JP4864225B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、固体高分子電解質膜を備えた燃料電池に関し、特に、低温起動性に優れた燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池の中には、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟持して、膜・電極構造体を形成し、この膜・電極構造体を一対のセパレータで挟持したものがある。この燃料電池は、アノード電極の発電面に燃料ガス(例えば、水素ガス)を、カソード電極の発電面に酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)供給して化学反応を行い、この間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。カソード電極においては酸化剤ガス(例えば、酸素を含む空気)が供給されているため、水素イオン、電子、及び酸素が反応して水が生成される。したがって、環境に与える影響が少ないため車両の駆動源として注目されている。
【0003】
一般に、この種の燃料電池の作動温度は70℃〜80℃程度とされているが、低温時においては発電効率が低下するため低温時における始動性が大きな課題となっている。したがって、燃料電池を車両用として用いた場合に、外気温が低い状態、例えば、氷点下で起動しようとすると始動までに時間がかかるという問題がある。
これに対して、例えば、特表2000−512068号公報に記載されているように、燃料電池の外部負荷に電力を供給することで反応を促進し、自己発熱により温度を上昇させて始動性を向上させるものがある。
また、米国特許第6103410号公報に示されているように、反応ガスである水素の一部を空気に混ぜることで、カソード側の触媒により反応を起こし燃焼熱を発生させ始動性を向上させるものもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の自己発熱を用いた技術では、例えば、起動時に燃料電池が氷点下となっているような場合に、熱容量の大きい燃料電池全体を自己発熱だけで加熱するにはある程度長い時間が必要となってしまうという問題がある。また、燃料電池を暖機するために燃料電池を発電させているのであるが、燃料電池の自己発熱だけでは熱量が不足し、暖機中に燃料電池で生じた生成水が凍結する虞もあった。
一方、後者の水素の一部を燃焼させる技術では、発電用として搭載している水素の他に始動用としての水素が必要となるため、その分だけ水素タンクが大型化し、周辺機能部品の配置スペースに制約を与えてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、燃料電池の低温起動時に燃料電池の一部に加熱した冷却液を流通させて発電部の一部を局所的に加熱することによって自己発熱を促進し、短時間で燃料電池を温度上昇可能にして低温起動性に優れた燃料電池を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、固体高分子電解質膜(例えば、後述する第1の実施の形態における固体高分子電解質膜12)の両側にアノード電極(例えば、後述する第1の実施の形態におけるアノード電極13)とカソード電極(例えば、後述する第1の実施の形態におけるカソード電極14)が設けられさらに前記各電極の外側にそれぞれ反応ガス通路(例えば、後述する第1の実施の形態における燃料ガス通路18a,18b、空気通路19a,19b)が設けられ前記反応ガス通路から離隔して冷却液通路(例えば、後述する第1の実施の形態における20a,20b)が設けられてなるセル(例えば、後述する第1の実施の形態におけるセル15)を備えた燃料電池(例えば、後述する第1の実施の形態における燃料電池11)において、前記セルにおける発電面の一部の領域に対応する位置に、前記冷却液通路から独立して第2冷却液通路(例えば、後述する第1の実施の形態における冷却液通路36)が設けられ、前記冷却液通路は第1冷却液循環回路(例えば、後述する第1の実施の形態における第1冷却液循環回路61)に接続され、前記第2冷却液通路は前記セルの外部に設けられた加熱手段(例えば、後述する各実施の形態における電気ヒーター65)を備えた第3冷却液循環回路(例えば、後述する第1の実施の形態における第3冷却液循環回路62)に接続されており、前記第1冷却液循環回路と前記第3冷却液循環回路が互いに独立していて、前記第2冷却液通路に、前記加熱手段により加熱した冷却液を供給・停止可能にしたことを特徴とする。
