JP2004224999A - フェノール樹脂積層板およびフェノール樹脂銅張積層板 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛フリーはんだを使用したリフロー工程時に,ふくれ等の不具合の発生がないプリント配線板用フェノール樹脂積層板を提供する。
【解決手段】ハロゲン系難燃剤を含まない紙基材フェノール樹脂銅張積層板において,紙基材に予めアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物により含浸処理した基材を用い,フェノール樹脂を含浸,加熱乾燥することにより得られたプリプレグを所定枚数重ね合わせ加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】ハロゲン系難燃剤を含まない紙基材フェノール樹脂銅張積層板において,紙基材に予めアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物により含浸処理した基材を用い,フェノール樹脂を含浸,加熱乾燥することにより得られたプリプレグを所定枚数重ね合わせ加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,フェノール樹脂積層板およびフェノール樹脂銅張積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化,多機能化に伴い,プリント配線板も高密度化,小型化が進んでいる中,紙基材フェノール樹脂銅張積層板は,打抜加工性,ドリル加工性にすぐれ,かつ安価であるため民生用電子機器のプリント配線板用基板として広く用いられている。
紙基材フェノール樹脂積層板は,フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒の存在下に反応させてフェノール樹脂を得,フェノール樹脂を溶剤で調整し,紙基材に含浸乾燥して得られるプリプレグを所定枚数重ね合わせて加熱加圧して製造される。通常は,プリプレグと銅はくとを組合せて銅張積層板とし,銅はくをエッチングすることにより,回路を形成してプリント配線板とされる。
また,セットメーカーでは,環境保護の意識の高まりから,難燃剤にハロゲン系難燃剤を使用しない材料(ハロゲンフリー材),および有害物質である鉛を使用しない はんだ(鉛フリーはんだ)を検討または採用している。
しかし,鉛フリーはんだは,従来の鉛含有はんだ(Sn−Pb)と比較して溶融温度が高く,そのために,リフロー工程時の設定温度が高くなる傾向にあり,プリント配線板の耐熱性向上,特にリフロー工程での耐熱性向上が要求されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】
特開2001−181474号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
紙基材フェノール樹脂銅張積層板は,安価であることから,広く用いられているが,ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板と比較して,耐熱性レベルが低いため,リフロー工程時の温度設定も低く設定されており,温度設定が高くなるとふくれ等の不具合が発生する。
また,鉛フリーはんだの溶融温度が従来のはんだ(Sn−Pb)より高いため,鉛フリーはんだ採用時は,リフロー工程の温度設定も高く設定するため,紙基材フェノール樹脂銅張積層板を用いたプリント配線板は,ふくれ等の不具合が発生する。特にフェノール樹脂がハロゲンフリーである場合 ハロゲン系難燃剤を使用せずに難燃性を付与するため,特願平5−90962のようにリン系,窒素系難燃剤を多量に,かつバランス良く使用しなければならず,難燃剤の耐熱性の影響を大きく受けることから樹脂の耐熱性レベルを向上させることは非常に困難であった。
【0005】
本発明は,プリント配線板の鉛フリーはんだを使用した場合のリフロー工程時にふくれ等の不具合を発生しない,難燃性が良好なハロゲンフリー紙基材フェノール樹脂銅張積層板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は,次のものに関する。
(1)紙基材にハロゲン系難燃剤を含まない熱硬化性樹脂を含浸,加熱乾燥してなるプリプレグにおいて,紙基材が予めアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物により含浸処理し,乾燥して得られたプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板。
