JP4007443B2 - 脱水反応生成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱水反応生成物の製造方法に関するものである。より詳しくは、セメント分散剤の製造原料等として使用される脱水反応生成物、すなわちアルコキシポリアルキレングリコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とのエステル化物及び/又はアミド化物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1981年にコンクリート構造物の早期劣化が社会問題化して以来、コンクリート中の単位水量を減らしてその耐久性と施工性を向上させることが強く求められており、このような要求を満たすセメント組成物、更にこの品質及び性能に多大な影響を与えるセメント分散剤の開発が盛んに行われている。
【0003】
これらのうち、特開平9−328346号公報には、アルコキシポリアルキレングリコールと、(メタ)アクリル酸エステルとを、塩基性触媒の存在下にエステル交換反応に供して得られるアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸(塩)単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体を用いて導かれた重合体(A)及び/又は該重合体(A)を更にアルカリ性物質で中和して得られた重合体塩(B)を含むセメント分散剤が開示されている。
【0004】
更に、上記公報の比較例1及び2には、エステル化反応を酸触媒存在下で行う例として、反応器(セパラブルフラスコ)に温度計、攪拌機及び水分離器を設け、反応生成水を分離できるようにした反応装置に、メタクリル酸、メトキシポリエチレングリコール(オキシエチレン基の平均付加モル数:10モル)、酸触媒として硫酸(比較例1)又はパラトルエンスルホン酸(比較例2)、重合禁止剤としてフェノチアジン、溶剤としてシクロヘキサンを仕込み攪拌しながら加熱してエステル化反応を行うと同時に、常圧下にシクロヘキサン−水共沸物を留出させ、反応生成水を水分離器で除去しながらシクロヘキサンを還流させる方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、エステル化反応を酸触媒存在下で行うと、塩基性触媒に比べて、減水性能が悪い上、酸触媒によるエステル化反応ではアルコキシポリアルキレングリコールのエーテル開裂により両末端に水酸基をもつ(ポリ)アルキレングリコールが副生し、これが(メタ)アクリル酸とのエステル化反応で二官能のジ(メタ)アクリル酸エステル系単量体が形成され、更にこれが次工程の重合反応で架橋剤として作用し、セメント分散性能の乏しい高分子量架橋ポリマーが生成してしまう旨が記載されている。具体的には、上記公報の比較例1及び2の結果を示す表1において、エステル化物の反応時に架橋成分がそれぞれ12.0%、14.6%と多量に形成されており、またエステル化反応時間も共に25時間と長時間を要することが示されている。しかるに、現在までに、エステル化反応を酸触媒存在下で行う方法に関しては、上述したような不純物の形成を抑える手段に関しては、なんら報告されていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、アルコキシポリアルキレングリコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸との脱水反応における不純物の形成を抑制することにより、優れたセメント分散能を有するセメント分散剤の製造原料等として使用される脱水反応生成物を製造する方法を提供すると共に、反応中の突沸を防止して安全性に優れた脱水反応生成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために、脱水反応、中でもエステル化反応及び/又はアミド化反応におけるエステル化物及び/又はアミド化物の製造方法につき、鋭意検討した結果、脱水反応温度と反応容器を加熱するための加熱媒体との温度差が一定温度を超えると、不純物が増えることに起因してセメント分散性能が低下し、また、反応中にしばしば内容物が突沸することに着目し、これらに基づき、不純物の形成を抑制し、高品質の脱水反応生成物をより安全に製造することのできる解決策を見出し、当該知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち本発明は、脱水溶媒中で、下記一般式(1);
R1 −O−(R2 O)n−H (1)
(式中、R1 は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R2 Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、R2 Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0〜300の数である。)で表されるアルコキシポリアルキレングリコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを含む反応液を、加熱媒体を用いて加熱される反応容器内で脱水反応に付する脱水反応工程を含んでなる脱水反応生成物の製造方法であって、上記脱水反応工程は、上記加熱媒体の温度(t1 )と上記反応液の反応温度(t2 )との温度差(Δt=t1 −t2 )を0〜30℃として行われる脱水反応生成物の製造方法である。
以下に、本発明を詳述する。
【0009】
先ず、本発明の脱水反応生成物の製造方法における脱水反応工程が、加熱媒体の温度(t1 )と反応液の反応温度(t2 )との温度差(Δt=t1 −t2 )を0〜30℃として行われることについて説明する。
