JP3938321B2 - 化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダー - Google Patents
化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダー Download PDFInfo
- Publication number
- JP3938321B2 JP3938321B2 JP2002100428A JP2002100428A JP3938321B2 JP 3938321 B2 JP3938321 B2 JP 3938321B2 JP 2002100428 A JP2002100428 A JP 2002100428A JP 2002100428 A JP2002100428 A JP 2002100428A JP 3938321 B2 JP3938321 B2 JP 3938321B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- raw material
- reaction
- acid
- charging nozzle
- material charging
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Landscapes
- Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
- Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)
- Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)
- Detergent Compositions (AREA)
- Polymerisation Methods In General (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダーに関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を反応させて化学反応物質を製造する方法は、不飽和二重結合の重合反応による重合体の製造や、重合体等の製造原料となり得る不飽和二重結合を有する化学反応物質の製造に用いられ、工業的に有用な化学品を製造する方法として、様々な工業分野に適応されている。例えば、セメント添加剤(セメント分散剤)や粉末洗剤用ビルダー、液体洗剤用ビルダー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク等の顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、石炭・水スラリー(CWM)用分散剤、増粘剤等の分散剤やその他の化学製品を製造するために用いられている。
【0003】
このような製造方法では、工業的に効率的かつ大量に生産するために、例えば、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入し、反応させることにより化学反応物質が製造されることになる。しかしながら、不飽和結合を有する反応性物質を含む液状原料等の原料物質を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入する場合には、原料投入ノズル内に原料物質が残存することにより、原料投入ノズルが固化物及び/又はゲル化物により閉塞したり、ゲル化物が反応系内に混入したりする不具合が生じるという問題があった。
【0004】
このように、原料投入ノズルがゲル化物により閉塞すると、原料を反応槽内にフィードすることができなくなることから、製造を適切に行うことができなくなるとともに、生成したゲル化物が反応系内に混入する不具合も生じさせる。また、ゲル化物が反応系内に混入すると、安定した品質の化学反応物質を製造することが困難となるうえ、更に製造された化学反応物質の移送工程及びフィード工程において、ゲル化物が詰まることによりポンプ停止等の製造設備のトラブルが生じ、このようなトラブルによっても安定した生産を行うことが困難となる。従って、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を用いて、品質の優れた化学反応物質を工業的に安定して製造するために工夫する余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明は、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入して化学反応物質を製造する際に、原料投入ノズル内での固化やゲル化及びそれに伴う閉塞を防止すると共に、ゲル化物が反応系内に混入することを防止し、しかも、ゲル化物により製造工程に不具合をきたすことを抑制して、安定した品質の化学反応物質を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入して化学反応物質を製造する方法を検討するうち、(1)不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を用いて反応温度を50℃以上として反応する場合、(2)ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を用いる場合、(3)カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を用いる場合、(4)カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料を用いる場合、原料投入ノズル内に残存した原料物質からゲル化物が形成されることにまず着目し、このゲル化物により原料投入ノズルが閉塞すると共に反応系内に混入し、製品の品質が低下したり、製造工程に不具合をきたしたりすることに着目した。このような場合に、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含むことにより、上記課題をみごとに解決することができることを見いだした。また、このような工程により原料投入ノズル内から除去される物質が、ポリアルキレングリコール(III)であることが本発明の作用効果を発揮するうえで好適なことを見いだすと共に、ガス状物質、水、及び、原料投入ノズルから投入した当該物質以外の仕込み原料のうちいずれか1つ又は2つ以上を適宜用いることにより、原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すと、原料投入ノズル内でゲル化物が形成されることを効率よく防止することができることを見いだした。更に、このような製造方法が工業的に有用な化学品を安定した品質で製造するために有効であり、ポリカルボン酸の製造に適用し、該ポリカルボン酸をセメント添加剤、分散剤、粉末又は液体洗剤用ビルダーに適用すると特に有効であることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入し、50℃以上の反応温度で反応させて化学反応物質を製造する方法であって、上記化学反応物質の製造方法は、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含む化学反応物質の製造方法である。
【0008】
本発明はまた、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を、反応槽中において共重合させてポリカルボン酸を含む化学反応物質を製造する方法であって、上記ポリアルキレングリコール系単量体(I)及び上記カルボン酸系単量体(II)は、個別に、又は、混合溶液として反応槽に備えられた原料投入ノズルから上記反応槽中に投入され、上記化学反応物質の製造方法は、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含む化学反応物質の製造方法でもある。
【0009】
本発明はまた、カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を、反応槽中において重合させてポリカルボン酸を含む化学反応物質を製造する方法であって、上記カルポン酸系単量体(II)は、反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入され、上記化学反応物質の製造方法は、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含む化学反応物質の製造方法でもある。
【0010】
本発明はまた、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料を、反応槽中においてエステル化させてポリアルキレングリコール系単量体(I)を含む化学反応物質を製造する方法であって、上記カルボン酸系単量体(II)及び上記ポリアルキレングリコール(III)は、個別に、又は、混合溶液として反応槽に備えられた原料投入ノズルから上記反応槽中に投入され、上記化学反応物質の製造方法は、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含む化学反応物質の製造方法でもある。
【0011】
本発明はまた、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合させてなるポリカルボン酸であって、上記化学反応物質の製造方法により製造されてなるポリカルボン酸でもある。
【0012】
本発明はまた、カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を重合させてなるポリカルボン酸であって、上記化学反応物質の製造方法により製造されてなるポリカルボン酸でもある。
【0013】
本発明はまた、上記ポリカルボン酸を含んでなるセメント添加剤でもある。
本発明はまた、上記ポリカルボン酸を含んでなる分散剤でもある。
本発明は更に、上記ポリカルボン酸を含んでなる粉末洗剤用ビルダーでもある。本発明はそして、上記ポリカルボン酸を含んでなる液体洗剤用ビルダーでもある。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明の化学反応物質の製造方法では、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を用いて化学反応物質を製造することになる。不飽和二重結合を有する反応性物質としては、不飽和二重結合が反応することに起因してゲル化物を形成する作用を有する化合物や重合体であれば特に限定されるものではない。また、液状原料とは、反応槽への仕込み原料の1つであり、液状であればその粘度等の性状は特に限定されるものではない。例えば、均一なものでも不均一なものでもよい。また、このような液状原料としては、(1)必須成分として不飽和二重結合を有する反応性物質が含まれる場合と、(2)不飽和二重結合を有する反応性物質は含まないが、不飽和二重結合を有する反応性物質との相溶性が良く、反応中に揮発した不飽和二重結合を有する反応性物質を吸収する物質である場合とがある。前者の場合にはその他の成分を含んでいてもいなくてもよいが、その他の成分を含む場合には、従来の製造方法ではゲル化物を形成して不具合が発生する程度に不飽和二重結合を有する反応性物質が含まれるときに本発明の作用効果が充分に発揮されることになる。更に、化学反応物質とは、液状原料を含む製造原料により製造される化学製品(いわゆる中間品を含む)を意味する。
【0015】
本発明の化学反応物質の製造方法では、上記液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入し、化学反応させて化学反応物質を製造することになるが、(1)50℃以上の反応温度で反応させる場合、(2)液状原料がポリアルキレングリコール系単量体(I)を含む物質及びカルボン酸系単量体(II)を含む物質、又は、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む物質であり、それらを共重合させてポリカルボン酸を含む化学反応物質を製造する場合、(3)液状原料がカルボン酸系単量体(II)を含む物質であり、これを重合させてポリカルボン酸を含む化学反応物質を製造する場合、(4)液状原料が、カルボン酸系単量体(II)を含む物質及びポリアルキレングリコール(III)を含む物質、又は、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む物質であり、それらをエステル化反応させてポリアルキレングリコール系単量体(I)を含む化学反応物質を製造する場合、に適用されることになる。これらの原料はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書中において、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とは、上記(4)の場合ではエステル化反応により生成するエステルを意味するが、上記(2)の場合で用いるポリアルキレングリコール系単量体(I)はエステルに限定されるものではない。
本発明では、原料投入ノズル内でのゲル状物の形成を抑制するという作用効果が最も発揮できることから、上記工程により原料投入ノズル内から除去される物質が、ポリアルキレングリコール(III)であることが好適である。
【0016】
従来では、上記(1)の場合、50℃以上の反応温度で反応させると、反応槽に備えられた原料投入ノズルに熱がかかり、原料投入ノズル内に残液として残る液状原料中の不飽和二重結合を有する反応性物質が重合することによりゲル化物を形成することになり、上記(2)の場合、原料投入ノズル内に残液として残る液状原料中のポリアルキレングリコール系単量体(I)及びカルボン酸系単量体(II)の重合性に起因してゲル化物を形成することになり、上記(3)の場合、原料投入ノズル内に残液として残る液状原料中のカルボン酸系単量体(II)の重合性に起因してゲル化物を形成することになり、上記(4)の場合、粘度の高いポリアルキレングリコール(III)が原料投入ノズル内に付着することから、付着した残液中に揮発したカルボン酸系単量体(II)が吸収され、該カルボン酸系単量体(II)の重合性に起因してゲル化物を形成するケースと、原料投入ノズル内に残液として残る液状原料中のカルボン酸系単量体(II)の重合性に起因してゲル化物を形成するケースとがある。なお、本発明では、上記(2)、(3)及び(4)の場合についても、上記(1)の場合と同様の反応条件すなわち50℃以上の反応温度で反応させる場合に好適に適用されることになる。
