JP2012080046A - ガラスセラミック基板およびコイル内蔵ガラスセラミック配線基板 - Google Patents

ガラスセラミック基板およびコイル内蔵ガラスセラミック配線基板 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁層とフェライト層との間の接合強度をより向上させたガラスセラミック基板を提供する。
【解決手段】フェライト結晶を有するフェライト層2と、フェライト結晶と同じ結晶構造の第1結晶を含むガラスセラミックスを有する絶縁層1と、絶縁層1とフェライト層2との間に配置された第1結晶を含むガラスセラミックスおよびフェライト結晶を有する中間層3とが積層されたガラスセラミック基板において、中間層3の複数のフェライト結晶の一部が、絶縁層1側へ突出しているガラスセラミック基板である。絶縁層1側へ突出したフェライト結晶の一部と絶縁層1に含まれている第1結晶とが結合し、結合したフェライト結晶および第1結晶の周囲に非晶質のガラス成分があるので、結晶同士が結合し、絶縁層1と中間層3との界面での接合強度の高いガラスセラミック基板とすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、フェライト層と絶縁層とが積層されてなるガラスセラミック基板およびフェライト層にコイルが内蔵され、絶縁層に配線導体が形成されたコイル内蔵ガラスセラミック配線基板に関するものである。
従来から、携帯電話機をはじめとする移動体通信機器等の電子機器には多数の電子装置が組み込まれており、電子機器の小型化が急激に進んでいるのに伴って、各種電子装置も小型化や薄型化が要求されている。たとえば、LCフィルタは、従来は比較的大型のチップコイルやチップコンデンサを基板に搭載することにより形成されていたが、近年では、セラミック基板の内部に高透磁率を有するフェライト層を形成し、このフェライト層にコイル導体を埋設することにより形成することが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
このようなセラミック基板は、例えば、配線層が形成された一対の絶縁層と、その一対の絶縁層に挟まれて積層されるとともに内部に平面コイル導体が埋設されたフェライト層とによって構成されている。配線層や平面コイル導体には、抵抗による電気的なロスを抑えるために低抵抗のCuやAgなどの低抵抗金属を用いる必要があり、このような低抵抗金属は比較的低融点であることから、低温焼成が可能である絶縁層およびフェライト層として、それぞれガラスセラミックスおよびFeFeを主相とするフェライトを用いて、これらを同時焼成することによってガラスセラミック基板が製造される。また、このようなガラスセラミック基板のガラスセラミック層とフェライト層との接合強度を上げるために、ガラスセラミック層とフェライト層との間には、ガラスセラミック層およびフェライト層の成分を有する中間層が形成されたものも知られている。
特開平6−20839号公報
しかしながら、ガラスセラミック基板の機械的特性や電気的特性を満足させるために、絶縁層のガラスセラミックスのガラスとして結晶化ガラスを用いる場合が多いが、このような場合に、その製造過程において絶縁層とフェライト層との界面にボイドや隙間が発生し、結果としてこの界面での接合強度の低化を招いてしまうという問題点があった。
また、ガラスセラミック層とフェライト層との間に中間層が形成されていても、ガラスセラミック層に含まれる結晶とフェライト層に含まれるフェライト結晶との結晶構造が異なれば、結晶同士が結合しにくい。従って、ガラスセラミック基板が焼結する際の、収縮時にガラスセラミック層とフェライト層とが界面から剥がれて、ガラスセラミック層とフェライト層との層間に隙間やボイドが発生することがあった。このような隙間やボイド同士がつながった部分があると、隙間やボイドを伝わって水分が基板内部へと進入し、イオンマイグレーションによる絶縁劣化を生じてしまうという課題があった。
よって、絶縁層とフェライト層との間の接合強度をより向上させたガラスセラミック基板が求められている。
本発明のガラスセラミック基板は、フェライト結晶を有するフェライト層と、フェライト結晶と同じ結晶構造の第1結晶を含むガラスセラミックスを有する絶縁層と、前記絶縁層と前記フェライト層との間に配置された前記第1結晶を含むガラスセラミックスおよび前記フェライト結晶を有する中間層とが積層されたガラスセラミック基板において、前記中間層の複数の前記フェライト結晶の一部が、前記絶縁層側へ突出していることを特徴とするものである。
また、本発明のコイル内蔵ガラスセラミック基板は、上記構成のガラスセラミック基板に、配線導体が配置されているとともに、前記複数のフェライト層の層間に前記配線導体に電気的に接続されたコイル導体が配置されていることを特徴とするものである。
本発明のガラスセラミック基板によれば、フェライト結晶を有するフェライト層と、フェライト結晶と同じ結晶構造の第1結晶を含むガラスセラミックスを有する絶縁層と、絶縁層とフェライト層との間に配置された第1結晶を含むガラスセラミックスおよびフェライト結晶を有する中間層とが積層されたガラスセラミック基板において、中間層の複数のフェライト結晶の一部が、絶縁層側へ突出していることから、絶縁層側へ突出したフェライト結晶の一部と絶縁層に含まれている第1結晶とが結合しているので、フェライト層の絶縁層への結合強度が高くなって、絶縁層と中間層との界面での接合強度の高いガラスセラミック基板とすることができる。
