JP4841195B2 - 燃料電池用電解質膜 - Google Patents
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- YFJVKAVQLXGMRI-UHFFFAOYSA-N OS(c(cc1)ccc1Sc1cc(Sc2cc(S)cc(Sc3cc(Sc(cc4)ccc4S(O)(=O)=O)cc(Sc(cc4)ccc4S(O)(=O)=O)c3)c2)cc(Sc(cc2)ccc2S(O)(=O)=O)c1)(=O)=O Chemical compound OS(c(cc1)ccc1Sc1cc(Sc2cc(S)cc(Sc3cc(Sc(cc4)ccc4S(O)(=O)=O)cc(Sc(cc4)ccc4S(O)(=O)=O)c3)c2)cc(Sc(cc2)ccc2S(O)(=O)=O)c1)(=O)=O YFJVKAVQLXGMRI-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
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Description
これに対し、耐熱性を克服した芳香族主鎖高分子電解質の開発が現在盛んになっている。これは、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性高分子にスルホン酸基などの酸基を導入した高分子電解質である。耐熱性はパーフルオロカーボンスルホン酸に対して相当程度に改善されている。特許文献2には、特許文献1と同様の手法を使った、ポリベンズイミダゾールの積層膜による電解質膜が開示されているが、従来の芳香族主鎖高分子電解は、燃料電池の運転条件下で発生するラジカルによって主鎖の芳香環が酸化されてしまうため、長時間運転における耐久性が十分ではない。
1.少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有する高分子電解質を含有する膜からなり、該膜両表面に隣接する膜内部領域のスルホン酸基当量が、該内部領域に隣接する膜表面のスルホン酸基当量より高いことを特徴とする燃料電池用電解質膜。
Z=−(X1Ar1(B1))−(X2Ar2(B2))−・・・−(Xn-1Arn-1(Bn-1))−(XnArn) (2)
上記一般式(2)中のB1〜Bn-1は、側鎖部分Zにおける分岐鎖を意味し、以下の式で表される。
B1=−〔(X2Ar2(B2))−(X3Ar3(B3))−・・・−(Xn-1Arn-1(Bn-1))−(XnArn)〕f
B2=−〔(X3Ar3(B3))−・・・−(Xn-1Arn-1(Bn-1))−(XnArn)〕f
・
・
・
Bn-1=−〔XnArn〕f
上記一般式(2)中
nは各々独立に2〜5の整数、
fは各々独立に0〜2の整数であり、少なくとも一つのfが1または2であり、
Ar1〜Arnは各々独立に芳香族残基であって、
X1〜Xnは各々独立に−CO−、−CONH−、−(CF2)p−(pは1〜10の整数)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−から選ばれる連結基である。そして、Zは−SO3H基の1.0を超える数を有する。)
3.膜の両表面と、該両表面からそれぞれ内部に向けて5μm入った面に挟まれる、両表面から巾5μmの領域に、スルホン酸基当量が不連続に増加する界面が存在し、この界面によって表面層と内部層に別れており、内部層のスルホン酸基当量が、隣接する膜表面層のスルホン酸基当量に対して120%以上となる、前記項目1または2に記載の燃料電池用電解質膜。
4.膜の両表面から厚み方向で5μm内部に入った部位のスルホン酸基当量が、その部位から5μmの位置にある膜の表面部位のスルホン酸基当量に対して120%以上となる、前記項目1または2に記載の燃料電池用電解質膜。
5.電解質膜全体のスルホン酸基当量が0.3ミリグラム当量/g以上である、前記項目1〜4のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜。
6.両方の膜表面から、内部に向って1μmまでの領域の高分子電解質のスルホン酸基当量が3ミリグラム当量/g以下である、前記項目1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜。
<高分子電解質>
本発明の電解質膜に使用される高分子電解質は、下記の一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有する。
ル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる)、単結合から選ばれ、好ましくは−CO−、−O−、−S−、−SO2 −から選ばれる。
上記一般式(1)中、Pは −CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CONH−、−C(CF3)2−、単結合から選ばれる連結基であり、好ましくは、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CF3)2−から選ばれる連結基であり、さらに好ましくは−CO−、−O−、−S−、−SO2−から選ばれる連結基である。
一般式(1)中の側鎖部分Zは、一般式(2)で表される。
Z=−(X1Ar1(B1))−(X2Ar2(B2))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XnArn) (2)
上記一般式(2)中のB1〜Bn−1は、側鎖部分Zにおける分岐鎖を意味し、以下の式で表される。
B1=−〔(X2Ar2(B2))−(X3Ar3(B3))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XnArn)〕f
B2=−〔(X3Ar3(B3))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XnArn)〕f
・
・
・
Bn−1=−〔XnArn〕f
上記一般式(2)中nはそれぞれ独立に2〜5から選ばれる整数を表し、好ましくは2〜4から選ばれ、さらに好ましくは2〜3から選ばれる。fはそれぞれ独立に0〜5から選ばれる整数を表し、好ましくは0〜2から選ばれ、かつ、少なくとも一つのfが1または2であり、さらに好ましくは0〜1から選ばれ、かつ、少なくとも一つのfが1である。
上記一般式(2)において、fが1以上である場合、上記一般式(2)で表される側鎖は芳香族残基Ar1〜Arn−1 において分岐構造をとるが、その際、各分岐鎖は各々異なった鎖長および分岐構造をとることもできる。すなわち、本発明の上記一般式(2)で表される側鎖は、例えば、下記式(6)に示す構造をとることができる。
ン原子、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、−CN、−NO2、−COR、−COOR(Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる。)、−CONRR’(R’はRと同様である。)、−SO3R、−SOR、−SO2Rで置換されていてもよく、Arnは互いに同じであっても異なっていてもよい。
分子鎖間の側鎖が互いに絡み合うものと推察され、その結果、電解質膜の強度が高く、寸法安定性も高いものと考えられる。
上記一般式(2)において、fが1以上である場合、上記一般式(2)で表される側鎖は芳香族残基Ar1〜Arn−1において分岐構造をとるが、その際、各分岐鎖は各々異なった鎖長および分岐構造をとることもできる。すなわち、本発明の上記一般式(2)で表される側鎖は、例えば、上記式(6)に示す構造をとることができる。
(1)耐酸化性が高い理由:燃料電池運転時には過酸化水素や・OOHラジカルのような酸化性物質が生成することが知られている。そのため、高分子電解質としては化学的に安定な高分子パーフルオロスルホン酸が用いられてきた。従来の炭化水素系高分子スルホン酸では耐酸化性が不十分であることは、例えば、特開2003−201352号公報や、特開2003−201403号公報において、芳香族主鎖型高分子電解質に対して、耐酸化性を補うために酸化防止剤を併用していることからも明らかである。また、これらの公報で開示されている芳香族主鎖型高分子電解質は、スルホン酸が置換した芳香環が電子供与性連結基(−O−)で連なる構造の側鎖を有している。酸化性物質例えば・OOHラジカルは芳香環を親電子的に攻撃するので、電子密度の高い芳香環ほど攻撃されやすく、は耐酸化性が低いものと推察される。一方、本発明の電解質は、スルホン酸が置換した芳香環が電子吸引性連結基で連なる特定構造の側鎖を有する。すなわち、本発明の方法では電子吸引性連結基を用いることにより芳香環の電子密度を低下させ、それゆえ、酸化性物質が反応し難く、耐酸化性が高いものと考えられる。
(3)プロトン伝導度が高い理由:電子吸引性連結基が置換した本発明の電解質は芳香環の電子密度が低い。したがって解離したスルホン酸アニオンを安定化するために酸解離定数が高く、それゆえ、プロトン伝導度が高いものと推測される。
子吸引性連結基を有する高分子電解質は合成が困難であった。一方、本発明においては、電子吸引性連結基へ変換可能な電子供与性連結基前駆体を用いることにより、(1)スルホン化反応性の促進と、(2)電子吸引性連結基の使用、を両立することが初めて可能となり、その結果、本発明の優れた効果を見出すことが可能となったのである。
(M1)高分子に側鎖導入剤を反応させて側鎖を導入する方法
