JP2004042303A - セラミック多層積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】窒化アルミニウム等の新しい材料を用いたときにも、接着不良や反り、うねりなどの問題の生じないセラミック多層積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、セラミックグリーンシートを積層した後に焼成するセラミック多層積層体の製造方法であって、セラミックグリーンシートの表面に、BET比表面積がセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末の比表面積より小さい無機物粉末と、接着性樹脂とを含有する表面層を形成し、該セラミックグリーンシートを積層し、焼成することを特徴とする。さらには、前記表面層を形成する無機物粉末のBET比表面積は、3.0m2/g以下であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の製造方法は、セラミックグリーンシートを積層した後に焼成するセラミック多層積層体の製造方法であって、セラミックグリーンシートの表面に、BET比表面積がセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末の比表面積より小さい無機物粉末と、接着性樹脂とを含有する表面層を形成し、該セラミックグリーンシートを積層し、焼成することを特徴とする。さらには、前記表面層を形成する無機物粉末のBET比表面積は、3.0m2/g以下であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックグリーンシートを複数枚積層し焼成してなるセラミック多層積層体の製造方法に関するものであり、このセラミック多層積層体は、例えば半導体やIC用の基板、パッケージとして使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体やIC用の基板やパッケージに使用されるセラミック多層積層体は、通常、ドクターブレード法等で形成した、アルミナ等からなるセラミックグリーンシートを使用して作製される。次にセラミックグリーンシートを金型にて所定寸法へ打ち抜き、またスルーホールを形成する。さらに、このスルーホールおよびセラミックグリーンシートの主表面にW、Mo等の高融点金属からなるペーストを用いて、所望のパターンを形成した後に、複数枚のセラミックグリーンシートをモールド等にセットし、例えば50℃前後、10MPa等の条件で熱圧着することで積層を行う。このように積層された後に焼成されてセラミック多層積層体となる。
【0003】
積層の際には、各層の接着を確実なものとするために接着剤が用いられる。接着剤としては、溶剤を用いるもの、溶剤と接着剤を混合したものを用いるもの等があるが、特公平2−21157号公報や特開平11−268966号公報に開示されているような、セラミックグリーンシートと同じ無機成分と接着性樹脂とからなるスラリーもしくはペーストをグリーンシートに塗布して接着成分として用いる方法が、低圧力でも接着性が優れているため、積層の際の変形が少なく、かつ他の方法のように層間に空隙を発生することが無いため、積層用の接着剤として最も広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
最近はアルミナ以外に、高熱伝導率を有する窒化アルミニウム等の新しい材料を用いたセラミック多層積層体への要求が高まっている。しかしながら、これらの新しい材料の積層時に、前述のアルミナの場合のようにセラミックグリーンシートと同じ無機成分と接着性樹脂とからなるスラリーもしくはペーストを接着剤として用いる積層方法を適用しても、接着性が悪く、層間に空隙が多数認められ、積層時に接着不良が多発するという問題が生ずることが判った。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、無機成分と接着性樹脂からなるスラリーもしくはペーストを接着剤として用いる積層方法において、アルミナ以外の窒化アルミニウム等の材料を積層する場合でも、積層時に接着不良が発生しない、セラミック多層積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明が提供するセラミック多層積層体の製造方法は、次の構成を有する。
(1)セラミックグリーンシートを積層した後に焼成するセラミック多層積層体の製造方法であって、セラミックグリーンシートの表面に、BET比表面積がセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末の比表面積より小さい無機物粉末と接着性樹脂とを含有する表面層を形成した後、該セラミックグリーンシートを積層し、焼成することを特徴とするセラミック多層積層体の製造方法。
【0007】
(2)前記表面層の無機物粉末としてBET比表面積が3.0m2/g以下の粉末を使用することを特徴とする上記(1)に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
