JP2001002623A - エステル化物および重合体の製造装置 - Google Patents

エステル化物および重合体の製造装置

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JP2001002623A
JP2001002623A JP17560999A JP17560999A JP2001002623A JP 2001002623 A JP2001002623 A JP 2001002623A JP 17560999 A JP17560999 A JP 17560999A JP 17560999 A JP17560999 A JP 17560999A JP 2001002623 A JP2001002623 A JP 2001002623A
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JP
Japan
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reaction
polymerization
meth
esterification
acid
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JP17560999A
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English (en)
Inventor
Takeshi Hirata
健 枚田
Hiromichi Tanaka
宏道 田中
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能なセメント分散剤や炭酸カルシウム、
カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケール
防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、
増粘剤等の性能及び品質の低下防止し得る、エステル化
物およびこれを用いてなる重合体の製造装置を提供す
る。 【解決手段】 一般式R1 O(R2 O)nHで示される
アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応に
よりエステル化物を製造するのに使用されるもの、ない
し該エステル化物の重合反応により重合体を製造するの
に使用されるものであって、硫酸に対する耐食性が2.
0g/(m2 ・day)以下の材料でライニングないし
コーティングされた反応槽が設けられていることを特徴
とするエステル化物の製造装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高性能なセメント
分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インクな
どの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用
分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等に用いられる、アル
コールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により
得られる(メタ)アクリル酸エステル類(本明細書中で
は、単にエステル化物ともいう)およびこれを用いてな
る重合体の製造装置、並びに当該装置を用いてなるエス
テル化物およびこれを用いてなる重合体の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】1981年にコンクリート構造物の早期
劣化が社会問題化して以来、コンクリート中の単位水量
を減らしてその耐久性と施工性を向上させることが強く
求められており、このような要求を満たすセメント組成
物、とりわけこの品質及び性能に多大な影響を与えるセ
メント分散剤の開発が盛んに行われている。
【0003】これらのうち、ポリアルキレングリコール
モノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)ア
クリル酸系単量体との共重合体が特公昭59−1833
8号公報に開示されており、これらの共重合体からなる
高性能AE減水剤は、高い減水性能を有するため、コン
クリートの高耐久化と生コンクリートの高流動化が達成
できる。その結果、現在までにその使用実績が多くなっ
てきている。また、上記公報に記載のようなポリアルキ
レングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量
体(すなわち、エステル化物単量体)と(メタ)アクリ
ル酸系単量体との共重合体は、高性能セメント分散剤と
して用いられる以外にも、炭酸カルシウム、カーボンブ
ラック、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石
膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等と
してもその有用性が認められている。
【0004】ところが、上記公報に記載のようなエステ
ル化物単量体と(メタ)アクリル酸系単量体との共重合
体、およびその原料であるエステル化物の製造装置技術
に関しては、開発段階で使われていた実験室の小規模装
置から、当業者が従来既知の化工機の設計技術を使って
工業的な大規模装置を設計・施工できることから、製造
装置に関する発明としては特に報告されていない。なか
でも、反応槽(反応容器)に関しては、実験室のセパラ
ブルフラスコ程度の小規模装置からスケールアップした
中間的な大きさのパイロットプラントを経て工業的な大
規模装置に用いられるものには、化工機の材料としてそ
の使用条件に適した材料であって、成形加工性や経済性
(汎用性)に優れ、かつ現在までに十分な実績があるこ
とから、耐食性(耐化学耐久性)を有するステンレス鋼
材が使用されてきており、いわば固定観念的に、ステン
レス鋼材が反応槽の適正な材料とされてきているのが現
状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、多くの
人と時間と金を投下して開発した高性能なセメント分散
剤等の性能及び品質が、工業化後にも十分に発現されて
いると考えられ、特に問題とされることなく(すなわ
ち、技術的課題が見出されていなかった)長年慣用され
てきた製造技術につき、再度、仔細に検証を重ねた結
果、工業化後において実験段階よりもその性能及び品質
が低下するケースがあることを見出したものである。
【0006】そこで、本発明の目的は、高性能なセメン
ト分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク
などの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー
用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等の性能及び品質の
低下防止し得る、上記エステル化物およびこれを用いて
なる重合体の製造装置、並びに当該装置を用いてなるエ
ステル化物およびこれを用いてなる重合体の製造方法を
提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高性能な
セメント分散剤等の性能及び品質の低下防止を図るべく
鋭意検討した結果、意外にも、使用条件に対して十分な
耐食性材料と考えられており、すでに十分な実績のある
ステンレス鋼材を用いてなる反応槽に製品の性能及び品
質を低下させている要因が潜在していることを見出し
(すなわち、ステンレス鋼材の内壁面、特に液面境界部
に、エステル化反応時にゲル状物が形成されていた。か
かるゲル状物が最終製品に混入するとセメント分散剤等
の性能及び品質に影響するため、ゲル状物の発生原因を
徹底的に調査・研究を重ねた結果、ステンレス鋼材の表
面が粗面化することで、特にゲル化が起こりやすいらし
いことがわかってきた。かかる粗面化の原因につき更な
る研究を重ねた結果、意外にも、使用する原料や触媒に
よる軽微な腐食が原因であることも突き止めることがで
きた。すなわち、従来は、こうした軽微な腐食により、
最終製品であるセメント分散剤等の性能及び品質にまで
影響を及ぼすとは全く思いもよらぬことであり、また鋼
材の厚みに必要なマージンを持たせて設計することで、
反応槽の耐用年数や強度に与える影響も小さく、何ら問
題なく利用できていた。本発明者らは、かかる固定観念
を打破することで、本発明を完成するに至ったものであ
る。
【0008】すなわち、本発明の目的は、以下の(1)
〜(6)に示す上記エステル化物およびこれを用いてな
る重合体の製造装置、並びに当該装置を用いてなるエス
テル化物およびこれを用いてなる重合体の製造方法によ
り達成されるものである。
【0009】(1) 一般式R1 O(R2 O)nH(た
だし、式中、R1 は炭素原子数1〜30の炭化水素基を
表わし、R2 Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレ
ン基を表わし、この際、各R2 Oの繰り返し単位は同一
であってもあるいは異なっていてもよく、およびR2
が2種以上の混合物の形態である場合には各R2 Oの繰
り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはラン
ダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアル
キレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数で
ある)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸との
エステル化反応によりエステル化物を製造するのに使用
されるものであって、硫酸に対する耐食性が2.0g/
(m2 ・day)以下の材料でライニングないしコーテ
ィングされてなる反応槽が設けられていることを特徴と
するエステル化物の製造装置。
【0010】(2) 前記反応槽が、グラスライニング
されていることを特徴とする上記(1)に記載の製造装
置。
【0011】(3) 上記(1)または(2)に記載の
