JP4854232B2 - 車両の前部構造 - Google Patents
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Description
また上記特許文献2には、自動車のフロントピラーに窓が設けられ、この窓に透明板が固定された自動車が提案されている。このフロントピラーに窓を付けた自動車では、右折又は左折時に、フロントピラーの窓を透して歩行者をいち早く確認でき、交通事故を未然に防止できるようになっている。
一方、一般的なフロントピラーの構造として、開口部を車両内側に向けて略ハット状に形成されたフロントアウタピラーと、開口部を車両外側に向けて略ハット状に形成されたフロントインナピラーとを備えた車両のピラー構造が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この車両のピラー構造では、フロントアウタピラーが、前壁部と、この前壁部の開口縁部に開口外側へ向けて設けられた前フランジと、前壁部の開口縁部に開口外側へ向けて設けられた後フランジと有する。またフロントインナピラーは、前壁部と、この前壁部の開口縁部に開口外側へ向けて設けられた前フランジと、前壁部の開口縁部に開口外側へ向けて設けられた後フランジと有する。更にフロントアウタピラーの前フランジとフロントインナピラーの前フランジとが溶着され、フロントアウタピラーの後フランジとフロントインナピラーの後フランジとが溶着されて、フロントピラーが筒状に形成される。
また、上記従来の特許文献3に示された車両のピラー構造では、フロントアウタピラー及びフロントインナピラーの前フランジがそれぞれ開口外側、即ちウインドシールドガラスの幅方向の中央に向って突出するため、運転者の前方視界の幅を狭めてしまう問題点があった。
本発明の目的は、フロントピラーの部品点数及び製造工数を殆ど増大せずに、かつフロントピラーの剛性を保持し、運転者から見たフロントピラーの幅を狭くすることにより、運転者の前方視界の幅を拡大できるとともに、運転者から見たフロントコーナ部材の向こう側の視認性を向上できる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の別の目的は、ウインドシールドガラスの側縁内面と第2フロントフランジのピラー外面との間に注入されたガラス用接着剤のはみ出しをピラー用折返し部が阻止することにより、ウインドシールドガラス側縁の見栄えの低下を防止できる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、ウインドシールドガラスの両側縁を保持する第2フロントフランジと、ウインドシールドガラスの上縁を保持するアッパアウタフランジと、ウインドシールドガラスの下縁を保持するロアアウタフランジとを連設することにより、剛性を保持しつつウインドシールドガラスの接着作業工数を低減できる、車両の前部構造を提供することにある。
その特徴ある構成は、フロントコーナ部材16がピラーインナパネル31とピラーアウタパネル32とを接合することにより筒状に形成されたフロントピラー17を備え、フロントピラー17が、ピラーインナパネル31の第1フロントフランジ31bのピラー外面とピラーアウタパネル32の第2フロントフランジ32bのピラー内面とを接合して形成されたフロント重ね合せ部33と、ピラーインナパネル31の第1リヤフランジ31cのピラー内面とピラーアウタパネル32の第2リヤフランジ32cのピラー内面とを接合して形成されたリヤ重ね合せ部34とを有し、フロント重ね合せ部33のピラー外面にウインドシールドガラス13の側縁内面が取付けられ、車両10の運転席に着席しかつ瞳孔間隔が66mmである運転者12がフロントコーナ部材16の方向を両眼12a,12bで見たときであって、フロントコーナ部材16に向けられた運転者12の視線上に運転者12の瞳孔12c,12dから少なくとも5m離れた車外の対象物18が存在し、車両10の運転席に着席した運転者12が見たときのフロントコーナ部材16の幅及び対象物18の幅をそれぞれM及びAとし、この幅Aが155mmであるとき、フロントコーナ部材16が存在しても、対象物18のA/3以上の部分を運転者12が視認できる幅Mをフロントコーナ部材16が有するところにある。
