JP4836665B2 - 複合粉体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの微粒子粉体は凝集しやすく、配合してもその紫外線防御能が十分発揮されないという問題があった。また、微粒子粉体であるために滑り性が悪く、塗料、インキ、コーティング剤等に使用した際に流麗な仕上り感を発現し難い問題が生じたり、あるいは化粧料に配合した場合には満足な使用感を得られないといった欠点があった。
しかしながら、このような複合顔料では微粒子粉体を有機高分子により母体顔料表面に固着しているため、滑り性や伸展性に劣ることがあった。また、有機高分子を溶解するために有機溶媒を使用する必要があった。
すなわち、本発明にかかる複合粉体は、
合成マイカ粉体表面に疎水化処理された無機微粒子紫外線防御剤が吸着してその表面を被覆しており、複合粉体の動摩擦係数が0.8未満であることを特徴とする。
本発明の複合粉体において、疎水化処理がシリコーン処理あるいは脂肪酸処理であることが好適である。
本発明にかかる複合粉体の製造方法は、合成マイカ粉体と、疎水化処理された無機微粒子紫外線防御剤とを、ヘンシェルミキサーを用いて周速度20〜90m/secで乾式で攪拌混合することを特徴とする。
本発明の方法において、疎水化処理がシリコーン処理あるいは脂肪酸処理であることが好適である。
従って、本発明の複合粉体は化粧料に好適に使用でき、特にフェイスパウダー、プレストパウダー、パウダリーファンデーション、頬紅、ブラッシャー、アイシャドーなどの粉末化粧料においてはこのような特性が最大限に発揮される。
また、本発明の複合粉体を配合することにより、合成マイカと微粒子紫外線防御剤とを別々に配合して得られた化粧料よりも、紫外線防御能の高い化粧料を得ることができる。
また、滑りや伸びに優れているために、塗料やインキ、プラスチックフィルムなどに使用した場合には、凝集物等を生じることなく滑らかな仕上りとすることができる。
合成マイカと疎水化処理微粒子紫外線防御剤との混合による複合化は、例えば、ヘンシェルミキサーなどの高速攪拌可能な混合機を用いて行うことが好ましい。なお、低速混合では微粒子を均一且つ効率的に付着・被覆することが困難な場合がある。また、著しく高速で混合しても均一な付着が困難となる傾向があり、また、基板となる合成マイカを破壊してしまう場合があるので注意する。ヘンシェルミキサーを用いる場合には、周速20〜90m/sec、さらには30〜80m/secで攪拌混合することが好適である。
また、仕上り感の点から、複合粉体の動摩擦係数は0.8未満、さらには0.75以下であることが好適である。
また、本発明において2種以上の疎水化処理微粒子紫外線防御剤を用いる場合には、別々に複合化するよりも一度に複合化する方が効果の点から好ましい。
合成マイカは下記一般式で示すことができる。
X1/3〜1 Y2〜3(Z4 O10)F2
(式中XはNa+、K+、Li+、Ca2+、Rb2+、Sr2+からなる群より選ばれる1種以上のイオンを表わし、YはMg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li+、からなる群より選ばれる1種以上のイオンを表し、ZはAl3+、Si4+、Ge4+、Fe3+、B3+からなる群より選ばれる1種以上のイオンを表す。)
KMg3(AlSi3O10)F2 カリウム金雲母
KMg2 1/2(Si4O10)F2 カリ四ケイ素雲母
KMg2Li(Si4O10)F2 カリウムテニオライト
NaMg3(AlSi3O10)F2 ナトリウム金雲母
NaMg2Li(Si4O10)F2 ナトリウムテニオライト
NaMg2 1/2(Si4O10)F2 ナトリウム四ケイ素雲母
Na1/3Mg2 2/3Li1/3(Si4O10)F2 ナトリウムヘクトライト
本発明において用いる合成マイカ粉体の粒径は特に制限されず適宜選択可能であるが、一般的には平均粒子径が5〜50μm、アスペクト比2〜300のものが好適に用いられる。
なお、紫外線防御能などを調節するために他の金属元素(例えば、Zn、Al、Mg、Ca、W、P、Ta、Nb、Sb、Moなど)をドープした微粒子紫外線防御剤も使用可能である。
脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜24の高級脂肪酸が挙げられる。
疎水化剤の処理量は、微粒子粉体1質量部に対して0.001〜0.5質量部が好ましい。
(付着性)
SEM観察により、次のように評価した。
○:マイカ表面での微粒子の凝集がなく均一に付着・被覆している。
△:マイカ表面での微粒子の凝集がわずかに認められるが、ほぼ均一に付着・被覆している。
×:マイカ表面での微粒子の凝集が認められ、均一に付着・被覆していない。
粉体試料1gとひまし油4gとを3本ロールで混練し、これを石英ガラス板上にアプリケータで12.5μm厚に塗布して、日立分光光度計U−3210型にて250〜450nmの透過率を測定した。300nm及び360nmの透過率をそれぞれUV−B、UV−A透過率として読み取った。透過率が小さいほど紫外線防御能が高いことを示す。
ガラスプレートに両面テープを貼り付け、その接着面に粉体試料を塗布し、トリニティーラボ社製動摩擦測定機ハンディートライボマスターTL201にて動摩擦係数を測定した。
合成マイカ
