本発明の配線基板について、添付の図面を参照しつつ説明する。
図1および図2はそれぞれ本発明の配線基板の実施の形態の一例を示すものであり、図3は本発明の配線基板に半導体素子11および電子部品12を搭載した電子部品モジュールの実施の形態の一例を示すものである。これらの図において、1はガラスセラミック層、2はフェライト層、3は介在層、4は側面電極、5は接続導体、6は内部配線、7はコイルパターン、8は搭載用電極、10は配線基板である。
配線基板10は、複数のガラスセラミック層1と、フェライト材料を含んでおり、複数のガラスセラミック層1の間に設けられた複数のフェライト層2と、複数のフェライト層2の層間および複数のガラスセラミック層1の層間に形成された内部配線6に接続されてフェライト層2の層間から複数のフェライト層2の側面に導出された接続導体5と、ガラス材料およびフェライト層2に含まれているものと同じフェライト材料を含んでおり、複数のフェライト層2の側面の導出された接続導体5の周囲を覆っている介在層3と、導出された接続導体5および介在層3を覆って接続導体5に接続された側面電極4とを備えている。
このような構成としたことから、側面電極4とフェライト層2とが接する部分および接続導体5の導出された部分とフェライト層2とが接する部分がないので、従来の問題点であったボイドの発生は抑えられる。そして、側面電極4とフェライト層2との間には介在層3がある。介在層3はフェライト材料およびガラス材料を含んでおり、焼成時にガラス材料が溶融して、フェライト材料の間に入り込む。そのため、フェライト材料(粉末)の間はガラス材料が充填しており、介在層3にはボイドが発生しにくい。そして、互いにつながった複数のボイドが生じることを低減することができ、側面電極4と介在層3との間および接続導体5と介在層3との間から水分が浸入することを抑制することができる。従って、接続導体5や内部配線6の間や内部配線6同士の間にイオンマイグレーションが発生し、接続導体5と内部配線6や内部配線6同士が短絡されることを低減することができる。
本発明の配線基板は、上記構成において、フェライト層2に埋設されたコイルパターン7をさらに備えていることが好ましい。このような構成としたときには、透磁率の高いフェライト層2にコイルパターン7を形成しているので、インダクタンスが高い配線基板とすることができる。
配線基板10は、複数のガラスセラミック層1と、ガラスセラミック層1の間に設けられた複数のフェライト層2とからなる。配線基板10の上面には、半導体素子11やチップコンデンサ等の電子部品12を搭載するための搭載用電極8が形成されている。配線基板10の側面には、配線基板10に電子部品12が実装された電子部品モジュールを外部の基板と接続するための側面電極4が形成されている。フェライト層2の層間等の配線基板10の内部には、内部配線6が形成されている。この内部配線6と接続されて、フェライト層2の層間からフェライト層2の側面にかけて接続導体5が形成されている。接続導体5のうちフェライト層2の側面に導出された部分は介在層3で周囲を覆われている。また、複数のフェライト層2の層間にはコイルパターン7が形成されている。そして、配線基板10は、800〜1000℃の温度で一体焼成された焼結体から成るものである。
ガラスセラミック層1は、ガラス材料の粉末およびフィラー粉末(セラミック粉末)に有機バインダー,可塑剤および,有機溶剤等を混合して作製したスラリーを、ドクターブレード法,圧延法,カレンダーロール法等によってガラスセラミックグリーンシートに成形し、これを焼成して形成する。
また、ガラスセラミック層1は、ガラスの粉末とフィラー粉末との混合物の焼結体から成り、ガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1及びM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等を用いることができる。
また、フィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
例示的なガラスセラミック層1は、SiO2、Al2O3、ZnO、CaO、MgO、およびB2O3を含んでいる。例示的なガラスは、22〜52質量%のSiO2と、2〜12質量%のB2O3と、9〜29質量%のAl2O3と、9〜29質量%のZnOと、1〜9質量%のCaOと、7〜21質量%のMgOとを含んでおり、そのフィラーは、実質的にフォルステライトからなる。
フェライト層2は、配線基板の内部に透磁率の高い部分を設けるためのものであり、例えばコイルパターン7のインダクタンスを高める機能を有する。
