従来の内燃機関の空燃比制御装置は、機関平衡状態の回転速度と、負荷に基づいて算出した排気系の平衡温度と、排気系の平衡温度と排気流量に基づいて推定した推定温度との偏差と、に応じて空燃比(以下、A/Fと称する)の帰還制御定数を補正するものである。そうすることで、機関が平衡状態にあるときだけでなく過渡状態等に於いても帰還制御定数を触媒の要求空燃比を実現する制御定数に近づけることができ触媒の働きを常に最良の状態に維持することが可能となる(特許文献1参照)。
図14は、特許文献1に示された従来の内燃機関の空燃比制御装置の動作の一例を示す説明図であり、(a)はスロットル開度、(b)は内燃機関の回転速度、(c)はインテークマニホールド内の圧力(以下、インマニ圧と称する)、(d)は排気系の推定温度、(e)は排気系の平衡温度と推定温度との温度偏差、(f)はフィードバック補正係数(以下、CFBと称する)のリッチ補正側の比例項への補正係数(以下、PL補正係数と称する)、(g)はCFBのリーン補正側の比例項への補正係数(以下、PR補正係数と称する)、(h)はCFB、(i)はA/F、を夫々示すグラフである。夫々のグラフに於いて、縦軸は各信号若しくは制御量、横軸は時間経過を示す。
図14に於いて、時点Aで加速するためにスロットル開度(a)を開くと、時点Aから時点B間ではインマニ圧(c)が上昇し内燃機関のトルクが増大することで内燃機関の回転速度(b)が上昇し車両が加速する。車両の加速に伴って推定温度(d)に於ける実線にて示す排気系の平衡温度が上昇し、又、これより遅れて、破線で示す排気系の推定温度が上昇する。
平衡温度と推定温度との温度偏差(e)から、CFBのリッチ補正側の比例項への補正係数であるPL補正係数(f)を算出する。CFB(h)は、CFB(h)のリッチ補正側の比例項を増加させるようにPL補正係数(f)で補正するため、実線にて示すPL補正係数(f)で補正しない場合と比較して破線で示すPL補正係数(f)で補正する場合はリッチ補正側(+)で推移することとなる。
そうすることで過渡時も触媒の浄化率が最善となるように、A/F(i)に於いて実線にて示す目標空燃比よりも破線にて示す実空燃比がリッチ側を推移させるようにしている。
次に、減速するために時点Cでスロットル開度(a)を閉じると、時点Cから時点D間ではインマニ圧(c)が下降し、内燃機関のトルクが減少することで内燃機関の回転速度(b)が低下し車両が減速する。車両の減速に伴って推定温度(d)に実線で示す平衡温度が下降し、これより遅れて破線で示す推定温度が下降する。
平衡温度と推定温度との温度偏差(e)から、CFBのリーン補正側の比例項への補正係数であるPR補正係数(g)を算出する。CFB(h)は、CFB(h)のリーン補正側の比例項を増加させるようにPR補正係数(g)で補正するため、実線にて示すPR補正係数(g)で補正しない場合と比較して破線で示すPR補正係数(g)で補正する場合はリーン補正側で推移することとなる。
そうすることで過渡時も触媒の浄化率が最善となるように、A/F(i)に於いて実線で示す目標空燃比よりも破線で示す実空燃比がリーン側を推移させるようにしている。
特許文献2に示された従来の内燃機関の空燃比制御装置では、排気系の平衡温度と排気系の予測温度の温度偏差に温度修正係数を乗算した値を、内燃機関の冷却水温から減算して修正温度を求め、この修正温度から暖機時燃料量若しくは過渡時燃料量を演算するものであり、修正温度は内燃機関冷却水温に応じて設定されているものである。
前述の修正温度(f)は、次式(1)により算出される。
TWF=TW−(TEQ−TEX)×K ・・・・・・・・式(1)
TWF:修正温度
TW :内燃機関の冷却水温
TEQ:排気系の平衡温度
TEX:排気系の予測温度
K :温度修正係数
温度修正係数Kは、内燃機関の冷却水温によりマップを検索して求めており、内燃機関の冷却水温が一点決まれば温度修正係数Kはただ1つの値が決まるのみである。
図15は、特許文献2に示された従来の内燃機関の空燃比制御装置の動作の一例を示す説明図であり、(a)はスロットル開度、(b)は内燃機関の回転速度、(c)はインテークマニホールド内の圧力(以下、インマニ圧と称する)、(d)は排気系の推定温度、(e)は排気系の平衡温度と推定温度との温度偏差、(f)は内燃機関の冷却水温に応じて設定した修正温度、(g)は内燃機関の冷却水温WTに基づいて算出した燃料噴射量と修正温度(f)に基づいて算出した燃料噴射量との比率である燃料噴射量比、(h)は修正温度(f)を用いないで演算した燃料噴射量により燃料噴射を行った場合のA/F、(i)は修正温度(f)を用いて演算した燃料噴射量により燃料噴射を行った場合のA/F、を夫々示す。夫々のグラフに於いて、縦軸は各信号若しくは制御量、横軸は時間経過を示す。
図15に於いて、時点Aで加速するためにスロットル開度(a)を開くと、時点Aから時点C間ではインマニ圧(c)が上昇し、内燃機関のトルクが増大することで内燃機関の回転速度(b)が上昇し車両が加速する。車両の加速に伴って推定温度(d)に実線で示す排気系の平衡温度が上昇し、これより遅れて破線で示す排気系の平衡温度を一次フィルタ演算により算出する排気系の予測温度が上昇する。排気系の平衡温度と排気系の予測温度との偏差である修正温度(f)を前述の式(1)により算出し、この修正温度(f)を用いて燃料噴射量を算出する。