上記一般式(1)においてZが置換していない構造に相当する、−Y−P−(Yは2価の芳香族残基、Pは前記のとおり)を繰り返し単位として有する高分子へ側鎖導入剤を反応させてZを導入させても良いし、予め反応性の置換基を導入した−Y(M)−P−(Yは3価の芳香族残基、Mは反応性基、Pは前記のとおり)に、Mと反応する側鎖導入剤を反応させることによりZを導入しても良い。
繰り返し構造単位(A)に対応するモノマーおよび他の繰り返し単位に対応するモノマーを重合することによっても得られるし、繰り返し単位(A)に対応するモノマーや他の繰り返し単位に対応するモノマーからまずオリゴマーを合成し、次に当該オリゴマー同士または当該オリゴマーとモノマーを反応させることにより得ることもできる。また、繰り返し単位(A)と一つのまたは複数の他の繰り返し単位が連結した構造に対応するモノマーを予め合成し、このものの単独重合や、このものと他の繰り返し構造に対応するモノマーとの重合によって合成することもできる。
Z’−V (11)
上記一般式(10)のUが水素原子の場合、Vは−COX、−SO2Xから選ばれる反応性基であり、Uが−COX、−SO2Xから選ばれる反応性基である場合には、Vは水素原子であり、Z’は、下記一般式(12)で表される。
Z’=−(Ar1(B1))−(X2Ar2(B2))−・・・−(Xn−1Arn−1(Bn−1))−(XnArn) (12)
(上記一般式(12)中、Ar、B、nは上記一般式(2)に記載のものと同様であり、Xは上記一般式(2)に記載の連結基及び連結基前駆体から選ばれる。)
連結基前駆体とは、連結基に変換することのできる基をいう。連結基前駆体を連結基に変換する方法としては公知の方法を用いることができる。表1に例を示す。
(i)側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有せず、かつ、側鎖導入剤のXが、電子供与性の連結基前駆体であって、高分子と反応後、スルホン酸化を行い、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、または、
(ii)側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有し、かつ、側鎖導入剤のXが、(ii−1)電子供与性の連結基前駆体である場合には、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、(ii−2)電子吸引性の連結基である場合には、その状態で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する燃料電池用高分子電解質を得る方法である。
Uが水素原子のもの:上記一般式(7)で示される残基から選ばれる2価芳香族残基と、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CONH−、−C(CF3)2−、単結合から選ばれる連結基Pの組み合わせからなる高分子が通常用いられ、好ましくは、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンから選ばれる2価芳香族残基と−CO−、−O−、−S−、−SO2−から選ばれる連結基Pの組み合わせが用いられ、より好ましくはポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンが用いられ
、さらに好ましくは、下記式で表される高分子においてZが水素原子のものが用いられる。
側鎖導入剤がスルホン酸基またはその前駆体を有し、かつ、側鎖導入剤のXが電子吸引性の連結基であり、さらに、Vが−COX、−SO2Xから選ばれる反応性基である場合の、好ましいZ’−Vの例を下記一般式(12)および下記一般式(13)に示す。さらに好ましいZ’−Vは下記一般式(13)に示す分岐構造である。(式中、−SO3Rはスルホン酸基またはその前駆体を表し、Rは水酸基、アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属から選ばれる。)
高分子に側鎖導入剤を反応させる際の反応の種類は、特に制限されない。上記一般式(10)で表される高分子と上記一般式(11)で表される側鎖導入剤を反応させる際の好ましい方法としては次の方法が挙げられる。
(i)上記一般式(10)のUが水素原子で、上記一般式(11)のVが−COX(Xがハロゲン原子または水酸基)であるか、または、上記一般式(10)のUが−COX(Xがハロゲン原子)で、上記一般式(11)のVが水素原子である場合:フリーデル・クラフツ−アシル化反応を用いることができる。
(ii)上記一般式(10)のUが水素原子で、上記一般式(11)のVが−SO2X(Xがハロゲン原子または水酸基)であるか、または、上記一般式(10)のUが−SO2X(Xがハロゲン原子)で、上記一般式(11)のVが水素原子である場合:フリーデル・クラフツ型スルホニル化反応を用いることができる。
(iii)上記一般式(10)のUが水素原子で、上記一般式(11)のVが−COOHまたは−SO3Hであるか、または、上記一般式(10)のUが−COOHまたは−SO3Hで、上記一般式(11)のVが水素原子である場合:脱水縮合反応を用いることができる。
連結基前駆体を連結基に変換するのはいずれの時点でもよいが、好ましくは次の方法が用いられる。すなわち、少なくとも下記一般式(18)で表されるモノマーを重合させるに際し、
(i)Z”がスルホン酸基またはその前駆体を有せず、かつ、Z”のXが電子供与性の連結基前駆体であって、重合後、スルホン酸化を行い、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、または、
(ii)Z”がスルホン酸基またはその前駆体を有し、かつ、Z”のXが、(ii−1)電子供与性の連結基前駆体である場合には、続いて連結基前駆体を電子吸引性の連結基に変換することにより、(ii−2)電子吸引性の連結基である場合には、その状態で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する燃料電池用高分子電解質を得る方法である。
また、本発明の重合体において、繰り返し単位(A)以外の他の繰り返し単位としては、重合できるものであればいずれも用いることができ、下記一般式(19)で表される繰り返し単位(B)が好ましく用いられる。
−Y2−P2− (19)
(式中、Y2は前記一般式(7)に示されるものと同様の2価の芳香族残基から選ばれ、当該芳香族残基の水素原子がアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、またはアリール基で置換されていてもよく、P2 は−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−COO−、−SO3−、−CONH−、単結合から選ばれ、好ましくは−CO−、−O−、−S−、−SO2−から選ばれる。)
[合成方法−1]本発明において、連結基Pが単結合である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、遷移触媒を用いた、芳香族ハロゲン化物同士のカップリング反応である。例えば米国特許第5403675号明細書および特開2003−201352に記載された方法を用いることができる。
[合成方法−2]本発明において、連結基Pおよび/またはP2が−O−である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、芳香族ヒドロキシ化合物と芳香族ハロゲン化物の芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテルの合成反応である。
例えば、高分子学会編「高性能芳香族系高分子材料」(丸善株式会社 1990年3月30日)p.128〜132に記載された方法を用いることができる。別の方法としては、芳香族ハロゲン化物同士を炭酸塩と触媒の存在下に反応させて芳香族ポリエーテル類を合成する反応を用いることができる。例えば、Macromolecules,1991年,24巻 p.3838(Fukawaら)に記載された方法を用いることができる。
ロキシ化合物の代わりに芳香族チオール化合物を用いて芳香族ポリスルフィド類を合成する方法である。また、別の方法としては、芳香族ジクロリドと硫化ナトリウムから芳香族ポリスルフィドを合成する反応を用いることができる。例えば、高分子学会編「高性能芳香族系高分子材料」(丸善株式会社 1990年3月30日)のp.133〜134に記載された方法を用いることができる。
[合成方法−4]本発明において、連結基Pおよび/またはP2が−SO2−である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、上記合成法−3で製造した芳香族スルフィド類を過酸化水素などの酸化剤を用いて酸化する方法である。
また、別の方法としては、水素原子を芳香環に有する芳香族化合物に、芳香族スルホン酸ハライドを親電子置換反応させて芳香族スルホン結合を形成する方法を用いることができる。例えば、高分子学会編「高性能芳香族系高分子材料」(丸善株式会社 1990年3月30日)のp.132〜133に記載された方法を用いることができる。
[合成方法−5]本発明において、連結基Pおよび/またはP2が−CO−である重合体を製造する際の反応として好ましく用いられるのは、フリーデル・クラフツ−アシル化反応である。例えば、高分子学会編「高性能芳香族系高分子材料」(丸善株式会社 1990年3月30日)のp.132〜133に記載された方法を用いることができる。