一方、例えば対向車線のある最も狭い道路19の交差点22、即ち対面通行の片側一車線道路19の交差点22で右折するためにこの交差点22で車両10を一時停止させた状態で、この車両10の運転者12が右斜め前方の車外に対象物18が存在するか否かを確認するときであって、この車両10の運転者12を18才以上の日本人男性のうち平均的な瞳孔間隔66mmを有する日本人男性(以下、JM50の日本人男性という)とするとき、JM50の日本人男性の運転者12、即ち18才以上の全日本人男性のうちの半数の運転者12は、フロントコーナ部材16が存在しても、対象物18のA/3以上の部分を視認できる。換言すれば、JM50の日本人男性の運転者12は比較的遠い上記歩行者18に両眼12a,12bの焦点を合わせており、両眼12a,12bの視差により運転者12の近くに存在するフロントコーナ部材16の幅Mが比較的狭く、両眼死角領域から歩行者18のA/3以上の部分がはみ出すので、運転者12はこのはみ出し部分を左眼12a又は右眼12bのいずれか一方又は双方で視認できる。また18才以上の日本人の瞳孔間隔には大きな差がないため、JM50の日本人男性の運転者が対象物のA/3以上の部分を見ることができれば、18才以上の大部分の日本人の運転者が対象物を実用上確実に視認できる。
また、対象物18の幅Aを155mmと規定したのは、交差点等の横断歩道を単独で渡る者のうち最も小さい者を日本人の小学1年生、即ち日本人の7才児と考え、この日本人の7才児のうち最も幅が狭い状態が運転者の視線方向に対して横を向いたときの胸厚であり、この日本人の7才児の胸幅の平均値が155mmだからである。
また、運転者12の瞳孔12c,12dから対象物18までの距離を少なくとも5mと規定したのは、対向車線のある最も狭い道路の交差点22、即ち対面通行の片側一車線道路の交差点22で車両10が走行道路19から交差道路21に右折するときに、この車両10の運転者12の瞳孔12c,12dから交差道路21の右側の横断歩道21aを横断している歩行者等の対象物18までの距離が約5mだからである。
更に、運転者12の視認できる対象物18の範囲をA/3以上の部分としたのは、評価試験を行った結果、フロントコーナ部材16が存在しても、運転者12が対象物18を認識できる幅の最小値がA/3であったからである。
この請求項2においてフロントコーナ部材16の幅を58mmを越えかつ72mm以下としたのは、通常の車両10において運転者12がフロントコーナ部材16を見たときに、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離が約700mmであり、この場合の請求項1に記載された対象物18のA/3以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材16の実際上の幅を規定したものである。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1及び図5〜図7に示すように、フロントコーナ部材16が存在しても、対象物18のA/2以上の部分を運転者12が視認できる幅Mをフロントコーナ部材16が有することを特徴とする。
この請求項3に記載された車両の前部構造では、請求項1に対して対象物18の視認できる幅をA/3からA/2と拡大することにより、対象物18の視認性を大幅に高めることができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明であって、更に図1及び図5〜図7に示すように、車両10の運転席に着席した運転者12が見たときのフロントコーナ部材16の幅が58mmを越えかつ68mm以下であることを特徴とする。
この請求項4においてフロントコーナ部材16の幅を58mmを越えかつ68mm以下としたのは、通常の車両10において運転者12がフロントコーナ部材16を見たときに、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離が約700mmであり、この場合の請求項3に記載された対象物18のA/2以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材16の実際上の幅を規定したものである。
また、対象物18の幅を155mmと規定し、運転者12の瞳孔12c,12dから対象物18までの距離を少なくとも5mと規定したのは、上記請求項1と同様の理由に基づく。