本発明のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板によれば、上記構成の本発明のガラスセラミック基板と、絶縁層に形成された配線導体と、フェライト層に内蔵されたコイル導体とを具備することから、絶縁層と中間層との接合強度が高いので、基板強度が高く、信頼性の高いコイル内蔵ガラスセラミック配線基板となる。
本発明のガラスセラミック基板の実施の形態の一例を示す断面図である。 図1のA部における要部拡大断面図である。 本発明のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
本発明のガラスセラミック基板およびコイル内蔵ガラスセラミック配線基板について、添付図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1〜図3において、1は絶縁層、1aは第1結晶、2はフェライト層、2aはフェライト結晶、3は絶縁層1とフェライト層2との間に形成された中間層、4は配線導体、5はコイル導体である。
本発明のガラスセラミック基板は、図1および図2に示す例のように、フェライト結晶2aを有するフェライト層2と、フェライト結晶2aと同じ結晶構造の第1結晶1aを含むガラスセラミックスを有する絶縁層1と、絶縁層1とフェライト層2との間に配置された第1結晶1aを含むガラスセラミックスおよびフェライト結晶2aを有する中間層3とが積層されたガラスセラミック基板において、中間層3の複数のフェライト結晶2aの一部が、絶縁層1側へ突出していることから、絶縁層1側へ突出したフェライト結晶2aの一部と絶縁層1に含まれている第1結晶1aとが結合し、結合したフェライト結晶2aおよび第1結晶1aの周囲に非晶質のガラス成分があるので、結晶同士が結合し、絶縁層1と中間層3との界面での接合強度の高いガラスセラミック基板とすることができる。
フェライト層2は、スピネル構造の固溶体である強磁性フェライトであり、X−Fe
(XはCu,Ni,Zn)として示されるNi−Zn系フェライト,Y−Fe(YはMn,Zn)として示されるMn−Zn系フェライト,Z−Fe(ZはMg,Zn)として示されるMg−Zn系フェライト,U−Fe(UはNi,Co)として示されるNi−Co系フェライト等が挙げられる。これらの中でFeFeはスピネル構造の主成分である。また、上記スピネル構造を有する強磁性フェライトの中でもNi−Zn系フェライトは、高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるため、100kHz以上の高い周波数で使用する用途において使用することが好ましい。
Ni−Zn系フェライトの場合であれば、その組成比は焼結体としてFeFeを63〜73質量%,CuOを5〜10質量%,NiOを5〜12質量%,ZnOを10〜23質量%とすると、絶縁層1のガラスセラミックスを焼成する800℃〜1000℃以下の温度で焼結密度5.0g/cm以上の高密度焼成が可能であり、かつ高周波帯域で十分に高い透磁率を得ることができるので好ましい。FeFeはフェライトの主成分であり、その割合が63質量%以上であると十分な透磁率が得られる。また、FeFeが73質量%以下であると、焼結密度を低下させることなく機械的強度を保持することができる。CuOは焼結温度の低温化のために重要な要素であり、CuOが低温で液相を形成することにより焼結を促進させる効果を用いて、磁気特性を損なわずに800〜1000℃の低温で焼成することが
できる。CuOは、その割合が5質量%以上であると、配線層や平面コイル導体と同時に800〜1000℃で焼成を行なった場合に焼結密度を高くすることができることから、機械的
強度を保持することができ、10質量%以下であると、磁気特性の低いCuFeの割合を低く抑えることができるために磁気特性を維持しやすい。NiOはフェライト層2の高周波域における透磁率を確保するために含有させる。NiFeは高周波域まで共振による透磁率の減衰を起こさず、高周波域での透磁率を比較的高い値に維持することができるが、初期透磁率は低いという特性をもつため、5質量%以上であると100MHz以
上の高周波域での透磁率を低下させることなく保持することができ、12質量%以下であると初期透磁率を高く維持できる。ZnOはフェライト層2の透磁率向上のために重要な要素であり、フェライト組成のうち10質量%以上であると透磁率を高く保持することができ、23質量%以下であれば、磁気特性を良好に維持できる。
フェライト層2は、フェライト層2用のフェライトグリーンシートを焼成することで作製される。フェライトグリーンシートに用いられる強磁性フェライト粉末は、例えば、FeFeとCuO,ZnOまたはNiOとを予め仮焼することにより作製されたフェライト粉末であり、平均粒径が0.1μm〜0.9μmの範囲で均一であり、粒形状は球形状に近いものが望ましい。これは、平均粒径が0.1μm以上であると、フェライトグリーンシ
ートの製作においてフェライト粉末の均一な分散が容易となり、平均粒径が0.9μm以下
であるとフェライトグリーンシートの焼結温度を低く抑えることができるからである。また、粒径が均一で球状に近いことにより均一な焼結状態を得ることができる。フェライト粉末の粒径が均一であると、局所的に結晶粒の成長が低下するといったこともなく、焼結後に得られるフェライト層2の透磁率が安定しやすい。
絶縁層1は、ガラス相および第1結晶1aを含むガラスを有するガラスセラミックスか
らなるものである。ガラス相としては、SiO系,SiO−B系,SiO−Al系,SiO−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す),SiO−B系−MO系,SiO−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す),SiO−B−MO−MO系,SiO−M O系(但し、MはLi、NaまたはKを示す),SiO−B−M O系等のガラスが挙げられる。また、上記以外にCo,Cd,Inやその酸化物が含まれていてもよい。
