JP4809264B2 - コイル内蔵基板 - Google Patents

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Description

本発明は、コイル導体が埋設されたフェライト磁性体層が絶縁層の内部に設けられたコイル内蔵基板に関するものである。
従来から、携帯電話機をはじめとする移動体通信機器等の電子機器には多数の電子装置が組み込まれており、電子機器の小型化が急激に進んでいるのに伴い各種電子装置も小型化や薄型化が要求されている。各種電子装置の小型化・薄型化の一例としては、従来は比較的大型のチップコイルやチップコンデンサを基板に搭載して形成されていたLCフィルタに、ガラスセラミックスからなる絶縁層が積層されたセラミック基板の内部にコイル導体を形成したコイル内蔵基板が用いられている。
しかしながら、携帯電話機に用いられるDC−DCコンバータ用途のような比較的高いインダクタンスを必要とする電子装置では、磁性を持たないセラミック基板内にコイルを形成しているため、100nH程度の比較的大きなインダクタンスを得るためにはコイル導体の巻き数を多くしなければならず、小型化や薄型化を効果的に達成することができないという不具合があった。
そこで、近年では、セラミック基板の内部に高透磁率を有するフェライト磁性体層を形成し、このフェライト磁性体層にコイル導体を埋設することにより、コイルの巻き数を多くすることなくインダクタンスが100nHを超えるコイルを内蔵させ、高インダクタンスのコイル内蔵基板とすることが行なわれている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
このようなコイル内蔵基板は、例えば、図10に断面図で示すように、配線層16が形成された一対の絶縁層11・11と、絶縁層11・11に挟まれて積層されるとともに内部に平面コイル導体13が埋設されたフェライト磁性体層12とによって構成されている。配線層16や平面コイル導体13には、抵抗による電気的なロスを抑えるために低抵抗のCuやAgなどの低抵抗金属を用いる必要があり、このような低抵抗金属は比較的低融点であることから、絶縁層11としてガラスセラミックスを用い、フェライト磁性体層12として低温焼成が可能なNi−Zn系フェライトを用いて同時焼成することによって製造されている。そして、配線層16には、コイル内蔵基板を外部基板に接続するための電極パッドからIC搭載用電極間に生じるインダクタンス成分を削減し、搭載するICの電源ノイズを削減させるための大面積の接地導体層が形成されている。この接地導体層は、絶縁層11とフェライト磁性体層12との間に生じる、焼成収縮挙動の差や熱膨張係数の差に起因する応力を緩和して、絶縁層11とフェライト磁性体層12との接合をより強固にするために、絶縁層11とフェライト磁性体層12との間に形成されることが行なわれている。
特開平6−20839号公報 特開平6−21264号公報
しかしながら、近年DC−DCコンバータが電源を供給するICなどは低電圧で動作するようになってきており、これに伴ってDC−DCコンバータに流れる電流が年々大きくなってきている。このためDC−DCコンバータ用途のコイル内蔵基板においては、平面コイル導体に低抵抗金属を用いても熱が発生しやすくなっており、この熱の影響によってICが誤動作をしてしまうというおそれが高まってきている。この不具合を防止するためには、平面コイル導体のライン幅を大きくすることによってさらに抵抗を低くすることが考えられるが、これは小型化や薄型化の要求に反することになる。
本発明は上記従来の問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、高周波で高インダクタンス値が得られる、例えば、小型で低背のDC−DCコンバータ用途のコイル内蔵基板において、平面コイル導体で発生した熱に起因してICが誤動作することなく、大電流を流すことができるコイル内蔵基板を提供することにある。
本発明のコイル内蔵基板は、配線層が形成された一対の絶縁層および該一対の絶縁層に挟持されたフェライト磁性体層からなる基板と、前記フェライト磁性体層内に形成された平面コイル導体とを具備するコイル内蔵基板であって、前記平面コイル導体に直接接続さ
れ、前記フェライト磁性体層から前記基板の主面にかけて前記フェライト磁性体層および前記絶縁層を貫通する、前記フェライト磁性体層および前記絶縁層より熱伝導率の大きい伝熱用貫通絶縁体が形成され、前記基板の前記主面に前記伝熱用貫通絶縁体が接続された放熱用導体層が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記平面コイル導体が複数巻きであり、隣接する外周と内周の平面コイル導体間に前記フェライト磁性体層より熱伝導率の大きい伝熱用絶縁層が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記平面コイル導体が、間に前記フェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、前記伝熱用貫通絶縁体が、上下に位置する前記平面コイル導体間にも形成されて上下に位置する前記平面コイル導体に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記平面コイル導体が上下に複数設けられ、前記伝熱用絶縁層が、上下に位置する前記平面コイル導体間に形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明のコイル内蔵基板は、上記構成において、前記伝熱用貫通絶縁体は、その横断面積が前記フェライト磁性体層側より前記基板の主面側の方が大きいことを特徴とするものである。
本発明のコイル内蔵基板によれば、平面コイル導体に直接接続され、フェライト磁性体層から基板の主面にかけてフェライト磁性体層および絶縁層を貫通する、フェライト磁性体層および絶縁層より熱伝導率の大きい伝熱用貫通絶縁体が形成され、基板の主面に伝熱用貫通絶縁体が接続された放熱用導体層が形成されていることから、平面コイル導体において発生した熱を伝熱用貫通絶縁体を介して放熱用導体層から外部へ放熱することができる。その結果、搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体から発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、平面コイル導体が複数巻きであり、隣接する外周と内周の平面コイル導体間にフェライト磁性体層より熱伝導率の大きい伝熱用絶縁層を形成した場合には、例えば最外周の平面コイル導体に伝熱用貫通絶縁体を接続したとしても、外周と内周の平面コイル導体間に形成された伝熱用絶縁層が、最内周の平面コイル導体において発生した熱が伝熱用貫通絶縁体に伝わるための経路となるので、より効率よく伝熱用貫通絶縁体を介して放熱することができる。
さらに、隣接する外周と内周の平面コイル導体間にフェライト磁性体層に比較して透磁率の小さい伝熱用絶縁層が存在することから、平面コイル導体に流れる電流が大きい場合であっても、磁束が隣接する外周と内周の平面コイル導体間を通過しにくいので、隣接する外周と内周の平面コイル導体間において漏れ磁束が発生しにくくなり、これにより磁気飽和が抑制され、重畳特性の低下を抑制することができる。
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、平面コイル導体が、間にフェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、伝熱用貫通絶縁体が、上下に位置する平面コイル導体間にも形成されて上下に位置する平面コイル導体に接続されている場合には、例えば上に位置する平面コイル導体において発生した熱を間に形成した伝熱用貫通絶縁体を介して下に位置する平面コイル導体へ伝え、そして下に位置する平面コイル導体に接続されて基板の主面にかけて形成された伝熱用貫通絶縁体を介して放熱用導体層へ伝えることができるので、上下に設けられた平面コイル導体において発生した熱をより効率よく放熱用導体層を介して基板の外部へ放熱することができる。