上記反応工程では、反応液を、加熱媒体を用いて加熱される反応容器内で脱水反応に付することになるが、加熱媒体の温度と反応液の反応温度とを同じとするか、又は、加熱媒体の温度が反応液の反応温度よりも特定の範囲内で高くなるように行われることになる。すなわち加熱媒体の温度をt1 とし、反応液の反応温度をt2 とし、これらの温度差をΔtとすると、温度差(Δt)がt1 −t2 により計算されることになり、温度差(Δt)を0〜30℃として上記反応工程が行われることになる。このように上記反応工程が行われることにより、反応容器壁面での局部加熱を抑えることができ、反応系内で不純物が形成するのを抑えることができることになる。また、反応容器壁面での局部加熱を抑えることにより、反応液が突沸することを防止することができることになる。
【0010】
上記反応工程において、上記温度差(Δt)が30℃を超えると、アルコキシポリアルキレングリコールにおけるポリアルキレングリコール鎖の切断によって過大量の不純物(主にジエステル)を生成し、その結果、該不純物が混入された脱水反応生成物を用いて製造されるセメント分散剤では、そのセメント分散性能が低下する他、原料の重合が生じたり、共沸物への原料の混入量が増す等により、生成物である脱水反応生成物の性能及び品質の劣化が生じたりする等の不具合が生じることになり、また、反応中に反応液が突沸する等の事態が生じて安全面においても好ましくはないこととなる。また、反応液の突沸が生じると、反応液がオーバーヘッド管、コンデンサ等に吹き上がり、これらの装置内でゲル化したり、反応液の組成が変わったりすることにより、得られる生成物の品質にも影響を及ぼすことになる。一方、上記温度差(Δt)が0℃未満であると、脱水反応により生じる反応生成水の生成速度が極端に遅くなる他、不純物の形成は生じないが、脱水溶媒を用いた還流が遅くなって脱水に著しく時間がかかり、脱水反応が円滑に進行しづらくなるため好ましくはない。上記温度差(Δt)の好ましい範囲としては、10〜25℃とすることである。なお、上記温度差(Δt)は、上記反応工程の全期間にわたって上記の範囲内となることが好ましいが、本発明の作用効果を奏することになる限り、上記反応工程の全期間のうち部分的に上記の範囲内とならなくてもよい。
【0011】
上記脱水反応工程における加熱媒体の温度(t1 )とは、加熱媒体から反応液に伝熱される際の加熱媒体の温度を意味し、反応液の反応温度(t2 )とは、脱水反応が行われる際の反応液の温度を意味する。加熱媒体の温度(t1 )や反応液の反応温度(t2 )は、加熱媒体や反応液全体で実質的に均一な温度であることが好ましいが、ある程度不均一な温度であっても、本発明の作用効果を奏することになる限り、上記温度差(Δt)を満たすような部分が加熱媒体や反応液中に存在すればよい。
【0012】
上記脱水反応工程において用いられる加熱媒体としては特に限定されず、例えば、製造設備において用いることが便宜であり、本発明の作用効果をより確実に発揮することができる点から、蒸気であることが好ましい。すなわち上記脱水反応工程は、加熱媒体として、蒸気を用いて行われることが好ましい。この場合、反応容器の加熱方式は、外部ジャケットに蒸気を接触させる、すなわち外部ジャケット内に蒸気を満たすことによって加熱する方式を用いることが好ましい。なお、加熱媒体の温度(t1 )は、外部ジャケットに蒸気を接触させる場合には、外部ジャケット内の蒸気温度である。
【0013】
本発明ではまた、上記温度差(Δt)が上記の範囲内となる加熱媒体の温度(t1 )と反応液の反応温度(t2 )としては、反応液の反応温度(t2 )が水と脱水溶媒との共沸温度となるようにすることが好ましい。これにより、脱水反応により生じる反応生成水を反応液から効率よく留去させることができる。このような加熱媒体の温度(t1 )と反応液の反応温度(t2 )としては、用いる脱水溶媒により適宜設定すればよいが、例えば、t1 を90〜150℃とし、t2 を60〜150℃とすることが好ましい。t1 やt2 が150℃を超えると、反応系内で不純物が形成するのを抑えたり、反応液が突沸することを防止したりすることが充分にできなくなるおそれがある。t1 が90℃未満であったり、t2 が60℃未満であったりすると、脱水反応が進行しにくくなるおそれがある。より好ましくは、t1 を100〜140℃とし、t2 を70〜140℃とすることであり、更に好ましくは、t1 を110〜140℃とし、t2 を85〜130℃とすることである。加熱媒体が蒸気である場合には、蒸気の圧力を調整することによりt1 を調整することになるが、t1 が上記の範囲となる圧力範囲としては、例えば、0.07〜0.48MPaである。
【0014】
本発明の脱水反応生成物の製造方法においては、アルコキシポリアルキレングリコールにおけるポリアルキレングリコール鎖の切断によって生じる不純物であるジエステルを生成することが抑制されることになるが、脱水反応生成物を100重量%とすると、ジエステルの生成量が5重量%以下となるようにすることが好ましい。これにより、本発明における脱水反応生成物を製造原料として重合体を調製するときにゲル化がより確実に防止され、目標の分子量範囲への調整がより容易となり、重合体のセメント分散性能等がより向上することになる。より好ましくは、3重量%以下である。なお、ジエステルの生成量を求める方法としては、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて下記の測定条件により測定することにより行うことができる。
【0015】
ジエステル測定条件
機種 :Borwin(商品名:日本分光社製)
検出器:紫外分光(UV)検出器 HITACHI L−4000H UV Detector
溶離液:液種 アセトニトリル/0.1%りん酸水溶液=50/50(容積比)流量 0.8ml/min
カラム:種類 ODS−120T+ODS−80Ts 4.6×250mm
(いずれも商品名、東ソー社製)
オーブン温度 40℃
【0016】
次に、本発明の脱水反応生成物の製造方法における脱水反応工程において、脱水溶媒中で、上記一般式(1)で表されるアルコキシポリアルキレングリコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを含む反応液を脱水反応に付することについて説明する。
【0017】