【0007】
このように構成することにより、燃料電池の低温起動時に、第2冷却液通路に加熱した冷却液を供給することで前記発電面の一部の領域を迅速に加熱することができ、この領域における固体高分子電解質膜のイオン通過抵抗を低下させて発電効率を高め、これにより自己発熱を促進して当該領域の温度を速やかに高め、この高温度領域を発電面全体に拡大して燃料電池の温度を高めることが可能となる。
【0011】
また、第3冷却液循環回路における冷却液保有量を少なくすることが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る燃料電池の実施の形態を図9および図10の図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態および参考例における燃料電池は燃料電池自動車に搭載される態様である。
【0013】
〔参考例〕
初めに、この発明に係る燃料電池に関連する技術の参考例を図1から図8の図面を参照して説明する。図2は燃料電池11の一部における縦断面図である。燃料電池11は、固体高分子電解質膜12をアノード電極13とカソード電極14とで挟持し、さらにその外側を一対のセパレータ16,17で挟持してなるセル(単位燃料電池)15を水平方向に複数積層して構成されており、図示しないスタッドボルトにより締め付けられて、例えば、車両用の燃料電池スタックが構成される。尚、この参考例では説明の都合上、単一のセル5を例にして説明する。
【0014】
固体高分子電解質膜7は、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマー等を用いている。また、アノード電極9およびカソード電極11はPtを主体としたものであって、多孔質カーボンクロス又は多孔質カーボンペーパーからなる拡散層に配設されている。セパレータ16,17は緻密質カーボン製や金属製のもので、これらセパレータ16,17から電力を取り出す。
【0015】
アノード電極13と、これに隣接するセパレータ16との間には、燃料ガスとしての水素ガスを流通させる燃料ガス通路(反応ガス通路)18a,18bが形成されている。また、カソード電極14と、これに隣接するセパレータ17との間には、酸化剤ガスとしての空気を流通させる空気通路(反応ガス通路)19a,19bが形成されている。
さらに、各セパレータ16,17の背面間には、燃料電池15を冷却するための冷却液(純水やエチレングリコールやオイル等)を流通させる冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36が形成されている。
【0016】
図1はアノード側のセパレータ16を冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36が形成されている側から見た正面図であり、図3はセパレータ16を燃料ガス通路18a,18bが形成されている側から見た正面図である。なお、説明の都合上、図1には冷却液回路および制御構成を併記しており、図3にはカソード側のセパレータ17に形成されている空気通路19a,19bを破線で併記している。
燃料電池11は、左右両側にそれぞれ4つの通路21,22,23,24,25,26,27,28を備え、上下両側にそれぞれ3つの通路29,30,37,31,32,38を有しており、これら通路21〜32,37,38はセル15の積層方向に貫通して設けられている。
【0017】
初めに、燃料ガス通路および空気通路について説明すると、この参考例における燃料電池11においては、燃料ガス通路および空気通路が上下二系列に分割されている。左側上から1番目と3番目の通路は水素ガスを供給するための燃料ガス通路21,23であり、右側上から2番目と下から1番目の通路は水素ガスを排出するための燃料ガス通路26,28であり、燃料ガス通路21を流通する水素ガスは上側の燃料ガス通路18aを通って燃料ガス通路26に排出され、一方、燃料ガス通路23を流通する水素ガスは下側の燃料ガス通路18bを通って燃料ガス通路28に排出される。
【0018】
また、セパレータ17には、上側の燃料ガス通路18aに対応する位置に上側の空気通路19aが形成されており、下側の燃料ガス通路18bに対応する位置に下側の空気通路19bが形成されている。右側上から1番目と3番目の通路は空気を供給するための空気通路25,27であり、左側上から2番目と下から1番目の通路は空気を排出するための空気通路22,24であり、空気通路25を流通する空気は上側の空気通路19aを通って空気通路22に排出され、一方、空気通路27を流通する空気は下側の空気通路19bを通って空気通路24に排出される。