製造装置を用いてなることを特徴とするエステル化物の
製造方法。
【0012】(4) 上記(1)に記載のエステル化物
の重合反応により重合体を製造するのに使用されるもの
であって、ライニングないしコーティングされた反応槽
が設けられていることを特徴とする重合体の製造装置。
【0013】(5) 前記反応槽が、硫酸に対する耐食
性が2.0g/(m2 ・day)以下の材料でグラスラ
イニングされていることを特徴とする上記(4)に記載
の製造装置。
【0014】(6) 上記(4)または(5)に記載の
製造装置を用いてなることを特徴とする重合体の製造方
法。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明のエステル化物の製造装置
は、一般式R1 O(R2 O)nH(ただし、式中、R1
は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、R2 Oは
炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、こ
の際、各R2 Oの繰り返し単位は同一であってもあるい
は異なっていてもよく、およびR2 Oが2種以上の混合
物の形態である場合には各R2 Oの繰り返し単位はブロ
ック状に付加していてもあるいはランダム状に付加して
いてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付
加モル数を表わし、0〜300の数である)で示される
アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応に
よりエステル化物を製造するのに使用されるものであっ
て、硫酸に対する耐食性が2.0g/(m2 ・day)
以下の材料でライニングないしコーティングされた反応
槽が設けられていることを特徴とするものである。ま
た、本発明の重合体の製造装置は、上記エステル化物の
重合反応により重合体を製造するのに使用されるもので
あって、硫酸に対する耐食性が2.0g/(m2 ・da
y)以下の材料でライニングないしコーティングされた
反応槽が設けられていることを特徴とするものである。
以下に、上記製造装置の両発明に共通でかつ主要な構成
要件である反応槽につき、説明する。
【0016】ここで、反応系に存在する金属腐食性物質
としては、化学的に直接金属を溶解するもののほか、腐
食反応の触媒的な働きをするもの、電解質として腐食速
度を速めるもの、間接的に腐食を促進するもの、および
臨界湿度を下げて結露しやすくさせるものである金属腐
食促進物質を含むものであり、反応槽中に存在し得るも
の、すなわち、原料、触媒および各種添加剤、並びに反
応により生成される反応生成物(反応副生物を含む)の
うち、金属腐食性を有するものがその対象となる。具体
的には、エステル物の製造段階では、エステル化触媒
(例えば、パラトルエンスルホン酸、硫酸など)などが
挙げられ、重合体の製造段階では、重合開始剤の分解物
(例えば、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩から発生
する硫酸)などが挙げられる。
【0017】こうした金属腐食性物質に対して防食性を
有する反応槽の内部のライニングないしコーティング用
材料としては、十分な防食性(化学耐久性)を発現し得
るものであり、具体的には、エステル化反応も重合反応
も酸性条件下で行われるため、硫酸に対する耐食性が
2.0g/(m2 ・day)以下、好ましくは1.0g
/(m2 ・day)以下、さらに好ましくは0.1g/
(m2 ・day)以下、特に好ましくは0.05g/
(m2 ・day)以下の材料である。なお、材料の「硫
酸に対する耐食性」は、下記条件下の重量表面損失とし
て定量化(数値化)したものである。
【0018】ここで、「重量表面損失」とは、1日あた
り、単位面積あたりの、材料(試験片)の重量の減少量
[単位;g/(m2 ・day)]をいうものとする。そ
して、80℃の1%硫酸水溶液中に4日間材料(試験
片)を浸漬させたときの重量表面損失を当該材料の「硫
酸に対する耐食性」とした。
【0019】上記要件を満足する反応槽の内部のライニ
ングないしコーティング用材料としては、例えば、ゴム
材料、エラストマー材料(天然および合成エラストマー
材料のいずれでもよい)、無機質材料(例えば、セラミ
ックやガラスなど)、プラスチック(例えば、テフロン
などのフッ素樹脂など)などが挙げられるが、耐熱性、
耐薬品性を有し、反応槽に添加されるいずれのものに対
しても不活性で非汚染性であること、また重合段階で
は、さらに非付着性が必要であることから、ガラス(ホ
ウロウを含む)やセラミックなどの無機質材料が望まし
く、特に望ましくはガラス(ホウロウを含む)である。
【0020】また、反応槽にこうした防食性を有する材
料をライニングないしコーティングする方法としては、
特に制限されるものではなく従来既知のライニングない
しコーティング技術を適用することができるものであ
る。グラスライニングする場合、ステンレス鋼材等の母
材金属材料を用いて成形された反応槽(反応槽本体以外
にも、かくはん翼やバッフルを含んでいることが望まし
い)の内壁面側に、完全なグラス被覆と、耐食に対して
十分なグラス厚さを持たせる観点から、通常0.05〜
20mm、好ましくは0.1〜10mm、より好ましく
は0.5〜5mmの厚みのガラス層を形成するのが望ま
しい。
【0021】また、反応槽の母材(素地)金属材料とし
ては、従来既知の金属(合金を含む)材料を利用するこ
とができるものである。例えば、炭素鋼、鋳鉄のほか、
ステンレス鋼、インコネル、ハステロイなどの耐食耐熱
合金などが挙げられる。これらのうち、鋼材がコスト的
に有利になるため好ましいといえる。
【0022】また、上記反応槽は、一般式R1 O(R2
O)nH(ただし、式中、R1 は炭素原子数1〜30の
炭化水素基を表わし、R2 Oは炭素原子数2〜18のオ
キシアルキレン基を表わし、この際、各R2 Oの繰り返
し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、
およびR2 Oが2種以上の混合物の形態である場合には
各R2 Oの繰り返し単位はブロック状に付加していても
あるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにn
はオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、0〜
300の数である)で示されるアルコールと(メタ)ア
クリル酸とのエステル化反応によりエステル化物を製造
するのに使用されるものであるが、これらの要件に関し
ては、以下のエステル化物の製造方法の説明において詳
述する。同様に、上記反応槽は、上記エステル化物の重
合反応により重合体を製造するのに使用されるものであ
るが、これらの要件に関しても、以下のエステル化物を
用いた重合体の製造方法の説明において詳述する。
【0023】なお、本発明のエステル化物の製造装置お
よび該エステル化物を用いた重合体の製造装置におい
て、上記に説明した構成要件以外は、何ら制限されるも
のではなく、例えば、特公昭59−18338号公報、
特開平9−86990号公報および特開平9−2866
45号公報などに記載の製造技術などの従来公知の製造
技術を適宜組み合わせて利用することができるほか、さ
らには、本発明者らが先に提案した特願平10−268
121号〜特願平10−268124号、特願平10−
328683号〜特願平10−328687号に記載の
製造技術を適用する事ができるものである。
【0024】また、本発明の上記に説明した製造装置を
用いてなる本発明のエステル化物およびこれを用いた重
合体の製造方法についても、上記公報に記載の方法な
ど、従来公知の製造方法を適宜組み合わせて利用する事
ができるほか、さらには、本発明者らが先に提案した特
願平10−268121号〜特願平10−268124
号、特願平10−328683号〜特願平10−328
687号に記載の製造技術を適用する事ができることか
ら、好適な実施の形態に基づき、工程を追って説明す
る。
【0025】本発明のエステル化物の製造方法は、高性
能なセメント分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラッ
ク、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・
水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等に用い
られる単量体原料の製造方法であるゆえ、好適な実施の
形態としては、酸触媒、脱水溶剤および重合禁止剤の存
在下、一般式R1 O(R2 O)nHで示されるアルコー
ル(以下、単に「アルコール」ともいう)と(メタ)ア
クリル酸とのエステル化反応時に生成する反応生成水を
脱水溶剤と共に留出させ、該反応生成水および脱水溶剤
を含む留出物を凝縮液化し、該凝縮液化した凝縮液から
反応生成水を分離除去し、該反応生成水を分離除去した
後の凝縮残液を還流させてエステル化反応系に戻しなが
ら該エステル化反応を行い(エステル化工程)、エステ
ル化反応終了後、酸触媒または酸触媒の全部と(メタ)
アクリル酸の一部を中和し(部分中和工程)、その後、
反応液から脱水溶剤を水と共沸して留去し(溶剤留去工
程)、目的とするエステル化物を得ることが望ましい。
【0026】(I)エステル化工程の説明 上記エステル化工程の好適な実施の形態につき、以下に
説明する。
【0027】まず、内壁がグラスライニングされた反応
槽(グラスライニングされた撹拌手段を有する)に、原
料としての一般式R1 O(R2 O)nHのアルコール及
び(メタ)アクリル酸、酸触媒、脱水溶剤および重合禁
止剤を仕込み、これら混合物を所定温度で所定のエステ
ル化率になるまで、エステル化反応を行う。このエステ
ル化反応時に生成する反応生成水は、脱水溶剤と共に留
出させ、該反応生成水および脱水溶剤を含む留出物を凝
縮液化し、該凝縮液化した凝縮液から反応生成水を分離
除去し、該反応生成水を分離除去した後の凝縮残液を還
流させてエステル化反応系に戻す。
【0028】本発明のエステル反応に使用することので
きるアルコール原料は、一般式R1O(R2 O)nHで示
される化合物である。