フェライト層2のフェライト材料は、強磁性フェライトであるNi−Zn系フェライト,Mn−Zn系フェライト,Mg−Zn系フェライト,Ni−Co系フェライト等の磁性フェライト粉末の焼結体であるが、X−Fe2O4(XはCu,Ni,Zn)として示される逆スピネル構造の固溶体であるNi−Zn系フェライトが高周波帯域で十分に高い透磁率を得るのに好ましい。
Ni−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFe2O3を63〜73質量%,CuOを5〜10質量%,NiOを5〜12質量%,ZnOを10〜23質量%とすると、1000℃以下の低温で焼結密度5.0g/cm3以上の高密度焼成が可能であり、かつ高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるので好ましい。Fe2O3はフェライトの主成分であり、その割合が63質量%未満であると十分な透磁率が得られない傾向があり、73質量%より多いと焼結密度の低下により機械的強度が低下する傾向がある。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果があるため、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温でフェライト層を焼成することができる。このことから、CuOの割合が5質量%未満であると、内部配線6やコイルパターン7と同時に800〜1000℃で焼成を行なうと焼結密度が不十分になり、機械強度が不足する傾向がある。一方、10質量%より多いと、磁気特性の低いCuFe2O4の割合が多くなるため、磁気特性を損ないやすくなる傾向がある。NiOはフェライト磁性体層2の高周波域における透磁率を確保するために含有させる。NiFe2O4は高周波域まで共振による透磁率の減衰を起こさず、高周波域での透磁率を比較的高い値に維持することができるが、初期透磁率は低いという特性を持つ。したがって、NiOが5質量%未満であると、10MHz以上の高周波域での透磁率が低下する傾向がある。一方、12質量%より多いと、初期透磁率が低下する傾向にある。ZnOはフェライト磁性体層2の透磁率向上のために重要な要素であり、フェライト組成のうち10質量%未満であると透磁率が低くなり、逆に23質量%より多い場合においても透磁率が低下する傾向がある。
フェライト層2は、フェライト粉末に適当な有機バインダー,可塑剤,有機溶剤等を混合してスラリーを得て、このスラリーを用いてドクターブレード法、圧延法、カレンダーロール法等によってフェライトグリーンシートに成形し、これを焼成して形成する。
また、上記のフェライトグリーンシートは、ガラスセラミックグリーンシート積層体の間に、層間にコイルパターン7となる導体パターン,接続導体5および内部配線6となる導体パターンを配置して積層する。この積層体を焼成することで、上記のように形成したガラスセラミック層1の間にフェライト層2を設けることができる。
フェライトグリーンシートを形成するのに用いる強磁性フェライト粉末は、Fe2O3とCuO,ZnO,またはNiOとを予め仮焼することにより作製された仮焼済みのフェライト粉末であり、平均粒径が0.1μm〜0.9μmの範囲で均一であり、球形状に近い粒が望ましい。これは、平均粒径が0.1μmより小さいと、フェライトグリーンシートの製作においてフェライト粉末の均一な分散が困難であり、平均粒径が0.9μmより大きいとフェライトグリーンシートの焼結温度が高くなりやすくなるからである。また、粒径が均一で球状に近いことにより均一な焼結状態を得ることができるからであり、例えばフェライト粉末で部分的に小さい粒径が存在した場合は、その部分のみ結晶粒の成長が低下し、焼結後に得られるフェライト層2の透磁率が安定しにくい傾向がある。
このとき、効果的にコイルパターン7のインダクタンスを高くするためには、コイルパターン7の上下面をフェライト層2で完全に覆う必要がある。よって、そのようなコイルパターン7およびフェライト層2を形成するためには、下側のガラスセラミックグリーンシートの上面に、下側のフェライト層2となるフェライトグリーンシート、コイルパターン7となる導体ペーストのパターン、上側のフェライト層2となるフェライトグリーンシートの順番に各層を配置して積層するとよい。
内部配線6は、搭載用電極8とコイルパターン7とを電気的に接続するためのものである。また、内部配線6は、後で詳しく説明する接続導体5を介して側面電極4と電気的に接続されている。図1〜図3に示す例において、内部配線6は、複数のガラスセラミック層1および複数のフェライト層2の層間に配置された配線導体と、ガラスセラミック層1およびフェライト層2のそれぞれを厚み方向に貫通して上下に位置する配線導体同士を電気的に接続する貫通導体とがある。