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、平面コイル導体が上下に複数設けられ、伝熱用絶縁層が、上下に位置する平面コイル導体間に形成されている場合には、伝熱用絶縁層は平面コイル導体の全域にわたって接続されることから、上に位置する平面コイル導体において発生した熱を間に形成した伝熱用絶縁層を介して下に位置する平面コイル導体へより効率よく伝えることができるので、上下に設けられた平面コイル導体において発生した熱をより効率よく伝熱用貫通絶縁体および放熱用導体層を介して基板の外部へ放熱することができる。
また、本発明のコイル内蔵基板によれば、上記構成において、伝熱用貫通絶縁体の横断面積がフェライト磁性体層側より基板の主面側の方が大きい場合には、伝熱用貫通絶縁体中におけるフェライト磁性体層側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通絶縁体に伝わった熱は、より効率よく放熱用導体層へと伝えられ、放熱用導体層を介してより効率よく外部へ放熱される。
本発明のコイル内蔵基板(以下、基板ともいう。)を、添付図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図1(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図1(b)のB−B線で切断した縦断面図)、図1(b)は図1(a)のA−A線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、1は絶縁層、2はフェライト磁性体層、3は平面コイル導体、4は伝熱用貫通絶縁体、5は放熱用導体層、6は配線層である。
図1に示す例においては、配線層6として、絶縁層1の外表面(基板の上面および下面)にはIC等の半導体チップやチップ部品が搭載される搭載用電極6bおよび外部電気回路と電気的に接続される電極パッド6dが形成され、絶縁層1の内部には内部配線層6aが形成されている。そして、内部配線層6a,搭載用電極6b,電極パッド6dおよび平面コイル導体3は、絶縁層1あるいはフェライト磁性体層2を貫通した貫通導体6cを介して互いに接続されている。
本発明のコイル内蔵基板は、配線層6が形成された一対の絶縁層1・1およびこの一対の絶縁層1・1に挟持されたフェライト磁性体層2からなる基板と、フェライト磁性体層2内に形成された平面コイル導体3とを具備するコイル内蔵基板であって、平面コイル導体3に直接接続され、フェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層を貫通する、フェライト磁性体層2および絶縁層1より熱伝導率の大きい伝熱用貫通絶縁体4が形成され、基板の主面に伝熱用貫通絶縁体4が接続された放熱用導体層5が形成されていることを特徴とするものである。
本発明のコイル内蔵基板によれば、このような構成により、平面コイル導体3において発生した熱を伝熱用貫通絶縁体4を介して放熱用導体層5から外部へ放熱することができる。その結果、搭載用電極6bに搭載したICなどの電子部品が平面コイル導体3から発生する熱によって誤動作してしまうことを防止することができる。伝熱用貫通絶縁体4は絶縁体であることから、平面コイル導体3に直接接続されるので、平面コイル導体3において発生した熱を放熱用導体層5へ効率よく伝えることができるとともに、平面コイル導体3の周りに発生した磁束を吸収してしまうことがないので、磁束の通過を大きく妨げることがなく、インダクタンスを大きく低下させてしまうことがない。
図2は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図2(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図2(b)のB−B線で切断した縦断面図)、図2(b)は図2(a)のA−A線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、7は伝熱用絶縁層である。図2に示すように、上記構成において、平面コイル導体3が複数巻きであり、隣接する外周と内周の平面コイル導体3間にフェライト磁性体層2より熱伝導率の大きい伝熱用絶縁層7が形成されていることが好ましい。この構成により、隣接する外周と内周の平面コイル導体3間にフェライト磁性体層2に比較して透磁率の小さい伝熱用絶縁層7が存在することから、平面コイル導体3に流れる電流が大きい場合であっても、磁束が隣接する外周と内周の平面コイル導体3間を通過しにくいので、隣接する外周と内周の平面コイル導体3間において漏れ磁束が発生しにくくなり、これにより磁気飽和が抑制され、重畳特性の低下を抑制することができる。
図3は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す図であり、図3(a)は本発明のコイル内蔵基板の断面図(図3(b)のB−B線で切断した縦断面図)、図3(b)は図2(a)のA−A線で切断した断面図(横断面図)である。これらの図において、4aは上下に位置する平面コイル導体3間に形成された伝熱用貫通絶縁体である。図3に示すように、上記構成において、平面コイル導体3が、間にフェライト磁性体層2を介して上下に複数設けられ、伝熱用貫通絶縁体4aが、上下に位置する平面コイル導体3間にも形成されて上下に位置する平面コイル導体3に接続されていることが好ましい。この場合、上下に位置する平面コイル導体3間に形成された伝熱用貫通絶縁体4aは、これ自身がフェライト磁性体層2から基板の主面にかけてフェライト磁性体層2および絶縁層1を貫通するものではないが、その直下の伝熱用貫通絶縁体4と一体的に形成されて、伝熱用貫通絶縁体4と共に上側の平面コイル導体3から基板の主面まで伝熱する手段として機能するものである。
このような構成により、コイル内蔵基板の平面方向の大きさを大きくすることなく平面コイル導体3のインダクタンスを大きくすることができ、また、例えば上側に位置する平面コイル導体3において発生した熱を間に形成した伝熱用貫通絶縁体4aを介して下側に位置する平面コイル導体3へ伝え、そして下に位置する平面コイル導体3に接続されて基板の主面にかけて形成された伝熱用貫通絶縁体4を介して放熱用導体層5へ伝えることができるので、上下に設けられた平面コイル導体3・3において発生した熱をより効率よく放熱用導体層5を介して基板の外部へ放熱することができる。
なお、隣接する外周と内周の平面コイル導体3間にフェライト磁性体層2より熱伝導率の大きい伝熱用絶縁層7を形成し、上下に位置する平面コイル導体3間に上下に位置する平面コイル導体3に接続して伝熱用貫通絶縁体4aを形成してもよいことはいうまでもない。
また、図4および図5に図1と同様の断面図で示すように、上記構成において、平面コイル導体3が上下に複数設けられ、伝熱用絶縁層7が、上下に位置する平面コイル導体3間に形成されていることが好ましい。この構成により、コイル内蔵基板の平面方向の大きさを大きくすることなく平面コイル導体3のインダクタンスを大きくすることができ、伝熱用絶縁層7は平面コイル導体3の全域にわたって接続されることから、上側に位置する平面コイル導体3において発生した熱を間に形成した伝熱用絶縁層7を介して下側に位置する平面コイル導体3へより効率よく伝えることができるので、上下に設けられた平面コイル導体3において発生した熱をより効率よく伝熱用貫通絶縁体4および放熱用導体層5を介して基板の外部へ放熱することができる。
また、伝熱用絶縁層7は、図4に示すように平面コイル導体3と平面視の形状が同じものであれば平面コイル導体3の全域にわたって接続されることとなり、図3に示す例における伝熱用貫通絶縁体4aよりも伝熱経路が大きくなるので好ましいが、図5に示すように平面コイル導体3の最外周から最内周にかけて、平面コイル導体3の形成領域の全域と重なるようにするのがより好ましい。このような構成にすると、伝熱用絶縁層7による伝熱面積が大きくなるので伝熱効率がより向上するだけでなく、隣接する外周と内周の平面コイル導体3間に伝熱用絶縁層7を形成しない場合でも、平面視で隣接する外周と内周の平面コイル導体3間にフェライト磁性体層2に比較して透磁率の小さい伝熱用絶縁層7が存在することとなるので、平面コイル導体3に大電流が流れたとしても、磁束が隣接する外周と内周の平面コイル導体3間を通過しにくく、隣接する外周と内周の平面コイル導体3間において漏れ磁束が発生しにくくなり、これにより磁気飽和が抑制され、重畳特性の低下を抑制することができる。また、平面コイル導体3に対して幅広の伝熱用絶縁層7となるので、コイル内蔵基板を製造する過程において、例えば伝熱用絶縁層7となる伝熱用絶縁層パターンの形成をペーストの印刷により行なう際に、形状の良好な伝熱用絶縁層パターンの形成が容易となり、また平面コイル導体パターンとの位置合わせも容易となる。