【0019】
次に、冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36について説明すると、この参考例における燃料電池11においては、冷却液通路が左右および中央の三系列に分割されている。下側の冷却液通路31,32,38は冷却液が供給される冷却液通路であり、上側の冷却液通路29,30,37は冷却液を排出するための冷却液通路であり、冷却液通路31に供給された冷却液は冷却液通路20aを通って冷却液通路29に排出され、冷却液通路32に供給された冷却液は冷却液通路20bを通って冷却液通路30に排出され、冷却液通路38に供給された冷却液は第2冷却液通路36を通って冷却液通路37に排出される。
【0020】
第2冷却液通路36は、冷却液通路20aと冷却液通路20bの間に配置されており、排出側の冷却液通路37に近い位置において渦巻き状の迷路部36aを備えている。この迷路部36aはこの部位における流路長さを長くして冷却液の滞留時間を稼ぐために設けられており、上側の燃料ガス通路18aおよび空気通路19aに対応する位置に配置されている。
これら冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36は、燃料ガス通路18a,18bと空気通路19a,19bが重複する部分(この部分が発電面となる)のほぼ全域をカバーしている。
【0021】
また、この参考例の燃料電池11では、連続して積層された所定数のセル15を単位モジュールとして、各モジュールに対して1つの温度センサ34が設けられている。温度センサ34は、図2に示すように各モジュールにおいて代表する1つのセパレータ17に設けられ、且つ、図1に示すように第2冷却液通路36の迷路部36aの近傍に対応する位置に配置されており、各モジュールにおける迷路部36a近傍の温度を検出することができるようになっている。この温度センサ34の出力信号は燃料電池制御用のECU35に入力される。ECU35は燃料電池11の起動時には図示しないバッテリーに蓄電されている電力により作動される。
【0022】
供給側の冷却液通路31,32は第1冷却液循環回路51を介して排出側の冷却液通路29,30に接続されており、第1冷却液循環回路51は、ポンプ52と、ポンプ52の上流側および下流側に設置された制御バルブV1,V2と、制御バルブV2と冷却液通路29,30との間に設けられたラジエータ57を備えている。制御バルブV1,V2は冷却液の流路を制御するための流路切り替え手段であり、制御バルブV1,V2を開くと冷却液通路29,30,31,32への冷却液の流通が許容され、その結果、冷却液通路20a,20bに冷却液が流れ、制御バルブV1,V2を閉じると冷却液通路29,30,31,32への冷却液の流通が阻止され、その結果、冷却液通路20a,20bに冷却液が流れなくなる。
【0023】
また、排出側の冷却液通路37は、第1冷却液循環回路51におけるポンプ52と制御バルブV1との間に、冷却液配管53を介して接続されており、供給側の冷却液通路38は、第1冷却液循環回路51におけるポンプ52と制御バルブV2との間に、冷却液配管54を介して接続されている。これにより、第2冷却液通路36は、冷却液通路37,38および冷却液配管53,54を介して、冷却液通路20a,20bに対し並列的に第1冷却液循環回路51に接続されている。この冷却液配管53,54は制御バルブV1,V2の開閉状態にかかわらず常に冷却液が流通可能であり、したがって、ポンプ52が駆動されているときには冷却液通路37,38および第2冷却液通路36に冷却液が流れる。なお、この参考例において、冷却液配管53,54は第2冷却液循環回路を構成する。
【0024】
供給側の冷却液配管54には電気ヒーター(加熱手段)55が設けられており、電気ヒーター55をONすることによって冷却液配管54を流れる冷却液を加熱することができるようになっている。この電気ヒーター55はECU35によって制御され、冷却液配管54を流れる冷却液の温度を制御することができるようになっている。
また、この冷却液配管54には、電気ヒーター55と供給側の冷却液通路38との間に、冷却液配管54を流れる冷却液の温度を検出するための温度センサ56が設けられており、温度センサ56の出力信号はECU35に入力される。
【0025】