第1結晶1aは、ガラス粉末とフィラー粉末とを含む絶縁層1用のグリーンシートを焼
成することによって、絶縁層1用のグリーンシート中のガラスが結晶化してできた結晶、またはガラス成分とフィラー成分とから生成された結晶、あるいは絶縁層1用のグリーンシート中に含まれている結晶である。結晶化してスピネル構造となるガラスとしては、例えばSiO−Al−MgOガラス(但し、Alに対するMgOのモル比が0.8〜1.2),SiO−MgOガラス(但し、SiOに対するMgOのモル比が1.8〜2.2),SiO−Al−ZnOガラス(但し、Alに対するZnOのモル比が0.8〜1.2),SiO−CoO−MnOガラス(但し、MnOに対するCoOのモル比が1.8〜2.2),SiO−CdO−InOガラス(但し、InOに対するCdOのモル比が1.8〜2.2)等がある。また、ガラス成分としてMgOを含み、フィラー成分としてSiOを含む場合であれば、これらによって第1結晶1aとしてMgSiO
生成されることがある。あるいは、ガラス成分としてZnOを含み、フィラー成分としてAlを含む場合であれば、これらによって第1結晶1aとしてZnAlが生
成されることがある。あるいは、ガラス成分としてAlを含み、フィラー成分としてFeを含む場合であればFeAlが生成されることがある。第1結晶1a
がグリーンシートにフィラーとして含まれる場合は、例えば、フォルステライト(MgSiO)やガーナイト(ZnAl)が挙げられる。また、第1結晶1aは、フェ
ライト結晶2aと同じ結晶構造であれば特に限定されるものではない。
なお、第1結晶1aは、それぞれフェライト結晶2aと同じ結晶構造を有しており、第
1結晶1aとフェライト結晶2aとの格子定数の差は、フェライト結晶2aの格子定数の10%以内であることが好ましい。
中間層3は、絶縁層1に含まれるガラスセラミックス材料およびフェライト層2に含まれるフェライト材料ならびに、絶縁層1に含まれる上記のフィラーからなる。このような中間層3は、フィラーを含むガラスセラミックス材料とフェライト層2のフェライト材料を混合したセラミックペーストを絶縁層1とフェライト層2との間に配置して焼成することによって作製される。
このようなセラミックペーストを用いて中間層3を形成することによって、焼結の際に中間層3用のセラミックペースト中のガラスが軟化して、フェライト結晶2a同士またはフェライト結晶2aと第1結晶1aとの隙間をガラスが充填して、ガラスセラミックスか
らなる絶縁層1と中間層3との界面がより隙間無く充填される。そして、図3に示す例のように、中間層3用のセラミックペースト中のフェライト結晶2aの一部が結晶化する際に絶縁層1へ突出する。なお、このようなフェライト結晶2aが絶縁層1へ突出する長さは2〜3μmである。また、絶縁層1の結晶化ガラスが結晶化する際に第1結晶1aであ
るZnFe,FeAlおよびZnAl等が結晶化し、図3に示す例のように、このような第1結晶1aと絶縁層1へ突出したフェライト結晶2aの一部とが結
合する。このようにして、絶縁層1とフェライト層2との間に中間層3が形成されたガラスセラミック基板を得る。また、フェライト材料とガラスセラミックス材料との粒径を同程度として、それぞれの粒径を小さくすると、フェライト結晶2aと第1の結晶との結合はより強くなる。
また、フェライト層2はフェライト材料の粉体の粒子同士が接している部分から焼結が進むため、フェライト材料が85重量部〜95重量部と多く含まれていると、フェライト材料同士が接する部分が多くなる。このようにフェライト材料同士が接する部分が多くなると、フェライト結晶2aが成長しやすくなって、フェライト結晶2aの一部が絶縁層1に突出しやすくなって、フェライト結晶2aの一部が絶縁層1に突出した部分が多くなり、中間層3のフェライト結晶2aと絶縁層1の第1結晶1aとが結合する部分が多くなる。し
たがって、絶縁層1と中間層3との接合が強くなり絶縁層1と中間層3との間のデラミネーションを抑制して、絶縁劣化しにくいガラスセラミック基板を得ることができる。
中間層3には、さらに第2結晶が含まれていることが好ましい。第2結晶は、例えば、ZnFe,FeFe,FeAl,ZnAl,CoMnOまたはCdInを含み、中間層3とフェライト層2との境界面の全体にわたって存在している。例えば、絶縁層1がSiO−B−Al−ZnO−MgO系ガラスを含むグリーンシートを焼結してなるものであり、フェライト層2がX−Fe(XはCu,Ni,Zn)として示されるNi−Zn系フェライトからなる場合であれば、第2結晶としては、ZnFe,FeAlおよびZnAlが生成される。ガラスセラミックスのグリーンシートを焼成することにより、ガラスセラミックス中のガラス成分が焼成温度領域において軟化して流動し、絶縁層1と中間層3との界面にZnFe,FeAlおよびZnAlを析出しながら焼結する。そのため、ZnFe,FeAlおよびZnAlと絶縁層1との結合は強固なものとなる。
また、第1結晶1a、第2結晶およびフェライト結晶2aは、同じ結晶構造であ、第2
結晶の格子定数とフェライト結晶2aの格子定数との差、および第2結晶の格子定数と第1結晶1aの格子定数との差は、第2結晶の格子定数の10%以内であることが好ましい。
このように、第2結晶が第1結晶1aと同一の結晶構造を有し、かつ第2結晶の格子定数
と第1結晶1aの格子定数との差が第2結晶の格子定数の10%以内であると、絶縁層1と
中間層3とを原子レベルで接合させることができるため、絶縁層1と中間層3との接合強度を高くすることができる。また、絶縁層1と中間層3との間における格子欠陥の発生を抑制することができることから、第2結晶と第1結晶1aとの界面において、ボイドおよ