また、伝熱用絶縁層7は、さらに、平面コイル導体3の内側の部分まで、または平面コイル導体3の内側および外側の部分まで、すなわち基板内の平面方向の全域にわたって形成してもよい。このようにすると、コイル内蔵基板を製造する過程において、上記と同様の効果に加えて、平面コイル導体3となる平面コイル導体パターン形状に合わせたスクリーン製版を用意しなくてもよいという効果があり、さらに平面コイル導体パターンおよび伝熱用貫通絶縁体パターンが形成されたグリーンシートを積層する際に、平面コイル導体パターンおよび伝熱用貫通絶縁体パターンが形成された部分のいずれも形成されていない部分との段差によりグリーンシート積層体の内部に空隙が発生してしまうことを防止することができる。
なお、図6および図7に図1と同様の断面図で示すように、平面コイル導体3の隣接する外周と内周との間および上下の平面コイル導体3の間の両方に伝熱用絶縁層7を形成してもよいことはいうまでもない。
また、図6および図7に示すように、上記構成において、伝熱用貫通絶縁体4はその横断面積がフェライト磁性体層2側より基板の主面側の方が大きいことが好ましい。この構成により、伝熱用貫通絶縁体4中におけるフェライト磁性体層2側から基板の主面側へ向かう伝熱の熱抵抗がより小さいものとなるので、伝熱用貫通絶縁体4に伝わった熱は、より効率よく放熱用導体層5へと伝えられ、放熱用導体層5を介してより効率よく外部へ放熱される。
伝熱用貫通絶縁体4の横断面積は、図6に示すように段階的に大きくなってもよく、図7に示すように段差なしにフェライト磁性体2から基板の主面にかけて連続的に徐々に大きくなるものであってもよい。段階的に大きくなる場合は、図6に示すような1段ではなく複数段であってもよく、連続的に大きくなる場合はフェライト磁性体2から基板の主面にかけての途中から大きくなるものであってもよい。
伝熱用貫通絶縁体4・4aの横断面形状は、図1〜7に示したような円形だけでなく、三角形や四角形またはそれ以上の多角形および楕円形状等であってもよく、特に制限はない。図8に図1と同様の断面図で示すように、伝熱用貫通絶縁体4・4aの横断面形状を、平面コイル導体3の内側の領域の中心に向かって細長い形状とし、1つの伝熱用貫通絶縁体4・4aが平面コイル導体3の内周から外周にかけて接続されるようにしてもよい。このような形状とすると、複数の伝熱用貫通絶縁体4・4aを平面コイル導体3に合わせて外側から内側にかけて1列に並べた場合と比較して、磁束の通過を妨げることなく横断面積を大きくすることができるので、より効率よく放熱することができる。
本発明のコイル内蔵基板を作製する場合に、矩形状のコイル内蔵基板を縦横に複数列配置して、いわゆる多数個取り配線基板の形態にして多数のコイル内蔵基板を効率よく容易に作製しようとする場合は、平面コイル導体3は平面視で最外周がフェライト磁性体層2の形状(基板の外形)に沿った矩形状で形成されるのが好ましい。このようにすることで、コイル内蔵基板の外寸を変えずに平面コイル導体3の長さを最大限長く形成することができるため、平面コイル導体3の長さに比例するインダクタンス値を大きいものとすることができる。
このように平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、伝熱用貫通絶縁体4・4aは平面コイル導体3の角部に接続するように配置されることが好ましい。角部における磁束密度は他の領域に比較して粗となるので、この部分に形成された伝熱用貫通絶縁体4・4aによって磁束の通過領域を減少させることの影響は小さくてすむ。また、平面コイル導体3の内側の領域において角部の温度が高くなりやすいので、より効率よく放熱することができる。また、このようなことから、図9に図1と同様の断面図で示すように、平面コイル導体3の角部に接続される伝熱用貫通絶縁体4・4aの横断面積を他の部分よりも大きいものとすると、インダクタンスを低下させることなくより効率よく放熱することができるので好ましい。
また、平面コイル導体3が矩形状の基板の外形に沿って矩形状に形成される場合は、図1(b)または図2(b)に示すように、矩形状の平面コイル導体3の角部を、複数の屈曲部を有する形状または曲線状に曲がっている形状とすると、平面コイル導体3と絶縁層1に形成された接地導体層等の配線層6とが対向する面積が小さくなり、平面コイル導体3と配線層6との間のキャパシタンスが小さくなることで、より高周波まで安定したインダクタンス値が得られ、また、平面コイル導体3の角部が電流の集中しにくい形状となることで電界の集中が低減し、平面コイル導体3からのノイズ放射を削減することができるので好ましい。
平面コイル導体3のフェライト磁性体層2内の基板の厚み方向の位置については、平面コイル導体3と絶縁層1との間のフェライト磁性体層2の厚みが、平面コイル導体3の周りに発生する磁束が通過するのに必要な厚みがあるような位置であればよい。平面コイル導体3の寸法、平面コイル導体3に流れる電流の周波数や電流値、あるいはフェライト磁性体層2の透磁率により異なるが、例えば、フェライト磁性体層2の透磁率が500の場合は、平面コイル導体3と絶縁層1との間のフェライト磁性体層2の厚みを0.1mm以上とすればよい。また、平面コイル導体3を上下に複数設ける場合の、上下の平面コイル導体3間の距離は、上下の平面コイル導体3間で絶縁が保たれる距離であればよく、フェライト磁性体層2や伝熱用貫通絶縁体4または伝熱用絶縁層7の材料により異なるが、50μm程度以上あればよい。
放熱用導体層5は、図1〜図9に示すように、基板の主面に形成されて伝熱用貫通絶縁体4が接続される。その大きさや形状は特に制限されるものではなく、複数の伝熱用貫通絶縁体4のそれぞれに、あるいは平面コイル導体3の内周から外周に合せて1列に並んだ複数の伝熱用貫通絶縁体4毎に対応するように複数設けてもよいが、放熱面積を大きくしてより効率よく放熱できるように、基板の主面(下面)に形成された電極パッド6d等に接続しないようにできるだけ大きくするのが好ましい。例えば、図9(a)に示すように平面コイル導体3の形成領域に対応した環状のものを設けてもよいし、図1(a)〜図8(a)に示すように、基板の主面(下面)に形成された電極パッド6d等に接続しないように基板の主面(下面)全体にかけて形成してもよい。
また、放熱用導体層5は、基板の主面上の電子部品の搭載位置から十分な距離があり、伝熱用貫通導体4および放熱用導体層5から電子部品へ熱が伝わることがない場合には、電子部品が搭載される側の主面(上面)上に形成してもよい。
また、コイル内蔵基板を外部回路基板に実装する際には、電極パッド6dだけでなく放熱用導体層5も外部回路基板上の接続パッドと半田等の接合材を用いて接合すると、熱容量の大きい外部回路基板へ伝熱して放熱することにより放熱効率を向上させることができ、また外部回路基板との接合面積が大きくなり、接合強度および実装信頼性も向上させることができるので好ましい。
また、放熱用導体層5は、その厚みを配線層6や平面コイル導体3に比較して厚くすることで、放熱性をより向上させることができる。これには、配線層6や平面コイル導体3の厚みが通常10μm程度で形成されるのに対して、より厚く、例えば20μm以上の厚みにするとよい。
さらに、放熱用導体層5は、その表面粗さを搭載用電極6bや電極パッド6dに比較して大きくすることで、表面積を大きくして放熱性を向上させることができる。例えば、搭載用電極6bや電極パッド6dの表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が通常1〜5μm程度であるのに対して、20μm程度以上の表面粗さに、またはそれ以上のレベルの凹凸のある形状するとよい。
