JP4833902B2 - インクジェット記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、塗工組成物から形成される塗工層表面の耐傷性が高く、塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりにくく、かつ高い光沢と十分なインク吸収性を有するインクジェット記録媒体に関する。
近年、インクジェットプリンタの技術が急速に進歩し、一般的な銀塩写真法によるものと同等以上の画像品質を有する記録物が得られるようになってきた。これに伴い、インクジェット用の記録媒体にも、銀塩写真法に用いられる印画紙と同等の質感を出すために高い光沢感を有するものが求められている。
光沢を高めるために、アルミナ水和物(カチオン性アルミナ水和物)を用いたインクジェット記録媒体が公開されており、特許文献1、特許文献2に開示されているように微細な擬ベーマイト形アルミナ水和物を水溶性バインダーと共に基材表面に塗工したインクジェット記録媒体がある。これらの記録媒体は高い光沢を得ることはできるが、擬ベーマイト形アルミナ水和物が柔らかいために、インクジェットプリンタでの搬送時に塗工層表面に傷がつきやすいという問題があった。
また、ハガキのように両面がインクジェット記録適性を有する記録媒体においても、表面に印画紙と同等の質感が要求されている。このようなハガキ用途に使用されるインクジェット記録媒体においては、片面に印字する通常の記録媒体と比較して、裏表2回印字するためプリンタで傷がつきやすい。
プリンタ搬送時の傷つき対策として、インク受容層やオーバーコート層、裏塗り層等に有機顔料を含有させることが提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)が、これらは、インク吸収性改良、シート同士のブロッキングの防止、インク受容層の耐水性改良、インク受容層表面強度改良(粉落ち防止)を目標にしたものであり、これらの技術を用いて、光沢を有する両面インクジェット被記録媒体の搬送性および光沢面の傷つき防止はできなかった。
また、塗工層表面の耐傷性を上げるため、塗工層の再表層に熱可塑性有機粒子を含有させる提案がなされている(例えば、特許文献7、特許文献8)が、これらの技術においては、カレンダー処理およびキャスト処理による加熱および高圧力によって、インク受容層中で熱可塑性樹脂が加熱緻密化するためインク吸収性が悪化する傾向にありインク吸収性と光沢面の傷つき防止を高次元で両立することは困難であった。
特開平6−55829号公報 特開平6−79967号公報 特開平7−25133号公報 特開平7−179025号公報 特開平11−277881号公報 特開2001−105722号公報 特開2000−203151号公報 特開2003−226072号公報
本発明の目的は、塗工組成物から形成される塗工層表面の耐傷性が高く、塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりにくく、かつ高い光沢と十分なインク吸収性を有するインクジェット記録媒体を提供することにある。
この課題に対し検討を行った結果、本発明のインクジェット記録媒体、すなわち透気性の支持体上に少なくとも下層と上層を設け、キャスト処理をして製造されてなるインクジェット記録媒体において、下層が吸水性無機顔料、ラテックス樹脂、ホウ酸またはその塩を含有する塗工組成物から形成され、かつ上層がサブミクロン顔料、ポリビニルアルコール、カチオン性ウレタン化合物を含有する塗工組成物から形成され、カチオン性ウレタン化合物の基本骨格がポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種を有するインクジェット記録媒体によって解決された。
該サブミクロン顔料がカチオン化コロイダルシリカであると好ましい。
また、該カチオン化コロイダルシリカがパールネックレス状コロイダルシリカであるとより好ましい。
さらに、該上層の塗工組成物に、水溶性アクリル樹脂を添加すると好ましい。
本発明により、塗工組成物から形成される塗工層表面の耐傷性が高く、塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりにくく、かつ高い光沢と十分なインク吸収性を有するインクジェット記録媒体が得られる。
本発明において、透気性の支持体としては通常紙が用いられるが、必要に応じて不織布など紙以外の支持体を用いることもできる。
本発明において下層とは、記録媒体のより透気性の支持体に近い側に形成される塗工層を言い、下層塗工組成物とは、乾燥して下層を形成させるための液状の組成物を言う。また本発明において上層とは、記録媒体のより表面に近い側に形成される塗工層を言い、上層塗工組成物とは、乾燥して上層を形成させるための液状の組成物を言う。これらの塗工組成物は通常、水中に溶解ないし分散せしめた水性液の形で用いられる。本発明において通常、下層と上層は隣接しているが、下層と上層の相互作用を強く阻害しない範囲で、下層と上層の間に1層または2層以上の中間層を設けても良く、また下層と透気性の支持体の間および上層の表面側にも1層または2層以上の塗工層を設けても良い。
