JP4852785B2 - 回路接続用フィルム状接着剤、回路端子の接続構造および回路端子の接続方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用フィルム状接着剤、回路端子の接続構造および回路端子の接続方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂系接着剤は、高い接着強さが得られ、耐水性や耐熱性に優れること等から、電気・電子・建築・自動車・航空機等の各種用途に多用されている。中でも一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状、ペースト状、粉体状の形態で使用されている。この場合、エポキシ樹脂と硬化剤及び変性剤との多様な組み合わせにより、特定の性能を得ることが一般的である(例えば、特開昭62−141083号公報)。しかしながら、特開昭62−141083号公報に示されるようなエポキシ樹脂系のフィルム状接着剤は、作業性に優れるものの、20秒前後の接続時間で140〜180℃程度の加熱、10秒では180〜210℃程度の加熱が必要であった。この理由は、短時間硬化性(速硬化性)と貯蔵安定性(保存性)のバランスを得るため常温で不活性な触媒型硬化剤を用い硬化に際して十分な反応が得られないためである。
【0003】
近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅、電極間隔が極めて狭くなっており、回路接続時の熱による回路基板の膨張が接続端子の位置ずれに影響する場合がある。特に、液晶パネル分野のLCD(液晶ディスプレイ)とTCP(テープキャリアパッケージ)との接続や、TCPとPWB(プリント回路基板)との接続において、配線の微細化とパネルの大型化の為、従来のエポキシ樹脂系を用いた回路接続用フィルム状接着剤の接続条件では、接続時の熱によるTCPの伸びによって配線の脱落、剥離や位置ずれが生じるなどの問題があった。この為、エポキシ樹脂系接着剤に代わり、低温速硬化の接続材料としてラジカル重合性の接着剤が開発されてきた(例えば、特開平11−284025号公報、特開2000−44905号公報)。特開平11−284025号公報および特開2000−44905号公報に示されるようなラジカル重合性の接着剤は、ラジカル重合性物質としてアクリレート化合物、メタアクリレート化合物またはマレイミド化合物等のモノマーを過酸化物などのラジカル発生物質と配合し、加熱時に過酸化物から発生するラジカルによってモノマーがラジカル重合・硬化するものである。ラジカル発生物質のラジカル発生温度が低温の物質を選択することによって低温での硬化が可能であることが特徴であり、150℃前後の加熱温度、10秒〜15秒の加熱時間で接続が可能である。しかし、一般的にエポキシ樹脂系の接着剤に比べ、アクリレート化合物などの熱ラジカル重合性樹脂は接着力が弱いという難点がある。このため、特開平11−284025号公報に示されるようにリン酸エステル化合物によって接着力を向上させる方法や、特開2000−44905号公報に示されるようにリン酸エステル化合物とエポキシシランカップリング剤との混合によって接着力を向上させる手段が提案されてきている。
【0004】
一方、液晶パネル分野でもLCD上にドライバICを直接接続するCOG(Chip on Glass)接続方式では、生産効率向上を目的として、10秒以下さらには5秒以下の短時間での接続が求められている。COG接続方式では液晶パネルであるガラスの熱膨張係数とドライバICであるシリコンチップの熱膨張係数が近く、加熱によって生ずる位置ずれの問題が小さいため、接続時間の短縮化要求に対して接続温度を高温化して対処することができる。しかしながら、特開昭62−141083号公報に示されるようなエポキシ樹脂系接着剤では230℃以上の加熱温度であっても、5秒以下では十分に硬化反応が進行しないため、接着強度が小さく、接続信頼性が低下する。一方、特開平11−284025号公報および特開2000−44905号公報で示されるようなラジカル重合性の接着剤については、硬化速度はエポキシ樹脂系に比べて速いものの、リン酸エステルまたはリン酸エステルとエポキシシランカップリング剤で接着力を増加させた場合であっても、TABとLCDを接着した場合よりもチップとLCDを接着した場合に発生する応力が大きいことによって、接着力が不十分であり、接続信頼性が低いため適応できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、精密電子機器の微細回路同士の電気的接続、特にLCDパネルとドライバICのCOG接続において、加熱温度が140℃以上、200℃以下であり、かつ加熱時間が2秒以上、10秒以下で接続が可能であり、且つ、接着性、接続信頼性に優れる回路接続用フィルム状接着剤、回路端子の接続構造および回路端子の接続方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用フィルム状接着剤であって、加熱温度160℃以上、200℃以下、加熱時間2秒以上、10秒以下、好ましくは3秒以下で相対向する回路電極間を電気的に接続する回路接続用フィルム状接着剤であり、200℃の加熱加圧時に加熱加圧開始から少なくとも0.1秒以上の樹脂流動性を有し、かつ200℃、3秒の加熱後の反応率が60%以上であり、ガラスと表面を窒化珪素処理したシリコンチップを加熱温度200℃、3秒で加熱加圧して接着した際のせん断接着強度が10MPa以上であり、(1)ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物、(2)150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂、(3)加熱によってラジカルを発生する硬化剤、(4)ラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を必須成分とする回路接続用フィルム状接着剤である。