洗浄回数(1回/3ヶ月
程度)が、コンデンサ内部にゲル化防止剤を供給しない
場合(少なくとも1回/月)に比べて大幅に減少するこ
とができた。
【0212】本実施例の反応組成、反応条件、オーバー
ヘッドラインへのゲル化防止剤の使用条件、コンデンサ
へのゲル化防止剤の使用条件、ノズル設置条件、部分中
和条件を下記表6〜8に示す。
【0213】実施例16 温度計、攪拌機、生成水分離器および多管式コンデンサ
[胴部(シェル):内径750mm×長さ4000m
m、伝熱管(チューブ):内径24mm×485本、伝
熱面積:150m2]を備えた外部ジャケット付グラス
ライニング反応槽(内容量:30m3)に、メトキシポ
リ(n=25)エチレングリコール16500部、メタ
クリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸1水和物
235部、フェノチアジン5部およびシクロヘキサン1
060部を仕込み、反応温度115℃でエステル化反応
を行った。別途、シクロヘキサンの還流開始からエステ
ル化反応終了まで、貯蔵タンクからフェノチアジンを含
むシクロヘキサン溶液(ゲル化防止剤溶液(A);シク
ロヘキサン中のフェノチアジンの濃度を1000重量p
pmにした溶液)を0.35部/minの速度で、水分
離器から反応槽へ戻す凝縮残液(主にシクロヘキサン)
の一部(B)を20部/minの速度で、(A)と
(B)を混合後、ゲル化防止剤として、コンデンサ内に
設けられた上向きノズルを通してコンデンサの塔頂へ降
らした。ただし、反応槽側の付け根(フランジ)部分に
はゲル化防止剤溶液はなんら作用させなかった。
【0214】約20時間でエステル化率が99%に達し
たのを確認した後、49%水酸化ナトリウム水溶液13
5部と水4890部を加えてパラトルエンスルホン酸を
中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、シクロヘ
キサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサンの留去
中、コンデンサの塔頂へハイドロキノン1部を含む水3
01部を滴下した。シクロヘキサン留去後、調整水を添
加して80%のエステル化水溶液を得た。このようにし
てエステル化反応が終了した後、反応槽内の内容物をポ
ールフィルター(100メッシュ)に通したところ、ポ
ールフィルター上に残っているゲル状物を秤量したとこ
ろ、3kgであった。この結果を上記実施例15の結果
と比較することにより、反応槽側の付け根(フランジ)
部分にゲル化防止剤((A)と(B)との混合液)を作
用させることにより、このフランジ部分でのゲルの形成
が抑制され、ゆえに形成されたゲルが反応槽に落ちて反
応槽内に貯まるのを1/10程度抑制することができた
のではないかと考察した。
【0215】次に、以上の操作を一年間繰り返した後で
オーバーヘッドラインの反応槽側の付け根の部分および
コンデンサ内部を点検(目視)したところ、反応槽側の
付け根の部分には多量のゲルが認められた。コンデンサ
内部にはゲル状物は認められなかった。この結果によ
り、ゲルの詰まりを防止するためのコンデンサ内部の洗
浄回数(1回/3ヶ月程度)が、コンデンサ内部にゲル
化防止剤を供給しない場合(少なくとも1回/月)に比
べて大幅に減少することができた。
【0216】本実施例の反応組成、反応条件、オーバー
ヘッドラインへのゲル化防止剤の使用条件、コンデンサ
へのゲル化防止剤の使用条件、ノズル設置条件、部分中
和条件を下記表6〜8に示す。
【0217】
【表6】
【0218】
【表7】
【0219】
【表8】
【0220】実施例17 温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、温度計、攪
拌機、生成水分離器および還流冷却管(コンデンサ)を
備えた外部ジャケット付ガラス製反応槽(内容量:30
リットル)に、水8200部を仕込み、攪拌下で上記反
応器を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温し
た。次に、上記反応器内に、実施例1で得られた80%
のエステル化物水溶液(1)13100部に3−メルカ
プトプロピオン酸94部を溶解させた溶液を4時間かけ
て滴下すると同時に、過硫酸アンモニウム125部を水
1000部に溶解させた水溶液を5時間かけて滴下し
た。滴下終了後、反応混合液を80℃に1時間維持し
た。さらに、この反応混合液のpHを水酸化ナトリウム
で8になるように調節することにより、ゲルパーミエー
ションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコー
ル換算で重量平均分子量21000の本発明のポリカル
ボン酸(1)を得た。
【0221】このようにして得られたポリカルボン酸
(1)をそのままセメント分散剤として用い、以下の、
モルタル試験方法に従ってセメント組成物(1)を調製
し、フロー値を測定した。結果を下記表9に示す。
【0222】<モルタル試験方法>上記で得られたセメ
ント分散剤[ポリカルボン酸(1)]を含む水240
部、セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋
セメント製)400部及び豊浦産標準砂800部を、モ
ルタルミキサーで混練して、セメント組成物(1)を調
製した。なお、セメント分散剤の添加量は下記表9に示
す。
【0223】次に、このセメント組成物(1)を直径5
5mm、高さ55mmの中空円筒に充填した後、円筒を
垂直に静かに持ち上げ、広がったセメント組成物(1)
の長径と短径を測定し、その平均値をフロー値とした。
【0224】実施例18 実施例1において、メトキシポリ(n=25)エチレン
