JP4821064B2 - 紙基材フェノール樹脂銅張積層板 - Google Patents

紙基材フェノール樹脂銅張積層板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐トラッキング性及び難燃性に優れる紙基材フェノール樹脂銅張積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
民生用電子機器のプリント配線板に用いられる紙基材フェノール樹脂銅張積層板は、フェノール樹脂を含浸した紙基材と銅はくを重ね合わせ、加熱加圧して製造される。低温での打抜加工性と、難燃性,耐トラッキング性とを満足させるために、紙基材に水溶性メラミン樹脂又は水溶性フェノール樹脂を含浸した後、桐油変性フェノール樹脂を含浸することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
水溶性フェノール樹脂を用いた場合には、難燃性と耐トラッキング性が十分でなく、一方、水溶性メラミン樹脂を用いた場合には、耐熱性が十分でないという問題点がある。
本発明は、難燃性、耐トラッキング性、耐熱性に優れる紙基材フェノール樹脂銅張積層板を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定濃度の窒素を含有するフェノール樹脂組成物を紙基材の下塗りワニスとして用いることにより、難燃性、耐トラッキング性、耐熱性に優れる紙基材フェノール樹脂銅張積層板が得られることを見出したものである。
すなわち、本発明は、固形分の窒素含有率が10〜50重量%である下塗り用フェノール樹脂組成物を用いて含浸乾燥処理した紙基材に、フェノール樹脂ワニスを含浸乾燥処理して得られたプリプレグと銅箔とを積層成形してなる紙基材フェノール樹脂銅張積層板に関する。
【0005】
また、本発明は、下塗り用フェノール樹脂組成物が、メラミンとホルムアルデヒドの反応生成物にフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られる組成物である上記の紙基材フェノール樹脂銅張積層板に関する。
また、本発明は、メラミンとホルムアルデヒドの反応生成物が、pH7〜10のホルムアルデヒド溶液にメラミンを添加して反応させた反応生成物である上記の紙基材フェノール樹脂銅張積層板に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる、固形分の窒素含有率が10〜50重量%である下塗り用フェノール樹脂組成物は、例えば、メラミンにホルムアルデヒドを反応させて得られるメラミン樹脂に、フェノール樹脂の原料成分であるフェノール類とホルムアルデヒドとを配合して反応させることにより、また、フェノール樹脂に、メラミン樹脂の成分であるメラミンとホルムアルデヒドとを配合して反応させることにより、また、個別に合成したフェノール樹脂とメラミン樹脂とを混合することにより、また、フェノール類とアミノ化合物とホルムアルデヒドとを同時に反応させることにより得られる。
得られた下塗り用フェノール樹脂組成物の固形分の窒素含有率が10重量%未満では、耐トラッキング性、難燃性向上効果が十分に得られない。また、窒素含有率が50重量%を超えると、はんだ耐熱性や気中耐熱性などの耐熱性、耐湿性が低下する。窒素含有率のより好ましい範囲は20〜40重量%である。なお、本発明における窒素含有率はフェノール樹脂組成物を130℃で10分間乾燥して得た固形分について、元素分析により測定した。
【0007】
ホルムアルデヒド源にはホルマリン水溶液のほか、パラホルムアルデヒドが好ましく用いられる。
メラミンと反応させるホルムアルデヒドは、pHが7〜10の溶液が好ましい。7未満では得られる反応生成物が異なり、耐トラッキング性向上効果が得られない傾向がある。pH値が10を超えると反応速度が遅く、量産性に問題がある。反応に用いられるアルカリ触媒としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、アンモニアヘキサミン、ピリジン、炭酸ナトリウム又は第3級アミン等が挙げられる。
メラミンとホルムアルデヒドを反応させた後に、パラトルエンスルホンアミドを添加することが好ましい。パラトルエンスルホンアミドは、好ましくない反応を抑制するとともに可塑剤効果を与える。パラトルエンスルホンアミドの添加量はメラミンに対して10〜30重量%が好ましい。
フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドを用いたものが使用できる。フェノール類としては、フェノール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソクレゾール、イソプロピルフェノール、パラターシャリブチルフェノール、パライソプロペニルフェノールオリゴマー、ノニルフェノール、ビスフェノールA、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなどが挙げられる。これらは、単独でも、2種類以上を組合せて用いてもよい。
フェノール樹脂の合成に用いるアルカリ触媒としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、アンモニアヘキサミン、ピリジン、炭酸ナトリウム又は第3級アミン等が挙げられる。
【0008】
本発明の紙基材フェノール樹脂銅張積層板は、以下の工程により製造される。
下塗り用フェノール樹脂組成物を、クラフト紙、リンター紙、ガラス混抄紙などの紙基材に含浸乾燥し、ついで、桐油変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂ワニスを含浸乾燥してプリプレグを作製する。これを複数枚重ね合わせ、その片面若しくは両面に好ましくは接着剤付きの銅はくを重ね合せ、加熱加圧下で積層成形して紙基材フェノール樹脂銅張積層板とする。