このように構成された燃料電池11は、全面発電モードにおいて次のように動作する。
全面発電モードでは、上下二系列ある燃料ガス通路18a,18bの両方に水素ガスを流し、空気通路19a,19bの両方に空気を流し、左右中央三系列ある冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36の全てに冷却液を流す。すなわち、燃料ガス通路21,23に水素ガスを供給して燃料ガス通路18a,18bに水素ガスを流し、燃料ガス通路26,28に排出する。また、図示しないスーパーチャージャーを駆動して空気通路25,27に空気を供給し、空気通路19a,19bに空気を流し、空気通路22,24に排出する。さらに、ポンプ52を駆動するとともに制御バルブV1,V2を開いて冷却液通路31,32,38に冷却液を供給し、冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36に冷却液を上向きに流し、冷却液通路29,30,37に排出する。これにより、全セル15の発電面全面で発電が行われ、発電面全面が冷却液により冷却される。
なお、この全面発電モードにおいては、第1冷却液循環回路51に設けられている図示しないラジエータを駆動して冷却液を冷却し、電気ヒーター55はOFFにして冷却液配管54を流れる冷却液を加熱しない。
【0026】
ところで、固体高分子電解質膜を備えた燃料電池は、温度が低いと発電効率が低下することは前述した通りである。また、外気温が氷点下(例えば−10℃)となるような低温時においては、停止時において除去しきれなかった燃料電池11内の生成水は反応ガス通路18a,18b19a,19bの溝の一部で凍結している場合が多い。このような条件下で燃料電池11を起動する場合に前記全面発電モードで起動したのでは、燃料電池11の温度上昇に時間が長くかかってしまう。
【0027】
そこで、この燃料電池11では、このような低温起動時には、燃料電池11を迅速に温度上昇させるために局所発電モードで動作するようにし、局所発電モードでの運転により燃料電池11の温度が上昇してから、全面発電モードに移行するようにしている。
局所発電モードでは、水素ガスは上側の燃料ガス通路18aだけに流して下側の燃料ガス通路18bには流さず、空気は上側の空気通路19aだけに流して下側の空気通路19bには流さないようにする。このようにすると、各セル15において上側半分だけを発電面とすることができ、各セル15の下側半分は発電に寄与しなくすることができる。
【0028】
また、局所発電モードでは、ポンプ52を駆動するとともに制御バルブV1,V2を閉じ、冷却液通路29,30,31,32の冷却液の流通を阻止して冷却液通路20a,20bに冷却液を流さないようにする。これにより、第1冷却液循環回路51の冷却液は、ポンプ52→第1冷却液循環回路51→冷却液配管54→冷却液通路38→第2冷却液通路36→冷却液通路37→冷却液配管53→第1冷却液循環回路51→ポンプ52という閉回路を循環することとなる。したがって、このときには、冷却液はラジエータ57には流れないので冷却されないこととなる。さらに、局所発電モードでは、電気ヒーター55をONにして冷却液配管54を流れる冷却液を加熱する。
【0029】
これにより、電気ヒーター55によって加熱された冷却液は第2冷却液通路36だけを上向きに流れることとなり、冷却液の滞留時間が長い迷路部36a近傍を集中的に加熱する。そして、その熱がセパレータ16,17を介してアノード電極13,カソード電極14,固体高分子電解質膜12に伝熱し、これらを迅速に加熱する。その結果、図1および図4に示すように、迷路部36a近傍の領域Sにおいて局所的な発電が迅速に行われるようになる(以下、この領域Sを局所発電領域Sという)。また、迅速に発電が行われることにより反応による自己発熱が促進され、冷却液による加熱と自己発熱により局所発電領域Sの温度が速やかに高まる。
【0030】
ここで、発電の際の反応熱量と電気ヒーター55による外部アシスト熱量の和が、発電により生じる生成水の凍結防止に必要な熱量と放熱量の和よりも大きくなるように、電気ヒーター55による冷却液の加熱量(すなわち、電気ヒーター55の発熱量)を制御することにより、生成水の凍結を阻止することができる。換言すれば、生成水凍結に起因した電圧低下により燃料電池11が運転停止する前に(すなわち、燃料電池11の出力電圧が運転限界電圧まで降下する前に)、各セル15の局所発電領域Sの温度を0゜C以上に昇温することができる。これによって、局所発電領域Sにおける発電を持続させることができ、他の部分(例えば、セル15の下側半分)が氷点下であっても燃料電池11全体としては発電を持続することができるようになる。