上記脱水反応工程では、例えば、反応容器、コンデンサ及び該反応容器と該コンデンサとを接続する連結管を必須とする脱水反応装置と、該コンデンサと供給管により接続された水分離器とを用いて行われる。このような脱水反応装置を用いて、反応容器により脱水反応を行いつつ、コンデンサと水分離器とを用いて蒸留操作を行うことになる。すなわち脱水反応工程では、脱水反応が化学平衡となる場合には、反応によって生成される反応生成水を反応容器から取り除くと反応が進行することになり、このような工程では、(1)反応容器中で生成する反応生成水を取り除きやすくするため、反応液に脱水溶媒を混合し、該脱水溶媒と生成水とを共沸させることにより気化された留出物を生じさせる操作、(2)該留出物が反応容器とコンデンサとを接続する連結管を通過してコンデンサに入り、該コンデンサ中で留出物を凝縮液化させる操作、(3)凝縮液化された留出物をコンデンサに接続された水分離器中で脱水溶媒と生成水とに分離する操作、(4)分離された脱水溶媒を反応容器中に還流させる操作、等の操作が行われることになる。
【0018】
上記反応容器とは、反応槽や、反応器、反応釜等と同じ意味内容で用いられるものであって、脱水反応を行うことができる容器であれば特に限定されるものではない。反応容器の形状は、特に限定されるものではない。多角型、円筒型等があるが、攪拌効率、取扱い性、汎用性等の点から円筒型が好ましい。また邪魔板の有無は問わない。このような反応容器の内部の材質としては特に限定されず、公知の材質が使用できるが、例えば、SUS製、好ましくは、耐蝕性の点から、SUS304、SUS316、SUS316L、より好ましくは、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、反応容器の内部にグラスライニング加工等が施されて反応原料及び生成物に対して不活性なものとしてもよい。このような反応容器は、通常では脱水反応を均一に効率よく行うため攪拌機が備えられている。攪拌機は特に限定されるものではない。攪拌機は通常、電動モーター、軸、攪拌機から構成されるがその攪拌翼も形状を問わない。攪拌機としては、デスクタービン、ファンタービン、わん曲ファンタービン、矢羽根タービン、多段ファンタービン翼、ファウドラー翼、ブルマージン型、角度付き羽根、プロペラ型、多段翼、アンカー型、ゲート型、二重リボン翼、スクリュー翼、マックスブレンド翼等を挙げることができ、なかでも多段ファンタービン翼、ファウドラー翼が汎用性の点で好ましい。
【0019】
上記コンデンサとは、反応容器から生じる留出物を凝縮液化させる装置であり、該凝縮液化は、冷却液である管外流体と留出物とを熱交換させることにより行われる。
【0020】
上記コンデンサの材質としては、SUS304、SUS316、SUS316L等のSUS製や炭素鋼(CS)等、公知のものが使用できる。ゲル状物の発生をより低減するために、内面を鏡面仕上げやグラスライニング加工されたコンデンサを使用できるが、加工やメンテナンスにかかるコストの点から、SUS304、SUS316、SUS316L、好ましくは、SUS316、SUS316L等のSUS製のコンデンサを用いることが好ましい。
【0021】
上記コンデンサの伝熱面積としては、反応容器の容積等によって異なるが、例えば、反応容器30m3 では、50〜500m2 とすることが好ましい。より好ましくは、100〜200m2 である。このようなコンデンサに使用される冷却媒体としては、例えば、水やオイル等が挙げられる。
【0022】
上記水分離器の容積としては、反応容器の容積や留出物の留出量等によって異なるが、例えば、反応容器30m3 では、1〜20m3 とすることが好ましい。より好ましくは、3〜10m3 である。
【0023】
上記脱水反応工程において用いられる反応液は、上記一般式(1)で表されるアルコキシポリアルキレングリコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを必須の反応原料として含むものであるが、付加的にその他の成分を含んでいても含んでいなくてもよい。その他の成分を含む場合には、必須の反応原料を主成分として含むことが好ましい。これら反応原料とされる化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記脱水反応工程では、一般式(1)で表されるアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とが脱水反応する場合には、エステル化反応によりエステルを生成することになり、アミンと(メタ)アクリル酸とが脱水反応する場合には、アミド化反応によりアミドを生成することになる。本明細書中、上記のエステルやアミドをそれぞれエステル化物やアミド化物ともいう。
【0025】
上記一般式(1)で表されるアルコキシポリアルキレングリコールにおいて、一般式(1)中、R1 は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R2 Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18、好ましくは炭素数2〜8のオキシアルキレン基を表す。nは、R2 Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0〜300、好ましくは2〜300の数である。なお、平均付加モル数とは、当該化合物1モル中における当該繰り返し単位のモル数の平均値を意味する。
【0026】
上記R1 の炭素数が30を超えたり、上記R2 Oの炭素数が18を超えたりすると、エステル化物を製造原料として得られる重合体の水溶性が低下し、セメント添加剤等に用いる場合の用途性能、すなわちセメント分散性能等が低下するおそれがある。また、上記nが300を超えると、一般式(1)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応性が低下するおそれがある。
【0027】
上記R1 やR2 Oの好適な炭素数の範囲は、エステル化物の使用用途により設定されることになる。例えば、エステル化物をセメント添加剤用重合体の製造原料として用いる場合には、R1 としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基等のアルキルフェニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜18の直鎖又は枝分かれ鎖のアルキル基及びアリール基とすることが好ましい。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基である。
