JP2004356277A - 乾性油変性フェノール樹脂を用いたフェノール樹脂銅張積層板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性,耐湿性,打抜加工性及び臭気性に優れたフェノール樹脂銅張積層板を提供する。
【解決手段】紙基材に乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ねあわせ,加熱加圧成形してなる銅張積層板の製造方法において,乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合してなる乾性油変性フェノール樹脂ワニスを用いるフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】紙基材に乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ねあわせ,加熱加圧成形してなる銅張積層板の製造方法において,乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合してなる乾性油変性フェノール樹脂ワニスを用いるフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,耐熱性,耐湿性,打抜加工性及び臭気性に優れるフェノール樹脂積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂積層板などに用いられるレゾール型フェノール樹脂は,通常フェノール類とホルムアルデヒドを塩基性触媒の存在下に反応させたレゾール型フェノール樹脂であり,難燃性,耐熱性等様々な特性の付与が行われる。製造したレゾール型フェノール樹脂を紙基材等に含浸し,乾燥させ,プリプレグを作りそのプリプレグを重ねて加熱加圧し、紙基材フェノール樹脂積層板としている(特開平6−220225号公報、特開平6−228341号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−220225号公報
【特許文献2】
特開平6−228341号公報
【0004】
紙基材フェノール樹脂積層板は,加工性が良いため,打抜加工が多用されている。しかし、フェノール類とホルムアルデヒドだけで合成されたフェノール樹脂は,硬く,可塑性が無く,紙基材フェノール樹脂積層板に要求されている打抜加工性が得られない。そのために,低弾性率の紙基材を使用する以外に、フェノール樹脂自体に可塑性を付与するようにしている。フェノール樹脂に可塑性を付与する手段としては,乾性油でフェノール樹脂を変性する手法が広く採用されている。
【0005】
また,基材としては,クラフト紙,リンター紙等の紙を用いる。紙基材に水溶性メラミン樹脂,または水溶性フェノール樹脂を含浸した後,乾性油変性フェノール樹脂を含浸して難燃性,耐湿性などを向上させる方法も知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,従来の方法では,フェノール類とホルムアルデヒドとの反応は,完全に進行せず,樹脂ワニス中には未反応フェノール類,未反応ホルムアルデヒドが残り,これらは積層板中にもそのまま残存する。乾性油変性フェノール樹脂において,乾性油で変性した際,フェノール類との反応率が低いと,その樹脂を用いたワニスは架橋密度が低く,耐熱性,耐湿性,打抜加工性が劣る。また,このような積層板を使用すると,プリント配線板に加工しても,ホルムアルデヒドやフェノール類等の低分子物ガスの臭気を発生する。そして,その臭気は,搭載部品が発熱したり,使用環境が高温である場合はガスの発生が促進され,より強くなる。そのために,機器周囲の環境を悪化させ,人体へ悪影響を及ぼす。
【0007】
本発明は,耐熱性に優れ、かつ未反応フェノール類とホルムアルデヒドとを低減し臭気性を低下させた樹脂銅張積層板の製造法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は,次のように構成される。
(1)紙基材に乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ねあわせ,加熱加圧成形してなる銅張積層板の製造方法において,乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合してなる乾性油変性フェノール樹脂ワニスを用いることを特徴とするフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
(2)(1)に記載の乾性油変性フェノール樹脂の初期反応時に乾性油とフェノール類の反応率(投入したフェノール量に対する反応したフェノール量の割合)が15〜50重量%になった後,ホルムアルデヒドと塩基触媒を添加し反応させることにより得られた乾性油変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする(1)に記載のフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