この請求項6においてフロントコーナ部材16の幅を58mmを越えかつ65mm以下としたのは、通常の車両10において運転者12がフロントコーナ部材16を見たときに、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離が約700mmであり、この場合の請求項5に記載された対象物18のA/3以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材16の実際上の幅を規定したものである。
請求項7に係る発明は、請求項5に係る発明であって、更に図1、図5、図6及び図10に示すように、フロントコーナ部材16が存在しても、対象物18のA/2以上の部分を運転者12が視認できる幅Mをフロントコーナ部材16が有することを特徴とする。
この請求項7に記載された車両の前部構造では、請求項5に対して対象物18の視認できる幅をA/3からA/2と拡大することにより、対象物18の視認性を大幅に高めることができる。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明であって、更に図1、図5、図6及び図10に示すように、車両10の運転席に着席した運転者12が見たときのフロントコーナ部材16の幅が58mmを越えかつ61mm以下であることを特徴とする。
この請求項8においてフロントコーナ部材16の幅を58mmを越えかつ61mm以下としたのは、通常の車両10において運転者12がフロントコーナ部材16を見たときに、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離が約700mmであり、この場合の請求項7に記載された対象物18のA/2以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材16の実際上の幅を規定したものである。
この請求項9に記載された車両用前部構造では、ウインドシールドガラス13の側縁内面を第2フロントフランジ32bのピラー外面に接着するために、ウインドシールドガラス13の側縁内面と第2フロントフランジ32bのピラー外面との間にガラス用接着剤36を挟んでウインドシールドガラス13を第2フロントフランジ32bに圧接したときに、この接着剤36が第2フロントフランジ32bの端縁からはみ出すのをピラー用折返し部32dが阻止する。
請求項10に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に図1〜図4に示すように、フロント重ね合せ部33がウインドシールドガラス13の側縁内面のガラス取付部に設けられ、ピラーアウタパネル32の上部に接続されるルーフパネル41の前縁にウインドシールドガラス13の上縁に沿うアッパアウタフランジ41aが設けられ、ピラーアウタパネル32の下部に接続されるカウルアウタパネル42の上縁にウインドシールドガラス13の下縁に沿うロアアウタフランジ42aが設けられ、第2フロントフランジ32bとアッパアウタフランジ41aとロアアウタフランジ42aとが連設されたことを特徴とする。
この請求項10に記載された車両用前部構造では、ウインドシールドガラス13の接着面を第1フロントフランジ31b及び第2フロントフランジ32bの2重構造としているため、上記ガラス13の接着面の剛性を高めることができる。また第2フロントフランジ32bとアッパアウタフランジ41aとロアアウタフランジ42aとを連設したので、これらのフランジ32b,41a,42aの剛性を高めることができるとともに、ウインドシールドガラス13のこれらのフランジ32b,41a,42aへの接着を速やかに行うことができる。
また車両の運転席に着席したJM50の日本人男性の運転者がフロントコーナ部材の方向を両眼で見たときに、フロントコーナ部材が存在しても、対象物のA/3以上の部分を視認できる幅Mをフロントコーナ部材が有するので、18才以上の全日本人男性の半数の運転者は、フロントコーナ部材の向こう側を視認するために上体を左右に動かす必要がなく、首のみを動かしてフロントコーナ部材の方向を正視するだけで、横断歩道等を単独で渡る最も小さい車外の対象物を確実に視認できる。また18才以上の日本人の瞳孔間隔には大きな差がないため、JM50の日本人男性の運転者が対象物のA/3以上の部分視認できれば、18才以上の大部分の日本人の運転者が対象物を実用上確実に視認できる。この結果、運転席からのフロントコーナ部材の向こう側の視認性を向上できるとともに、運転者の疲労を軽減できる。また車両の運転者が外国人であっても、この外国人の瞳孔間隔は日本人の運転者の瞳孔間隔とさほど変わらず、対象物が外国人の7才児であっても、この外国人の7才児の胸幅は日本人の7才児の胸幅と殆ど変わらないため、本発明は日本国内だけでなく外国においても適用でき、上記と同等の効果が得られる。