[重合体の例−1]重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2 がいずれも−O−の場合:例えば下記一般式(20)に示す繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(21)に示す繰り返し単位(B)モノマーとの反応、または、下記一般式(22)に示す繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(23)に示す繰り返し単位(B)モノマーとの反応、または、下記一般式(24)に示す繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(25)に示す繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなる下記一般式(26)で示される重合体を得ることができる。
上記一般式(20)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、;2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−チオフェノキシベンゾフェノン;2,5−ジクロロ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジブロモ−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジヨード−1−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2,5−ジクロロ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジブロモ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2,5−ジヨード−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2,5−ジクロロ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン;2,5−ジクロロ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジブロモ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2,5−ジヨード−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、およびこれらの位置異性体などが挙げられる。
4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−1−(4−チオフェノキシ−4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゼン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−(4−ベンゾイル)ベンゾイルベンゾフェノン;2−クロロ−5−ヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、2−ヨード−5−ヒドロキシ−4’−ベンゾイルベンゾフェノン、およびこれらの位置異性体などが挙げられる。
2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ブロモフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ブロモフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヨードフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ヨードフェニル)ヘキサフルオロプロパン;ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、ビス(ブロモフェニル)ジフルオロメタン、ビス(ヨードフェニル)ジフルオロメタン;4−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、4−クロロ安息香酸−3−クロロフェニル、3−クロロ安息香酸−3−クロロフェニル、3−クロロ安息香酸−4−クロロフェニル、4−ブロモ安
息香酸−4−ブロモフェニル、4−ブロモ安息香酸−3−ブロモフェニル、3−ブロモ安息香酸−3−ブロモフェニル、3−ブロモ安息香酸−4−ブロモフェニル;ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(3−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−ブロモフェニル)スルホキシド、ビス(3−ブロモフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヨードフェニル)スルホキシド、ビス(3−ヨードフェニル)スルホキシド;
ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(3−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモフェニル)スルホン、ビス(3−ブロモフェニル)スルホン、ビス(4−ヨードフェニル)スルホン、ビス(3−ヨードフェニル)スルホン;2,5−ジクロロ−4′−フェノキシベンゾフェノン、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジブロモトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、2,5−ジブロモ−p−キシレン、2,5−ジヨード−p−キシレン、2,5−ジクロロベンゾトリフルオライド、2,5−ジブロモベンゾトリフルオライド、2,5−ジヨードベンゾトリフルオライド、1,4−ジクロロ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジヨード−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン;4,4′−ジクロロビフェニル、4,4′−ジブロモビフェニル、4,4′−ジヨードビフェニル、4,4′−ジブロモオクタフルオロビフェニル;m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、2,4−ジクロロトルエン、2,4−ジブロモトルエン、2,4−ジヨードトルエン、3,5−ジクロロトルエン、3,5−ジブロモトルエン、3,5−ジヨードトルエン、2,6−ジクロロトルエン、2,6−ジブロモトルエン、2,6−ジヨードトルエン、1,3−ジブロモ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼンなどが挙げられる。なお、上記具体例において、一般式(13)における二つのXのうち一つをフッ素原子に置換したものも好ましく用いることができる。
上記一般式(26)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(15)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例における、非フッ素ハロゲン原子の一つを水酸基で置換した構造およびその位置異性体が挙げられる。
[重合体の例−2]重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基PおよびP2がいずれも単結合の場合:下記一般式(28)に示す、繰り返し単位(A)
モノマーと、下記一般式(29)に示す、繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなる、下記一般式(30)で示される重合体を得ることができる。下記一般式(28)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、下記一般式(20)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。下記一般式(29)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、下記一般式(23)に対する具体例と同様の化合物が挙げられる。
上記一般式(34)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例としては、上記一般式(20)で表される繰り返し単位(A)モノマーの具体例における、−Xを−COX(Xはハロゲン原子を示す)で置換した構造のものおよびその位置異性体が挙げられる。
上記一般式(33)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(23)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例における、−Xを−COX(Xはハロゲン原子を示す)で置換した構造のものおよびその位置異性体が挙げられる。
上記一般式(35)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例としては、上記一般式(23)で表される繰り返し単位(B)モノマーの具体例における、Xを水素原子で置換した構造のものが挙げられる。
ロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基から選ばれる)または単結合である高分子を合成することができる。