絶縁層1は、その表面や内部に形成される配線層6や絶縁層1に挟持されて形成されるフェライト磁性体層2および平面コイル導体3とともに800〜1000℃の温度で同時焼成された絶縁体粉末の焼結体から成るものであり、配線層6のインダクタンスが高くなることを抑制するという観点からは、非磁性フェライトやガラスセラミックス等の非磁性絶縁体から成るものが好ましい。絶縁層1は、絶縁体粉末および有機バインダーを主成分とする絶縁層1用グリーンシートを製作し、この絶縁層1用グリーンシートを必要な配線展開ができるだけの枚数積層した後、800〜1000℃の温度で焼成することにより作製される。
絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、Zn系フェライトやCu系フェライトを用いればよい。中でも、X−Fe(XはCu,Zn)として示される正スピネル構造の固溶体であるCu−Zn系フェライトが好適である。
Cu−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFeを50〜70質量%,CuOを5〜20質量%,ZnOを20〜35質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm以上の高密度焼成が可能であり、かつ、焼成後の非磁性フェライト層は低温度域でも非磁性であるので好ましい。Feはフェライトの主成分であり、その割合が50質量%未満であると磁性が発生する傾向があり、70質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことから、その割合が5質量%未満であると、配線層6と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、20質量%より多いとキュリー温度が上がり、低温領域で磁性が発生する傾向がある。ZnOは非磁性フェライトを非磁性にするために重要な要素であり、その割合が20質量%未満であると焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向があり、35質量%より多いと磁性が発生する傾向がある。
また、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、非磁性フェライトの粉末に軟化点の低いガラスを加えて低温焼成したものであってもよい。このときのガラスとしては、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(但し、M及びMは同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(但し、M及びMは上記と同じである),SiO−B−M O系(但し、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(但し、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができ、ガラスの軟化点が600℃以下であることがフェライトの焼結を阻害しないうえで望ましい。
絶縁層1がガラスセラミックスから成る場合は、絶縁体粉末は上記のようなガラスの粉末とフィラー粉末との混合物の焼結体から成り、フィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
配線層6は、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、絶縁層1用グリーンシートに配線層6用導体ペーストを印刷することにより配線パターンを形成しておき、絶縁層1用グリーンシートと同時焼成することにより形成される。
フェライト磁性体層2は、強磁性フェライトであるNi−Zn系フェライト,Mn−Zn系フェライト,Mg−Zn系フェライト,Ni−Co系フェライト等の磁性フェライト粉末の焼結体であるが、X−Fe(XはCu,Ni,Zn)として示される逆スピネル構造の固溶体であるNi−Zn系フェライトが高周波帯域で十分に高い透磁率を得るのに好ましい。
Ni−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFeを63〜73質量%,CuOを5〜10質量%,NiOを5〜12質量%,ZnOを10〜23質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm以上の高密度焼成が可能であり、かつ高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるので好ましい。Feはフェライトの主成分であり、その割合が63質量%未満であると十分な透磁率が得られない傾向があり、73質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することができる。このことから、その割合が5質量%未満であると、配線層6や平面コイル導体3と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向があり、10質量%より多いと、磁気特性の低いCuFeの割合が多くなるため磁気特性を損ないやすくなる傾向がある。NiOはフェライト磁性体層2の高周波域における透磁率を確保するために含有させる。NiFeは高周波域まで共振による透磁率の減衰を起こさず、高周波域での透磁率を比較的高い値に維持することができるが、初期透磁率は低いという特性をもつため、5質量%未満であると10MHz乃至それ以上の高周波域での透磁率が低下する傾向があり、12質量%より多いと初期透磁率が低下する傾向にある。ZnOはフェライト磁性体層2の透磁率向上のために重要な要素であり、フェライト組成のうち10質量%未満であると透磁率が低くなり、逆に23質量%より多くても磁気特性が悪くなる傾向がある。
フェライト磁性体層2は、絶縁層1に用いられる絶縁層用グリーンシートと同様の手法で形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを用いることで作製される。
平面コイル導体3は、配線層6と同様に金属粉末の焼結体であるメタライズ金属層からなるものであり、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストを印刷することにより平面コイル導体パターンを形成し、さらにその上にフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層して同時焼成することにより、フェライト磁性体層2に埋設されて形成される。平面コイル導体3が上下に複数重ねて形成される場合は、平面コイル導体パターンおよび貫通導体パターンが形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシートを複数積層した上にさらにフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層すればよい。
平面コイル導体3の作製に用いられる金属粉末は、配線層6と同様のCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末を用いる。これにより、平面コイル導体3の電気抵抗が小さくなり、平面コイル導体3の発熱そのものを抑えることができる。
伝熱用貫通絶縁体4・4aおよび伝熱用絶縁層7は、絶縁層1やフェライト磁性体層2および平面コイル導体3や配線層6とともに800〜1000℃の温度で同時焼成された絶縁体
粉末の焼結体から成るものであり、フェライト磁性体層2より熱伝導率の大きいものである。伝熱用絶縁層7については、フェライト磁性体層2より熱伝導率が大きいものであれば、絶縁層1と同じものを用いてもよい。フェライト磁性体層2の熱伝導率が3W/(m・K)〜4W/(m・K)程度であるので、伝熱用貫通絶縁体4・4aおよび伝熱用絶縁層7の熱伝導率は6W/(m・K)程度以上のものであれば、平面コイル導体3で発生した熱が伝熱用絶縁層7内をより伝熱しやすくなるので好ましい。