(3)フェノール類を乾性油で変性した乾性油−フェノール付加反応物の重量平均分子量が、3000〜15000である乾性油変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする(1)または(2)に記載のフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、フェノール類を乾性油で変性した乾性油−フェノール付加反応物の反応率(投入したフェノール量に対する,反応したフェノール量の割合)が5〜50重量%であり、なおかつ重量平均分子量が3000〜15000であることを特徴としている。そして、この乾性油−フェノール付加反応物にホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させ、乾性油変性フェノール樹脂を合成し、さらに乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合し,乾性油変性フェノール樹脂ワニスを作製する。そして、紙基材に前記乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ね併せ,加熱加圧成形して銅張積層板を製造する。
【0010】
紙基材に,予めメラミン樹脂で変性した水溶性フェノール樹脂を含浸乾燥させた後,更に前記乾性油変性フェノール樹脂とメラミン樹脂で変性した水溶性フェノール樹脂とを配合したワニスを含浸乾燥させても良い。
【0011】
乾性油変性フェノール樹脂ワニスに配合するエポキシ樹脂は、乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、5〜30重量部とするのが好ましく,5重量部未満では耐熱性などの効果が不十分であり,30重量部を超すと乾性油変性フェノール樹脂ワニスのライフが低下する。
【0012】
乾性油変性フェノール樹脂において,乾性油で変性する時の乾性油とフェノール類との反応物の重量平均分子量(MW)は3000〜15000とし,なおかつ乾性油とフェノール類の反応率は15〜50重量%とするのが好ましい。さらに乾性油とフェノール類との反応物の重量平均分子量は6000〜12000であり,フェノール反応率は25〜40重量%であることがより好ましい。
【0013】
乾性油で変性する時の乾性油とフェノール類の反応物の重量平均分子量が3000未満であり、または乾性油とフェノールの反応率が15重量%未満では,乾性油変性フェノール樹脂の架橋密度が低く,耐熱性が劣る。乾性油とフェノール類の反応物の重量平均分子量が15000を超えるものは,乾性油の重合のみが進みすぎ,また反応率が50重量%を超えるものを得ることは通常の反応では難しく,乾性油変性フェノール樹脂が増粘したり,ワニスのライフ管理が困難を極める。また,紙への含浸性も低下し,積層板用フェノール樹脂としては適さない。
【0014】
乾性油変性フェノール樹脂の合成に用いる塩基触媒としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、アンモニアヘキサミン、ピリジン、炭酸ナトリウム又は第3級アミン等が挙げられる。またホルムアルデヒド源にはホルマリン水溶液のほか、パラホルムアルデヒドが好ましく用いられる。
【0015】
銅張積層板は,基材としてクラフト紙,リンター紙等の紙を,また,乾性油変性フェノール樹脂の乾性油としては,桐油,脱水ヒマシ油,アマニ油,オイチシカ油等が使用できる。銅はくは,通常接着剤付き銅はくを用いることができる。
【0016】
フェノール樹脂用フェノール類としては,フェノール,メタクレゾール,パラクレゾール,オルソクレゾール,イソプロピルフェノール,パラターシャリブチルフェノール,パライソプロペニルフェノールオリゴマー,ノニルフェノール,ビスフェノールA等を用いていることができる。
【0017】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては,特に制限はなく,通常積層板用として用いているエポキシ樹脂が使用できる。このようなエポキシ樹脂として,例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ノボラック型エポキシ樹脂,臭素化エポキシ樹脂などが挙げられ,これらは単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。
【0018】
また,乾性油変性フェノール樹脂ワニスとしては、リン酸エステルのようなリン系化合物,ブロム化フェノールやブロム化エポキシ化合物のようなブロム系化合物,メラミン化合物やトリアジン化合物のような窒素系化合物又は三酸化アンチモンのような無機化合物を単独または混合して添加し、難燃化している。なお、下塗り樹脂として水溶性フェノール樹脂あるいはメラミン樹脂で処理した紙基材を用いることが好ましい。
【0019】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