【0008】
(3)前記表面層の無機物粉末としてセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末と実質的に同一の無機物粉末を使用することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
【0009】
(4)前記セラミックグリーンシートを形成している無機物粉末が窒化アルミニウム粉末であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。本発明に用いるセラミックグリーンシート(以下グリーンシート)は、例えば窒化アルミニウムからなっており、この場合は窒化アルミニウムを主成分に、焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ土類金属等の化合物を0.1〜10wt%程度添加したものからなる。成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合後、ドクターブレード法にて作製される。その後、グリーンシートは金型等を用いて、必要な大きさに打ち抜かれる。
【0011】
次に、このグリーンシートに無機物粉末と接着性樹脂からなる表面層を形成する。この表面層は後述する積層時に、積層するグリーンシート間に挟まれるように位置し、グリーンシート間を接着する接着剤の働きをする。この表面層に接着性樹脂だけではなく、無機物粉末が混合されているのは、次の理由による。すなわち、表面層が接着性樹脂だけで形成されていた場合、積層時の加熱、加圧によって、表面層厚は薄くはなるものの、グリーンシート問に一層分、接着性樹脂層が存在することになる。この接着性樹脂層はグリーンシートの脱脂時に焼失し、グリーンシートの層間物質がなくなるために、焼成後にはグリーンシートの層間が剥離することになる。表面層の厚さが極薄くなるように制御した場合は、このような剥離は生じないが、厚みの制御が非常に困難である。一方、表面層に無機物粉末が混合されていた場合は、このような問題が生じないため、層間の剥離は生じない。
【0012】
アルミナ等のグリーンシートを用いた場合、このように無機物粉末と接着性樹脂を混合した表面層を形成することによって、良好な積層体を得ることができる。しかしながら、実験を進めた結果、例えば、窒化アルミニウムのグリーンシートを用いた場合、必ずしも良好な結果が得られないことが判った。この原因を調査した結果、グリーンシートの微構造が大きな影響を与えていることが判った。すなわち、低真空走査電子顕微鏡を用いて、良好な積層体を得ることができたアルミナと得られなかった窒化アルミニウムのグリーンシート表面を観察した結果、アルミナグリーンシートの場合は、1.5〜2μmのアルミナ粒が比較的間隔が空いた状態で配置しているのに対して、窒化アルミニウムグリーンシートの場合、1μm前後の窒化アルミニウム粒が緻密に配置していることが判った。
【0013】
ところで、積層時にグリーンシート同士が接着されるメカニズムは2つ考えられる。1つはグリーンシート中の樹脂結合剤や、形成した表面層の接着性樹脂が、積層時の加熱により軟化し、接着力が発現することにより接着されるメカニズムである。もう1つが、グリーンシートのセラミック粒子が、積層される他方のグリーンシートヘ食い込むことにより接着されるアンカー効果のメカニズムである。脱脂時には樹脂成分が焼失するため、積層後だけでなく、脱脂後も良好な接着を維持するために重要となるのがアンカー効果である。窒化アルミニウムは、グリーンシート表面が前述のように緻密であるため、窒化アルミニウム粒子が他方のグリーンシートヘ食い込むアンカー効果が期待できないため、無機物粉末と接着性樹脂とを混合した表面層を形成しても、良好な積層体が得られなかったことが判った。
【0014】
このように、窒化アルミニウムのような緻密なグリーンシートでも充分なアンカー効果を得るためには、アルミナのような粗い粒子によりグリーンシートを成形すればよい。しかしながら、粗い粒子は焼結性に劣るため、良好な焼結体を得ることができなかった。そこで、積層時に充分なアンカー効果が得られ、かつ焼結性も確保できる方法を種々検討した結果、形成する無機物粉末と接着性樹脂を混合した表面層の無機物粉末の粒子のみに粗い粒子を用いればよいことが判った。このようにすれば、表面層の粗い粒子が他方のグリーンシートヘ食い込んでアンカー効果を得ることができ、焼結時もグリーンシートの細かい粒子が焼結を促進するので、良好な焼結体を得ることができる。
【0015】
表面層を形成する無機物粒子は、グリーンシートを形成する無機物粒子より粒径が粗ければよい。例えば、窒化アルミニウムの場合、グリーンシートに用いる窒化アルミニウム粒子は、焼結性等を考慮して平均粒径が0.8μm等、1.0μm以下の粒子を使用するのが一般的である。これに対して、表面層に用いる窒化アルミニウム粒子は1.5μm等、1.0μmより平均粒径が大きい必要がある。
【0016】