(2)アルコキシシラン誘導体が,一般式(式1)で示される化合物および/またはその縮合物である上記(1)または(2)記載のフェノール樹脂積層板。
【0007】
【化2】
【0008】
(3)水溶性フェノール樹脂に一般式(式1)で示されるアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物3〜50重量部を必須成分とする溶液を紙基材に含浸させ,加熱乾燥を行った後,ハロゲン系難燃剤を含まない熱硬化性樹脂を含浸し,さらに加熱乾燥して得られたプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板。
(4)一般式(式1)で示されるアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物の窒素含有率が5〜15%である上記(1)記載のフェノール樹脂積層板。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるアミノ基を所有するアルコキシシラン(以下アミノシランと略する)誘導体としては,
【0010】
【化3】
【0011】
などが挙げられる。アミノシランの窒素含有率は5%〜15%が望ましく,窒素含有率が5%以下では難燃性向上の効果が低く,15%以上では耐熱性について十分な効果は得られない。また,これらのアミノシラン誘導体は予め縮合させ,オリゴマー化した上で用いてもよい。この際には,触媒として塩酸,硫酸,リン酸,硝酸,フッ酸等の無機酸,マレイン酸,スルホン酸,シュウ酸,ギ酸等の有機酸,あるいはアンモニア,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリブチルアミンなどの塩基触媒を用いると好ましい。これらの触媒は,用いるアミノシラン誘導体の種類,量によって適当量用いられるが,好適にはアミノシラン誘導体1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0012】
上記縮合物は,例えばアセトン,メチルエチルケトン,トルエン,キシレン,酢酸エチル,メタノール,エタノールなどの溶媒中でおこなうことが好ましい。また,この反応に際して水が適量必要であり,多すぎる場合には縮合の進行が早すぎてゲル化する可能性があり,少なすぎると十分に縮合が進行しないため,アミノシラン1モルに対して0.1〜5モルが好ましく,0.3〜4モルとするのがより好ましい。
【0013】
これらのアミノシラン誘導体および/またはその縮合物3〜30重量部に対して,水10〜50重量部,アルコール10〜50重量部加えた溶液を作製する。この際,水が少なすぎるとアミノシラン化合物の縮合が充分進まず,効果が低減し,多すぎると保存安定性が悪くなる。このことから水とアルコールの比率は5:5が好ましい。
【0014】
用いるアルコールの種類については特に限定はしないが,メタノールを用いると沸点が低く,加熱乾燥が容易におこなうことができるため好ましい。
【0015】
本発明では,基材に予めアミノシラン誘導体および/またはその縮合物を含む溶液を含浸させ加熱乾燥を行う。
本発明で用いる基材は,打抜加工性の点から,紙基材を用いるのが好ましい。紙基材としては,クラフト紙,コットンリンター紙,リンターとクラフトパルプの混抄紙,ガラス繊維と紙繊維の混抄紙等も使用できる。
基材にアミノシラン誘導体および/またはその縮合物を含む溶液を含浸した後,加熱乾燥を行う。この際,アミノシラン誘導体は,縮合が進み,紙の疎水性を向上させる。
【0016】
この後,熱硬化性樹脂を塗工,乾燥させることにより,加熱加圧成形が可能なプリプレグを得ることができる。
本発明で使用する熱硬化性樹脂としては,安価であることから,植物油変性フェノール樹脂があげられる。
植物油変性フェノール樹脂は,フェノール類と植物油とを酸触媒の存在下に反応させ,ついで,アルデヒド類をアルカリ触媒の存在下に反応させることにより,植物油変性フェノール樹脂が得られる。
酸触媒としてはパラトルエンスルフォン酸などが挙げられる。
アルカリ触媒としては,アンモニア,トリメチルアミン,トリエチルアミンなどのアミン系触媒が挙げられる。
【0017】
本発明で用いる植物油としては,乾性油を用いることが好ましく,これらの例として,桐油,アマニ油,脱水ヒマシ油,オイチシカ油等がある。
フェノール類としては,フェノール,メタクレゾール,パラクレゾール,オルソクレゾール,イソプロピルフェノール,ノニルフェノール等が使用される。
