JP4847365B2 - 蒸着源および蒸着装置 - Google Patents

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Description

本発明は、有機EL表示装置に搭載される有機素子の有機ELパターン等を成膜するための蒸着装置の蒸着源および蒸着装置に関するものである。
有機EL表示装置は高輝度、低消費電力が実現でき、液晶表示装置にかわる表示デバイスとして、薄型、高速応答性、高視野角を特徴とし、今後の表示デバイスのトレンドとして注目されている。有機EL表示装置の製造方法には大きく分けて2通りがある。一方は、低分子型有機EL材料をマスク蒸着により成膜する方法であり、もう一方は基板上に予めリブを形成した後、該リブに囲まれた凹部にインクジェット法等により高分子型有機EL材料を供給する方法である。
このうち、インクジェット法等により高分子型有機EL材料を供給する手法は、使用する高分子型有機EL材料の開発が未だ途上であり、現段階では商品化は実現していない。一方、蒸着法を用いる手法については、パッシブマトリクス方式のモノカラーや、エリアカラーパネルにおいて商品化されている。
従来の蒸着装置は、特許文献1および特許文献2に開示されたような蒸着源を有する。特許文献1に開示された蒸着源は、図5に示すように、チャンバー121内の下部に蒸着源110が設置され、蒸着源110は、筐体であるルツボ101内の、有機EL膜材料等の蒸着材料103から発生する蒸気を放出する開口部110aを有する。開口部110aの上方に蒸着マスク123を介して基板W0 がそれぞれマスクホルダー124と基板ホルダー122によって支持されている。
この構成では、少量生産(バッジ式)の場合には、基板と1回の蒸着分の蒸着材料を成膜毎に収容し直す作業が繰り返される。
大量生産を行う場合には、数回から数百回分の蒸着材料を蒸着室(チャンバー)に常設された蒸着源内のルツボに予め収容しておき、蒸着室は真空を保持し、基板のみロードロック室を介して蒸着毎に交換している。
また、特許文献3のように開口部を有する円筒状容器の内壁に複数の突出部を設け、容器の底部とともに突出部にも原料を充填して、容器を加熱することにより原料を放出させる方法が知られている。原料の放出に伴い原料の残存量が減少しても、その減少量が原料の放出に与える影響を少なくすることができる旨が記載されている。
特公平5−41697号公報 特開平1−225769号公報 特開平4−359508号公報
しかしながら従来の蒸着源を用いて有機EL用の薄膜を蒸着する場合、以下の問題がある。有機EL用の薄膜材料には昇華性材料が多い。昇華性の蒸着材料は蒸着するときに蒸着源内で溶融性材料のような対流が生じない。このため、蒸着源の内壁面に接触している部分の蒸着材料が最も高温になり、この部分から蒸気が発生し蒸着源の開口部から真空チャンバーに放出される。
一般に昇華性の有機材料は熱伝導率が小さく、この傾向がいっそう強い。また、蒸着源内に載置された蒸着材料の表面部分(上部)は蒸着源の開口部に向いている。そのため、蒸着源の開口部から空間に熱が放射され、蒸着材料の上部は蒸着源の中央部や下部と比較して低温になってしまう。その結果、蒸着源内では内壁面に沿った部分から主に蒸気が発生する一方で、蒸着材料の上部が蓋のようになり、速やかな蒸気の脱離を阻害する。
そして、蒸着材料の蒸気がある圧力まで蓄積されたとき、蒸気は蓋状になった蒸着材料の上部を押しのけて真空チャンバー内に放出される。このときに微小な爆発を伴うためスプラッシュ(突沸)とよばれる現象を生じ、形成される蒸着膜にさまざまな欠陥を生じさせる。また、蒸着源の内壁に沿って形成されていた蒸気の滞留空隙が崩壊し、蒸着源の内壁面に温度の低い新たな蒸着材料が接触することになり、温度変動を引き起こす。これは蒸着材料の蒸発速度を不安定にする原因になる。