実施例1
(1)フェノール370部(重量部,以下同じ),パラトルエンスルホン酸0.2部,桐油230部を反応釜に仕込み,90℃で1時間反応させて,桐油とフェノールとの反応率が30重量%、重量平均分子量が10000とした桐油−フェノール付加反応物を得た。得られた桐油−フェノール付加反応物100部,パラホルムアルデヒド27部及び25重量%アンモニア水2.5部を反応釜に仕込み,75℃で2時間反応させた後,減圧下で脱水濃縮して,桐油変性フェノール樹脂を得た。得られた桐油変性フェノール樹脂100部に、エポキシ樹脂(商品名:DER331,ダウ・ケミカル日本株式会社製)を20部配合し、メタノールに溶解し,樹脂分50重量%の桐油変性フェノール樹脂ワニスとした。
【0021】
(2)フェノール1モルを反応釜に仕込み,これに37重量%ホルマリンをホルムアルデヒド換算で1.2モル相当量加え,次に30重量%トリメチルアミン水溶液をトリメチルアミン0.4モル相当量加え,70℃で6時間反応させ,これに,メタノールと水の等重量混合溶剤を加えて固形分20重量%の水溶性フェノール樹脂ワニスを調整した。
【0022】
上記水溶性フェノール樹脂ワニス(2)を,厚さ0.2mm,坪量125g/m2のクラフト紙に乾燥後の付着量が18重量%となるように含浸乾燥した。次に,前記で調整した桐油変性フェノール樹脂ワニス(1)を,乾燥後の付着樹脂分が50重量%になるように含浸乾燥し,所定の性能をもったプリプレグを得た。
【0023】
このプリプレグ8枚と接着剤付き銅はく1枚を重ね合わせ,170℃,10MPa、90分間加熱加圧して厚さ1.6mmの片面銅張積層板を得た。
【0024】
実施例2
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が15重量%であり,重量平均分子量が3000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0025】
実施例3
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が15重量%であり,重量平均分子量が10000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0026】
実施例4
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が50重量%であり,重量平均分子量が15000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0027】
実施例5
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が55重量%であり,重量平均分子量が15000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0028】
比較例1
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が30重量%であり,重量平均分子量が10000であり、またエポキシ樹脂(DER331)を3部配合した以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0029】
比較例2
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が30重量%であり,重量平均分子量が10000であり,またエポキシ樹脂(DER331)を40部配合した以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0030】
得られた積層板の打抜加工性,耐熱性,耐湿性及び臭気性試験を行った。その結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
打抜加工性:80トンプレスにより,穴間ピッチ1.78mm,穴径0.7mmで穴あけした時の,ST40℃でのはくり,目白,クラックの有無を評価する。尚,表1において打抜加工性の評価記号は,〇:良好,△:やや悪い,×:不良を示す。
はんだ耐熱性(JIS C 6481):260℃に加熱されたはんだ槽に試験片を浮かべ,ふくれを生ずるまでの時間を測定した。
絶縁抵抗(JIS C 6481):C−96/60/90吸湿処理後の試験片2極間の絶縁抵抗値を測定した。
臭気性:臭気センサー(装置名:新コスモス電機株式会社製ポータブル型ニオイセンサー XP−329型)にて測定した。
【0032】
【発明の効果】
実施例1〜5に示したように、本発明の銅張積層板は、30秒まではんだ槽で膨れが発生せず、臭気性も600以下である。それに対し、比較例2は、耐熱性は良いが、吸湿処理後の絶縁抵抗が実施例と比べ低いなど耐湿性と臭気性に劣る。また比較例1は、耐熱性及び臭気性に関して劣る。したがって、本発明の製造方法により得られた紙基材銅張積層板は,耐熱性,耐湿性,打抜加工性及び臭気性に優れる。
【発明の属する技術分野】