この回路接続用フィルム状接着剤は、加熱後の接着剤硬化物のガラス転移温度が130〜160℃であると好ましい。また、加熱によってラジカルを発生する硬化剤の半減期10時間の分解温度が40℃以上かつ、半減期1分間の分解温度が180℃以下である。この加熱によってラジカルを発生する硬化剤は、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドのいずれかまたは混合物である。150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂が、ガラス転位温度50℃以上のポリヒドロキシポリエーテル樹脂である。その熱可塑性樹脂が分子内にフルオレン骨格を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂もしくは分子内にフルオレン骨格を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と他の150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂との混合物である。さらに、150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂100重量部に対しラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物を25〜100重量部、ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物100重量部に対し加熱によってラジカルを発生する硬化剤1〜20重量部、前記熱可塑性樹脂、ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物及び加熱によってラジカルを発生する硬化剤の接着剤総重量に対しラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を5〜15重量部配合する。上記の回路接続用フィルム状接着剤には、導電性粒子を含有することができる。
【0007】
本発明の回路端子の接続構造は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に上記の回路接続用フィルム状接着剤が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子が電気的に接続されているものである。
本発明の回路端子の接続方法は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に上記記載の回路接続用フィルム状接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路端子の接続方法において、加熱温度が140℃以上、200℃以下であり、かつ加熱時間が2秒以上、10秒以下である。好ましくは、加熱温度が160℃以上、200℃以下であり、加熱時間が2秒以上、3秒以下である。接続端子の少なくとも一方の表面を金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属で構成させることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は加熱・加圧によって流動すると共に、加熱によって反応し、硬化するものである。流動は200℃の加熱条件で加圧した際に加熱加圧開始から少なくとも0.1秒は流動性を示す必要がある。0.1秒未満では、接続端子間の余分な樹脂を排除することが困難である。流動性は、ICチップのバンプ電極とITO電極付きガラス基板のとの相対応する電極同士の位置合わせを行った後に、回路接続用フィルム状接着剤を介在させてICチップとガラス基板を張り合わせ、この後、ガラス基板側を圧着機の石英製基板テーブル側に向けて固定し、圧着機下部に設置した接続部観察カメラ(対物レンズ倍率20倍)の焦点を石英製ガラステーブルおよびガラス基板を透過して接続部分に合わせた。この後、ICチップ側から圧着機のヒートツールを押し当てて200℃、100MPa(バンプ面積換算)、3秒加熱加圧してICチップとガラス基板の接続を行うと同時に接続部分の接着剤の流動挙動をモニタにて観察し、ヒートツールがICチップに当たってから接着剤の流動が止まるまでの時間をストップウォッチを用いて計測した。加熱による反応は、200℃、3秒の加熱後の反応率が60%以上であることが必要である。反応率60%未満では硬化が不十分なことによって接続信頼性が低下する。反応率は、示差走査熱量計を用いて未硬化およびオイルバスで加熱・硬化(200℃、浸漬3秒)した回路接続用フィルム状接着剤の発熱量を測定し(昇温速度10℃/min)、次式で算出した。
(反応率)=(未硬化の発熱量―硬化後の発熱量)/(未硬化の発熱量)×100
さらに、本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、加熱温度200℃、加熱時間3秒でガラスと表面を窒化珪素処理したシリコンチップの間に本発明の回路接続用フィルム状接着剤を介在させて加熱加圧して接着した後のせん断接着強度が10MPa以上を示すことが必要である。せん断接着強度が10MPa未満では接続端子の電気的接続が保持できないおそれがある。
【0009】
本発明に用いる加熱によりラジカルを発生する硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物などの加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定されるが、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の分解温度が40℃以上かつ、半減期1分の分解温度が180℃以下の硬化剤である有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の分解温度が60℃以上かつ、半減期1分の温度が175℃以下の有機過酸化物がより好ましい。硬化剤の配合量はラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物100重量部に対し1〜20重量部であり、5〜10重量部がより好ましい。この範囲より少ないと、硬化が十分に進行せず、接着剤の凝集力が低下し接着性に劣り、また多いと、硬化は十分であるが、フィルム状接着剤の界面での接着に劣るようになる。