これらを避けるために特許文献2では、有機化合物の蒸着材料に熱伝導用微粒子を均一に分散させることで、ルツボと有機材間、ルツボと熱伝導粒子間、熱伝導粒子と熱伝導粒子間、および有機材と熱伝導粒子間の熱伝導により原料を加熱する。また、有機材および熱伝導粒子の粒径を小さくすることで、それぞれの接触面積を増大させて効率的な熱移動を行わせる。
この構成によれば、蒸着源内の温度分布は向上するが、蒸着源の開口部から熱が放射されるため蒸着材料の上部は下部と比較して低温になり、また、蒸着材料から発生した蒸気は蒸着材料の最上部まで蒸着材料中の隙間を通り抜けなければならい。そして、適当な通り道がない場合には、前述のように蒸気のガス溜まりを形成し、ある圧力に到達したときに微小な爆発を伴い真空チャンバー内に放出される。このように特許文献2の構成ではスプラッシュ等の課題は解決されない。
また、蒸着材料上部の温度低下を防ぐために特許文献1においては、チムニー型の煙突を蒸着源に設置し、蒸着源上部の加熱を可能にすることで蒸着材料上部の温度低下を防ぐ。さらにスプラッシュ発生時にもスプラッシュに伴って発生した粒子がチムニー型煙突に遮られて被蒸着基板に到達できないようにすることで安定した蒸着が可能としている。
しかし、蒸着材料上部の温度低下を防ぐことが可能になっても、蒸着材料内部や蒸着源の内壁面に接した部分で発生した蒸着材料の蒸気は蒸着材料の上部を通過して真空チャンバー内に放出されることは変わらない。このため、蒸着材料の内部や蒸着源の内壁面に接した部分で発生した蒸着材料の蒸気はある圧力に達するまで蒸着材料内にガス溜まりを形成し、微小な爆発を伴いながらチムニー型煙突を通過して被蒸着基板に到達する。このときには前述したように蒸発速度が不安定となる。
このような蒸気の微小爆発を回避するためには、蒸着材料から発生した蒸気を速やかに蒸着材料から脱離させることが必要である。また、昇華性材料は昇華温度と分解温度が近いことが多く、その場合に大きな蒸着速度を得るためには蒸着材料の加熱される面積を大きくしなければならない。これらの要求を満足するためには蒸着材料を薄く広く蒸着源内に載置する必要があるが、そのためには蒸着源を非常に大きくする必要があるため現実的ではない。
また、特許文献3においては、突出部を設けることによって長時間安定な原料の放出を行うことができるとしている。しかし、突出部に載置された原料が被蒸着基板に曝されているため、スプラッシュに伴って発生した粒子がそのまま被蒸着基板に付着してしまうおそれがある。さらに、各突出部に載置された原料から蒸発した気体が容器中央の流動路に集まってくる際に、突出部の上下の間隙よりも流動路の方が気体が通り抜けにくいと、突出部に載置された原料から蒸発した気体が速やかに容器の開口に到達できない。
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、スプラッシュ等を回避するとともに、大きな蒸発速度を安定して得ることが可能である蒸着源および蒸着装置を提供することを目的とするものである。
本発明の蒸着源は、蒸着材料を内部に収容し、加熱された前記蒸着材料を放出する開口部を上部に有する筐体と、前記筐体内に配設されており前記蒸着材料を載置する複数の載置手段と、を有し、前記複数の載置手段は上下方向に間隙を置いて複数段に配設されており、各載置手段は平面状の部材であり前記平面内に開口を有している、蒸着源において、前記間隙は、前記載置された前記蒸着材料から発生した蒸気を前記筐体の前記開口部に導くための流動スペースであり、各載置手段の前記開口によって、前記流動スペースと前記筐体の前記開口部とを連通する流動路が前記上下方向に形成されており、前記流動スペースのコンダクタンスおよび前記開口部のコンダクタンスは、前記流動路のコンダクタンスより小さいことを特徴とする。