び隙間の発生を低減することができる。また、同様に、第2結晶がフェライト結晶2aと同一の結晶構造を有し、かつ第2結晶の格子定数とフェライト結晶2aの格子定数との差が第2結晶の格子定数の10%以内であると、フェライト層2と中間層3とを原子レベルで接合させることができるため、フェライト層2と中間層3との接合強度を高くすることができる。また、フェライト層2と中間層3との間における格子欠陥の発生を抑制することができることから、第2結晶とフェライト結晶2aとの界面においてボイドおよび隙間の発生を低減することができる。
第2結晶が第1結晶1aに含まれる元素の一部とフェライト結晶2aに含まれる元素の
一部とを有するとき、例えば、フェライト結晶2aがFeFeで、第1結晶1aが
ZnAlであって、第2結晶がZnFeであるときには、異元素間における結合と比較して、同元素間における結合の方が結合強度が高くなるので、中間層3中の第2結晶と絶縁層1中の第1結晶1aおよびフェライト層2中のフェライト結晶2aとの結
合強度が高くなり、絶縁層1と中間層3との接合強度および中間層3とフェライト層2との接合強度がそれぞれより高いものとなる。
第1結晶1aはフォルステライト(MgSiO)を主相とし、フェライト結晶2a
はFeFeを主相とし、第2結晶はZnFe,FeAlおよびZnAlのいずれか1つを主相とすることが好ましい。このようにすると、第2結晶はフェライト結晶2aおよび第1結晶1aと同一の結晶構造であるとともに、第2結晶とフェ
ライト結晶2aとの格子定数の差、および第2結晶と第1結晶1aとの格子定数の差は、
それぞれ第2結晶の格子定数の5%以内とより小さいものとなることから、ボイドや隙間を発生させることがより少なくなるので、より接合強度の高いガラスセラミック基板とすることができる。具体的には、絶縁層1と中間層3との結合は、絶縁層1の第1結晶1a
であるフォルステライト結晶と中間層3中の第2結晶であるZnFe,FeAlおよびZnAlとの結晶構造が同じであり、両者の格子定数の差が第2結晶の格子定数の5%以内であることから、両者の原子レベルでの結合が可能である。また、絶縁層1のガラスセラミックスがフォルステライト(MgSiO)を主相とし、フェラ
イト層2のフェライト結晶2aがFeFeを主相とすることによって、両者の熱膨張係数が近くなるため、焼成工程やその後の加熱工程、あるいは信頼性評価の工程において、熱膨張の差から生じる応力によるクラックの発生を抑えることができる。
ここで、第1結晶1a、第2結晶およびフェライト結晶2aの結晶構造を確認する方法
としては、透過型電子顕微鏡を用いる方法がある。この方法によれば、まず、セラミック基板の切断加工およびその切断面の研磨加工を行なって、結晶構造を確認したい層、すなわち絶縁層1,中間層3およびフェライト層2のいずれかを透過型電子顕微鏡で観察できる状態にする。その後、その層の切断面における回折格子像を観察することにより、所望の層の結晶構造を同定することができる。結晶相の同定は、既知のものについてはJPCDSカードを参照して行なうことができる。例えば、ZnFe,FeAlおよびZnAlの結晶構造および回折格子像は、JPCDSカード(ZnFe:JPCDS No.22−1012,FeAl:JPCDS No.34−0192,ZnAl:JPCDS No.5−669)に記載されているので、上記結晶相が析出して
いるかどうかは容易に確認することができる。
第1結晶1aと第2結晶との格子定数の差、および第2結晶とフェライト結晶2aとの
格子定数との差が、それぞれ第2結晶の格子定数の10%以内であることは、第1結晶1a
,第2結晶およびフェライト結晶2aが同じ結晶構造である場合は、回折格子像の原点からそれぞれの同じ面方位に対応する点までの距離を測定することによって確認することができる。第1結晶1a,第2結晶およびフェライト結晶2aが同じ結晶構造であることを
上記JPCDSカードなどで確認した後、回折格子像の原点からそれぞれ同じ面方位に対応する点までの距離を測定する。第1結晶1a,第2結晶およびフェライト結晶2aの、
回折格子像の原点からそれぞれ同じ面方位に対応する点までの距離をd1,d2およびd3とすると、第1結晶1aと第2結晶との格子定数の差の、第2結晶の格子定数に対する
割合は、(1/d1−1/d2)×d2から算出することができ、第2結晶とフェライト結晶2aとの格子定数の差の、第2結晶の格子定数に対する割合は、(1/d2−1/d3)×d2から算出することができる。
透過型電子顕微鏡を用いる方法以外の絶縁層1,フェライト層2および中間層3の結晶構造を確認する方法としては、X線回折法を用いる方法がある。この方法によれば、まず、セラミック基板の切断加工およびその切断面の研磨加工を行なって、所望の層をX線回折により観察できる状態にする。その後、その層の断面にX線を照射することにより、回折格子像を得ることができる。X線の照射は、所望の層の部分のみが照射されるように、10μm四方程度の領域に照射するようにする。その後、上記透過型電子顕微鏡での結晶構造の同定と同じ手順で、絶縁層1,フェライト層2および中間層3の結晶構造を特定することができる。
このような本発明のガラスセラミック基板は、絶縁層1用のセラミックグリーンシートを準備する第1準備工程と、フェライト層2用のフェライトグリーンシートを準備する第2準備工程と、セラミックグリーンシートのフェライトグリーンシート側の面およびフェライトグリーンシートのセラミックグリーンシート側の面の少なくとも一方に中間層3用のセラミックペーストをドクターブレード法等の塗布方法やスクリーン印刷法等の印刷方法によって塗布する第3準備工程と、セラミックグリーンシートとフェライトグリーンシートとを積層してグリーンシート積層体を作製する積層体作製工程と、グリーンシート積層体を焼成する焼成工程とを経て作製される。