【0031】
また、領域Sにおける局所発電による自己発熱と迷路部36aにおける冷却液の熱が、局所発電領域Sの周囲へも伝熱していき、図5および図6に示すように、各セル15の上側全体および下側半分も徐々に加熱されるようになり、発電可能な領域が拡大していき、燃料電池11を早期に暖機することができる。
【0032】
さらに、局所発電領域Sの発電を持続することができることにより、燃料電池11の運転に最小限必要なエネルギー(すなわち、スーパーチャージャ等の補機の運転に必要な電力)を燃料電池11の発電によって確保することが可能になる。
また、局所発電モードでは、局所発電領域Sだけを発電できる状態に保てばよいので、加熱した冷却液を冷却液通路20a,20bに流してセル15の全面を加熱するようにした場合に比較して小さなエネルギーで済み、局所発電モードにおける消費電力を抑制することができる。
【0033】
さらに、低温起動前に事前処理(例えば、起動前の予備加熱など)を行う場合も、局所発電領域Sだけを起動可能な状態にすればいいので、この事前処理のためのエネルギー消費を低減することができる。また、この参考例においては、ポンプ52が一台で済むので、部品点数が増えることがなく、コストアップを抑えることができる。
【0034】
次に、燃料電池11の起動制御の一例を図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS101において、イグニッションスイッチがONか否か判定する。ステップS101の判定結果が「YES」(イグニッションスイッチON)である場合はステップS102に進み、ステップS101の判定結果が「NO」(イグニッションスイッチOFF)である場合は本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0035】
ステップS102においてシステムチェックを行った後、ステップS103に進み、システムに異常がないか否か判定する。ステップS103の判定結果が「YES」(異常なし)である場合はステップS104に進み、ステップS103の判定結果が「NO」(異常あり)である場合はステップS105に進む。
ステップS104においては、各モジュールの温度センサ34のうちの一つの温度センサ34によって検出された温度Tjを局所発電領域Sにおける内部代表温度として、この内部代表温度が0゜Cよりも低いか否か判定する。ステップS104の判定結果が「NO」(0゜C以上)である場合はステップS106に進み、全面発電モードに移行する。ステップS104の判定結果が「YES」(0゜C未満)である場合はステップS107に進み、局所発電モードに移行する。
【0036】
ステップS107における局所発電モードでは、前述したように、各セル15の上側の燃料ガス通路18a、空気通路19aにだけ水素ガスおよび空気を供給し、また、制御バルブV1,V2を閉じて冷却液通路19a,19bに冷却液が流れないようにして第2冷却液通路36にだけ冷却液が流れるようにするとともに、電気ヒーター55をONして冷却液を加熱し、加熱した冷却液を第2冷却液通路36に循環させるようにする。これにより、局所発電領域Sにおける局所発電を実行する。また、電気ヒーター55の出力は、第2冷却液通路36に供給される冷却液の温度が所定温度(例えば、70゜C)以下となるように、ECU35によって制御する。
【0037】
そして、ステップS108において、温度センサ56によって検出される冷却液の温度T0と、温度センサ34によって検出される各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjを読み込み、ステップS109に進む。
ステップS109において、各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjが冷却液の温度T0よりも小さいか否か判定し、判定結果が「YES」(Tj<T0)である場合はステップS107に戻り、判定結果が「NO」(Tj≧T0)である場合はステップS106に進む。すなわち、各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjが第2冷却液通路36を流れる冷却液の温度T0に達するまでは局所発電モードによる燃料電池11の暖機運転を継続し、各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjが第2冷却液通路36を流れる冷却液の温度T0以上となったならば局所発電モードを終了して全面発電モードに移行することとなる。局所発電モードの終了により、電気ヒーター55をOFFにし、制御バルブV1,V2を開く。