【0029】上記一般式R1 O(R2 O)nHにおい
て、R1 は、炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わ
す。R1 が炭素原子数30を超える炭化水素基である場
合には、一般式R1 O(R2 O)nHの化合物と(メ
タ)アクリル酸とのエステル化物を、例えば、(メタ)
アクリル酸と共重合して得られる共重合体の水溶性が低
下し、用途性能、例えば、セメント分散性能などが低下
する。好適なR1 の範囲はその使用用途により異なるも
のであり、例えば、セメント分散剤の原料として用いる
場合には、R1 は、炭素原子数1〜18の直鎖若しくは
枝分かれ鎖のアルキル基およびアリール基が好ましい。
1 としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル
基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、
tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチ
ル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ド
デシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル
基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル
基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘ
ンエイコシル基、ドコシル基などのアルキル基;フェニ
ル基などのアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基
などのアルキルフェニル基;シクロヘキシル基などのシ
クロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基などが挙
げられる。これらのうち、セメント分散剤の原料として
用いる場合には、上述したものであり、具体的には、メ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基
などがが挙げられる。
【0030】また、R2 Oは、炭素原子数2〜18、好
ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であ
る。R2 Oが炭素原子数18を超えるオキシアルキレン
基である場合には、一般式R1 O(R2 O)nHの化合
物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を、例えば、
(メタ)アクリル酸と共重合して得られる共重合体の水
溶性が低下し、用途性能、例えば、セメント分散性能等
が低下する。R2 Oとしては、例えば、オキシエチレン
基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシス
チレン基などが挙げられ、これらのうち、オキシエチレ
ン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基である
ことが好ましい。また、R2 Oの繰り返し単位は、同一
であってもあるいは異なっていてもよい。このうち、R
2 Oの繰り返し単位が異なる場合、すなわち、2種以上
の異なる繰り返し単位を有する場合には、各R2 Oの繰
り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはラン
ダム状に付加していてもよい。
【0031】さらに、nは0〜300の数であり、R2
O(オキシアルキレン基)の繰り返し単位の平均付加モ
ル数を表わす。nが300を超える場合には、一般式R
1 O(R2 O)nHの化合物と(メタ)アクリル酸との
エステル化物の重合性が低下する。この平均付加モル数
nも、エステル化反応により得られるエステル化物の使
用目的に応じて、その最適範囲は異なるものであり、例
えば、セメント分散剤の原料として使用する場合には、
平均付加モル数nは、5〜200の数が好ましく、より
好ましくは8〜150である。また、増粘剤などとして
用いる場合には、平均付加モル数nは、10〜250の
数が好ましく、より好ましくは50〜200である。ま
た、n=0の場合には、水との溶解性および沸点の観点
から、上記R1 は炭素原子数4以上の炭化水素基が好ま
しい。すなわち、一般式R1 O(R2 O)nHのn=0
の場合、特にメタノールやエタノールなどのアルコール
では低沸点のため反応生成水とともに蒸発し、さらに反
応生成水に溶解することから当該アルコール原料の一部
が系外に留去され、目的とするエステル化物の収率が低
下するためである。
【0032】上記一般式R1 O(R2 O)nHで示され
るアルコール原料は、1種のものを単独で使用してもあ
るいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。一般
式R 1 O(R2 O)nHで示されるアルコール原料が2
種以上の混合物での使用形態は、特に制限されるもので
はなく、R1 、R2 Oまたはnの少なくともいずれか1
つが異なる2種以上の混合物での使用形態であればよい
が、好ましくはR1がメチル基とブチル基の2種で構
成されている場合、R2 Oがオキシエチレン基とオキ
シプロピレン基の2種で構成されている場合、nが1
〜10のものと11〜100のものの2種で構成されて
いる場合、および〜を適宜組み合わせたもの等が挙
げられる。
【0033】上記エステル化反応に使用することのでき
る(メタ)アクリル酸に関しても、アクリル酸およびメ
タクリル酸を、それぞれ単独で使用しても、あるいは混
合して使用してもよく、その混合比率に関しても任意の
範囲を採用する事ができる。
【0034】エステル化反応で使用される上記原料のア
ルコールと(メタ)アクリル酸との混合比率は、化学量
論的には1:1(モル比)であるが、実際には、アルコ
ールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応が効率良
く進行する範囲であれば特に制限されるものではなく、
通常、一方の原料を過剰に使用してエステル化反応を速
めたり、目的のエステル化物の精製面からは、蒸留留去
し易いより低沸点の原料を過剰に使用するなどしてもよ
い。また、本発明では、エステル化反応時に反応生成水
と脱水溶媒を共沸する際に、低沸点の(メタ)アクリル
酸の一部も留出され、反応系外に持ち出されるため、ア
ルコールの使用量(仕込み量)に対して(メタ)アクリ
ル酸の使用量(仕込み量)を化学量論的に算出される量
よりも過剰に加えることが好ましい。具体的には、(メ
タ)アクリル酸の使用量は、通常、アルコール1モルに
対して、1.0〜30モル、好ましくは1.2〜10モ
ルである。(メタ)アクリル酸の使用量がアルコール1
モルに対して1.0モル未満であると、エステル化反応
が円滑に進行せず、目的とするエステル化物の収率が不
十分であり、逆に30モルを超えると、添加に見合う収
率の向上が認められず、不経済であり、やはり好ましく
ない。
【0035】本発明のエステル化反応においては、エス
テル化触媒、特に金属腐食能を有する酸触媒、なかでも
腐食性の強い硫酸や塩酸などの無機酸の存在下でエステ
ル化反応を行う場合に特に有用である。酸触媒の存在下
で反応を行うことにより、反応を速やかに進行させるこ
とができるとする利点を有する。本発明のエステル化反
応において使用することのできる酸触媒としては、例え
ば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン
酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリ
フルオロメタンスルホン酸、「Nafion」レジン、
「Amberlyst 15」レジン、リンタングステ
ン酸、塩酸などを水和物および/または水溶液のかたち
で用いるものが挙げられ、これらのうち、硫酸、パラト
ルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などを水和物およ
び/または水溶液のかたちで用いるものが好ましく使用
される。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種
以上を混合して使用しても良い。さらに、アルコール原
料を切断しにくい酸触媒がより望ましく、具体的には、
パラトルエンスルホン酸を水和物および/または水溶液
のかたちで用いるものである。
【0036】上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒
作用を有効に発現する事ができる範囲であれば特に制限
されるものではないが、好ましくは0.4ミリ当量/g
以下であり、より好ましくは0.01〜0.36ミリ当
量/g、特に好ましくは0.05〜0.32ミリ当量/
gの範囲内である。酸触媒の使用量が0.4ミリ当量/
gを超えると、エステル化反応時に反応系内で形成され
るジエステルの量が増加し、エステル化反応により得ら
れるエステル化物を用いて合成されるセメント分散剤の
セメント分散能が低下する。ここで、酸触媒の使用量
(ミリ当量/g)は、反応に使用した酸触媒のH+ の当
量数(ミリ当量)を、原料であるアルコール及び(メ
タ)アクリル酸の合計仕込み量(g)で割った値で表さ
れる。より具体的には下記式によって算出される値であ
る。
【0037】
【数1】
【0038】また、上記酸触媒を水和物および/または
水溶液のかたちで用いる場合には、該酸触媒の使用量
は、原料のアルコールと(メタ)アクリル酸の合計重量
に対する該酸触媒中の酸の重量の比をX(重量%)と
し、該酸触媒中の水和物および/または水溶液として存
在する水分の重量の比をY(重量%)とした場合に、0
<Y<1.81X−1.62の関係を満足することがよ
り望ましい。これにより、当該酸触媒の触媒機能を十分
に保持したままで、アルコール原料を切断する副作用を
低減させることができ、極めて高品質で、セメント分散
剤等の各種分散剤、スケール防止剤、増粘剤等の原料と
して極めて有用なエステル化物を得ることができる。な
お、誤解がないように具体例を挙げて説明すれば、例え
ば、パラトルエンスルホン酸一水和物を例にとれば、原
