本発明は、空燃比制御性を改善した内燃機関の制御装置に関するものである。
一般に、内燃機関に使用される燃料の燃料性状は様々であり、燃料性状によって燃料噴射弁から噴射される燃料の蒸発特性(気化性)が異なる。このため、燃料の蒸発特性の差が吸気ポート内壁面等に付着する燃料量(ウエット量)の差として現れやすい暖機完了前には、燃料噴射弁の燃料噴射量が同じでも、燃料性状によるウエット量の相違によって気筒内の混合気の実空燃比が目標空燃比からずれてしまうことがある。
この対策として、特許文献1(特開2000−356163号公報)に記載されているように、暖機運転中に筒内圧センサで検出した筒内圧に基づいて図示平均有効圧を算出し、この図示平均有効圧を判定値と比較して燃料の蒸発特性(リード蒸気圧)を判定し、その判定結果に応じて燃料噴射量を補正するようにしたものがある。
また、特許文献2(特開平9−158774号公報)に記載されているように、始動後の所定期間のエンジン回転速度の積算値に基づいて燃料性状を判定し、その判定結果に応じて燃料噴射量を補正するようにしたものがある。
更に、特許文献3(特開2002−97983号公報)に記載されているように、アイドル運転時の目標回転速度と実回転速度との偏差に基づいて燃料性状を判定し、その判定結果に応じて燃料噴射量を補正するようにしたものがある。
特開2000−356163号公報(第4頁等)
特開平9−158774号公報(第4頁等)
特開2002−97983号公報(第3頁等)
しかし、上記特許文献1では、図示平均有効圧に基づいて燃料性状(リード蒸気圧)を判定するため、触媒早期暖機のための点火時期遅角制御等、燃料性状以外の要因で図示平均有効圧が変化した場合に、燃料性状を精度良く判定することができず、燃料噴射量の補正精度(空燃比の補正精度)が低下してしまう。しかも、高価な筒内圧センサを設ける必要があるため、コストアップする。
また、上記特許文献2、3では、エンジン回転速度に基づいて燃料性状を判定するため、補機類(例えばパワーステアリングのポンプ)の負荷入力等、燃料性状以外の要因で回転変動が発生した場合に、燃料性状を精度良く判定することができず、燃料噴射量の補正精度(空燃比の補正精度)が低下してしまう。
しかも、従来の一般的な空燃比制御システムでは、始動直後で空燃比センサの活性前は、空燃比センサで実空燃比を精度良く検出することができないため、実空燃比に基づいた空燃比フィードバック制御を行うことができない。
これらの理由から、従来の空燃比制御システムでは、始動直後に燃料性状の影響等によって実空燃比が目標空燃比からずれた場合に、実空燃比を速やかに目標空燃比に戻すことができず、その間、燃焼状態が悪化して、アイドル回転の低下や排気エミッションの悪化を招いてしまう可能性がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、始動直後から空燃比を精度良く制御することができ、アイドル回転安定性や排気エミッションを向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の内燃機関の制御装置は、アイドル運転時に燃焼状態の情報に基づいて実図示トルク算出手段により実図示トルクを算出すると共に、アイドル運転時に供給物理量の情報に基づいて基準空燃比図示トルク算出手段により基準空燃比における基準空燃比図示トルクを算出し、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとに基づいて推定空燃比算出手段により実空燃比の推定値(以下「推定空燃比」という)を算出するようにしたものである。
アイドル運転時は、車両駆動系を駆動しないため、燃焼状態の情報に基づいて実図示トルクを算出することができ、この実図示トルクは、気筒内で実際に燃焼した混合気の実空燃比を精度良く反映したパラメータとなる。従って、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとを用いれば、実空燃比と基準空燃比との関係を求めることができ、その関係から実空燃比を推定することができる(つまり、推定空燃比を算出することができる)。このようにすれば、始動直後で空燃比センサの活性前から推定空燃比をリアルタイムに算出することができる。その結果、始動直後から推定空燃比に基づいた空燃比制御(燃料噴射量制御)を行うことが可能となり、始動直後に燃料性状の影響等によって実空燃比が目標空燃比からずれた場合でも、始動直後から空燃比を精度良く補正することができ、アイドル回転安定性や排気エミッションを向上させることができる。しかも、筒内圧センサ等の新たなセンサを設ける必要がなく、低コストで実現できる。
この場合、実図示トルクの具体的な算出方法としては、請求項2のように、機関回転速度と機関温度の情報(例えば冷却水温)とに基づいて機械摩擦損失を算出し、吸気管圧力に基づいてポンピング損失を算出すると共に、補機類の作動状態に基づいて外部負荷トルクを算出し、機械摩擦損失とポンピング損失と外部負荷トルクとを足し合わせて実図示トルクを求めるようにしても良い。アイドル運転時は、内部損失トルク(機械摩擦損失とポンピング損失)と、外部負荷トルク(エアコンのコンプレッサ等の補機類の負荷トルク)とを足し合わせたものが実図示トルクとなる。従って、請求項2のようにすれば、機械摩擦損失、ポンピング損失、外部負荷トルクを、それぞれ精度良く算出して、これらを足し合わせた実図示トルクを精度良く算出することができる。
また、基準空燃比図示トルクの具体的な算出方法としては、請求項3のように、吸入空気量と機関回転速度とに基づいて基準空燃比且つ基準点火時期における基準図示トルクを算出すると共に、実点火時期に基づいて図示トルクに対する該実点火時期の点火時期効率(以下「実点火時期効率」という)を算出し、基準図示トルクを実点火時期効率で補正して基準空燃比図示トルクを求めるようにしても良い。
点火時期効率は、基準点火時期のときの図示トルクの大きさを基準にして、点火時期に対応する図示トルクの大きさを相対的に表す無次元パラメータである。従って、基準空燃比且つ基準点火時期における基準図示トルクを実点火時期効率(実点火時期の点火時期効率)で補正することで、基準空燃比且つ実点火時期における基準空燃比図示トルクを求めることができる。これにより、現在の運転条件、つまり、実図示トルクと同じ運転条件(吸入空気量、機関回転速度、点火時期が同じ条件)で、基準空燃比図示トルクを算出することができる。
更に、推定空燃比の具体的な算出方法としては、請求項4のように、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとに基づいて図示トルクに対する実空燃比の空燃比効率(以下「実空燃比効率」という)を算出し、該実空燃比効率に基づいて推定空燃比を算出するようにしても良い。
空燃比効率は、基準空燃比のときの図示トルクの大きさを基準にして、空燃比に対応する図示トルクの大きさを相対的に表す無次元パラメータである。従って、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとを用いれば、実空燃比効率(実空燃比の空燃比効率)を求めることができ、この実空燃比効率を用いて、空燃比効率のマップ(図2参照)等により実空燃比効率応じた推定空燃比(実空燃比の推定値)を逆算することができる。