内部配線6の配線導体は、ガラスセラミック層1用のガラスセラミックグリーンシートおよびフェライト層2用のフェライトグリーンシートにスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷手段により配線導体用のメタライズペーストを印刷塗布して配線基板10用の積層体を形成し、これを焼成することによって形成する。貫通導体は、配線導体を形成するためのメタライズペーストの印刷塗布に先立って配線基板10用のガラスセラミックグリーンシートおよびフェライトグリーンシートに金型やパンチングによる打ち抜き加工またはレーザー加工等によって貫通導体用の貫通孔を形成し、この貫通孔に貫通導体用のメタライズペーストをスクリーン印刷法等の印刷手段やプレス充填等の埋め込み手段によって充填しておいて配線基板10となる積層体を形成し、これを焼成することによって形成する。
ガラスセラミック層1の層間に形成された配線導体やガラスセラミック層1を貫通する貫通導体としての内部配線6は、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、ガラスセラミックグリーンシートに、上記の金属粉末を含んだ内部配線6用の導体ペーストを印刷することによって内部配線パターンを形成しておき、ガラスセラミックグリーンシートと同時焼成することにより形成される。このようなガラスセラミックグリーンシートに形成された内部配線6は、搭載用電極8とフェライト層2の内部配線6とを接続している。
フェライト層2の層間に形成された配線導体やフェライト層2を貫通する貫通導体としての内部配線6は、上記のガラスセラミック層1の場合と同様に、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、フェライトグリーンシートに上記の金属粉末を含んだ内部配線6用の導体ペーストを印刷することによって内部配線パターンを形成しておき、フェライトグリーンシートと同時焼成することによって形成される。このようなフェライト層2の層間等に形成された内部配線6は、フェライト層2の上下に形成されたガラスセラミック層1内の内部配線6同士またはガラスセラミック層1内の内部配線6とコイルパターン7とを接続している。
内部配線6のうち配線導体を形成するための配線導体用の導体ペーストは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部、有機溶剤を10〜30質量部加えて混練することによって、印刷による導体ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。
また、内部配線6のうち貫通導体を形成するための導体ペーストは、溶剤量や有機バインダー量により、配線導体用の導体ペーストや後述のコイルパターン7用の導体ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温によって硬化するようにするとよい。また、焼結挙動の調整のために金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えてもよい。
接続導体5は、フェライト層2の層間に形成された内部配線6と接続されて、フェライト層2の側面に導出されている。このような接続導体5は、上記のフェライト層2の内部に形成された内部配線6と同様の材料および方法により形成されている。
接続導体5は、内部配線6と側面電極4とを電気的に接続するためのものであり、例えば内部配線6と接続されているのと反対側の端が側面電極4と接している。
側面電極4は、配線基板10に電子部品12が実装された電子部品モジュールを外部の基板と接続するためのものである。側面電極4は、図1および図2に示す例のように、接続導体5が導出された部分とその周囲に形成された介在層3とを覆って、接続導体5に接続されて形成されている。側面電極4用の導体ペーストの金属粉末としては、内部配線6用の導体ペーストと同様のCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末を用いる。
コイルパターン7は、配線基板10の表面に巻き数の多い大きなコイル部品を配線基板の表面に実装することなく、高いインダクタンスを有する配線基板10とするためのものである。コイルパターン7用の導体ペーストの金属粉末としては、配線導体用の導体ペーストと同様のCu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末を用いる。例えばこのような配線基板に搭載される半導体チップがDC−DCコンバータ用途の電源用であるような場合であれば、高い電流が流せるほど好ましい。コイルパターン7の導体抵抗が高いと、コイルパターン7が発熱することで半導体チップの動作に影響を与えてしまう場合があるので、上記のような低抵抗金属がよい。