本発明においてキャスト処理とは、湿潤状態にある塗工層を加熱された鏡面に圧着し、鏡面形状を塗工層の表面に転写すると共に塗工層から水分を乾燥除去し記録媒体に光沢を付与する処理を言う。キャスト処理に使用する装置(キャスト装置)は通常、表面がクロムメッキされたシリンダーの表面に、弾性ロールを用いて連続的に塗工紙を圧着する構造の装置であるが、本発明には、同様の作用を有する他の構造の装置を用いても良い。本発明のインクジェット記録媒体を製造するにあたり用いるキャスト処理の方式としては、上層塗工組成物を塗工後一旦乾燥させてから再度水分を付与して再湿潤させ、その後キャスト装置の鏡面に圧着するいわゆるリウエット法、上層塗工組成物を塗工後一旦半乾燥させてから不足量の水を付与して再湿潤させ、その後キャスト装置の鏡面に圧着するいわゆる疑似リウエット法、上層塗工組成物、または上下両層の塗工組成物を塗工後、乾燥させずそのままキャスト装置の鏡面に圧着するいわゆる直接法、上層塗工組成物を塗工後その塗工層が湿潤状態のうちに凝固処理によりゲル状態にして、その後キャスト装置の鏡面に圧着するいわゆる凝固法(ゲル化法)などの方式を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明において吸水性無機顔料とは、アマニ油の代わりに水を用い、JIS K 5101に定められた吸油量の試験方法に準じた試験を行ったとき、終点までにその100gにつき100mL以上の水が使用される無機顔料を言い、その例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、湿式合成シリカ、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、ハロイサイト、活性白土、酸性白土、ハイドロタルサイト、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、ベントナイトクレー、ゼオライト、カオリン、焼成カオリン、セッコウ、酸化チタン、硫酸バリウム等を挙げることができる。これらの顔料は、その1種を単独で用いてもよく、またはそれらの2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の下層塗工組成物へのホウ酸またはその塩の添加量は、塗工組成物のpHにも依存するが、少なすぎると上層のバインダーの架橋が十分に起こらず、塗工層表面の耐傷性が不足したり、塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりやすくなる。また、多すぎるとインク吸収性が不十分になることがあることから、吸水性無機顔料に対して、ホウ素原子を基準にH3BO3に換算して0.2〜10質量%とすることが好ましく、0.4〜5質量%とすることがより好ましい。
本発明においてラテックス樹脂とは、実質的に非水溶性の熱可塑性高分子化合物が水中に分散した液状物を指し、一旦乾燥した後は熱水にも実質的に溶解しない点で水溶性高分子化合物の水溶液と区別される。その例としては、酢酸ビニル重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、イソプレン共重合体、クロロプレン共重合体、ウレタン系重合体、およびこれらの重合体を構成する単量体の2種以上をランダム的、グラフト的、ブロック的に組み合わせた共重合体などの合成高分子化合物の水性分散液や、天然ゴムラテックス等が挙げられる。これらのラテックス樹脂は、その1種を単独で用いても良く、またそれらの2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明において、下層塗工組成物へのラテックス樹脂の添加量は、少なすぎると塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりやすくなることがあり、多すぎるとインク吸収性が不十分になったり、キャスト処理後の光沢が十分に得られないことがあるから、ラテックス樹脂/吸水性無機顔料の質量比が10/100〜60/100であることが好ましく、15/100〜50/100であることがより好ましい。
本発明の下層塗工組成物には、本発明の効果を損なわない程度に、ビニルピロリドン重合体、(メタ)アクリル酸重合体、(メタ)アクリルアミド重合体等の水溶性高分子化合物を添加することもできる。ただし、ポリビニルアルコールのように高い結晶性を有する水溶性高分子化合物は、キャスト処理後に得られるインクジェット記録媒体の光沢を著しく低下させることから、実質的に含まれないことが好ましい。
本発明において、サブミクロン顔料とは、その分散液を基板上に散布し、走査型電子顕微鏡で観察したときに、観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺1μm以下の粒子が占める無機顔料を指す。特に、該観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺400nm以下の粒子が占める無機顔料を用いることで、特に高い表面光沢が得られることから好ましい。一般に、インクジェット記録媒体に用いられるサブミクロン顔料としては、ゲル法シリカ、沈降法シリカ、コロイダルシリカ、気相法シリカ、気相法アルミナ水和物、擬ベーマイト形アルミナ水和物等が例示できるが、本発明の上層塗工組成物に用いるサブミクロン顔料としては、その1種を単独で用いても良く、またそれらの2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明においてコロイダルシリカとは、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩水溶液に、硫酸等の酸を作用させるか、陽イオン交換樹脂により金属イオンを除去した後に、熟成等の工程を経る等の方法で製造されるケイ酸重合体の水性分散物であり、通常BET法による比表面積が15〜700m2/gの球状のケイ酸粒子からなる。