また、請求項5、20のように、アイドル運転時や空燃比センサの活性前に推定空燃比に基づいて目標空燃比を実現するように燃料噴射量を補正するようにしても良い。このようにすれば、始動直後で空燃比センサの活性前から推定空燃比に基づいて目標空燃比を実現するように燃料噴射量を制御することができるので、始動直後に燃料性状の影響等によって実空燃比が目標空燃比からずれた場合でも、実空燃比を速やかに目標空燃比に収束させることができる。
一般に、アイドル運転時は、アイドル回転速度制御(いわゆるISC)を実行して、実機関回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように吸入空気量をフィードバック制御するが、燃料性状の影響等によって実空燃比がリーンとなって機関回転速度が低下しているときに、吸入空気量が増量補正されると、実空燃比が更にリーン方向に変化して、燃焼状態が更に悪化してしまう可能性がある。
この対策として、請求項6のように、推定空燃比に応じて吸入空気量のフィードバック制御を制限又は停止するようにしても良い。このようにすれば、推定空燃比がリーンになっているときに、吸入空気量のフィードバック制御を制限又は停止することができるので、吸入空気量のフィードバック制御による燃焼状態の悪化を未然に防止することができる。
この場合、請求項7のように、吸入空気量のフィードバック制御が制限又は停止されているときに、実機関回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をフィードバック制御するようにしても良い。このようにすれば、吸入空気量のフィードバック制御を制限又は停止しているときでも、点火時期のフィードバック制御により実機関回転速度を目標アイドル回転速度に制御することができる。
また、請求項8、9のように、空燃比センサの活性後に該空燃比センサで検出した実空燃比と推定空燃比とを比較して該推定空燃比の補正量を学習し、その補正量を推定空燃比の算出に反映するようにしても良い。このようにすれば、空燃比センサで検出した実空燃比を基準にして推定空燃比を補正して推定空燃比の誤差をキャンセルすることができ、制御システムの経時変化や製造ばらつき等の影響を受けずに、推定空燃比を精度良く算出することができる。
ところで、始動直後で暖機完了前の所定期間は、燃料性状(燃料の蒸発特性)の差が最も現れやすく、燃料性状に応じて気筒内に吸入される混合気の実空燃比が変化するため、始動直後の所定期間における推定空燃比(実空燃比の推定値)は、燃料性状を精度良く反映したパラメータとなる。
この点に着目して、請求項10、11のように、始動直後の所定期間における推定空燃比に基づいて使用燃料の燃料性状を判定するようにしても良い。このように、燃料性状と密接な関係にある始動直後の推定空燃比に基づいて燃料性状を判定すれば、従来のように点火時期遅角制御や回転変動等の影響を受けることがなく、燃料性状を精度良く判定することができる。
この場合、請求項12のように、始動直後の所定期間における推定空燃比のピーク値、該推定空燃比と目標空燃比との偏差のピーク値又は積算平均値のいずれかに基づいて燃料性状を判定するようにすると良い。始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定空燃比がリーン方向に変化するため、始動直後の所定期間における推定空燃比のピーク値、該推定空燃比と目標空燃比との偏差のピーク値や積算平均値は、いずれも燃料性状の重質度合を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータを用いれば、燃料性状を精度良く判定することができる。
また、請求項13のように、推定空燃比に基づいて目標空燃比を実現するように燃料噴射量を補正する場合には、始動直後の所定期間における燃料補正比率に基づいて燃料性状を判定するようにしても良い。この場合、推定空燃比に応じて燃料補正比率が変化するため、始動直後の所定期間における燃料補正比率も、燃料性状を精度良く反映したパラメータとなる。従って、始動直後の所定期間における燃料補正比率を用いれば、燃料性状を精度良く判定することができる。
この場合、請求項14のように、始動直後の所定期間における燃料補正比率のピーク値又は積算平均値に基づいて燃料性状を判定するようにすると良い。始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定空燃比がリーン方向に変化して、燃料補正比率が大きくなるため、始動直後の所定期間における燃料補正比率のピーク値や積算平均値は、いずれも燃料性状の重質度合を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータを用いれば、燃料性状を精度良く判定することができる。
尚、前記請求項10では、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとに基づいて算出した推定空燃比に基づいて燃料性状を判定するようにしたが、請求項15のように、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとに基づいて、直接、燃料性状を判定するようにしても良い。このようにしても、燃料性状を精度良く判定することができる。
この場合、請求項16のように、始動直後の所定期間における実図示トルクと基準空燃比図示トルクとのトルク比率のピーク値又は積算平均値に基づいて燃料性状を判定するようにすると良い。始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、実空燃比がリーン方向に変化して、実図示トルクが小さくなり、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとのトルク比率が小さくなるため、始動直後の所定期間におけるトルク比率のピーク値や積算平均値は、いずれも燃料性状の重質度合を精度良く反映したパラメータとなり、これらのパラメータを用いれば、燃料性状を精度良く判定することができる。
ところで、暖機完了前の加減速時には、燃料噴射量が急増又は急減して、噴射燃料のうち吸気ポートの内壁面等に付着するウエット量が蒸発量に対して急増又は急減するため、気筒内に吸入される燃料量(実際に燃焼に寄与する燃料量)が一時的に不足又は過剰となって、ドライバビリティが悪化する可能性がある。
そこで、請求項17のように、燃料性状と機関温度の情報とに基づいて加減速時の燃料噴射量を補正するようにしても良い。燃料性状や機関温度に応じて燃料の蒸発特性が変化してウエット量が変化するため、燃料性状と機関温度の情報(例えば冷却水温)とに基づいて加減速時の燃料噴射量を補正すれば、加減速時のウエット量の挙動に応じて燃料噴射量を増量補正又は減速補正することができ、加減速時に気筒内に吸入される燃料量(実際に燃焼に寄与する燃料量)を適正に制御することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
尚、請求項6では、推定空燃比に応じて吸入空気量のフィードバック制御を制限又は停止するようにしたが、請求項18のように、燃料性状に応じて吸入空気量のフィードバック制御を制限又は停止するようにしても良い。このようにしても、請求項6と同様の効果を得ることができる。更に、請求項19のように、吸入空気量のフィードバック制御が制限又は停止されているときに、実機関回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をフィードバック制御するようにしても良い。これにより、請求項7と同様の効果を得ることができる。