修正温度(f)に於ける破線は例えば内燃機関の冷却水温TWが90[℃]のときの修正温度、一点鎖線は例えば内燃機関の冷却水温TWが60[℃]のときの修正温度を示す。温度修正係数Kは、内燃機関の冷却水温TWに対する設定値をマップを参照して算出する。内燃機関の冷却水温TWが低温である程、温度修正係数Kは小さい値となるため、実水温である内燃機関の冷却水温を基準として修正温度の変化を示した場合は、破線で示す90[℃]のときの修正温度よりも、一点鎖線で示す60[℃]のときの修正温度の方がマイナス側への変化が小さい。
例えば、温度偏差(e)がピークにある時点を例にして説明すると、内燃機関の冷却水温TWが90[℃]のとき、修正温度TWFは前述の式(1)から、
TWF=TW−(TEQ−TEX)×K
=90−(500−400)×0.2
=70[℃]
となり、内燃機関の冷却水温TWが90[℃]のときには、修正温度TWFは70[℃](温度偏差は20[℃])となり、全体として修正温度TWFは修正温度(f)に破線で示され、内燃機関の冷却水温TWが60[℃]のとき、修正温度TWFは、
TWF=60−(500−400)×0.15
=45[℃]
となり、内燃機関の冷却水温TWが60[℃]のときには修正温度TWFは45[℃](温度偏差は15[℃])となり、全体として修正温度TWFは修正温度(f)に一点鎖線で示される。
燃料噴射量比(g)は、燃料噴射量を内燃機関の冷却水温WTに基づいて算出した場合に対する、燃料噴射量を修正温度(f)に基づいて算出した場合の比率である。燃料噴射量比(g)に於ける破線は、内燃機関の冷却水温TWが90[℃]のときに内燃機関の冷却水温TWで算出した燃料噴射量に対する、内燃機関の冷却水温TWが90[℃]のときの修正温度で算出した燃料噴射量の比率である。一方、燃料噴射量比(g)に於ける一点鎖線は、内燃機関の冷却水温TWが60[℃]のときに内燃機関の冷却水温TWで算出した燃料噴射量に対する、内燃機関の冷却水温TWが60[℃]のときの修正温度で算出した燃料噴射量の比率である。
下記に示すように、燃料噴射量の冷却水温TWに対する水温補正係数は低水温になるほど大きくなる。
(冷却水温)(水温補正係数)(修正温度)(修正温度での水温補正係数)(比率)
90[℃] 1.0 70[℃] 1.1 1.1
60[℃] 1.2 45[℃] 1.35 1.125
内燃機関の冷却水温TWと修正温度の比率が90[℃]>60[℃]であっても、燃料噴射量の比率はこの場合は大小関係が逆転する。即ち、図15の燃料噴射量比(g)に於いて、破線で示す燃料噴射量比率<一点鎖線で示す燃料噴射量比率となる。
内燃機関の夫々の冷却水温で燃料噴射量比の大小関係が発生するが、その大小関係にかかわらず時点Aから時点Bの間では内燃機関の冷却水温が異なっても相似形となる。ところがA/F(h)は相似形となならない。
A/F(h)は、修正温度で燃料噴射量を算出しない場合のA/Fであり、破線が内燃機関の冷却水温が90[℃]、一点鎖線が内燃機関の冷却水温が60[℃]の場合である。実線は目標A/Fである。A/F(h)は、時点Aから時点Bの間は内燃機関の冷却水温が異なるとA/Fに違いがあるが、時点Bから時点Cの間では内燃機関の冷却水温が異なってもA/Fがほぼ同じである。
A/F(i)は、修正温度(f)を用いて燃料噴射量を演算し燃料噴射を行った場合のA/Fであるが、燃料噴射量比(g)では内燃機関の冷却水温が90[℃](破線)と、内燃機関の冷却水温60[℃](一点鎖線)とでは相似形であるのに対して、修正温度(f)を用いないで燃料噴射量を演算して燃料噴射を行った場合のA/F(h)は、内燃機関の冷却水温が90「℃」のとき(破線)と内燃機関の冷却水温が60「℃」のとき(一点鎖線)が相似形ではないために、修正温度(f)を用いて燃料噴射量を算出し燃料噴射を行うと、A/F(h)のように内燃機関の冷却水温が90[℃]では燃料噴射量の補正が適正となるために、A/F(i)(破線)は、目標A/Fにほぼ一致するが、内燃機関の冷却水温が60「℃」では燃料噴射量が過補正となり、A/F(i)(一点鎖線)は時点B前後で目標A/Fよりもリッチ側にずれる。
又、時点Dから時点Fの間では、減速側の動作を示しており、加速側と同様に修正温度(f)は、内燃機関の冷却水温が90[℃](破線)と内燃機関の冷却水温が60[℃](一点鎖線)とで相似形であるが、修正温度(f)を用いずに燃料噴射量を算出し燃料噴射を行った場合のA/F(h)は相似形ではなく時点E以降はほぼ一致するので、修正温度(f)を用いて燃料噴射量を演算して燃料噴射を行った場合のA/F(i)は時点Eの前後で内燃機関の冷却水温60[℃]のときにA/Fがリーン側にずれる。