料の合計重量に対するパラトルエンスルホン酸の重量の
比がX(重量%)であり、原料の合計重量に対する一水
和物として存在する水分の重量の比がY(重量%)であ
るのであって、決して、酸触媒以外の酸成分(例えば、
原料の(メタ)アクリル酸など)や水分(例えば、エス
テル化反応により生ずる生成水など)は、ここでいうX
およびYの対象物となりえない。
【0039】上記酸触媒の反応槽への添加のし方は、一
括、連続、または順次行ってもよいが、作業性の面から
は、反応槽に、原料と共に一括で仕込むのが好ましい。
【0040】また、上記エステル化反応は、重合禁止剤
の存在下で行うことが望ましいものである。重合禁止剤
を用いることにより、原料のアルコール及び(メタ)ア
クリル酸、生成物のエステル化物またはこれらの混合物
の重合を防止することができる。上記エステル化反応に
おいて使用できる重合禁止剤としては、公知の重合禁止
剤が使用できるものであり、特に制限されるものではな
く、例えば、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニ
ルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニ
ルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ
−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベ
ンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテ
コール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾ
イルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)などが挙げ
られる。これらのうち、脱水溶剤や反応生成水の溶解性
の理由から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキ
ノンが好ましく使用される。これらの重合禁止剤は、単
独で使用してもよいほか、2種以上を混合して使用する
こともできる。とりわけ、フェノチアジン、メトキノ
ン、ハイドロキノンが、上記のように酸触媒を水和物お
よび/または水溶液の形態で用いる場合、反応系内に存
在する水溶液中のゲル形成物質に対しても有効に機能す
る事ができるほか、後述するように、エステル化反応終
了後に、脱水溶剤を水との共沸により留去する際にも、
弱いながらも重合活性のある水溶性重合禁止剤を用いな
くても極めて有効に重合禁止能を発揮することができ、
高分子量体の形成を効果的におさえる事ができる点から
極めて有用である。
【0041】上記重合禁止剤の使用量は、原料としての
アルコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込量に対し
て、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜
0.1重量%の範囲内である。重合禁止剤の使用量が
0.001重量%未満であると、重合禁止能の発現が十
分でなく、原料としてのアルコール、(メタ)アクリル
酸、生成物としてのエステル化物またはこれらの混合物
の重合を有効に防止しにくくなるため好ましくなく、重
合禁止剤の使用量が1重量%を超えると、生成物である
エステル化物中に残留する重合禁止剤量が増えるため、
品質及び性能面から好ましくなく、また、過剰に添加す
ることに見合うさらなる効果も得られず、経済的な観点
からも好ましくない。また、循環系において、留出物に
作用されるゲル化防止剤も反応系に戻されるため、該ゲ
ル化防止剤中の重合禁止剤も、反応系内に徐々に蓄積さ
れることから、かかる点を考慮し、反応系に仕込む重合
禁止剤は、極力控えたほうがよい。
【0042】さらに、本工程においては、取り扱いの面
からより低い温度で反応生成水を反応槽から留出できる
のが望ましいとの観点から、脱水溶剤の存在下でエステ
ル化反応を行うものである。本明細書中、脱水溶剤と
は、水と共沸する溶剤として規定されるものである。す
なわち、脱水溶剤を用いることにより、エステル化反応
により生成する反応生成水を効率よく共沸させることが
できるものである。脱水溶剤としては、例えば、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサ
ン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、
イソプロピルエーテルなどが挙げられ、これらを単独
で、あるいは2種以上のものを混合溶剤として使用する
ことができる。これらのうち水との共沸温度が150℃
以下、より好ましくは60〜90℃の範囲であるものが
好ましく、具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジ
オキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサ
ン、ヘプタンなどが挙げられる。水との共沸温度が15
0℃を超える場合には、取り扱いの面(反応時の反応系
内の温度管理および共沸物の凝縮液化処理などの制御等
を含む)から好ましくない。
【0043】上記脱水溶剤は、反応系から循環系側に反
応生成水と共に共沸させ、反応生成水を凝縮液化して分
離除去しながら還流させることが望ましい。この場合の
脱水溶剤の使用量は、原料としてのアルコール及び(メ
タ)アクリル酸の合計仕込量に対して、1〜100重量
%、好ましくは2〜50重量%の範囲内である。脱水溶
剤の使用量が1重量%未満であると、エステル化反応中
に生成する反応生成水を共沸により反応系外(循環系
側)に十分除去できず、エステル化の平衡反応が進行し
にくくなるため、好ましくなく、脱水溶剤の使用量が1
00重量%を超えると、過剰に添加することに見合う効
果が得られず、また、反応温度を一定に維持するために
多くの熱量が必要となり、経済的な観点から好ましくな
い。
【0044】また、本発明者らは、エステル化反応で生
ずる反応生成水を反応系外に留出させ、この反応生成水
を含む留出物に対して重合禁止剤を作用させることが望
ましいことを見出したものである。これにより、反応生
成水と共に留出されてくる低沸点の原料が、凝縮液化さ
れる段階で重合反応が起こし、製品の品質劣化や装置類
の閉塞等の原因になるゲル状物を形成するのを防止する
ことができる。
【0045】本発明において、エステル化反応は、回分
式または連続式のいずれによっても行ないうるが、回分
式で行うことが好ましい。
【0046】また、エステル化反応における反応条件
は、エステル化反応が円滑に進行する条件であればよ
く、反応温度は30〜140℃、好ましくは60〜13
0℃、さらに好ましくは90〜125℃、特に好ましく
は100〜120℃である。反応温度が30℃未満で
は、脱水溶剤の還流が遅くて脱水に時間がかかるほか、
エステル化反応が進行しづらく好ましくない。逆に、反
応温度が140℃を超えると、酸触媒の種類、濃度によ
っては、グラスライニングの耐食性が低下することがあ
る。また、アルコール原料の切断によって過大量のジエ
ステルが生成してセメント分散性能のほか、各種用途に
おける分散性能や増粘特性が低下する。さらに、原料の
重合が生じたり、共沸物への原料の混入量が増すなど、
生成物であるエステル化物の性能及び品質の劣化が生じ
るなど、やはり好ましくない。また、反応時間は、後述
するようにエステル化率が少なくとも70%、好ましく
は少なくとも80%に達するまでであるが、通常、1〜
50時間、好ましくは3〜40時間である。さらに、本
発明によるエステル化反応は、常圧下または減圧下いず
れで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが
望ましい。
【0047】本発明によるエステル化反応におけるエス
テル化率は、70%以上、より好ましくは70〜99
%、最も好ましくは80〜98%であることが好まし
い。エステル化率が70%未満であると、製造されるエ
ステル化物の収率が不十分であり、これを原料として得
られるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント
分散能等が低下する。なお、本明細書において使用され
る「エステル化率」は、下記に示すエステル化測定条件
で、エステル化の出発物質であるアルコールの減少量を
測定することにより、下記式によって算出される値とし
て定義されるものである。
【0048】
【数2】
【0049】・エステル化率測定条件 解析装置;Waters製 Millennium クロマトグラフィーマ
ネージャー 検出器;Waters製 410 RI検出器 使用カラム;GLサイエンス製 イナートシルODS−
2 3本 カラム温度;40℃ 溶離液;水 8946g アセトニトリル 6000g 酢酸 54g を混合して、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH4.
0に調整 流速;0.6ml/min なお、上記の式によりエステル化率を決定しているた
め、エステル化率が100%を越えることはない。従っ
て、本発明においては、エステル化率が規定以上に達し
た時点(最大100%)でエステル化反応が終了したも
のとする。
【0050】さらに、エステル化反応工程においては、
エステル化反応中の反応温度を130℃以下とし、エス
テル化反応中の溶剤循環速度を0.5サイクル以上/時
間とすることが望ましい。これにより、反応温度を不純
物形成温度領域(130℃超の領域)まで高くして反応
させる必要もなく、反応系内で不純物が形成するのを抑
えることができる。また、溶剤循環速度を速めること
で、反応系内に反応生成水を長期間滞留させることなく
効率よく反応系外に共沸により留出でき、平衡反応がエ
ステル化の方向に進むため、反応時間も短くできるもの
である。ここで、反応系に仕込んだ脱水溶剤の全量(体
積量)に対して、エステル化反応中に、反応系内の脱水
溶剤を反応系から循環系を通して再び反応系に戻し循環
させることにより、反応系に仕込んだ脱水溶剤の全量に
相当する量(体積量)が循環されたときを1サイクルと
規定し、エステル化反応中の溶剤循環速度は、単位時間