またJM50の日本人男性の運転者が車外の対象物を見たときに、フロントコーナ部材が存在しても、対象物のA/2以上の部分を視認できる幅Mをフロントコーナ部材が有すれば、18才以上の全日本人男性の半数の運転者が上記対象物のA/2以上と上記A/3以上の場合より多い部分を視認できる、即ち大部分の運転者がA/3以上の部分を視認できる。この結果、運転席からのフロントコーナ部材の向こう側の視認性を大幅に向上できるとともに、運転者の疲労をより軽減できる。
また車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が58mmを越えかつ68mm以下であれば、通常の車両において運転者がフロントコーナ部材を見たときに、運転者の瞳孔からフロントコーナ部材までの距離が約700mmであり、この場合の対象物のA/2以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材の実際上の幅となり、上記と同様の効果が得られる。
また車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が58mmを越えかつ65mm以下であれば、通常の車両において運転者がフロントコーナ部材を見たときに、運転者の瞳孔からフロントコーナ部材までの距離が約700mmであり、この場合の対象物のA/3以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材の実際上の幅となり、上記と同様の効果が得られる。
またJF5の日本人女性の運転者が車外の対象物を見たときに、フロントコーナ部材が存在しても、対象物のA/2以上の部分を視認できる幅Mをフロントコーナ部材が有すれば、18才以上の大部分の日本人の運転者が上記対象物のA/2以上と上記A/3以上の場合より多い部分を視認できる。この結果、運転席からのフロントコーナ部材の向こう側の視認性は極めて良好になるとともに、運転者の疲労は極めて少なくなる。
また車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が58mmを越えかつ61mm以下であれば、通常の車両において運転者がフロントコーナ部材を見たときに、運転者の瞳孔からフロントコーナ部材までの距離が約700mmであり、この場合の対象物のA/2以上の部分の視認性を確保できるフロントコーナ部材の実際上の幅となり、上記と同様の効果が得られる。
またフロント重ね合せ部をウインドシールドガラスの側縁内面のガラス取付部に設け、ピラーアウタパネルの上部に接続されるルーフパネルの前縁にウインドシールドガラスの上縁に沿うアッパアウタフランジを設け、ピラーアウタパネルの下部に接続されるカウルアウタパネルの上縁にウインドシールドガラスの下縁に沿うロアアウタフランジを設け、第2フロントフランジとアッパアウタフランジとロアアウタフランジとを連設すれば、ウインドシールドガラスの接着面を第1フロントフランジ及び第2フロントフランジの2重構造としているため、上記ガラスの接着面の剛性を高めることができるとともに、上記第2フロントフランジ、アッパアウタフランジ及びロアアウタフランジの剛性を高めることができる。更にこれらのフランジへのウインドシールドガラス周縁の接着を速やかに行うことができるので、接着作業工数を低減できる。
<第1の実施の形態>
図1、図4及び図6に示すように、トラック10のキャブ11の右側には運転者12の着席する運転席が設けられ、キャブ11の前面のフロント開口部11aは透明のウインドシールドガラス13により閉止される。またキャブ11の運転席側の側面には運転者12が乗降するためのサイド開口部11bが設けられ、このサイド開口部11bはサイドドア14により開放可能に閉止される(図3及び図4)。サイドドア14は、ドア本体14aと、このドア本体14aの上面に設けられドア窓14bを形成するために略逆U字状に形成されたドアフレーム14cと、ドア窓14bを開放可能に閉止する透明のサイドガラス14dとを有する。