以下、本発明を吸気ポート噴射式のエンジンに適用した実施例1〜13を説明する。
本発明の実施例1を図1乃至図7に基づいて説明する。まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、DCモータ等によって開度調節されるスロットルバルブ15とスロットル開度を検出するスロットル開度センサ16とが設けられている。
更に、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられている。また、サージタンク17には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ21が取り付けられ、各点火プラグ21の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
一方、エンジン11の排気管22には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒23が設けられ、この触媒23の上流側に、排出ガスの空燃比(以下「A/F」と表記する)を検出するA/Fセンサ24が設けられている。
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ25や、エンジン11のクランク軸が一定クランク角(例えば30℃A)回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ26が取り付けられている。このクランク角センサ26の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)27に入力される。このECU27は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁20の燃料噴射量や点火プラグ21の点火時期を制御する。
ところで、始動直後の暖機完了前には、燃料噴射弁20の燃料噴射量が同じでも、燃料性状(燃料の蒸発特性)の影響で気筒内に吸入される混合気の実A/Fが目標A/Fからずれてしまうことがある。
そこで、ECU27は、アイドル運転時に、燃焼状態の情報(エンジン回転速度、冷却水温、吸気管圧力等)に基づいて実図示トルクを算出すると共に、供給物理量の情報(吸入空気量、点火時期等)に基づいて基準A/F(例えば理論A/F=14.7)における基準A/F図示トルクを算出し、実図示トルクと基準A/F図示トルクとに基づいて実A/Fの推定値(以下「推定A/F」という)を算出する。そして、この推定A/Fに基づいて目標A/Fを実現するように燃料噴射量を補正する。
また、ECU27は、アイドル運転時に、アイドル回転速度制御(いわゆるISC)を実行して、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように吸入空気量をフィードバック(以下「F/B」と表記する)制御するが、燃料性状の影響等によって実A/Fがリーンとなってエンジン回転速度が低下しているときに、吸入空気量が増量補正されると、実A/Fが更にリーン方向に変化して、燃焼状態が更に悪化してしまう可能性がある。この対策として、ECU27は、推定A/Fに応じてISCのF/Bゲインを変化させて吸入空気量のF/B制御を制限する又はF/B制御を停止する。
更に、ECU27は、A/Fセンサ24の活性後に、A/Fセンサ24で検出した実A/Fと推定A/Fとを比較して推定A/Fの学習補正値Kを学習し、その学習補正値Kを推定A/Fの算出に反映する。
以下、これらの各機能(推定A/F算出、燃料噴射量補正、吸入空気量制御制限、推定A/F学習補正)について具体的に説明する。
[推定A/F算出]
図2に示すように、ECU27は、アイドル運転時に、実図示トルクを次のようにして算出する。まず、エンジン回転速度と冷却水温(又は油温)とをパラメータとする機械摩擦損失のマップを検索して、現在のエンジン回転速度と冷却水温(又は油温)とに応じた機械摩擦損失を算出する。この機械摩擦損失のマップは、予め、実験データ、設計データ等に基づいて設定され、ECU27のROMに記憶されている。
また、吸気管圧力をパラメータとするポンピング損失のマップを検索して、現在の吸気管圧力に応じたポンピング損失を算出する。このポンピング損失のマップは、予め、実験データ、設計データ等に基づいて設定され、ECU27のROMに記憶されている。
更に、エンジン11の動力で駆動される補機類(エアコンのコンプレッサ、オルタネータ、パワーステアリングのポンプ等)の現在の作動状態に基づいて外部負荷トルクを算出する。
この後、機械摩擦損失とポンピング損失と外部負荷トルクとを足し合わせて実図示トルクを求める。この機能が特許請求の範囲でいう実図示トルク算出手段としての役割を果たす。
一方、ECU27は、アイドル運転時に、基準A/F図示トルクを次のようにして算出する。まず、吸入空気量とエンジン回転速度とをパラメータとする基準図示トルクのマップを検索して、現在の吸入空気量とエンジン回転速度とに応じた基準図示トルクを算出する。この基準図示トルクは、基準A/F(例えば理論A/F=14.7)且つ基準点火時期(例えばMBT)における図示トルクであり、基準図示トルクのマップは、予め、実験データ、設計データ等に基づいて設定され、ECU27のROMに記憶されている。尚、MBT(Minimum advance for the Best Torque )は、トルク・燃料消費率が最良となる点火時期である。
また、吸入空気量とエンジン回転速度とをパラメータとするMBTのマップを検索して、現在の吸入空気量とエンジン回転速度とに応じたMBTを算出する。このMBTのマップは、予め、実験データ、設計データ等に基づいて設定され、ECU27のROMに記憶されている。
MBTの算出後、MBTと実点火時期との差(MBTからの遅角量)を算出し、このMBTからの遅角量に応じた実点火時期効率を算出する。
ここで、点火時期効率は、点火遅角量が図示トルクに及ぼす影響を評価するための無次元パラメータであり、図2に示すように、MBTからの遅角量に応じてマップにより設定され、MBTからの遅角量が0のときに図示トルクが最大になることから、MBTからの遅角量が0のときに点火時期効率=1に設定される。つまり、点火時期効率は、MBTからの遅角量が0のときの図示トルクの大きさを「1」とし、これを基準にして、MBTからの遅角量に対応する図示トルクの大きさを相対的に表すものである。点火時期効率のマップは、予め、実験データ、設計データ等に基づいて設定され、ECU27のROMに記憶されている。
実点火時期効率を算出する場合は、点火時期効率のマップを検索して、現在のMBTと実点火時期との差(MBTからの遅角量)に応じた実点火時期効率を算出する。
この後、基準図示トルクに実点火時期効率を乗算して基準A/F図示トルクを求める。これにより、現在の運転条件、つまり、実図示トルクと同じ運転条件(吸入空気量、エンジン回転速度、点火時期が同じ条件)で、基準A/Fにおける基準A/F図示トルクを算出する。この機能が特許請求の範囲でいう基準空燃比図示トルク算出手段としての役割を果たす。
以上のようにして、実図示トルクと基準A/F図示トルクを算出した後、実図示トルクを基準A/F図示トルクで除算してトルク比率を求めて、それを実A/F効率とし、この実A/F効率に応じた推定A/Fを算出する。
