JP4893185B2 - フェノール樹脂組成物、プリプレグ及びフェノール樹脂積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、プリント配線板等の製造に用いられるフェノール樹脂組成物、プリプレグ及びフェノール樹脂積層体に関する。
従来、プリント配線板等の製造に用いられる難燃性フェノール樹脂積層体は、臭素系難燃剤を含有するフェノール樹脂組成物のワニスを基材に含浸させた後、乾燥させてプリプレグを作製し、そのプリプレグを複数枚積層して加熱加圧成形することにより製造されていた。
しかし、近年、環境負荷を低減させるために、臭素系難燃剤を使用しない難燃性フェノール樹脂積層体が求められている。臭素を含有しない難燃剤としてはリン酸エステル系難燃剤が知られている。しかしながら、リン酸エステル系難燃剤を充分な難燃性を付与するのに必要な量を添加した場合には、難燃性フェノール樹脂積層体の難燃性は確保できるが、ハンダ耐熱性や層間接着性が低いという問題があった。
上記問題を解決する技術として、下記特許文献1には、臭素系難燃剤を使用しなくともハンダ耐熱性や層間接着性に優れた難燃性フェノール樹脂積層体を作製することができるフェノール樹脂組成物が記載されている。
前記フェノール樹脂組成物は、乾性油変性レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、リン酸エステル25〜70質量部、分子中に反応基が2個以上あるノンハロゲン系エポキシ樹脂2〜40質量部を配合してなるもので、このような構成により、ハンダ耐熱性や層間接着性に優れた難燃性フェノール樹脂積層体を提供することができる。
特開2002−220508号公報
しかし、特許文献1に記載のフェノール樹脂組成物を用いて高密度プリント配線基板等を製造した場合、スルーホール部における銀・銅ペーストのマイグレーションによる絶縁性の低下が生じるという問題、また、鉛フリーハンダを用いたリフロー実装の際に基板表面の金属箔に膨れ等が生じたり、難燃性が不充分であるという問題があった。
本発明は、前記問題を解決すること、すなわち、耐マイグレーション性に優れ、また、鉛フリーハンダを用いたリフロー実装において、基板表面に張り合わせた金属箔に膨れの発生が少なく、さらに、高い難燃性を有するプリント配線基板等の製造に用いられるフェノール樹脂組成物を提供することにある。
本発明のフェノール樹脂組成物は、乾性油変性フェノール樹脂100質量部に対し、トリ3,5−キシレニルホスフェート25〜70質量部を含有することを特徴とする。このような構成により得られるフェノール樹脂組成物を用いて得られるプリント配線基板等は、耐マイグレーション性に優れ、また、鉛フリーハンダを用いたリフロー実装において、基板表面の金属箔や積層体の層間における膨れの発生(以下、単に膨れともいう)が少なく、かつ、高い難燃性を有する。また、基板に穴あけ加工する際の、打ち抜き加工性にも優れている。
また、前記乾性油変性フェノール樹脂100質量部に対し、更に、分子中にエポキシ基及びエポキシ誘導体基からなる群から選ばれる反応基を2個以上有するノンハロゲン系エポキシ樹脂2〜40質量部を含有するフェノール樹脂組成物は、更に高い温度におけるリフロー実装においても前記膨れの発生が少ないプリント配線基板等が得られる点から好ましい。
また、本発明のプリプレグは、上記フェノール樹脂組成物のワニスを基材に含浸させた後、乾燥させることにより得られることを特徴とする。このようなプリプレグを用いれば、耐マイグレーション性に優れ、また、前記金属箔の膨れの発生が少なく、かつ、高い難燃性を有するプリント配線基板等の作製が可能となる。
また、前記基材が坪量120g/m以下のクラフト紙である場合には、フェノール樹脂組成物が基材中に充分浸透するために、より耐マイグレーション性に優れたプリント配線基板等の作製が可能となる。
さらに、本発明のフェノール樹脂積層体は、前記プリプレグを含有するプリプレグ積層体を加熱加圧成形して形成されることを特徴とする。このようなフェノール樹脂積層体から形成されるプリント配線基板等は耐マイグレーション性に優れ、また、前記膨れの発生が少なく、かつ、高い難燃性を有する。