[重合体の例−4]重合体が繰り返し単位(A)と複数の繰り返し単位(B)からなり、連結基Pが単結合、連結基P2が−O−の場合:例えば下記一般式(38)に示す、繰り返し単位(A)モノマーと、下記一般式(39)および下記一般式(40)に示す、繰り返し単位(B)モノマーとの反応により、繰り返し単位(A)と2種類の繰り返し単位(B)からなる、下記一般式(41)で示される重合体を得ることができる。
重合体が繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)からなり、連結基Pが単結合、連結基P2が−O−の場合の例を以下に具体的に例示する。繰り返し単位(A)のモノマーとして2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノンを用い、繰り返し単位(B)のモノマーとして4−クロロフルオロベンゼンと4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンを用いる。まず、4−クロロフルオロベンゼンとビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンを炭酸カリウムの存在下で反応させてビス[4−(4−クロロフェノキシ)フェニル]スルホンを合成する。次にこのものと2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノンを、遷移金属化合物を含む触媒の存在下で共重合し、次いで、スルホン酸化剤を用いて、スルホン酸化した後に、スルフィド結合を酸化剤を用いて酸化してスルホンへ転化することで、連結基P=単結合、P2=−O−結合の下記一般式(42)に示す高分子(Q=−SO2−)のスルホン酸化物が高分子電解質として得られる。本発明の重合体において、他の繰り返し単位中の繰り返し単位(B)の割合は、10〜100モル%、好ましくは20〜100モル%である。
剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
本発明の電解質は、膜両表面に隣接する膜内部領域のスルホン酸化当量が、該内部領域に隣接する膜表面のスルホン酸化当量より高くなっていることが特徴である。この状態には次の二種類がある。
(1)スルホン酸化当量が不連続で層構造を形成している膜
膜の両表面と、該両表面からそれぞれ内部に向けて5μm入った面に挟まれる、両表面から巾5μmの領域に、スルホン酸化当量が不連続に減少する界面が存在し、この界面によって表面層と内部層に分かれている。そして、内部層のスルホン酸化当量は、隣接する膜表面のスルホン酸化当量に対して120%以上である。好ましくは130%以上、更に好ましくは150%以上である。
また、第1、第2、第3、第4層、第5層があるとすれば、第1層が表面層で、それに隣接する層は第2層である。また第5層も表面層で、それに隣接する層は第4層となる。スルホン酸化当量は、第1層より第2層の方が高く、かつ第5層よりも第4層が高い。第3層のスルホン酸化当量は、これらの層に対して依存せず、高くても低くても良い。高ければ、イオン伝導性が良好となり、低ければ膜を中心部で補強するため膜強度や耐久性が向上する。これは、それ以上の層を有する場合でも同様で、両表面とそれに隣接する層との関係が上記条件を満たしていれば、それ以外の層のスルホン酸化当量は、目的とする膜性能に応じて適宜選択する。 また、両面層とその隣接層以外の内部においては、スルホン酸化当量が連続的に変化している構造をとっても良い。
(1)のように、界面は存在しないが、膜の両表面から内部に向けて、厚み方向で5μmまでの領域で、スルホン酸化当量が連続的に増加した構造を取る。そして、膜表面から5μmの位置のスルホン酸化当量が、その位置から5μmに存在する膜表面(すなわち近い方の表面)のスルホン酸化当量に対して120%以上となることが特徴である。好ましくは130%以上、更に好ましくは150%以上である。
この状態を具体的に説明すると、(1)のように、スルホン酸化当量が不連続に変化するような界面が、少なくとも表層から内部に向かって5μmの領域では存在しない。すなわち、両表面から5μmの厚み範囲では層構造をとっていないという意味である。それより内部については、スルホン酸基当量が不連続となる界面によって区切られた層があっても良いし、連続的にスルホン酸基当量が変化する構造をとっても良い。
電解質膜表面のスルホン酸基当量を、隣接する内部に対して低く設定すると、最表面に存在するスルホン酸基が少なくなる。電解質膜最表面部分は電極と接触する部分であるが、電極の反応部位では、副生成物の水やラジカルが高濃度に生成しており、かつ、膨潤による膜の伸縮も激しい部位であるため、内部より膜の劣化が進行しやすい。スルホン酸基の量を少なくしておくことで、劣化反応に対する反応性を低下させ、かつ耐水性を維持し、膜形状を安定化する。これにより、電極の耐久性が向上する。内部にはイオン伝導性の高い部位が存在しているため、全体としてのイオン伝導性は低下しない。
また、両表面については、イオン伝導性が高すぎると、高分子が水溶性になるため、電極と電解質膜の剥離を生じやすくなる。そのため両方の膜表面から、内部に向って1μmまでの領域の高分子電解質のスルホン酸化当量は3ミリグラム当量/g以下となることが好ましい。
電解質膜の厚み方向の断面に対して、最表面部と、そこから5μm内部の部分に対して、赤外吸収を測定し、スルホン酸基のS=O伸縮振動に由来する1180〜1240cm−1のピークの吸光度を比較する。
顕微IRを用いる場合は、膜断面について測定を行う。ATRを用いる場合は、測定する部分の表面を測定する。膜内部については、表面を研磨するか、膜表面に平行な面で切断し、測定・面を露出させて行う。
測定位置は次の個所で行うことが好ましい。電解質膜をn等分の巾になるように(n+1)等分した線と、それと直行する方向でm等分(m≧2)の巾になるように(m+1)等分した線との交点位置での測定を行う。この場合測定個所は(m×n)個所で、最低4ヶ所である。
スルホン酸基に、酸塩基反応で金属を結合させ、金属の濃度を測定することにより、スルホン酸基の存在量を求める。塩基は、水に対する溶解度が高く、反応性が高く、取り扱いが容易で、化合物が安価であるものが好ましい。具体的には価数が1の金属水酸化物またはアンモニウム塩であり、金属種としてはLi、Na、Kが好ましい。
まず、金属水溶液を調製する。濃度は1mol/l以上とする。次に、測定する膜を切断して断面を露出させる。切断数は(1)の測定位置の個所に準拠する。そして、試験片を上記金属化合物水溶液に浸漬し、露出した部位に存在するスルホン酸基と金属を反応させる。反応は室温で少なくとも3時間以上行う。また、浸漬は、切断面が十分に水溶液に浸るようにする。反応が終了したら、切断片を取り出して水洗し、真空乾燥する。そして、断面の厚み方向に対して、スルホン酸基のプロトンと交換された金属種のEDXプロファイルを測定する。測定位置、測定個所は(1)の測定位置に準拠する。このプロファイルは膜断面に対して連続的に測定されるため、膜が層状であるか、連続的に変化した構造であるかが明確になる。このプロファイルの測定数値から、膜表面と、そこから5μm内部に入った部分のスルホン酸基の比率を求める。
膜全体に対して、赤外吸収スペクトルを測定することにより、同一膜材質に対するスルホン酸化当量と、スルホン酸基ピークの吸光度の検量線を作製できるので、この検量線を用いて、膜特定部位の吸光度から、その部位のスルホン酸化当量を算出可能である。これはEDXによる分析でも同様である。
膜全体の赤外吸収スペクトルは、膜全体を溶解して乾燥するか、粉体として均一化した資料を用いて測定する。
本発明の高分子電解質膜は、スルホン酸化当量の異なる領域を有するが、各々の領域に使用される材質には、次のような組み合わせがある。
(1)本発明の構造の高分子電解質で、スルホン酸化当量だけが異なるものの組み合わせ。
(2)本発明の構造の高分子電解質と、それとは別の構造を有する高分子との組み合わせ。
(2)の場合、本発明の上記一般式(1)の構造を有する高分子は、膜のいずれかの部分に必ず含まれており、それ以外の種類の高分子が共存した構造を取っている。使用できる高分子は、膜形成可能でかつ耐水性を有するものである。具体的には、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテル(エーテル)ケトン、ポリアリーレンエーテル等である。
本発明の膜を作成するには次のような方法がある。
(1)高分子電解質を有機溶媒に溶解した塗工液を作成する。電極表面、または剥離フィルム上に、最表面となる高分子電解質溶液を塗工し、その上に、隣接する層となる高分子電解質溶液を塗工して、必要な数の層を形成する。塗工の際に、溶媒を乾燥させてから次の層を塗工すると、層状となり、乾燥させずに積層すると、連続的にスルホン酸化当量が変化した膜が形成できる。
(2)スルホン酸化当量の異なる高分子電解質膜をあらかじめ作成する。作成方法は、(1)のように、スルホン酸基が導入されている高分子電解質溶液をキャスト成型する方法でもよいし、スルホン酸基が導入されていない高分子の膜に対して、スルホン酸基を導入して、電解質膜とするのでもよい。これらの膜を積層してホットプレスにより接着する。
燃料電池は、2つの電極(酸素極と燃料極)の間に電解質としてのプロトン伝導膜が挟持された構造をとる。各電極は、プロトン伝導性膜と接する面に触媒層が形成され、それに接して拡散層、次にセパレータが積層されている。