ここで、A/F効率は、A/Fが図示トルクに及ぼす影響を評価するための無次元パラメータであり、図2に示すように、A/Fに応じてマップにより設定され、A/Fが理論A/F(14・7)のときにA/F効率=1に設定される。つまり、A/F効率は、A/F=14・7のときの図示トルクの大きさを「1」とし、これを基準にして、A/Fに対応する図示トルクの大きさを相対的に表すものである。A/F効率のマップは、予め、実験データ、設計データ等に基づいて設定され、ECU27のROMに記憶されている。
推定A/Fを算出する場合は、実図示トルクと基準A/F図示トルクとから求めた実A/F効率を用いて、A/F効率のマップにより実A/F効率に応じたA/Fを逆算し、それを推定A/Fとする。この機能が特許請求の範囲でいう推定空燃比算出手段としての役割を果たす。
尚、推定A/Fの算出方法は、適宜変更しても良く、アイドル運転時に、燃焼状態の情報(エンジン回転速度、冷却水温又は油温、吸気管圧力、補機類の作動状態等)に基づいて実図示トルクを算出すると共に、供給物理量の情報(吸入空気量、点火時期、燃料噴射量、目標A/F等)に基づいて基準A/F図示トルクを算出し、実図示トルクと基準A/F図示トルクとに基づいて推定空燃比を算出すれば良い。
[燃料噴射量補正]
図3に示すように、ECU27は、アイドル運転時に、燃料噴射量を次のようにして算出する。まず、吸入空気量、エンジン回転速度、冷却水温(又は油温)、目標A/F等に基づいてベース燃料噴射量を算出する。そして、目標A/Fを推定A/F(図2の方法で算出した推定A/F)で除算して燃焼寄与燃料比率(燃料噴射弁20から噴射された燃料のうち実際に燃焼に寄与している燃料の比率)を求めた後、この燃焼寄与燃料比率でベース燃料噴射量を除算して補正することで、目標A/Fを実現する最終燃料噴射量を求める。この機能が特許請求の範囲でいう燃料噴射量補正手段としての役割を果たす。尚、この推定A/Fに基づいた燃料噴射量補正は、次に説明するように吸入空気量のF/B制御を制限して点火時期F/B制御を実行した場合に、推定A/Fが所定値よりもリーンでトルクが回復しないときに、実行するようにしても良い。
[吸入空気量制御制限]
図4に示すように、ECU27は、アイドル運転時に、ISC(アイドル回転速度制御)を次のようにして行う。実エンジン回転速度と目標アイドル回転速度との偏差に基づいて今回のF/B更新量を算出し、このF/B更新量に後述するF/Bゲインを乗算した値を、前回のF/B補正量に加算して最終的なF/B補正量を求める。
F/B補正量=F/B補正量(前回値)+F/B更新量×F/Bゲイン
これにより、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように吸入空気量をF/B制御する。この機能が特許請求の範囲でいうアイドル吸入空気量制御手段としての役割を果たす。
その際、F/Bゲインは、推定A/FをパラメータとするF/Bゲインのマップを検索して、現在の推定A/Fに応じたF/Bゲインを算出する。このF/Bゲインのマップは、推定A/Fが第1の所定値(例えば16)及びそれよりもリッチの領域では、F/Bゲインが「1」に固定されるが、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンの領域では、推定A/Fがリーンになるに従ってF/Bゲインが徐々に小さくなり、推定A/Fが第2の所定値(例えば20)よりもリーンの領域では、F/Bゲインが「0」に固定されるように設定されている。
これにより、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンになるに従ってF/B更新量が徐々小さくなって吸入空気量のF/B速度が徐々に遅くなり、更に、推定A/Fが第2の所定値よりもリーンになるとF/B更新量が0になって吸入空気量のF/B制御が停止される。この機能が特許請求の範囲でいう吸入空気量制御制限手段としての役割を果たす。その後、燃料噴射量補正により推定A/Fが第2の所定値よりもリッチになったときに、吸入空気量のF/B制御が再開される。
また、ECU27は、吸入空気量のF/B制御が制限又は停止されているとき(つまり、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンのとき)に、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をF/B制御する。この機能が特許請求の範囲でいうアイドル点火時期制御手段としての役割を果たす。尚、吸入空気量のF/B制御が停止されているとき(つまり、推定A/Fが第2の所定値よりもリーンのとき)だけ、点火時期のF/B制御を実行するようにしても良い。
[推定A/F学習補正]
ECU27は、推定A/Fを次のようにして学習補正する。図5に示すように、A/Fセンサ24の活性後に、A/Fセンサ24で検出した実A/Fを推定A/F(図2の方法で算出した推定A/F)で除算して学習補正値Kを求め、この学習補正値Kを推定A/Fに乗算して推定A/Fを補正し、最終的な推定A/Fを求める。
更に、図6に示す学習補正値Kのマップにおいて、現在のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度と冷却水温又は油温)が、いずれの運転領域であるかを判定する。この学習補正値Kのマップは、エンジン回転速度と冷却水温又は油温とをパラメータとする複数の運転領域に区分され、各運転領域毎に、それぞれ学習補正値Kが記憶されている。そして、今回求めた学習補正値Kで該当する運転領域の学習補正値Kを更新する。
一方、A/Fセンサ24の活性前に推定A/Fを算出する場合には、図6に示す学習補正値Kのマップを検索して、現在のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度と冷却水温又は油温)に対応する運転領域の学習補正値Kのマップを読み込み、この学習補正値Kを推定A/F(図2の方法で算出した推定A/F)に乗算して推定A/Fを補正し、最終的な推定A/Fを求める。この機能が特許請求の範囲でいう学習補正手段としての役割を果たす。
従来の空燃比制御システムでは、始動直後でA/Fセンサの活性前は、A/Fセンサ出力(実A/F)に基づいた空燃比F/B制御を行うことができないため、図7のタイムチャートに示すように、始動直後に燃料性状の影響等によって実A/Fが目標A/F(例えば14.7)からずれた場合に、実A/Fを速やかに目標A/Fに戻すことができず、その間、燃焼状態が悪化して、アイドル回転の低下や排気エミッションの悪化を招いてしまう可能性がある。
これに対して、本実施例1では、アイドル運転時に、実図示トルクと基準A/F図示トルクとを算出し、両者の関係から求めた実A/F効率から推定A/F(実A/Fの推定値)を算出するようにしたので、始動直後でA/Fセンサ24の活性前から推定A/Fをリアルタイムに算出することができる。その結果、図7のタイムチャートに示すように、始動直後から推定A/Fに基づいて目標A/F(例えば14.7)を実現するように燃料噴射量を補正することが可能となり、始動直後に燃料性状の影響等によって実A/Fが目標A/Fからずれた場合でも、始動直後から燃料噴射量を精度良く補正することができて、実A/Fを速やかに目標A/Fに収束させることができ、アイドル回転安定性や排気エミッションを向上させることができる。しかも、筒内圧センサ等の新たなセンサを設ける必要がなく、低コストの要求も満たすことができる。