(1時間)あたりの当該サイクル数で表されるものと
し、その単位は「サイクル/時間」とする。
【0051】(II)部分中和工程 次に、本発明では、上記(I)のエステル化工程におい
て、酸触媒の存在下でエステル反応を行う場合には、以
下に説明する部分中和工程を行うのが望ましい。すなわ
ち、本発明者らは、エステル化反応後に脱水溶剤を留去
する工程で水を加えて共沸する場合、あるいはエステル
化物を用いてさらに重合を行うために、エステル反応後
に調整水を加えて生成されたエステル化物の水溶液を作
製する場合に、酸触媒による加水分解が生じ、エステル
化物の品質及び性能の低下を招くほか、加水分解により
生じたもの(以下、単に加水分解生成物ともいう)がエ
ステル化物中に残留し、当該エステル化物を用いてセメ
ント分散剤等の各種分散剤や増粘剤等に使用される重合
体を合成する場合には、該加水分解生成物は、重合には
関与しない不純物となり、重合率(ひいては生産性)が
低下し、また重合体の品質や性能の劣化にもつながるこ
とから、かかる課題を解決するには、上記(I)のエス
テル化工程によるエステル化反応終了後、90℃以下で
酸触媒をアルカリで中和することが望ましいことを見出
したものである。これにより、エステル化反応後の処理
過程で、加水分解生成物を生じることもなく、高純度で
高品質のエステル化物を得ることができる。本発明にお
いては、金属腐食能を有する一価金属および二価金属の
水酸化物等のアルカリを利用する場合に特に有用であ
る。なお、本発明では、エステル化物を用いてさらに重
合を行う際に、エステル反応後に調整水を加えて生成さ
れたエステル化物の水溶液を作製する場合に、本工程を
行うことが望ましいとしているが、本発明では、後述す
るように水(水との混合溶媒を用いる場合を含む)以外
の溶剤中で重合を行うこともでき、こうした場合には、
特に本工程(さらには、溶剤留去工程)を経ることなく
重合を行うこともできる。
【0052】(III)溶剤留去工程 本発明では、上記エステル化反応を脱水溶媒中で行うた
め、上記(I)のエステル化工程によりエステル化反応
を行った後に、反応液から脱水溶剤を留去するものであ
る。さらに上記エステル化反応を酸触媒の存在下で行う
場合には、上記(I)のエステル化工程によりエステル
化反応を行った後に、上記(II)の部分中和工程により
酸触媒、さらには(メタ)アクリル酸の一部を中和し、
次いで、反応液から脱水溶剤を留去するものである。た
だし、本発明では、後述するように水(水との混合溶媒
を用いる場合を含む)以外の溶剤中で重合を行うことも
でき、脱水溶剤を重合の際の溶剤として利用できるよう
な場合には、特に本工程を経ることなく重合を行うこと
もできる。
【0053】溶剤留去工程の好適な実施の形態につき、
以下に説明する。
【0054】本発明者らは、エステル化反応終了後(必
要に応じて、部分中和処理を行い)、当該溶剤留去工程
において、反応液から脱水溶剤を留去する際に、原料の
アルコールと(メタ)アクリル酸の全使用量に対して1
000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より
好ましくは300ppm以下の水溶性重合禁止剤を反応
液に添加して、特に好ましくは添加せずに行うことによ
り、本来的には重合を禁止する目的で添加されていた水
溶性重合禁止剤を加えることで、この重合禁止剤が弱い
ながらも重合活性を有するために、意外にも、未反応の
原料、生成物であるエステル化物またはこれらの混合物
の重合を招き、高分子量体を形成していたことを見出す
とともに、エステル化反応時に添加されていた重合禁止
剤が、当該脱水溶剤の留去時にも有効に機能することを
見出し、これら水溶性重合禁止剤を全く使用しなくとも
高分子量体の発生を防止し得る事を見出したものであ
る。したがって、水溶性重合禁止剤の使用量が、原料の
アルコールと(メタ)アクリル酸の全使用量に対して1
000ppmを超える場合には、該水溶性重合禁止剤の
もつ重合活性により、2.0面積%以上の高分子量体の
発生を招き、これらを含むエステル化物を単量体成分と
して利用する場合には、得られる重合体を用いたセメン
ト分散剤等に影響を及ぼすため好ましくない。
【0055】本溶剤留去工程では、重合禁止剤の存在下
に、エステル化反応を行っているが、当該重合禁止剤が
上述したようにエステル化反応後(さらには部分中和処
理後)においても有効に機能するものである場合には、
本溶剤留去工程において、系内の溶液中に、新たに重合
禁止剤を補充する必要はないが、濃度の薄いアルカリ水
溶液を用いて部分中和処理を行っている場合には、反応
液中に比較的多くの水が存在している。そのため、例え
ば、エステル化反応を行う際に使用した重合禁止剤が水
に難溶ないし不溶であり、エステル化反応後(さらには
部分中和処理後)においてさほど有効に機能しえない場
合に限り、未反応の原料やエステル化物が水に溶けて重
合することがあるため、これを防止する観点から、水溶
性重合禁止剤のもつ重合活性による重合作用と本来的に
有する重合禁止能との関係から、重合活性以上に有効に
重合禁止能を発現し得る範囲(上記に規定する範囲)に
おいて、反応液に水溶性重合禁止剤を加えてから下記に
規定する温度まで昇温し、脱水溶剤を水との共沸により
留去することが望ましいものである。
【0056】ここで、使用することのできる水溶性重合
禁止剤としては、特に制限されるものではなく、例え
ば、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール及びこれ
らの誘導体(例えば、p−t−ブチルカテコール等)、
ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。な
かでも、比較的重合活性が低いとの理由から、ハイドロ
キノン、メトキノンが好ましい。また、これらの水溶性
重合禁止剤は、1種若しくは2種以上を混合して使用し
てもよい。
【0057】次に、本発明のエステル化物を用いてなる
重合体の製造方法に関して、以下に説明する。
【0058】本発明のエステル化物を用いてなる重合体
の製造方法は、高性能なセメント分散剤や炭酸カルシウ
ム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケ
ール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散
剤、増粘剤等に用いられる主要な構成成分の製造方法で
あるゆえ、好適な実施の形態としては、一般式R1
(R2 O)nH(ただし、式中、R1 は炭素原子数1〜
30の炭化水素基を表わし、R2 Oは炭素原子数2〜1
8のオキシアルキレン基を表わし、この際、各R 2 Oの
繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていても
よく、およびR2Oが2種以上の混合物の形態である場
合には各R2 Oの繰り返し単位はブロック状に付加して
いてもあるいはランダム状に付加していてもよく、なら
びにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わ
し、0〜300の数である)で示されるアルコールと
(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られた
エステル化物(溶液中にイオンの形で存在するエステル
化触媒の残留分を含有する場合もある)を中間生成物と
し、エステル化反応で使用した反応槽内で直ちに重合反
応を行って、目的とする重合体を得ることが望ましい。
すなわち、エステル化物の製造装置の反応槽をそのまま
重合体の製造装置の反応槽として利用することで、生産
性の効率化が図られ、製造コストの低減が可能となるも
のであり、またエステル化物から重合体までの一連の製
造過程を通して反応槽内に存在し得るエステル化触媒
(例えば、硫酸やパラトルエンスルホン酸など)や重合
開始剤の分解物(例えば、過硫酸アンモニウムなどの過
硫酸塩から発生する硫酸)のような反応系に存在する腐
食性物質に対して常に反応槽内部(内壁面や撹拌翼な
ど)の腐食を防止でき、高性能なセメント分散剤や炭酸
カルシウム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散
剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CW
M用分散剤、増粘剤等の性能及び品質の低下を防止する
ことができる。
【0059】本発明の重合方法は、エステル化物を単量
体成分として重合反応を行うことにより、所期の用途に
応じた重合体を得ることができるものであれば、特に制
限されるものではなく、例えば、特公昭59−1833
8号公報、特開平9−86990号公報および特開平9
−286645号公報に記載の方法などの公知の方法と
同様にして、(メタ)アクリル酸(塩)、および必要に
よりこれらのエステル化物の単量体成分と共重合可能な
単量体と共に重合反応に供することができる。より詳し
くは、上記エステル化物単量体は、(メタ)アクリル酸
(塩)単量体および必要によりこれらの単量体と共重合
可能な単量体とともに重合反応に供される。
【0060】ここで、所望の重合体を得るには、重合開
始剤を用いて前記エステル化物の単量体成分等を共重合
させれば良い。共重合は、溶媒中での重合や塊状重合等
の方法により行なうことができる。
【0061】溶媒中での重合は、回分式でも連続式でも
行なうことができ、その際使用される溶媒としては、
水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香
族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化
合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合
物;等が挙げられる。原料のエステル化物の単量体成分
および得られる共重合体の溶解性ならびに該共重合体の
使用時の便からは、水および炭素原子数1〜4の低級ア
ルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用い
ることが好ましい。その場合、炭素原子数1〜4の低級
アルコールの中でもメチルアルコール、エチルアルコー
ル、イソプロピルアルコール等が特に有効である。