【0009】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
合成例
桐油変性フェノール樹脂ワニスを製造した。
フェノール370部(重量部、以下同じ)、キシレン樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製、ニカノールH(商品名)を使用)30部及びパラトルエンスルホン酸0.2部を反応釜に仕込み、90℃で1時間反応させた後、桐油230部を投入し、90℃で1時間反応させて、桐油変性率35重量%の桐油−フェノール付加物を得た。
得られた桐油−フェノール付加反応物100部、パラホルムアルデヒド27部及び25重量%アンモニア水2.5部を反応釜に仕込み、75℃で2時間反応させた後、減圧下で脱水濃縮して、桐油変性フェノール樹脂を得た。
得られた桐油変性フェノール樹脂100部に、臭素化エポキシ樹脂(日立化成工業株式会社製、NF−55(商品名)を使用)25部、トリフェニルフォスフェイト25部を配合し、メタノールで溶解して樹脂分50重量%の桐油変性フェノール樹脂ワニスとした。
【0011】
実施例1
(1)メラミン樹脂の製造
ホルムアルデヒド換算で1.5モルの37重量%ホルマリンを反応釜に仕込み、これに無水炭酸ナトリウムをホルマリンに対して0.005重量%加えた。pH値は9であった。次にメラミン1モルを配合し、90℃で0.5時間反応させ、次いで、パラトルエンスルホンアミドをメラミンに対して20重量%添加し、メラミン樹脂を得た。
(2)下塗り用フェノール樹脂組成物Aの製造
上記のメラミン樹脂に、フェノール1.6モルと、ホルムアルデヒド換算で7.5モルの37重量%ホルマリンを加え、次にトリメチルアミン0.1モル相当量の30重量%トリメチルアミン水溶液を加え、85℃で1時間反応させた。これに、メタノールとアセトンと水の等重量混合溶剤を加えて固形分20重量%の下塗り用フェノール樹脂組成物Aを製造した。
元素分析により求めた固形分の窒素含有率は、35重量%であった。
(3)紙基材フェノール樹脂銅張積層板Aの製造
フェノール樹脂組成物Aを、厚さ0.2mm、坪量125g/m2のクラフト紙に乾燥後の付着量が12重量%となるように含浸乾燥した。次に、桐油変性フェノール樹脂ワニスを、乾燥後の付着樹脂分が50重量%になるように含浸乾燥し、プリプレグを作製した。
このプリプレグ8枚と接着剤付き銅はく2枚を重ね合わせ、170℃、10MPaで加熱加圧して厚さが1.6mmの紙基材フェノール樹脂両面銅張積層板Aを得た。
【0012】
実施例2
メラミン樹脂に反応させるフェノールとホルマリンの量を変えた以外は実施例1の(2)と同様にして、固形分の窒素含有率が45重量%のフェノール樹脂組成物Bを製造した。
このフェノール樹脂組成物Bを下塗り用に用いた以外は実施例1と同様にして、紙基材フェノール樹脂両面銅張積層板Bを得た。
【0013】
実施例3
メラミン樹脂に反応させるフェノールとホルマリンの量を変えた以外は実施例1の(2)と同様にして、固形分の窒素含有率が15重量%のフェノール樹脂組成物Cを製造した。
このフェノール樹脂組成物Cを下塗り用に用いた以外は実施例1と同様にして、紙基材フェノール樹脂両面銅張積層板Cを得た。
【0014】
比較例1
フェノール1モルを反応釜に仕込み、ホルムアルデヒド換算で1.2モルのホルマリンを加え、にトリメチルアミン0.4モル相当の30重量%トリメチルアミン水溶液を加え、70℃で6時間反応させ、これに、メタノールと水の等重量混合溶剤を加えて固形分20重量%の下塗り用フェノール樹脂組成物Dを製造した。
このフェノール樹脂組成物Dを下塗り用に用いた以外は実施例1と同様にして、紙基材フェノール樹脂両面銅張積層板Dを得た。
【0015】
【表1】
Figure 0004821064
耐トラッキング性:IEC法によるCTI値
難燃性:UL垂直法;上段:平均値、下段:min.〜max.の範囲
絶縁抵抗(JIS C 6481):C-96/60/90処理後のJIS方2極間の絶縁抵抗値を測定
はんだ耐熱性(JIS C 6481):260℃に加熱されたはんだ槽に試験片を浮かべ、ふくれを生ずるまでの時間を測定した。
【0016】
表1に示すように、本発明により得られた紙基材フェノール樹脂銅張積層板は、耐トラッキング性、難燃性に優れる。
【0017】
【発明の効果】
本発明により、耐トラッキング性、難燃性に優れる紙基材フェノール樹脂銅張積層板が得られた。

Claims (3)

  1. 固形分の窒素含有率が20〜40重量%である下塗り用フェノール樹脂組成物を用いて含浸乾燥処理した紙基材に、フェノール樹脂ワニスを含浸乾燥処理して得られたプリプレグと銅はくとを積層成形してなる紙基材フェノール樹脂銅張積層板であって、前記下塗り用フェノール樹脂組成物は、メラミンとホルムアルデヒドの反応生成物に、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させて得られる組成物を必須成分とする下塗り用フェノール樹脂組成物である紙基材フェノール樹脂銅張積層板。
  2. メラミンとホルムアルデヒドの反応生成物が、pH7〜10のホルムアルデヒド溶液にメラミンを添加して反応させた反応生成物である請求項1記載の紙基材フェノール樹脂銅張積層板。
  3. メラミンとホルムアルデヒドの反応生成物が、メラミンとホルムアルデヒドを反応させた後にパラトルエンスルホンアミドを添加して得られたものである請求項1記載の紙基材フェノール樹脂銅張積層板。
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