絶縁層1用のセラミックグリーンシートは、ガラス粉末とフィラー粉末とからなる絶縁体粉末および有機バインダーを主成分とするものである。ガラス粉末は、上述したガラス相のガラスの粉末である。フィラー粉末は、上述したフィラー粉末以外に、絶縁層1の電
気的特性や機械的特性に応じて、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末を含んでいてもよい。
フェライト層2用のフェライトグリーンシートは、上述したようなフェライト結晶2aの粉末であるフェライト粉末、あるいは例えば、FeFeとCuO,ZnOまたはNiOとを予め仮焼することにより作製されたフェライト粉末、および有機バインダーを主成分とするものである。
絶縁層1用のセラミックグリーンシートおよびフェライト層2用のフェライトグリーンシートに含まれる有機バインダーは、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解性や揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
絶縁層1用のセラミックグリーンシートおよびフェライト層2用のフェライトグリーンシートは、スラリーを調製して、スラリーをドクターブレード法等の塗布方法によって塗布してスラリー中の溶剤を乾燥することによって作製する。グリーンシートを作製するためのスラリーは、絶縁体粉末やフェライト粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することに
より3〜100cpsの粘度となるように調製される。このときの有機溶剤は、絶縁体粉末
やフェライト粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類またはアルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトンまたはイソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
中間層3は、フィラーを含むガラスセラミックス材料を5重量部〜15重量部とフェライト層2のフェライト材料を85重量部〜95重量部混合し、有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練して作製したセラミックペーストを絶縁層1とフェライト層2との間に印刷して焼成することによって作製される。ここで、中間層3となるセラミックペーストに含まれるガラスセラミックス材料としては、例えば、ガラスを80重量部、フィラーを20重量部の比率で混合したものを用いる。中間層3となるセラミックペーストの有機バインダーは、従来からセラミックグリーンシートや導体ペースト等でも使用されている上記のものが使用可能である。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
このような中間層3用のセラミックペーストに用いる有機溶剤は、上記の中間層3用の材料と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
グリーンシート積層体を作製する方法は、積み重ねた絶縁層1用のセラミックグリーンシートとフェライト層2用のフェライトグリーンシートとに熱と圧力とを加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤および溶剤等からなる密着剤を、セラミックグリーンシート同士の間およびフェライトグリーンシート同士間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により
異なるが、概ね30〜100℃および2〜30MPaである。このときのセラミックグリーンシ
ートおよびフェライトグリーンシートは、ガラスセラミック基板に要求される特性に応じた厚みとなるように、グリーンシートの厚みにより必要な枚数を積層すればよい。
グリーンシート積層体の焼成は、300〜600℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000
℃の温度で焼成することにより行なわれる。
本発明のガラスセラミック基板の製造方法は、絶縁層1用のセラミックグリーンシートの絶縁体粉末としては、フォルステライトからなる10〜40質量%のフィラーと、SiOを22〜52質量%、Bを2〜12質量%、Alを9〜29質量%、ZnOを9〜29質量%、CaOを1〜9質量%およびMgOを7〜21質量%含み、Alに対するZnOのモル比が0.8〜1.2である60〜90質量%のガラスとを有するものであり、フェライト層2のフェライトグリーンシートは、FeFeを主相とするフェライト結晶2aを有するものである。
図3は、本発明のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。本発明のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板は、上記の本発明のガラスセラミック基板と、絶縁層1に形成された配線導体4と、フェライト層2に内蔵されたコイル導体5とを具備することから、絶縁層1とフェライト層2との接合強度が高いので、基板強度が高く、信頼性の高いコイル内蔵ガラスセラミック配線基板となる。