【0038】
ステップS106の全面発電モードでは、前述したように、制御バルブV1,V2を開くことにより冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36に冷却液を流し、各セル15の両燃料ガス通路18a,18bに水素ガスを流し、両空気通路19a,19bに空気を流して、全セル15の発電面全面を使って発電を実行する。この時には電気ヒーター55はOFFにする。
なお、ステップS105に進んだ場合は異常処理モードに移行して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0039】
なお、前記起動制御では、燃料電池11の内部代表温度に基づいて局所発電モードに進むか否かを判定しているが、これに代えて、燃料電池11の総出力電圧に基づいて局所発電モードに進むか否かを判定するようにしてもよい。
【0040】
また、前記起動制御では、各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjが冷却液の温度T0よりも小さいか否かによって、局所発電モードを継続するか全面発電モードに移行するかを判定しているが、燃料電池11の代表温度が所定温度を超えたか否かによって局所発電モードを継続するか全面発電モードに移行するかを判定するようにしてもよい。さらに、各セル15に温度センサ34を設けて、各セル15の局所発電領域Sの温度が所定温度(例えば、冷却液の温度T0や他の所定温度)よりも小さいか否かによって、局所発電モードを継続するか全面発電モードに移行するかを判定してもよい。
【0041】
また、前記燃料電池11では、第2冷却液通路36をセル15の幅方向の中央に配置したが、第2冷却液通路36の設置位置は他の位置であってもよく、反応ガス(この参考例では水素ガスや空気)の流路形態等に基づいて適宜の位置に配置することが可能である。
【0042】
また、前述の参考例では、局所発電モードのときには、上側の燃料ガス通路18aと上側の空気通路19aにだけ水素ガスと空気を流すようにしているが、局所発電モードのときに上下両方の燃料ガス通路18a,18bに水素ガスを流し、上下両方の空気通路19a,19bに空気を流すようにしても構わない。このように、発電面の全体に反応ガスを供給した場合には、まず、加熱された冷却液により温度上昇した局所発電領域S1において発電が始まり、この発電による自己発熱および加熱冷却液の加熱による熱が上下の発電面全体に広がっていきく。そして、発電面全が温度上昇するにしたがって、発電面全面においても発電を開始するようになる。
【0043】
さらに、前述の参考例では、燃料ガス通路18a,18bと空気通路19a,19bをそれぞれ水平方向に延びる直線流路としているが、これら燃料ガス通路および空気通路は直線流路に限るものではなく、例えば、図8に示すように、水素ガス供給用の燃料ガス通路41を左側上方に設け、水素ガス排出用の燃料ガス通路42を右側下方に設け、空気供給用の空気通路43を右側上方に設け、空気排出用の空気通路44を左側下方に設けて、燃料ガス通路41,42を接続する燃料ガス通路45を逆S字状に蛇行させ、空気通路43,44を接続する空気通路46をS字状に蛇行させてもよい。この場合には、水素ガスおよび空気はそれぞれ燃料ガス通路45,空気通路46を蛇行しながら下降するように流れることになる。
【0044】
そして、この場合、第2冷却液通路36の迷路部36aを設ける部位を、例えば、図8において燃料ガス通路45の最上段の水平部と空気通路46の最上段の水平部とが重複する領域の中央に対応する部位に設定すると、図8において二点鎖線で示す領域を局所発電領域Sとすることができる。なお、この場合も、迷路部36aの位置を他の位置に設定することにより、局所発電領域Sを当該他の部位に設定することが可能である。この燃料電池11においても、前述の燃料電池11の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
【0045】
〔第1の実施の形態〕