合成フッ素金雲母(平均粒子径12μm)
T1:疎水化処理微粒子TiO2(Al(OH)3・シリコーン処理)
(石原産業(株)TTO−55(S)、平均粒子径0.04μm)
T2:疎水化処理微粒子TiO2(Al(OH)3・ステアリン酸処理)
(石原産業(株)TTO−V−4、平均粒子径0.06μm)
T3:親水化処理微粒子TiO2(SiO2・Al(OH)3・アルギン酸処理)
(テイカ(株)MT−100AQ、平均粒子径0.04μm)
Z1:疎水化処理ZnO(SiO2・シリコーン処理)
(昭和電工(株)マックスライトTZS−032−D、平均粒子径0.03μm)
Z2:疎水化処理ZnO(ステアリン酸処理)
(石原産業(株)FZO−50に疎水化処理したもの、平均粒子径0.03μm)
Z3:親水化処理ZnO(SiO2処理)
(堺化学工業(株)FINEX−K2、平均粒子径0.02μm)
ヘンシェルミキサーを用いて、合成マイカ40質量部、微粒子酸化チタン60質量部を周速60m/secで高速攪拌混合し、複合粉体を得た。
表1のように、親水化処理された微粒子酸化チタンを複合化した場合(試験例1−3)には、微粒子酸化チタンが合成マイカ表面で凝集して均一に付着・被覆しておらず、マイカ表面の露出が認められた。また、この複合粉体は紫外線防御能に劣るものであった。
これに対して、疎水化処理された微粒子酸化チタンを複合化した場合(試験例1−1、1−2)には、合成マイカ表面における凝集は認められず均一に付着・被覆しており、マイカ表面の露出もなかった。そして、この複合粉体は高い紫外線防御能を示した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験例 微粒子酸化チタン 付着性 紫外線透過率 動摩擦係数
(300nm)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1−1 疎水化処理TiO2(T1) ○ 0.777% 0.74
1−2 疎水化処理TiO2(T2) ○ 0.829% 0.74
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1−3 親水化処理TiO2(T3) × 3.079% −
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
微粒子酸化チタンの代わりに微粒子酸化亜鉛を用いて、試験例1と同様に複合化処理した。
表2からわかるように、微粒子酸化亜鉛においても微粒子酸化チタンの場合と同様の傾向が認められ、疎水化処理された微粒子酸化亜鉛を複合化した場合(試験例2−1、2−2)に優れた付着性、紫外線防御能、滑り性が得られた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験例 酸化亜鉛 付着性 紫外線透過率 動摩擦係数
(360nm)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2−1 疎水化処理ZnO(Z1) ○ 9.784% 0.72
2−2 疎水化処理ZnO(Z2) ○ 9.776% 0.75
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2−3 親水化処理ZnO(Z3) × 14.361% −
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ヘンシェルミキサーの周速を変えた以外は試験例1と同様にして検討を行った。
表3に合成マイカ:疎水化処理微粒子酸化チタン(T1)=40:60(質量比)、表4に合成マイカ:親水化処理微粒子酸化チタン(T3)=40:60の結果をそれぞれ示す。
表3のように、攪拌速度が小さすぎても大きすぎても疎水化処理微粒子酸化チタンが均一に付着せず、複合粉体の紫外線防御能が不十分となった。周速約20〜90m/secで攪拌混合した場合には付着性がよく、紫外線防御能が高い複合粉体を得ることができ、好ましくは30〜80m/secであった。
なお、表4のように、親水化処理微粒子酸化チタンでは、周速を変えても付着性、紫外線防御能は改善されなかった。
また、これらの傾向は、微粒子酸化亜鉛を用いた場合も同様であった。
疎水化処理TiO2(T1)−合成マイカ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験例 周速 付着性 紫外線透過率 動摩擦係数
(m/sec) (300nm)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3−1 10 × 2.699% 0.75
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3−2 30 ○ 0.987% 0.74
3−3 40 ○ 0.768% 0.73
3−4 60 ○ 0.777% 0.74
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3−5 100 △ 0.974% 0.74
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
親水化処理TiO2(T3)−合成マイカ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験例 周速 付着性 紫外線透過率