本発明において、コロイダルシリカとしては、その比表面積が小さすぎるものを用いた場合キャスト処理後の光沢が発現しにくくなることがあり、その比表面積が大きすぎるものを用いた場合はインク吸収性を向上させる効果が十分でなくなることがあるから、BET法による比表面積が50〜500m2/gのものが好ましく用いられる。
本発明において、コロイダルシリカの粒子表面が、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ジルコニウムイオン等の多価金属イオンによりカチオン化された物であると印字濃度が高くなり、より好ましい。カチオン化コロイダルシリカは粒子表面の電荷がカチオンであることにより、電気的な相互作用によってインク中の染料成分である直接染料や水溶性酸性染料中のスルホン基、カルボキシル基、アミノ基等と不溶な塩を形成して上層で該染料成分を定着させ印字濃度が高まる。
本発明において、カチオン化コロイダルシリカとして、パールネックレス状コロイダルシリカを使用することはインク吸収性が向上することから好ましい。パールネックレス状コロイダルシリカとは、球状のコロイダルシリカ一次粒子が複数個連結した、鎖状または分岐を有する細長い形状であり、具体的には日産化学工業(株)製の「ST−PS−S−AK」、「ST−PS−M−AK」などが挙げられる。
本発明に用いるカチオン性ポリウレタン化合物は皮膜強度が強いため、塗工層表面の耐傷性が高く、塗工層の透気性の支持体からの脱落も起こりにくくなる。また、ポリウレタン化合物がカチオン性であるためカチオン性の無機顔料やカチオン性樹脂などとの混和性に優れ、画像印字部の印字濃度および耐水性も高くなる。
このようなカチオン性ポリウレタン化合物としては、ポリイソシアネート化合物とポリエステルあるいはポリカーボネートのようなポリオール成分との付加重合反応によって得られるポリマーであり、分子中にウレタン基を有し、ポリウレタン化合物の主鎖または側鎖中に第4級アンモニウム基を導入することによってカチオン化したものが挙げられる。なかでも基本骨格がポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルから選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。特に、基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物は、上層塗工組成物の経時での粘度増加が起こりにくく、連続して安定に塗工を行うことができるため、より好ましい。
本発明の上層塗工組成物に用いるポリビニルアルコールとしては、70mol%から100mol%までの種々のけん化度のポリビニルアルコールが使用できる。またシリル基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等種々の官能基を導入したり、エチレン等他の単量体をランダム的、グラフト的、またはブロック的に導入した変性ポリビニルアルコールも使用することができる。また、ポリビニルアルコールの重合度は、低すぎると十分な塗層強度がえられず、高すぎるとインク吸収性が低下することから1700〜4500であることが好ましい。これらのポリビニルアルコールは、その1種を単独で用いても良いし、けん化度、粘度、変性などが異なる2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明では、上層塗工組成物中のポリビニルアルコールが下層塗工組成物のホウ酸またはその塩により架橋される。本発明の架橋は下層と上層の界面からスタートし上層表面へ向かって進行する。特に、上層塗工時に下層へ染みこんだ上層塗工組成物中のポリビニルアルコールの架橋反応が十分に行われるため下層と上層の密着強度が上がり、インクジェット記録媒体として断裁した際に塗工層の脱落が起こりにくくなる。
本発明におけるポリビニルアルコールとカチオン性ウレタン化合物の割合は、ポリビニルアルコールに対してカチオン性ウレタン化合物の比率が低いと十分な耐傷性が得られず、カチオン性ウレタン化合物の比率が高いと下層ホウ素化合物による架橋が不十分となり、塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりやすくなるだけでなくインク吸収性も不足してしまうため、ポリビニルアルコールとカチオン性ウレタン化合物の質量比がポリビニルアルコール/カチオン性ウレタン化合物=0.40〜3.00であることが好ましい。
本発明の上層塗工組成物に用いる水溶性アクリル樹脂としては、水に溶解する物であれば特に限定される物ではない。水溶性アクリル樹脂を使用することにより、キャスト処理の際に上層塗工組成物とキャスト装置の鏡面の密着性が向上するため、鏡面形状を塗工層の表面に転写しやすくなり光沢感が増加する。
本発明における水溶性アクリル樹脂とサブミクロン顔料の割合は、顔料に対して水溶性アクリル樹脂の比率が低いと光沢感が増加する効果が十分に得られず、また水溶性アクリル樹脂の比率が高いとインク吸収性が悪化するだけでなく、塗層表面の耐傷性が低下してしまうため、水溶性アクリル樹脂とサブミクロン顔料の質量比が水溶性アクリル樹脂/サブミクロン顔料=0.05〜0.30であることが好ましい。