【0017】
上記ポリアルキレングリコール系単量体(I)としては、下記一般式(1);
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、R1は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R2Oは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、R2Oが複数ある場合には、各R2Oの繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよく、R2Oが2種以上の場合には、各R2Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、特に限定されるものではない。R3は、水素原子又はメチル基を表す。nは、R2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数である。)で表されるアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物や、下記一般式(2);
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、R4は、炭素数2〜5のアルケニル基を表す。R2O及びnは、上記と同様である。)で表されるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルであることが好適である。
【0022】
上記ポリアルキレングリコール(III)としては、下記一般式(3);
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、R1、R2O及びnは、上記と同様である。)で表されるポリアルキレングリコールであることが好適である。
上記一般式において、R1としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基等のアルキルフェニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基が好適である。これらの中でも、炭素数1〜18の直鎖又は枝分かれ鎖のアルキル基及びアリール基とすることが好ましい。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基である。また、R2Oとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基が好適であり、これらの中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
【0025】
上記nの範囲としては、例えば、セメント添加剤用重合体の製造原料として用いるときには、一般式(1)及び(3)の場合、2以上とすることが好ましく、また、300以下とすることが好ましい。より好ましくは、5以上であり、また、200以下であり、更に好ましくは、8以上であり、また、150以下である。また、一般式(2)の場合、15以上とすることが好ましく、また、300以下とすることが好ましい。より好ましくは、20以上であり、また、200以下であり、更に好ましくは、25以上であり、また、150以下である。増粘剤等として用いるときには、一般式(1)及び(3)の場合、10以上とすることが好ましく、また、250以下とすることが好ましい。より好ましくは、50以上であり、また、200以下である。また、一般式(2)の場合、15以上とすることが好ましく、また、250以下とすることが好ましい。より好ましくは、50以上であり、また、200以下である。なお、平均付加モル数とは、当該化合物1モル中における当該繰り返し単位のモル数の平均値を意味する。
【0026】
上記(3)の場合、すなわちカルボン酸系単量体(II)を必須とする反応性物質とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料を後述するようにエステル化反応させる場合、nが0のときには、水との溶解性や沸点の点から、上記R1やR4は、炭素数4以上の炭化水素基であることが好ましい。この場合には、低沸点のため生成水と共に蒸発して生成水中に溶解することにより、当該原料の一部が反応系外に留去され、目的とする化学反応物質の収率が低下することから、これを防止するためである。
【0027】
上記カルボン酸系単量体(II)としては、下記一般式(4);
【0028】
【化4】
【0029】
(式中、R5及びR6は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニア基又は有機アミノ基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸系単量体や、下記一般式(5);
【0030】
【化5】
【0031】
(式中、Xは、−OM2又は−Y−(R7O)q−R8を表す。M1及びM2は、同一若しくは異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニア基又は有機アミノ基を表す。−Y−は、−O−又は−NH−を表す。R7Oは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、R7Oが複数ある場合には、各R7Oの繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよく、R7Oが2種以上の場合には、各R7Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、特に限定されるものではない。R8は、水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、アルキルフェニル基若しくはヒドロキシルアルキル基(アミノアルキル基、アルキルフェニル基、ヒドロキシルアルキル基中のアルキル基の炭素数は、1〜30である)を表す。qは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜300の数を表す。但し、M1が結合している酸素原子と、Xが結合している炭素原子とが結合して酸無水物基(−CO−O−CO−)を構成しているものを含む。この場合、M1及びXは、存在しないことになる。)で表されるマレイン酸系単量体であることが好適である。
【0032】
本発明の化学反応物質の製造方法は、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含むことになる。この工程では、原料投入ノズル内に残った残液によりゲル化物が形成することに起因する不具合の発生が防止される程度に原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去することになるが、残液の全部が取り除かれる程度に除去されることが好ましい。残液の除去方法としては、原料投入ノズル内から残液が取り除かれる限り特に限定されるものではない。本発明では、(1)上記工程が、ガス状物質を用いて原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すことにより行われること、(2)上記工程が、水を用いて原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すことにより行われること、(3)上記工程が、原料投入ノズルから投入した当該物質以外の仕込み原料を用いて原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すことにより行われること、のいずれか1つ又は2つ以上を組み合わせることにより、液状原料の種類や反応形態等を考慮して適宜選択して行われることが好ましい。上記(1)において、ガス状物質としてはAir(空気)、N2(窒素)とAir(空気)の混合ガス、N2(窒素)ガス等の不活性ガスが好適であるが、中でもN2ガス等の不活性ガスが好ましい。
これら(1)〜(3)では、残液の少なくとも一部が原料投入ノズルから反応槽内に押し出され、製造原料として用いられることになる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について以下に説明する。これらの実施形態は、本発明の好ましい実施形態の例示であり、本発明ではこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0034】
本発明における原料投入ノズル内の残液の除去方法に関する上記の好ましい形態について概念図を用いて説明する。
図1において、(1)では、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料を用いてエステル化反応させてポリアルキレングリコール系単量体(I)を含む化学反応物質を製造する場合の実施形態における反応槽の断面概念図を示し、(2)及び(3)では、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を用いて共重合させてポリカルボン酸を含む化学反応物質を製造する実施形態における反応槽の断面概念図を示している。
【0035】
これらの仕込み原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルを用いて反応槽中に投入することを概念的に示している。この場合、1つの原料投入ノズルを用いて投入してもよく、2つ以上の原料投入ノズルを用いて投入してもよい。図1の(1)では、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを個別に原料投入ノズルから反応槽中に投入し、(2)では、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを混合溶液として、(3)では、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを個別に原料投入ノズルから反応槽中に投入することが図示されている。なお、これらの実施形態における反応方法等については後に詳述する。
【0036】
図1において、各仕込み原料を原料投入ノズルから反応槽中に投入した後に原料投入ノズル内の残液を除去する方法としては、該原料物質がカルボン酸系単量体(II)又はカルボン酸系単量体(II)を含む物質である場合には、ガス状物質で原料投入ノズル内をパージする方法が好ましい。また、該原料物質がポリアルキレングリコール(III)又はポリアルキレングリコール(III)を含む物質である場合には、シクロヘキサン、キシレン等の脱水溶剤やアクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸系単量体(II)でパージすることが好ましく、カルボン酸系単量体(II)でパージする場合には、更にガス状物質で原料投入ノズル内をパージすることが好ましい。また、該原料物質がポリアルキレングリコール系単量体(I)又はポリアルキレングリコール系単量体(I)を含む物質である場合には、PW(Pure Waterの略称;水)若しくはガス状物質で原料投入ノズルをパージする方法が好ましい。更に、該混合溶液がポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)を含む物質である場合にも、PWで原料投入ノズルをパージする方法が好ましく、該ポリアルキレングリコール系単量体(I)がポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルの場合には、ガス状物質で原料投入ノズル内をパージすることが好ましい。
【0037】
上記図1(1)の場合では、ポリアルキレングリコール(III)を原料投入ノズル内から除去するには、PWでもパージは可能であるが、後述するように次の工程が脱水工程であることから、多量のPWを投入しないことが好ましい。また、ガス状物質でのブローでもある程度効果はあるが、ポリアルキレングリコール(III)が粘性物質であるために、管の壁面部分の残液を完全にパージしきることができないおそれがある。このため、ガス状物質でのブローでは繰り返し行うことが好ましい。
【0038】
上記図1(3)において、カルボン酸系単量体(II)がMAah(Maleicanhydrideの略称;無水マレイン酸)である場合、原料投入ノズル内のMAahを含む残液を除去する際にPWを用いると、MAahとPWとの反応によりマレイン酸が生成して固化し、原料投入ノズルを閉塞してしまうことから、PWで原料投入ノズル内をパージしないことが好ましい。この場合、ポリアルキレングリコール系単量体(I)でパージしてもハーフエステル等の不純物を生成する原因となることから、このような仕込み原料で原料投入ノズル内をパージしないことが好ましい。
【0039】
図2(1)〜(3)では、上記図1の場合の原料投入ノズル構造とパージ手順についての好ましい実施形態に関し、反応槽の原料投入ノズル付近の断面概念図を示している。
図2(1)では、図1(1)で粘性の高いポリアルキレングリコール(III)を用いる実施形態の好ましい場合を示し、バルブ1及び2を開けポリアルキレングリコール(III)を投入し、設定量投入後バルブ1を閉め、バルブ3及び4を開けカルボン酸系単量体(II)を投入して原料投入ノズル内に残るポリアルキレングリコール(III)を反応槽内に押し出し、設定量投入後バルブ4を閉め、バルブ5を開けてガス状物質をブローしてノズル内に残るカルボン酸系単量体(II)を反応槽内に押出し、バルブ2、3及び5を閉めるという操作手順により行われることになる。なお、カルボン酸系単量体(II)のかわりに脱水溶剤を用いてパージを行う場合には、ガス状物質でブローすることは不要である。