【0028】
上記R2 Oとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられ、これらの中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。なお、R2 Oは、一般式(1)で表される化合物を構成する繰り返し単位であり、各繰り返し単位は同一であってもよく、異なっていてもよい。このうち、2種以上の異なる繰り返し単位を有する場合には、各繰り返し単位はブロック状に付加していてもよく、ランダム状に付加していてもよく、特に限定されるものではない。
【0029】
上記nの範囲についても、エステル化物の使用用途により設定されることになり、例えば、エステル化物をセメント添加剤用重合体の製造原料として用いる場合には、2〜300とすることが好ましい。より好ましくは、5〜200であり、更に好ましくは、8〜150である。また、増粘剤等として用いる場合には、10〜250とすることが好ましい。より好ましくは、50〜200である。
【0030】
上記nが0の場合には、水との溶解性や沸点の点から、上記R1 は、炭素数4以上の炭化水素基であることが好ましい。すなわちnが0の場合には、特にメタノールやエタノール等のアルコールでは低沸点のため生成水と共に蒸発して生成水中に溶解することにより、当該アルコール原料の一部が反応系外に留去され、目的とするエステル化物の収率が低下することから、これを防止するためである。
【0031】
上記アミド化反応に使用されるアミンとしては特に限定されず、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン等の脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアミルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族第三アミン類;アリルアミン、ジアリルアミン等の脂肪族不飽和アミン類;シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン類;アニリン、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、ジフェニルアニリン等の芳香族モノアミン類;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン類;α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン等のアミノナフタリン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ポリエチレングリコール(モノ)アミン、ポリエチレングリコール(ジ)アミン等のオキシエチレンアミン類;尿素、チオ尿素等の尿素類;ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンへのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレンイミンへのプロピレンオキサイド付加物等の高分子類等が挙げられる。
【0032】
上記エステル化反応やアミド化反応では、(メタ)アクリル酸と共に、その他のカルボキシル基を有する不飽和単量体を用いることができる。カルボキシル基を有する不飽和単量体とは、少なくともカルボキシル基と不飽和結合を有する単量体である。具体的には、クロトン酸、チグリン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、エライジン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記エステル化反応やアミド化反応においては、触媒の存在下で反応を行うことが好ましい。エステル化反応では酸触媒が好適であり、反応を速やかに進行させることができる。このような酸触媒としては、水和物及び/又は水溶液の形態で用いてもよく、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion(商品名、デュポン社製)」レジン、「Amberlyst 15(商品名)」レジン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、塩酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記酸触媒の中でも、後述する脱水溶媒と水との共沸温度や反応温度等の点から、常圧(1013hPa)における沸点が高いもの、具体的には、常圧における沸点が150℃以上であるものが好ましい。より好ましくは、200℃以上である。このような酸触媒としては、例えば、硫酸(常圧における沸点:317℃)、パラトルエンスルホン酸(沸点:185〜187℃/13.3Pa(0.1mmHg))、パラトルエンスルホン酸水和物、メタンスルホン酸(沸点:167℃/1333.2Pa(10mmHg))等が挙げられる。これらの中でも、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物を用いることが好適である。
【0035】
上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒作用を有効に発現することができる範囲であれば特に限定されず、例えば、0.4ミリ当量/g以下とすることが好ましい。0.4ミリ当量/gを超えると、エステル化反応時に反応系内で形成されるジエステルの量が増加し、それらを用いて合成されるセメント添加剤用重合体のセメント分散能が低下するおそれがある。より好ましくは、0.36〜0.01ミリ当量/gであり、更に好ましくは、0.32〜0.05ミリ当量/gである。なお、酸触媒の使用量(ミリ当量/g)とは、反応に使用した酸触媒のH+ の当量数(ミリ当量)を、反応原料の合計仕込み量(g)で割った値で表され、具体的には、下記式により算出される値を意味する。