本発明は,耐熱性,耐湿性,打抜加工性及び臭気性に優れるフェノール樹脂積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂積層板などに用いられるレゾール型フェノール樹脂は,通常フェノール類とホルムアルデヒドを塩基性触媒の存在下に反応させたレゾール型フェノール樹脂であり,難燃性,耐熱性等様々な特性の付与が行われる。製造したレゾール型フェノール樹脂を紙基材等に含浸し,乾燥させ,プリプレグを作りそのプリプレグを重ねて加熱加圧し、紙基材フェノール樹脂積層板としている(特開平6−220225号公報、特開平6−228341号公報参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−220225号公報
【特許文献2】
特開平6−228341号公報
【0004】
紙基材フェノール樹脂積層板は,加工性が良いため,打抜加工が多用されている。しかし、フェノール類とホルムアルデヒドだけで合成されたフェノール樹脂は,硬く,可塑性が無く,紙基材フェノール樹脂積層板に要求されている打抜加工性が得られない。そのために,低弾性率の紙基材を使用する以外に、フェノール樹脂自体に可塑性を付与するようにしている。フェノール樹脂に可塑性を付与する手段としては,乾性油でフェノール樹脂を変性する手法が広く採用されている。
【0005】
また,基材としては,クラフト紙,リンター紙等の紙を用いる。紙基材に水溶性メラミン樹脂,または水溶性フェノール樹脂を含浸した後,乾性油変性フェノール樹脂を含浸して難燃性,耐湿性などを向上させる方法も知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,従来の方法では,フェノール類とホルムアルデヒドとの反応は,完全に進行せず,樹脂ワニス中には未反応フェノール類,未反応ホルムアルデヒドが残り,これらは積層板中にもそのまま残存する。乾性油変性フェノール樹脂において,乾性油で変性した際,フェノール類との反応率が低いと,その樹脂を用いたワニスは架橋密度が低く,耐熱性,耐湿性,打抜加工性が劣る。また,このような積層板を使用すると,プリント配線板に加工しても,ホルムアルデヒドやフェノール類等の低分子物ガスの臭気を発生する。そして,その臭気は,搭載部品が発熱したり,使用環境が高温である場合はガスの発生が促進され,より強くなる。そのために,機器周囲の環境を悪化させ,人体へ悪影響を及ぼす。
【0007】
本発明は,耐熱性に優れ、かつ未反応フェノール類とホルムアルデヒドとを低減し臭気性を低下させた樹脂銅張積層板の製造法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は,次のように構成される。
(1)紙基材に乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ねあわせ,加熱加圧成形してなる銅張積層板の製造方法において,乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合してなる乾性油変性フェノール樹脂ワニスを用いることを特徴とするフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
(2)(1)に記載の乾性油変性フェノール樹脂の初期反応時に乾性油とフェノール類の反応率(投入したフェノール量に対する反応したフェノール量の割合)が15〜50重量%になった後,ホルムアルデヒドと塩基触媒を添加し反応させることにより得られた乾性油変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする(1)に記載のフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
(3)フェノール類を乾性油で変性した乾性油−フェノール付加反応物の重量平均分子量が、3000〜15000である乾性油変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする(1)または(2)に記載のフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、フェノール類を乾性油で変性した乾性油−フェノール付加反応物の反応率(投入したフェノール量に対する,反応したフェノール量の割合)が5〜50重量%であり、なおかつ重量平均分子量が3000〜15000であることを特徴としている。そして、この乾性油−フェノール付加反応物にホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させ、乾性油変性フェノール樹脂を合成し、さらに乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合し,乾性油変性フェノール樹脂ワニスを作製する。そして、紙基材に前記乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ね併せ,加熱加圧成形して銅張積層板を製造する。