本発明の各塗工層には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、色味調整剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤を添加することもできる。
本発明において、各塗工層の塗工組成物を塗工する方法に特に制限は無く、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、コンマコーター、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方式を用いることができる。本発明の塗工組成物を支持体上に塗工する量に特に制限は無いが、インク吸収性と経済性を両立させるためには通常、固形分として各層がそれぞれ5〜20g/m2また両層の合計では10〜30g/m2を塗工することが好ましい。ただし、特に多量のインクを吸収することを求められる場合には、両層の合計で最大50g/m2程度を塗工することが好ましいこともある。
また、下層塗工組成物または上層塗工組成物を塗工・乾燥させた後またはその双方で、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー等のカレンダー装置により平滑度を高めてからキャスト処理を行うことも可能である。
また、キャスト装置における鏡面からの剥離性を改善することを目的に油性物質または油性物質の水性分散物等の離型剤を、本発明の塗工組成物に添加したり、キャスト処理に先立ち塗工したり、キャスト方式としてリウエット法を用いる場合にはリウエットに用いる水に添加したりすることで、長時間にわたり安定した製造が可能になることから好ましい。本発明において離型剤として用いることができる物質の例としては、ジメチルオクチルアミン、ジメチルオクタデシルアミン等の高級アルキルアミンまたはそれらの塩、トリメチルオクチルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリドなどの高級アルキル四級アンモニウム塩、オレイン酸、ステアリン酸、カプリル酸などの高級カルボン酸またはそれらの塩、オクチルアルコール、オクタデシルアルコールなどの高級アルコール、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、シリコーン油などが挙げられる。
以下本発明の実施例を示す。なお、本実施例中で、特に明示しない限り部は質量部、%は質量%を示すものとする。
[実施例1]
[下層塗工組成物1の調製]
水350部に四ホウ酸ナトリウム十水和物6部(H3BO3換算で0.97部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(トクヤマ社製ファインシールX−37B)100部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで不揮発分48%のスチレン−ブタジエン(SBR)ラテックス(JSR社製0623N)83.3部(不揮発分40部)を添加・混合して下層塗工組成物1を得た。なお、ここで用いた湿式合成シリカについて、アマニ油の代わりに水を用い、JIS K 5101に定められた吸油量の試験に準じた試験を行ったところ、終点までにその100gあたり300mLの水が使用された。
[上層塗工組成物1の調製]
不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)500部(不揮発分100部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液80部(不揮発分8部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)25部(不揮発分10部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して上層塗工組成物1を調製した。ここで使用したST−AK−Lを水で100倍に希釈し、ガラス基板上に散布して走査型電子顕微鏡で観察したところ、観察野において粒子が占める面積の80%以上を、40〜60nmの球状一次粒子が占めていた。
[インクジェット記録媒体の作製]
坪量157g/m2の原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、下層塗工組成物1を、乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次いで得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理した後、上層塗工組成物1を、乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、水分が揮発する前に、キャスト装置の95℃に加熱した鏡面クロムメッキシリンダーに、線圧20kN/m、速度5m/minで圧着し、乾燥後にシリンダーより剥離することで実施例1のインクジェット記録媒体を作製した。
[実施例2]
[アルミナ水和物ゾルの調製]