【0036】
【数1】
【0037】
上記酸触媒の使用量としてはまた、各種の化学製品用途に適用される重合体の製造原料となるエステル化物やアミド化物の有用性や、このような適用用途に要求される基本性能である分散性能等に悪影響を及ぼすことになるゲル状物発生の防止・抑制の点から、反応原料の合計重量に対する酸触媒中の酸の重量の比をX(重量%)とし、酸触媒中の水和物及び/又は水溶液として存在する水分の重量の比をY(重量%)とした場合に、0<Y<1.81X−1.62
の関係式を満足することが好ましい。
【0038】
上記関係式について具体例を挙げて説明すれば、例えば、パラトルエンスルホン酸一水和物を例にとると、反応原料の合計重量に対するパラトルエンスルホン酸の重量の比がX(重量%)であり、反応原料の合計重量に対する一水和物として存在する水分の重量の比がY(重量%)であるのであって、決して、酸触媒以外の酸成分として、例えば、原料の(メタ)アクリル酸等や水分すなわちエステル化反応により生ずる反応生成水等は、上記XやYの対象物とはなり得ない。
【0039】
上記酸触媒の使用量が上記関係式を満足しない場合には、例えば、Yが0であると、酸触媒中に水和物及び/又は水溶液として存在する水分が存在しないこととなり、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量が増加し、それらを用いて合成されるセメント添加剤用重合体等の用途性能として、例えば、セメント分散能等が低下するおそれがある。また、Y≧1.81X−1.62であると、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量が増加し、上記と同様となる。
上記酸触媒の反応系への添加方法としては、一括、連続又は順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応容器に、反応原料と共に一括で仕込むことが好ましい。
【0040】
上記エステル化反応やアミド化反応は、重合禁止剤の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応原料中の不飽和カルボン酸とその生成物であるエステル化物及び/又はアミド化物の重合を防止することできる。このような重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、特に限定されず、例えば、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の点から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンを用いることが好ましい。これらは、脱水反応工程においても溶剤留去工程においても極めて有効に重合禁止能を発揮することができる点から極めて有用である。
【0041】
上記重合禁止剤の使用量としては、反応原料であるアルコール、アミン及び酸の合計仕込量を100重量%とすると、0.001〜1重量%とすることが好ましい。0.001重量%未満であると、重合禁止能の発現が充分でなく、反応原料や生成物の重合を有効に防止しにくくなり、1重量%を超えると、エステル化物中に残留する重合禁止剤量が増えるため、品質及び性能が低下するおそれがあり、また、過剰に添加することに見合う効果も得られず、経済的な面から不利となるおそれがある。より好ましくは0.001〜0.1重量%である。
【0042】
上記エステル化やアミド化反応においては、脱水溶媒の存在下で脱水反応操作を行うことにより、反応系外に生成水と脱水溶媒とを共沸させ、凝縮液化して生成水を分離除去させながら還流させることにより行うことができる。これにより、エステル化反応やアミド化反応で生成する反応生成水を効率よく共沸できる。このような脱水溶媒としては、水と共沸する溶媒であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水との共沸温度が150℃以下であるものが好ましく、60〜90℃であるものがより好ましい。このような脱水溶媒として具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。水との共沸温度が150℃を超えると、反応時の反応系内の温度管理や留出物の凝縮液化処理等の制御等を含む取り扱い性が低下するおそれがある。
【0043】
上記脱水溶媒を用いる脱水反応操作において、脱水溶媒の使用量としては、反応原料であるアルコール、アミン及び酸の合計仕込量を100重量%とすると、1〜100重量%とすることが好ましい。100重量%を超えると、過剰に添加することに見合う効果が得られず、また、反応温度を一定に維持するために多くの熱量が必要となり、経済的な面から不利となるおそれがある。より好ましくは、2〜50重量%である。
【0044】
上記脱水反応工程において、エステル化反応やアミド化反応は、回分式や連続式いずれの反応操作方法によっても行ない得るが、回分式で行うことが好ましい。また、反応条件としては特に限定されず、反応が円滑に進行する条件であればよいが、例えば、反応温度としては、60〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは、70〜140℃であり、更に好ましくは、85〜130℃であり、最も好ましくは、100〜120℃である。60℃未満であると、脱水溶媒の還流が遅くなり、脱水に時間がかかる他、反応が進行しにくくなるおそれがあり、150℃を超えると、反応原料の一部が分解することにより、エステル化物やアミド化物により得られる重合体において、セメント分散性能等の各種用途における分散性能や増粘特性の低下や、反応原料の重合、留出物への反応原料の混入量の増加、エステル化物やアミド化物の性能及び品質の劣化等が生じるおそれがある。
【0045】
上記反応条件において、反応時間としては、後述するように反応率が70%以上に達するまでとすることが好ましい。より好ましくは、80%以上に達するまで、更により好ましくは、98%以上に達するまでである。通常では、1〜100時間、好ましくは3〜60時間である。また、反応圧力としては、常圧又は減圧下のいずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。