また、前記フェノール樹脂積層体としては、前記プリプレグ積層体がプリプレグを少なくとも3枚積層して形成されるものであり、前記積層体の少なくとも1つの最外層に配置されるプリプレグが、リン酸エステルを含有しないフェノール樹脂組成物ワニスを基材に含浸させた後、乾燥させることにより形成されるプリプレグであることが好ましい。このような構成によれば、表層である最外層にリン酸エステルが存在している場合に比較してリン酸エステルが加水分解され難くなるために、より耐マイグレーション性に優れたプリント配線基板を得るための難燃性フェノール樹脂積層体を得ることができる。
本発明のフェノール樹脂組成物は、得られるプリント基板等の耐マイグレーション性に優れ、また、鉛フリーハンダを用いたリフロー実装において、基板表面の金属箔や積層体の層間における膨れの発生が少なく、かつ、高い難燃性を有する難燃性フェノール樹脂積層体を提供しうる。また、このようにして得られる前記積層体は、穴あけ加工性にも優れたものである。
本発明のフェノール樹脂組成物は、乾性油変性フェノール樹脂100質量部に対し、トリ3,5−キシレニルホスフェート25〜70質量部を含有することを特徴とするものである。
前記乾性油変性フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドと乾性油とを反応させて得ることができる。
前記フェノール類としては、フェノールの他、クレゾール等のアルキルフェノール、ビスフェノール等、種々のフェノール化合物を用いることが可能である。これらは一種のみを単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また乾性油としては、桐油の他、アマニ油、脱水ヒマシ油等、種々の乾性油が挙げられる。
なお、フェノール類を乾性油で変性させるための反応は、フェノール類と乾性油とを酸触媒存在下で反応させるなどの、公知の手法により行うことができる。
本発明に用いられるトリ3,5−キシレニルホスフェートは、2個のメチル基による立体障害効果により過酷な温湿度条件下でも加水分解され難く、また、乾性油フェノール樹脂との相溶性が高いために樹脂組成物中で均一に分散するために、得られる積層体に高い難燃性、耐マイグレーション性及び穴あけ加工性を付与することができる。
トリ3,5−キシレニルホスフェートの配合割合は、前記乾性油変性フェノール樹脂100質量部に対して、前記リン酸エステル25〜70質量部、好ましくは35〜60質量部である。トリ3,5−キシレニルホスフェートの配合割合が25質量部未満の場合には難燃性を充分に付与することができず、また前記配合割合70質量部を超えると、フェノール樹脂組成物の耐熱性が低下する。
本発明のフェノール樹脂組成物には、前記乾性油変性フェノール樹脂100質量部に対して、更に、分子中にエポキシ基及びエポキシ誘導体基からなる群から選ばれる反応基を2個以上有するノンハロゲン系エポキシ樹脂2〜40質量部を含有することが好ましい。この場合には、更に耐熱性に優れたフェノール樹脂硬化体が得られる点から好ましい。
前記ノンハロゲン系エポキシ樹脂は、分子中にハロゲンを含まないエポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記ノンハロゲン系エポキシ樹脂が分子中にエポキシ基及びエポキシ誘導体基からなる群から選ばれる反応基を1個しか有しない場合、ノンハロゲン系エポキシ樹脂はフェノール樹脂組成物中で重合して硬化するが架橋反応を起こさないため、フェノール樹脂積層体における金属箔の接着性を向上させる効果が乏しく、加熱時の膨れ防止などの耐熱性向上に充分に寄与することがないからである。
そして、上述のフェノール樹脂組成物のワニスを基材に含浸させた後、乾燥させることにより、フェノール樹脂が半硬化してBステージ状態のプリプレグが得られる。
前記基材としては、クラフト紙やリンター紙等のパルプ紙、または、これらのパルプ紙に無機物又は有機物を混入した改質紙、ガラスクロスなど、プリプレグの基材として公知常用の基材が挙げられる。これらの中ではクラフト紙が好ましく用いられる。
前記クラフト紙としては、特に、坪量120g/m以下のクラフト紙を用いた場合には、フェノール樹脂組成物のワニスを基材中に充分浸透させることができる。その結果、難燃性と耐マイグレーション性に特に優れた難燃性フェノール樹脂積層体が得られる点から好ましい。クラフト紙の坪量の下限値は特に限定されないが、プリプレグの形状保持性や強度等の点から、100g/m程度であることが好ましい。