【0040】
図2(1)では、ポリアルキレングリコール(III)を原料投入ノズルにより反応槽内に投入する際に原料投入ノズル内に残るポリアルキレングリコール(III)の状態を拡大断面概念図により示している。ポリアルキレングリコール(III)のうち粘性が高いものを用いる場合では、このように原料投入ノズル内の壁面に厚く付着して残ることになり、その中に反応中に揮発したカルボン酸系単量体(II)が吸収されて重合し、ゲル状物を形成することになる。本発明では上述したように除去されるため、ゲル状物を形成して原料投入ノズルが閉塞する等の工程異常をきたしたり、化学反応物質の品質を低下させたりすることが解消されることになる。
【0041】
図2(2)では、図1(2)の実施形態の好ましい場合を示し、バルブ1及び2を開けポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)を含む混合溶液を投入し、設定量投入後バルブ1を閉め、バルブ3を開けPWを投入して原料投入ノズル内に残るポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)を含む混合溶液を反応槽内に押出し、バルブ2及び3を閉めるという操作手順により行われることになる。
【0042】
図2(3)では、図1(1)で粘性の低いポリアルキレングリコール(III)を用いる実施形態、並びに、図1(3)の実施形態の好ましい場合を示し、バルブ1及び2を開け原料であるポリアルキレングリコール(III)もしくはカルボン酸系単量体(II)もしくはポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル等を投入し、設定量投入後バルブ1を閉め、バルブ3を開けてガス状物質をブローして原料投入ノズル内に残る原料を反応槽内に押出し、バルブ2及び3を閉めるという操作手順により行われることになる。
【0043】
図2(1)〜(3)において、液状原料を反応槽内に投入する原料投入ノズルのノズル径としては、反応槽が10〜30m3程度の場合には、5mm以上とすることが好ましく、また、60mm以下とすることが好ましく、投入量、投入時間により最適な径のノズルが使用される。また、反応槽における原料投入ノズルの設置形態としては、原料投入ノズルの先端が反応槽内に突出するように設置されることが好ましい。原料投入ノズルの先端が反応槽内に突出していない場合、すなわち原料投入ノズルの先端が反応槽内の壁面に位置する場合には、液ダレが生じ、その結果、液状原料が反応槽内の壁面に付着して残り、ゲル化物を生じるおそれがある。従って、原料投入ノズルの先端位置が反応槽の壁面から離れた位置となるように原料投入ノズルの先端を反応槽内に突出させて設置することにより、液ダレが生じることをなくしてより確実にゲル化物が反応系内に混入することを防止することができることになる。
【0044】
本発明の化学反応物質の製造方法において、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料をエステル化反応する実施形態について説明する。
本発明におけるエステル化反応を行う際には、脱水反応工程が行われることになる。このような脱水反応工程では、例えば、反応槽、コンデンサ及び該反応槽と該コンデンサとを接続する連結管を必須とする脱水反応装置と、該コンデンサと供給管により接続された水分離器とを用いて行われる。このような脱水反応装置を用いて、反応槽により脱水反応を行いつつ、コンデンサと水分離器とを用いて蒸留操作を行うことになる。すなわち脱水反応工程では、脱水反応が化学平衡となる場合には、反応によって生成される反応生成水を反応槽から取り除くと反応が進行することになり、このような工程では、(1)反応槽中で生成する反応生成水を取り除きやすくするため、反応液に脱水溶媒を混合し、該脱水溶媒と生成水とを共沸させることにより気化された留出物を生じさせる操作、(2)該留出物が反応槽とコンデンサとを接続する連結管を通過してコンデンサに入り、該コンデンサ中で留出物を凝縮液化させる操作、(3)凝縮液化された留出物をコンデンサに接続された水分離器中で脱水溶媒と生成水とに分離する操作、(4)分離された脱水溶媒を反応槽中に還流させる操作、等の操作が行われることになる。
【0045】
上記反応槽とは、反応容器や、反応器、反応釜等と同じ意味内容で用いられるものであって、エステル化反応を行うことができる容器であればよい。反応槽の形状は、特に限定されるものではない。多角型、円筒型等があるが、攪拌効率、取扱い性、汎用性等の点から円筒型が好ましい。また邪魔板の有無は問わない。反応槽の容積としては、例えば、通常の工業的な規模で製造する場合には、1m3以上であることが好ましく、また、50m3以下であることが好ましい。より好ましくは、5m3以上であり、また、40m3以下である。このような反応槽の内部の材質としては、公知の材質が使用できるが、SUS製が好適であり、好ましくは、耐蝕性の点から、SUS304、SUS316、SUS316L、より好ましくは、SUS316、SUS316Lが好適である。また、反応槽の内部にグラスライニング加工等が施されて反応原料及び生成物に対して不活性なものとしてもよい。このような反応槽は、通常では脱水反応を均一に効率よく行うため攪拌機が備えられている。攪拌機は特に限定されるものではない。攪拌機は通常、電動モーター、軸、攪拌機から構成されるがその攪拌翼も形状を問わない。攪拌機としては、デスクタービン、ファンタービン、わん曲ファンタービン、矢羽根タービン、多段ファンタービン翼、ファウドラー翼、ブルマージン型、角度付き羽根、プロペラ型、多段翼、アンカー型、ゲート型、二重リボン翼、スクリュー翼、マックスブレンド翼が好適であり、なかでも多段ファンタービン翼、ファウドラー翼が汎用性の点で好ましい。
【0046】
上記コンデンサとは、反応槽から生じる留出物を凝縮液化させる装置であり、該凝縮液化は、冷却液である管外流体と留出物とを熱交換させることにより行われる。このようなコンデンサの材質としては、SUS304、SUS316、SUS316L等のSUS製や炭素鋼(CS)等、公知のものが使用できる。コンデンサ内でのゲル状物の発生をより低減するために、内面を鏡面仕上げやグラスライニング加工されたコンデンサを使用できるが、加工やメンテナンスにかかるコストの点から、SUS304、SUS316、SUS316L、好ましくは、SUS316、SUS316L等のSUS製のコンデンサを用いることが好ましい。
【0047】
上記コンデンサの伝熱面積としては、反応槽の容積等によって異なるが、例えば、反応槽30m3では、50m2以上とすることが好ましく、また、500m2以下とすることが好ましい。より好ましくは、100m2以上であり、また、200m2以下である。このようなコンデンサに使用される冷却媒体としては、水やオイルが好適である。
【0048】
上記水分離器の容積としては、反応槽の容積や留出物の留出量等によって異なるが、例えば、反応槽30m3では、1m3以上とすることが好ましく、また、20m3以下とすることが好ましい。より好ましくは、3m3以上であり、また、10m3以下である。
【0049】
上記脱水反応工程において用いられる仕込み原料は、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料を必須とするものであるが、付加的にその他の成分を含んでいても含んでいなくてもよい。その他の成分を含む場合には、必須の成分を主成分として含むことが好ましい。このような脱水反応工程では、上記の必須成分によりエステル化反応が進行し、化学反応物質としてエステルを生成することになる。本明細書中、上記のエステルをエステル化物ともいう。
【0050】
上記エステル化反応では、(メタ)アクリル酸と共に、その他のカルボキシル基を有する不飽和単量体を用いることができる。カルボキシル基を有する不飽和単量体とは、少なくともカルボキシル基と不飽和結合を有する単量体である。具体的には、クロトン酸、チグリン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、エライジン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記エステル化反応においては、触媒の存在下で反応を行うことが好ましく、酸触媒が好適であり、反応を速やかに進行させることができる。このような酸触媒としては、水和物及び/又は水溶液の形態で用いてもよく、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion(商品名、デュポン社製)」レジン、「Amberlyst 15(商品名)」レジン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、塩酸が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記酸触媒の中でも、後述する脱水溶媒と水との共沸温度や反応温度等の点から、常圧(1013hPa)における沸点が高いもの、具体的には、常圧における沸点が150℃以上であるものが好ましい。より好ましくは、200℃以上である。このような酸触媒としては、硫酸(常圧における沸点:317℃)、パラトルエンスルホン酸(沸点:185〜187℃/13.3Pa(0.1mmHg))、パラトルエンスルホン酸水和物、メタンスルホン酸(沸点:167℃/1333.2Pa(10mmHg))が好適である。これらの中でも、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物を用いることが好適である。
【0053】
上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒作用を有効に発現することができる範囲であればよいが、0.4ミリ当量/g以下とすることが好ましい。0.4ミリ当量/gを超えると、エステル化反応時に反応系内で形成されるジエステルの量が増加し、それを用いてセメント添加剤用重合体を合成する場合ではセメント分散能が低下するおそれがある。より好ましくは、0.36ミリ当量/g以下であり、また、0.01ミリ当量/g以上であり、更に好ましくは、0.32ミリ当量/g以下であり、また、0.05ミリ当量/g以上である。なお、酸触媒の使用量(ミリ当量/g)とは、反応に使用した酸触媒のH+の当量数(ミリ当量)を、反応原料の合計仕込み量(g)で割った値で表され、具体的には、下記式により算出される値を意味する。
【0054】
【数1】
【0055】
上記酸触媒の使用量としてはまた、各種の化学製品用途に適用される重合体の製造原料となるエステル化物の有用性や、このような適用用途に要求される基本性能である分散性能等に悪影響を及ぼすことになるゲル状物発生の防止・抑制の点から、反応原料の合計質量に対する酸触媒中の酸の質量の比をX(質量%)とし、酸触媒中の水和物及び/又は水溶液として存在する水分の質量の比をY(質量%)とした場合に、0<Y<1.81X−1.62
の関係式を満足することが好ましい。
【0056】
上記関係式について具体例を挙げて説明すれば、例えば、パラトルエンスルホン酸一水和物を例にとると、反応原料の合計質量に対するパラトルエンスルホン酸の質量の比がX(質量%)であり、反応原料の合計質量に対する一水和物として存在する水分の質量の比がY(質量%)であるのであって、決して、酸触媒以外の酸成分として、例えば、原料の(メタ)アクリル酸等や水分すなわちエステル化反応により生ずる反応生成水等は、上記XやYの対象物とはなり得ない。
【0057】
上記酸触媒の使用量が上記関係式を満足しない場合には、例えば、Yが0であると、酸触媒中に水和物及び/又は水溶液として存在する水分が存在しないこととなり、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量が増加し、それらを用いてセメント添加剤用重合体等を合成する場合の用途性能として、例えば、セメント分散能等が低下するおそれがある。また、Y≧1.81X−1.62であると、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量が増加し、上記と同様となる。
上記酸触媒の反応系への添加方法としては、一括、連続又は順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応槽に、反応原料と共に一括で仕込むことが好ましい。
【0058】
上記エステル化反応は、重合禁止剤の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応原料中の不飽和カルボン酸とその生成物であるエステル化物の重合を防止することできる。このような重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の点から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンを用いることが好ましい。これらは、脱水反応工程においても溶剤留去工程においても極めて有効に重合禁止能を発揮することができる点から極めて有用である。
【0059】
上記重合禁止剤の使用量としては、製造原料であるアルコール及び酸の合計仕込み量を100質量%とすると、0.001質量%以上とすることが好ましく、また、1質量%以下とすることが好ましい。0.001質量%未満であると、重合禁止能の発現が充分でなく、仕込み原料や生成物の重合を有効に防止しにくくなり、1質量%を超えると、エステル化物中に残留する重合禁止剤量が増えるため、品質及び性能が低下するおそれがあり、また、過剰に添加することに見合う効果も得られず、経済的な面から不利となるおそれがある。より好ましくは0.001質量%以上であり、また、0.1質量%以下である。
【0060】