【0046】
上記エステル化反応やアミド化反応の反応率としては、70%以上となるように設定することが好ましい。70%未満であると、製造されるエステルやアミドの収率が不充分であり、これを重合原料として得られるセメント添加剤用重合体等の用途性能、すなわちセメント分散能等が低下するおそれがある。より好ましくは、80%以上、更に好ましくは、98%以上である。なお、上記反応率とは、反応原料であるアルコールやアミンの仕込み時及び反応終了時の量の比率であって、例えば、下記測定条件で液体クロマトグラフィー(LC)により各々のピークの面積として測定することにより、下記式により算出される値(%)である。
【0047】
【数2】
【0048】
反応率測定条件
機種 :Borwin(商品名:日本分光社製)
検出器:示差屈折計(RI)検出器 HITACHI L−3350 RI Monitor
溶離液:液種 アセトニトリル/0.1%りん酸水溶液=50/50(容積比 )
流量 0.8ml/min
カラム:種類 ODS−120T+ODS−80Ts 4.6×250mm
(いずれも商品名;東ソー社製)
オーブン温度 40℃
【0049】
本発明の脱水反応生成物の製造方法では、脱水反応工程において酸触媒を用いた場合には、酸触媒や(メタ)アクリル酸を中和する中和工程を行うことが好ましい。これにより、触媒が活性を失い、エステル化反応やアミド化反応により得られる脱水反応生成物の加水分解が抑制され、重合に関与しない不純物の発生が抑制された結果、重合体の品質や性能の低下を抑制することが可能となる。
【0050】
上記中和工程の方法としては、例えば、エステル化反応やアミド化反応の終了後、酸触媒を中和剤で中和することにより行う方法が好ましい。
上記中和剤としては、酸触媒を中和できるものであれば特に制限はない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等を挙げることができ、これらが1種又は2種以上使用される。また、中和剤の形態としては特に限定されず、例えば、アルカリ水溶液の形態とすることが好ましい。
【0051】
上記中和工程では、酸触媒や(メタ)アクリル酸が中和されることになるが、酸触媒の全部と、(メタ)アクリル酸の一部が中和されるように設定することが好ましい。この場合、中和される(メタ)アクリル酸は、エステル化反応やアミド化反応後の残りの(メタ)アクリル酸を100重量%とすると、20重量%以下、好ましくは、0.01〜5重量%であることが好ましい。なお、酸触媒と(メタ)アクリル酸とでは、酸触媒の方が酸強度が大きいため、酸触媒から中和されることになる。
【0052】
上記中和工程における中和方法では、脱水溶媒中でエステル化反応やアミド化反応を行う場合には、アルカリと共に多量の水を反応系に添加することが好ましい。すなわち多量の水がない状態では、アルカリが脱水溶媒に難溶であるために濃い状態で系内に浮遊し、このような高濃度のアルカリの浮遊は中和に消費されるまでの長時間にわたって消失せず、エステル化物やアミド化物の加水分解を引き起こすことになる。この場合、水の添加量としては、アルカリの使用形態にもよるが、例えば、40〜60重量%のアルカリ水溶液を中和剤として添加する場合には、アルカリ水溶液とは別に、アルカリ水溶液の1重量部に対して、通常5〜1000重量部とすることが好ましい。より好ましくは、10〜100重量部である。5重量部未満であると、アルカリが反応系内で不均一になるおそれがあり、1000重量部を超えると、生産性を確保するために中和槽が別途必要となる等、生産コストが上昇するおそれがある。
【0053】
上記中和工程における中和温度としては、例えば、90℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、0〜80℃である。更により好ましくは25〜65℃である。90℃を超えると、添加される中和剤が加水分解の触媒として作用し、加水分解生成物を多量に生成するようになるおそれがある。80℃以下であると、加水分解生成物の生成がより充分に抑制されることになるが、0℃未満であると、反応液が粘稠になることに起因して攪拌がしにくくなる他、反応後に水を留去するため所定の温度まで降温するのに長時間を要したり、室温よりも低い温度まで降温するのに新たに冷却手段(装置)を設けたりする必要が生じて生産コストが上昇するおそれがある。
【0054】
脱水溶媒を重合工程等に利用する場合を除いては、該脱水溶媒を留去することが好ましい。このような溶剤留去工程において、脱水溶媒の留去方法としては特に限定されず、例えば、脱水溶媒のみを留出するようにして留去してもよく、他の適当な添加剤を加えて留去してもよいが、水を用いて脱水溶媒と共沸させて留去することが好ましい。この場合、中和工程が行われたことにより、反応系内に酸触媒やアルカリが実質的に存在しないため、水を加えて昇温しても加水分解反応が起こらない。このような方法により、より低い温度で脱水溶媒を除去することができることになる。
【0055】
上記留去方法の条件としては、反応系内の脱水溶媒を好適に留出(蒸発)させるように設定すれば特に限定されず、例えば、溶剤留去中の反応容器内の液温(常圧下)としては、水を用いる場合には、通常80〜120℃とすることが好ましい。より好ましくは、90〜110℃である。また、水を用いない場合には、通常80〜160℃とすることが好ましい。より好ましくは、90〜150℃である。上記のいずれも場合にも、上記温度よりも低いと、脱水溶媒を蒸発させるのに充分な温度(熱量)とはならないおそれがあり、上記温度よりも高いと、重合を引き起こすおそれがある他、多くの熱量が大量の低沸点原料の蒸発に消費されるおそれがある。反応容器内の圧力としては、常圧下又は減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。
上記溶剤留去工程において用いる装置系としては、脱水反応工程で用いた装置系をそのまま使用することが好ましい。
【0056】