触媒としては、カーボンブラックに所定の重量比で白金を担持させた触媒粒子が一般的に用いられる。カーボンブラックは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等であり、これに、カーボンの重量に対して10〜30重量%の白金が担持されている。触媒層を形成するためには、触媒粒子をイオン伝導性高分子に分散してスラリーとし、これを下地層上に塗布、乾燥することにより形成されるが、その際、最終的に触媒層に対して含まれる白金の量が0.5〜0.8mg/cm2となるように形成されることが好ましい。
燃料電池の膜―電極接合体(MEA)を作成するには、高分子電解質膜の溶液、電極材料のスラリーを順次塗工して積層するか、あるいは膜を先に形成しておき、それらを重ね合わせて加熱加圧接着を行うなどの方法がある。これらの方法を組み合わせてもよい。
数平均、重量平均分子量:スルホン酸化前の前駆体高分子の数平均分子量、重量平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
スルホン酸化当量:得られた高分子の水洗水が中性になるまで充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液にて滴定し、中和点から、スルホン酸化当量を求めた。
プロトン伝導度:100%相対湿度下に置かれた厚み40〜60μmのフィルム状試料を、白金電極に挟み、複素インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を算出した。
フェントン試験における重量保持率(%)=(フェントン試験後のフィルム重量/フェントン試験前のフィルム重量)×100
<高分子電解質1の合成方法>
(1)2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン[式(43)]の合成
2,5−ジクロロ−4’−フルオロベンゾフェノン10.8g(40mmol)、4−フェニルスルファニルチオフェノール8.7g(40mmol)と炭酸カリウム8.29g(60mmol)をディーンスターク管、冷却管、温度計を備えた三口フラスコにとり、ジメチルアセトアミド50gとトルエン50gの混合溶媒を注ぎ、撹拌した。次いで130℃まで昇温し、加熱還流しながら生成する水を除去した。さらにトルエンを系外に除去しながら150℃で4時間反応させた。TLCで反応が終了したことを確認後、室温まで内容物を冷却し、水に注ぎ1時間撹拌した。この混合物溶液中から有機物を分離、さらに酢酸エチルで抽出し、抽出層を水、食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。無機塩を濾別後、溶媒を留去し粗生成物を得た。酢酸エチル:n−ヘキサン=1:5(容積比)の混合溶媒で再結晶を行い、目的物を収量85%で得た(15.8g)。
(2−1)4−クロロフェニル−4’−フルオロフェニルスルホンの合成
フルオロベンゼン192g(2.0mol)と塩化アルミニウム69.5g(520mmol)を、温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、窒素置換した。氷水で10℃に冷却しながら、メカニカルスターラーにて撹拌した。4−クロロベンゼンスルホニルクロライド84.4g(400mmol)を滴下ろうとで30分かけて滴下し、室温で4時間撹拌した。反応混合物を、濃塩酸:氷=1:10水溶液に投入し、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧留去し、ヘキサン: 酢酸エチル混合溶媒で再結晶した。目的物が生成しているのをNMRおよびIRスペクトルで確認した。収率85%(92.0g)。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)25.0g(100mmol)と炭酸カリウム30.4g(220mmol)、ジメチルアセトアミド100ml、トルエン50mlを、温度計、Dean−Stark管、還流管、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、窒素置換した。オイルバスで130℃に昇温しながら撹拌し、反応により生成する水とトルエンを共沸させ、Dean−Stark管で除去した。水の生成が見られなくなったら、150℃まで昇温し、トルエンを留去した。反応溶液を80℃まで冷却した後、4−クロロフェニル−4’−フルオロフェニルスルホン67.6g(250mmol)を入れ、110℃で7h撹拌した。副生成物である無機塩を濾過除去した後、濾液をメタノール500mlに投入して沈殿物をろ過し、トルエンにて再結晶した。目的物が生成しているのをNMRおよびIRスペクトルで確認した。収率71%(51.0g)。
(3−1)重合
上記で得られたビス[4−[4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノキシ]フェニル]スルホン25.17g(35.0mmol)、2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノン16.3g(35.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.43g(2.2 mmol)、よう化ナトリウム1.37g(9.14mmol)、トリフェニルホスフィン7.73g(29.5mmol)、亜鉛末11.3g(172mmol)を反応容器に入れ、乾燥窒素で系内を置換した。N−メチル−2−ピロリドン(NMP)0.2リットルを加え、80℃に加熱し、4時間攪拌することで重合をおこなった。重合後の反応溶液をテトラヒドロフラン(THF)で希釈し、塩酸とメタノールの混合液を投入することで高分子を回収し、次いでメタノール洗浄を4回繰り返し、THFに溶解させた高分子をメタノールで再沈殿させることにより精製し、濾別した高分子を真空乾燥して、所望の重合体34.7g(95%)を得た。GPC(THF)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は40,000、重量平均分子量は145,000であった。
上記で得られた重合体20.0gを0.5リットルの反応溶液に入れ、96%硫酸0.25リットルを加え、窒素下室温で2日間攪拌を続けた。得られた溶液を5リットルのイオン交換水の中に注ぎ入れることで高分子を沈殿させた。洗浄液のpHが5になるまで高分子の水洗を繰り返した。乾燥して、23.7g(95%)のスルホン酸化重合体を得た。
(3−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得られたスルホン酸化重合体20.0gを2リットルのガラス反応容器へ入れ酢酸を0.8リットル、および34%過酸化水素水溶液200gを加え、攪拌しながら徐々に昇温し、90℃で6時間反応を続けた。反応後、放冷し、高分子を濾別水洗後、真空乾燥して、所望の高分子電解質[式(45)のスルホン酸化物]19.6g(92%)を得た。構造解析により、スルホン酸基が側鎖当たり複数個側鎖に導入されていることを確認した。これを高分子電解質1と称する。
(1)2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン[式(46)]の合成
4−フェニルスルファニルチオフェノールの代わりにチオフェノール4.4 g(40mmol)を用いたほかは、高分子電解質1の合成方法中に記載の2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンの合成と同様の方法を用いて目的物を収率83%で得た(11.9g)。
(2−1)4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンの合成
4−クロロベンゼンスルホニルクロライドの代わりに4−クロロベンゾイルクロライド70.0g(400mmol)を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、所望の化合物を得た。NMRおよびIRスペクトルで構造を確認した。収率79%(74.1g)。
(2−2)4,4’−ビス[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゾフェノン[式(47)]の合成
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの代わりに4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノン58.6g(250mmol)を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、所望の化合物を得た。NMRおよびIRスペクトルで構造を確認した。収率75%(48.2g)。
(3−1)重合
ビス[4−[4−(4−クロロフェニルスルホニル)フェノキシ]フェニル]スルホンの代わりに、上記で得られた4,4’−ビス[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゾフェノン22.5g(35.0mmol)を用い、2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンの代わりに2,5−ジクロロ−4’−チオフェノキシベンゾフェノン12.6g(35.0mmol)を用いたほかは高分子電解質1と同様の方法を用い、所望の重合体30.6g(94%)を得た。数平均分子量は44,000、重量平均分子量は150,000 であった。