又、内燃機関の冷却水温が暖機状態である80[℃]以上では、通常は燃料噴射量への各種補正が一律で変化がなくなるため、内燃機関の冷却水温が80[℃]以上での減速時に修正温度が高温側に修正されたとしても燃料噴射量は減量されないため、A/Fのリッチは改善されない。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置を示す構成図である。図1に於いて、内燃機関101の吸気系を構成する吸気管103には、吸入する空気を浄化するエアクリーナ102が設けられている。吸気管103に於けるエアクリーナ102の下流側には、スロットルバルブ104が設けられ、スロットルバルブ104の下流側には吸気管内の圧力を計測する圧力センサ105及び、内燃機関101が吸入する空気に燃料を供給し混合気を形成するインジェクタ106が設けられている。
内燃機関101の排気系を構成する排気管107には、排気ガスの有害成分であるHC、CO、NOxを無害なCO2、H2Oに変換する三元触媒109が設けられている。排気管に於ける三元触媒109の上流側には、内燃機関101から排出される排気ガスの残存空気量を計量するO2センサ108が設けられている。
点火コイル110は、一次コイル(図示せず)の電流を通電、遮断することで二次コイル(図示せず)に高電圧を発生させ、点火プラグ111により内燃機関101のシリンダ内で点火火花を発生させる。カム角センサ112は吸気バルブを開閉させるカムの回転角を検出しカム角信号を発生する。カム角センサプレート113は、前述のカムと共に回転し、カム角センサ112によりカム角信号を発生させるための突起若しくは窪みを備えている。
クランク角センサ114は、内燃機関101のクランク軸の回転角を検出しクランク角信号を発生する。クランク角センサプレート115は、クランク軸と共に回転し、クランク角センサ114に信号を発生させるための突起若しくは窪みを備えている。
コントロールユニット(以下ECUと称する)118は、カム角センサ112、クランク角センサ114、圧力センサ105、O2センサ108、水温センサ117等からの信号を入力し、燃料噴射量、点火タイミング等を演算し、インジェクタ106、点火コイル110に信号を出力する。
図2は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置を説明するための制御ブロック図である。図2に於いて、内燃機関の制御装置は、前述の水温センサ117により構成され内燃機関101の温度を検出するための機関温度検出手段201と、前述のクランク角センサ114により構成され内燃機関101の回転速度を検出するための回転速度検出手段202と、前述の圧力センサ105により構成され内燃機関101の負荷を検出するための負荷検出手段203を備える。
更に、回転速度に応じた補正係数を算出する回転速度補正係数算出手段204と、回転速度及び負荷が一定である定常状態での平衡温度を算出するための平衡温度算出手段205と、平衡温度算出手段205で算出した平衡温度の変動を除去するための平衡温度フィルタ手段206と、内燃機関101の負荷に応じた補正係数を算出する負荷補正係数算出手段207と、平衡温度と前回の推定温度から推定温度を算出するためのフィルタ定数を算出する推定温度フィルタ定数算出手段208とを備える。
推定温度算出手段210は、推定温度フィルタ定数算出手段208で算出した推定温度フィルタ定数に負荷補正係数算出手段207で算出した負荷補正係数を乗算器209により乗算した負荷補正後の推定温度フィルタ定数と、平衡温度フィルタ手段206からの平衡温度とに基づいて、推定温度を算出する。
燃焼温度基本補正係数算出手段212は、減算器211により算出した平衡温度と推定温度との偏差と、機関温度検出手段201により検出した機関温度に基づいて燃焼温度基本補正係数を算出する。燃焼温度補正係数算出手段213は、燃焼温度基本補正係数に回転速度補正係数を乗算して燃焼温度補正係数を算出する。
次に、以上のように構成されたこの発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の動作を説明する。図3は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の動作を説明するフローチャートである。図3に於いて、ステップ501では、回転速度検出手段202により、クランク角センサ114の信号に基づき所定検出信号毎の時間から内燃機関101の回転速度Neを算出する。
ステップ502では、圧力センサ105が検出したインマニ圧に相当する信号からインマニ圧Pbを負荷検出手段203により検出する。ステップ503では、水温センサ117からの信号に基づいて機関温度検出手段201により内燃機関101の冷却水温WTを検出する。
次に、ステップ523に於いて、内燃機関101の始動からの経過が所定期間以内であるか否かを判定する。この所定期間は、内燃機関101の始動から始動直後の内燃機関運転状態の変化による平衡フィルタ温度Tcylfと温度補正係数算出用温度Tcylafとの温度偏差△Tが発生している期間であって、予め実験により求めて設定しておく。尚、ステップ523での判定は、温度偏差△Tが始動から一度も「0」になっていない場合を(Y)、ステップ524の処理を実施し、一度でも「0」になった場合を(N)として判定するようにしても良い。