また、さらに調査を進めた結果、良好な積層性を確保するためには、平均粒径に着目するよりも、BET比表面積に着目する方が、良い相関関係が得られることが判った。これは、BET比表面積は粒形も考慮された値となるが、粒形とアンカー効果とも密接な関係があることを示唆している。すなわち、表面層を形成する無機物粒子のBET比表面積は、少なくともグリーンシートを形成する無機物粒子のBET比表面積より小さくなければならない。例えば、窒化アルミニウムの場合、グリーンシートに用いる窒化アルミニウム粒子のBET比表面積は3.3m2/g等が一般的である。これに対して、表面層に用いる窒化アルミニウム粒子のBET比表面積は2.8m2/g等、3.3m2/g以下のものを用いる必要がある。
【0017】
さらに、表面層に用いる無機物粉末のBET比表面積は3.0m2/g以下であることが好ましい。表面層に3.0m2/gより大きな無機物粉末を用いても、前述のようにグリーンシートを形成する無機物粒子のBET比表面積より小さな無機物粉末であれば、良好な積層焼結体を得ることはできる。しかしながら、積層時に、圧力を極端に高くしたり、温度も高くしなければ、積層界面に部分的な剥離等が生じる場合がある。一方、表面層にBET比表面積が3.0m2/g以下の無機物粉末を用いると、後述するょうな通常の積層条件でも良好な積層焼結体を得ることができる。
【0018】
表面層に用いる無機物粉末は、基本的にはグリーンシートを形成する無機物と実質的に同じ成分であればよい。例えば、窒化アルミニウムのグリーンシートを用いた場合、表面層も窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末を、グリーンシートと同じ割合で混合したものを用いればよい。ただし、グリーンシート上に形成する表面層は薄いため、窒化アルミニウムと焼結助剤の割合が少々グリーンシートと異なっていても、場合によっては、焼結助剤を含まない窒化アルミニウムだけで構成されていても、焼結中にグリーンシートから焼結助剤が移行してくるために、問題なく使用できる。また、意図的にグリーンシートを構成する無機物と表面層の無機物粉末とを、異なる成分とすることで、異材料の積層構造を得ることも可能である。
【0019】
上記において述べてきた表面層は、無機物粉末と接着性樹脂と溶剤を混合してペースト状に加工した後、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗り、リバースコーターなど周知の方法を適用することによって形成することができる。また、接着性樹脂としては、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂等を好適に用いることができる。一般的にペーストの樹脂結合剤として用いられるエチルセルロースやメチルセルロースは接着力が弱いため、用いない方が好ましい。また、溶剤としては、ブチルカルビトール、テルピネオール等の一般的なペーストに用いられる溶剤を用いることができる。
【0020】
また、表面層の接着性樹脂のガラス転移温度に基づく軟化温度を、グリーンシートの軟化温度より低くすることにより、グリーンシートの変形を最小限に押さえた積層が可能となる。すなわち、積層時の温度を表面層の軟化温度より高く、かつグリーンシートの軟化温度より低くすればよい。
【0021】
表面層を形成するためのペーストにおいて、接着性樹脂の含有量は、ペースト中の無機物粉末を100重量部としたときに、10重量部以上、30重量部以下であることが望ましい。接着性樹脂の含有量が10重量部より少なければ、接着性が充分でなく、積層界面に剥離等が生じやすくなる。一方、30重量部より多ければ、接着性が向上しすぎ、以後の工程で不具合が生じる。例えば、スルーホールを形成するためにパンチャーを使用したり、ビアを形成するためにスクリーン印刷したりするが、それぞれの工程の治具等にグリーンシートの一部が付着し、グリーンシートの浮きが生じたり、機械からグリーンシートが脱落する等の問題が生じる。ただし、工程を工夫し、表面層の形成を積層直前に変更すれば、これらの問題は無くなる。しかし、ビア部分へ表面層を形成しないようにする等、表面層形成の際にパターンニングが必要になる。さらに、接着性樹脂の含有量が80重量部より多くなると、ペースト中の無機物粉末の含有量が減少するため、前述の接着性樹脂単体を塗布したときと同様な現象が生じ、脱脂後に積層界面に剥離が生じる。
【0022】
ここで述べた接着性樹脂の含有量は、ペースト単独での理想的な結果である。しかし、実際に使用する時には、表面層がグリーンシートの樹脂結合剤量の影響も受けることが判った。そこで、これらの関係を検討した結果、グリーンシート中の無機成分を100重量部としたときの、グリーンシートの樹脂結合剤量と、表面層を形成するペースト中の接着性樹脂量の和が20重量部以上、40重量部以下であることが望ましいことが判った。なお、ペースト中の接着性樹脂量が、この範囲に無いときに生じる現象は上述したことと同じである。すなわち、その和が20重量部より少なければ、接着性が充分でなく、積層界面に剥離等が生じやすくなる。一方、40重量部より多ければ、接着性が向上しすぎ、以後の工程で不具合が生じる。
【0023】