【0062】水媒体中で重合を行なう時は、重合開始剤
としてアンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩ある
いは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。
この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を
併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族
炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケ
トン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキ
シドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメ
ンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;ア
ゾビスイソブチロニトリル等の芳香族アゾ化合物等が重
合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促
進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコ
ール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始
剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から
適宜選択して用いることができる。本発明においては、
金属腐食性を有する硫酸等を発生するアンモニウムまた
はアルカリ金属の過硫酸塩等を利用する場合に特に有用
である。重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適
宜定められるが、通常0〜120℃の範囲内で行なわれ
る。
【0063】塊状重合は、重合開始剤としてベンゾイル
パーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシ
ド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキ
シド;アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合
物等を用い、50〜200℃の温度範囲内で行なわれ
る。
【0064】また、得られる重合体の分子量調節のため
に、チオール系連鎖移動剤を併用することもできる。こ
の際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、一般式HS
−R 5 −Eg (ただし、式中R5 は炭素原子数1〜2の
アルキル基を表わし、Eは−OH、−COOM2 、−C
OOR6 または−SO3 2 基を表わし、M2 は水素、
一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン
基を表わし、R6 は炭素原子数1〜10のアルキル基を
表わし、gは1〜2の整数を表わす。)で表わされ、例
えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオ
グリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メル
カプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸
オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙
げられ、これらの1種または2種以上を用いることがで
きる。
【0065】このようにして得られた重合体は、そのま
までもセメント分散剤等の各種用途の主成分として用い
られるが、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和
して得られる重合体塩をセメント分散剤等の各種用途の
主成分として用いても良い。このようなアルカリ性物質
としては、一価金属および二価金属の水酸化物、塩化物
および炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等が
好ましいものとして挙げられる。
【0066】上述した各種重合反応を行う際および重合
反応を行った後(例えば、中和して重合体塩を形成する
途中、あるいは該中和後、さらには系外に取り出して取
り扱う前であれば、密閉系において貯蔵槽などに輸送し
て貯蔵した後であっても特に問題はない)に、これらの
重合反応液に対して不活性ガスを接触させることが望ま
しい。これにより、重合反応液中に残存する脱水溶剤
(重合時に別途使用した溶剤の残留物を含む。以下、同
様。)を該不活性ガスによって極めて効率よく追い出す
ことができ、得られる重合体に溶剤臭が発生するのを防
止することができるものである。
【0067】ここで、使用される不活性ガスとしては、
重合反応液の組成成分に対して不活性なものであれば、
特に制限されるものではなく、例えば、空気、窒素ガ
ス、ヘリウムガス、アルゴンガス、二酸化炭素等の気体
(好ましくは水蒸気を含まない気体)等が挙げられる
が、好ましくは、経済性の面から、空気、窒素ガスであ
る。また、これらの不活性ガスは、1種を単独で使用し
てもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ま
た、該不活性ガスを重合反応時に反応液に接触させる場
合には、系内の重合反応液の温度が変動しないように、
液温と同じ温度に適当な加熱手段により予め加温した不
活性ガスを供給するのが好ましい。
【0068】また、重合反応液に対する不活性ガスの気
液接触方法としては、特に制限されるものではなく、不
活性ガスを反応液の上部に流して気液接触させても良い
し、反応液中に不活性ガスをブローさせて気液接触させ
てもよく、上記エステル化物の製造方法において、エス
テル化反応終了後に不活性ガスを反応液気液接触させる
方法と同様の方法が適用できる。また、好適な接触方法
も同様のものになると言えるため、ここでは、重合反応
液に対する不活性ガスの気液接触方法に関しての詳細な
説明は省略する。
【0069】また、残存する脱脂溶剤を追い出すのに必
要な上記不活性ガスの使用量としても、上記エステル化
物の製造方法で説明したと同様である。すなわち、接触
方法、重合形態(水媒体中での重合なのか、あるいは他
の溶媒中での重合なのかなど)および接触開始時期など
にもよるが、通常は、前記重合反応液に対して、反応器
(重合反応槽)の容量の10体積%を超える量、好まし
くは15〜300体積%、より好ましくは20〜200
体積%の範囲である。不活性ガスの使用量が、反応器の
容量の10体積%以下の場合には、十分に溶存する脱水
溶剤を追い出すことができず、溶剤臭の除去効果が十分
でない。なお、300体積%を超える場合には、溶存す
る脱水溶剤を追い出すという所期の目的は達成されるも
のの、気液接触後に回収される脱水溶剤含有の不活性ガ
スは、再利用ないし系外に排気されることになるが、い
ずれにせよ不活性ガス中から脱水溶剤を分離除去する必
要上、大量の不活性ガスを利用する場合には、該不活性
ガス自体のコスト及びその回収コストが高くなるなど好
ましくない。
【0070】なお、上記反応器の容量と重量反応液の容
量との関係は、重合反応を行う上で、所定温度に保持す
る必要上、ある程度反応液で満たされていることが反応
効率の観点から望ましく、重合反応後の中和処理でアル
カリ性物質が添加されたりすることにより、反応器内の
反応液の容量は変動するため一義的に規定することは不
適当ではあるが、不活性ガスの接触開始時における重合
反応液の容量は、おおよそ反応器の容積の30〜90%
程度の範囲である。このことは、不活性ガスを反応器の
反応液面の上部に流して気液接触するような場合には、
反応液面の上部に過度の空間容積があると、接触効率が
悪く多量の不活性ガスを通気する必要があり、逆にごく
僅かの空間容積しかない場合には、該上部空間へ所定の
流量を供給しようとすると圧送する必要があるほか、槽
内が加圧状態にもなり得る。また、反応器の反応液中に
不活性ガスをブローして気液接触しようとするような場
合には、反応器に占める重合反応液の容量率は特に問題
にはならない。
【0071】また、重合反応液に対して不活性ガスの接
触を開始する時期としては、上述したとおり、重合反応
を行う際(重合開始前からでもよい)に不活性ガスの接
触を開始してもよいし、重合反応中に不活性ガスの気液
接触を行っても良い。一方、重合反応を行った後(例え
ば、中和して重合体塩を形成する前でも途中でも、ある
いは該中和後でも、さらには系外に取り出して取り扱う
前であれば、密閉系において貯蔵槽などに輸送して貯蔵
した後であってもよい)に不活性ガスの接触を開始して
もよい。
【0072】また、水を除く溶剤中で重合を行う場合に
は、重合時に用いた溶剤の留去操作を行うことにより、
反応器内の溶剤が、反応器の容量の1体積%以下、好ま
しくは0.1〜0.9体積%の範囲になった段階で、重
合反応液に対して不活性ガスの接触を開始するのが望ま
しい。なお、反応器(の重合反応液中)内に残留する溶
剤の濃度(反応器の容量に対する体積%)は、反応液の
ガスクロマトグラム分析をすることにより測定した値で
ある。
【0073】また、重合反応液に対して不活性ガスを接
触させる時間および流量は、上記に規定する不活性ガス
の使用量の範囲内になるように、適宜接触時間及び流量
を規定すればよいが、短時間で大流量の不活性ガスを流
しても、必ずしも効率よく不活性ガスを追い出す事がで
きない場合もあり、逆に、長持間かけて少ない流量の不
活性ガスを流す場合には、不活性ガスの気泡を槽全域に
完全混合に近い状態で分散する事が困難となり、やはり
接触効率が悪くなる。なお、不活性ガスの接触開始時期
や温度条件等によっても、これらの接触時間及び流量は
左右される事から、一義的に規定することは不適当では
あるが、過度に偏った接触時間ないし流量設定は望まし
くなく、接触時間としては20〜300分間、好ましく
は30〜180分間を目安として、また、反応器の容積
に対する不活性ガスの単位時間当たりの容積比は、0.