ステップ523に於ける判定の結果、始動から所定期間以内であれば(Y)、ステップ524に進んで温度補正係数Ccyltを「0」に設定する。ステップ523に於ける判定の結果、始動後所定期間が経過したと判定した場合(N)は、ステップ504に進んで減速燃料カット中であるかを判定する。ここで、減速燃料カットとは、スロットル開度を全閉状態としたときに内燃機関101の回転速度が所定回転速度以上であればインジェクタ106からの燃料噴射を停止することを意味する。
ステップ504にて判定の結果、燃料カット中であれば(Y)、ステップ506に進んで燃料カット時温度マップMcylTFCから内燃機関101の回転速度Neで補間参照して定常平衡温度Tcylを算出する。図4は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる燃料カット時温度マップMcylTFCを示す説明図で、縦軸は温度、横軸は内燃機関の回転速度を示す。図4に示すように、内燃機関101の回転速度毎に、燃料カット運転を実施したときに安定する温度が予め実験により計測し設定されている。
図3のステップ504での判定の結果、燃料カット中でなければ(N)、ステップ505に進んで定常運転時温度マップMcylTBより内燃機関101の回転速度Neとインマニ圧Pbとで補間参照して定常平衡温度Tcylを算出する。図5は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる定常運転時温度マップMcylTBを示す説明図で、縦軸は温度、横軸は吸気管圧力を示し、内燃機関101の回転速度毎の温度と吸気管圧力の関係を示している。図5に示すように、内燃機関101が高回転、高負荷になるほど、定常並行温度Tcylが大きい値となるように設定されている。
図3のステップ504〜506は、図2に示す平衡温度算出手段205に相当する。
尚、図4に示す燃料カット時温度マップMcylTFC、及び図5に示す定常運転時温度マップMcylTBは、排気温度を予め実測して設定しておくが、シミュレーション等によりシリンダ内温度等を設定しても良い。
次に、図3のステップ507に進んで、平衡フィルタ温度Tcylfを次式(2)に示す一次フィルタの算出式により算出する。
平衡フィルタ温度(Tcylf)
=定常平衡温度(Tcyl)×フィルタ係数(KCYL)
+平衡フィルタ温度前回値(Tcylf(n−1))×(1−フィルタ係数(KCYL))
・・・・・・式(2)
図3に於けるステップ507は、図2の平衡温度フィルタ手段206に相当する。
定常平衡温度Tcylに基づいて平衡フィルタ温度Tcylfを算出することで、負荷(インマニ圧)の変動による算出温度の変動を除去することが可能となる。
次に、ステップ508に於いて平衡フィルタ温度Tcylfが温度補正係数算出用温度Tcylaf以上であるか否かを判定し、平衡フィルタ温度Tcylfが温度補正係数算出用温度Tcylaf以上である(Y)場合は、ステップ509に進んで加速用インマニ圧補正係数マップMcylPbAをインマニ圧Pbで補間参照してインマニ圧補正係数Kcylpbを算出する。温度補正係数算出用温度Tcylafは、後述するステップ513にて算出されるものであり、前回の処理サイクルに於いてステップ513で算出した値となる。
ステップ508による判定の結果、平衡フィルタ温度Tcylfが温度補正係数算出用温度Tcylaf未満の場合(N)は、ステップ510に進んで減速用インマニ圧補正係数マップMcylPbDをインマニ圧Pbで補間参照してインマニ圧補正係数Kcylpbを算出する。
ステップ508〜ステップ510は、図2に示す負荷補正係数算出手段207に相当する。
ステップ509、ステップ510で参照する加速用インマニ圧補正係数マップMcylPbA、及び減速用インマニ圧補正係数マップMcylPbDは、図6に示すように低負荷側の方が高負荷側よりも相対的に小さい値に設定されている。即ち、図6は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる加速用インマニ圧補正係数マップMcylPbA、及び減速用インマニ圧補正係数マップMcylPbDを示す説明図で、縦軸は負荷補正係数、横軸は吸気管圧力を示している。
ステップ508では、温度補正係数算出用温度Tcylafが既に求まっていないと判定できないが、温度補正係数算出用温度Tcylafを算出するのはステップ508よりも後のステップ513である。従って温度補正係数算出用温度Tcylafは始動後の初回は平衡フィルタ温度Tcylfを設定するようにしておく。
ステップ511に於いて平衡フィルタ温度Tcylfと温度補正係数算出用温度Tcylafとの温度偏差△Tから温度補正係数算出用温度フィルタ係数マップMcyltfを補間参照した値に、インマニ圧補正係数Kcylpbを乗算して温度補正係数算出用温度フィルタ係数Kcylfを算出する。