【0010】
紙基材に,予めメラミン樹脂で変性した水溶性フェノール樹脂を含浸乾燥させた後,更に前記乾性油変性フェノール樹脂とメラミン樹脂で変性した水溶性フェノール樹脂とを配合したワニスを含浸乾燥させても良い。
【0011】
乾性油変性フェノール樹脂ワニスに配合するエポキシ樹脂は、乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、5〜30重量部とするのが好ましく,5重量部未満では耐熱性などの効果が不十分であり,30重量部を超すと乾性油変性フェノール樹脂ワニスのライフが低下する。
【0012】
乾性油変性フェノール樹脂において,乾性油で変性する時の乾性油とフェノール類との反応物の重量平均分子量(MW)は3000〜15000とし,なおかつ乾性油とフェノール類の反応率は15〜50重量%とするのが好ましい。さらに乾性油とフェノール類との反応物の重量平均分子量は6000〜12000であり,フェノール反応率は25〜40重量%であることがより好ましい。
【0013】
乾性油で変性する時の乾性油とフェノール類の反応物の重量平均分子量が3000未満であり、または乾性油とフェノールの反応率が15重量%未満では,乾性油変性フェノール樹脂の架橋密度が低く,耐熱性が劣る。乾性油とフェノール類の反応物の重量平均分子量が15000を超えるものは,乾性油の重合のみが進みすぎ,また反応率が50重量%を超えるものを得ることは通常の反応では難しく,乾性油変性フェノール樹脂が増粘したり,ワニスのライフ管理が困難を極める。また,紙への含浸性も低下し,積層板用フェノール樹脂としては適さない。
【0014】
乾性油変性フェノール樹脂の合成に用いる塩基触媒としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、アンモニアヘキサミン、ピリジン、炭酸ナトリウム又は第3級アミン等が挙げられる。またホルムアルデヒド源にはホルマリン水溶液のほか、パラホルムアルデヒドが好ましく用いられる。
【0015】
銅張積層板は,基材としてクラフト紙,リンター紙等の紙を,また,乾性油変性フェノール樹脂の乾性油としては,桐油,脱水ヒマシ油,アマニ油,オイチシカ油等が使用できる。銅はくは,通常接着剤付き銅はくを用いることができる。
【0016】
フェノール樹脂用フェノール類としては,フェノール,メタクレゾール,パラクレゾール,オルソクレゾール,イソプロピルフェノール,パラターシャリブチルフェノール,パライソプロペニルフェノールオリゴマー,ノニルフェノール,ビスフェノールA等を用いていることができる。
【0017】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては,特に制限はなく,通常積層板用として用いているエポキシ樹脂が使用できる。このようなエポキシ樹脂として,例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ノボラック型エポキシ樹脂,臭素化エポキシ樹脂などが挙げられ,これらは単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。
【0018】
また,乾性油変性フェノール樹脂ワニスとしては、リン酸エステルのようなリン系化合物,ブロム化フェノールやブロム化エポキシ化合物のようなブロム系化合物,メラミン化合物やトリアジン化合物のような窒素系化合物又は三酸化アンチモンのような無機化合物を単独または混合して添加し、難燃化している。なお、下塗り樹脂として水溶性フェノール樹脂あるいはメラミン樹脂で処理した紙基材を用いることが好ましい。
【0019】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
実施例1
(1)フェノール370部(重量部,以下同じ),パラトルエンスルホン酸0.2部,桐油230部を反応釜に仕込み,90℃で1時間反応させて,桐油とフェノールとの反応率が30重量%、重量平均分子量が10000とした桐油−フェノール付加反応物を得た。得られた桐油−フェノール付加反応物100部,パラホルムアルデヒド27部及び25重量%アンモニア水2.5部を反応釜に仕込み,75℃で2時間反応させた後,減圧下で脱水濃縮して,桐油変性フェノール樹脂を得た。得られた桐油変性フェノール樹脂100部に、エポキシ樹脂(商品名:DER331,ダウ・ケミカル日本株式会社製)を20部配合し、メタノールに溶解し,樹脂分50重量%の桐油変性フェノール樹脂ワニスとした。
【0021】
(2)フェノール1モルを反応釜に仕込み,これに37重量%ホルマリンをホルムアルデヒド換算で1.2モル相当量加え,次に30重量%トリメチルアミン水溶液をトリメチルアミン0.4モル相当量加え,70℃で6時間反応させ,これに,メタノールと水の等重量混合溶剤を加えて固形分20重量%の水溶性フェノール樹脂ワニスを調整した。
【0022】