水299部に酢酸1部を混合し、擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物(サソール社製Disperal HP14)100部を添加し、そのまま2時間攪拌して解膠し、不揮発分濃度25%のアルミナ水和物ゾルを得た。この分散物を水で100倍に希釈し、ガラス基板上に散布して走査型電子顕微鏡で観察したところ、観察野において粒子が占める面積の80%以上を、長辺100〜400nmの粒子が占めていた。
[上層塗工組成物2の調製]
上で得られたアルミナ水和物ゾルの400部(不揮発分100部)に、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度95mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液60部(不揮発分6部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)25部(不揮発分10部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して、上層塗工組成物2を調製した。
[インクジェット記録媒体の作製]
坪量157g/m2の原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、下層塗工組成物1を、乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次いで得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理した後、上層塗工組成物2を、乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。さらに得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理した。この塗工紙の塗工面を、水に5秒間接触させて湿潤した後、キャスト装置の95℃に加熱した鏡面クロムメッキシリンダーに、線圧20kN/m、速度5m/minで圧着し、乾燥後にシリンダーより剥離することで実施例2のインクジェット記録媒体を作製した。
[実施例3、参考例1および2、実施例4〜7
[上層塗工組成物3の調製]
不揮発分19%のパールネックレス状カチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−PS−S−AK)369部(不揮発分70部)、不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)150部(不揮発分30部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液80部(不揮発分8部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)25部(不揮発分10部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して上層塗工組成物3を調製した。ここで使用したST−PS−S−AKを水で100倍に希釈し、ガラス基板上に散布して走査型電子顕微鏡で観察したところ、10〜20nmの球状一次粒子が鎖状または分岐を有して複数個連結した長辺80〜150nmの二次粒子が、観察野において粒子が占める面積の80%以上を占めていた。
[上層塗工組成物4の調製]
上層塗工組成物3のカチオン性ポリウレタン化合物を、不揮発分25%の基本骨格がポリエステルからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7050)40部(不揮発分10部)に代えた以外は同様にして上層塗工組成物4を調製した。
[上層塗工組成物5の調製]
上層塗工組成物3のカチオン性ポリウレタン化合物を、不揮発分30%の基本骨格がポリエーテルからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7040)33.4部(不揮発分10部)に代えた以外は同様にして上層塗工組成物5を調製した。
[上層塗工組成物6の調製]
不揮発分19%のパールネックレス状カチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−PS−S−AK)369部(不揮発分70部)、不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)150部(不揮発分30部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液100部(不揮発分10部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)12.5部(不揮発分5部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して上層塗工組成物6を調製した。
[上層塗工組成物7の調製]
不揮発分19%のパールネックレス状カチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−PS−S−AK)369部(不揮発分70部)、不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)150部(不揮発分30部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液60部(不揮発分6部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)37.5部(不揮発分15部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して上層塗工組成物7を調製した。