また、スクリーン印刷等でグリーンシート上に形成される表面層厚は、印刷後、脱脂・焼成前で5μm以上、30μm以下の範囲であることが望ましい。表面層厚が5μmより小さい場合は、接着性が充分でなく、積層界面に剥離等が生じやすくなる。一方、表面層厚が30μmより大きい場合は、焼結後に反りやうねりが生じやすくなる。これは、グリーンシート中の無機物が占める密度より、スクリーン印刷等で形成した表面層の無機物粉末密度の方が小さいことに起因する。このような密度の異なる層は、焼成時の収縮率が異なるために、反りやうねりが生じやすいのである。
【0024】
また、表面層厚は、好ましくは10μm以上であることが望ましい。通常、積層される他方のグリーンシート表面には、後述するようにスクリーン印刷等により導体層が形成されていることが多い。この導体層厚は5〜10μm程度あり、グリーンシート表面は、この導体層により凹凸が生じている。積層時はこの凹凸を吸収しなければ、積層界面に空隙部が生じることになる。凹凸の吸収は、表面層とグリーンシートの両方で行われるが、無機物粉末密度の低い表面層の方が、容易に変形するため、表面層で凹凸を吸収させた方が、確実に積層界面の空隙部の発生を無くすことができる。そのためには、表面層厚は少なくとも10μmであることが必要となる。
【0025】
また、表面層を形成するときのペーストの粘度は50P以上、3000P以下であることが好ましい。粘度の値は測定機器により若干の差が認められるが、この範囲に収まればよく、ここではブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した粘度値を記している。ペーストの粘度が50Pより小さいと、印刷後の表面層厚を厚くすることが困難である。印刷、乾燥を数回に亘って繰り返すことにより、表面層厚を厚くすることは可能であるが、工程が煩雑になるため好ましくない。一方、ペーストの粘度が3000Pより高くなると、印刷自体が困難になる。表面層を形成するペーストには、前述のように接着性樹脂が用いられている。接着性樹脂は通常ペーストに用いられている樹脂結合剤に比べて、接着力が高い一方で、接着力が高い裏返しで印刷後スクリーンに貼り付いたり、印刷時に樹脂の伸びが激しく糸を引いたりする。この現象は粘度が高くなるほど激しくなり、2000Pより粘度が高くなると、ついには印刷ができなくなるのである。
【0026】
また、ペースト粘度は、より好ましくは1500P以下であることが好ましい。ペーストの粘度が1500Pより高くなると、表面層の極表面に分布するペースト中の接着性樹脂が多くなり、以後の工程で不具合が生じる。例えば、スルーホールを形成するためにパンチャーを使用したり、ビアを形成するためにスクリーン印刷したりするが、それぞれの工程の治具等にグリーシシートの一部が付着し、グリーンシートの浮きが生じたり、機械からグリーンシートが脱落する等の問題が生じる。
【0027】
このように、表面層を形成したグリーンシートは必要に応じて、パンチ等を用いてビアホールを形成する。このビアホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用すればよい。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用すればよい。
【0028】
前述のスルーホールに充填するペーストは、導体粉末、樹脂結合剤、溶剤からなる。例えば窒化アルミニウムのグリーンシートを用いた場合、導体粉末としては、W、Mo、Ta等から選ばれた1種類以上の金属を用いることができる。導体粉末は窒化アルミニウムと同時に焼結しなければならないため、このような高融点金属を使用する必要がある。また、このビアペーストは、表面層を形成するペーストとは異なり、導体粉末をエチルセルロース、ニトロセルロース等の樹脂結合剤を用いるのが一般的である。これらをブチルカルビトール、テルピネオール等の溶剤に、ポットミル、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて分散させることによってビアペーストは作製される。通常樹脂結合剤は、W粉末を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。
【0029】
このようなペーストをグリーンシートのスルーホールに充填した後、必要に応じて回路印刷を行う。回路印刷もビア形成と同様にスクリーン印刷等の方法を用いることができる。ペースト組成はビア形成に用いたペーストと同一組成のものを用いることができるが、ペースト粘度はビアペーストより低くするのが一般的である。この時の回路印刷したパターンの膜厚は、前述のように5〜10μm程度である。また、回路印刷するグリーンシート面であるが、前述した積層時の接着用の表面層を形成した面と逆の面に行う。
【0030】
このように回路印刷した後、グリーンシートを積層する。積層はシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50〜80℃程度に熱しながら、1〜10MPaの圧力を10〜20分かけることにより、熱圧着する。なお、積層時の加熱温度はグリーンシートの軟化温度より低く、表面層の軟化温度より高く設定することにより、グリーンシートの変形を最小限に押さえることができる。また、圧力については、表面層に使用する無機物粉末のBET比表面積によっては、100MPa以上の圧力が必要になる場合もある。ただし、グリーンシートの変形を最小限に押さえ、焼結時の反り、ゆがみを防止するという観点では、できるだけ積層時の圧力は低い方が好ましい。