グリコールの使用量を19430部に、及びメタクリル
酸の使用量を1810部(K値=215)に変更した以
外は、実施例1と同様のエステル化反応を行なったとこ
ろ、約90時間でエステル化率約99%を確認した。次
に、シクロヘキサンを水との共沸で留去した後、調整水
を添加して80%のエステル化物水溶液(2)を得た。
【0225】次に、温度計、攪拌機、生成水分離器およ
び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付
ガラス製反応槽(内容量:30リットル)に、水820
0部を仕込み、攪拌下で上記反応器を窒素置換し、窒素
雰囲気下で80℃まで昇温した。続いて、上記反応器内
に、上記で得られた80%のエステル化物水溶液(2)
13700部に3−メルカプトプロピオン酸58部を溶
解させた溶液を4時間かけて滴下すると同時に、過硫酸
アンモニウム122部を水2300部に溶解させた水溶
液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を
80℃に1時間維持した。さらに、この反応混合液のp
Hを水酸化ナトリウムで8になるように調節することに
より、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる
ポリエチレングリコール換算で重量平均分子量1970
0のポリカルボン酸(2)を得た。
【0226】このようにして得られたポリカルボン酸
(2)をそのままセメント分散剤として用い、実施例1
7と同様にして、モルタル試験方法に従ってセメント組
成物(2)を調製し、フロー値を測定した。結果を下記
表9に示す。
【0227】
【表9】
【0228】表9に示される結果から、K値が好ましい
範囲(40〜200)の上限を超えると、フロー値が顕
著に下がり、ゆえにセメント分散能が減少することが確
認された。
【0229】
【発明の効果】(1) 本発明に係るエステル化物の製
造方法では、留出物に対してゲル化防止剤を作用させる
ことにより、ゲル状物の形成を防止することができ、コ
ンデンサ等の装置や配管経路の閉塞を防止することがで
きるほか、反応生成水を分離除去した留出物を反応系に
還流することによっても得られるエステル化物の品質の
低下を招くこともなく、該エステル化物を用いて製造さ
れるセメント分散剤等の製品の性能及び品質の低下もな
い。
【0230】(2) 特に、ゲル化防止剤を反応生成水
を含む留出物を凝縮させる領域で作用させることで、上
記(1)に示す作用効果がより顕著に得られる。
【0231】(3) 同様に、特に、ゲル化防止剤をコ
ンデンサ(好ましくはコンデンサの塔頂部近傍)内で作
用させることでも、上記(1)に示す作用効果がより顕
著に得られる。
【0232】(4) ゲル化防止剤を反応生成水を共沸
物として留出するために用いる脱水溶剤と同種の溶剤と
混合して加することで、上記(1)〜(3)に記載の作
用効果を奏することができるほか、還流により反応系内
に脱水溶剤およびゲル化防止剤の溶解に使用した溶剤の
双方を分離して脱水溶剤のみを還流することができるよ
うな装置を新たに設けなくともよく、これらを全て還流
して反応系内に戻しても、反応系内から共沸される留出
物の組成に変化がないので、共沸温度にが変動しないの
で反応系内の温度管理が容易であり、その制御系も複雑
化することもない。
【0233】(5) ゲル化防止剤が上記(4)の溶剤
に溶解性を有する際には、ゲル化防止剤を溶剤に溶解さ
せて作用させることができるため、上記(1)〜(4)
に記載の作用効果を奏することができるほか、その取り
扱いが容易である;留出物が凝縮液化されたものに対し
て並流接触等の接触方法により素早く作用させることが
できる;および例えば、ゲル化防止剤を溶剤に溶解させ
た液にガス状の留出物を吹込んでやれば、液状化と同時
にゲル化防止剤を接触させることもできるなど極めて効
率の良く作用させる各種の手法を採用することができる
などの利点がある。
【0234】(6) 原料の1つである式(1)のアル
コールのnが、オキシアルキレン基の平均付加モル数で
あり、2〜300の数を表わすものを使用する場合に
は、上記(1)〜(5)に記載の作用効果を奏すること
ができるほか、エステル化反応により得られるエステル
化物は、ゲル状物などの不純物が効果的に除去されてお
り、これを用いて成るセメント分散剤では、その分散性
能はもとより、スランプ保持性能や減水性能にも優れて
おり、セメント分散剤の主成分である重合体の原料とし
て有用な単量体成分とすることができる点で有利であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエステル化物の製造方法に用い
られる代表的な装置構成の概略図である。
【図2】 本発明の第二の実施態様に係る代表的なゲル
化防止剤供給機構の装置構成を含めた本発明の製造装置
の一実施形態を表す概略説明図である。
【図3】 コンデンサ直前のオーバーヘッドライン内に
ノズルを設置した様子を表す概略説明図である。
【図4】 保存部を兼ね備えるた水分離器の概略説明図
である。
【符号の説明】
101…反応槽、 102、150…ジャケット、 103…アルコール用の原料貯蔵タンク、 105…(メタ)アクリル酸用の原料貯蔵タンク、 107…触媒貯蔵タンク、 109…重合禁止剤貯蔵タンク、 111…中和剤貯蔵タンク、 113、115、117、119、121、123、129、137、139、141、145、149、15