伝熱用貫通絶縁体4・4aは、配線層6となる配線パターンや平面コイル導体3となる平面コイル導体パターンの形成に先立ってフェライト磁性体層2用グリーンシートや絶縁層1用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって伝熱用貫通絶縁体4用絶縁ペーストを充填することで伝熱用貫通絶縁体パターンを形成し、フェライト磁性体層2用グリーンシートや絶縁層1用グリーンシートの表面に露出した伝熱用貫通絶縁体パターンに重ねてフェライト磁性体層2用グリーンシート上や絶縁層1用グリーンシート上に平面コイル導体パターンや配線パターンを形成して、絶縁層1用およびフェライト磁性体層2用グリーンシートとともに800〜1000℃の温度で焼成することにより作製される。
図6に示すように伝熱用貫通導体7の横断面積をフェライト磁性体層2側より基板の主面側の方を大きくするには、主面側のグリーンシートに形成する貫通孔を大きいものにすればよい。また、図7に示すように段差なしにフェライト磁性体2から基板の主面にかけて徐々に大きい形状とする場合は、上下で径の異なる貫通穴を形成すればよく、グリーンシートを打抜く金型のクリアランスを大きめにしたり、レーザの出力等を調節したりすることで可能である。
伝熱用絶縁層7は、伝熱用絶縁層7用の絶縁体粉末および有機バインダーを主成分とする伝熱用絶縁層7用グリーンシートを製作し、この伝熱用絶縁層7用グリーンシート上に平面コイル導体3となる平面コイル導体パターンを形成したり、平面コイル導体パターンが形成されたフェライト磁性体層2用グリーンシート上に積層したり、あるいは、伝熱用絶縁層7用の絶縁体粉末,有機バインダーおよび溶剤を主成分とする伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストを製作し、フェライト磁性体層2用グリーンシート上に形成された平面コイル導体パターンに接続されるように、伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して、絶縁層1用およびフェライト磁性体層2用グリーンシートとともに800〜1000℃の温度で焼成することにより作製される。
絶縁層1用グリーンシート、フェライト磁性体層2用グリーンシートまたは伝熱用絶縁層7用グリーンシートは、絶縁体粉末または磁性フェライト粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤や可塑剤等を混合してスラリーを得て、これからドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法,押し出し成形法等によってシート状に塗布し、乾燥して成形することにより作製される。
絶縁層1用グリーンシートに用いられる絶縁体粉末は、絶縁層1が非磁性フェライトから成る場合は、FeとCuOやZnOの粉体を所定の割合で混合して仮焼したものを粉砕し、原料粉末とすることができる。
フェライト磁性体層2用グリーンシートに用いられる強磁性フェライト粉末は、FeとCuO,ZnO,またはNiOとを予め仮焼することにより作製されたフェライト粉末であり、平均粒径が0.1μm〜0.9μmの範囲で均一であり、粒形状は球形状に近いものが望ましい。これは、平均粒径が0.1μmより小さいと、フェライト磁性体層2用グリーンシートの製作においてフェライト粉末の均一な分散が困難であり、平均粒径が0.9μmより大きいとフェライト磁性体層2用グリーンシートの焼結温度が高くなりやすくなるからである。また、粒径が均一で球状に近いことにより均一な焼結状態を得ることができる。例えばフェライト粉末で部分的に小さい粒径が存在した場合は、その部分のみ結晶粒の成長が低下し、焼結後に得られるフェライト磁性体層2の透磁率が安定しにくい傾向がある。
有機バインダーは、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
グリーンシートの有機溶剤は、絶縁体粉末やフェライト粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
グリーンシートを作製するためのスラリーは絶縁体粉末やフェライト粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することにより3〜100cpsの粘度となるように調製される。
伝熱用貫通絶縁体4用絶縁ペーストおよび伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストは、主成分の絶縁体粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで作製される。伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストは、絶縁体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部、有機溶剤を10〜30質量部加えて混練することにより、印刷により絶縁ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。伝熱用貫通絶縁体4用絶縁ペーストは、溶剤量や有機バインダー量により、伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温硬化するようにするとよい。
伝熱用絶縁層7用グリーンシート、伝熱用貫通絶縁体4用絶縁ペーストおよび伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストの絶縁体粉末は、絶縁層1に用いるガラスの粉末およびフィラー粉末と同様のものを用いればよく、フィラー粉末として、例えばAlN,Si,SiC,BN等のセラミック粉末を用いると熱伝導率のより高いものが得られるので好ましい。また、ガラス粉末としては結晶化ガラスがより高熱伝導率となるので好ましい。AlN等の非酸化物セラミックスをフィラーとして用いると、焼成中にガラスと非酸化物セラミックフィラーとが反応し、非酸化物セラミックフィラーが分解してガスが発生することにより熱伝導率が低下してしまいやすいので、希土類元素含有珪酸系ガラスやオキシナイドガラスを用いるのが好ましい。希土類元素含有珪酸系ガラスは、RE(希土類酸化物)を1〜30質量%,SiOを10〜55質量%,Alを3〜35質量%,ZnOおよび/またはMgOを5〜30質量%,Bを0〜25質量%,CaO、SrO、BaOの群から選ばれる少なくとも1種をその合量で0〜50質量%の割合で含有するものであり、より具体的には例えば、Yを14質量%,SiOを22質量%,Alを5質量%,ZnOを15質量%,MgOを5質量%,Bを10質量%,SrOを29質量%含有するガラス(以下、ガラスAという)、Yを5質量%,SiOを22質量%,Alを8質量%,ZnOを2質量%,MgOを18質量%,Bを18質量%,SrOを27質量%含有するガラス(以下、ガラスBという)、Ndを10質量%,SiOを30質量%,Alを15質量%,ZnOを13質量%,CaOを15質量%,BaOを5質量%,Bを12質量%含有するガラス(以下、ガラスCという)等が挙げられる。また、オキシナイドガラスは、窒素を含むガラスであり、例えばSiOとBとを主成分とする酸化物ガラス原料粉末を窒素雰囲気中にて300℃〜800℃の温度で2時間〜5時間処理することにより、ガラス粉末中に0.1質量%以上10質量%以下の窒素元素を含有させることができる。
伝熱用貫通絶縁体4・4a用および伝熱用絶縁層7の組成の例としては、ガラスAを60質量%とAlNを40質量%含むものは、900℃焼成にて8.4W/(m・K)の熱伝導率が得られ、ガラスAを50質量%とAlNを50質量%含むものは、900℃焼成にて11.5W/(m・K)の熱伝導率が得られ、ガラスAを60質量%とSiを40質量%含むものは、900℃焼成にて7.2W/(m・K)の熱伝導率が得られ、ガラスAを60質量%とAlNおよびSiをそれぞれ20質量%含むものは、900℃焼成にて7.5W/(m・K)の熱伝導率が得られる。また、ガラスBを50質量%とAlNを50質量%含むものは、950℃焼成にて8.2W/(m・K)の熱伝導率が得られ、ガラスBを30質量%とAlNを70質量%含むものは、1000℃焼成にて14.5W/(m・K)の熱伝導率が得られ、ガラスBを50質量%とSiを50質量%含むものは、900℃焼成にて7.3W/(m・K)の熱伝導率が得られる。また、ガラスCを60質量%とAlNを40質量%含むものは、900℃焼成にて7.3W/(m・K)の熱伝導率が得られ、ガラスCを60質量%とSiを40質量%含むものは、900℃焼成にて7.0W/(m・K)の熱伝導率が得られる。