上記で得た重合体を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、スルホン酸化重合体を得た(収率96%)。
(3−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得たスルホン酸化重合体を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、所望の高分子電解質[式(48)のスルホン酸化物](92%)を得た。構造解析により、スルホン酸基が側鎖当たり2.6個側鎖に導入されていることを確認した。これを高分子電解質2と称する。
(1)2,5−ジクロロフェニル−4’−チオフェニルベンゼンスルフィド[式(49)]の合成
窒素下で撹拌されているキノリン(0.5リットル)と1,2,4−トリクロロベンゼン36g(0.2mol)中に、ナトリウム4−フェニルスルファニルチオフェノラート120g(0.5mol)を加えた。攪拌しながら昇温し反応温度160℃で3時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出後、溶媒を除去すると目的物が得られた。収率90%(65.3g)。
(2−1)重合
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン25.0g(100mmol)、炭酸カリウム30.4g(220mmol)、ジメチルアセトアミド0.1リットルおよびトルエン0.05リットルを、温度計、ディーンスターク管、還流管、三方コックを付けた三口フラスコへ入れ、窒素置換した。130℃の油浴で加熱しながら攪拌し、反応により生成する水をトルエンで共沸させてディーンスターク管で反応系から分離した。水が生成しなくなった時点で油浴温度を150℃としトルエンを留去した。反応溶液を80℃まで冷却した後、2,5−ジクロロフェニル−4’−チオフェニルベンゼンスルフィド36.3g(100mmol)を入れ、油浴温度150℃で20時間攪拌した。副生物である無機塩を濾過分離した後、濾液をメタノール2リットルに投入して沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄後、真空乾燥することで目的の重合体を得た(収率87%)。数平均分子量は48,000、重量平均分子量は150,000であった。
上記で得た重合体を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、スルホン酸化重合体を得た(収率95%)。
(3−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得たスルホン酸化重合体を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、所望の高分子電解質[式(50)のスルホン酸化物](94%)を得た。構造解析により側鎖当たり2.1個のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。これを高分子電解質3と称する。
(1)高分子電解質の合成
(1−1)重合
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの代わりに4,4 ’−ジヒドロキシベンゾフェノンを使用し、2,5−ジクロロフェニル−4’−チオフェニルベンゼンスルフィド
の代わりに2,5−ジクロロ−4’−(4−チオフェノキシ)チオフェノキシベンゾフェノンを用いたほかは高分子電解質3の合成方法における重合と同様の方法で目的の重合体を得た(収率92%)。数平均分子量は51,000、重量平均分子量は160,000であった。
上記で得た重合体を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、スルホン酸化重合体を得た(収率95%)。
(1−3)スルホン酸化重合体の酸化
上記で得たスルホン酸化重合体を用いたほかは高分子電解質1の合成と同様の方法を用い、所望の高分子電解質[式(51)のスルホン酸化物](92%)を得た。構造解析により、側鎖当たり1.9個のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。これを高分子電解質4と称する。
(1) 4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[式(52)]の合成
(2)ポリエーテルスルホンへの4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[式(52)]の導入反応[下記式(53)]の合成
(4)酸化反応[式(54)の合成]
温度計をつけた二口フラスコに側鎖導入反応した式(53)記載の高分子1.0gと酢酸20mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水1000mg(9.0mmol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥した。NMR、IRより側鎖のスルフィドがスルホンに変換していることを確認した。また、側鎖当たり複数のスルホン酸基が側鎖に導入されていることを確認した。収量は880mgであった。これを高分子電解質5と称する。
(1)ポリエーテルスルホンへの4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[式(52)]の導入反応(2)
撹拌温度を90℃、撹拌時間を40時間にした以外は高分子電解質1の合成方法の(2)記載と同様の方法にて合成した。
(2)酸化反応
高分子電解質1の合成方法の(3)記載と同様の方法にて酸化反応を行った。これを高分子電解質6と称する。
(1) ポリエーテルエーテルスルホンへの4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[式(52)]の導入反応[式(55)]の合成
ポリエーテルエーテルスルホン(Aldrich製)3.0g、ニトロベンゼン60mlを反応容器に入れ、60℃で加熱溶解しながら乾燥窒素で系内を置換した。この高分子溶液に4−(4’−スルホニルフェニルチオ)ベンゼンスルホニルクロライド[式(52)]3.50g(37mmol)を入れ、溶解させた。この反応溶液に塩化アルミニウム5.44g(40.8mmol)を少量ずつ加え、90℃、40時間で撹拌した。反応溶液をメタノール:塩酸=10:1混合溶液 500mlに投入し、析出した固体を粉砕しながら撹拌した。この固体をろ過したあと、メタノールで数回洗浄し、80℃で真空乾燥して、収量が4.36gの高分子(式(55))を得た。
(3)酸化反応[式(56)の合成]
ポリエーテルスルホンへの分岐型側鎖の導入
(1)ビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロリド(式(57))の合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに1,4−ジブロモベンゼン50g(212mmol)とクロロホルム16mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸27.2g(233mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての1,4−ジブロモベンゼンが反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製してジブロモベンゼンスルホン酸56.9g(180mmol)を得た(収率85%)。次にチオフェノール3.5g(79mmol)をディーンスターク管、冷却管、温度計を備えた三口フラスコにとり、水酸化カリウム4.5gとN,N−ジメチルアセトアミド25ml、トルエン25mlを加えてスターラーで攪拌した。150℃まで昇温し、加熱還流しながら生成する水を除去した。これにジブロモベンゼンスルホン酸7.1g(23mmol)を加え、160℃で4時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、ビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホン酸7.2gを得た(収率84%)。これを温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、クロロホルム100mlを入れて溶解させる。滴下ろうとで塩化チオニル2.1g(21.2mmol)をゆっくり滴下し、90分還流したあと、クロロホルムを留去して真空乾燥し、ビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロリド(式(57))6.4gを得た(収率85%)。
ポリエーテルスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ社製、Radel A−200)2.0g、ニトロベンゼン30mlを反応容器に入れ、60℃で加熱溶解しながら乾燥窒素で系内を置換した。この高分子溶液にビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライド(式(57))6.70g(17.08mmol)を入れ、溶解させた。この溶液に塩化アルミニウム2.54g(18.96mmol)を少量ずつ加え、80℃、20時間で撹拌した。反応溶液をメタノール:塩酸=10:1混合溶液 500mlに投入し、析出した固体を粉砕しながら撹拌した。この固体をろ過したあと、メタノールで数回洗浄し、80℃で真空乾燥して側鎖導入したポリエーテルスルホン(式(58))を得た。収量は2.31gであった。