アルデヒド類としては,ホルムアルデヒド,パラホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,パラアセトアルデヒド,ブチルアルデヒド,オクチルアルデヒド,ベンズアルデヒド等が上げられ,特に制限されるものではない。一般にはホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが使用される。
【0018】
本発明のフェノール樹脂組成物は,溶剤にて調整し,溶解ないし分散させワニスとして基材に含浸される。
ワニスには,フェノール樹脂積層板に可塑性,難燃性を付与するために各種の可塑剤,難燃剤を添加してもよい。
難燃剤は,ハロゲン系難燃剤の代わりに,市販の窒素系難燃剤またはリン系難燃剤が使用できる。
【0019】
メラミン変性フェノール樹脂としては,市販品が使用でき,窒素含有率が3〜15%のものが好ましい。窒素含有率が3%未満では,難燃性が劣り,15%を超えると打抜加工性が劣る。
メラミン変性フェノール樹脂は,植物油変性フェノール樹脂と反応して難燃性に寄与する。このことから植物油変性フェノール樹脂100重量部に対し,5〜30重量部の範囲で配合するのが好ましい。植物油変性フェノール樹脂100重量部に対する配合量が5重量部未満であると難燃性付与の効果が不十分となり,30重量部を超えると打抜加工性が悪くなる傾向にある。
このことから,植物油変性フェノール樹脂100重量部に対し,10〜20重量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0020】
本発明で用いられるリン酸エステルは,トリエチルホスフェイト,トリブチルホスフェイト,トリフェニルホスフェイト,トリクレジルホスフェイト,クレジルジフェニルホスフェイト,レゾルシルジフェニルホスフェイト,トリイソプロピルフェニルホスフェイト等が挙げられ,これらは,1種または2種以上の混合系として使用される。なかでも,トリフェニルホスフェイトを用いるのが安価で,好ましい。
【0021】
リン酸エステルは,植物油変性レゾール樹脂100重量部に対し,10〜100重量部の範囲で配合するのが好ましい。植物油変性レゾール樹脂100重量部に対する配合量が10重量部未満であると,配合する効果が小さく,100重量部を超えると打抜加工性が悪くなり,吸水率等の他の特性が低下する傾向を示す。
【0022】
リン酸エステルの他,他の難燃剤,例えば,水酸化アルミニウムような無機充填剤系難燃剤を全組成物100重量部のうち,50重量部までの範囲で配合することもできる。これらリン酸エステル以外の難燃剤を配合すると,相乗作用により少量の配合で難燃性をより高めることができ,難燃剤の配合量を少なくすることができる。これらリン酸エステル以外の難燃剤の配合量が50重量部を超えると,打抜加工性,耐熱性が悪くなる傾向を示す。
【0023】
前期のワニスを紙基材に含浸乾燥してプリプレグとし,得られたプリプレグを所定枚数重ね,その上に銅はくを重ね,温度150〜180℃,圧力9〜20MPaで加熱加圧して紙基材フェノール樹脂銅張積層板とする。
【0024】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが,本発明は,これらに限定されるものではない。
【0025】
(上塗り用フェノール樹脂の合成)
桐油150重量部とフェノール280重量部,p−トルエンスルホン酸0.2重量を反応釜に仕込み,90℃1時間反応させ,次いでパラホルムアルデヒド200重量部,28重量%アンモニア水30重量部を加えて75℃で2時間反応させて桐油変性率35重量%の桐油変性レゾール樹脂を得た。
桐油変性レゾール樹脂100重量部に表1に示すメラミン変性フェノール樹脂およびトリフェニルホスフェイトを所定量添加し,溶剤で溶解して,樹脂分50重量%のワニスとした。
【0026】
(水溶性フェノール樹脂の合成)
フェノール1モル,37重量%ホルマリンをホルムアルデヒド換算で1.2モルおよびトリエチルアミン換算で0.4モル量のトリエチルアミン水溶液(濃度:30重量%)を70℃6時間反応させて水溶性フェノール樹脂を得た。
得られた水溶性フェノール樹脂を重量比で,水1対メタノール1の混合溶媒で希釈し,固形分12重量%の水溶性フェノール樹脂とした。
【0027】
上記,水溶性フェノール樹脂の固形分に対し,(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを表1に示す割合で配合し,攪拌後,厚さ0.2mm,坪量125g/m2のクラフト紙に,付着量が18重量%となるように付着させ,次に,上塗り用フェノール樹脂ワニスを,乾燥後の全樹脂付着量が,50重量%になるように含浸,乾燥してプリプレグを得た。