上記エステル化反応においては、脱水溶媒の存在下で脱水反応操作を行うことにより、反応系外に生成水と脱水溶媒とを共沸させ、凝縮液化して生成水を分離除去させながら還流させることにより行うことができる。これにより、エステル化反応で生成する反応生成水を効率よく共沸できる。このような脱水溶媒としては、水と共沸する溶媒であればよく、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、イソプロピルエーテルが好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水との共沸温度が150℃以下であるものが好ましく、60〜90℃であるものがより好ましい。このような脱水溶媒として具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタンが好適である。水との共沸温度が150℃を超えると、反応時の反応系内の温度管理や留出物の凝縮液化処理等の制御等を含む取扱い性が低下するおそれがある。
【0061】
上記脱水溶媒を用いる脱水反応操作において、脱水溶媒の使用量としては、製造原料であるアルコール及び酸の合計仕込量を100質量%とすると、1質量%以上とすることが好ましく、また、100質量%以下とすることが好ましい。100質量%を超えると、過剰に添加することに見合う効果が得られず、また、反応温度を一定に維持するために多くの熱量が必要となり、経済的な面から不利となるおそれがある。より好ましくは、2質量%以上であり、また、50質量%以下である。
【0062】
上記脱水反応工程において、エステル化反応は、回分式や連続式いずれの反応操作方法によっても行い得るが、回分式で行うことが好ましい。また、反応条件としては、反応が円滑に進行する条件であればよいが、反応温度としては、30℃以上とすることが好ましく、また、140℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、60℃以上であり、また、130℃以下であり、更に好ましくは、90℃以上であり、また、120℃以下であり、最も好ましくは、100℃以上であり、また、120℃以下である。30℃未満であると、脱水溶媒の還流が遅くなり、脱水に時間がかかる他、反応が進行しにくくなるおそれがあり、140℃を超えると、仕込み原料の一部が分解することにより、エステル化物により得られる重合体において、セメント分散性能等の各種用途における分散性能や増粘特性の低下や、反応原料の重合、留出物への反応原料の混入量の増加、エステル化物の性能及び品質の劣化等が生じるおそれがある。
【0063】
上記反応条件において、反応時間としては、後述するように反応率が70%以上に達するまでとすることが好ましい。より好ましくは、80%以上に達するまで、更により好ましくは、98%以上に達するまでである。通常では、1〜100時間、好ましくは3〜60時間である。また、反応圧力としては、常圧又は減圧下のいずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。
【0064】
上記エステル化反応の反応率としては、70%以上となるように設定することが好ましい。70%未満であると、製造されるエステルの収率が不充分であり、これを重合原料として得られるセメント添加剤用重合体等の用途性能、すなわちセメント分散能等が低下するおそれがある。より好ましくは、70%以上であり、また、99%以下であり、更に好ましくは、80%以上であり、また、98%以下である。なお、上記反応率とは、反応原料であるアルコールの仕込み時及び反応終了時の量の比率であって、例えば、下記測定条件で液体クロマトグラフィー(LC)により各々のピークの面積として測定することにより、下記式により算出される値(%)である。
【0065】
【数2】
【0066】
反応率測定条件
解析システム:日本分光社製 Borwin(商品名)
検出器:示差屈折計(RI)検出器〔HITACHI 3350 RI MONITOR(商品名)〕
溶離液:
種類 アセトニトリル/0.1%りん酸水溶液=50/50(容積%)
流量 1.0ml/min
カラム:
種類 ODS−120T+ODS−80Ts 4.6×250mm
(いずれも商品名、東ソー社製)
温度 40℃
【0067】
本発明の化学反応物質の製造方法では、脱水反応工程において酸触媒を用いた場合には、酸触媒や(メタ)アクリル酸を中和する中和工程を行うことが好ましい。これにより、触媒が活性を失い、エステル化反応により得られる脱水反応生成物の加水分解が抑制され、重合に関与しない不純物の発生が抑制された結果、重合体の品質や性能の低下を抑制することが可能となる。
【0068】
上記中和工程の方法としては、エステル化反応の終了後、酸触媒を中和剤で中和することにより行う方法が好ましい。このような中和剤としては、酸触媒を中和できるものであればよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類が好適であり、これらが1種又は2種以上使用される。また、中和剤の形態としては、アルカリ水溶液の形態とすることが好ましい。
【0069】
上記中和工程では、酸触媒や(メタ)アクリル酸が中和されることになるが、酸触媒の全部と、(メタ)アクリル酸の一部が中和されるように設定することが好ましい。この場合、中和される(メタ)アクリル酸は、エステル化反応後の残りの(メタ)アクリル酸を100質量%とすると、20質量%以下、好ましくは、0.01質量%以上、また、5質量%以下であることが好ましい。なお、酸触媒と(メタ)アクリル酸とでは、酸触媒の方が酸強度が大きいため、酸触媒から中和されることになる。
【0070】
上記中和工程における中和方法では、脱水溶媒中でエステル化反応を行う場合には、アルカリと共に多量の水を反応系に添加することが好ましい。すなわち多量の水がない状態では、アルカリが脱水溶媒に難溶であるために濃い状態で系内に浮遊し、このような高濃度のアルカリの浮遊は中和に消費されるまでの長時間にわたって消失せず、エステル化物の加水分解を引き起こすことになる。この場合、水の添加量としては、アルカリの使用形態にもよるが、例えば、40〜60質量%のアルカリ水溶液を中和剤として添加する場合には、アルカリ水溶液とは別に、アルカリ水溶液の1重量部に対して、通常5重量部以上とすることが好ましく、また、1000重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、10重量部以上であり、また、100重量部以下である。5重量部未満であると、アルカリが反応系内で不均一になるおそれがあり、1000重量部を超えると、生産性を確保するために中和槽が別途必要となる等、生産コストが上昇するおそれがある。
【0071】
上記中和工程における中和温度としては、90℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、0℃以上であり、また、80℃以下である。更により好ましくは25℃以上であり、また、65℃以下である。90℃を超えると、添加される中和剤が加水分解の触媒として作用し、加水分解生成物を多量に生成するようになるおそれがある。80℃以下であると、加水分解生成物の生成がより充分に抑制されることになるが、0℃未満であると、反応液が粘稠になることに起因して攪拌がしにくくなる他、反応後に水を留去するため所定の温度まで降温するのに長時間を要したり、室温よりも低い温度まで降温するのに新たに冷却手段(装置)を設けたりする必要が生じて生産コストが上昇するおそれがある。
【0072】
脱水溶媒を重合工程等に利用する場合を除いては、該脱水溶媒を留去することが好ましい。このような溶剤留去工程において、脱水溶媒の留去方法としては特に限定されず、例えば、脱水溶媒のみを留出するようにして留去してもよく、他の適当な添加剤を加えて留去してもよいが、水を用いて脱水溶媒と共沸させて留去することが好ましい。この場合、中和工程が行われたことにより、反応系内に酸触媒やアルカリが実質的に存在しないため、水を加えて昇温しても加水分解反応が起こらない。このような方法により、より低い温度で脱水溶媒を除去することができることになる。
【0073】
上記留去方法の条件としては、反応系内の脱水溶媒を好適に留出(蒸発)させるように設定すればよく、溶剤留去中の反応槽内の液温(常圧下)としては、水を用いる場合には、通常80℃以上とすることが好ましく、また、120℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、90℃以上であり、また、110℃以下である。また、水を用いない場合には、通常80℃以上とすることが好ましく、また、160℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、90℃以上であり、また、150℃以下である。上記のいずれも場合にも、上記温度よりも低いと、脱水溶媒を蒸発させるのに充分な温度(熱量)とはならないおそれがあり、上記温度よりも高いと、重合を引き起こすおそれがある他、多くの熱量が大量の低沸点原料の蒸発に消費されるおそれがある。反応槽内の圧力としては、常圧下又は減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。上記溶剤留去工程において用いる装置系としては、脱水反応工程で用いた装置系をそのまま使用することが好ましい。
【0074】
本発明の化学反応物質の製造方法において、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合する実施形態について説明する。
上記共重合方法としては、重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤等を必要に応じて用いての溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法を採用できる。この場合、必要に応じて必須の単量体以外の単量体を共重合させることもできる。このような単量体としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類やそれらの一価金属塩、二価金属塩、アルモニウム塩、有機アミン塩類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;炭素数1〜18、好ましくは1〜15の脂肪族アルコールやベンジルアルコール等のフェニル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルが好適である。
【0075】
上記共重合において、共重合条件としては、反応温度としては、30℃以上とすることが好ましく、また、120℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、50℃以上であり、また、100℃以下である。30℃未満であると、重合速度が遅くなるおそれがあり、120℃を超えると、共重合物の一部が分解することにより、セメント分散性能等の各種用途における分散性能や増粘特性の低下等が生じるおそれがある。
【0076】
本発明において、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合して得られるポリカルボン酸、及び/又は、カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を重合させて得られるポリカルボン酸を含む化学反応物質は、各種の重合体、すなわちセメント添加剤、粉末洗剤用ビルダー、液体洗剤用ビルダー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク等の顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、石炭・水スラリー(CWM)用分散剤、増粘剤等の分散剤やその他の化学製品に用いられる重合体として好適に適用されることになる。すなわちポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合させてなるポリカルボン酸であって、上記化学反応物質の製造方法により製造されてなるポリカルボン酸や、カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を重合させてなるポリカルボン酸であって、上記化学反応物質の製造方法により製造されてなるポリカルボン酸は、各種の用途で有用であり、このようなポリカルボン酸もまた、本発明の一つである。
【0077】
上記ポリカルボン酸は、特定の重量平均分子量を有する重合体であることが好ましい。例えば、下記測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量としては、例えば、500以上であることが好ましく、また、500000以下であることが好ましい。セメント添加剤として用いる場合に、500未満であると、セメント添加剤の減水性能が低下するおそれがあり、500000を超えると、セメント添加剤の減水性能、スランプロス防止能が低下するおそれがある。より好ましくは、300000以下であり、最も好ましくは8000以上であり、また、100000以下の範囲である。
【0078】
上記GPCは、溶離液貯蔵槽、溶離液の送液装置、オートサンプラー、カラムオーブン、カラム、検出器、データ処理機等から構成される。例えば、下記の市販の装置を組み合わせることにより測定条件を設定して分子量を測定することができる。
【0079】
分子量測定条件
機種 :GPC−900(商品名、日本分光社製)
検出器:示差屈折計(RI)検出器〔GPC−900一体型(商品名)〕
溶離液:0.05M 酢酸ナトリウム、アセトニトリル/イオン交換水=40/60混合液を酢酸でpH6に調整したものを使用する。
溶離液流量:0.5ml/min
カラム:
TSK−GEL ガードカラム(内径6mm、長さ40mm)
+TSK−GEL G−4000SWXL(内径7.8mm、長さ300mm)
+TSK−GEL G−3000SWXL(内径7.8mm、長さ300mm)
+TSK−GEL G−2000SWXL(内径7.8mm、長さ300mm)
(いずれも商品名、東ソー社製)
カラムオーブン温度:40℃
【0080】
検量線:検量線は、標準試料の分子量や数、ベースラインの引き方、検量線近似式の作製方法等により変化する。このため、以下の条件を設定することが好ましい。
1.標準試料
標準試料には、市販の標準ポリエチレンオキシド(PEO)と標準ポリエチレングリコール(PEG)を使用する。標準試料には、次の分子量のものを使用することが好ましい。