次に、この発明に係る燃料電池の第1の実施の形態を図9および図10の図面を参照して説明する。燃料電池11の基本的な構成は、第1の実施の形態も前述の参考例と同じであり、第1の実施の形態の燃料電池が参考例のものと相違する点は、燃料電池を局所発電するための冷却液循環回路を第1冷却液循環回路から独立して設けた点にある。以下、この相違点について詳述する。図9は、アノード側のセパレータ16を冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36が形成されている側から見た正面図に、冷却液回路および制御構成を併記して示した図であり、参考例における図1に対応する図である。
【0046】
供給側の冷却液通路31,32は第1冷却液循環回路61を介して排出側の冷却液通路29,30に接続されており、第1冷却液循環回路61はポンプ(P1)63とラジエータ67を備えている。一方、供給側の冷却液通路38は第3冷却液循環回路62を介して排出側の冷却液通路37に接続されており、第3冷却液循環回路62はポンプ(P2)64を備えている。これら第1,第3冷却液循環回路61,62はそれぞれ独立しており、第1,第3冷却液循環回路61,62の間では冷却液の流通はない。
【0047】
第3冷却液循環回路62には、この第3冷却液循環回路62を流れる冷却液を加熱するための電気ヒーター(加熱手段)65と、第3冷却液循環回路62を流れる冷却液の温度を検出するための温度センサ66が設けられている。これらは参考例における電気ヒーター55、温度センサ56に対応する。そして、第1の実施の形態では、第1,第3冷却液循環回路61,62をそれぞれ独立した回路とし、それぞれにポンプ63,64を設けているので、参考例における制御バルブV1,V2はない。その他の構成については参考例のものと同じであり、同一態様部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
このように構成された燃料電池11においては、全面発電モードでは、電気ヒーター65をOFFにし、両ポンプ63,64を駆動して冷却液を第1,第3冷却液循環回路61,62に循環させて冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36に冷却液を流し、発電面全体を冷却する。一方、局所発電モードでは、電気ヒーター65をONにし、一方のポンプ64だけを駆動して第3冷却液循環回路62に冷却液を循環させ、他方のポンプ63は停止させて第1冷却液循環回路61には冷却液を循環させないようにする。これにより、局所発電モードでは、冷却液通路20a,20bには冷却液が流れず、電気ヒーター65によって加熱された冷却液が第2冷却液通路36にだけ流れるようになり、参考例の場合と同様に迷路部36a近傍を集中的に加熱することができ、その結果、局所発電領域Sを形成することができることとなる。
【0049】
したがって、この第1の実施の形態の燃料電池11においても、参考例と同様の作用・効果を得ることができる。その上、この第1の実施の形態の燃料電池11の場合には、第1冷却液循環回路61を第3冷却液循環回路62から独立させているので、局所発電モードにおける冷却液の保有液量を少なくすることができ、したがって、第2冷却液通路36に供給する冷却液を迅速に加熱することができ、ひいては局所発電を早期に実現することができる。
【0050】
次に、第1の実施の形態における燃料電池11の起動制御の一例を図10のフローチャートを参照して説明する。ステップS201〜ステップS205については、参考例の起動制御におけるステップS101〜ステップS105と同じであるので説明を省略する。
【0051】
この第1の実施の形態において、ステップS204で否定判定してステップS206に進み全面発電モードとなった場合には、ポンプ63,64の両方を駆動することにより冷却液通路20a,20bおよび第2冷却液通路36に冷却液を流し、各セル15の両燃料ガス通路18a,18bに水素ガスを流し、両空気通路19a,19bに空気を流して、全セル15の発電面全面を使って発電する。この時には、第1冷却液循環回路61を流れる冷却水がラジエータ67によって冷却される。また、電気ヒーター65をOFFにし、第3冷却液循環回路62を流れる冷却液を加熱しない。
【0052】
一方、ステップS204で肯定判定してステップS207に進み局所発電モードとなった場合には、各セル15の上側の燃料ガス通路18a、空気通路19aにだけ水素ガスおよび空気を供給し、また、ポンプ63を停止して冷却液通路19a,19bに冷却液が流れないようにし、且つ、ポンプ64を駆動して第2冷却液通路36にだけ冷却液が流れるようにするとともに、電気ヒーター65をONにして冷却液を加熱し、加熱した冷却液を第2冷却液通路36に循環させるようにする。これにより、局所発電領域Sにおける局所発電を実行する。この時、電気ヒーター65の出力は、第2冷却液通路36に供給される冷却液の温度が所定温度(例えば、70゜C)以下となるように、ECU35によって制御する。