ウインドシールドガラス13の右側縁とサイドガラス14dの前縁との間には、ウインドシールドガラス13の右側縁及びサイドガラス14dの前縁に沿って延びるフロントコーナ部材16が設けられる(図1及び図5)。フロントコーナ部材16は、この実施の形態では、フロントピラー17とドアフレーム14cとガラスフレーム14eとガラスラン14fとウエザストリップ37とピラーガーニッシュ39とにより構成される。ドアフレーム14cは、ドアインナパネル14gとドアアウタパネル14hとを接合することにより形成される(図1)。またガラスフレーム14eはドアフレーム14cに挿着され、ガラスラン14fはサイドガラス14dを保持し案内するためにガラスフレーム14eに装着される。
M = [〔(2/3)×A−D〕/L1]×L2+D ……(1)
上記式(1)に、L1=5000mm、L2=700mm、D=66mm、A=155mmをそれぞれ代入すると、M=71.23mmとなり、小数点以下を切り上げてM=72mmとなる。なお、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離L2を700mmとしたのは、このL2が車種によって或いは運転席の前後方向への調整によって異なるため、その平均値を採ったものであり、積載量がほぼ2トンであるキャブオーバ型トラックにおける位置関係、即ち運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離L2が約700mmだからである。また、図5に示すように、運転者12の両眼死角領域内にフロントコーナ部材16が収まるように、フロントコーナ部材の幅Mと、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離をL2とが設定される。また対象物18のA/3以上の部分を運転者12が視認できる幅Mをフロントコーナ部材16が有することから、フロントコーナ部材16により遮られて歩行者18の2A/3未満の部分、例えば歩行者18の半分又は一部分を視認できなくてもよい。更に当然のことながら、歩行者18の幅が155mmを越える場合は、運転者12は対象物18のA/3を越える部分を視認できる。
図1に示すように、第2フロントフランジ32bに接合される第1フロントフランジ31bがウインドシールドガラス13の側縁とは反対側に突出せず、即ちウインドシールドガラス13の幅方向の中心に向って突出せず、またピラーインナ本体31aがトラックの運転席に着席した運転者12のこのピラーインナ本体31aに向けた視線とほぼ平行であるので、運転者12から見たフロントピラー17の幅を狭くすることができる。またピラーインナ本体31aとピラーアウタ本体32aとフロント重ね合せ部33とリヤ重ね合せ部34とによりフロントピラー17が筒状に形成されるので、フロントピラー17としての所定の剛性を確保できる。この結果、フロントピラー17の剛性を保持しつつ、運転者12の前方視界の幅を拡大できるとともに、上記運転者12から見たフロントピラー17の幅を狭くすることができる。またピラーガーニッシュ39がピラーインナ本体31aのピラー外面に密着しているため、運転者12のこのピラーガーニッシュ39に向けた視線とほぼ平行である。これにより運転者12から見たフロントピラー17とドアフレーム14dとガラスフレーム14eとガラスラン14fとピラーガーニッシュ39とを含むフロントコーナ部材16の幅Mが狭くなる。
M = [〔(1/2)×A−D〕/L1]×L2+D ……(2)
上記式(2)に、L1=5000mm、L2=700mm、D=66mm、A=155mmをそれぞれ代入すると、M=67.61mmとなり、小数点以下を切り上げてM=68mmとなる。
このように構成すれば、JM50の日本人男性の運転者12、即ち18才以上の全日本人男性のうちの半数の運転者12は、上記歩行者18のA/2以上の部分を視認できる。また図5の円柱体28を歩行者とし、運転者12の瞳孔間隔DをJF5の日本人女性の瞳孔間隔58mmとし、上記式(2)中の『1/2』を『y』とする。即ち、上記式(2)に、M=68mm、L1=5000mm、L2=700mm、D=58mm、A=300mmをそれぞれ代入してyを求めると、y=0.431となる。この結果、歩行者28の視認できる部分は(1−0.431)×300=171mmとなり、JF5の日本人女性の運転者12、即ち殆ど全ての日本人の運転者が歩行者28の1/2以上(約56%)の部分を視認できる。従って、上記第1の実施の形態より歩行者18,28の視認性を向上できる。