また、コイルパターン7は、配線導体を形成する場合と同様に、フェライトグリーンシートの表面にコイルパターン7用の導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法によって形成する。なお、コイルパターン7用の導体ペーストは、例えば内部配線6の配線導体用の導体ペーストと同じものを用いればよい。
内部配線6、接続導体5およびコイルパターン7用の導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段によって混合および混練することで作製される。
導体ペーストの有機バインダーは、従来の導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解や揮発性を考慮すると、アクリル系,アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
導体ペーストの有機溶剤は、上記した金属粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
介在層3は、フェライト層2の側面の、接続導体5が導出された部分の周囲を覆うように形成されており、例えば、フェライト層2に用いたフェライト粉末,ガラス粉末,有機バインダー,可塑剤および有機溶剤を混合して介在層3用のペーストを作製し、フェライト層2の側面に接続導体5が導出された部分の周囲を覆うように塗布することによって形成する。このような介在層3は、フェライト材料とガラス材料とを含んでおり、焼成時にガラス材料が溶融して、フェライト材料の間に入り込む。フェライト材料(粉末)間をガラス材料が充填しているので、介在層3にはボイドが発生しにくく、互いにつながった複数のボイドが生じることも低減できる。従って、フェライト層2と介在層3との間および接続導体5と介在層3との間から水分が浸入することを抑制することができる。
また、介在層3は、図2に示す例のように、フェライト層2の側面に上下のガラスセラミック層1に接して形成されているときには、側面電極4を介在層3の側面から上下のガラスセラミック層1の側面に渡って形成することができるので、側面電極4の面積を上下方向に広く形成することができる。
また、介在層3は、導出された接続導体5の周囲のみに限らず、フェライト層2の側面の全体を覆って形成されていてもよい。例えば、接続導体5が直方体状に形成された配線基板10の対向する一対の側面に導出されている場合であれば、側面電極4は、接続導体5が導出されている配線基板10の側面の全面に形成することができ、側面電極4の面積をさらに広くすることができる。
なお、介在層3に用いるガラス粉末としては、ガラスセラミック層1に用いたガラス材料の粉末が好ましい。介在層3に含まれるガラス粉末をガラスセラミック層1と同じガラスとすると、介在層3とガラスセラミック層1との熱膨張係数が近くなることから、介在層3とガラスセラミック層1との熱膨張差に起因する熱応力によって配線基板10が割れたり、介在層3が剥がれたりすることを低減することができる。
また、介在層3を形成する方法としては、介在層3用のペーストをフェライト層2の側面に塗布する方法の他に、以下の様な方法がある。まず、ガラスセラミック層1とフェライト層2とが積層された積層体を用意し、上記した低抵抗金属の粉末と、配線基板10となる積層体の焼成温度よりも低い軟化点を持つガラス粉末を含んだ側面電極4用の導体ペーストを、フェライトグリーンシートの側面の、接続導体5となる導体ペーストが導出している部分を覆うように塗布して、焼成する。焼成時に、側面電極4用の導体ペースト中に含まれるガラス成分がフェライト層2へ流動することによって側面電極4とフェライト層2との界面付近のフェライトグリーンシートがガラス成分を含むので、界面付近に介在層3が形成される。
このような介在層3では、フェライト材料間をガラス材料が充填しており、ボイドが生じることを低減することができるので、互いにつながった複数のボイドが生じることを低減し、側面電極4と介在層3とは、および接続導体5と介在層3とは密着して接合されているので、側面電極4と介在層3との間および接続導体5と介在層3との間から水分が浸入することを抑制することができる。
介在層3用のペーストを作製するための有機バインダーは、従来のガラスセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
グリーンシートの有機溶剤は、絶縁体粉末やフェライト粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