また、AlNやSi等のセラミックフィラー中に炭素や硫黄が存在すると焼成中にCO,CO,SO,SOなどのガスが発生し、気孔が生成されて熱伝導率の低下を招いてしまう場合があり、またセラミックフィラーの表面に酸化物層を生成させることによりガラスとの濡れ性を向上させて焼結性を向上させることができるので、セラミックフィラー粉末の表面の炭素や硫黄の除去や酸化膜の生成のためにpH5〜10の水で10分〜30分の水洗あるいは5分〜10分の煮沸を行なうとよい。このような処理を行なったセラミックフィラーとオキシナイトライドガラスを用いた場合、AlN粉末を30質量%〜60質量%とオキシナイトライドガラスを40質量%〜70質量%を含むものは、800℃〜1000℃の焼成で30W/(m・K)〜40W/(m・K)程度の熱伝導率が得られ、Si粉末を30質量%〜80質量%とオキシナイトライドガラスを20質量%〜70質量%を含むものは、800℃〜1000℃の焼成で20W/(m・K)〜30W/(m・K)程度の熱伝導率が得られる。
伝熱用貫通絶縁体4用絶縁ペーストおよび伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストの有機バインダーは、従来よりセラミックグリーンシートやセラミックペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系,アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
伝熱用貫通絶縁体4用絶縁ペーストおよび伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストの有機溶剤は、上記した絶縁体粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
伝熱用絶縁層7を図3および図9のように形成する場合は、例えば、フェライト磁性体層2用グリーンシート上に形成された平面コイル導体パターンの隣接する外周と内周の平面コイル導体間に伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストを印刷して伝熱用絶縁層パターンを形成すればよい。平面コイル導体3と伝熱用絶縁層7が確実に接続されるように、平面コイル導体パターンの隣接する外周と内周との間隔よりも幅広に印刷してもよい。
伝熱用絶縁層7を図4のように形成する場合は、例えば、上下の平面コイル導体パターンをそれぞれフェライト磁性体層2用グリーンシート上に形成し、これら平面コイル導体パターンを印刷するのに用いたスクリーンマスクと同じパターンのものを用いて、平面コイル導体パターンに重なるように伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストを印刷して伝熱用絶縁層パターンを形成し、平面コイル導体パターンおよび伝熱用絶縁層パターンが形成された面を向かい合わせ、位置合わせして積層すればよい。このとき上下の平面コイル導体パターン(伝熱用絶縁層パターン)は互いに鏡像となるようなパターンである。また、上下の平面コイル導体3を接続するための貫通導体6cを形成するために、伝熱用絶縁層パターンは貫通孔を有するパターンであり、この貫通孔に後述する貫通導体用の導体ペーストを充填することにより貫通導体パターンを形成する。
伝熱用絶縁層7を図6および図7のように形成する場合は、例えば、上下の平面コイル導体パターンをそれぞれフェライト磁性体層2用グリーンシート上に形成し、これら平面コイル導体パターンに重なるように伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストを印刷して、伝熱用絶縁層7用絶縁ペーストが印刷された面を向かい合わせ、位置合わせして積層すればよい。このとき上下の平面コイル導体パターンは互いに鏡像となるようなパターンであり、また上記と同様にして貫通導体パターンを形成しておく。
伝熱用絶縁層7を図5のように形成する場合は、例えば、上記のような互いに鏡像となる平面コイル導体パターンを形成したフェライト磁性体層2用グリーンシートを積層する際に、貫通導体パターンを形成した、所定形状の伝熱用絶縁層7用グリーンシートを間に挟んで積層すればよい。この伝熱用絶縁層7用グリーンシートの厚みが厚い場合は、間に挟むグリーンシートとして、フェライト磁性体層2用グリーンシートに所定形状の伝熱用絶縁層7用グリーンシートがはめ込まれたものを用いると、積層した際に厚みの厚い伝熱用絶縁層7用グリーンシートの周囲に空隙が発生してしまうことを防止できるので好ましい。フェライト磁性体層2用グリーンシートに所定形状の伝熱用絶縁層7用グリーンシートを嵌め込むには、フェライト磁性体層2用グリーンシート上に伝熱用絶縁層7用グリーンシートを重ねて載置し、その上から金型によりフェライト磁性体層2用グリーンシートと共に伝熱用絶縁層7用グリーンシートを所定形状に打ち抜くとともに、この打ち抜いた伝熱用絶縁層7用グリーンシートをフェライト磁性体層2用グリーンシートが打ち抜かれて形成された貫通孔に嵌め込めばよい。
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンは、絶縁層1用グリーンシートの表面に配線層6用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成される。貫通導体6cとなる配線パターンは、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって配線層6用導体ペーストを充填することで形成される。
平面コイル導体3となる平面コイル導体パターンも同様に、フェライト磁性体層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体3用導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成され、フェライト磁性体層2内の貫通導体となる配線パターンも上記貫通導体6cとなる配線パターンと同様にして形成される。平面コイル導体3用導体ペーストは配線層6用導体ペーストと同じものを用いればよい。
平面コイル導体3となる平面コイル導体パターンは、要求されるインダクタンス値やサイズにもよるが、上記のように印刷により形成する場合は線幅および隣接する外周と内周の導体間距離が0.1mm程度以上であれば容易に形成できる。できるだけ小さい面積でコイルの巻き数を多くするためには、線幅を0.1〜1mm程度にし、導体間距離を0.1〜0.2mm程度にすればよい。
配線層6用導体ペーストおよび平面コイル導体3用導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで作製される。
導体ペーストの有機バインダーは、従来より導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
導体ペーストの有機溶剤は、上記した金属粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
配線層6の内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部、有機溶剤を10〜30質量部加えて混練することにより、印刷により導体ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。