1470、4120、7100、11840、18300、22800、32500、50100、74900、120000、205000、288000(合計12点)
これらの標準試料は、以下の点に配慮して選択した。
(1)分子量900以上の標準試料を7点以上使用する。
(2)分子量900〜2000の標準試料を少なくとも1点含む。
(3)分子量2000〜60000の標準試料を少なくとも3点含む。
(4)分子量200000±30000の標準試料を少なくとも1点含む。
(5)分子量270000±30000の標準試料を少なくとも1点含む。
【0081】
2.ベースラインの引き方
分子量の上限:水平で安定なベースラインからピークが立ち上がる点とする。
分子量の下限:主ピークの検出が終了した点とする。
3.検量線の近似式
上記標準試料を用いて作製した検量線(「溶出時間」対「log分子量」)は3次式の近似式を作製し、これを計算に用いる。
【0082】
上記ポリカルボン酸を含んでなるセメント添加剤では、良好なセメント分散性能及びスランプ保持性能を発揮することができる。このようなセメント添加剤には、必要により、ポリカルボン酸以外の公知のセメント添加剤(セメント分散剤)を更に配合してもよい。また、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤等を配合することができる。このようにして得られるセメント添加剤は、セメントや水を含有するセメント組成物として、例えば、ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の水硬セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いられることになる。このようなセメント添加剤もまた、本発明の一つである。なお、セメント添加剤に用いられるポリカルボン酸としては、上記ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合させてなるポリカルボン酸が好適である。
【0083】
上記セメント添加剤の水硬性材料への添加量としては、従来のセメント添加剤に比較して少量の添加でも優れた効果を発揮することになるが、例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメントの質量を100質量%とすると、0.001質量%以上、また、5質量%以下となるような比率の量を練り混ぜの際に添加すればよい。0.001質量%未満であると、セメント添加剤の作用効果が充分に発揮されないおそれがあり、5質量%を超えると、その効果は実質的に頭打ちとなり、経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは、0.01質量%以上であり、また、1質量%以下である。これにより、高減水率の達成、スランプロス防止性能の向上、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の作用効果を奏することになる。
【0084】
上記ポリカルボン酸はまた、優れた分散性能を発揮することができることから、粉末洗剤用ビルダーや液体洗剤用ビルダー等の分散剤として好適に適用することができる。上記ポリカルボン酸を含んでなる分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダーもまた、本発明の1つである。なお、このような分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダーに用いられるポリカルボン酸としては、カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を重合させてなるポリカルボン酸が好適であり、耐ゲル化能、キレート性能、高硬度水でのクレー分散能等を発揮することができることになる。
【0085】
上記ポリカルボン酸は、特定の重量平均分子量を有する重合体であることが好ましい。例えば、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダーとする場合には、上記測定条件のGPCによるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量としては、1000以上であることが好ましく、また、1000000以下であることが好ましい。1000未満であってもと、1000000を超えても、分散性能が低下するおそれがある。より好ましくは、2000以上であり、また、100000以下である。最も好ましくは、3000以上であり、また、80000以下である。
【0086】
本発明の化学反応物質の製造方法において、カルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を重合する実施形態について説明する。
本発明の製造方法における液状原料は、カルボン酸系単量体(II)を必須とするものであるが、好ましい形態としては、(1)(メタ)アクリル酸(塩)を主成分として含むもの、(2)アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)を主成分として含むもの、(3)ポリエーテル化合物及びカルボン酸系単量体(II)を必須とするモノエチレン性不飽和単量体を含むものであり、本発明の製造方法は、このような液状原料を重合してポリカルボン酸を製造する際に好適に適用される。
【0087】
上記(1)の形態においては、水系媒体中で連鎖移動剤及び重合開始剤の存在下に、(メタ)アクリル酸(塩)を主成分として含む液状原料を重合する際、[液状原料中の単量体成分、連鎖移動剤及び重合開始剤の合計量]と[水系媒体の合計量]との比率が質量比で46:54〜66:34の範囲内であり、水系媒体の合計量の10質量%以上及び連鎖移動剤の合計量の0〜50質量%を予め反応器に仕込み、単量体成分の合計量の70質量%以上、連鎖移動剤の合計量の50質量%以上、及び重合開始剤の合計量の80質量%以上を、温度が50〜120℃の反応系へ逐次供給しながら、反応温度50〜120℃の範囲で重合を行うことが好ましい。これにより、耐ゲル化能及びキレート能に優れ、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤に好適に適用することができるポリカルボン酸を製造することができることになる。
【0088】
上記(1)の形態において、(メタ)アクリル酸(塩)を主成分として含むとは、液状原料中の単量体成分100質量%の50質量%以上が(メタ)アクリル酸(塩)であることを意味し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0089】
上記(1)の形態においては、液状原料中の単量体成分における(メタ)アクリル酸(塩)の比率を高くすることで、キレート能が高い重合体が得られるものである。(メタ)アクリル酸(塩)としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等のアクリル酸1価金属塩、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸2価金属塩等のアクリル酸(塩)系単量体;メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム等のメタクリル酸1価金属塩、メタクリル酸アンモニウム、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸2価金属塩等のメタクリル酸(塩)系単量体を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル酸(塩)系単量体がより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
【0090】
上記(1)の形態における液状原料中の単量体成分は、本発明の効果を損なわない範囲で上記の(メタ)アクリル酸(塩)系単量体と共重合可能な他の単量体を含むことができる。このような単量体としては、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;上記不飽和モノカルボン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体;上記不飽和ジカルボン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸系単量体;上記不飽和スルホン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、「単量体成分」とは、原則的には上記した各単量体成分をいうが、例えば、アクリル酸1モルと水酸化ナトリウム1モルとを用いる場合、中和によりアクリル酸ナトリウム1モルが生じるので、このアクリル酸ナトリウムを単量体成分として扱う。また、アクリル酸1モルと水酸化ナトリウム0.5モルとを用いる場合、中和によりアクリル酸0.5モルとアクリル酸ナトリウム0.5モルの混合物になるので、この混合物を単量体成分として扱う。
【0091】
上記重合開始剤としては、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも過硫酸塩の使用が特に好ましい。液状原料中の単量体成分に対する重合開始剤の使用量としては、単量体成分1モルに対し、0.0001〜0.05モルが好適である。なお、(重)亜硫酸塩、遷移金属塩等の還元剤を、上記重合開始剤と併用して重合を促進することもできる。
【0092】
上記連鎖移動剤としては、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸系化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸系化合物;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系化合物が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも次亜リン酸系化合物がより好ましく、次亜リン酸ナトリウムが特に好ましい。単量体成分に対する連鎖移動剤の使用量としては、単量体成分1モルに対し、0.005〜0.15モルが好適である。
【0093】
上記水系媒体としては、水単独;水及び水と可溶性の溶媒の混合溶液が好適である。水と可溶性の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等の低級エーテル類が好適である。混合溶液における水の比率は40質量%以上であることが好ましく、水単独であることが特に好ましい。ただし、「水系媒体」には、単量体成分、連鎖移動剤及び重合開始剤以外の成分であって水に溶解している成分も全て水系媒体に含めて計算するものとする。例えば、アクリル酸0.5モルに対して水酸化ナトリウム1モルを用いた場合、中和によりアクリル酸ナトリウム0.5モルが生じ、水酸化ナトリウムが0.5モル余るが、この水酸化ナトリウム0.5モルは水に溶解しているので、水系媒体に含めて計算する。また、アクリル酸と水酸化ナトリウム等の中和により生成する水も「水系媒体」に含めて計算する。なお、連鎖移動剤として次亜リン酸ナトリウムの水和物を用いた場合の水和水は連鎖移動剤に含めて計算する。
【0094】
上記(1)の形態においては、[液状原料中の単量体成分、連鎖移動剤及び重合開始剤の合計量]:[水系媒体の合計量]の比率が質量比で46:54〜66:34の範囲にあることが好ましく、48:52〜64:36の範囲にあることがより好ましく、50:50〜60:40の範囲にあることが更に好ましい。
【0095】
上記(1)の形態において、原材料(単量体成分、連鎖移動剤、重合開始剤及び水系媒体)を予め反応器に仕込むとは、反応系を昇温する前に反応器に仕込むことをいう。一方、原材料を逐次供給するときの反応系の温度は50〜120℃であることが好ましく、60〜115℃であることがより好ましく、90〜110℃であることが更に好ましい。50℃未満では超高分子量成分が生成するため耐ゲル化能が著しく低下するおそれがある。120℃を超えると超低分子量成分が生成するためキレート能が高い重合体が得られないおそれがある。反応系へ原材料を逐次供給する方法は、連続供給であっても、間欠供給であってもよい。
【0096】
目的とするポリカルボン酸が、ポリカルボン酸塩である場合には、単量体成分として(メタ)アクリル酸塩を用いて重合する方法(この方法を「塩型」という場合がある)よりも、(メタ)アクリル酸を主成分とした単量体成分を用いて重合を行い、重合後にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和する方法(この方法を「酸型」という場合がある)の方が、分子量分布の狭い重合体が得られるため好ましい。
【0097】
上記(1)の形態による製造方法により得られるポリカルボン酸は、耐ゲル化能及びキレート能に優れるものであり、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤に好適に適用することができるものである。このようなポリカルボン酸としては、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤用途に用いる場合には、耐ゲル化能(A)とキレート能(B)との積(A×B)が18000以上であることが好ましい。また、液状原料中の単量体成分の90質量%以上が(メタ)アクリル酸(塩)系単量体であるものを重合して得られるものであり、かつ重量平均分子量が1000〜100000であることが好ましい。
【0098】