複数の載置手段を重ねて、各段の限られたエリアで蒸着材料を加熱蒸発させるものであるため、蒸着源を大型化することなく蒸発面積を大きくとることができる。
また、蒸着材料を薄く広く載置して蒸発させるために、スプラッシュ等の原因となる微小爆発を伴わずに蒸着材料から蒸気を発生できる。さらに、蒸着材料の加熱面積が広いために、温度を高くせずに大きな蒸着速度を安定して得ることが可能となる。
さらに、流動スペースのコンダクタンスが、流動路のコンダクタンスより小さいことにより、各載置手段に載置された蒸着材料から発生した蒸気が速やかに筐体の開口部に到達することができ、より安定した蒸着を行うことができる。
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、蒸着装置の蒸着源10は、筐体であるルツボ1内に複数段に配設された平面状の部材であるドーナツ型平板2を有し、各ドーナツ型平板2上に蒸着材料3が薄く載置される。ルツボ1はリフレクター11内に配設され、ヒーター(加熱手段)12によって加熱される。このように、蒸着材料3を載置する載置手段であるドーナツ型平板2を蒸着源10の内部に垂直方向(上下方向)に多段に重ねる。蒸着材料3を載置するドーナツ型平板2は、全体が均一な温度を維持するように熱伝導性の良い材料であって、しかも蒸着材料3との反応性が無い物質、例えばグラファイト等で形成する。また、蒸着材料3を均一に加熱しやすく、蒸着材料3から発生した蒸気を流動させるために、前記平面内の中心部に穴(開口)が開いているドーナツ型平板2を用いる。
蒸着材料3を載置する各ドーナツ型平板2の間には、蒸着材料3から発生した蒸気が速やかに通過できるコンダクタンスを持つ流動スペースAを維持できる間隔(間隙)を置く。各ドーナツ型平板2上に載置された蒸着材料3から発生した蒸気は、ドーナツ型平板2内を径方向に流動し、中央部の穴から軸方向(上下方向)の流動路Bを経てルツボ1の上端に開口する開口部10aに到達する。この軸方向の流動路Bは、各ドーナツ型平板間の径方向の流動スペースAより大きなコンダクタンスを持つことで、ドーナツ型平板2に載置された各蒸着材料3から発生した蒸気が速やかに開口部10aに到達できる。
流動スペースAのコンダクタンスが、流動スペースAに連通する流動路Bのコンダクタンスよりも大きい場合には、ドーナツ型平板2に載置された蒸着材料3から発生した蒸気が流動スペースAから流動路Bへ流れにくくなる。そして、流動スペースA内の圧力を変動させることによって、蒸着レートの不安定化や突沸を引き起こす原因になる。
本発明では、ドーナツ型平板2に載置された各蒸着材料3から発生した蒸気は、流動スペースAから流動路Bへスムーズに流れていくことができるため、蒸着レートの安定化を図ることができる。
より具体的には、流動スペースAのコンダクタンスCA と流動路BのコンダクタンスCB との比は、1<CB /CA ≦100であることが好ましい。1以下であるとスムーズな蒸気の流れが阻害され、また100を超えると蒸着材料3の載置手段を設けるための余裕がなくなってしまうからである。
なお、以上に述べたコンダクタンスとは、流動抵抗の逆数のことで、流体の流れやすさを表す値である。コンダクタンスは、例えば「真空技術活用マニュアル」株式会社工業調査会、P82 6.4 配管抵抗(コンダクタンス)等の文献を参照して計算することができる。
また、蒸着材料3を収容するルツボ1内の各ドーナツ型平板2は、外周部をルツボ1の側壁に個別に取りはずし自在に接合され、ルツボ1の外周をヒーター12によって加熱すれば熱伝導によってドーナツ型平板全体を均一に加温することができる。