【0010】
加熱によってラジカルを発生する硬化剤は、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドから選定できる。また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。このようなものとして、具体的には、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドから選定される。上記硬化剤は、適宜混合して用いることができる。
【0011】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0012】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0016】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0017】
これらのラジカルを発生する硬化剤は、単独または混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0018】
本発明で用いるラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、これらは、モノマー、オリゴマーのいずれの状態でも用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。アクリレート化合物またはメタクリレート化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジアクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ1,3−ジメタアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタアクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタアクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロイロキシエチル)イソシアヌレートウレタンジアクリレート化合物、ウレタンジメタアクリレート化合物等が挙げられる。
これらは単独または併用して用いることができ、必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。また、ジシクロペンテニル基および/またはトリシクロデカニル基および/またはトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。
【0019】
本発明で用いる150℃の溶融粘度が10000Pa・s(100,000ポイズ)以下の熱可塑性樹脂としては、接着剤に使用した際の流動性、硬化収縮の抑制効果および接続信頼性を考えるとガラス転移温度50℃以上のポリヒドロキシポリエーテル樹脂が好適に使用される。ポリヒドロキシポリエーテル樹脂として、分子内にフルオレン骨格を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂がより好適に使用される。ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は単独でも前記樹脂との混合物でも使用できる。これらの熱可塑性樹脂はカルボキシル基含有エラストマー、エポキシ基含有エラストマー、ラジカル重合性の官能基によって変性されていてもよい。熱可塑性樹脂の150℃の溶融粘度が10000Pa・s(100,000ポイズ)を超えて高いと接着剤の加熱・加圧時の流動性が低下し、回路基板の相対向する端子間の樹脂の排除が不十分となるため、接続信頼性が低下するため好ましくない。
【0020】
本発明で用いるラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤としては、ラジカル重合性の官能基を持つものが使用される。ラジカル重合性の官能基を持たないシランカップリング剤では接着力を十分に発現することができない。具体的にはアクリル基、メタクリル基を持つものが使用される。シランカップリング剤の具体例としては(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリエトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)トリス(メトキシエトキシ)シランが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いても良い。シランカップリング剤の配合量は、接着剤の総重量に対して5〜15重量部である。この範囲より少ないと接着剤の凝集力が低下し接着力に劣り、多いとフィルム界面での接着性に劣るようになる。
【0021】
また、本発明の回路接続用フィルム状接着剤はアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートの1種または2種以上をモノマー成分とした共重合体系アクリルゴム、ポリウレタンなどのエラストマーを含有することができる。エラストマーを含有した場合、応力緩和の効果が得られるので好ましい。
【0022】
さらに、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。充填材を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。
【0023】