3、157…配管、 116…ポンプ、 125…コンデンサ、 126…噴霧ノズル、 127…水分離器、 131…仕切板、 133、134…水分離器内部の室、 135…反応生成水の処理タンク、 142…循環ポンプ、 143…脱水溶剤貯蔵タンク、 147…ゲル化防止剤貯蔵タンク、 151…循環経路、 155…真空ポンプ、 501…反応槽、 502…ジャケット、 503、520〜525…配管、 505…コンデンサ、 506…ノズル部、 507…水分離器、 508…保存タンク、 509…重合禁止剤溶液貯蔵タンク、 510〜513…ポンプ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08F 290/06 C08F 290/06 299/02 299/02 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 65/00 - 65/48 C07C 67/08,69/54 C08F 290/02,290/06,20/28 C04B 24/26

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1): 【化1】 (ただし、R1は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表
    わし、R2Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン
    基を表わし、この際、各R2Oの繰り返し単位は同一で
    あってもあるいは異なっていてもよく、およびR2Oが
    2種以上の混合物の形態である場合には各R2Oの繰り
    返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダ
    ム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキ
    レン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数であ
    る)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とのエ
    ステル化反応によるエステル化物の製造方法において、
    エステル化反応時に生成する反応生成水を留出させ、該
    反応生成水を含む留出物に対してゲル化防止剤を作用さ
    せることを特徴とするエステル化物の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記ゲル化防止剤は反応生成水を含む留
    出物を凝縮させる領域で作用させる、請求項1に記載の
    方法。
  3. 【請求項3】 前記ゲル化防止剤はコンデンサ内で作用
    させる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記ゲル化防止剤は留出物を凝縮させる
    コンデンサの塔頂近傍に作用させる、請求項3に記載の
    方法。
  5. 【請求項5】 前記エステル化反応を脱水溶剤中で行い
    かつゲル化防止剤を脱水溶剤と同種の溶剤と混合した形
    態で作用させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    方法。
  6. 【請求項6】 前記ゲル化防止剤は溶剤溶解性を有す
    る、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記式(1)において、nはオキシアル
    キレン基の平均付加モル数を表わし、2〜300の数で
    ある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 ゲル化防止剤をエステル化反応時に生成
    する反応生成水を含む留出物に対して作用させながら、
    下記式(1): 【化2】 (ただし、R1は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表
    わし、R2Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン
    基を表わし、この際、各R2Oの繰り返し単位は同一で
    あってもあるいは異なっていてもよく、およびR2Oが
    2種以上の混合物の形態である場合には各R2Oの繰り
    返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダ
    ム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキ
    レン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数であ
    る)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールを
    (メタ)アクリル酸とエステル化反応することにより、
    アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アク
    リル酸系単量体(a)を得、該アルコキシポリアルキレ
    ングリコールモノ(メタ)アクリル酸系単量体(a)5
    〜98重量%、下記式(2): 【化3】 (ただし、R3は水素もしくはメチル基を表わし、M1
    水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機
    アミン基を表わす)で示される(メタ)アクリル酸系単
    量体(b)95〜2重量%、およびこれらの単量体と共
    重合可能な他の単量体(c)0〜50重量%(但し、
    (a)、(b)および(c)の合計は100重量%)を
    共重合することを特徴とする、セメント分散剤用ポリカ
    ルボン酸系共重合体の製造方法。
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