図7は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる温度補正係数算出用温度フィルタ係数マップMcyltfを示す説明図で、縦軸はなまし係数、横軸は温度偏差ΔTを示している。図7に示すように、燃焼温度補正係数が必要な期間、即ちA/Fがリッチ若しくはリーンにずれる期間は後述するステップ514で温度偏差△Tが発生するように設定する。温度補正係数算出用温度フィルタ係数マップMcyltfの値を小さく設定すると、温度偏差△Tが発生する期間が長くなる。温度偏差△Tが小さい中央部分のなまし係数の値を大きく設定しているのは、温度補正係数算出用温度Tcylafが平衡フィルタ温度Tcylfに収束しきらなくなることを回避するためである。
ステップ512では、温度補正係数算出用温度フィルタ係数Kcylfに温度補正係数算出用温度フィルタ係数上限値KCYLMX、及び温度補正係数算出用温度フィルタ係数下限値KCYLMNによる制限を設ける。温度補正係数算出用温度フィルタ係数上限値KCYLMXは、温度補正係数算出用温度フィルタ係数Kcylfが「1.0」を超えた値となっても「1.0」を上限にするために「1.0」を設定しておく。
温度補正係数算出用温度フィルタ係数下限値KCYLMNは、温度補正係数算出用温度フィルタ係数Kcylfを用いて算出する温度補正係数算出用温度Tcylafが平衡フィルタ温度Tcylfに収束しきらずに温度偏差△Tが残り続けることを回避できる最小値を設定する。例えば「0.01」に設定する。
ステップ511、及びステップ512は、図2に示す推定温度算出用フィルタ定数算出手段208に相当する。
ステップ513では、温度補正係数算出用温度Tcylafに温度偏差△Tと温度補正係数算出用温度フィルタ係数Kcylfとを乗算した値を加算して、新たに温度補正係数算出用温度Tcylafを算出する。
ステップ513は、図2における推定温度算出手段210に相当する。
ステップ514では、温度偏差△Tを平衡フィルタ温度Tcylfから温度補正係数算出用温度Tcylafを減算して算出する。次にステップ515に進み、基本温度補正係数マップMcylbを温度偏差△Tと水温WTで補間参照して燃焼温度基本温度補正係数Ccyltbを算出する。
ステップ514は、図2に於ける燃焼温度基本補正係数算出手段212に相当する。
図8は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる基本温度補正係数マップMcylbを示す説明図で、縦軸は補正係数、横軸は温度偏差ΔTを示している。図8に示すように、基本温度補正係数マップMcylbは、各水温での要求量を実験的に求めて設定する。このように水温毎に温度偏差△Tに応じた値に補正係数を設定できるので、水温で一律に決まらない要求補正量に応じた設定が可能となる。
次に、ステップ516では、平衡フィルタ温度Tcylfが温度補正係数算出用温度Tcylaf以上であるか否かを判定し、平衡フィルタ温度Tcylfが温度補正係数算出用温度Tcylaf以上である場合(Y)は、ステップ517に進んで加速用温度補正係数回転補正係数マップMcylNeAを回転速度Neで補間参照して回転補正係数Kcylneを算出する。
ステップ516での判定の結果、平衡フィルタ温度Tcylfが温度補正係数算出用温度Tcylaf未満である場合(N)は、ステップ518に進んで減速用温度補正係数回転補正係数マップMcylNeDを回転速度Neで補間参照して回転補正係数Kcylneを算出する。
ステップ516〜ステップ518は、図2に於ける回転速度補正係数算出手段204に相当する。
ステップ517、及びステップ518にて参照する加速用温度補正係数回転補正係数マップMcylNeA、及び減速用温度補正係数回転補正係数マップMcylNeDは、図9に示すように低回転側の方が高回転側よりも相対的に大きい値に設定されている。即ち図9は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる加速用温度補正係数回転補正係数マップMcylNeA、及び減速用温度補正係数回転補正係数マップMcylNeDを示す説明図であり、縦軸は回転補正係数、横軸は回転速度を示している。
次に、ステップ519では、燃焼温度基本温度補正係数Ccyltbから「1.0」を減算した値に回転補正係数Kcylneを乗算した後に「1.0」を加算して温度補正係数Ccyltを算出し、ステップ520に進む。ステップ520では、温度補正係数上限値Kcylnemxを温度補正係数上限値マップMcylMXを回転速度Neで補間参照して算出する。
ステップ521では、温度補正係数下限値Kcylnemnを温度補正係数下限値マップMcylMNを回転速度Neで補間参照して算出し、ステップ522では、温度補正係数Ccyltに対して温度補正係数上限値Kcylnemx、及び温度補正係数下限値Kcylnemnで制限を設ける。
ステップ519〜ステップ522は、図2に於ける燃焼温度補正係数算出手段213に相当する。