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は導電性粒子がなくても、接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続が得られるが、導電性粒子を含有した場合、より安定した接続が得られる。導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cuなどの遷移金属類ではなくAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。また、Niなどの遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した金属を被覆等により形成し、最外層を貴金属類で被覆したものでもよい。プラスチックを核とした場合や熱溶融金属粒子を核とした場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加したり、電極高さのばらつきを吸収し信頼性が向上するので好ましい。貴金族類の被覆層の厚みは良好な抵抗を得るためには、100オングストロ−ム以上が好ましい。しかし、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の層を設ける場合では、貴金属類層の欠損や導電粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損等により遷移金属が表面に露出するとその酸化還元作用で遊離ラジカルが発生し保存性低下を引き起こすため、300オングストロ−ム以上が好ましい。導電性粒子は、接着剤樹脂成分100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積部とするのが好ましい。
【0024】
また、回路接続用フィルム状接着剤を2層以上に分割し、ラジカルを発生する硬化剤を含有する層とラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物を含有する層に分離した場合、または、ラジカルを発生する硬化剤を含有する層と導電粒子を含有する層に分離した場合、ポットライフの向上が得られる。
【0025】
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、半導体チップの動作時、外部光源からの光によって誤動作を防ぐために、フィルム状接着剤中にカーボンブラック、顔料、色素を添加することによって、黒色、褐色、青色等の遮光性フィルムとすることもできる。
【0026】
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、ICチップと回路基板との電気的および機械的接続や電気回路相互の電気的および機械的接続に使用することができる。本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、例えばフェイスダウン方式で半導体チップと回路基板を本発明の回路接続用フィルム状接着剤を介在させて接着固定すると共に両者の電極どうしを電気的に接続する場合に使用できる。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の回路接続用フィルム状接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることができる。このような回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板、フレキシブルプリント基板等の回路基板、LCDパネル、PDPパネル、ELパネル等の画像表示基板、テープキャリアパッケージ、COF等の回路部品等が用いられる。これらの回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でも良い)設けられており、前記回路部材の少なくとも1組がそれらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に本発明の回路接続用フィルム状接着剤を介在させ、加熱加圧して対向配置した接続端子どうしを電気的に接続して回路板とする。回路部材の少なくとも1組を加熱加圧することにより、対向配置した接続端子どうしは、直接接触により又は異方導電性接着剤の導電性粒子を介して電気的に接続することができる。
【0027】
本発明の回路端子の接続方法は、ラジカル重合による硬化性を有する回路接続用フィルム状接着剤を表面が金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属である一方の電極回路に形成した後、もう一方の回路電極を位置合わせし加熱、加圧して接続することができる。
【0028】
本発明の回路端子の接続方法において、回路電極を有する回路基板表面を洗浄して表面の汚染物質や酸化膜などを除去しておくことによって本発明の回路接続用フィルム状接着剤の回路基板への接着強度を増強させることによって接続信頼性を向上させることができる。回路基板表面の洗浄方法としては回路電極および配線に対する損傷の影響が小さいものであれば特に限定するものではない。洗浄の例としては、純水による洗浄、溶剤による洗浄またはふき取り、プラズマ処理などが挙げられる。
【0029】
本発明においては、従来のラジカル硬化アクリレート樹脂系接着剤よりも短時間で接続が可能であり、かつ耐湿試験後も優れた接着強度を示す電気・電子用の回路接続用フィルム状接着剤の提供が可能となる。
【0030】
【実施例】
本発明で用いる150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂として用いたフルオレン骨格含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びカルボキシル基含有ブタジエン系エラストマー変性高分子量フェノキシ樹脂の合成法を以下に示す。
【0031】
〈ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の合成〉