図3に示す例のコイル内蔵ガラスセラミック基板におけるガラスセラミック基板は、2つの絶縁層1と、これら絶縁層1の間に設けられた、フェライト結晶2aを有するフェライト層2と、各絶縁層1とフェライト層2との間に設けられた中間層3とを有する。このような構成とした場合には、ガラスセラミック基板の表裏面がガラスセラミックスからなる絶縁層1で構成されることから、一般的にフェライトに比較して絶縁抵抗が高く、また、配線導体4との接合強度が高いガラスセラミックスがガラスセラミック基板の表面に位置するので、絶縁信頼性が高く、配線導体4上に部品を実装したり、配線導体4を介して外部回路基板に実装したりする場合の実装信頼性の高いコイル内蔵ガラスセラミック配線基板となる。
配線導体4は、Cu,Ag,Au,Pt,Ag−Pd合金およびAg−Pt合金等の低抵抗金属の粉末の焼結体であるメタライズ金属からなるものであり、絶縁層1用グリーンシートに配線導体4用導体ペーストを印刷することによって配線導体4となる配線導体パターンを形成しておき、これを絶縁層1用グリーンシートと同時焼成することによって形成される。配線導体4には、コイル内蔵ガラスセラミック基板の外表面に形成され、その上に電子部品を実装したり、ろう材等を介して外部回路基板に実装したりするための外部配線導体と、上下の外部配線を接続するための内部配線導体とがあり、内部配線導体には、絶縁層1内での平面方向の引き回しのための内部配線層と、内部配線層同士または内部配線と外部配線導体とを接続するための、絶縁層1をその厚み方向に貫通する貫通導体とがある。
平面コイル導体5は、配線導体4と同様に金属粉末の焼結体であるメタライズ金属層からなるものであり、フェライト層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体5用導体ペーストを印刷することによってコイルパターンを形成し、さらにその上にフェライト層2用グリーンシートを積層して同時焼成することによって、フェライト層2に埋設されて(フェライト層2に内蔵されて)形成される。図3に示す例では、3重巻きの平面コイル導体5が上下に2つ重ねて形成されているが、このように複数のコイル導体5が上下に重ねられて形成される場合は、コイル導体5となるコイル導体パターンおよびコイル導体同士あるいはコイル導体と内部配線層とを接続するための貫通導体となる貫通導体パターンが
形成されたフェライト層2用グリーンシートを複数積層した上に、さらにフェライト層2用グリーンシートを積層すればよい。
平面コイル導体5の作製に用いられる金属粉末は、上記の配線導体4と同様の低抵抗金属の粉末を用いる。これにより、平面コイル導体5の電気抵抗を小さくすることができる。
コイル内蔵ガラスセラミック配線基板は、上記したガラスセラミック基板の製造方法において、絶縁層1用のセラミックグリーンシートおよびフェライト層2用のフェライトグリーンシートに配線導体パターンおよびコイル導体パターンを形成しておくことによって作製することができる。図3に示す例のようなコイル内蔵ガラスセラミック配線基板であれば、コイル導体パターンが形成されたものを含む所定枚数のフェライト層2用グリーンシートの上下にそれぞれ配線パターンが形成された所定枚数の絶縁層1用グリーンシートを配置して積層体を作製し、この積層体を焼成することによってセラミック基板が作製される。
配線導体4となる配線導体パターンは、絶縁層1用グリーンシートの表面に配線導体4用の導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成される。配線導体4となる貫通導体は、配線導体パターンの形成に先立って絶縁層1用グリーンシートにパンチング加工やレーザ加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔に印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって配線導体4用導体ペーストを充填することで形成される。
平面コイル導体5となるコイル導体パターンも同様に、フェライト層2用グリーンシートの表面に平面コイル導体5用の導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法で所定パターンに印刷して形成し、フェライト層2内の貫通導体となる配線パターンも上記貫通導体となる配線導体パターンと同様にして形成する。平面コイル導体5用の導体ペーストには、配線導体4用導体ペーストと同じものを用いればよい。平面コイル導体5となるコイル導体パターンは、要求されるインダクタンス値やサイズにもよるが、上記のように印刷により形成する場合は、線幅および隣接する外周と内周の導体間距離が0.1mm程度以上であれば容易に形成できる。
配線導体4用および平面コイル導体5用の導体ペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー,有機溶剤,必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで作製される。
導体ペーストの有機バインダーは、従来からセラミックグリーンシートや導体ペーストに使用されている上記のものが使用可能である。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。
導体ペーストの有機溶剤は、上記した金属粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオールやブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等が使用可能である。
配線導体4用の導体ペーストや平面コイル導体5用の導体ペーストは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜15質量部および有機溶剤を10〜30質量部加えて混