[上層塗工組成物8の調製]
不揮発分19%のパールネックレス状カチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−PS−S−AK)369部(不揮発分70部)、不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)150部(不揮発分30部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液80部(不揮発分8部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)25部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して上層塗工組成物8を調製した。
[上層塗工組成物9の調製]
不揮発分19%のパールネックレス状カチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−PS−S−AK)369部(不揮発分70部)、不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)150部(不揮発分30部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度4.9mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA205)の20%水溶液75部(不揮発分15部)、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)25部(不揮発分10部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して上層塗工組成物9を調製した。
[インクジェット記録媒体の作製]
上層塗工組成物1の代わりに、それぞれ上層塗工組成物3〜9を用いた以外には、インクジェット記録媒体1と同様にしてそれぞれ実施例3、参考例1および2、実施例4〜7のインクジェット記録媒体を作製した。
[比較例1]
[上層塗工組成物10の調製]
不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)、500部(不揮発分100部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液80部(不揮発分8部)、不揮発分35%の基本骨格がポリエーテルからなるアニオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランWLS201)28.6部(不揮発分10部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、上層塗工組成物10を調製した。上層塗工組成物は、ゲル化したため塗工不能となった。
[比較例2]
[下層塗工組成物2の調製]
水350部に水酸化ナトリウム2部を溶解し、ここに湿式合成シリカ(トクヤマ社製ファインシールX−37B)100部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いでけん化度98.5mol%、4%水溶液の粘度25mPa・秒のシリル変性ポリビニルアルコール(クラレ社製Rポリマー1130)の12%水溶液200部(不揮発分24部)を添加・混合して下層塗工組成物2を得た。
[インクジェット記録媒体の作製]
坪量157g/m2の原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、下層塗工組成物2を、乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次いで得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理した後、上層塗工組成物1を、乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、水分が揮発する前に、キャスト装置の95℃に加熱した鏡面クロムメッキシリンダーに、線圧20kN/m、速度5m/minで圧着し、乾燥後にシリンダーより剥離することで比較例2のインクジェット記録媒体を作製した。
[比較例3〜4]
[上層塗工組成物11の調製]
不揮発分19%のパールネックレス状カチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−PS−S−AK)369部(不揮発分70部)、不揮発分20%のカチオン化コロイダルシリカ(日産化学工業社製ST−AK−L)150部(不揮発分30部)、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度42mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA224)の10%水溶液80部(不揮発分8部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して、上層塗工組成物11を調製した。
[上層塗工組成物12の調製]