4,4-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール45g、3,3',5,5'-テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50gをN-メチルピロリジオン1000mlに溶解し、これに炭酸カリウム21gを加え、110℃で3時間攪拌した。攪拌後、多量のメタノールに滴下し、生成した沈殿物をろ取して目的物質である分子内にフルオレン骨格を持つポリヒドロキシポリエーテル樹脂(b)を75g得た。分子量を測定した結果(東ソー株式会社製GPC8020、カラム;東ソー株式会社製TSKgelG3000HXLとTSKgelG4000HXL、流速1.0ml/min)、ポリスチレン換算でMn=12,500、Mw=30,300、Mw/Mn=2.42であった。樹脂(b)をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、シャーレに塗布し、溶媒を気散させることによってキャストフィルムを作製した。キャストフィルムを動的粘弾性測定装置(レオメトリックサイエンティフィック社製RSA-II)を用いて測定し(昇温速度5℃/分、1Hz)、tanδのピークによってガラス転移温度を測定した結果、ガラス転移温度95℃であった。キャストフィルムをずり粘弾性測定装置(レオメトリックサイエンティフィック社製ARES)を用いて測定し(昇温速度5℃/分、1Hz)、150℃での粘度を求めた結果、4800Pa・s(48,000ポイズ)であった。
【0032】
〈カルボキシル基含有ブタジエン系エラストマー変性高分子量フェノキシ樹脂の合成〉
窒素導入管、温度計、冷却管およびメカニカルスターラーを取り付けた2リットルの四つ口フラスコに、テトラブロモビスフェノールA(FG−2000、帝人化成株式会社製商品名)333.83g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125、分子蒸留品、エポキシ当量172g/当量,東都化成株式会社製商品名)205.56gおよびN,N−ジメチルアセトアミド1257gを入れ、窒素雰囲気下、均一になるまで撹拌混合した。次に、水酸化リチウム0.94gを添加し、温度を徐々に上げながら120℃で9時間反応させた。反応の追跡は、一定時間ごとに反応溶液の粘度を測定し、粘度が増加しなくなるまで反応を行った。反応終了後、反応溶液を放冷し、これに活性アルミナ(200メッシュ)約420gを加えて一晩放置した。活性アルミナを濾過して、フェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。次いで、窒素導入管、温度計、冷却管およびメカニカルスターラーを取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、得られたフェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液807.62g、末端カルボキシル基含有ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(Hycar CTBNX1009−SP,宇部興産株式会社製商品名)50.88gを入れ、撹拌混合しながら十分に窒素置換した。次に、窒素雰囲気下で撹拌混合し、温度を徐々に上げながら溶剤が還流する状態で8.5時間加熱して、目的のエラストマー変性フェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られた溶液は茶褐色の透明なものであり、コーンプレート型粘度計(EMD型、株式会社トキメック製)で測定した粘度は約0.3Pa・s(300cP)であった。反応溶液の一部を大量のメタノール中に注いで固形物を析出させ、メタノール洗浄、減圧乾燥してエラストマー変性高分子量フェノキシ樹脂を得た。得られたエラストマー変性高分子量フェノキシ樹脂の分子量を東ソー株式会社製GPC8020、カラムは東ソー株式会社製TSKgelG3000HXLとTSKgelG4000HXL、流速1.0ml/minで測定した結果、ポリスチレン換算でMn=18,200、Mw=38,400、Mw/Mn=2.11であった。この樹脂(c)をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、シャーレに塗布し、溶媒を気散させることによってキャストフィルムを作製した。キャストフィルムを動的粘弾性測定装置(レオメトリックサイエンティフィック社製RSA-II)を用いて測定し(昇温速度5℃/分、1Hz)、tanδのピークによってガラス転移温度を測定した結果、ガラス転移温度90℃であった。キャストフィルムをずり粘弾性測定装置(レオメトリックサイエンティフィック社製ARES)を用いて測定し(昇温速度5℃/分、1Hz)、150℃での粘度を求めた結果、3070Pa・s(30,700ポイズ)であった。
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。実施例、比較例で用いた材料を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例1)
150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂として、上記で合成したフルオレン骨格含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)を、トルエン:酢酸エチル=1:1重量比の混合溶液に溶解した50重量%溶液を120重量部、ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(A)30重量部、加熱によってラジカルを発生する硬化剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(D、1分間の半減期分解温度124℃、10時間の半減期分解温度65℃)4重量部、ラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤として(3−メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(G)を2−ブタノンに添加して超音波で分散させた50重量%溶液を20重量部、Ni/Auめっきポリスチレン粒子(J)10重量部を混合し、攪拌してフィルム塗工用ワニス溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み80μm)にロールコータで塗布し、70℃、10分乾燥し厚み20μmの回路接続用フィルム状接着剤を作製した。