なお、前記フェノール樹脂組成物のワニスの調製は、メタノール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等を単独または複数種混合したものを溶剤とし、所定の粘度に調整することにより行われる。
前記基材としてパルプ紙類を用いる場合には、前記基材をフェノール樹脂、アミノ樹脂等のワニスを予め含浸させて乾燥させた後(一次含浸)、さらに、本発明のフェノール樹脂組成物のワニスを含浸させて乾燥させる(二次含浸)ことが、基材中に前記フェノール樹脂組成物を充分に浸透させることができ、より、耐熱性に優れた難燃性フェノール樹脂積層体が得られる点から好ましい。なお、前記一次含浸の処理には、本発明のフェノール樹脂組成物を用いてもよい。
そして、このようなプリプレグを用いてプリプレグ積層体を形成し、加熱加圧成形することによりフェノール樹脂積層体が得られる。
前記プリプレグ積層体は、一枚又は複数枚のプリプレグを積層し、さらに必要に応じて銅箔等の金属箔と共に積層することにより得られる。そして、前記プリプレグ積層体を加熱加圧成形することにより、プリプレグ中の樹脂成分が硬化してプリント配線基板等の製造に用いられるフェノール樹脂積層体が得られる。
本発明のフェノール樹脂積層体としては、前記プリプレグ積層体がプリプレグを少なくとも3枚積層して形成されるものであり、前記プリプレグ積層体の少なくとも1つの最外層に配置されるプリプレグが、リン酸エステルを含有しないフェノール樹脂組成物ワニスを基材に含浸させた後、乾燥させることにより形成されるプリプレグであることが好ましい。このような構成の場合には、前記プリプレグ積層体の内層部には本発明のプリプレグが配置して、難燃性を充分に確保し、一方、前記積層体の最外層にはリン酸エステルを含有しないフェノール樹脂組成物を用いたプリプレグが配置される。そして、このようなプリプレグ積層体を加熱加圧成形により積層一体化することにより、耐マイグレーション性に優れ、また、鉛フリーハンダを用いたリフロー実装において、表面に張り合わせた金属箔に膨れの発生が少なく、穴あけ加工性にも優れ、且つ、高い難燃性を有するプリント配線基板等の製造に用いられる難燃性フェノール樹脂積層体を得ることができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
フェノール100質量部、37質量%ホルムアルデヒド溶液(ホルマリン)70質量部を触媒(トリエチルアミン2質量部)の存在下で、80℃で1時間反応させて、レゾール型フェノール樹脂を得た。また、メラミン100質量部、37質量%ホルムアルデヒド溶液100質量部を触媒(トリエチルアミン2質量部)の存在下で、80℃で1時間反応させてメラミン樹脂を得た。
このレゾール型フェノール樹脂50質量部とメラミン樹脂50質量部を混合し、水とメタノールで希釈し、固形分25質量%の一次含浸用の樹脂ワニスを調製した。
この一次含浸用の樹脂ワニスを坪量126g/mのクラフト紙に含浸させ、135℃の乾燥機内で30秒間加熱乾燥して、樹脂含有量(固形分)が42g/mの一次含浸されたプリプレグ(A)を得た。
一方、フェノール100質量部、桐油30質量部を、触媒(パラトルエンスルホン酸0.4質量部)の存在下で80℃で2時間反応させて桐油フェノール反応物を得た。次いで得られた桐油フェノール反応物に37質量%ホルムアルデヒド溶液80質量部を添加し、触媒(トリエチルアミン4質量部)の存在下で、80℃で3時間反応させ、その反応液を20.0kPa(150mmHg)の減圧下で脱水し、桐油変性フェノール樹脂を得た。この桐油変性フェノール樹脂100質量部にトリ3,5−キシレニルホスフェート50質量部を添加した後、メタノールで希釈を行い固形分60質量%の二次含浸用のフェノール樹脂組成物ワニスを得た。
この二次含浸用のフェノール樹脂組成物ワニスを上記一次含浸されたプリプレグに含浸した後、155℃の乾燥機で200秒間加熱乾燥することにより坪量248g/mの二次含浸されたプリプレグ(B)を得た。