また歩行者28を肩幅(直径)300mmの6才児としても、この歩行者28の肩幅A=300mmの1/3の部分が見えれば、実際上の子供を視認することは可能である。JM50の日本人男性の運転者12にとって歩行者28の肩幅A=300mmの1/3の部分が見えるフロントコーナ部材16の幅Mは、次の式(1)から求めることができる。
M = [〔(2/3)×A−D〕/L1]×L2+D ……(1)
上記式(1)に、L1=5000mm、L2=700mm、D=66mm、A=300mmをそれぞれ代入すると、M=84.76mmとなり、小数点以下を切り上げてM=85mmとなる。フロントコーナ部材16の幅Mが85mm以下、好ましくは58mmを越えかつ85mm以下であれば、直径300mmの対象物28である実際上の子供を視認できる。
図10は本発明の第2の実施の形態を示す。また便宜上、上記第1の実施の形態に用いた図1〜図6も利用して説明する。
この実施の形態では、車両10の運転席に着席しかつ瞳孔間隔が58mmであるJF5の日本人女性の運転者12がフロントコーナ部材16の方向を両眼12a,12bで見たときであって、フロントコーナ部材16に向けられた運転者12の視線上に運転者12の瞳孔12c,12dから少なくとも5m離れた車外の歩行者18(図5及び図6)が存在し、車両10の運転席に着席した運転者12が見たときのフロントコーナ部材16の幅及び歩行者18の幅をそれぞれM(図1)及びA(図5)とし、この幅Aが155mmであるとき、フロントコーナ部材16が存在しても、歩行者18のA/3以上の部分を運転者12が視認できる幅Mをフロントコーナ部材16が有する。ここで、車両10の運転者12の瞳孔間隔を58mmに規定したのは、上記[課題を解決するための手段]の請求項5に記載した理由に基づく。また、歩行者18の幅を155mmと規定し、運転者12の瞳孔12c,12dから歩行者18までの距離を少なくとも5mと規定したのは、上記[課題を解決するための手段]の請求項1に記載した理由に基づく。
上記フロントコーナ部材16の幅Mの最大値(65mm)は次の式(1)から求められる(図1、図5及び図10)。
M = [〔(2/3)×A−D〕/L1]×L2+D ……(1)
上記式(1)に、L1=5000mm、L2=700mm、D=58mm、A=155mmをそれぞれ代入すると、M=64.35mmとなり、小数点以下を切り上げてM=65mmとなる。なお、運転者12の瞳孔12c,12dからフロントコーナ部材16までの距離L2を700mmとしたのは、上記第1の実施の形態に記載した理由と同一の理由に基づく。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
図6に示すように、トラック10が対面通行の片側一車線道路を走行し、交差点22で右折するとき、走行道路19の対向車線を直進する対向車が通り過ぎるまで交差点22で停止して待つ。対向車が通り過ぎた後に、トラック10の走行道路19に交差する交差道路21の右側の横断歩道21a上を見て歩行者18が横断しているか否かを確認する。このとき運転者12がJF5の日本人女性とし、この運転者12の瞳孔12c,12dから交差道路21の右斜め前方の車外の歩行者18までの距離L1を5mとし、その歩行者18の幅Aを日本人の7才児の胸幅Aの平均値を155mmとすると、JF5の日本人女性の運転者12、即ち18才以上の大部分の日本人の運転者12は、フロントコーナ部材16が存在しても、歩行者18のA/3以上の部分を視認できる(図5)。具体的には、歩行者18が運転者12の両眼死角領域から右眼死角領域にはみ出しているため、左眼12aで歩行者18のA/3以上の部分を視認できる。また18才以上の日本人の瞳孔間隔には大きな差がないため、JF5の日本人女性の運転者12が歩行者18のA/3以上の部分を視認できれば、18才以上の殆ど全ての日本人の運転者12が歩行者18を確実に視認できる。従って、トラック10の運転者12はフロントコーナ部材16の向こう側を視認するために上体を左右に動かす必要がなく、首のみを動かしてフロントコーナ部材16の方向を正視するだけで横断歩道21a上の歩行者18を確実に視認できるとともに、運転者12の疲労を軽減できる。上記以外の動作は第1の実施の形態と同様であるので、繰返しの説明を省略する。