【0031】
また、これまで述べてきた方法では、積層時の接着用表面層をまず形成してからスルーホールの形成等を行ったが、必要に応じて、積層の直前に表面層の形成を行ってもよい。表面層を形成するグリーンシートの面は、回路印刷した面でも良いし、逆面でも良い。表面層を回路印刷と逆面に形成した場合において、積層時に他方のグリーンシートの回路印刷に伴った凹凸の吸収メカニズムは、前述した表面層をまず形成する方法と同じである。しかし表面層を回路印刷面に形成した場合は、印刷後の乾燥中に生じるレベリング時に主に凹凸を吸収することになる。そのため、表面層の厚みは少なくとも回路印刷部の厚みより厚くする必要がある。また、これらの両方の場合において、上下層の導通を確保するためにビア周辺には印刷しないようなパターニングを行う必要がある。さらには、積層するグリーンシートの形状か異なる場合も、それに応じたパターニングを行う必要がある。このパターニングは例えばスクリーン印刷の場合は、所望のパターニングを形成したスクリーンを用いることになる。また、表面層の形成時に、位置ずれ等が生じる可能性があるので、ビアやグリーンシート形状に対して、クリアランスを持ったパターニングを行う必要がある。
【0032】
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、グリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの接着剤や樹脂結合剤を除去するために、例えば300〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。脱脂処理の雰囲気はグリーンシートや表面層に用いている無機物粉末の種類によって決定される。例えば、窒化アルミニウムの場合は非酸化性雰囲気中で脱脂処理するのが好ましい。焼結条件もグリーンシートや表面層に用いている無機物粉末の種類によって決定される。例えば、窒化アルミニウムの場合は、非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウムの熱膨張率、熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1700〜2000℃であり、焼結時間は1〜5時間程度に設定される。
【0033】
また、このように作製されたセラミック基板表面の配線を形成する金属化層や接続端子が取り付けられる金属化層の表面には、耐食性を向上させたり、ろう材や半田の濡れ性を向上させて接合強度を高めるために、NiやAu等の導電性金属を電気めっき、無電解めっき等の手段により被覆してもよい。さらに、基板表面の金属化層にリード、ピン、半田ボール等の接続端子をろう材や半田で接続してもよい。このようにして、セラミック多層積層体を用いた、半導体やIC用の基板やパッケージを得ることができる。
【0034】
前記の如く、本発明のセラミック多層積層体の製造方法によれば、窒化アルミニウム等の新しい材料からなるグリーンシートを用いても、積層時や脱脂・焼結時に積層界面での剥離等の接着不良が発生しない、さらには反りやうねりの少ないセラミック多層積層体を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
初めに、BET比表面積が3.3m2/gの窒化アルミニウム粉末を97重量%とY2O3粉末を3重量%混合した無機物成分100重量部に対して、約100℃で軟化するポリビニルブチラールを樹脂結合剤とし、ジブチルフタレートを可塑剤として、それぞれ10重量部、5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。
【0036】
次に、様々なBET比表面積を持つ窒化アルミニウム粉末97重量%とY2O3粉末を3重量%混合した無機物成分100重量部に対して、接着性樹脂として約50℃で軟化するポリビニルブチラールを12重量部と、溶剤としてブチルカルビトールを混合して粘度800Pのペーストを作製した。使用した窒化アルミニウム粉末のBET比表面積は後掲の表1に示す通りであり、実施例1では5種類のペーストを作製した。粘度測定はブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。
【0037】
このペーストをスクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に印刷した。印刷時の膜厚は20μmであった。次に、このグリーンシートを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜き、パンチャーにて直径0.3mmのスルーホールを形成した。このスルーホールにWペーストをスクリーン印刷機にて充填した。WペーストはW粉末を100重量部として、5重量部の樹脂結合剤であるエチルセルロースと、5重量部の溶媒であるブチルカルビトールに分散させて作製した。さらに、同じペーストに5重量部のブチルカルビトールを混合し、粘度を低下させ、スクリーン印刷機にて325メッシュ、乳剤厚20μmのスクリーンを用いて回路印刷を行った。回路印刷後の回路部の膜厚は10μmであった。