上記(2)の形態においては、水系媒体中で、少なくとも重合開始剤の存在下に、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)を主成分として含む液状原料を重合してポリカルボン酸(アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体)を製造する際に、液状原料、重合開始剤、水系媒体及び必要に応じて用いられるその他の原材料は、重合終了後の重合体の理論固形分濃度が40質量%以上となるような使用量で用いられ、アクリル酸(塩)の使用量とマレイン酸(塩)の使用量がモル比で95〜30/5〜70の範囲であり、重合開始剤としては特に制限はないが、(1)過硫酸塩と過酸化水素とを併用するか、(2)過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用するか、(3)過酸化水素と多価金属イオンとを併用することが好ましい。これにより、高硬度水でのクレー分散能が高く、カルシウムイオン捕捉能が高く、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤に好適に適用することができるポリカルボン酸を製造することができることになる。
【0099】
上記(2)の形態において、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)を主成分として含むとは、液状原料中の単量体成分において、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)の合計量が占める割合が85モル%以上であることを意味し、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。
【0100】
上記アクリル酸(塩)としては、アクリル酸、アクリル酸塩のいずれでもよく、これらの混合物であってもよいが、アクリル酸を用いることが好ましい。アクリル酸塩としては、上述したアクリル酸(塩)系単量体が好適である。後述のように重合開始剤として過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、滴下終了時の中和度がアクリル酸、マレイン酸の合計量の15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。重合開始剤として過酸化水素と多価金属イオンとを併用する場合は、滴下終了時の中和度はアクリル酸、マレイン酸の合計量の30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。中和は反応器に供給する前に予め行われていてもよいし、酸と塩基とを別々に反応器に供給して反応器内で中和を行ってもよい。
【0101】
上記マレイン酸(塩)としては、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩のいずれであってもよく、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。マレイン酸塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン等の有機アミン類等の塩が好適である。後述のように重合開始剤として過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、マレイン酸の中和度は5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。重合開始剤として過酸化水素と多価金属イオンとを併用する場合は、マレイン酸の中和度は任意であるが、10〜50モル%が好ましい。中和は反応器に供給する前に予め行われていてもよいし、酸と塩基とを別々に反応器に供給して反応器内で中和を行ってもよい。
【0102】
上記アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)の使用量としては、アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)のモル比が95〜30/5〜70であることが好ましく、90〜60/10〜40がより好ましい。マレイン酸(塩)の使用量が上記範囲よりも下回るとカルシウムイオン捕捉能が低下するおそれがあり、アクリル酸(塩)の使用量が上記範囲よりも下回ると高硬度水でのクレー分散能が低下するおそれがある。
【0103】
上記(2)の形態における液状原料は、本発明の効果を損なわないアクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)以外の単量体を含むことができる。このような単量体は、アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)と共重合可能なものであればよく上述したのと同様のもの1種又は2種以上を好適に用いることができる。
【0104】
上記重合開始剤としては、(1)過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用するか、及び/又は、(2)過酸化水素と多価金属イオンとを併用することが好ましい。これにより、高硬度水でのクレー分散能が50%以上であり、カルシウムイオン捕捉能が270mgCaCO3/g以上である共重合体を得ることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の重合開始剤を併用してもよい。
【0105】
上記過硫酸塩の使用量と重亜硫酸塩の使用量は質量比で1/0.5〜1/5であることが好ましく、1/1〜1/2であることがより好ましい。また、過硫酸塩と重亜硫酸塩の合計の使用量は、単量体成分1モルに対し5〜15gであることが好ましく、より好ましくは10〜15gである。
【0106】
上記重合開始剤として過酸化水素と多価金属イオンとを併用する場合、過酸化水素の使用量は、単量体成分1モルに対し5〜15gであることが好ましく、より好ましくは8〜12gである。
【0107】
上記多価金属イオンとしては、鉄イオン(Fe2+,Fe3+)、バナジウムイオン(V2+,V3+,VO2+)、銅イオン(Cu2+)の1種又は2種以上を用いることが好ましく、特に好ましくは鉄イオンである。多価金属イオンの供給形態については特に制限はなく、重合反応系内でイオン化する金属及び/又は金属化合物を用いることができる。例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス((NH4)2SO4・VSO4・6H2O)、硫酸アンモニウムバナダス((NH4)V(SO4)2・12H2O)、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅、炭酸銅、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の金属酸化物;硫化銅(II)、硫化鉄等の金属硫化物が好適である。多価金属イオンは、反応液の全量に対して5〜500ppmとなるように用いることが好ましく、より好ましくは10〜400ppmである。
【0108】
上記重合溶媒としては水系媒体を用いることが好ましい。特に水を80質量%以上、有機溶剤を20質量%未満の割合で含む水系媒体が好ましく、より好ましくは水である。水系媒体に用いられる有機溶剤としては、上述したのと同様である。
【0109】
上記(2)の形態における重合条件としては、温度は80℃以上が好ましく、重合溶媒の沸点近傍の温度であることがより好ましい。圧力は、常圧(大気圧)、加圧、減圧のいずれでもよい。また、上述のように重合開始剤として過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、重合時のpHが5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。重合時のpHが5より大きい場合には、分子量が増大しやすく好ましくない。
【0110】
上記(2)の形態の製造方法により得られるポリカルボン酸は、高硬度水でのクレー分散能が高く、カルシウムイオン捕捉能も高いので、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤として好適に適用することができるものである。
【0111】
上記(3)の形態においては、ポリエーテル化合物に、カルボン酸系単量体(II)を必須成分として含むモノエチレン性不飽和単量体を、有機スルホン酸化合物、リン酸化合物及び無機酸から選ばれた少なくとも1種の酸性物質と有機過酸化物の存在下、グラフト重合させることが好ましい。これにより、グラフト率が高い、すなわち、純度の高い親水性グラフト重合体であり、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤に好適に適用することができるポリカルボン酸を製造することができることになる。
【0112】
上記ポリエーテル化合物としては、下記一般式;
−RCH−CH2−O−
(式中、Rは、水素原子及びメチル基のうちの少なくとも1種であり、1分子中に混在してもよい。)で表される繰り返し単位を全体の30mol%以上有し数平均分子量が200以上のものが好ましい。
ポリエーテル化合物は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを必須成分として含み、必要に応じて他のアルキレンオキシドを更に含む環状エーテルを、重合の開始点となる被反応化合物の存在下、公知の方法等で重合することにより得られる。ポリエーテル化合物を得るために用いられる他のアルキレンオキシドとしては特に限定されず、1種又は2種以上を用いることができる。共重合可能な他のアルキレンオキシドは全体の70mol%未満にすることが好ましい。70mol%以上になると、モノエチレン性不飽和単量体のグラフト率が低下するおそれがある。
【0113】
上記被反応化合物は、環状エーテルの重合の開始点となる化合物であり、その種類や、分子量等については、特に限定はないが、水;水素;酸素;二酸化炭素;アルコール;ハロゲン化水素;アンモニア;アミン;ヒドロキシルアミン;カルボン酸;酸ハロゲン化物;ラクトン;アルデヒド;ベンゼンが好適であり、これらの1種又は2種以上使用される。これらのうち、水、アルコール及びアミンから選ばれた少なくとも1種は、被反応化合物として好ましい。
【0114】
上記ポリエーテル化合物は、上記重合によって得られるポリエーテルから誘導された誘導体でもよい。このような誘導体としては、ポリエーテルの末端官能基を変換した末端基変換体や、ポリエーテルと、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、ハロゲン基等の基を複数有する架橋剤とを反応させて得られる架橋体が好適である。末端基変換体としては、上記ポリエーテルの少なくとも1つの末端の水酸基を、酢酸や無水酢酸等の炭素数2〜22の脂肪酸及びその酸無水物、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸でエステル化したものが、好ましい。
【0115】
上記ポリエーテル化合物中の繰り返し単位の数としては、好ましくはポリエーテル化合物中2個以上、更に好ましくは3個以上である。繰り返し単位中のRは、その少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。
【0116】
上記モノエチレン性不飽和単量体は、カルボン酸系単量体(II)を必須成分として含み、カルボン酸系単量体(II)と共重合可能な他の不飽和単量体を更に含むことがある。
【0117】
上記カルボン酸系単量体(II)としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸から選ばれた少なくとも1種であると、親水性グラフト重合体の酸価及び分散能が高まることになるため好ましい。カルボン酸系単量体(II)と共重合可能な他の不飽和単量体としては、上述したのと同様のもの等を1種又は2種以上用いることができる。モノエチレン性不飽和単量体中のカルボン酸系単量体(II)の割合は、ポリカルボン酸の酸価及び分散能を高める上で、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、最も好ましくは70質量%以上である。
【0118】
上記有機過酸化物は、グラフト重合の重合開始剤として用いられる。このような有機過酸化物としては、上述したのと同様のもの等を1種又は2種以上用いることができる。有機過酸化物の使用量は、モノエチレン性不飽和単量体に対して好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%である。また、有機過酸化物とともに、有機過酸化物の分解触媒や、還元性化合物を併用してもよい。
【0119】
上記酸性物質は、ポリエーテル化合物へのグラフト率を向上させ、得られるポリカルボン酸(親水性グラフト重合体)の分散能を高める働きがある。酸性物質は、有機スルホン酸化合物、リン酸化合物及び無機酸から選ばれた少なくとも1種である。有機スルホン酸化合物としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、オクタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の芳香族スルホン酸;クロロベンゼンスルホン酸、1−ナフチルアミン−4−スルホン酸(ナフチオン酸)、トビアス酸、ペリ酸、ガンマ酸(γ酸)、ジェー酸、コッホ酸、メタニル酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の核置換基を有する芳香族スルホン酸が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0120】
上記無機酸としては、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、硫酸、発煙硫酸、亜硫酸、硝酸、発煙硝酸、マンガン酸、過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。リン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸オクチル、リン酸ドデシル、リン酸ステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸ジドデシル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニルが好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0121】