また、燃料性状の影響等によって実A/Fがリーンとなってエンジン回転速度が低下しているときに、ISCにより吸入空気量が増量補正されると、実A/Fが更にリーン方向に変化して、燃焼状態が更に悪化してしまう可能性があるが、本実施例1では、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンになるに従って吸入空気量のF/Bゲインを小さくしてF/B速度を遅くし、更に、推定A/Fが第2の所定値よりもリーンのときに吸入空気量のF/Bゲインを0にしてF/B制御を停止するようにしたので、アイドル運転時に、吸入空気量のF/B制御による燃焼状態の悪化を未然に防止することができる。
尚、本実施例1では、推定A/Fがリーンになるに従ってF/Bゲインが徐々に小さくなるようにしたが、推定A/Fが所定値よりもリーンになったときにF/Bゲインをそれまでよりも小さい値(固定値)又は0切り換えるようにしても良い。
更に、本実施例1では、吸入空気量のF/B制御が制限又は停止されているときに、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をF/B制御するようにしたので、吸入空気量のF/B制御を制限又は停止しているときでも、点火時期のF/B制御により実エンジン回転速度を目標アイドル回転速度に制御することができる。
また、本実施例1では、A/Fセンサ24の活性後に、A/Fセンサ24で検出した実A/Fと推定A/Fとを比較して推定A/Fの学習補正値Kを学習し、A/Fセンサ24の活性前に推定A/Fを算出する場合に、学習補正値Kで推定A/Fを補正して、最終的な推定A/Fを求めるようにしたので、A/Fセンサ24で検出した実A/Fを基準にして推定A/Fを補正して推定A/Fの誤差をキャンセルすることができ、制御システムの経時変化や製造ばらつき等の影響を受けずに、推定A/Fを精度良く算出することができる。
前記実施例1では、推定A/Fに応じてISC(アイドル回転速度制御)のF/Bゲインを変化させて吸入空気量のF/B制御を制限又は停止するようにしたが、図8に示す本発明の実施例2では、推定A/Fに応じてISCのF/B補正量の上限ガード値及び下限ガード値を変化させて吸入空気量のF/B制御を制限又は停止するようにしている。
図8に示すように、本実施例2では、推定A/Fをパラメータとする上限ガード値のマップを検索して、現在の推定A/Fに応じた上限ガード値を算出する。この上限ガード値のマップは、推定A/Fが第1の所定値(例えば16)及びそれよりもリッチの領域では、上限ガード値が所定値(例えば2)に固定されるが、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンの領域では、推定A/Fがリーンになるに従って上限ガード値が徐々に0に近くなり、推定A/Fが第2の所定値(例えば20)よりもリーンの領域では、上限ガード値が「0」に固定されるように設定されている。
更に、推定A/Fをパラメータとする下限ガード値のマップを検索して、現在の推定A/Fに応じた下限ガード値を算出する。この下限ガード値のマップは、推定A/Fが第1の所定値(例えば16)及びそれよりもリッチの領域では、下限ガード値が所定値(例えば−2)に固定されるが、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンの領域では、推定A/Fがリーンになるに従って下限ガード値が徐々に0に近くなり、推定A/Fが第2の所定値(例えば20)よりもリーンの領域では、下限ガード値が「0」に固定されるように設定されている。
そして、今回演算したF/B補正量を上限ガード値及び下限ガード値でガード処理して最終的なF/B補正量を求める。これにより、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンになるに従ってF/B補正量が0に近くなり、更に、推定A/Fが第2の所定値よりもリーンになるとF/B補正量が0になって吸入空気量のF/B制御が停止される。その後、燃料噴射量補正により推定A/Fが第2の所定値よりもリッチになったときに、吸入空気量のF/B制御が再開される。
また、吸入空気量のF/B制御が制限又は停止されているとき(つまり、推定A/Fが第1の所定値よりもリーンのとき)に、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をF/B制御する。尚、吸入空気量のF/B制御が停止されているとき(つまり、推定A/Fが第2の所定値よりもリーンのとき)だけ、点火時期のF/B制御を実行するようにしても良い。
以上説明した本実施例2のようにしても、アイドル運転時に、吸入空気量のF/B制御による燃焼状態の悪化を未然に防止しながら、点火時期のF/B制御により実エンジン回転速度を目標アイドル回転速度に制御することができる。
尚、本実施例2では、推定A/Fがリーンになるに従って上限ガード値及び下限ガード値が徐々に0に近くなるようにしたが、推定A/Fが所定値よりもリーンになったときに上限ガード値及び下限ガード値をそれまでよりも0に近い値(固定値)又は0切り換えるようにしても良い。
ところで、始動直後で暖機完了前の所定期間は、燃料性状(燃料の蒸発特性)の差が最も現れやすく、燃料性状に応じて気筒内に吸入される混合気の実A/Fが変化するため、始動直後の所定期間における推定A/F(実A/Fの推定値)は、燃料性状を精度良く反映したパラメータとなる。この点に着目して、図9に示す本発明の実施例3では、始動直後の所定期間における推定A/Fのピーク値に基づいて使用燃料の燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図9に示すように、まず、前記実施例1(図2参照)と同じ方法で推定A/Fを算出する。この後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)における推定A/Fのピーク値に応じて燃料性状を判定する。この機能が特許請求の範囲でいう燃料性状判定手段としての役割を果たす。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定A/Fがリーン方向に変化して、推定A/Fのピーク値が大きくなるため、図9の燃料性状の判定マップは、推定A/Fのピーク値が第1の所定値(例えば16)及びそれよりもリッチの領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、推定A/Fのピーク値が第1の所定値よりもリーンの領域では、推定A/Fのピーク値がリーンになるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、推定A/Fのピーク値が第2の所定値(例えば20)よりもリーンの領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
以上説明した本実施例3では、燃料性状と密接な関係にある始動直後の所定期間の推定A/Fに基づいて燃料性状を判定するようにしたので、従来のように点火時期遅角制御や回転変動等の影響を受けることがなく、燃料性状を精度良く判定することができる。