グリーンシートを作製するためのスラリーは、例えば、絶縁体粉末やフェライト粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することにより3〜100cpsの粘度となるように調製される。
所定枚数のフェライトグリーンシートの上下にそれぞれ配線パターンおよび貫通導体パターンが形成された所定枚数のガラスセラミックグリーンシートを配置して積層体を作製し、この積層体を焼成することにより配線基板10は作製される。
積層体を作製する方法は、積み重ねたガラスセラミックグリーンシートとフェライトグリーンシートとに熱と圧力とを加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により異なるが、例えばアクリル系バインダーであるメタクリル酸エステル共重合体の場合であれば、概ね30〜100℃、2〜20MPaである。
積層体の焼成は、100〜800℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000℃の温度で焼成することにより行なわれる。焼成雰囲気としては、コイルパターン7,内部配線6および接続導体5がAg等の酸化しにくい材料から成る場合は大気中にて行なわれ、Cu等の酸化しやすい材料から成る場合は、窒素雰囲気が用いられ、脱バインダーしやすいように加湿したものを用いる。
なお、焼成後の配線基板10の表面に形成された側面電極4および搭載用電極8には、半田等による半導体チップやチップ部品、ならびに外部電気回路との接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をめっき法により順次被着するとよい。
以下、配線基板10の例示的な製造方法について説明する。
本発明の配線基板10の製造方法においては、まず、Ag粉末を含んだ導体ペーストを用いて接続導体5,内部配線6およびコイルパターン7を形成して、フェライトグリーンシートを積層し、上述の要領で内部配線6を形成したガラスセラミックグリーンシートの複数枚で挟んで積層して積層体を作製する。次に、Ag粉末と、積層体の焼成温度より低い軟化点を持つガラス粉末とを含んだ側面電極4用の導体ペーストを、フェライトグリーンシート層の側面の、接続導体5となる導体ペーストが導出している部分を覆うよう塗布する。そして、この積層体から有機成分を除去した後に焼成する。有機成分の除去は、積層体に荷重をかけつつ100〜800℃の温度範囲で積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解し揮散させる。
また、焼成温度はガラスセラミック組成により異なるが、通常は約800〜1000℃の範囲内である。焼成は通常は大気中で行なうが、接続導体5,内部配線6およびコイルパターン7の導体材料としてCuを使用する場合、100〜700℃の加湿窒素雰囲気中で有機成分の除去を行ない、次に窒素雰囲気中で焼成を行なう。
焼成時に、側面電極4用の導体ペースト中に含まれるガラス成分がフェライト層2へ流動することによって側面電極4とフェライト層2との界面付近のフェライトグリーンシートがガラス成分を含むので、界面付近に介在層3が形成される。
また、有機成分の除去時および焼成時には、積層体の反りを防止するために、その上面に重しを載せる等して荷重をかけるとよい。このような重しによる荷重は50Pa〜1MPa程度が適当である。荷重が50Pa未満である場合は、積層体の反りを抑制する作用が充分でなくなる。また、荷重が1MPaを超える場合は、使用する重しが大きくなるため、焼成炉に入らなくなったり、また焼成炉に入っても重しが大きいために熱容量が不足することになり焼成できなくなったりする等の問題をひき起こすおそれがある。
この重しとしては、積層体の焼成中に変形あるいは溶融して荷重が不均一になったり、分解した有機成分の揮散を妨げたりすることがないような耐熱性の多孔質のものが適している。具体的には、セラミックス等の耐火物、あるいは高融点の金属等が挙げられる。また、積層体の上面に多孔質の重しを置き、その上に非多孔質の重しを置いてもよい。
本発明の配線基板は、図3に示す例のように、表面に半導体素子11や電子部品12を実装することにより、電子部品モジュールとすることができる。このような電子部品モジュールは、配線基板10の内部にコイルパターン7が内蔵されている場合であれば、配線基板10の表面に巻き数の多いコイルを実装することなく、高いインダクタンスを有することができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更は可能である。例えば、フェライト層2にはコイルパターン7および内部配線6のほかに、必要に応じてコンデンサや抵抗(図示せず)を形成してもよい。