02〜9/時間、より好ましくは0.03〜6/時間を
目安として行う事が望ましい。接触時間が20分間未満
の場合または反応器の容積に対する不活性ガスの単位時
間当たりの容積比が9/時間を超える場合には、重合反
応槽に供給される単位時間当たりの不活性ガス量が大き
くなり、所定の口径の吹出口からブローするような場
合、流速が大きくなり、撹拌流との抵抗が大きくなるほ
か、該流速にのって短時間で重合反応液内を通過するた
め接触時間が短くなるなど、必ずしも効率よく不活性ガ
スを追い出す事ができない場合がある。また、接触時間
が300分間を超える場合または反応器の容積に対する
不活性ガスの単位時間当たりの容積比が、0.02/時
間未満の場合には、単位時間当たりに供給される不活性
ガスが限られるため、重合反応液中に均一に分散させる
事ができず、該不活性ガスと未接触な反応液部ができ、
接触効率が悪くなるおそれがある。
【0074】また、重合反応液に対して不活性ガスを接
触させる際の温度条件としては、上記したように重合反
応するために昇温する前からでもよいことから、特に限
定されるものではないが、上記したように重合反応後
に、該重合反応液の温度が下がる前に開始することが望
ましく、系内の温度(重合反応液の温度)が、0〜10
0℃、より好ましくは10〜90℃の範囲で、重合反応
液に対して不活性ガスを接触させる事が望ましい。
【0075】また、重合反応液に対して不活性ガスを接
触させる際の圧力(蒸気圧)条件としては、特に限定さ
れるものではなく、常圧下、加圧下または減圧下のいず
れで行ってもよいが、残存する溶剤の不活性ガスへの移
動速度への影響や設備面(例えば、耐圧製容器等が必要
であるなどその使用設備が制限される点など)からして
も、常圧下(約1kg/cm2 )で行うことが望まし
い。
【0076】なお、当該重合工程で使用することのでき
るエステル化物の単量体成分は、下記一般式(1)
【0077】
【化1】
【0078】(ただし、R1 、R2 O及びnは上記一般
式R1 O(R2 O)nHで規定したのと同様であり、R
3 は、水素原子またはメチル基である。)で示されるも
のである。該エステル化物の単量体成分は、1種単独で
用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
特に、2種以上を混合して使用する場合には、使用用途
に応じた特性(機能・性能等)を発現させる事ができる
ように、発現特性の異なる種類を適当に組み合わせて用
いる事が望ましく、1例としてセメント分散剤への利用
を行う場合には、以下の2種の組み合わせが有利であ
る。
【0079】また、一般式(1)で示されるエステル化
物において、平均付加モル数nが1〜97、好ましくは
1〜10の整数を表わす。)で示される第1のエステル
化物(a1 )と、平均付加モル数nが4〜100、好ま
しくは11〜100の整数を表わす。)で示される第2
のエステル化物(a2 )との混合物(ただし、第2のエ
ステル化物(a2 )の平均付加モル数の方が第1のエス
テル化物(a1 )の平均付加モル数よりも3以上大きい
ものとする)であってもよい。
【0080】このような第1のエステル化物(a1 )と
第2のエステル化物(a2 )との混合物を製造する方法
は、上記エステル化物の製造工程で説明した通りであ
り、これらの第1および第2のエステル化物(a1 )お
よび(a2 )を別々にエステル化反応により製造しても
よいし、それぞれ相当するアルコールの混合物と、(メ
タ)アクリル酸エステルとのエステル化反応により製造
してもよく、特に後者の方法は工業的に安価の製造方法
を提供できる。
【0081】この場合、第1のエステル化物(a1 )と
第2のエステル化物(a2 )との重量比は5:95〜9
5:5、好ましくは10:90〜90:10である。
【0082】第1のエステル化物(a1 )としては、例
えば、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)ブチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ
(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチ
レングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコ
ール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレ
ート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プ
ロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ
(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プ
ロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキ
シ(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロ
ピレングリコールモノ(エタ)アクリレート、エトキシ
(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プロピ
レングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコー
ル(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート等が例示される。第1
のエステル化物(a1 )は、その側鎖の短鎖アルコキシ
ポリアルキレングリコールに疎水性を有することが重要
である。
【0083】また、共重合のし易さの面からは、側鎖は
エチレングリコール単位が多く含まれているのが好まし
い。したがって、(a1 )としては、平均付加モル数が
1〜97、好ましくは1〜10の(アルコキシ)(ポ
リ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好
ましい。
【0084】第2のエステル化物(a2 )としては、例
えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)ア
クリレート、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)
プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メト
キシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレング
リコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリ
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキ
シポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレング
リコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アク
リレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)プ
ロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ
(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0085】高い減水性を得るためには、第2のエステ
ル化物(a2 )の平均付加モル数が4〜100のアルコ
キシポリアルキレングリコール鎖による立体反発と親水
性でセメント粒子を分散させることが重要である。その
ためには、ポリアルキレングリコール鎖にはオキシエチ
レン基が多く導入されることが好ましく、ポリエチレン
グリコール鎖が最も好ましい。よって、第2のエステル
化物(a2 )のアルキレングリコール鎖の平均付加モル
数nは、4〜100、好ましくは11〜100である。
【0086】また、上記(メタ)アクリル酸(塩)単量
体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸ならびにこ
れらの酸の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩お
よび有機アミン塩を挙げることができ、これらの1種ま
たは2種以上を用いることができる。
【0087】さらに、エステル化物単量体および(メ
タ)アクリル酸(塩)単量体の単量体成分と共重合可能
な単量体の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラ
コン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;
これらのジカルボン酸類とHO(R11O)r 12(ただ
し、R11Oは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基の
1種または2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合
はブロック状に付加していてもランダム状に付加してい
てもよく、rはオキシアルキレン基の平均付加モル数で
あり1から100の整数を表わし、R12は水素または炭
素原子数1〜22、好ましくは1〜15のアルキル基を
表わす。)で表わされるアルコールとのモノエステルあ
るいはジエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メ
タ)アクリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;酢酸
ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビ
ニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエ
チル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホ
ン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の
不飽和スルホン酸類およびそれらの一価金属塩、二価金
属塩、アルモニウム塩、有機アミン塩類;スチレン、α
−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;炭素原子数1〜
18、好ましくは1〜15の脂肪族アルコールあるいは
ベンジルアルコール等のフェニル基含有アルコールと
(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリアルキレング
リコールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレング
リコールモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられ、こ
れらの1種または2種以上を用いることができる。
【0088】また、本発明の重合体および/または重合
体塩の重量平均分子量としては、使用目的に応じて適宜
決定されるものであり、特に制限されるものではない
が、例えば、セメント分散剤の主成分として利用する場
合には、通常500〜500000、特に5000〜3
00000の範囲とすることが好ましい。重量平均分子
量が500未満では、セメント分散剤の減水性能が低下
するために好ましくない。一方、500,000を越え
る分子量では、セメント分散剤の減水性能、スランプロ
ス防止能が低下するために好ましくない。
【0089】上記重合工程により得られた重合体(重合
体塩を含む)では、セメント分散能に優れたセメント分
散剤の主成分とすることができるほか、炭酸カルシウ
ム、カーボンブラック、インクなどの顔料分散剤、スケ
ール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、CWM用分散
剤、増粘剤等への利用が可能である。
【0090】以上が、本発明のエステル化物を用いてな
る重合体の製造方法についての詳細な説明である。
【0091】
【実施例】以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的
に説明する。なお、例中、特にことわりのない限り、%
は重量%を、また、部は重量部を表わすものとする。な
お、以下に示す実施例および比較例での「重量表面損
失」は、既に本明細書中に定義した通りであり、かかる
重量表面損失を比較することにより、材料の「硫酸に対
する耐食性」の良し悪しを判断した。
【0092】 A)1%硫酸水溶液による腐食試験 テストピース: ・SUS304、SUS316;15×50×2mm、表面積17.6cm2 ・ガラス ;15×50×3mm、表面積18.9cm2 実施例1 蓋付きのガラス製容器に1%の硫酸水溶液45ml、テ
ストピース(ガラス、15×50×3mm、表面積1