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに側鎖導入した式(58)の高分子2.00gとクロロホルム16mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸4.0g(40mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての原料高分子が反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製して側鎖導入反応したポリエーテルスルホンのスルホン化物(式(59))2.03gを得た。
温度計をつけた二口フラスコに、側鎖導入しスルホン化反応した式(59)記載の高分子1.0gと酢酸20mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水1000mg(9mmol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥して最終目的の電解質高分子(式(60))を得た。NMR、IRより側鎖のスルフィドがスルホンに変換していることを確認した。収量は0.87gであった。側鎖当たり複数のスルホン酸基が導入されていることを確認した。これを高分子電解質8と称する。
ポリエーテルスルホンへの長分岐側鎖の導入
(1)4−チオフェノキシベンゼンスルフィドの合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに3−ブロモ−1−フルオロベンゼン50.0g(286mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド300mlを入れ、ナトリウムチオメチラート22.0g(314mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド100mlに溶解したものを滴下ろうとでゆっくり滴下し、20℃で100時間攪拌して反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての3−ブロモ−1−フルオロベンゼンが反応したことを確認したあと、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、4−ブロモフェニルメチルスルフィド49.3g(243mmol)を得た。次に温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに4−ブロモフェニルメチルスルフィド45.0g(222mmol)、酸化銅15.5g、ピリジン60mlキノリン240mlを入れ、チオフェノール26.8g(244mmol)をピリジン20mlキノリン80mlに溶解・分散したものを滴下ろうとで加え、150℃で40時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、4−チオフェノキシフェニルメチルスルフィド 43.8g(189mmol)を得た。続いて得られた4−チオフェノキシフェニルメチルスルフィド40.0g(172mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド300mlを温度計、冷却管をつけた三口フラスコに入れ、ナトリウムチオt−ブチラート21.3g(190mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド300mlに溶解したものを滴下ろうとで加え、150℃で4時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、4−チオフェノキシベンゼンスルフィド32.2g(148mmol)を得た(収率86%)。
(2)長分岐型スルフィドの合成
(1)でチオフェノールの代わりに(1)で得た4−チオフェノキシベンゼンスルフィド30.0g(138mmol)を用いる以外は同様にして、長分岐型スルフィド(式(61))31.0gを得た(収率83%)。
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに長分岐スルフィド(式(61))31.0g(57.2mmol)とクロロホルム200mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸7.34g(63.0mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての原料高分子が反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製して長分岐スルフィドのスルホン化物(式(62))36.1gを得た(収率90%)。
温度計をつけた二口フラスコに、長分岐スルフィドのスルホン化物36.0g(51.3mmol)と酢酸200mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水116g(1.03mmol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥して長分岐型スルホンのスルホン化物(式(63))42.8gを得た(収率95%)。
長分岐型スルホンのスルホン化物(式(63))30.0g(34.2mmol)を温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、クロロホルム100mlを入れて溶解させる。滴下ろうとで塩化チオニル3.74g(37.6mmol)をゆっくり滴下し、90分還流したあと、クロロホルムを留去して真空乾燥し、長分岐型スルホンの塩化スルホニル(式(64))27.0gを得た(収率88%)。
高分子電解質8の合成方法の(2)のビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライドの代わりに長分岐型スルホンの塩化スルホニルを用いる以外は同様にして、長分岐型スルホンの側鎖を有するポリエーテルスルホン(式(65))を得た。収量は2.05gであった。これを高分子電解質9と称する。
ポリエーテルスルホンへの多分岐側鎖の導入
(1)ビス(3,5−チオフェノキシ)ベンゼンスルフィドの合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに3,5−ジブロモ-1-フルオロベンゼン50.0g(197mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド300mlを入れ、ナトリウムチオメチラート15.2g(217mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド100mlに溶解したものを滴下ろうとでゆっくり滴下し、20℃で4.5日間攪拌して反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての3,5−ジブロモ-1-フルオロベンゼンが反応したことを確認したあと、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、3,5−ジブロモフェニルメチルスルフィド48.3g(171mol)を得た(収率87%)。次に温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに
3,5−ジブロモフェニルメチルスルフィド45g(160mmol)、酸化銅22.4g、ピリジン60mlキノリン240mlを入れ、チオフェノール38.7g(352mmol)をピリジン20mlキノリン80mlに溶解・分散したものを滴下ろうとで加え、150℃で40時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、ビス(3,5−チオフェノキシ)フェニルメチルスルフィド45.7g(134mmol)を得た。続いて得られたビス(3,5−チオフェノキシ)フェニルメチルスルフィド40.0g(118mmol)を温度計、冷却管をつけた三口フラスコに入れ、ナトリウムチオt−ブチラート14.5g(129mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド300mlに溶解したものを滴下ろうとで加え、150℃で4時間反応させた。薄層クロマトグラフィーで反応が終了したことを確認後、この混合物溶液中から有機物を分離、再結晶による精製をして、ビス(3,5−チオフェノキシ)ベンゼンスルフィド33.1g(101mmol)を得た(収率86%)。
(2)多分岐型スルフィド(式(66))の合成
(1)でチオフェノールの代わりに(1)で得たビス(3,5−チオフェノキシ)ベンゼンスルフィド30.0g(92.0mmol)を用いる以外は同様にして、多分岐型スルフィド(式(66))31.4gを得た。(収率90%)
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに多分岐型スルフィド(式(66))30.0g(39.6mmol)とクロロホルム200mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。これに室温でクロロホルム100mlに溶解したクロロ硫酸5.07g(43.5mmol)をゆっくり滴下した。室温にて4時間、さらに冷却管を取り付けてクロロホルム還流下で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーにて全ての原料スルフィドが反応したことを確認したあと、減圧下クロロホルムとクロロ硫酸を留去し精製して多分岐型スルフィドのスルホン化物(式(67))36.3gを得た(収率85%)。