温度補正係数上限値マップMcylMX、及び温度補正係数下限値マップMcylMNは、燃焼温度基本温度補正係数Ccyltbを用いてそのまま燃料噴射量を補正すると、過補正になる領域を制限する値を設定する。即ち、図10は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に用いる温度補正係数上限値マップMcylMX、及び温度補正係数下限値マップMcylMNを示す説明図で、縦軸は上限値及び下限値、横軸は回転速度を示す。
燃料噴射量は下記の式(3)により算出する。前述のステップ522にて演算した温度補正係数Ccyltは、燃料噴射量を演算する補正係数となる。
Qpls=Pb×Kpls×Cother×Ccylt+Qacc−Qdec
・・・・・式(3)
Qpls:燃料噴射量(mm3)
Pb:インマニ圧(kPa)
Kpls:Pb→Q変換係数(mm3/kPa)
Cother:補正係数その他
Ccylt:温度補正係数
Qacc:加速増量(mm3)
Qdec:減速減量(mm3)
式(3)に於いて、Pb→Q変換係数Kplsは、インマニ圧相当の燃料噴射量を算出するための変換係数である。補正係数その他Cotherは、低水温時に燃焼を安定させるための暖機補正係数、吸気温度変化による空気密度変化を補正する吸気温補正係数等、各種補正係数の総量ある。加速増量Qaccは、加速時のPb変化に応じて算出される補正量である。減速減量Qdecは、減速時のPb変化に応じて算出される補正量である。
インジェクタ駆動時間は、下記の式(4)にて算出する。
Tpls=Qpls×Kinj+Tv ・・・・・式(4)
Tpls:インジェクタ駆動時間(msec)
Kinj:Q→パルス幅変換係数(msec/mm3)
Tv:無駄時間(msec)
算出されたインジェクタ駆動時間Tplsの間、インジェクタ106を通電駆動することで内燃機関101への燃料供給量を調整する。
図11は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置の動作を説明する説明図である。次に、図11に於いて、(a)はスロットル開度、(b)は内燃機関の回転速度、(c)はインマニ圧、(d)は排気系の推定温度、(e)は排気系の平衡温度と推定温度との温度偏差、(f)は温度補正係数、(g)はA/F、を夫々示すグラフである。夫々のグラフに於いて、縦軸は各信号若しくは制御量、横軸は時間経過を示す。
図11に於いて、時点Aで加速するためにスロットル開度(a)を開くと、時点Aから時点Cまでの間ではインマニ圧(c)が上昇し内燃機関101のトルクが増大することで内燃機関101の回転速度(b)が上昇し、車両が加速する。車両の加速に伴って推定温度(d)に実線にて示す平衡フィルタ温度Tcylfが上昇し、推定温度(d)に破線で示す補正係数算出用温度Tcylafは平衡フィルタ温度Tcylfより遅れて上昇する。平衡フィルタ温度Tcylfと温度補正係数算出用温度Tcylafとの温度偏差△T(e)より算出した補正係数(f)に示す温度補正係数Ccyltにより燃料噴射量が補正される。
補正係数(f)に示す温度補正係数Ccyltは、前述の図8に示すマップを元に算出し、水温毎に温度偏差△Tに対する補正係数を設定しているために、水温が異なることでA/Fのリーン度合いが相似形になっていなくても夫々の水温に応じた温度補正係数Ccyltを算出することができる。補正係数(f)に破線で示す温度補正係数が水温90[℃]のとき、一点鎖線で示す温度補正係数では水温60[℃]のときに対応する。
A/F(g)に示す破線は、水温90[℃]のときの補正係数(f)に破線で示す温度補正係数で燃料噴射量を補正しない場合のA/Fであり、A/F(g)の一点鎖線は、水温60[℃]のときの補正係数(f)に一点鎖線で示す温度補正係数で燃料噴射量を補正しない場合のA/Fである。
A/F(g)に於いて、時点Aから時点Bの間は水温90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)とで差があるが、時点Bから時点Cの間は水温90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)とで差がない。補正係数(f)に示す温度補正係数もA/F(g)の挙動に対応する補正係数が算出されており、時点Aから時点Bの間は温度補正係数の90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)とで差があるが、時点Bから時点Cの間では水温90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)とで差がない。
従って、水温90[℃]と60[℃]のどちらにおいても夫々の温度で算出した温度補正係数(f)により燃料噴射量を補正することで、A/F(g)の実線のように加速直後以外はほぼ目標A/F(実線細)に一致するようになる。尚、A/F(g)に示す実太線は、水温90[℃]、60[℃]両方の温度補正係数(f)による補正後のA/Fである。