得られたプリプレグ8枚を重ね,その両側に銅箔の厚さが35μmで,接着剤付銅箔を接着剤層がプリプレグ側となるようにして重ね,温度170℃,圧力15MPaで90分加熱加圧して,厚さ1.6mmの両面銅張積層板を得た。
【0028】
(比較例)
(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを配合しないほかは,実施例と同様にして厚さ1.6mmの両面銅張積層板を得た。
以上で得られた両面銅張積層板について,リフロー耐熱性,打抜加工性を評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
なお,試験方法は,以下の通りとした。
リフロー耐熱性は,印刷法により回路を形成し,銅はくをエッチングし,残銅70%のプリント配線板を作成し,リフロー装置にて,プリント配線板を流し,ふくれの有無を目視により観察した。リフロー装置の温度設定は,プリント配線板の基材表面の最高温度を測定し,温度設定を行った。
難燃性は,得られた片面銅張積層板から,銅箔を全面エッチングして,127×13mmの試験片を切り出した。この試験片を長辺が垂直になるように保持し,バーナーにより下から10秒間接炎を2回繰り返し,消炎するまでの時間を測定した。難燃性の試験は,試験片数5個について行った。
【0031】
比較例1のように, (アミノエチル)アミノプロピル トリメトキシシランを配合しない系では,難燃性はUL94V―0を満足するが,リフロー耐熱性が良くなかった。比較例2のようにリン系および窒素系難燃剤であるトリフェニルホスフェイトやメラミン変性フェノール樹脂の配合量を低減するとリフロー耐熱性は良好となったが,難燃性が低下した。
【0032】
実施例1〜3のように,水溶性フェノール樹脂に(アミノエチル)アミノプロピル トリメトキシシランを配合することによって,リフロー耐熱性が良好となり,難燃性もUL94V−0を満足した。また,3%〜30%の範囲内で,配合量が多いほどリフロー耐熱性は良好な傾向にあった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば,紙基材フェノール樹脂銅張積層板を用いた,リフロー耐熱性,難燃性に優れ,かつハロゲン系難燃剤を含まないプリント配線板を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は,フェノール樹脂積層板およびフェノール樹脂銅張積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化,多機能化に伴い,プリント配線板も高密度化,小型化が進んでいる中,紙基材フェノール樹脂銅張積層板は,打抜加工性,ドリル加工性にすぐれ,かつ安価であるため民生用電子機器のプリント配線板用基板として広く用いられている。
紙基材フェノール樹脂積層板は,フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒の存在下に反応させてフェノール樹脂を得,フェノール樹脂を溶剤で調整し,紙基材に含浸乾燥して得られるプリプレグを所定枚数重ね合わせて加熱加圧して製造される。通常は,プリプレグと銅はくとを組合せて銅張積層板とし,銅はくをエッチングすることにより,回路を形成してプリント配線板とされる。
また,セットメーカーでは,環境保護の意識の高まりから,難燃剤にハロゲン系難燃剤を使用しない材料(ハロゲンフリー材),および有害物質である鉛を使用しない はんだ(鉛フリーはんだ)を検討または採用している。
しかし,鉛フリーはんだは,従来の鉛含有はんだ(Sn−Pb)と比較して溶融温度が高く,そのために,リフロー工程時の設定温度が高くなる傾向にあり,プリント配線板の耐熱性向上,特にリフロー工程での耐熱性向上が要求されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】
特開2001−181474号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
紙基材フェノール樹脂銅張積層板は,安価であることから,広く用いられているが,ガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板と比較して,耐熱性レベルが低いため,リフロー工程時の温度設定も低く設定されており,温度設定が高くなるとふくれ等の不具合が発生する。