貫通導体6cとなる配線パターンを形成するための導体ペーストは、溶剤量や有機バインダー量により、内部配線層6a,搭載用電極6bおよび電極パッド6dとなる配線パターンを形成するための配線層6用導体ペーストや平面コイル導体3用導体ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温硬化するようにするとよい。また、焼結挙動の調整のために金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えた無機成分としてもよい。
絶縁層1を非磁性フェライトで形成する場合には、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6を形成するための配線層6用導体ペーストには、ZnO,CuO,MgO,CoO,NiO,MnO,FeO等の2価の金属酸化物の粉末を添加することが望ましい。2価の金属酸化物を添加することで、外表面の配線層6を非磁性フェライトを主成分とする絶縁層1に強固に接合させることができる。
平面コイル導体パターンが形成されたものを含む所定枚数のフェライト磁性体層2用グリーンシートの上下にそれぞれ配線パターンが形成された所定枚数の絶縁層1用グリーンシートを配置して積層体を作製し、この積層体を焼成することによりコイル内蔵基板が作製される。
放熱用導体層5は、配線層6と同様にCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものである。放熱用導体層5は、搭載用電極6bや電極パッド6dのような絶縁層1の外表面に形成される配線層6用導体ペーストと同様の導体ペーストを、スクリーン印刷法やグラビア印刷法等により絶縁層1用グリーンシート上に所定パターン形状に塗布し、これらとともに同時焼成して形成される。
放熱用導体層5の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)を配線層6(搭載用電極6bや電極パッド6d)より大きくするには、導体ペーストに用いる金属粉末に粒径の大きいものを用いて形成すればよい。例えば、配線層6や平面コイル導体3の形成に用いる導体ペーストに5μm程度の金属粉末を用いるのに対して、放熱用導体層5の形成に用いる導体ペーストには10μm程度以上の金属粉末を用いればよい。
また、放熱用導体層5の表面に凹凸のある形状とするには、例えば導体ペーストを塗布した後に型を押し付けるなどして、溝の列あるいは多数の点状の凸部または凹部といった形状の凹凸を形成すればよい。
積層体を作製する方法は、積み重ねた絶縁層1用グリーンシートとフェライト磁性体層2用グリーンシートとに熱と圧力とを加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により異なるが、概ね30〜100℃および2〜20MPaである。
積層体の焼成は、300〜600℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000℃の温度で焼成することにより行なわれる。焼成雰囲気としては、平面コイル導体3やその他の配線がAg等の酸化しにくい材料から成る場合は大気中にて行なわれ、Cu等の酸化しやすい材料から成る場合は、窒素雰囲気が用いられ、脱バインダーしやすいように加湿したものが用いられる。
焼成後のコイル内蔵基板の表面に形成された搭載用電極6b,電極パッド6dおよび放熱用導体層5には、半導体チップやチップ部品、または外部電気回路との半田等による接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をめっき法により順次被着するとよい。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、上下の平面コイル導体3・3間に形成した伝熱用絶縁層7を基板の側面まで延長し、基板の側面にも放熱用導体層5を形成して放熱性をより向上させてもよい。
本実施例1では、本発明のコイル内蔵基板として、図6に示すような、伝熱用絶縁層7を、上下に位置する平面コイル導体3・3の間、1つの平面コイル導体3の隣接する内周と外周の間および平面コイル導体3の外周に形成し、伝熱用貫通絶縁体4を矩形状の平面コイル導体3の角部および角部間の中央(辺の中央)において接続するようにした構成に、絶縁層1・1とフェライト磁性体層2との間に内部配線層6aとして接地導体層を設けた構造のコイル内蔵基板を作製し、基板の表面に形成した配線層6の表面温度を測定した。以下に詳細に説明する。
まず、Fe粉末630gとCuO粉末80gとZnO粉末290gとを、純水4000cmとともにジルコニアボールを使用した7000cmのボールミルにて24時間かけて混合した後、乾燥した混合粉末をジルコニアるつぼに入れて大気中730℃で1時間加熱することにより非磁性フェライト仮焼粉末を作製した。作製した非磁性フェライト仮焼粉末100質量部に対し、バインダーとしてブチラール樹脂を10質量部、有機溶剤としてIPA(イソプロピルアルコール)を45質量部添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmの非磁性フェライトからなる絶縁層用グリーンシートを成型した。
この絶縁層用グリーンシートに金型による打ち抜き加工によって、貫通導体6c用の直径150μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に貫通導体用導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥した。貫通導体用導体ペーストとしては、Ag粉末100質量部と、焼結助剤としてのガラス粉末10質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール4質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。基板の下方の絶縁層1となる絶縁層用グリーンシートには同様にして、伝熱用貫通絶縁体4用の直径300μmの貫通孔を形成し、この貫通孔に伝熱用貫通絶縁体用絶縁ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥した。伝熱用貫通絶縁体用絶縁ペーストは、AlN粉末60質量部とオキシナイドガラス粉末40質量部とから成る絶縁体粉末100質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール4質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。AlN粉末はpH7の水流中で30分間水洗して乾燥したものを用い、オキシナイドガラス粉末は、SiO−Bガラス粉末を窒素気流中、600℃で2時間窒化処理することにより得た。
次に、この絶縁層用グリーンシートに導体ペーストをスクリーン印刷法により2mm四方のサイズで20μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥して温度測定用の表層配線層パターンおよび平面コイル導体3に外部から通電するための通電用表層配線層パターンを形成した。導体ペーストとしては、金属粉末としてAg粉末100質量部に金属酸化物としてCuO粉末10質量部を加えた原料100質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール3質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。また、1枚の絶縁層用グリーンシートには、同じ導体ペーストをスクリーン印刷法によって40μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、放熱用導体層パターンを形成した。
次に、Fe粉末700gとCuO粉末60gとNiO粉末60gとZnO粉末180gとを用いて、非磁性フェライト仮焼粉末と同様の作製方法で強磁性フェライト仮焼粉末を作製した。作製した磁性フェライト仮焼粉末100質量部に対し、バインダーとしてブチラール樹脂を10質量部、有機溶剤としてIPAを45質量部添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmのフェライト磁性体層用グリーンシートを成型した。