また、開口部10aのコンダクタンスC10a は、流動路BのコンダクタンスCB より小さくする、つまり開口部10aの開口寸法が各ドーナツ型平板2の中心部の穴より小さいことが好ましい。開口部10aの開口寸法を各ドーナツ型平板2の中心部の穴より小さくすることで、各段から発生した蒸気が開口部10aに到達するまでのバラツキによる蒸発速度の不安定性を回避することが可能となる。より具体的には、流動路BのコンダクタンスCB と開口部10aのコンダクタンスC10a との比は、1<CB /C10a ≦10であることが好ましい。1以下であると蒸着レートが少なくなり、また10を超えると蒸着源の外に熱が逃げてしまい被蒸着基板W1 に悪影響を与えるおそれがあるからである。
また、蒸着材料の載置手段であるドーナツ型平板2の上には筐体であるルツボ1が配置されていて、各ドーナツ型平板2はルツボ1の上部に配置された開口部10aの真下には配置されておらず、ルツボ1によって覆い隠されていることが好ましい。ドーナツ型平板2がルツボ1の開口部10aの真下に配置されていると、ドーナツ型平板2に載置された蒸着材料3に突沸が生じた場合に、突沸によって発生した粒子がそのまま開口部10aから放出されて被蒸着基板W1 に付着してしまうおそれがあるからである。本発明は、仮に載置された蒸着材料3に突沸が生じた場合であっても、突沸によって発生した粒子はそのまま被蒸着基板W1 に付着することがない。そのため、成膜物中に混入する異物に対して非常にデリケートである有機EL素子の有機化合物層を成膜する場合には、異物の少ない膜を成膜することができる。
なお、載置手段であるドーナツ型平板2の上に配置される筐体は、必ずしも筐体の側部、あるいは底部と一体になっているものではなくてもよく、例えば筐体の側部あるいは底部と取り外しが可能な蓋状の部材であってもよい。つまり、ドーナツ型平板2と外部環境との間を遮る部材を設ければよい。ただし、取り外し可能な部材であれば蒸着材料3の充填や蒸着源内の洗浄を簡単に行うことができるため、より好ましい構成である。
図2に示す蒸着装置は、チャンバー21内において、被蒸着基板(基板)W1 を保持する基板ホルダー(保持部材)22と、マスク23を保持するマスクホルダー24を蒸着源10に対峙させる。そして、蒸着源10内の有機EL膜材料等の蒸着材料3を加熱してその蒸気を被蒸着基板W1 に被着させる。
このとき、載置手段に載置する蒸着材料3は、薄く載置することが好ましい。薄く載置することによって、蒸着材料3を加熱した際に温度ムラが生じにくくなり、突沸を防ぐことができる。具体的には、0.5mm以上10mm以下の厚みで載置することが好ましい。
図1は実施例1を示すもので、ルツボ1は図示しない構造体により支持されていて、ヒーター12により輻射加熱される。ヒーター12の出力は、熱電対によりルツボ1の底部温度を測定することで、温度調節計と電源により制御される。ヒーター12のさらに外側のリフレクター11は、ヒーター12からの輻射熱をルツボ1に集中させる働きをする。ルツボ1の内壁より内側に張り出したドーナツ型平板2の上に蒸着材料3が薄く載置される。各ドーナツ型平板2は、その上下のドーナツ型平板2と一定の間隔を置いて配置されている。
本実施例においては、ドーナツ型平板2に蒸着材料3を1mmの厚さで載置した。各ドーナツ型平板2の直径は40mm、中心部は穴径10mmの円形穴であり、上下のドーナツ型平板2の間隔は5mmで同軸上に8段設置した。各ドーナツ型平板2の間の流動スペースAは、各蒸着材料3から発生する蒸気が流動する空間である。一方、ドーナツ型平板2の中心部の穴径は、各ドーナツ型平板2上の蒸着材料3から発生してきた蒸気が軸方向に通りやすい大きさの流動路Bを形成する。このように、流動路Bのコンダクタンスは流動スペースAのコンダクタンスより大であるように構成される。
各ドーナツ型平板2は外周がルツボ1の内壁面に接合されている。開口部10aは各ドーナツ型平板2と同軸上に配置され、直径5mmの円形とした。