また,鉛フリーはんだの溶融温度が従来のはんだ(Sn−Pb)より高いため,鉛フリーはんだ採用時は,リフロー工程の温度設定も高く設定するため,紙基材フェノール樹脂銅張積層板を用いたプリント配線板は,ふくれ等の不具合が発生する。特にフェノール樹脂がハロゲンフリーである場合 ハロゲン系難燃剤を使用せずに難燃性を付与するため,特願平5−90962のようにリン系,窒素系難燃剤を多量に,かつバランス良く使用しなければならず,難燃剤の耐熱性の影響を大きく受けることから樹脂の耐熱性レベルを向上させることは非常に困難であった。
【0005】
本発明は,プリント配線板の鉛フリーはんだを使用した場合のリフロー工程時にふくれ等の不具合を発生しない,難燃性が良好なハロゲンフリー紙基材フェノール樹脂銅張積層板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は,次のものに関する。
(1)紙基材にハロゲン系難燃剤を含まない熱硬化性樹脂を含浸,加熱乾燥してなるプリプレグにおいて,紙基材が予めアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物により含浸処理し,乾燥して得られたプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板。
(2)アルコキシシラン誘導体が,一般式(式1)で示される化合物および/またはその縮合物である上記(1)または(2)記載のフェノール樹脂積層板。
【0007】
【化2】
【0008】
(3)水溶性フェノール樹脂に一般式(式1)で示されるアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物3〜50重量部を必須成分とする溶液を紙基材に含浸させ,加熱乾燥を行った後,ハロゲン系難燃剤を含まない熱硬化性樹脂を含浸し,さらに加熱乾燥して得られたプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板。
(4)一般式(式1)で示されるアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物の窒素含有率が5〜15%である上記(1)記載のフェノール樹脂積層板。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるアミノ基を所有するアルコキシシラン(以下アミノシランと略する)誘導体としては,
【0010】
【化3】
【0011】
などが挙げられる。アミノシランの窒素含有率は5%〜15%が望ましく,窒素含有率が5%以下では難燃性向上の効果が低く,15%以上では耐熱性について十分な効果は得られない。また,これらのアミノシラン誘導体は予め縮合させ,オリゴマー化した上で用いてもよい。この際には,触媒として塩酸,硫酸,リン酸,硝酸,フッ酸等の無機酸,マレイン酸,スルホン酸,シュウ酸,ギ酸等の有機酸,あるいはアンモニア,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリブチルアミンなどの塩基触媒を用いると好ましい。これらの触媒は,用いるアミノシラン誘導体の種類,量によって適当量用いられるが,好適にはアミノシラン誘導体1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0012】
上記縮合物は,例えばアセトン,メチルエチルケトン,トルエン,キシレン,酢酸エチル,メタノール,エタノールなどの溶媒中でおこなうことが好ましい。また,この反応に際して水が適量必要であり,多すぎる場合には縮合の進行が早すぎてゲル化する可能性があり,少なすぎると十分に縮合が進行しないため,アミノシラン1モルに対して0.1〜5モルが好ましく,0.3〜4モルとするのがより好ましい。
【0013】
これらのアミノシラン誘導体および/またはその縮合物3〜30重量部に対して,水10〜50重量部,アルコール10〜50重量部加えた溶液を作製する。この際,水が少なすぎるとアミノシラン化合物の縮合が充分進まず,効果が低減し,多すぎると保存安定性が悪くなる。このことから水とアルコールの比率は5:5が好ましい。
【0014】
用いるアルコールの種類については特に限定はしないが,メタノールを用いると沸点が低く,加熱乾燥が容易におこなうことができるため好ましい。
【0015】
本発明では,基材に予めアミノシラン誘導体および/またはその縮合物を含む溶液を含浸させ加熱乾燥を行う。
本発明で用いる基材は,打抜加工性の点から,紙基材を用いるのが好ましい。紙基材としては,クラフト紙,コットンリンター紙,リンターとクラフトパルプの混抄紙,ガラス繊維と紙繊維の混抄紙等も使用できる。