このフェライト磁性体層用グリーンシートに、金型による打ち抜き加工によって貫通導体6c用および伝熱用貫通絶縁体4の直径200μmの貫通孔を形成した。貫通導体6c用の貫通孔には、貫通導体用導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥して貫通導体となる貫通導体組成物を形成した。貫通導体ペーストは上記と同じものを用いた。そして、伝熱用貫通絶縁体4用の貫通孔には、同様にして伝熱用貫通絶縁体用絶縁ペーストを充填して乾燥した。伝熱用貫通絶縁体用絶縁ペーストは上記と同じものを用いた。
続いて、この貫通導体組成物を形成したフェライト磁性体層用グリーンシート2枚にそれぞれ導体ペーストをスクリーン印刷法によって30μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、図6(b)に破線で示すような3ターン(3巻き)の平面コイル導体パターンを形成した。導体ペーストとしては、Ag粉末100質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。上下の平面コイル導体パターンが互いに鏡像となるようなパターンとした。また、平面コイル導体パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシートの裏面には、同じ導体ペーストを用いて接地導体層用のベタパターンを形成した。
次に、平面コイル導体パターンが形成されたフェライト磁性体層用グリーンシート上にそれぞれ伝熱用絶縁層用ペーストをスクリーン印刷によって40μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥し、図6(b)に示すような伝熱用絶縁層パターンを形成した。伝熱用絶縁層用ペーストとしては、AlN粉末60質量部とオキシナイドガラス粉末40質量部とから成る絶縁体粉末100質量部に、アクリル樹脂12質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール3質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。AlN粉末およびオキシナイドガラス粉末は、伝熱用貫通絶縁体用絶縁ペーストに用いたものと同じものを用いた。また、伝熱用絶縁層パターンは直径150μmの貫通孔を有するものであり、この貫通孔に上記と同じ貫通導体ペーストをスクリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥し、上下の平面コイル導体3を接続する貫通導体6cとなる貫通導体パターンを形成した。
次に、平面コイル導体パターンおよび伝熱用絶縁層パターンを形成したフェライト磁性体層用グリーンシートを、伝熱用絶縁層パターンを形成した面を互いに向かい合わせにして重ね、さらにその上下にそれぞれ4枚の絶縁層用グリーンシートを積み重ねて、5MPaの圧力と50℃の温度で加熱圧着して絶縁層用グリーンシートが表層に位置する積層体を作製した。
次に、積層体を12mm角に切断し、大気中で500℃、3時間の条件で加熱して有機成分を除去した後、大気中で900℃、2時間の条件で焼成して、コイル内蔵基板を作製した。
コイル内蔵基板は、フェライト磁性体層2が一対の絶縁層1・1で挟持され、フェライト磁性体層2内においては平面コイル導体3が上下に重なって形成され、上下それぞれの平面コイル導体3の一方端部同士が貫通導体6cにより接続され、上方の平面コイル導体3の他方端部は上方の接地導体層とは電気的に接続されずに上方の接地導体層を貫通する貫通導体6cにより通電用表層配線層に接続され、下方の平面コイル導体3の他方端部は下方の接地導体層に接続され、下方の接地導体層は貫通導体6cにより別の通電用表層配線層に接続された構造であった。コイル内蔵基板は、外形サイズが10mm角で厚みが0.8mmであり、平面コイル導体3は、導体厚みが0.02mm,導体幅が0.3mm,矩形の最外周が6mm角,隣接する外周と内周の導体間距離が0.15mmであり、伝熱用貫通導体4は、フェライト磁性体層2内に形成されたものは直径0.16mmで、絶縁層1内に形成されたものは直径0.24mmであり、伝熱用絶縁層7は、1つの平面コイル導体3の隣接する内周と外周の間に0.02mmの厚みで、上下に位置する平面コイル導体3の間に0.03mmの厚みで形成され、放熱用導体層5は導体厚みが0.03mmで6mm角のものが基板の下面の中央部に形成された。
このコイル内蔵基板の外表面に形成された配線層6上には、無電界めっき法を用いてNiめっき皮膜およびAuめっき皮膜を順次形成した。
比較例
本発明の実施例1との比較のために、従来構成として、実施例1の試料に対して図10に示すような、伝熱用貫通絶縁体4および放熱用導体層5を有さないものとした以外は、実施例1と同様にしてコイル内蔵基板を作製した。
実施例1および比較例のコイル内蔵基板は、セラミック基板上に半田を用いて実装した。実施例1のコイル内蔵基板は下面の放熱導体5とセラミック基板上の接続導体とも半田で接合した。
セラミック基板上に実装した状態で平面コイル導体3に電気的に接続されたコイル内蔵基板の表面の通電用表層配線層にプローブを当て、直流電源装置(菊水電子工業製「PMC18−3A」)により平面コイル導体3に5Vで1Aの電流を10秒間通電した後に、基板表面の温度測定用の表層配線層上の温度を測定した。温度の測定は、非接触式の放射温度計(キーエンス製「FT−H10」)を用いて測定した。
その結果、実施例1の基板の表層配線層上の温度は60℃であったのに対して、比較例の基板の表層配線層上の温度は80℃であった。これにより、比較例に対して実施例1のコイル内蔵基板は、平面コイル導体3に発生した熱を伝熱用貫通絶縁体4および放熱用導体層5を介して良好に外部へ放熱することのできるコイル内蔵基板とすることができることが確認できた。
(a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 (a)は本発明のコイル内蔵基板の実施の形態の一例を示す縦断面図であり、(b)は(a)をA−A線で切断した横断面図である。 従来のコイル内蔵基板の一例を示す断面図である。
符号の説明
1・・・絶縁層
2・・・フェライト磁性体層
3・・・平面コイル導体
4・・・伝熱用貫通絶縁体
5・・・放熱用導体層
6・・・配線層
7・・・伝熱用絶縁層

Claims (5)

  1. 配線層が形成された一対の絶縁層および該一対の絶縁層に挟持されたフェライト磁性体層からなる基板と、前記フェライト磁性体層内に形成された平面コイル導体とを具備するコイル内蔵基板であって、前記平面コイル導体に直接接続され、前記フェライト磁性体層から前記基板の主面にかけて前記フェライト磁性体層および前記絶縁層を貫通する、前記フェライト磁性体層および前記絶縁層より熱伝導率の大きい伝熱用貫通絶縁体が形成され、前記基板の前記主面に前記伝熱用貫通絶縁体が接続された放熱用導体層が形成されていることを特徴とするコイル内蔵基板。
  2. 前記平面コイル導体が複数巻きであり、隣接する外周と内周の平面コイル導体間に前記フェライト磁性体層より熱伝導率の大きい伝熱用絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
  3. 前記平面コイル導体が、間に前記フェライト磁性体層を介して上下に複数設けられ、前記伝熱用貫通絶縁体が、上下に位置する前記平面コイル導体間にも形成されて上下に位置する前記平面コイル導体に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコイル内蔵基板。
  4. 前記平面コイル導体が上下に複数設けられ、前記伝熱用絶縁層が、上下に位置する前記平面コイル導体間に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコイル内蔵基板。
  5. 前記伝熱用貫通絶縁体は、その横断面積が前記フェライト磁性体層側より前記基板の主面側の方が大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコイル内蔵基板。
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