M = [〔(1/2)×A−D〕/L1]×L2+D ……(2)
上記式(2)に、L1=5000mm、L2=700mm、D=58mm、A=155mmをそれぞれ代入すると、M=60.73mmとなり、小数点以下を切り上げてM=61mmとなる。
このように構成すれば、JF5の日本人女性の運転者12、即ち18才以上の殆ど全ての日本人の運転者12は、上記歩行者18のA/2以上の部分を視認できるので、上記第2の実施の形態より歩行者18の視認性を向上できる。
また、車両の運転者が外国人であっても、この外国人の瞳孔間隔は日本人の運転者の瞳孔間隔とさほど変わらず、対象物が外国人の7才児であっても、この外国人の7才児の胸幅は日本人の7才児の胸幅と殆ど変わらず、対象物が外国人の6才児であっても、この外国人の6才児の肩幅は日本人の6才児の肩幅と殆ど変わらないため、本発明は日本国内だけでなく外国においても適用でき、上記と同等の効果が得られる。
また、上記第1及び第2の実施の形態では、車両として右側に運転席を有する車両、いわゆる右ハンドル車両を挙げたが、左側に運転席を有する車両、いわゆる左ハンドル車両にも本発明を適用できる。この場合、運転席側、即ち左側のフロントコーナ部材に本発明が適用される。
また、上記第1及び第2の実施の形態では、フロント重ね合せ部のピラー外面にウインドシールドガラスの側縁内面を取付けたが、図15に示すように、ピラーアウタパネル32の第2フロントフランジ32bが、ピラーアウタ本体32aの前縁にこのピラーアウタ本体32aと一体的に形成されかつウインドシールドガラス13に沿う第1接合辺32eと、第1接合辺32eの端縁にピラー用折返し部32dを介して設けられた第2接合辺32fとを有し、第2接合辺32fがピラーインナパネル31の運転者の視線方向に沿って設けられたピラーインナ本体31aに密着或いは接合するように構成してもよい。この場合でもフロント重ね合せ部33はウインドシールドガラス13の側縁とは反対側に突出しないため、フロントコーナ部材16の向こう側の視認性を向上できる。
更に、図15に示した第1フロントフランジ31bを用いず、図16に示すように、ピラーインナ本体31aが第1フロントフランジ31bを兼ねるように構成し、この第1フロントフランジ31bと第2フロントフランジ32bの第2接合辺32fとによりフロント重ね合せ部33を構成してもよい。
12 運転者
12a,12b 眼
12c,12d 瞳孔
13 ウインドシールドガラス
14d サイドガラス
16 フロントコーナ部材
18 歩行者(車外の対象物)
31 ピラーインナパネル
31a ピラーインナ本体
31b 第1フロントフランジ
31c 第1リヤフランジ
32 ピラーアウタパネル
32a ピラーアウタ本体
32b 第2フロントフランジ
32c 第2リヤフランジ
32d ピラー用折返し部
33 フロント重ね合せ部
34 リヤ重ね合せ部
41 ルーフパネル
41a アッパアウタフランジ
42 カウルアウタパネル
42a ロアアウタフランジ
Claims (10)
- ウインドシールドガラス(13)の側縁とサイドガラス(14d)の前縁との間に、前記ウインドシールドガラス(13)の側縁及び前記サイドガラス(14d)の前縁に沿って延びるフロントコーナ部材(16)が設けられた車両の前部構造において、
前記フロントコーナ部材(16)がピラーインナパネル(31)とピラーアウタパネル(32)とを接合することにより筒状に形成されたフロントピラー(17)を備え、
前記フロントピラー(17)が、前記ピラーインナパネル(31)の第1フロントフランジ(31b)のピラー外面と前記ピラーアウタパネル(32)の第2フロントフランジ(32b)のピラー内面とを接合して形成されたフロント重ね合せ部(33)と、前記ピラーインナパネル(31)の第1リヤフランジ(31c)のピラー内面と前記ピラーアウタパネル(32)の第2リヤフランジ(32c)のピラー内面とを接合して形成されたリヤ重ね合せ部(34)とを有し、
前記フロント重ね合せ部(33)のピラー外面に前記ウインドシールドガラス(13)の側縁内面が取付けられ、
前記車両(10)の運転席に着席しかつ瞳孔間隔が66mmである運転者(12)が前記フロントコーナ部材(16)の方向を両眼(12a,12b)で見たときであって、