実施例2で用いたアルミナ水和物ゾルの400部(不揮発分100部)に、不揮発分40%の基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物(大日本インキ化学工業社製ハイドランCP−7020)50部(不揮発分20部)、不揮発分27%の水溶性アクリル樹脂(ガラス転移温度55℃)37部(不揮発分10部)、不揮発分40%のオレイン酸エマルジョン2.5部(不揮発分1部)を混合し、均一分散して、上層塗工組成物12を調製した。
[インクジェット記録媒体の作製]
上層塗工組成物として上層塗工組成物2の代わりに上層塗工組成物11、12を用いた以外には、実施例2と同様にして比較例3、4のインクジェット記録媒体を作製した。
[光沢(写像性)の評価]
光沢の評価は、視覚的な光沢との相関性に優れる写像性を測定することによって行った。なお、測定はスガ試験機社製写像性測定器を用い、測定角45°、光学くし幅2.0mmにて行った。本方法による測定においては一般に、55以上の写像性を与える記録媒体は高い光沢感を有し、65以上の写像性を与える記録媒体は非常に高い光沢感を有する。
[インク吸収性の評価]
セイコーエプソン社製PM−G820形インクジェットプリンタにより所定の評価画像を印刷し、各記録媒体のインク吸収性を、画像の細部の判読性を基準とし次の4段階に分類した。A(良好)、B(普通)、C(許容)、D(許容できない)
[印字濃度の評価]
セイコーエプソン社製PM−G820形インクジェットプリンタにより所定の黒ベタ画像を印刷し、各記録媒体の印字部の光学反射濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製RD−918型)により測定した。
[塗層表面の耐傷性の評価]
学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製)を使用し、記録媒体の塗工面に500gの荷重で坪量157g/m2の原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)を押しつけて20回摩擦試験を行い、塗層表面の耐傷性を目視で次の5段階に分類した。A(非常に良好)、B(良好)、C(普通)、D(許容)、E(許容できない)
[断裁強度の評価]
記録媒体を、未使用のNTカッター(A−300:エヌティー株式会社製の商品名)刃で5cmを10回断裁したときに発生する塗層の脱落の程度を目視で次の5段階に分類した。A(非常に良好)、B(良好)、C(普通)、D(許容)、E(許容できない)
[上層塗工組成物の粘度評価]
調整直後の各上層塗工組成物500cm3をビーカーに取り、スリーワンモーターを用いて250rpmの回転速度で24時間攪拌した後に、B型粘度計を用いて25℃におけるB型粘度を測定し、攪拌前に測定した25℃におけるB型粘度と比較して次の3段階に分類した。
A(粘度の増加が0〜200mPa・秒であり、24時間後でも問題なく塗工可能である)、B(粘度の増加が201〜1000mPa・秒であり、24時間後では希釈により上層塗工組成物の粘度を下げれば塗工可能である)、C(粘度の増加が1000mPa・秒以上であり、24時間後では塗工が難しい)
各実施例、各参照例、各比較例で得られた記録媒体の写像性、インク吸収性、耐傷性、断裁強度、粘度評価を表1に示す。
Figure 0004833902
各実施例から、下層が吸水性無機顔料、ラテックス樹脂、ホウ酸またはその塩を含有する塗工組成物から形成され、かつ上層がサブミクロン顔料、ポリビニルアルコール、カチオン性ウレタン化合物を含有する塗工組成物から形成されるインクジェット記録媒体によって、比較例1〜4のインクジェット記録媒体よりも、塗工層表面の耐傷性が高く、塗工層の透気性の支持体からの脱落が起こりにくく、かつ高い光沢と十分なインク吸収性を有するインクジェット記録媒体が得られることがわかる。また、実施例とその他の実施例の比較から、水溶性アクリル樹脂を添加することでより高い光沢感が得られることがわかる。さらに、実施例参考例1および2との比較から、基本骨格がポリカーボネートからなるカチオン性ポリウレタン化合物を使用することで、上層塗工組成物の増粘が起こりにくく安定して塗工を行うことができることがわかる。また、比較例1の上層塗工組成物は、アニオン性ウレタン樹脂とサブミクロン顔料の相溶性が悪くゲル化してしまい、塗工を行うことができなかった。

Claims (4)

  1. 透気性の支持体上に少なくとも下層と上層を設け、キャスト処理をして製造されてなるインクジェット記録媒体において、下層が吸水性無機顔料、ラテックス樹脂、ホウ酸またはその塩を含有する塗工組成物から形成され、かつ上層がサブミクロン顔料、ポリビニルアルコール、カチオン性ウレタン化合物を含有する塗工組成物から形成され、カチオン性ウレタン化合物の基本骨格がポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
  2. 該サブミクロン顔料がカチオン化コロイダルシリカである請求項1記載のインクジェット記録媒体。
  3. 該カチオン化コロイダルシリカがパールネックレス状コロイダルシリカである請求項記載のインクジェット記録媒体。
  4. 該上層の塗工組成物に、さらに水溶性アクリル樹脂を添加する請求項1記載のインクジェット記録媒体。
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