前記実施例3では、始動直後の所定期間における推定A/Fのピーク値に応じて燃料性状を判定するようにしたが、図10に示す本発明の実施例4では、始動直後の所定期間における推定A/Fと目標A/Fとの偏差のピーク値に応じて燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図10に示すように、まず、前記実施例1(図2参照)と同じ方法で推定A/Fを算出した後、この推定A/Fと目標A/Fとの偏差を算出する。この後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)における推定A/Fと目標A/Fとの偏差のピーク値(以下単に「推定A/Fの偏差ピーク値」という)に応じて燃料性状を判定する。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定A/Fがリーン方向に変化して、推定A/Fと目標A/Fとの偏差が大きくなるため、図10の燃料性状の判定マップは、推定A/Fの偏差ピーク値が第1の所定値(例えば1)以下の領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、推定A/Fの偏差ピーク値が第1の所定値よりも大きい領域では、推定A/Fの偏差ピーク値が大きくなるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、推定A/Fの偏差ピーク値が第2の所定値(例えば5)よりも大きい領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
尚、図10の括弧内に示すように、燃料性状の判定を簡易化して、推定A/Fの偏差ピーク値が所定値(例えば3)よりも大きいか否かによって燃料性状が重質であるか否かを判定するようにしても良い。
以上説明した本実施例4のようにしても燃料性状を精度良く判定することができる。
図11に示す本発明の実施例5では、始動直後の所定期間における推定A/Fと目標A/Fとの偏差の積算平均値に応じて燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図11に示すように、まず、前記実施例1(図2参照)と同じ方法で推定A/Fを算出した後、この推定A/Fと目標A/Fとの偏差を算出する。この後、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)における推定A/Fと目標A/Fとの偏差の積算平均値(以下単に「推定A/Fの偏差積算平均値」という)を算出した後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間における推定A/Fの偏差積算平均値に応じて燃料性状を判定する。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定A/Fがリーン方向に変化して、推定A/Fと目標A/Fとの偏差の積算平均値が大きくなるため、図11の燃料性状の判定マップは、推定A/Fの偏差積算平均値が第1の所定値(例えば1)以下の領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、推定A/Fの偏差積算平均値が第1の所定値よりも大きい領域では、推定A/Fの偏差積算平均値が大きくなるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、推定A/Fの偏差積算平均値が第2の所定値(例えば3)よりも大きい領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
尚、図11の括弧内に示すように、燃料性状の判定を簡易化して、推定A/Fの偏差積算平均値が所定値(例えば2)よりも大きいか否かによって燃料性状が重質であるか否かを判定するようにしても良い。
以上説明した本実施例5のようにしても燃料性状を精度良く判定することができる。
図12に示す本発明の実施例6では、推定A/Fに基づいて目標A/Fを実現するように燃料噴射量を補正する場合に、始動直後の所定期間における燃料補正比率のピーク値に基づいて燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図12に示すように、まず、前記実施例1の図3と同じ方法で推定A/Fに基づいて目標A/Fを実現するようにベース燃料噴射量を補正して最終燃料噴射量を求めた後、この最終燃料噴射量をベース燃料噴射量で除算して燃料補正比率を求める。この後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)における燃料補正比率のピーク値に応じて燃料性状を判定する。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定A/Fがリーン方向に変化して、燃料補正比率が大きくなるため、図12の燃料性状の判定マップは、燃料補正比率が第1の所定値(例えば1.1)以下の領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、燃料補正比率が第1の所定値よりも大きい領域では、燃料補正比率が大きくなるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、燃料補正比率が第2の所定値(例えば1.5)よりも大きい領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
尚、図12の括弧内に示すように、燃料性状の判定を簡易化して、燃料補正比率が所定値(例えば1.3)よりも大きいか否かによって燃料性状が重質であるか否かを判定するようにしても良い。
以上説明した本実施例6のようにしても燃料性状を精度良く判定することができる。
図13に示す本発明の実施例7では、始動直後の所定期間における燃料補正比率の積算平均値に基づいて燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図13に示すように、まず、前記実施例6(図12参照)と同じ方法で燃料補正比率を算出した後、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)における燃料補正比率の積算平均値を算出する。この後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間における燃料補正比率の積算平均値に応じて燃料性状を判定する。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、推定A/Fがリーン方向に変化して、燃料補正比率の積算平均値が大きくなるため、図13の燃料性状の判定マップは、燃料補正比率の積算平均値が第1の所定値(例えば1.05)以下の領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、燃料補正比率の積算平均値が第1の所定値よりも大きい領域では、燃料補正比率の積算平均値が大きくなるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、燃料補正比率の積算平均値が第2の所定値(例えば1.3)よりも大きい領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
尚、図13の括弧内に示すように、燃料性状の判定を簡易化して、燃料補正比率の積算平均値が所定値(例えば1.2)よりも大きいか否かによって燃料性状が重質であるか否かを判定するようにしても良い。
以上説明した本実施例7のようにしても燃料性状を精度良く判定することができる。