練することにより、印刷により導体ペーストの滲みやかすれ等の不具合が発生せず良好に所定形状のパターン形成ができる程度の粘度となるようにすることが望ましい。
貫通導体となる配線パターンを形成するための導体ペーストは、溶剤量や有機バインダ
ー量により、配線導体4用の導体ペーストや平面コイル導体5用の導体ペーストに対して比較的流動性の低いペースト状に調整し、貫通孔への充填を容易にし、かつ加温硬化するようにするとよい。また、焼結挙動の調整のために金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えた無機成分を含んでいてもよい。
焼成雰囲気としては、平面コイル導体5やその他の配線導体4がAg等の酸化しにくい材料から成る場合は大気中にて行なわれ、Cu等の酸化しやすい材料から成る場合は、窒素雰囲気が用いられ、脱バインダーしやすいように加湿したものが用いられる。
焼成後のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板の表面に形成された配線導体4には、半導体チップやチップ部品、または外部電気回路との半田等による接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をめっき法により順次被着するとよい。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、上記の例ではフェライト層2用のフェライトグリーンシートの上下に、中間層3用のセラミックペーストを介して絶縁層1用のセラミックグリーンシートを配置した積層体を作製し、この積層体を焼成することによりガラスセラミック基板を作製する例について説明したが、先にフェライトグリーンシートのみで積層体を作製し焼成した後に、その上下に中間層3用のセラミックペーストを介して絶縁層1用のセラミックグリーンシートを積層して、この積層体を焼成することによりガラスセラミック基板を作製してもよい。
上記の実施の形態の例によるコイル内蔵ガラスセラミック基板の実施例を以下に詳細に説明する。
まず、ガラス粉末としてSiOを37質量%、Bを7質量%、Alを19質量%、ZnOを17質量%、CaOを5質量%およびMgOを15質量%含むガラスの粉末80質量%と、フィラー粉末としてフォルステライト粉末20質量%とを混合して絶縁体粉末とし、この絶縁体粉末100質量%に対して、有機バインダーとしてアクリル樹脂を12質量%
、可塑剤としてフタル酸系可塑剤を6質量%および溶剤としてトルエンを30質量%加え、ボールミル法により混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いてドクターブレード法によって厚さ160μmの、絶縁層1となるセラミックグリーンシートを成形した。
このセラミックグリーンシートに金型による打ち抜き加工によって、貫通導体用の直径150μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に配線導体4となる貫通導体ペーストをスクリ
ーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥した。貫通導体ペーストとしては、Ag粉末100質量%と、焼結助剤としてのガラス粉末10質量%に、アクリル樹脂12質量%と有機溶
剤としてのα−テルピネオール2質量%とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
次に、このセラミックグリーンシートに配線導体4となる導体ペーストをスクリーン印刷法により2mm四方のサイズで20μmの厚みに塗布して、70℃で30分乾燥して配線導体パターンを形成した。
導体ペーストとしては、金属粉末としてAg粉末100質量%に、アクリル樹脂12質量%
と有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量%とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
次に、FeFe粉末700g,CuO粉末60g,NiO粉末60g,ZnO粉末180g
および純水4000cmをジルコニアボールとともに容量が7000cmのポットに入れて、ポットを回転させることによるボールミルにて24時間かけて混合した後、乾燥した混合粉末をジルコニアるつぼに入れて大気中730℃で1時間加熱することによって、強磁性フェ
ライト粉末を作製した。このフェライト粉末300gを純水600gに入れ、攪拌した後、ジルコニアビーズ200gを入れた容量1000cmのビーズミルで粒径を0.5μmとなるまで粉砕処理を行った。このフェライト粉末100質量%に対し、有機バインダーとしてブチラール
樹脂を10質量%および有機溶剤としてIPAを45質量%添加し、上記と同様のボールミル法により混合してスラリーとした。このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ100μmのフェライトグリーンシートを成形した。
このフェライトグリーンシートに、金型による打ち抜き加工によって貫通導体用の直径150μmの貫通孔を形成した。この貫通孔に、コイル導体5となる貫通導体ペーストをス
クリーン印刷法によって充填し、70℃で30分乾燥して貫通導体となる貫通導体組成物を形成した。貫通導体ペーストとしては、上記と同じものを用いた。
続いて、このフェライトグリーンシート2枚にそれぞれ導体ペーストをスクリーン印刷法によって30μmの厚みに塗布し、70℃で30分乾燥して、平面コイル導体パターンを形成した。導体ペーストとしては、Ag粉末100質量%に、アクリル樹脂10質量%と有機溶剤