上記水溶性フェノール樹脂ワニス(2)を,厚さ0.2mm,坪量125g/m2のクラフト紙に乾燥後の付着量が18重量%となるように含浸乾燥した。次に,前記で調整した桐油変性フェノール樹脂ワニス(1)を,乾燥後の付着樹脂分が50重量%になるように含浸乾燥し,所定の性能をもったプリプレグを得た。
【0023】
このプリプレグ8枚と接着剤付き銅はく1枚を重ね合わせ,170℃,10MPa、90分間加熱加圧して厚さ1.6mmの片面銅張積層板を得た。
【0024】
実施例2
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が15重量%であり,重量平均分子量が3000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0025】
実施例3
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が15重量%であり,重量平均分子量が10000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0026】
実施例4
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が50重量%であり,重量平均分子量が15000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0027】
実施例5
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が55重量%であり,重量平均分子量が15000である以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0028】
比較例1
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が30重量%であり,重量平均分子量が10000であり、またエポキシ樹脂(DER331)を3部配合した以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0029】
比較例2
使用する桐油−フェノール付加反応物の桐油とフェノールの反応率が30重量%であり,重量平均分子量が10000であり,またエポキシ樹脂(DER331)を40部配合した以外は実施例1と全く同様条件にて銅張積層板を得た。
【0030】
得られた積層板の打抜加工性,耐熱性,耐湿性及び臭気性試験を行った。その結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
打抜加工性:80トンプレスにより,穴間ピッチ1.78mm,穴径0.7mmで穴あけした時の,ST40℃でのはくり,目白,クラックの有無を評価する。尚,表1において打抜加工性の評価記号は,〇:良好,△:やや悪い,×:不良を示す。
はんだ耐熱性(JIS C 6481):260℃に加熱されたはんだ槽に試験片を浮かべ,ふくれを生ずるまでの時間を測定した。
絶縁抵抗(JIS C 6481):C−96/60/90吸湿処理後の試験片2極間の絶縁抵抗値を測定した。
臭気性:臭気センサー(装置名:新コスモス電機株式会社製ポータブル型ニオイセンサー XP−329型)にて測定した。
【0032】
【発明の効果】
実施例1〜5に示したように、本発明の銅張積層板は、30秒まではんだ槽で膨れが発生せず、臭気性も600以下である。それに対し、比較例2は、耐熱性は良いが、吸湿処理後の絶縁抵抗が実施例と比べ低いなど耐湿性と臭気性に劣る。また比較例1は、耐熱性及び臭気性に関して劣る。したがって、本発明の製造方法により得られた紙基材銅張積層板は,耐熱性,耐湿性,打抜加工性及び臭気性に優れる。
Claims (3)
- 紙基材に乾性油変性フェノール樹脂ワニスを含浸し,加熱乾燥させプリプレグを作製し,これを複数枚重ね,その片面若しくは両面に接着剤付き銅はくを重ねあわせ,加熱加圧成形してなる銅張積層板の製造方法において,乾性油変性フェノール樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂を5〜30重量部配合してなる乾性油変性フェノール樹脂ワニスを用いることを特徴とするフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
- 請求項1に記載の乾性油変性フェノール樹脂の初期反応時に乾性油とフェノール類の反応率(投入したフェノール量に対する反応したフェノール量の割合)が15〜50重量%になった後,ホルムアルデヒドと塩基触媒を添加して反応させることにより得られた乾性油変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
- フェノール類を乾性油で変性した乾性油−フェノール付加反応物の重量平均分子量(MW)が、3000〜15000である乾性油変性フェノール樹脂を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のフェノール樹脂銅張積層板の製造方法。
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