時点Dから時点Fの間も加速(時点Aから時点Cの間)の場合と同様であり、時点Dから時点Eの間は水温90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)のA/F(g)差があり、時点Eから時点Fの間は水温90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)のA/F(g)に差がないため、温度補正係数(f)は夫々水温90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)に応じた補正係数として図8に示すマップから算出することで、温度補正係数(f)を用いないで燃料噴射量を算出して燃料した場合のA/F(g)の90[℃](破線)と60[℃](一点鎖線)に応じた補正となるため、目標A/Fの実細線にほぼ一致するA/F(実太線)にすることができる。
アイドル運転状態でヘッドライト等の電気負荷、エアコン等を投入、遮断した場合でもインマニ圧は変動する。このようなインマニ圧の変動に応じて温度補正係数Ccyltを算出し補正していてはA/Fの変動を助長する場合もある。このような場合、アイドル運転状態であると判断した場合には温度補正係数Ccyltの算出を停止する、若しくは燃焼温度基本温度補正係数Ccyltbを算出する温度偏差△Tの判定に不感帯及びヒステリシスを設け、アイドルでの電気負荷、エアコンの投入、遮断によるインマニ圧変動では温度補正係数Ccyltを「1.0」の値となるようにしても良い。
補正係数その他Cotherには、A/F学習補正係数を含み、A/F学習補正係数は、同じく補正係数その他Cotherに含まれるO2センサ108の出力値に基づいて補正量を算出するフィードバック補正係数に基づき補正量を求めて記憶する。温度補正係数が「1.0」以外の値にある場合は、燃焼温度の影響によりA/Fがずれる状態にあるため、その状態でA/F学習を実施すると本来学習したい値とは異なることになるため、温度補正係数が「1.0」以外にあるすなわち温度補正中の場合は、A/Fの学習は実施しないようにする。
図12は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於けるA/Fの学習動作を説明するフローチャートである。図12に於いて、ステップ1301ではA/F学習補正係数の学習実行条件が成立したか否かを判定する。ここで学習実行条件とは、水温が暖機状態である80[℃]以上である、或いは加速直後及び減速直後の燃料補正である加速増量及び減速減量が実施中でない、等の条件を指す。
ステップ1301にてA/F学習補正係数の学習実行条件が成立したと判定される(Y)と、ステップ1302にて温度補正係数が「1.0」であるか否か、即ち温度正係数による補正が行われていないか否かを判定する。その判定の結果、温度補正係数が「1.0」の場合(Y)は、ステップ1303に進んでA/F学習補正係数の学習を、下記の式(5)、式(6)により実行する。
CLRN=CLRN(i−1)+(CFBAVE×α) ・・・・式(5)
CFB =CFB(i−1)−(CFBAVE×α) ・・・・式(6)
CLRN:A/F学習補正係数((i−1)は前回値)
CFBAVE:CFBの平均値
α:反映係数
CFB:フィードバック補正係数((i−1)は前回値)
図13は、この発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置に於けるA/F学習補正係数の学習動作を説明する説明図である。図13に於いて、(a)はスロットル開度、(b)は補正係数、(c)はA/F、(d)はフィードバック補正係数CBF、(e)はA/F学習値を夫々示し、縦軸は各信号若しくは制御量、横軸は時間経過を示す。
図13に於いて、時点Aで減速を開始すると温度補正係数Ccylt(b)が算出され、時点Bまでは温度補正係数Ccyltは「1.0」以外の値を取り、補正が継続される。A/Fフィードバックが実施されている状態では、A/F(c)が目標A/F「14.7」に制御されるようにフィードバック補正係数CFB(d)が、図13の場合はプラス側に制御され続けている。
時点Bでは補正係数(b)の温度補正係数Ccyltが「1.0」となったので、A/F学習が許可されてフィードバック補正係数CFB(d)が「1.0」からプラスにずれている分をA/F学習値(e)に反映し、フィードバック補正係数CFB(d)は「1.0」近傍となる。
フィードバック補正係数CFB(d)のA/F学習値(e)への反映は、フィードバック補正係数CFB(d)が「1.0」からのずれ量を全てA/F学習値(e)に反映せずに、例えば20[%]程度を反映するようにしても良い。
以上述べたようにこの発明の実施の形態1による内燃機関の制御装置によれば、平衡フィルタ温度と温度補正係数算出用温度との温度偏差から燃料量の温度補正係数を算出するもので、温度補正係数の算出は温度偏差と水温のマップとして算出することで、水温が異なることによって加減速後のA/F変動の違いに対しても対応できるため、各機関温度毎に空燃比の制御精度を向上することができ、空燃比のずれを高精度に補償することができるため、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