【0053】
そして、ステップS208において、温度センサ66によって検出される冷却液の温度T0と、温度センサ34によって検出される各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjを読み込み、ステップS209に進んで、各モジュールの局所発電領域Sの温度Tjが冷却液の温度T0よりも小さいか否か判定する。ステップS209における判定結果が「YES」(Tj<T0)である場合はステップS207に戻って、局所発電モードによる暖機運転を継続し、判定結果が「NO」(Tj≧T0)である場合はステップS206に進み、全面発電モードに移行する。局所発電モードから全面発電モードへの移行に伴い、電気ヒーター65をOFFにし、ポンプ63,64を駆動する。なお、この第1の実施の形態の燃料電池11においても、燃料ガス通路および空気通路の流路形態は水平直線状以外の流路形態(例えば、図8に示す蛇行流路)とすることが可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明するように、請求項1に記載した発明によれば、
燃料電池の低温起動時に、第2冷却液通路に加熱した冷却液を供給することで前記発電面の一部の領域を迅速に加熱することができ、この領域における固体高分子電解質膜のイオン通過抵抗を低下させて発電効率を高め、これにより自己発熱を促進して当該領域の温度を速やかに高め、この高温度領域を発電面全体に拡大して燃料電池の温度を高めることが可能となるので、発電面全体を自己発熱により加熱した場合よりも起動時間を短縮することができ、燃料電池の低温起動性を高めることができるという効果がある。
【0057】
また、請求項1に記載した発明によれば、第3冷却液循環回路における冷却液保有量を少なくすることが可能になるので、冷却液を迅速に加熱することができ、ひいては燃料電池を早期に温度上昇させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る燃料電池に関連する技術の参考例におけるアノード側のセパレータの正面図である。
【図2】前記参考例における燃料電池の縦断面図である。
【図3】前記アノード側のセパレータの背面図である。
【図4】前記参考例の燃料電池において加熱部分が広がる様子を示す図である。
【図5】前記参考例の燃料電池において加熱部分が広がる様子を示す図である。
【図6】前記参考例の燃料電池において加熱部分が広がる様子を示す図である。
【図7】前記参考例の燃料電池における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】前記参考例の燃料電池の変形例におけるアノード側のセパレータの背面図である。
【図9】この発明に係る燃料電池の第1の実施の形態におけるアノード側のセパレータの正面図である。
【図10】前記第1の実施の形態の燃料電池における起動制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
11 燃料電池
12 固体高分子電解質膜
13 アノード電極
14 カソード電極
15 セル
18a,18b 燃料ガス通路(反応ガス通路)
19a,19b 空気通路(反応ガス通路)
20a,20b 冷却液通路
36 第2冷却液通路
65 電気ヒーター(加熱手段)
61 第1冷却液循環回路
62 第3冷却液循環回路
Claims (1)
- 固体高分子電解質膜の両側にアノード電極とカソード電極が設けられさらに前記各電極の外側にそれぞれ反応ガス通路が設けられ前記反応ガス通路から離隔して冷却液通路が設けられてなるセルを備えた燃料電池において、
前記セルにおける発電面の一部の領域に対応する位置に、前記冷却液通路から独立して第2冷却液通路が設けられ、前記冷却液通路は第1冷却液循環回路に接続され、前記第2冷却液通路は前記セルの外部に設けられた加熱手段を備えた第3冷却液循環回路に接続されており、前記第1冷却液循環回路と前記第3冷却液循環回路が互いに独立していて、前記第2冷却液通路に、前記加熱手段により加熱した冷却液を供給・停止可能にしたことを特徴とする燃料電池。
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