基材にアミノシラン誘導体および/またはその縮合物を含む溶液を含浸した後,加熱乾燥を行う。この際,アミノシラン誘導体は,縮合が進み,紙の疎水性を向上させる。
【0016】
この後,熱硬化性樹脂を塗工,乾燥させることにより,加熱加圧成形が可能なプリプレグを得ることができる。
本発明で使用する熱硬化性樹脂としては,安価であることから,植物油変性フェノール樹脂があげられる。
植物油変性フェノール樹脂は,フェノール類と植物油とを酸触媒の存在下に反応させ,ついで,アルデヒド類をアルカリ触媒の存在下に反応させることにより,植物油変性フェノール樹脂が得られる。
酸触媒としてはパラトルエンスルフォン酸などが挙げられる。
アルカリ触媒としては,アンモニア,トリメチルアミン,トリエチルアミンなどのアミン系触媒が挙げられる。
【0017】
本発明で用いる植物油としては,乾性油を用いることが好ましく,これらの例として,桐油,アマニ油,脱水ヒマシ油,オイチシカ油等がある。
フェノール類としては,フェノール,メタクレゾール,パラクレゾール,オルソクレゾール,イソプロピルフェノール,ノニルフェノール等が使用される。
アルデヒド類としては,ホルムアルデヒド,パラホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,パラアセトアルデヒド,ブチルアルデヒド,オクチルアルデヒド,ベンズアルデヒド等が上げられ,特に制限されるものではない。一般にはホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが使用される。
【0018】
本発明のフェノール樹脂組成物は,溶剤にて調整し,溶解ないし分散させワニスとして基材に含浸される。
ワニスには,フェノール樹脂積層板に可塑性,難燃性を付与するために各種の可塑剤,難燃剤を添加してもよい。
難燃剤は,ハロゲン系難燃剤の代わりに,市販の窒素系難燃剤またはリン系難燃剤が使用できる。
【0019】
メラミン変性フェノール樹脂としては,市販品が使用でき,窒素含有率が3〜15%のものが好ましい。窒素含有率が3%未満では,難燃性が劣り,15%を超えると打抜加工性が劣る。
メラミン変性フェノール樹脂は,植物油変性フェノール樹脂と反応して難燃性に寄与する。このことから植物油変性フェノール樹脂100重量部に対し,5〜30重量部の範囲で配合するのが好ましい。植物油変性フェノール樹脂100重量部に対する配合量が5重量部未満であると難燃性付与の効果が不十分となり,30重量部を超えると打抜加工性が悪くなる傾向にある。
このことから,植物油変性フェノール樹脂100重量部に対し,10〜20重量部の範囲で配合することがより好ましい。
【0020】
本発明で用いられるリン酸エステルは,トリエチルホスフェイト,トリブチルホスフェイト,トリフェニルホスフェイト,トリクレジルホスフェイト,クレジルジフェニルホスフェイト,レゾルシルジフェニルホスフェイト,トリイソプロピルフェニルホスフェイト等が挙げられ,これらは,1種または2種以上の混合系として使用される。なかでも,トリフェニルホスフェイトを用いるのが安価で,好ましい。
【0021】
リン酸エステルは,植物油変性レゾール樹脂100重量部に対し,10〜100重量部の範囲で配合するのが好ましい。植物油変性レゾール樹脂100重量部に対する配合量が10重量部未満であると,配合する効果が小さく,100重量部を超えると打抜加工性が悪くなり,吸水率等の他の特性が低下する傾向を示す。
【0022】
リン酸エステルの他,他の難燃剤,例えば,水酸化アルミニウムような無機充填剤系難燃剤を全組成物100重量部のうち,50重量部までの範囲で配合することもできる。これらリン酸エステル以外の難燃剤を配合すると,相乗作用により少量の配合で難燃性をより高めることができ,難燃剤の配合量を少なくすることができる。これらリン酸エステル以外の難燃剤の配合量が50重量部を超えると,打抜加工性,耐熱性が悪くなる傾向を示す。
【0023】
前期のワニスを紙基材に含浸乾燥してプリプレグとし,得られたプリプレグを所定枚数重ね,その上に銅はくを重ね,温度150〜180℃,圧力9〜20MPaで加熱加圧して紙基材フェノール樹脂銅張積層板とする。
【0024】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが,本発明は,これらに限定されるものではない。
【0025】
(上塗り用フェノール樹脂の合成)
桐油150重量部とフェノール280重量部,p−トルエンスルホン酸0.2重量を反応釜に仕込み,90℃1時間反応させ,次いでパラホルムアルデヒド200重量部,28重量%アンモニア水30重量部を加えて75℃で2時間反応させて桐油変性率35重量%の桐油変性レゾール樹脂を得た。