前記フロントコーナ部材(16)に向けられた前記運転者(12)の視線上に前記運転者(12)の瞳孔(12c,12d)から少なくとも5m離れた車外の対象物(18)が存在し、前記車両(10)の運転席に着席した運転者(12)が見たときの前記フロントコーナ部材(16)の幅及び前記対象物(18)の幅をそれぞれM及びAとし、この幅Aが155mmであるとき、前記フロントコーナ部材(16)が存在しても、前記対象物(18)のA/3以上の部分を前記運転者(12)が視認できる幅Mを前記フロントコーナ部材(16)が有する
ことを特徴とする車両の前部構造。 - 車両(10)の運転席に着席した運転者(12)が見たときのフロントコーナ部材(16)の幅が58mmを越えかつ72mm以下である請求項1記載の車両の前部構造。
- フロントコーナ部材(16)が存在しても、対象物(18)のA/2以上の部分を運転者(12)が視認できる幅Mを前記フロントコーナ部材(16)が有する請求項1記載の車両の前部構造。
- 車両(10)の運転席に着席した運転者(12)が見たときのフロントコーナ部材(16)の幅が58mmを越えかつ68mm以下である請求項3記載の車両の前部構造。
- ウインドシールドガラス(13)の側縁とサイドガラス(14d)の前縁との間に、前記ウインドシールドガラス(13)の側縁及び前記サイドガラス(14d)の前縁に沿って延びるフロントコーナ部材(16)が設けられた車両の前部構造において、
前記フロントコーナ部材(16)がピラーインナパネル(31)とピラーアウタパネル(32)とを接合することにより筒状に形成されたフロントピラー(17)を備え、
前記フロントピラー(17)が、前記ピラーインナパネル(31)の第1フロントフランジ(31b)のピラー外面と前記ピラーアウタパネル(32)の第2フロントフランジ(32b)のピラー内面とを接合して形成されたフロント重ね合せ部(33)と、前記ピラーインナパネル(31)の第1リヤフランジ(31c)のピラー内面と前記ピラーアウタパネル(32)の第2リヤフランジ(32c)のピラー内面とを接合して形成されたリヤ重ね合せ部(34)とを有し、
前記フロント重ね合せ部(33)のピラー外面に前記ウインドシールドガラス(13)の側縁内面が取付けられ、
前記車両(10)の運転席に着席しかつ瞳孔間隔が58mmである運転者(12)が前記フロントコーナ部材(16)の方向を両眼(12a,12b)で見たときであって、
前記フロントコーナ部材(16)に向けられた前記運転者(12)の視線上に前記運転者(12)の瞳孔(12c,12d)から少なくとも5m離れた車外の対象物(18)が存在し、前記車両(10)の運転席に着席した運転者(12)が見たときの前記フロントコーナ部材(16)の幅及び前記対象物(18)の幅をそれぞれM及びAとし、この幅Aが155mmであるとき、
前記フロントコーナ部材(16)が存在しても、前記対象物(18)のA/3以上の部分を前記運転者(12)が視認できる幅Mを前記フロントコーナ部材(16)が有する
ことを特徴とする車両の前部構造。 - 車両(10)の運転席に着席した運転者(12)が見たときのフロントコーナ部材(16)の幅が58mmを越えかつ65mm以下である請求項5記載の車両の前部構造。
- フロントコーナ部材(16)が存在しても、対象物(18)のA/2以上の部分を運転者(12)が視認できる幅Mを前記フロントコーナ部材(16)が有する請求項5記載の車両の前部構造。
- 車両(10)の運転席に着席した運転者(12)が見たときのフロントコーナ部材(16)の幅が58mmを越えかつ61mm以下である請求項7記載の車両の前部構造。
- 第2フロントフランジ(32b)の端縁にウインドシールドガラス(13)の内面に向って突出するピラー用折返し部(32d)が設けられた請求項1又は5記載の車両の前部構造。
- フロント重ね合せ部(33)はウインドシールドガラス(13)の側縁内面のガラス取付部に設けられ、
ピラーアウタパネル(32)の上部に接続されるルーフパネル(41)の前縁にウインドシールドガラス(13)の上縁に沿うアッパアウタフランジ(41a)が設けられ、前記ピラーアウタパネル(32)の下部に接続されるカウルアウタパネル(42)の上縁に前記ウインドシールドガラス(13)の下縁に沿うロアアウタフランジ(42a)が設けられ、第2フロントフランジ(32b)と前記アッパアウタフランジ(41a)と前記ロアアウタフランジ(42a)とが連設された請求項1又は5記載の車両の前部構造。
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