次いで、プリプレグ(B)を8枚重ね、さらに、その表裏両面に厚さ0.035mmの銅箔を接着剤を介して配することによりプリプレグ積層体を得た。そして、前記プリプレグ積層体を圧力9.81MPa(100kg/cm)、温度160℃の条件で80分間加熱加圧することにより、厚さ1.6mmの銅張りフェノール樹脂積層体を作製した。
得られた銅張りフェノール樹脂積層体は、以下の評価方法により評価した。結果を表1に示す。
〈リフロー膨れ評価〉
前記銅張りフェノール樹脂積層体をリフロー槽に入れ、150℃・2分間の予備加熱後、ピーク温度255℃又は260℃とし、230℃以上で40秒間維持するような、一般的な鉛フリーハンダのリフロー条件に供したときの、外観の膨れの有無を確認した。
〈耐マイグレーション性評価〉
前記銅張りフェノール樹脂積層体にスルーホール径0.5mm、穴間ピッチ1.5mm、穴数200個のスルーホールを設け、温度85℃、湿度90%の恒温恒湿室中で50Vの電圧を240時間印加した後の、スルーホール間の絶縁抵抗を計測した。
〈難燃性評価〉
UL−94試験方法に基づいて、試験し、判定した。
〈穴あけ加工性〉
穴あけ加工性は、得られた積層体にパンチング加工し、そのときのクラック及び層間剥離の発生の有無を目視観察した。
パンチング加工は、穴径1.0mm、穴間のピッチ2.5mmの14ピン金型を用い、90度の温度でパンチング加工を行った。そして、穴の断面を研磨した後、目視して、穴間にクラックが見られず、また、層間に剥離が見られないときを○、クラック又は剥離が見られたときを×と判定した。
(実施例2)
前記桐油変性フェノール樹脂100質量部に対して、トリ3,5−キシレニルホスフェート59質量部配合し、更に、分子中に反応基が2個ある当量150のノンハロゲン系エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、品番「EP850」;官能基数2個)20質量部を添加した以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
坪量126g/mのクラフト紙の代わりに、坪量120g/mのクラフト紙を用いた以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例4)
坪量126g/mのクラフト紙の代わりに、坪量110g/mのクラフト紙を用いた以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1と同様にして得られた桐油変性フェノール樹脂をメタノールで希釈し、固形分60質量%の二次含浸用のフェノール樹脂組成物ワニスを得た。このフェノール樹脂組成物ワニスを、実施例1と同様の一次含浸されたプリプレグ(A)に含浸し、155℃の乾燥機で200秒間加熱乾燥して、坪量248g/mである二次含浸したプリプレグ(C)を得た。
一方、実施例1と同様にして得られた桐油変性フェノール樹脂100質量部に、トリ3,5―キシレニルホスフェート67質量部を添加した後、メタノールで希釈し、固形分60質量%の二次含浸用のフェノール樹脂組成物ワニスを得た。
このフェノール樹脂組成物ワニスを、実施例1と同様の一次含浸されたプリプレグ(A)に含浸し、155℃の乾燥機で200秒間加熱乾燥して、坪量248g/m である二次含浸したプリプレグ(D)を得た。
そして、プリプレグ(D)を6枚重ね、更に、その表裏両面にプリプレグ(C)を各1枚重ね合わせ、最後にその表裏の両最外層に厚さ0.035mmの銅箔を接着剤を介して配してプリプレグ積層体を得た。そして前記プリプレグ積層体を実施例1と同様の条件で加熱加圧成形して、厚さ1.6mmの銅張りフェノール樹脂積層体を作製した。
そして実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
リン酸エステルとして、トリ3,5−キシレニルホスフェートの代わりにトリクレジルホスフェートを用いた以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
リン酸エステルとして、トリ3,5−キシレニルホスフェートの代わりにトリ2,6−キシレニルホスフェートを用いた以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