温度計をつけた二口フラスコに、多分岐型スルフィドのスルホン化物36.0g(33.4mmol)と酢酸200mlを入れた。この混合物に30%過酸化水素水114g(1.00mol)を加え、3時間還流した。系内の固体を吸引ろ過して水洗し、100℃にて真空乾燥して多分岐型スルホンのスルホン化物(式(68))39.6gを得た(収率90%)。
多分岐型スルホンのスルホン化物(式(68))30.0g(22.8mol)を温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れ、クロロホルム100mlを入れて溶解させる。滴下ろうとで塩化チオニル2.49g(25.0mmol)をゆっくり滴下し、90分還流したあと、クロロホルムを留去して真空乾燥し、多分岐型スルホンのスルホニルクロライド(式(69))27.1gを得た(収率89%)。
高分子電解質8の合成方法の(2)でビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライドの代わりに多分岐型スルホンの塩化スルホニルを用いる以外は同様にして、多分岐型スルホンの側鎖を有するポリエーテルスルホン(式(70))を得た。収量は2.10gであった。これを高分子電解質10と称する。
高分子電解質1に対して、スルホン酸基を導入する工程を除いた、スルホン酸基が存在しない高分子を用意した。これと、高分子電解質1とを50/50(w/w)の割合で混合して、高分子電解質1’を調整した。高分子電解質1’のスルホン酸化当量は、高分子電解質1に対して50%となる。
高分子電解質1および1’を、各々各々30重量%溶液となるようにN−メチル−2−ピロリドン(以降NMPと称する)に溶解した。液を80℃に加熱して完全に溶解させた。
まず、ガラス基板上に、高分子電解質1の溶液を、乾燥後15μの厚みになるように塗工して、真空乾燥機で、80℃環境下0.5時間乾燥させた。
るように塗工し、真空乾燥機で、80℃環境下0.5時間乾燥させた。この膜を剥離した上で、更に高分子電解質膜1の裏面に、高分子電解質1’の溶液を、乾燥後5μmの厚みとなるように塗工し、真空乾燥機で、80℃環境下0.5時間乾燥させた。その後、温度を100℃、3時間真空乾燥して電解質膜を作成した。これにより、両表面から5μmのところに界面が存在する、全体の厚さが25μmの3層の電解質が形成された。膜表面層のスルホン酸化当量は隣接する内部層のスルホン酸化当量の50%である。この高分子電解質膜の全体のスルホン酸化当量、プロトン伝導度、フェントン試験重量保持率の結果を表2に示す。
濃度5wt%のNafion溶液(エタノールと水の重量比が50/50)に白金担持カーボンを加え、室温で30分間十分に攪拌し、電極ペーストを得た。この電極ペーストをPTFEのフィルム上に乾燥後の厚さ約25μになるようにキャストし、80℃で2時間乾燥後、真空乾燥器で100℃、2時間乾燥し、更に160℃で1時間乾燥した。この電極で前述の複合イオン交換膜をはさみ、140℃で10分、プレス圧力5MPa/cm2でプレスした。この様にして得られた膜―電極接合体を評価セル(エレクトロケム製FC−05−01−SP:25cm2)に組み込んだ。燃料として水素ガス、酸化剤として空気ガスを用い、2気圧でガスを単セルに供給した。セル温度100℃とし、ガス加湿には水バブリング方式を用いて水素ガス及び空気ガス共に加湿温度を50℃(湿度12RH%に相当)として発電試験を行った。電流密度0.8A/cm2時の電圧および1日運転後の電圧の初期電圧に対する割合を表2に併記する。
高分子電解質2〜10を用いて、参考実施例1と同様の方法で、高分子骨格が同じでスルホン酸化当量が異なる、3層構造の高分子電解質を作成した。これらの高分子電解質膜のスルホン酸化当量、プロトン伝導度、フェントン試験重量保持率の結果を併せて表2に示す。
これらの高分子電解質膜を用いて、参考実施例1に記載の方法で発電試験を行った。電流密度0.8A/cm2時の電圧および1日運転後の電圧の初期電圧に対する割合を表2に併記する。
ポリエーテルエーテルケトン(ICI社)と、これを高分子電解質1の合成方法と同様の方法でスルホン酸化して得られたスルホン酸化ポリエーテルエーテルケトン[S−PEEK、式(71)]を用いて、参考実施例1の方法に準拠して3層構造の電解質膜を作製した。この高分子電解質膜のスルホン酸化当量、プロトン伝導度、フェントン試験重量保持率の結果を併せて表2に示す。
この高分子電解質膜を用いて、参考実施例1に記載の方法で発電試験を行った。電流密度0.8A/cm2時の電圧および1日運転後の電圧の初期電圧に対する割合を表2に併記する。
特開2003−201403号公報の参考例2に記載の方法で得られた下式(72)に示す高分子と、これを高分子電解質1の合成方法と同様の方法でスルホン酸化して得られたそのスルホン酸化物(式中、j/k=6.9であり、nは5.5である)を、参考実施例1の方法を用いて膜としたものについても評価した。上記同様、評価項目の各数値を表2に併記する。
比較例1、2のいずれも、フェントン試験重量保持率が低く、かつ、1日運転後の電圧低下が著しい。
高分子電解質11を次の方法で合成した。
(1)TTBS3の合成
温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに1,3,5−トリス(フェニルチオ)−ベンゼン(TTB)50.0g(124mmol)とスルホラン120mlを入れ、乾燥窒素で系内を置換した。液温を70℃に保ち、クロロ硫酸47.5g(409mmol)をゆっくり滴下し、その後1.5時間攪拌した。反応の確認は液体クロマトグラフィー[Agilent社製100シリーズ、カラム:GLサイエンス社製、Inertsil ODS−3、移動相:10Mギ酸アンモニウム/アセトニトリル、UV検出波長:254nm]にて行なった。TTBのトリスルホン化物[TTBS3、式(73)]53gを含む混合物を得た(収率67%)。
TTBS3を含む上記の混合物を、温度計、滴下ろうと、三方コックをつけた三口フラスコに入れた。液温を70℃に保ち、滴下ろうとから塩化チオニル12.4g(124mmol)をゆっくり滴下し、2時間攪拌した。反応の確認は液体クロマトグラフィーにて行なった。TTBトリスルホン化物のスルホニルクロライド[TTBS3C、式(74)]18.5gを含む混合物を得た(収率34%)。
高分子電解質8の合成方法の(2)でビス(チオフェノキシ)ベンゼンスルホニルクロライドの代わりに上記のTTBS3C[式(75)]11.3g(17.1mmol)を含む混合物を用いる以外は同様にして、側鎖スルホン酸ポリエーテルスルホン[式(75)]を得た。収量は2.30gであった。
Claims (6)
- 少なくとも下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)を有する高分子電解質を含有する膜からなり、該膜両表面に隣接する膜内部領域のスルホン酸基当量が、該内部領域に隣接する膜表面のスルホン酸基当量より高いことを特徴とする燃料電池用電解質膜。
Z=−(X1Ar1(B1))−(X2Ar2(B2))−・・・−(Xn-1Arn-1(Bn-1))−(XnArn) (2)
上記一般式(2)中のB1〜Bn-1は、側鎖部分Zにおける分岐鎖を意味し、以下の式で表される。
B1=−〔(X2Ar2(B2))−(X3Ar3(B3))−・・・−(Xn-1Arn-1(Bn-1))−(XnArn)〕f
B2=−〔(X3Ar3(B3))−・・・−(Xn-1Arn-1(Bn-1))−(XnArn)〕f
・
・
・
Bn-1=−〔XnArn〕f
上記一般式(2)中
nは各々独立に2〜5の整数、
fは各々独立に0〜2の整数であり、少なくとも一つのfが1または2であり、
Ar1〜Arnは各々独立に芳香族残基であって、
X1〜Xnは各々独立に−CO−、−CONH−、−(CF2)p−(pは1〜10の整数)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−から選ばれる連結基である。そして、Zは−SO3H基の1.0を超える数を有する。) - fが0または1であり、少なくとも一つのfが1であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電解質膜。
- 膜の両表面と、該両表面からそれぞれ内部に向けて5μm入った面に挟まれる、両表面から巾5μmの領域に、スルホン酸基当量が不連続に増加する界面が存在し、この界面によって表面層と内部層に別れており、内部層のスルホン酸基当量が、隣接する膜表面層のスルホン酸基当量に対して120%以上となる、請求項1または2に記載の燃料電池用電解質膜。
- 膜の両表面から厚み方向で5μm内部に入った部位のスルホン酸基当量が、その部位から5μmの位置にある膜の表面部位のスルホン酸基当量に対して120%以上となる、請求項1または2に記載の燃料電池用電解質膜。
- 電解質膜全体のスルホン酸基当量が0.3ミリグラム当量/g以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜。
- 両方の膜表面から、内部に向って1μmまでの領域の高分子電解質のスルホン酸基当量が3ミリグラム当量/g以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電解質膜。
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