図2に示す蒸着装置において、蒸着源10がチャンバー21の底部に保持され、チャンバー21は図示しない真空排気系に接続されていて、同じく図示しない圧力計によって真空排気中の圧力をモニターする。蒸着源10の開口部10aは、蒸着源10の上方に設置された被蒸着基板W1 に向いている。被蒸着基板W1 は基板ホルダー22により保持されていて、マスク23は、マスクホルダー24によって保持され、被蒸着基板W1 の成膜面に密着されている。このマスク23には蒸着パターンが開けてあり、被蒸着基板W1 にはマスク23の蒸着パターンが転写される。被蒸着基板W1 およびマスク23と蒸着源10の間にはシャッター25が設置され、蒸着時はシャッター25が開方向に移動し、被蒸着基板W1 およびマスク23を蒸着源10の開口部10aに曝露させる。
蒸着源10を加熱し蒸着材料3が蒸発している間は、被蒸着基板Wの脇に設置された膜厚モニター26により蒸発レートをモニターする。次に成膜工程を説明する。
被蒸着基板W1 として100mm角の石英ガラスを基板ホルダー22に設置した。マスク23はデルタ配置と呼ばれる開口部が3角に配置される形状に開けられたものを使用した。このマスク23をマスクホルダー24に設置し、被蒸着基板W1 に密着させた。シャッター25はこの段階では被蒸着基板W1 の蒸着面を覆い隠す位置に保持されている。膜厚モニター26は、INFICON社製IC−5(商標名)を用いた。蒸着源10の開口部10aから被蒸着基板W1 の蒸着面までの間隔は350mmとした。蒸着源10の開口部10aと膜厚モニター26の蒸着面までの間隔も同じく350mmとした。蒸着材料3はAlq3を使用し、各ドーナツ型平板2上に0.05gずつ載置した。チャンバー21内を1×10-5paに真空排気した後、ヒーター12を通電加熱し、蒸着源10を290℃に昇温させた。
蒸着源10が290℃に到達後、膜厚モニター26で蒸着速度が14±0.1nm/secで安定していることを確認し、シャッター25を白抜き矢印方向に開けて蒸着を開始した。膜厚モニター26で200nm成膜したことを確認したとき、シャッター25を閉じて蒸着を終了した。蒸着終了後石英ガラスの被蒸着基板W1 上に蒸着したAlq3膜の厚さを測定したところ、基板中心部で205.1nm、基板中心部から50mm離れた基板4辺の中心部で平均202.4nmであった。蒸着中の膜厚モニター26の測定値を観察したが、突沸(スプラッシュ)等に起因する急峻な成膜レートの変動は見られなかった。
次に、実施例1と同様の蒸着源において蒸着源の開口部の大きさを変えて、直径10mmの円形の開口部にして実施例1と同様の真空蒸着を行った。実施例1と同様に被蒸着基板および蒸着材料を設置し、チャンバー内を1×10-5paに真空排気した後、ヒーターを通電加熱し蒸着源を290℃に昇温させた。蒸着源が290℃に到達後、膜厚モニターで蒸着速度が13±0.1nm/secで安定していることを確認し、シャッターを開けて蒸着を開始した。膜厚モニターで200nm成膜したことを確認したとき、シャッターを閉じて蒸着を終了した。
蒸着中の膜厚モニターの測定値を観察したが、突沸に起因するような急峻な成膜レートの変動は見られなかった。しかし、蒸着終了後に石英ガラスの被蒸着基板上に蒸着したAlq3膜の厚さを測定したところ、基板中心部で206.2nmであったが、基板中心部から50mm離れた基板4辺の中心部で平均198.4nmであった。すなわち、実施例1による蒸着膜厚分布と比較して均一性は劣っていた。これは、実施例1より蒸着源の開口部が大きいため、Alq3の蒸気が蒸着源からチャンバー内に通り抜けるときのコンダクタンスが大きくなり、蒸着源の内外で圧力差が小さくなった結果、Alq3の蒸気の発散分布がcos則から外れてしまったためである。