尚、前記各実施例3〜7では、前記実施例1(図2参照)と同じ方法で算出した推定A/F(又は該推定A/Fに基づいた燃料補正比率)に基づいて燃料性状を判定するようにしたが、推定A/Fの算出方法は、前記実施例1の方法に限定されず、適宜変更しても良い。
前記各実施例3〜7では、実図示トルクと基準A/F図示トルクとに基づいて算出した推定A/Fに基づいて燃料性状を判定するようにしたが、図14に示す本発明の実施例8では、実図示トルクと基準A/F図示トルクとのトルク比率に基づいて、直接、燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図14に示すように、まず、前記実施例1(図2参照)と同じ方法で実図示トルクと基準A/F図示トルクとを算出した後、実図示トルクを基準A/F図示トルクで除算してトルク比率を求める。この後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)におけるトルク比率のピーク値に応じて燃料性状を判定する。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、実A/Fがリーン方向に変化して、実図示トルクが小さくなり、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとのトルク比率のピーク値が小さくなるため、図14の燃料性状の判定マップは、トルク比率のピーク値が第1の所定値(例えば0.9)以上の領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、トルク比率のピーク値が第1の所定値よりも小さい領域では、トルク比率のピーク値が小さくなるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、トルク比率のピーク値が第2の所定値(例えば0.7)よりも小さい領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
尚、図14の括弧内に示すように、燃料性状の判定を簡易化して、トルク比率のピーク値が所定値(例えば0.8)よりも小さいか否かによって燃料性状が重質であるか否かを判定するようにしても良い。
以上説明した本実施例8のようにしても燃料性状を精度良く判定することができる。
前記実施例8では、始動直後の所定期間におけるトルク比率のピーク値に基づいて燃料性状を判定するようにしたが、図15に示す本発明の実施例9では、始動直後の所定期間におけるトルク比率の積算平均値に基づいて燃料性状を判定するようにしている。
具体的には、図15に示すように、まず、前記実施例8(図14参照)と同じ方法でトルク比率を算出した後、始動直後の所定期間(例えば始動完了の1秒後から20秒後までの期間)におけるトルク比率の積算平均値を算出する。この後、燃料性状の判定マップを用いて、始動直後の所定期間におけるトルク比率の積算平均値に応じて燃料性状を判定する。
始動直後の所定期間は、燃料性状が重質なほど(燃料の蒸発性が低いほど)、実A/Fがリーン方向に変化して、実図示トルクが小さくなり、実図示トルクと基準空燃比図示トルクとのトルク比率の積算平均値が小さくなるため、図15の燃料性状の判定マップは、トルク比率の積算平均値が第1の所定値(例えば0.95)以上の領域では、燃料性状の重質度合が標準であると判定され、トルク比率の積算平均値が第1の所定値よりも小さい領域では、トルク比率の積算平均値が小さくなるに従って燃料性状の重質度合が徐々に高くなり、トルク比率の積算平均値が第2の所定値(例えば0.8)よりも小さい領域では、燃料性状の重質度合が最も高いレベルであると判定されるように設定されている。
尚、図15の括弧内に示すように、燃料性状の判定を簡易化して、トルク比率の積算平均値が所定値(例えば0.9)よりも小さいか否かによって燃料性状が重質であるか否かを判定するようにしても良い。
以上説明した本実施例9のようにしても燃料性状を精度良く判定することができる。
尚、前記各実施例8、9では、実図示トルクと基準A/F図示トルクとのトルク比率に基づいて燃料性状を判定するようにしたが、実図示トルクと基準A/F図示トルクとのトルク偏差に基づいて燃料性状を判定するようにしても良い。
ところで、暖機完了前の加減速時には、燃料噴射量が急増又は急減して、噴射燃料のうち吸気ポートの内壁面等に付着するウエット量が蒸発量に対して急増又は急減するため、気筒内に吸入される燃料量(実際に燃焼に寄与する燃料量)が一時的に不足又は過剰となって、ドライバビリティが悪化する可能性がある。
そこで、図16に示す本発明の実施例10では、燃料性状や機関温度に応じて燃料の蒸発特性が変化してウエット量が変化することを考慮して、加速時及び減速時に、燃料性状と機関温度の情報(冷却水温又は油温)とをパラメータする過渡時燃料補正率のマップを検索して、燃料性状と機関温度の情報(冷却水温又は油温)とに応じた過渡時燃料補正率を算出する。そして、この過渡時燃料補正率を用いて、加速時には燃料噴射量を増量補正し、減速時には燃料噴射量を減量補正するようにしている。
尚、図16の過渡時燃料補正率のマップでは、燃料性状を標準と重質の2段階に区分したが、燃料性状を3段階以上に区分しても良い。また、燃料補正率の代わりに、燃料付着率や燃料蒸発率を求めて、この燃料付着率や燃料蒸発率を用いて、加速時及び減速時の燃料噴射量を補正するようにしても良い。
以上説明した本実施例10では、加速時及び減速時に、燃料性状と機関温度の情報(冷却水温又は油温)とに応じた過渡時燃料補正率を用いて燃料噴射量を補正するようにしたので、加減速時のウエット量の挙動に応じて燃料噴射量を増量補正又は減速補正することができて、加減速時に気筒内に吸入される燃料量(実際に燃焼に寄与する燃料量)を適正に制御することができ、ドライバビリティを向上させることができる。
前記実施例1では、アイドル運転時に、推定A/Fに応じて吸入空気量のF/B制御を制限又は停止するようにしたが、図17に示す本発明の実施例11では、アイドル運転時(但し、暖機運転中のみ)に、燃料性状に応じて吸入空気量のF/B制御を制限又は停止するようにしている。
本実施例11では、図17に示すように、暖機運転中(例えば冷却水温が60℃以下のとき)に、燃料性状(重質度合)をパラメータとするF/Bゲインのマップを検索して、燃料性状に応じたF/Bゲインを算出する。このF/Bゲインのマップは、燃料性状の重質度合が標準の領域では、F/Bゲインが「1」に固定されるが、燃料性状の重質度合が標準よりも高い領域では、燃料性状の重質度合が高くなるに従ってF/Bゲインが徐々に小さくなり、燃料性状の重質度合が最も高いレベルの領域では、F/Bゲインが「0」に固定されるように設定されている。
これにより、燃料性状の重質度合が高くなるに従ってF/B更新量が徐々小さくなって吸入空気量のF/B速度が徐々に遅くなり、更に、燃料性状の重質度合が最も高いレベルになるとF/B更新量が0になって吸入空気量のF/B制御が停止される。
また、吸入空気量のF/B制御が制限又は停止されているとき(つまり、燃料性状の重質度合が標準よりも高いとき)に、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をF/B制御する。尚、吸入空気量のF/B制御が停止されているとき(つまり、燃料性状の重質度合が最も高いレベルのとき)だけ、点火時期のF/B制御を実行するようにしても良い。