【0036】
(実施例2〜6)
実施例1と同様に、表2に示す割合で配合し、回路接続用フィルム状接着剤を作製した。
実施例2、3は、実施例1の加熱によってラジカルを発生する硬化剤を1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1分間の半減期分解温度147℃、10時間の半減期分解温度86℃、実施例2)、ジクミルパーオキサイド(1分間の半減期分解温度175℃、10時間の半減期分解温度116℃、実施例3)にそれぞれ変更した。また、実施例4、5、6は、実施例1、2、3の配合で、150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂として用いたフルオレン骨格含有ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に加えて、上記で合成したカルボキシ末端ブチロニトリル樹脂変性高分子量エポキシ樹脂をそれぞれ表2に示す割合で配合した。
【0037】
(比較例1、2、3)
比較例1は、実施例1の配合で用いたラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤をラジカル重合性の官能基を有さない(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランに変えた場合で、比較例2は、ラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を配合せずリン酸エステルを配合した場合である。
比較例3は、実施例1のラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物を1官能のイミドアクリレート(A’)に変更した場合である。
【0038】
実施例1〜6、比較例1〜3の配合を表2に示した。
【表2】
【0039】
本発明で使用した回路の接続と測定法を以下に示す。
〈回路の接続〉
金めっきバンプ(50μm×50μm、バンプ高さ15μm、スペース50μm)付きICチップ(1.5mm×17mm×0.55mm、表面を窒化珪素処理したシリコンチップ使用)と0.7mm厚のガラス上にITOで電極を作製した基板とを上述した回路接続用フィルム状接着剤を介在させて、200℃、100MPa(バンプ面積換算)、3秒加熱加圧して接続し、接続信頼性測定用サンプルを作製した。この時、あらかじめガラス基板上に、回路接続用フィルム状接着剤を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離してICチップと接続した。
〈接続信頼性測定方法〉
接続信頼性測定用サンプルの接続直後の接続抵抗と、耐湿試験(85℃、85%RH)に500時間放置後の接続抵抗を四端子法で測定した。初期の接続抵抗が低く、耐湿試験後も接続抵抗が安定しているものが良好である。接続抵抗が測定できないものをOPEN不良とした。
〈耐湿後の外観検査〉
上述した接続信頼性測定用サンプルの耐湿試験後の接続面を金属顕微鏡で観察した。剥離の起きていないものを良好とし、剥離が観察されたものを剥離とした。
〈接着強度測定方法〉
金めっきバンプ(50μm×50μm、バンプ高さ15μm、スペース10μm)付きICチップ(1.0mm×10mm×0.55mm、表面を窒化珪素処理したシリコンチップ使用)と0.7mm厚のガラスを上述した回路接続用フィルム状接着剤を介在させて、200℃、100MPa(バンプ面積換算)、3秒で接続した後、ボンドテスタ(Dyge社製)を用いて、ボンディング直後と耐湿試験168時間後のせん断接着強度を測定した。
〈接続時の流動時間測定〉
上述した回路の接続作業において、上述の金めっきバンプ付ICチップのバンプ電極と上述のガラス基板のITO電極との相対応する電極同士の位置合わせを行った後に、上述の回路接続用フィルム状接着剤を介在させてICチップとガラス基板を張り合わせた。この後、ガラス基板側を圧着機の石英製基板テーブル側に向けて固定し、圧着機下部に設置した接続部観察カメラ(対物レンズ倍率20倍)の焦点を石英製ガラステーブルおよびガラス基板を透過して接続部分に合わせた。この後、ICチップ側から圧着機のヒートツールを押し当てて200℃、100MPa、3秒加熱加圧してICチップとガラス基板の接続を行うと同時に接続部分の接着剤の流動挙動をモニタにて観察し、ヒートツールがICチップに当たってから接着剤の流動が止まるまでの時間をストップウォッチを用いて計測した。
〈反応率の測定〉
示差走査熱量計(DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン株式会社製TA2000サーマルアナリシスシステム)を用いて未硬化およびオイルバスで加熱・硬化(200℃、浸漬3秒)した回路接続用フィルム状接着剤の発熱量を測定した(昇温速度10℃/min)。測定後、次式で反応率を算出した。
(反応率)=(未硬化の発熱量―硬化後の発熱量)/(未硬化の発熱量)×100
【0040】
比較例1のラジカル重合性の官能基を有さないシランカップリング剤を用いた場合、せん断接着強度が著しく低く、接続抵抗が測定できなかった。また、比較例2でラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を配合せず、接着性に優れるリン酸エステルを配合した場合は、比較例1と異なり、せん断接着強度は、実施例と同様高くなるが、耐湿後のせん断接着強度が低く接続抵抗が測定できなかった。