又、温度補正係数算出用温度の算出に用いる温度補正係数算出用温度フィルタ係数マップは、平衡フィルタ温度と温度補正係数算出用温度の偏差に応じたフィルタ係数を算出するように設定することで、温度補正係数算出用温度が高精度に算出されるために実温度に近い値が推定値として算出され、さらには温度補正係数の算出精度が向上するために、空燃比の制御精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができ、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
更に、温度補正係数は内燃機関回転速度に応じた温度補正係数回転補正係数により補正することで、内燃機関回転速度の違いによって生じるA/Fの違い、即ち必要な補正係数の違いに応じた補正を行うことができ、空燃比の制御精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができるため、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
又、内燃機関回転速度に応じた温度補正係数回転補正係数は、温度偏差の方向に応じて夫々設定することで、平衡フィルタ温度が温度補正係数算出用温度以上である加速時、或いは平衡フィルタ温度が温度補正係数算出用温度以下である減速時の必要な補正量を算出することができ、空燃比の制御精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができるため、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
又、温度補正係数算出用温度フィルタ係数は内燃機関負荷に応じたインマニ圧補正係数により補正することで、内燃機関負荷の違いによって生じるA/Fのずれの違い、即ち必要な補正係数の違いに応じた補正を行うことができ、空燃比の制御精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができるため、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
更に、内燃機関負荷に応じたインマニ圧補正係数は、温度偏差の方向に応じて夫々設定することで、平衡フィルタ温度が温度補正係数算出用温度以上である加速時、或いは平衡フィルタ温度が温度補正係数算出用温度以下である減速時の必要な補正量を算出することができ、空燃比の制御精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができるため、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
又、内燃機関負荷に応じたインマニ圧補正係数は、内燃機関負荷が大きくなるほど内燃機関負荷が小さい場合に比べて相対的に大きくなるように加速用インマニ圧補正係数マップMcylPbA及び減速用インマニ圧補正係数マップMcylPbDが設定されることで、高負荷側であるほど温度補正係数算出用温度が平衡フィルタ温度に早く収束することになり、高負荷側では吸入空気流量が多いことで早く空燃比が収束することに対する過補正を防止することでできるため、空燃比の制御精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができ、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
又、減速燃料カット中の定常平衡温度を通常運転中とは別に算出するようにすることで、通常運転時と比較して発熱量が少ない燃料カット中の温度も高精度に算出できるようになるため、空燃比の制御精度を向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができ、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
更に、温度補正係数が「1.0」以外にある場合は、A/F学習補正係数の更新を実施しないことで、A/F学習補正係数が本来学習すべき値とは異なる値に更新されることを防止することができるため、A/F学習補正係数の学習精度が向上し、空燃比のずれを高精度に補償することができ、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。
又、内燃機関が始動から所定期間を経過していない場合は、始動から内燃機関運転状態が安定するまでの平衡フィルタ温度と温度補正係数算出用温度に偏差がある状態に於いて、不要な温度補正係数が算出されることを防止することで、空燃比の制御精度を向上し、空燃比ずれを高精度に補償することができるため、空燃比のずれによって生じるドラビリ不良、排ガス悪化を防止することができる。