桐油変性レゾール樹脂100重量部に表1に示すメラミン変性フェノール樹脂およびトリフェニルホスフェイトを所定量添加し,溶剤で溶解して,樹脂分50重量%のワニスとした。
【0026】
(水溶性フェノール樹脂の合成)
フェノール1モル,37重量%ホルマリンをホルムアルデヒド換算で1.2モルおよびトリエチルアミン換算で0.4モル量のトリエチルアミン水溶液(濃度:30重量%)を70℃6時間反応させて水溶性フェノール樹脂を得た。
得られた水溶性フェノール樹脂を重量比で,水1対メタノール1の混合溶媒で希釈し,固形分12重量%の水溶性フェノール樹脂とした。
【0027】
上記,水溶性フェノール樹脂の固形分に対し,(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを表1に示す割合で配合し,攪拌後,厚さ0.2mm,坪量125g/m2のクラフト紙に,付着量が18重量%となるように付着させ,次に,上塗り用フェノール樹脂ワニスを,乾燥後の全樹脂付着量が,50重量%になるように含浸,乾燥してプリプレグを得た。
得られたプリプレグ8枚を重ね,その両側に銅箔の厚さが35μmで,接着剤付銅箔を接着剤層がプリプレグ側となるようにして重ね,温度170℃,圧力15MPaで90分加熱加圧して,厚さ1.6mmの両面銅張積層板を得た。
【0028】
(比較例)
(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを配合しないほかは,実施例と同様にして厚さ1.6mmの両面銅張積層板を得た。
以上で得られた両面銅張積層板について,リフロー耐熱性,打抜加工性を評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
なお,試験方法は,以下の通りとした。
リフロー耐熱性は,印刷法により回路を形成し,銅はくをエッチングし,残銅70%のプリント配線板を作成し,リフロー装置にて,プリント配線板を流し,ふくれの有無を目視により観察した。リフロー装置の温度設定は,プリント配線板の基材表面の最高温度を測定し,温度設定を行った。
難燃性は,得られた片面銅張積層板から,銅箔を全面エッチングして,127×13mmの試験片を切り出した。この試験片を長辺が垂直になるように保持し,バーナーにより下から10秒間接炎を2回繰り返し,消炎するまでの時間を測定した。難燃性の試験は,試験片数5個について行った。
【0031】
比較例1のように, (アミノエチル)アミノプロピル トリメトキシシランを配合しない系では,難燃性はUL94V―0を満足するが,リフロー耐熱性が良くなかった。比較例2のようにリン系および窒素系難燃剤であるトリフェニルホスフェイトやメラミン変性フェノール樹脂の配合量を低減するとリフロー耐熱性は良好となったが,難燃性が低下した。
【0032】
実施例1〜3のように,水溶性フェノール樹脂に(アミノエチル)アミノプロピル トリメトキシシランを配合することによって,リフロー耐熱性が良好となり,難燃性もUL94V−0を満足した。また,3%〜30%の範囲内で,配合量が多いほどリフロー耐熱性は良好な傾向にあった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば,紙基材フェノール樹脂銅張積層板を用いた,リフロー耐熱性,難燃性に優れ,かつハロゲン系難燃剤を含まないプリント配線板を得ることができる。
Claims (4)
- 紙基材にハロゲン系難燃剤を含まない熱硬化性樹脂を含浸,加熱乾燥してなるプリプレグにおいて,紙基材が予めアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物により含浸処理し,乾燥して得られたプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板。
- 水溶性フェノール樹脂に一般式(式1)で示されるアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物3〜30重量部を必須成分とする溶液を紙基材に含浸させ,加熱乾燥を行った後,ハロゲン系難燃剤を含まない熱硬化性樹脂を含浸し,さらに加熱乾燥して得られたプリプレグを所定枚数重ねて加熱加圧してなるフェノール樹脂積層板。
- 一般式(式1)で示されるアミノ基を所有するアルコキシシラン誘導体および/またはその縮合物の窒素含有率が5〜15%である請求項1記載のフェノール樹脂積層板。
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