JP3003275B2 - 分子線源容器 - Google Patents

分子線源容器

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JP3003275B2 JP3134839A JP13483991A JP3003275B2 JP 3003275 B2 JP3003275 B2 JP 3003275B2 JP 3134839 A JP3134839 A JP 3134839A JP 13483991 A JP13483991 A JP 13483991A JP 3003275 B2 JP3003275 B2 JP 3003275B2
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武 柄沢
和宏 大川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分子線エピタキシー法
の重要な構成要素である分子線源容器の新規な構造に関
する。
【0002】
【従来の技術】分子線エピタキシー法は、超高真空を利
用した非平衡状態における成膜方法で、きわめて清浄な
環境での低温プロセスである。また分子線の機械的シャ
ッター等の手段による断続により急峻な界面を形成でき
るため、薄膜結晶成長の化学的研究から応用開発にいた
るまで幅広く利用されている技術である。基板上への分
子、原子の供給は、基板に対して配置された分子線源か
ら分子線の形でなされる。
【0003】固体原料を用いる場合は通常、耐熱、耐腐
食性に優れた物質(通常はグラファイトまたはPBN)
で作られたKセルと呼ばれる図2のような円筒状容器1
に原料3を入れ、この円筒状容器1を加熱することによ
り、原料3から分子線を放出させ薄膜を得る。また気体
原料の場合には熱分解などにより必要な分子線として取
り出す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】固体原料にはZn、C
d、Asなどの元素、CdS、ZnSなどの化合物があ
り、またそれらは加工によってロッド、チャンク(塊
状)、粉末などの異なった形態をとっている。金属など
は加工、成形が比較的容易であることから、かなり高純
度のものが目的に応じた形状で得られる。しかし、すべ
てにおいてこのようなことが可能なわけではなく、特に
化合物などでは粉末状のものでなければ所望の純度の原
料が得られない課題があった。
【0005】一方、分子線強度の制御は温度によりなさ
れ、原料がロッドあるいはチャンクの場合には、1回あ
たりの成膜の間、たとえば数時間程度であればひとたび
原料の温度が一定となった後は、ほぼ一定強度の分子線
が得られ、その安定度は比較的良好である。しかし粉末
状の原料を用いる場合には、分子線源容器内の原料の残
存量による影響が大きく、特に分子線を得るために必要
な加熱温度が高く、原料の消費量が多い場合には、数時
間程度の成膜であっても均一な分子線強度保持が困難と
なるという課題があった。
【0006】また、例え原料がロッドあるいはチャンク
の場合でも、成膜時間が長くなると容器中の原料の最上
段の層が低下して行くため、安定な分子線を供給するた
めには複雑な加熱制御が必要であるという課題があっ
た。
【0007】分子線エピタキシーによる成膜において、
薄膜結晶構造、特に超格子構造の制御には安定した分子
線が必要であるにもかかわらず、このような安定な分子
線が得られない点は分子線エピタキシーでの重大な課題
であった。
【0008】本発明は、かかる従来の課題に対して成さ
れたもので、粉末状の原料であっても、複雑な温度制御
を施さなくても、長時間にわたり安定な強度の分子線が
得られる分子線源容器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで本発明において
は、円筒状容器内壁から中心軸方向に突出部を設け、こ
の突出部は、容器の中心軸に近い側が容器開口部に向か
って折れ曲がった形状をなし、原料を保持できる構造と
する。この突出部の容器内壁からの長さは容器の半径よ
りも小さく、かつ容器の内壁全周にゆきわたるものであ
り、また容器の開口部に近い側の突出部の容器内壁から
の距離は、低部に近い突出部の容器内壁からの距離より
も小さくするようにして複数個を配置することによっ
て、かかる従来の課題を克服した。
【0010】
【作用】本発明は、「分子線放出に伴い原料が減少して
も、その減少量が分子線放出に与える影響を少なくす
る」ということを根本思想に基づく分子線源容器であ
る。この根本思想を具現化するため、分子線源容器の形
状を改良し、本発明に至った。
【0011】本発明の分子線源容器は、以下の4点の原
理原則に基づく。 (1)容器を加熱することにより、原料が存在する容器
の位置に応じた温度に見合う分子線を、その原料の最上
部から均一に放出して行く。 (2)容器から放出される分子線は、原料の最上部の位
置に依存する。 (3)容器内に存在する原料の位置が異なる場合の容器
から開口部へ放出される分子線は、存在する位置の原料
から放出される分子線の平均値である。 (4)原料が容器内に存在する限り、その原料に位置に
見合った分子線を放出する。
【0012】この4点の原理原則に基づき、原料を容器
中心軸方向に分割して配置したため、原料が存在する内
は分子線源の放出強度の変化がきわめて少なく、安定な
分子線が長時間にわたって得られる。
【0013】
【実施例】以下に図面に基づいて本発明の一実施例を詳