比較例3のラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物を用いないで1官能のアクリレート化合物とした場合、せん断接着強度が著しく低く接続抵抗が測定できなかった。
これらに対し、本発明の160℃以上、200℃以下の加熱加圧時に加熱加圧開始から少なくとも0.1秒以上の樹脂流動性を有し、かつ160℃以上、200℃以下、2秒以上、3秒以下の加熱後の反応率が60%以上である回路接続用フィルム状接着剤であり、前記回路接続用フィルム状接着剤を用い、ガラスと表面を窒化珪素処理したシリコンチップを加熱温度160℃以上、200℃以下、加熱時間2秒以上、3秒以下で加熱加圧して接着した際のせん断接着強度が10MPa以上である回路接続用フィルム状接着剤であり、(1)ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物、(2)150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂、(3)加熱によってラジカルを発生する硬化剤、(4)ラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を必須成分とする回路接続用フィルム状接着剤を用いた場合、せん断接着強度が良好で、初期の接続抵抗や耐湿試験後の接続抵抗が低く良好である。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のラジカル硬化アクリレート樹脂系接着剤よりも短時間で接続が可能であり、かつ耐湿試験後も優れた接着強度を示す電気・電子用の回路接続用フィルム状接着剤の提供が可能となる。
Claims (5)
- 相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加熱加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用フィルム状接着剤であって、200℃の加熱加圧時に加熱加圧開始から少なくとも0.1秒以上の樹脂流動性を有し、かつ200℃、3秒の加熱後の反応率が60%以上である回路接続用フィルム状接着剤であり、前記回路接続用フィルム状接着剤を用い、ガラスと表面を窒化珪素処理したシリコンチップを加熱温度200℃、加熱時間3秒で加熱加圧して接着した際のせん断接着強度が10MPa以上である回路接続用フィルム状接着剤であり、(1)ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物、(2)150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂、(3)加熱によってラジカルを発生する硬化剤、(4)ラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を必須成分とし、
前記150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂がガラス転位温度50℃以上のポリヒドロキシポリエーテル樹脂であり、
前記加熱によってラジカルを発生する硬化剤がパーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドのいずれかまたは混合物であり、
前記150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂が分子内にフルオレン骨格を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂または分子内にフルオレン骨格を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と他の150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂との混合物であり、
前記150℃の溶融粘度が10000Pa・s以下の熱可塑性樹脂100重量部に対しラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物を25〜100重量部、ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物100重量部に対し加熱によってラジカルを発生する硬化剤1〜20重量部、前記熱可塑性樹脂、ラジカル重合性の2官能以上のアクリレート化合物またはメタクリレート化合物及びラジカルを発生する硬化剤の接着剤総重量に対しラジカル重合性の官能基を有するシランカップリング剤を5〜15重量部配合してなり、
加熱によってラジカルを発生する前記硬化剤の半減期10時間の分解温度が40℃以上かつ、半減期1分間の分解温度が180℃以下である、回路接続用フィルム状接着剤。 - 導電性粒子をさらに含有する請求項1に記載の回路接続用フィルム状接着剤。
- 第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の回路接続用フィルム状接着剤が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子が電気的に接続されている回路端子の接続構造。
- 第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の回路接続用フィルム状接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路端子の接続方法において、加熱温度が140℃以上、200℃以下であり、かつ加熱時間が2秒以上、10秒以下である回路端子の接続方法。
- 請求項4の回路端子の接続方法において、加熱温度が160℃以上、200℃以下であり、かつ加熱時間が2秒以上、3秒以下である回路端子の接続方法。
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