リン酸エステルとして、トリ3,5−キシレニルホスフェートの代わりにクレジルジフェニルホスフェートを用いた以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(比較例4)
リン酸エステルとして、トリ3,5−キシレニルホスフェートの代わりに芳香族縮合リン酸エステル(大八化学工業社製、CR733S)を用いた以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(比較例5)
リン酸エステルを用いなかった以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
(比較例5及び比較例6)
トリ3,5−キシレニルホスフェートの配合量を表1に記載の量にした以外は実施例1と同様にして銅張りフェノール樹脂積層体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 0004893185
表1の結果より、乾性油変性フェノール樹脂とトリ3,5−キシレニルホスフェートとを含有するフェノール樹脂組成物により得られた実施例1〜5のフェノール樹脂積層体においては、いずれも、耐マイグレーション性に優れている。また、一般的な鉛フリーリフローハンダ条件である、ピーク温度255℃の条件におけるリフローハンダ処理に供しても、膨れが発生しなかった。さらに、穴あけ加工性にも優れていた。
そして、UL94に準じた難燃性評価においても、いずれもV−0級であり、また、その平均燃焼時間は2〜2.5秒であり、最大燃焼時間も7秒であり、高い難燃性を有するものであった。
一方、その他のリン酸エステル系難燃剤を用いた比較例1〜4においては、耐マイグレーション性が低かったり、膨れが生じたり、難燃性が低かったり、穴あけ加工性が悪かったりした。すなわち、トリクレジルホスフェートを用いた比較例1の場合には、トリ3,5−キシレニルホスフェートを用いた実施例1に比べて、耐マイグレーション評価における絶縁抵抗が1桁以上低かった。また、トリ2,6−キシレニルホスフェートを用いた比較例2の場合には、穴あけ加工性が悪く、また、実施例1に比べて、難燃性評価における平均燃焼時間が長く、また最大燃焼時間も9秒であり、かろうじてV−0級の結果が得られた。
同様に、クレジルジフェニルホスフェートを用いた比較例3、芳香族縮合リン酸エステルを用いた比較例4の場合には、実施例1に比べて、耐マイグレーション評価における絶縁抵抗が3桁以上も低かった。
以上の結果から、本発明のフェノール樹脂組成物によれば、耐マイグレーション性に優れ、また、鉛フリーハンダを用いたリフロー実装において基板表面に張り合わせた金属箔に膨れの発生が少なく、穴あけ加工性に優れ、さらに、高い難燃性を有するプリント配線基板等の製造に用いられる積層体が得られうることがわかる。

Claims (6)

  1. 桐油変性フェノール樹脂100質量部に対し、トリ3,5−キシレニルホスフェート25〜70質量部を含有することを特徴とするフェノール樹脂組成物。
  2. 前記桐油変性フェノール樹脂100質量部に対し、更に、分子中にエポキシ基及びエポキシ誘導体基からなる群から選ばれる反応基を2個以上有するノンハロゲンエポキシ樹脂2〜40質量部を含有する請求項1に記載のフェノール樹脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のフェノール樹脂組成物のワニスを基材に含浸させた後、乾燥させることにより得られることを特徴とするプリプレグ。
  4. 前記基材が坪量120g/m以下のクラフト紙である請求項3に記載のプリプレグ。
  5. 請求項3又は請求項4のプリプレグを含有するプリプレグの積層体を加熱加圧成形して形成されることを特徴とするフェノール樹脂積層体。
  6. 前記プリプレグの積層体がプリプレグを少なくとも3枚積層して形成されるものであり、前記積層体の少なくとも1つの最外層に配置されるプリプレグが、リン酸エステルを含有しないフェノール樹脂組成物ワニスを基材に含浸させた後、乾燥させることにより形成されるプリプレグである請求項5に記載のフェノール樹脂積層体。
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