8.9cm2 )を入れ、80℃で保存し4日後(98時
間後)にテストピースの重量変化を測定し、重量表面損
失を算出した。結果を下記表1に示す。
【0093】比較例1 蓋付きのガラス製容器に1%の硫酸水溶液45ml、テ
ストピース(SUS316、15×50×2mm、表面
積17.6cm2 )を入れ、80℃で保存し4日後(9
8時間後)にテストピースの重量変化を測定し、重量表
面損失を算出した。結果を下記表1に示す。
【0094】比較例2 蓋付きのガラス製容器に1%の硫酸水溶液45ml、テ
ストピース(SUS304、15×50×2mm、表面
積17.6cm2 )を入れ、80℃で保存し4日後(9
8時間後)にテストピースの重量変化を測定し、重量表
面損失を算出した。結果を下記表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】B)エステル化反応時の腐食試験 ステンレスおよびガラスのテストピースを溶液中にそれ
ぞれ浸漬させた状態で実施例2及び比較例3〜4に示す
エステル化反応を行った。試験終了後、テストピースの
重量変化と溶液中の鉄イオン濃度を測定し、重量表面損
失を算出した。ただし、このとき変化が判り易いように
エステル化反応終了後も加熱を続けた。
【0097】 テストピース: ・SUS304、SUS316;30×50×2mm、表面積33.2cm2 ・ガラス ;30×50×3mm、表面積34.8cm2 テストピース浸漬時間:加熱下、48時間 実施例2 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えたガラス製反応容器にメトキシポリ(n
=10)エチレングリコール257部、メタクリル酸1
25部、硫酸3.8部、フェノチアジン0.1部および
シクロヘキサン114部を仕込み、反応温度105℃で
エステル化反応を行った。このとき、反応容器にガラス
製テストピース(30×50×3mm、表面積34.8
cm2 )を浸漬させた。48時間後反応をとめ、テスト
ピースを取り出し、テストピースの重量変化および反応
溶液中の鉄イオン濃度を測定し、重量表面損失を算出し
た。得られた結果を下記に示すと共に、エステル化反応
組成(重量部)及びエステル化条件を下記表2に示す。
【0098】 <重量変化> 浸漬前重量 11.3025g 浸漬後重量 11.3025g (重量減少量 0.0000g) 重量表面損失 0.000g/m2 ・day <鉄イオン濃度>検出限界(0.0ppm)以下;原子
吸光分析により測定した。
【0099】比較例3 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えたガラス製反応容器にメトキシポリ(n
=10)エチレングリコール257部、メタクリル酸1
25部、硫酸3.8部、フェノチアジン0.1部および
シクロヘキサン114部を仕込み、反応温度105℃で
エステル化反応を行った。このとき、反応容器にステン
レス製テストピース(SUS316、30×50×2m
m、表面積33.2cm2 )を浸漬させた。48時間後
反応をとめ、テストピースを取り出し、テストピースの
重量変化および反応溶液中の鉄イオン濃度を測定し、重
量表面損失を算出した。得られた結果を下記に示すと共
に、エステル化反応組成(重量部)及びエステル化条件
を下記表2に示す。
【0100】 <重量変化> 浸漬前重量 21.5732g 浸漬後重量 21.5714g (重量減少量 0.0018g) 重量表面損失 0.271g/m2 ・day <鉄イオン濃度>3.7ppm;原子吸光分析により測
定した。
【0101】比較例4 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えたガラス製反応容器にメトキシポリ(n
=25)エチレングリコール371部、メタクリル酸1
07部、パラトルエンスルホン酸5.3部、フェノチア
ジン0.1部およびシクロヘキサン36部を仕込み、反
応温度115℃でエステル化反応を行った。このとき、
反応容器にステンレス製テストピース(SUS316、
30×50×2mm、表面積33.2cm2 )を浸漬さ
せた。48時間後反応をとめ、テストピースを取り出
し、テストピースの重量変化および反応溶液中の鉄イオ
ン濃度を測定し、重量表面損失を算出した。得られた結
果を下記に示すと共に、エステル化反応組成(重量部)
及びエステル化条件を下記表2に示す。
【0102】 <重量変化> 浸漬前重量 21.4569g 浸漬後重量 21.4558g (重量減少量 0.0012g) 重量表面損失 0.181g/m2 ・day <鉄イオン濃度>2.3ppm;原子吸光分析により測
定した。
【0103】
【表2】
【0104】以上の実施例2及び比較例3〜4の結果よ
り、エステル化反応組成がステンレスを腐蝕することは
明白である。よって、反応槽は、ステンレス製ではな
く、グラスライニングされたものを用いる方が良い。
【0105】C)ポリマー水溶液による腐食試験 ステンレスおよびガラスのテストピースを下記に示す製
造例により得られたポリマー溶液(1)中にそれぞれ浸
漬させ、実施例3及び比較例5〜6に示すようにテスト
ピースの重量変化と溶液中の鉄イオン濃度を測定し、重
量表面損失を算出した。
【0106】 テストピース: ・SUS304、SUS316;30×50×2mm、表面積33.2cm2 ・ガラス ;30×50×3mm、表面積34.8cm2 製造例;エステル化水溶液(1)の製造 温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管(コン
デンサ)を備えたグラスライニングされた反応槽にメト
キシポリ(n=25)エチレングリコール16500
部、メタクリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸
1水和物235部、フェノチアジン5部およびシクロヘ
キサン1060部を仕込み、反応温度115℃でエステ
ル化反応を行った。約20時間でエステル化率が99%
に達したのを確認した。そして49%水酸化ナトリウム
水溶液135部と水4890部を加えてパラトルエンス
ホン酸を中和し、ハイドロキノン8部を加えて昇温し、
シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサ
ンの留去後、調整水を添加して80%のエステル化水溶
液(1)を得た。
【0107】製造例;ポリマー水溶液(1)の製造 温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷
却管(コンデンサ)を備えたガラス製反応容器に水82
70部を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素雰囲気下で
80℃まで加熱した。そして上記で得られたエステル化
水溶液(1)132000部と連鎖移動剤として14%
メルカプトプロピオン酸水溶液697部を均一に混合し
た単量体混合物水溶液を4時間、および11%過硫酸ア
ンモニウム水溶液1125部を5時間で滴下した。その
後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応
を完結させた。pH2.2、重量平均分子量(GPCに
よるポリエチレングリコール換算;以下、同様とす
る。)20,000の本発明のポリマー水溶液(1)を
得た。
【0108】実施例3 蓋付きのガラス製容器にポリマー水溶液(1)70g、
テストピース(ガラス、30×50×3mm、表面積3
4.8cm2 )を入れ、80℃で保存し、5日後、12
日後にテストピースの重量変化と溶液中の鉄イオン濃度
を測定し、重量表面損失を算出した。結果を下記表3に
示す。
【0109】比較例5 蓋付きのガラス製容器にポリマー水溶液(1)70g、
テストピース(SUS316、30×50×2mm、表
面積33.2cm2 )を入れ、テストピースが完全に溶
液中に浸漬するようにした。80℃で保存し、5日後、
12日後にテストピースの重量変化と溶液中の鉄イオン
濃度を測定し、重量表面損失を算出した。結果を下記表
3に示す。
【0110】比較例6 蓋付きのガラス製容器にポリマー水溶液(1)70g、
テストピース(SUS304、30×50×2mm、表
面積33.2cm2 )を入れ、テストピースが完全に溶
液中に浸漬するようにした。80℃で保存し、5日後、
12日後にテストピースの重量変化と溶液中の鉄イオン
濃度を測定し、重量表面損失を算出した。結果を下記表
3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】以上の実施例3及び比較例5〜6の結果よ
り、ポリマー溶液がステンレスを腐蝕することは明白で
ある。よって、ポリマーの製造に用いる反応槽は、ステ
ンレス製ではなく、グラスライニングされたものを用い
る方が良い。
【0113】
【発明の効果】本発明では、硫酸に対する耐食性が2.
0g/(m2 ・day)以下の材料でライニングないし
コーティングされた反応槽を用いることにより、硫酸や
パラトルエンスルホン酸等のエステル化触媒や過硫酸ア
ンモニウムなどの過硫酸塩から発生する硫酸等の重合開
始剤の分解物などの金属腐食性物質に対して該反応槽の
内壁面や撹拌翼等の腐食を防止することができ、これに
より、思いもよらぬ以下の作用効果が発現できるもので
ある。すなわち、内壁面等が粗面化せず滑らかな表面に
よる高非付着性等が維持でき、ひいては反応槽の内壁面
等へのゲル状物の形成を絶つことができ、最終製品であ
るセメント分散剤や炭酸カルシウム、カーボンブラッ
ク、インクなどの顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・
水スラリー用分散剤、CWM用分散剤、増粘剤等の性能
及び品質への悪影響を与える要因を除去でき、これらの
性能及び品質の低下を防止し、多くの人と時間と金を投
下して開発したこれらの製品の持つ高性能な諸特性を十
分に発現させることができる。また、反応槽内部(内壁
面や撹拌翼など)全体の十分な防食性による耐久性の著
しい向上も図られ、耐熱性、耐薬品性を有し、反応槽に
添加されるいずれのものに対しても不活性で非汚染性で
あることさらに非付着性も有することから、耐用年数の
著しい向上、さらには反応槽内部の保守・点検作業の軽
減にもつながる。
【0114】また、本発明では反応槽をグラスライニン
グすることで、上記に示す作用効果がより顕著に得られ
る。
【0115】さらに、本発明では硫酸、パラトルエンス
ルホン酸等のエステル化触媒やアルカリ金属の過硫酸塩
等などの重合開始剤の分解物などの金属腐食性物質を利
用する場合に特に有用であり、上記に示す作用効果がよ
り顕著に得られる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式R1 O(R2 O)nH(ただし、
    式中、R1 は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わ
    し、R2 Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基
    を表わし、この際、各R2 Oの繰り返し単位は同一であ
    ってもあるいは異なっていてもよく、およびR2 Oが2
    種以上の混合物の形態である場合には各R2 Oの繰り返
    し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム
    状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレ
    ン基の平均付加モル数を表わし、0〜300の数であ
    る)で示されるアルコールと(メタ)アクリル酸とのエ
    ステル化反応によりエステル化物を製造するのに使用さ
    れるものであって、硫酸に対する耐食性が2.0g/
    (m2 ・day)以下の材料でライニングないしコーテ
    ィングされてなる反応槽が設けられていることを特徴と
    するエステル化物の製造装置。
  2. 【請求項2】 前記反応槽が、グラスライニングされて
    いることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の製造装置を用
    いてなることを特徴とするエステル化物の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のエステル化物の重合反
    応により重合体を製造するのに使用されるものであっ
    て、ライニングないしコーティングされた反応槽が設け
    られていることを特徴とする重合体の製造装置。
  5. 【請求項5】 前記反応槽が、硫酸に対する耐食性が
    2.0g/(m2 ・day)以下の材料でグラスライニ
    ングされていることを特徴とする請求項4に記載の製造
    装置。
  6. 【請求項6】 請求項4または5に記載の製造装置を用
    いてなることを特徴とする重合体の製造方法。
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