としてのα−テルピネオール1質量%とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合したものを用いた。
次に、フォルステライト粉末300gを純水600gに入れ、攪拌した後、ジルコニアビーズ200gを入れた容量1000cmのビーズミルで粒径を0.5μm程度となるまで粉砕処理を行った。このフォルステライト粉末20質量%に、ガラス粉末としてSiOを37質量%,Bを7質量%,Alを19質量%,ZnOを17質量%,CaOを5質量%およびMgOを15質量%含んだガラス粉末を80質量%加えてガラスセラミックス粉末を作成する。このようにして作製したガラスセラミックス粉末を5質量%と、上記のフェライト粉末を95質量%と、アクリル樹脂12質量%と、有機溶剤としてのα−テルピネオール2質量%とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練した中間層となるセラミックスペーストを作成した。
次に、3枚の絶縁層1用のセラミックグリーンシートを積層し、このセラミックグリーンシートの最上面に、スクリーン印刷法によって中間層3用のセラミックペーストを印刷する。その後、セラミックグリーンシート積層体の最上面に、セラミックペーストを介して、間に平面コイルパターンが形成されて2枚積層されたフェライトグリーンシートを重ねる。そして、フェライトグリーンシートの最上面にセラミックペーストを印刷し、このセラミックペーストを介して、4枚積層されたセラミックグリーンシートを重ねる。その後、55℃、20MPaの条件で加熱圧着して絶縁層1用のセラミックグリーンシートが表層に位置する積層体を作製する。
次に、この積層体を、大気中で500℃、3時間の条件で加熱して有機成分を除去した後
、大気中で900℃、1時間の条件で焼成して、コイル内蔵ガラスセラミック配線基板を作
製した。なお、このコイル内蔵ガラスセラミック配線基板の外表面に形成された配線導体上には、無電界めっき法を用いてNiめっき皮膜およびAuめっき皮膜を順次形成した。
このようにして作製したコイル内蔵ガラスセラミック配線基板を実施例1とする。また、実施例1に用いた中間層用のセラミックペーストのガラスセラミックス粉末およびセラミックペーストのフェライト粉末をそれぞれ1質量%ずつ変化させて、実施例2〜7および比較例1〜6を作製した。
このようにして得られた表1に示す実施例1〜7の試料および比較例1〜6の試料をそれぞれ5個ずつ作製して、蛍光探傷液の浸透試験による観察を行なった。
蛍光探傷液の浸透試験においては、ガラスセラミック基板を蛍光探傷液に浸漬し、0.5
MPaの圧力をかけた状態で2時間放置し、蛍光探傷液から取り出した後、コイル内蔵ガラスセラミック配線基板の側面を研磨して、蛍光探傷液の絶縁層1とフェライト層との間への浸透があるかどうかの確認を行なった。浸透があったものについては、絶縁層1とフェライト層との界面にボイドや隙間が形成されていると判断した。
Figure 2012080046
表1の蛍光探傷液の浸透試験結果に示した0/5は5個の試料の全てに蛍光探傷液の浸透がなかったことを示し、5/5は5個の試料の全てに蛍光探傷液の浸透があったことを示す。また、5個の試料の全てに蛍光探傷液の浸透がなかった場合の判定結果をOKとして、5個中1個でも蛍光探傷液の浸透があった場合の判定結果をNGとした。
表1に示すように、ガラスセラミックス粉末が5質量%〜15質量%で、フェライト粉末が85質量%〜95質量%である中間層3を有する実施例1〜7のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板には、蛍光探傷液の浸透が全く無いことが確認できた。
これに対して、ガラスセラミックス粉末が4質量%以下であるとともにフェライト粉末が96質量%以上である場合と、ガラスセラミックス粉末が16質量%以上であるとともにフェライト粉末が84質量%以下である場合の中間層3を有する比較例1〜6のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板には、蛍光探傷液の浸透があることが確認された。これは、ガラスセラミックス粉末が4質量%以下では、焼結の際にフェライト結晶2aの周囲にガラスが十分に流動せず、ガラスセラミックス粉末が16質量%以上では、焼結の際にガラスの流動する量が多いため、フェライト粒子の粒成長が抑制され、フェライト結晶2aの一部が絶縁層に突出しないことが原因と考えられる。
以上の結果から、ガラスセラミックス粉末を5質量%〜15質量%、フェライト粉末を85
質量%〜95質量%用いた中間層を有する実施例1〜7のコイル内蔵ガラスセラミック配線基板は、高い信頼性を有するガラスセラミック基板であることが確認できた。
1・・・絶縁層
1a・・・第1結晶
2・・・フェライト層
2a・・・フェライト結晶
3・・・中間層
4・・・配線導体
5・・・平面コイル導体

Claims (2)

  1. フェライト結晶を有するフェライト層と、フェライト結晶と同じ結晶構造の第1結晶を含むガラスセラミックスを有する絶縁層と、前記絶縁層と前記フェライト層との間に配置された前記第1結晶を含むガラスセラミックスおよび前記フェライト結晶を有する中間層とが積層されたガラスセラミック基板において、
    前記中間層の複数の前記フェライト結晶の一部が、前記絶縁層側へ突出していることを特徴とするガラスセラミック基板。
  2. 請求項1に記載のガラスセラミック基板に、配線導体が配置されているとともに、前記複数のフェライト層の層間に前記配線導体に電気的に接続されたコイル導体が配置されていることを特徴とするコイル内蔵ガラスセラミック配線基板。
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