(m/sec) (300nm)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3−6 30 × 2.911%
3−7 40 × 3.228%
3−8 60 × 3.079%
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
合成マイカ40質量部、疎水化処理微粒子酸化チタン(T2)45質量部、及び疎水化処理微粒子酸化亜鉛(Z1)15質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて周速60m/secで高速攪拌混合し、複合粉体を得た(試験例4−1)。
比較例として、合成マイカ40質量部、疎水化処理微粒子酸化チタン(T2)45質量部、及び疎水化処理微粒子酸化亜鉛(Z1)15質量部、及びシリコーン化合物(メチルハイドロジェンポリシロキサン)4質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて周速60m/secで高速攪拌混合し、複合粉体を得た(試験例4−2)。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験例 紫外線透過率 動摩擦係数
300nm 360nm
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4−1 1.005% 12.480% 0.73
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4−2 1.204% 13.224% 0.81
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
被験粉体として上記試験例で調製した複合粉体を用い、下記組成でフェイスパウダーを調製した。
試験例5−1では、複合粉体として、ステアリン酸処理TiO2(T2)複合化合成マイカ(試験例1−2)とシリコーン処理ZnO(Z1)複合化合成マイカ(試験例2−1)を質量比2:1で用いた。
試験例5−2では、複合粉体として、合成マイカと、ステアリン酸処理TiO2(T2)と、シリコーン処理ZnO(Z1)とを質量比2:2:1で同時に複合化したものを用いた。
粉体部A:
シリコーン処理タルク 49.0
PMMA粉末 14.0
シリコーン処理シリカ 3.5
硫酸バリウム 3.3
エチルパラベン 0.2
被験粉体(表参照) 20.0
オイル部B:
スクワラン 6.5
ジメチルポリシロキサン(6cs) 3.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.5
合計 100 質量%
また、2種以上の微粒子を配合する場合において、それぞれの微粒子紫外線防御剤を別々に複合化した複合粉体を配合した場合(試験例5−1)よりも、それらを一度に複合化した複合粉体を配合した場合(試験例5−2)の方が、より高い効果を得ることができた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試験例 被験粉体* 紫外線透過率(%)
300nm 360nm
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5−1 複合粉体 5.014 36.109
(T2複合マイカ+Z1複合マイカ)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5−2 複合粉体 3.451 30.214
(T2・Z1複合マイカ)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5−3 非複合化粉体 7.610 42.951
(マイカ+T2+Z1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*被験粉体中の合成マイカ:T2:Z1の質量比は何れも約2:2:1
上記試験例5−2、5−3で使用した被験粉体4質量部を、塩化ビニル樹脂約100質量部、ジオクチルフタレート40質量部およびステアリン酸亜鉛3質量部と混合して150℃に加熱した混練り2本ロールで3分間処理し、厚さ0.5mmのシートに成型した。
上記試験例5−2,5−3で使用した被験粉体15質量部をグラビアインキメジウム100質量部に加え、十分混合してグラビアインキを調合した。
Claims (4)
- 合成マイカ粉体表面に疎水化処理された無機微粒子紫外線防御剤が吸着してその表面を被覆しており、複合粉体の動摩擦係数が0.8未満であることを特徴とする複合粉体。
- 請求項1記載の複合粉体において、疎水化処理がシリコーン処理あるいは脂肪酸処理であることを特徴とする複合粉体。
- 合成マイカ粉体と、疎水化処理された無機微粒子紫外線防御剤とを、ヘンシェルミキサーを用いて周速度20〜90m/secで乾式で攪拌混合することを特徴とする複合粉体の製造方法。
- 請求項3記載の方法において、疎水化処理がシリコーン処理あるいは脂肪酸処理であることを特徴とする複合粉体の製造方法。
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