図3および図4は実施例2による蒸着源40を示す。図3に分解して示すように、蒸着源40の各ドーナツ型平板32は筐体の一部分を構成する側壁部分32aを有し、側壁部分32aと一体になったまま各段に分離される。各ドーナツ型平板32に蒸着材料33としてAlq3を載置し、図4に示すように、同軸上に積み重ねて、最上部に中心穴(開口部)34aを有する上蓋34、最下部に底板35を配置する。積み重ねたドーナツ型平板32の側壁部分32aおよび上蓋34と、底板35とによって実施例1のルツボ1と同じ機能をもたせて、外側にヒーター(加熱手段)42を配設する。つまり、図4に示す蒸着源は、筐体と載置手段であるドーナツ型平板32とが一体に形成されていて各載置手段毎に独立した構造体が、上下方向に複数積み重ねられた蒸着源である。このような構成にすることによって、各載置手段に蒸着材料33を載置しやすくなり、蒸着源40の洗浄や交換等のメンテナンスも行いやすくなる。
蒸着源40を用いて実施例1と同じ条件でAlq3膜を蒸着した。チャンバー内を1×10-5paに真空排気した後、ヒーター42を通電加熱し、蒸着源40を290℃に昇温させた。蒸着源40が290℃に到達後、膜厚モニターで蒸着速度が13.5±0.1nm/secで安定していることを確認し、シャッターを開けて蒸着を開始した。膜厚モニターで200nm成膜したことを確認したとき、シャッターを閉じて蒸着を終了した。
蒸着終了後、石英ガラスの被蒸着基板上に蒸着したAlq3膜の厚さを測定したところ、基板中心部で202.5nm、基板中心部から50mm離れた基板4辺の中心部で平均200.4nmであった。蒸着中の膜厚モニターの測定値を観察したが、突沸に起因するような急峻な成膜レートの変動は見られなかった。
実施例1による蒸着源を示す模式断面図である。 実施例1の蒸着源を用いた蒸着装置を示す模式断面図である。 実施例2の蒸着源を分解して示す分解断面図である。 実施例2の蒸着源を組み立てた状態で示す断面図である。 一従来例による蒸着装置を示す模式断面図である。
符号の説明
1 ルツボ(筐体)
2、32 ドーナツ型平板
10、40 蒸着源
12、42 ヒーター
21 チャンバー
22 基板ホルダー
23 マスク
24 マスクホルダー
25 シャッター
26 膜厚モニター

Claims (4)

  1. 蒸着材料を内部に収容し、加熱された前記蒸着材料を放出する開口部を上部に有する筐体と、前記筐体内に配設されており前記蒸着材料を載置する複数の載置手段と、を有し、
    前記複数の載置手段は上下方向に間隙を置いて複数段に配設されており、各載置手段は平面状の部材であり前記平面内に開口を有している、蒸着源において、
    前記間隙は、前記載置された前記蒸着材料から発生した蒸気を前記筐体の前記開口部に導くための流動スペースであり、
    各載置手段の前記開口によって、前記流動スペースと前記筐体の前記開口部とを連通する流動路が前記上下方向に形成されており、
    前記流動スペースのコンダクタンスおよび前記開口部のコンダクタンスは、前記流動路のコンダクタンスより小さいことを特徴とする蒸着源。
  2. 各載置手段は前記筐体の前記開口部の真下には配置されておらず、前記筐体によって覆い隠されていることを特徴とする請求項記載の蒸着源。
  3. 各載置手段が前記筐体の一部分と一体に形成されていて各載置手段毎に独立した構造体を形成し、前記構造体が、前記上下方向に複数積み重ねられたことを特徴とする請求項1または2記載の蒸着源。
  4. 請求項1ないしいずれか1項記載の蒸着源と、チャンバーと、前記蒸着源に載置された蒸着材料を加熱する加熱手段と、被蒸着基板を保持する保持部材と、を有することを特徴とする蒸着装置。
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