以上説明した本実施例11のようにしても、アイドル運転時に、吸入空気量のF/B制御による燃焼状態の悪化を未然に防止しながら、点火時期のF/B制御により実エンジン回転速度を目標アイドル回転速度に制御することができる。
尚、本実施例11では、燃料性状の重質度合が高くなるに従ってF/Bゲインが徐々に小さくなるようにしたが、燃料性状の重質度合が所定レベルよりも高くなったときにF/Bゲインをそれまでよりも小さい値(固定値)又は0切り換えるようにしても良い。
前記実施例11では、アイドル運転時(但し、暖機運転中のみ)に、燃料性状に応じてF/Bゲインを変化させて吸入空気量のF/B制御を制限又は停止するようにしたが、図18に示す本発明の実施例12では、アイドル運転時(但し、暖機運転中のみ)に、燃料性状に応じてF/B補正量の上限ガード値及び下限ガード値を変化させて吸入空気量のF/B制御を制限又は停止するようにしている。
本実施例12では、図18に示すように、燃料性状(重質度合)をパラメータとする上限ガード値のマップを検索して、燃料性状に応じた上限ガード値を算出する。この上限ガード値のマップは、燃料性状の重質度合が標準の領域では、上限ガード値が所定値(例えば2)に固定されるが、燃料性状の重質度合が標準よりも高い領域では、燃料性状の重質度合が高くなるに従って上限ガード値が徐々に0に近くなり、燃料性状の重質度合が最も高いレベルの領域では、上限ガード値が「0」に固定されるように設定されている。
更に、燃料性状(重質度合)をパラメータとする下限ガード値のマップを検索して、燃料性状に応じた下限ガード値を算出する。この下限ガード値のマップは、燃料性状の重質度合が標準の領域では、下限ガード値が所定値(例えば−2)に固定されるが、燃料性状の重質度合が標準よりも高い領域では、燃料性状の重質度合が高くなるに従って下限ガード値が徐々に0に近くなり、燃料性状の重質度合が最も高いレベルの領域では、下限ガード値が「0」に固定されるように設定されている。
そして、今回演算したF/B補正量を上限ガード値及び下限ガード値でガード処理して最終的なF/B補正量を求める。これにより、燃料性状の重質度合が高くなるに従ってF/B補正量が0に近くなり、更に、燃料性状の重質度合が最も高いレベルになるとF/B補正量が0になって吸入空気量のF/B制御が停止される。
また、吸入空気量のF/B制御が制限又は停止されているとき(つまり、燃料性状の重質度合が標準よりも高いとき)に、実エンジン回転速度が目標アイドル回転速度に一致するように点火時期をF/B制御する。尚、吸入空気量のF/B制御が停止されているとき(つまり、燃料性状の重質度合が最も高いレベルのとき)だけ、点火時期のF/B制御を実行するようにしても良い。
以上説明した本実施例12のようにしても、アイドル運転時に、吸入空気量のF/B制御による燃焼状態の悪化を未然に防止しながら、点火時期のF/B制御により実エンジン回転速度を目標アイドル回転速度に制御することができる。
尚、本実施例12では、燃料性状の重質度合が高くなるに従って上限ガード値及び下限ガード値が徐々に0に近くなるようにしたが、燃料性状の重質度合が所定レベルよりも高くなったときに上限ガード値及び下限ガード値をそれまでよりも0に近い値(固定値)又は0切り換えるようにしても良い。
次に、図19及び図20を用いて本発明の実施例13を説明する。
本実施例13では、例えばアイドル運転時に、図19に示すA/F判定プログラムを所定周期で実行して、A/Fセンサ24が活性状態であるか否かを判定し(ステップ101)、A/Fセンサ24の活性前であれば、前記実施例1(図2参照)と同じ方法で算出した推定A/F又はその他の方法で算出した推定A/Fを、実A/Fとして採用する(ステップ102)。一方、A/Fセンサ24の活性後であれば、A/Fセンサ24で検出した検出A/Fを、実A/Fとして採用する(ステップ103)。
そして、図20に示すように、燃料噴射量を次のようにして算出する。まず、吸入空気量、エンジン回転速度、冷却水温(又は油温)、目標A/F等に基づいてベース燃料噴射量を算出する。そして、目標A/Fを実A/F(図19のA/F判定プログラムで採用した実A/F)で除算して燃焼寄与燃料比率(燃料噴射弁20から噴射された燃料のうち実際に燃焼に寄与している燃料の比率)を求めた後、この燃焼寄与燃料比率でベース燃料噴射量を除算して補正することで、目標A/Fを実現する最終燃料噴射量を求める。
尚、A/Fセンサ24の活性後は、実A/Fが目標A/Fに一致するように燃料噴射量をF/B制御する空燃比F/B制御を実行するようにしても良い。
以上説明した実施例13では、A/Fセンサ24の活性前に、推定A/Fを実A/Fとして採用し、この実A/Fに基づいて目標A/Fを実現するように燃料噴射量を補正するようにしたので、始動直後に燃料性状の影響等によって実A/Fが目標A/Fからずれた場合でも、始動直後でA/Fセンサ24の活性前から燃料噴射量を精度良く補正することができ、実A/Fを速やかに目標A/Fに収束させることができる。
尚、上記各実施例1〜13では、本発明を吸気ポート噴射式のエンジンに適用したが、これに限定されず、本発明を筒内噴射式のエンジンに適用しても良い。
本発明の実施例1におけるエンジン制御システム全体の概略構成図である。
実施例1の推定A/F算出を説明するためのブロック図である。
実施例1の燃料噴射量補正を説明するためのブロック図である。
実施例1の吸入空気量制御制限を説明するためのブロック図である。
実施例1の推定A/F学習補正を説明するためのブロック図である。
実施例1の学習補正値Kのマップを概念的に示す図である。
実施例1の実行例を示すタイムチャートである。
実施例2の吸入空気量制御制限を説明するためのブロック図である。
実施例3の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例4の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例5の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例6の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例7の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例8の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例9の燃料性状判定を説明するためのブロック図である。
実施例10の過渡時燃料補正率のマップを概念的に示す図である。
実施例11の吸入空気量制御制限を説明するためのブロック図である。
実施例12の吸入空気量制御制限を説明するためのブロック図である。
実施例13のA/F判定プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
実施例13の燃料噴射量補正を説明するためのブロック図である。
符号の説明
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、14…エアフローメータ、15…スロットルバルブ、18…吸気管圧力センサ、20…燃料噴射弁、21…点火プラグ、22…排気管、24…A/Fセンサ、25…冷却水温センサ、26…クランク角センサ、27…ECU(実図示トルク算出手段,基準空燃比図示トルク算出手段,推定空燃比算出手段,燃料噴射量補正手段,アイドル吸入空気量制御手段,吸入空気量制御制限手段,アイドル点火時期制御手段,学習補正手段,燃料性状判定手段)