上記酸性物質の使用量としては、モノエチレン性不飽和単量体に対して好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%である。酸性物質は予めポリエーテル化合物に添加しておくこともできるが、モノエチレン性不飽和単量体に添加することもできる。
【0122】
上記グラフト重合は、実質的に無溶媒で行われることが好ましいが、反応系全体の20質量%以下の溶媒を使用してもよい。反応系全体の20質量%を超えると、モノエチレン性不飽和単量体のグラフト率が低下することがある。反応系の粘度が高い場合は、少量の溶媒を用いる方が添加する際に好ましいときもあり、溶媒は添加後、留去してもしてもよい。
【0123】
上記溶媒としては、使用される単量体の溶媒への連鎖移動定数が可能なかぎり小さいものや、常圧下で反応に用いることができる沸点80℃以上のものが好ましい。このような溶媒としては、iso−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のジエーテル類;酢酸、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル等の酢酸系化合物が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。上記アルコール類及びジエーテル類中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好適である。
【0124】
上記グラフト重合の温度は、80℃以上であることが好ましく、更に好ましくは90〜160℃である。80℃未満の温度では、グラフト重合が進行しにくく、モノエチレン性不飽和単量体のグラフト率が低下する傾向がある。160℃を超える温度では、ポリエーテル化合物及び得られた親水性グラフト重合体の熱分解が起こるおそれがある。
【0125】
上記グラフト重合の際、ポリエーテル化合物は、その一部又は全量を初期に仕込むことが好ましい。モノエチレン性不飽和単量体として、例えば、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸の群より選ばれる少なくとも1つの単量体(A)と、(メタ)アクリル酸とを併用して、ポリエーテル化合物にグラフト重合する場合、単量体(A)のうちの半量以上と、酸性物質とを予めポリエーテル化合物に混合し、80℃以上に加熱した後、加熱した混合物に残部のモノエチレン性不飽和単量体及び有機過酸化物を別々に添加して、グラフト重合することが好ましい。この方法により、得られる親水性グラフト重合体の分子量を容易に調整できるようになる。
【0126】
上記(3)の形態の製造方法により得られるポリカルボン酸は、純度が高く、分散能が高いため、粉末又は液体洗剤用ビルダー等の分散剤に好適に適用することができるものである。
【0127】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
実施例1
温度計、攪拌機、生成水分離器及び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付反応槽(内容量:30m3)にメトキシポリ(n=25)エチレングリコール16500kg、メタクリル酸4740kg、パラトルエンスルホン酸水和物235kg、フェノチアジン5kg及びシクロヘキサン1060kgを仕込み、反応槽に取り付けられたジャケット温度を0.2MPa蒸気を用い135℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度110〜120℃でエステル化反応を行った。メトキシポリ(n=25)エチレングリコール及びメタクリル酸を仕込む際には、図2(1)に示すような構造の原料投入ノズルを用い、メトキシポリ(n=25)エチレングリコールの原料投入ノズル内の残液をメタクリル酸と窒素ガスを用いて上述したパージ手順により反応槽内に押し出した。約20時間でエステル化率が99%に達したのを確認後、49%水酸化ナトリウム水溶液135kgと水4890kgを加えてパラトルエンスルホン酸を中和し、ハイドロキノン8kgを加えて昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%のエステル化物水溶液(1)を製品(モノマー溶液)として得た。このようなバッチ操作を連続して行ったところ、原料投入ノズルの閉塞はなかった。また、製品(モノマー溶液)中のゲル化物は認められなかった。
【0129】
実施例2
実施例1において、メトキシポリ(n=25)エチレングリコール及びメタクリル酸を仕込む際に、メトキシポリ(n=25)エチレングリコールの原料投入ノズル内の残液を窒素ガスのみを用いて反応槽内に押し出した以外は同様にして行ったところ、連続20バッチの時点で、原料投入ノズル径の約1/2がゲル化物により閉塞した。また、連続20バッチ目あたりより、モノマー中のゲル化物量が増加し始め、約100g/バッチ(モノマー26t)製品移送時に詰まりが起こり始めた。
【0130】
実施例3
実施例1において、メトキシポリ(n=25)エチレングリコール及びメタクリル酸を仕込む際に、メトキシポリ(n=25)エチレングリコールの原料投入ノズル内の残液を50kgの水を用いて反応槽内に押出した以外は同様にして行ったところ、原料投入ノズルの閉塞は見られなかった。また、製品(モノマー溶液)中のゲル化物は認められなかった。
【0131】
比較例1
実施例1において、メトキシポリ(n=25)エチレングリコール及びメタクリル酸を仕込む際に、原料投入ノズル内の残液を除去しなかった以外は同様にして行ったところ、連続5〜6バッチ目の時点で、原料投入ノズル径の約1/2以上がゲル化物により閉塞し、原料投入時に生成したゲル化物が反応槽内に落ちるためか完全閉塞の状態にはならず、つらら状にゲル化物が垂れ下がった状態になっていた。また、連続5〜6バッチ目より、モノマー中のゲル化物量が増加し始め、約500g〜1kg/バッチ(モノマー26t)製品移送時に詰まりが起こり始めた。
【0132】
実施例4
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えた反応槽(内容量:30m3)に、純水8220kgを仕込み、窒素置換後、攪拌下80℃まで昇温した。次に、温度を80℃に保ちながら実施例1で合成したモノマー溶液13100kg、過硫酸アンモニウム125kgを純水1000kgに溶解した過硫酸アンモニウム水溶液及びメルカプトプロピオン酸100kgを純水600kgに溶解したメルカプトプロピオン酸水溶液を、それぞれ別々にモノマー溶液及びメルカプトプロピオン酸水溶液は4時間、過硫酸アンモニウム水溶液は5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐにモノマー溶液ノズルより100kgの純水を投入し、ノズルの洗浄を行った。その後1時間にわたって反応液を80℃に保持し、重合を完結させた。その後冷却、中和してポリマーを得た。
モノマー溶液の滴下ノズル及びその周辺にゲルの付着は認められなかった。
【0133】
実施例5
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えた反応槽(内容量:12m3)に、純水2000kg及びイソプレノール50EO付加物(以下、IPN−50と略す)80%水溶液6900kgを仕込み、仕込み終了後すぐにIPN−50 80%水溶液滴下ノズルを窒素ブローすることによりノズル内に残った残液を反応器内に押し出した。更に窒素置換後、攪拌下、60℃まで昇温した。
次に、温度を60℃に保ちながら35%過酸化水素水15kgを純水230kgに希釈した過酸化水素水溶液を投入、過酸化水素水投入後2時間以内に、アクリル酸345kg、L−アスコルビン酸6kgを純水415kgに溶解した水溶液及びメルカプトプロピオン酸15kgを純水745kgに溶解した水溶液を、それぞれ別々にアクリル酸は3時間、L−アスコルビン酸水溶液及びメルカプトプロピオン酸水溶液は3.5時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐにアクリル酸ノズルより100kgの純水を投入し、更に窒素ブローすることによりノズルの洗浄を行った。その後2時間にわたって反応液を60℃に保持し、重合を完結させた。その後冷却、中和してポリマーを得た。
IPN−50水溶液滴下ノズル、アクリル酸滴下ノズル及びその周辺にゲルの付着は認められなかった。
【0134】
実施例6
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応槽(内容量:6m3)に、純水782.5kgを仕込み、攪拌下、90℃まで昇温した。次いで、攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に80%アクリル酸水溶液2137.5kg、37%アクリル酸ナトリウム水溶液317.5g、15%過硫酸ナトリウム水溶液333.5kg、35%重亜硫酸ナトリウム水溶液357kgをそれぞれ別個の滴下ノズルより滴下した。それぞれの滴下時間は、180分とした。80%アクリル酸水溶液、37%アクリル酸ナトリウムの滴下ノズルを滴下終了後すぐに50kgのイオン交換水を投入することで、滴下ノズルの洗浄を行った。
【0135】
滴下終了後、更に30分に渡って反応液を90℃に保持し重合を完結させた。得られたアクリル酸重合体の重量平均分子量は、5800であり、分子量分布は、2.4、酸価8.0、固形分は、53%、中和度は、5%であった。その後、48%水酸化ナトリウムを投入し、pHを8に調整した。
80%アクリル酸水溶液、37%アクリル酸ナトリウムの滴下ノズル及びその周辺に、アクリル酸由来のゲル物の付着は認められなかった。
【0136】
実施例7
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応槽(内容量:6m3)に、イオン交換水620kg及び無水マレイン酸800kg(マレイン酸として947.4kg)を仕込み攪拌下、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHaqと称する)1416.6kgを添加した。その後、反応器内の水溶液を攪拌しながら沸点まで昇温した。
次に、攪拌下に、80質量%アクリル酸水溶液900kg、35質量%過酸化水素溶液228.6kg、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液333.4kg及びイオン交換水66.6kgを、それぞれ別のノズルより、80%アクリル酸水溶液は120分間にわたって滴下し、35%過酸化水素水溶液は、80%アクリル酸水溶液と同時に滴下を開始し50分間にわたって、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液及びイオン交換水は35%過酸化水素水溶液の滴下終了後から80分にわたって滴下した。80%アクリル酸水溶液の滴下ノズルを80%アクリル酸水溶液滴下終了後すぐに50kgのイオン交換水を投入することで洗浄を行った。全ての滴下が終了後、更に20分間にわたって反応溶液を沸点に保持し重合を完結させた。
【0137】
このようにして、重量平均分子量13000のアクリル酸−マレイン酸共重合体を得た。固形分は、50%であった。その後、48%水酸化ナトリウムを投入し、pHを8に調整した。
80%アクリル酸水溶液の滴下ノズル及びその周辺に、アクリル酸由来のゲル物の付着は認められなかった。
【0138】
実施例8
温度計、攪拌機、還流冷却機を備えたSUS製反応槽(内容量:12m3)に、メトキシポリ(n=25)エチレングリコール4540kg、無水マイレン酸350kgを仕込み、窒素気流下、加熱して溶融させ、攪拌下で130℃まで昇温した。
次に温度を130℃±5℃に保ちながらアクリル酸1170kg、ジ−t−ブチルパーオキサイド80kgを別々に2時間にわたって連続的に滴下した。アクリル酸滴下終了後すぐにアクリル酸滴下ノズルより100kgの純水を投入することによりノズルの洗浄を行った。その後80分に渡って反応液を130℃に保持し重合を完結させた。その後冷却してポリマーを得た。
アクリル酸滴下ノズル及びその周辺に、アクリル酸由来のゲル物の付着は認められなかった。
【0139】
実施例9
温度計、攪拌機、還流冷却機を備えたSUS製反応槽(内容量:12m3)に、純水2580kg、無水マレイン酸878kg、モール塩0.24kgを仕込み、窒素置換後、攪拌下で95℃まで昇温した。
次に温度を95℃に保ちながらイソプレノール10EO付加物(以下、IPN−10と略す)3000kgに純水1200kgを加えた混合溶液、80%アクリル酸水溶液1206kg及び4.8%過酸化水素水2088kgをそれぞれ別々に2時間にわたって連続的に滴下した。滴下終了後すぐに80%アクリル酸水溶液滴下ノズル及びIPN−10/純水混合溶液滴下ノズルよりそれぞれ100kgの純水を投入することによりノズルの洗浄を行った。その後60分に渡って反応液を95℃に保持し、重合を完結させた。その後冷却してポリマーを得た。
80%アクリル酸水溶液滴下ノズル、IPN−10/純水混合溶液滴下ノズル及びその周辺にゲル物の付着は認められなかった。
【0140】
実施例6及び実施例7で製造した重合体を、粉末洗剤用ビルダーとして用いたところ、良好な分散性能を示した。実施例8及び実施例9で製造した重合体を、液体洗剤用ビルダーとして用いたところ、良好な分散性能を示した。
【0141】
【発明の効果】
本発明の化学反応物質の製造方法は、上述の構成よりなるので、不飽和二重結合を有する反応性物質を含む液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入して化学反応物質を製造する際に、原料投入ノズル内での固化やゲル化及びそれに伴う閉塞を防止すると共に、ゲル化物が反応系内に混入することを防止し、しかも、ゲル化物により製造工程に不具合をきたすことを抑制して、安定した品質の化学反応物質を製造することができることから、例えば、セメント添加剤(セメント分散剤)、粉末洗剤用ビルダー、液体洗剤用ビルダー、炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク等の顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、石炭・水スラリー(CWM)用分散剤、増粘剤等の分散剤やその他の化学製品を製造するために有用な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入する際の実施形態を例示する断面概念図である。