本発明の脱水反応生成物の製造方法により得られる脱水反応生成物は、各種の重合体、すなわちセメント添加剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク等の顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、石炭・水スラリー(CWM)用分散剤、増粘剤等の化学製品に用いられる重合体を製造するための製造原料として好適に適用されることになる。
【0057】
以下では、脱水反応生成物の製造方法により得られる脱水反応生成物を製造原料としてセメント分散剤用重合体を製造する方法や、該セメント分散剤用重合体を含有するセメント添加剤を製造する方法、該セメント添加剤を使用する方法について説明する。
【0058】
上記セメント分散剤用重合体としては、得られた脱水反応生成物と不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とする単量体を重合して得られるポリカルボン酸系重合体が挙げられる。このようなポリカルボン酸系重合体の重合方法としては、特に制限はなく、例えば、重合開始剤を用いての溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法を採用できる。
【0059】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、エライジン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;これらのジカルボン酸とアルコールのモノエステル類等を挙げることができ、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩を挙げることができる。
【0060】
ポリカルボン酸系重合体には、必要に応じて不飽和カルボン酸系単量体以外の単量体を共重合させることもできる。このような単量体としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類やそれらの一価金属塩、二価金属塩、アルモニウム塩、有機アミン塩類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;炭素数1〜18、好ましくは1〜15の脂肪族アルコールやベンジルアルコール等のフェニル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0061】
上記ポリカルボン酸系重合体は、特定の重量平均分子量を有する重合体であることが好ましい。例えば、下記測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量としては、例えば、500〜500000であることが好ましい。500未満であると、セメント添加剤の減水性能が低下するおそれがあり、500000を超えると、セメント添加剤の減水性能、スランプロス防止能が低下するおそれがある。より好ましくは、5000〜300000であり、最も好ましくは8000〜100000の範囲である。
【0062】
上記GPCは、溶離液貯蔵槽、溶離液の送液装置、オートサンプラー、カラムオーブン、カラム、検出器、データ処理機等から構成される。例えば、下記の市販の装置を組み合わせることにより測定条件を設定して分子量を測定することができる。
【0063】
分子量測定条件
機種:GPC−900(商品名;日本分光社製)
検出器:示差屈折計(RI)検出器(GPC−900一体型)
溶離液の流量:0.5ml/min
【0064】
検量線:検量線は、標準試料の分子量や数、ベースラインの引き方、検量線近似式の作製方法等により変化する。このため、以下の条件を設定することが好ましい。
1.標準試料
標準試料には、市販の標準ポリエチレンオキシド(PEO)と標準ポリエチレングリコール(PEG)を使用する。標準試料には、次の分子量のものを使用することが好ましい。
1470、4250、7100、12600、24000、46000、85000、219300、272500(合計9点)
これらの標準試料は、以下の点に配慮して選択した。
(1)分子量900以上の標準試料を7点以上使用する。
(2)分子量900〜2000の標準試料を少なくとも1点含む。
(3)分子量2000〜60000の標準試料を少なくとも3点含む。
(4)分子量200000±30000の標準試料を少なくとも1点含む。
(5)分子量270000±30000の標準試料を少なくとも1点含む。
【0065】
2.ベースラインの引き方
分子量の上限:水平で安定なベースラインからピークが立ち上がる点とする。
分子量の下限:主ピークの検出が終了した点とする。
3.検量線の近似式
上記標準試料を用いて作製した検量線(「溶出時間」対「log分子量」)は3次式の近似式を作製し、これを計算に用いる。
【0066】
上記ポリカルボン酸系重合体を含有するセメント分散剤では、良好なセメント分散性能及びスランプ保持性能を発揮することができるが、必要により、ポリカルボン酸系重合体以外の公知のセメント添加剤(セメント分散剤)を更に配合してもよい。
【0067】
上記セメント分散剤ではまた、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤等を配合することができる。
このようにして得られるセメント分散剤は、セメントや水を含有するセメント組成物として、例えば、ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の水硬セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いられることになる。
【0068】
上記セメント分散剤の水硬性材料への添加量としては、従来のセメント分散剤に比較して少量の添加でも優れた効果を発揮することになるが、例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメントの重量を100重量%とすると、0.001〜5重量%となるような比率の量を練り混ぜの際に添加すればよい。0.001重量%未満であると、セメント分散剤の作用効果が充分に発揮されないおそれがあり、5重量%を超えると、その効果は実質的に頭打ちとなり、経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは、0.01〜1重量%である。これにより、高減水率の達成、スランプロス防止性能の向上、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の作用効果を奏することになる。