細に説明する。図1は本発明による分子線源に用いる容
器の概念を示す図である。図1(a)は容器の開口部側
から見た平面図であり、また図1(b)は容器の内部構
造を示す横断面図である。図1(a)のように開口部側
から見て環状に、また図1(b)のように容器1の断面
からみてL字形の突出部2にも分子線原料を入れられる
ようになっている。このL字形突出部2を容器1の容量
に応じて複数段設けるが、図1(b)のようにL字形の
突出部2の形状は、底部から開口部へ向かって小さくな
るように配置する。これは容器1の上部および下部から
できるだけ均等に分子線を出させるためである。図1
(a)に示したように、本発明の分子線源容器のL字形
の突出部2の間隔は、容器の開口部からみて等面積とな
るように配置される(即ち原料の露出面積が等しい)こ
とが好ましい。また、図1(b)に示したように、L字
形の突出部2の高さが同一であると、中に入れる原料の
量が均一にできるため好ましい。さらに、L字形の突出
部2の段数は、多い方が均一な分子線が長時間にわたっ
て得られるため好ましい。したがって、容器内部に設け
るL字形の突出部2の段数および径は、容器1自体の径
および長さによって現実的には決定される。容器1のL
字形の突出部2の段数をn、L字形の突出部2の厚みを
t、x段目のL字形突出部2の有効突出部(即ち図1
(a)において原料が露出している部分)の径をr
x(最底部はr0)とすると、(数1)の関係を満足する
ように設計すればよい。
【0014】
【数1】
【0015】本発明の分子線源容器1およびL字形の突
出部2の材質は、充分な耐熱性を有し、かつ各種の原料
と反応することなく、また超高真空における使用に際し
て脱ガスのないものを必要とするので、PBNまたはグ
ラファイトが望ましい。
【0016】また、本発明の分子線源容器に適応される
原料の形態としては、粉体状、ロッド状あるいはチャン
ク状の何れでも良いが、本発明の分子線源容器は粉体状
の原料でも安定な分子線が放出できるため、粉体状の原
料において特に有効である。
【0017】次に、従来の分子線源容器と本発明の分子
線源容器とによる分子線強度の比較を、粉末原料の一例
としてCdSを用いた場合について示す。通常の分子線
エピタキシー装置を用い、成長室内はおよそ5×10
-10Torrまで排気する。分子線強度はマニピュレー
タに取り付けられた電離真空計により測定される。図2
に示した従来の容器、および図3に示した本発明の容器
にそれぞれ図のごとくCdS粉末原料3を入れ、分子線
強度が2×10-6Torrとなるようにするための容器
加熱ヒーターの設定温度の時間変化を測定した結果を図
4に示す。図4中に示したように、従来の容器では
(a)のように分子線強度を一定に保つのに要する設定
温度が時間とともに変化してしまうのに比べ、本発明の
容器の場合には(b)のように長時間にわたり一定であ
り、安定した分子線強度が得られる。
【0018】上記実施例では分子線源原料としてCdS
粉末を用いたが、本発明の分子線源容器はCdS粉末に
限定されるわけではなく、他にもZnS、ZnSe、C
dSe等の化合物半導体を始め、Zn、Cd、As等の
単体元素等にも応用でき、上記実施例で示したと同様の
効果があった。また、原料の形態も本実施例では粉末を
例示したが、ロッド状またはチャンク状でも同様の効果
があった。
【0019】
【発明の効果】本発明は、分子線源容器の内部を分子線
源容器の中心線に沿って分割した形状を有するため、粉
末状の原料を用いる場合であっても長時間にわたり安定
した強度の分子線が得られ、しかもそのために複雑な温
度制御のためのフィードバック系を必要とせずに高精度
の分子線強度を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の分子線源容器の一実施例の構
成を示す上面図 (b)は本発明の分子線源容器の一実施例の構成を示す
断面側面図
【図2】従来例の分子線源容器の原料充填状態を示す断
面側面図
【図3】本発明の分子線源容器の原料充填状態を示す断
面側面図。
【図4】同一の分子線強度を得るのに要する容器加熱ヒ
ーターの設定温度の時間変化の関係図
【符号の説明】
1 容器 2 突出部 3 分子線原料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−202909(JP,A) 特開 昭59−64594(JP,A) 特開 平2−124794(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/203 C30B 23/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内部に固体原料を入れ前記原料の分子線を
    発生させる開口部を有する円筒状容器であって、前記容
    器内壁より前記容器中心軸方向に向かって突出した複数
    の突出部を設け、前記突出部は前記容器中心軸側の端部
    に前記容器開口部方向に屈曲した屈曲部を有し、前記屈
    曲部は前記容器開口部を塞ぐことなく前記容器内壁の全
    周にゆきわたる形状を有しており、前記容器開口部に近
    い側の前記突出部の前記容器内壁から前記屈曲部までの
    距離が、前記容器底部に近い側の前記突出部の前記容器
    内壁から前記屈曲部までの距離よりも短いことを特徴と
    する分子線源容器。
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