【図2】本発明における原料投入ノズル構造とパージ手順についての好ましい実施形態に関し、反応槽の原料投入ノズル付近を示す断面概念図である。
Claims (8)
- 不飽和二重結合を有するポリアルキレングリコール系単量体(I)と不飽和二重結合を有するカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入し、重合開始剤の存在下、反応液中、50℃以上の反応温度で反応させて化学反応物質を製造する方法であって、
該化学反応物質の製造方法は、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合させてなるポリカルボン酸を製造する方法であり、該ポリカルボン酸を製造するに際し、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含み、
該工程は、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)の原料投入ノズルとは別の原料投入ノズルから重合開始剤を反応槽中に投入し、液状原料を原料投入ノズルから反応槽中の反応液に投入して共重合する際に、残液を原料投入ノズル内から除去する
ことを特徴とする化学反応物質の製造方法。 - 前記ポリアルキレングリコール系単量体(I)及び前記カルボン酸系単量体(II)は、個別に、又は、混合溶液として反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入され、
前記化学反応物質の製造方法は、少なくともポリアルキレングリコール系単量体(I)の原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含む
ことを特徴とする請求項1記載の化学反応物質の製造方法。 - 不飽和二重結合を有するカルボン酸系単量体(II)を含む液状原料を、反応槽中に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入し、重合開始剤の存在下、反応液中、50℃以上の反応温度で反応させて化学反応物質を製造する方法であって、
該カルボン酸系単量体(II)は、反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入され、
該化学反応物質の製造方法は、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)とを含む液状原料を共重合させてなるポリカルボン酸を製造する方法であり、該ポリカルボン酸を製造するに際し、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含み、
該工程は、ポリアルキレングリコール系単量体(I)とカルボン酸系単量体(II)の原料投入ノズルとは別の原料投入ノズルから重合開始剤を反応槽中に投入し、液状原料を原料投入ノズルから反応槽中の反応液に投入して共重合する際に、残液を原料投入ノズル内から除去する
ことを特徴とする化学反応物質の製造方法。 - 不飽和二重結合を有するカルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)とを含む液状原料を、反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入し、酸触媒の存在下、反応液中、50℃以上の反応温度でエステル化させてポリアルキレングリコール系単量体(I)を含む化学反応物質を製造する方法であって、
該カルボン酸系単量体(II)及び該ポリアルキレングリコール(III)は、個別に、又は、混合溶液として反応槽に備えられた原料投入ノズルから該反応槽中に投入され、
該化学反応物質の製造方法は、原料投入ノズル内に残った残液の少なくとも一部を原料投入ノズル内から除去する工程を含み、
該工程により原料投入ノズル内から除去される物質が、ポリアルキレングリコール(III)であり、
該工程は、カルボン酸系単量体(II)とポリアルキレングリコール(III)の原料投入ノズルとは別の原料投入ノズルから酸触媒を反応槽中に投入し、液状原料を原料投入ノズルから反応槽中の反応液に投入してエステル化する際に、残液を原料投入ノズル内から除去する
ことを特徴とする化学反応物質の製造方法。 - 前記工程は、ガス状物質を用いて原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すことにより行われる
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の化学反応物質の製造方法。 - 前記工程は、水を用いて原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すことにより行われる
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の化学反応物質の製造方法。 - 前記工程は、エステル化における脱水溶剤を用いて原料投入ノズル内の残液の少なくとも一部をパージして原料投入ノズルから押し出すことにより行われる
ことを特徴とする請求項4記載の化学反応物質の製造方法。 - 前記ポリアルキレングリコール系単量体(I)は、ポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルである
ことを特徴とする請求項5記載の化学反応物質の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002100428A JP3938321B2 (ja) | 2001-04-02 | 2002-04-02 | 化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダー |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001103822 | 2001-04-02 | ||
JP2001-103822 | 2001-04-02 | ||
JP2002100428A JP3938321B2 (ja) | 2001-04-02 | 2002-04-02 | 化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダー |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003012704A JP2003012704A (ja) | 2003-01-15 |
JP3938321B2 true JP3938321B2 (ja) | 2007-06-27 |
Family
ID=26612980
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002100428A Expired - Lifetime JP3938321B2 (ja) | 2001-04-02 | 2002-04-02 | 化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダー |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3938321B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4975714B2 (ja) * | 2007-11-28 | 2012-07-11 | ローム アンド ハース カンパニー | ポリマーの製造法 |
JP2010168429A (ja) * | 2009-01-20 | 2010-08-05 | Kao Corp | 硬質表面用液体洗浄剤組成物 |
WO2011126059A1 (ja) * | 2010-04-07 | 2011-10-13 | 株式会社日本触媒 | ポリ(メタ)アクリル酸系重合体水溶液およびその製造方法 |
JP6721417B2 (ja) * | 2016-05-31 | 2020-07-15 | 株式会社日本触媒 | 硫黄含有重合体組成物およびその製造方法 |
WO2020203694A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 株式会社日本触媒 | 洗剤用ビルダー又は洗剤用添加物および洗剤組成物 |
-
2002
- 2002-04-02 JP JP2002100428A patent/JP3938321B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003012704A (ja) | 2003-01-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100488439B1 (ko) | 에스테르화물의 제조방법 | |
KR100563981B1 (ko) | 에스테르화물의 제조방법 및 그 장치 | |
JP4925648B2 (ja) | ポリアルキレングリコール系単量体の貯蔵及び/又は移送方法 | |
JP3896117B2 (ja) | (メタ)アクリル酸(塩)系重合体およびその製造方法 | |
JP3938321B2 (ja) | 化学反応物質の製造方法及びそれにより製造されてなるポリカルボン酸並びにセメント添加剤、分散剤、粉末洗剤用ビルダー及び液体洗剤用ビルダー | |
JP3068619B2 (ja) | エステル化物の製造方法 | |
EP1383805B1 (en) | METHOD FOR PRODUCING CHEMICAL REACTIVE SUBSTANCE BASED on POLYCARBOXYLIC ACID | |
JP3418580B2 (ja) | エステル化物の製造方法およびその装置 | |
JP3910369B2 (ja) | アルコキシ(ポリ)アルキレングリコールを含むセメント添加剤用重合体原料の貯蔵及び/又は移送方法 | |
JP3418585B2 (ja) | エステル化物の製造方法およびその装置 | |
JP3390382B2 (ja) | エステル化物の製造方法 | |
JP3343227B2 (ja) | エステル化物の製造方法 | |
JP4451414B2 (ja) | (メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法 | |
JP4001518B2 (ja) | セメント分散剤用ポリカルボン酸系共重合体の製造方法 | |
JP4549324B2 (ja) | 脱水反応生成物の製造方法 | |
JP3850656B2 (ja) | 脱水反応生成物の製造方法 | |
JP3961295B2 (ja) | 脱水反応生成物及び/又はその重合体の製造方法 | |
JP3094024B2 (ja) | エステル化物の製造方法 | |
JP3685992B2 (ja) | 反応液の調製方法及びそれにより得られる反応液 | |
JP4197934B2 (ja) | 脱水反応生成物の製造方法 | |
JP2010065050A (ja) | 脱水反応生成物の製造方法 | |
JP2003327689A (ja) | 脱水反応生成物の製造方法 | |
JP2001002623A (ja) | エステル化物および重合体の製造装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040506 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060316 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060425 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060613 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20060912 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061109 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20061117 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061219 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061225 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070320 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070320 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 3938321 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100406 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110406 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120406 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130406 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140406 Year of fee payment: 7 |