【0069】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味し、「%」は、「重量%」を意味する。
【0070】
実施例1
温度計、攪拌機、生成水分離器及び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付反応槽(内容量:30m3 )にメトキシポリ(n=25)エチレングリコール16500kg、メタクリル酸4740kg、パラトルエンスルホン酸水和物235kg、フェノチアジン5kg及びシクロヘキサン1060kgを仕込み、反応容器に取り付げられたジャケット温度を0.2MPa蒸気を用い135℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度110〜120℃でエステル化反応を行った。約20時間でエステル化率が99%に達したのを確認後、49%水酸化ナトリウム水溶液135kgと水4890kgを加えてパラトルエンスルホン酸を中和し、ハイドロキノン8kgを加えて昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%のエステル化物水溶液(1)を得た。得られたエステル化物水溶液(1)につき、下記に示す条件でのLC分析によりジエステル不純物の定量を行った。本実施例の反応組成、反応条件及び反応結果を下記表1に示す。
【0071】
比較例1
温度計、攪拌機、生成水分離器及び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付反応槽(内容量:30m3 )にメトキシポリ(n=25)エチレングリコール16500kg、メタクリル酸4740kg、パラトルエンスルホン酸水和物235kg、フェノチアジン5kg及びシクロヘキサン1060kgを仕込み、反応容器に取り付けられたジャケット温度を0.5kg蒸気を用い150℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度110〜120℃でエステル化反応を行った。約12時間でエステル化率が99%に達したのを確認後、49%水酸化ナトリウム水溶液135kgと水4890kgを加えてパラトルエンスルホン酸を中和し、ハイドロキノン8kgを加えて昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン留去後、調整水を添加して80%のエステル化物水溶液(2)を得た。得られたエステル化物水溶液(2)につき、上記に示す条件でのLC分析によりジエステル不純物の定量を行った。本比較例の反応組成、反応条件及び反応結果を下記表1に示す。
【0072】
比較例2
温度計、攪拌機、生成水分離器及び還流冷却管(コンデンサ)を備えた外部ジャケット付反応槽(内容量:30m3 )にメトキシポリ(n=10)エチレングリコール16500kg、メタクリル酸4740kg、パラトルエンスルホン酸水和物235kg、フェノチアジン5kg及びシクロヘキサン6360kgを仕込み、反応容器に取り付けられたジャケット温度を0.2MPa蒸気を用い135℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度90〜100℃でエステル化反応を行った。この際、反応開始直後、急に反応液の突沸が生じ、反応液の一部がコンデンサを通り、生成水分離装置にオーバーフローしてしまった。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、脱水反応における不純物の形成を抑制し、しかも、反応中の突沸を防止して安全性に優れた脱水反応生成物の製造方法である。このようにして得られた脱水反応生成物は、良好なセメント分散性能及びスランプ保持性能を発揮することができるセメント添加剤の製造原料として好適なものである。
Claims (3)
- 脱水溶媒中で、下記一般式(1);
R1 −O−(R2O)n−H (1)
(式中、R1は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R2Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、R2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2〜300の数である。)で表されるアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とを含む反応液を、加熱媒体を用いて加熱される反応容器内で脱水反応に付する脱水反応工程を含んでなる脱水反応生成物の製造方法であって、
該脱水反応工程は、該加熱媒体の温度(t1)と該反応液の反応温度(t2)との温度差(Δt=t1−t2)を0〜30℃とし、t1を110〜140℃とし、t2を85〜130℃とし、加熱媒体として、圧力が0.07〜0.48MPaである蒸気を用いて行われ、
液体クロマトグラフィーでジエステルの生成量を測定し、該ジエステルの生成量が脱水反応生成物を100重量%とすると、3重量%以下となるように反応容器壁面での局部加熱を抑えて行われる
ことを特徴とする脱水反応生成物の製造方法。 - 前記脱水反応工程は、温度差(Δt)が脱水反応工程の全期間にわたって0〜30℃となるようにして行われる
ことを特徴とする請求項1記載の脱水反応生成物の製造方法。 - 前記脱水反応工程は、加熱媒体の温度(t1)及び反応液の反応温度(t2)が加熱媒体及び反応液全体で実質的に均一な温度であるようにして行われる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の脱水反応生成物の製造方法。
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