【0038】
次に、印刷後のシートを5枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで行った。次に、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行い、得られた焼結体を試料1〜5とした。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。また焼結後の反りは30μmであった。
【0039】
次に、焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断した後、研磨した。その切断・研磨面を500倍の電子顕微鏡にて、積層界面に異常があるかどうかを観察した。結果を下記の表1に示す。
【0040】
表1から明らかなように、BET比表面積が3.0m2/gより大きな窒化アルミニウム粉末を用いたペーストで表面層を形成した後に積層したセラミック多層積層体では、積層界面に部分的な剥がれが認められた。この剥がれがビア周辺に生じている場合もあり、この場合、上下層の導通抵抗が高くなったり、導通が失われたりしていた。一方、BET比表面積が3.0m2/g以下の窒化アルミニウム粉末を用いたペーストで表面積を形成した後に、積層したセラミック多層積層体では、積層界面に異常は全く認められなかった。
【0041】
また、積層界面の剥がれが認められた試料4及び試料5の作製に用いたペーストを使用して、積層圧力を100MPaに大きくして積層を行った。その他の条件は試料1〜5の作製において用いたのと同様にして焼結体を得た。得られた
焼結体を試料6、7とした。焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、積層界面を観察した結果を併せて表1に示す。
【0042】
表1から分かるように、グリーンシート中の窒化アルミニウム粉末のBET比表面積である3.3m2/gより、小さなBET比表面積の窒化アルミニウム粉末を用いたペーストで表面層を形成した後に積層したセラミック多層積層体である試料6には、積層界面に異常は全く認められなかった。一方、グリーンシート中の窒化アルミニウム粉末のBET比表面積と、同じBET比表面積の窒化アルミニウム粉末を用いた試料7では積層界面に部分的な剥がれが認められた。また、焼結後のセラミック多層積層体、試料6、7の反りは、試料4、5と比べると大きくなっており、50μmであった。
積層圧力を増加させたために、積層時のグリーンシートの変形が大きく、反りが増加したものと考えられた。
【0043】
【表1】
【0044】
【実施例2】
本実施例においては、本発明を実施する際のグリーンシート中の樹脂結合剤量及びペースト中の接着性樹脂量の好ましい値を求めるための試験を行った。
実施例1の試料1の作製に用いたグリーンシート中の、約100℃で軟化する樹脂結合剤であるポリビニルブチラール、可塑剤であるジブチルフタレートの混合量を様々な重量部に変更して作製した。
【0045】
また、同じく実施例1の試料1の作製に用いた接着性樹脂を含むペーストにおいて、約50℃で軟化する接着性樹脂であるポリビニルブチラールの混合量を様々な重量部に変更してペーストを作製した。このペーストを実施例1と同様に、スクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に20μmの厚みで印刷した。次に金型で打ち抜き、パンチャーにてスルーホールを形成し、スクリーン印刷機にてWペーストを充填した後に、10μm厚で回路印刷を行った。次に、モールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。
【0046】
次に、焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、積層界面を観察した結果を後掲の表2に示す。また、表3には、上述の工程中に問題があったかどうかも示した。グリーンシートの無機成分を100重量部としたときの樹脂結合剤量(重量部)と、ペースト中の無機成分を100重量部としたときの接着性樹脂量(重量部)の和が20重量部以上あれば、積層界面には部分的な剥がれ等の不具合点は認められないことが判った。一方、和が40重量部より多くなると工程中に問題が発生することが判った。工程の問題点とは、例えば、スルーホールを形成するときに、グリーンシートとパンチャーの滑りが悪く、グリーンシートを保持するテーブルからグリーンシートが飛び出したり、スクリーン印刷後にグリーンシートがスクリーンに付着したり等の現象である。和が40重量部より多くなると、これらの問題点が50%以上の確率で発生することが判った。
なお、可塑剤であるジブチルフタレートの添加量であるが、樹脂結合剤量によって最適なグリーンシート硬度となるように調整した。一般的に可塑剤の添加量が少なすぎると、グリーンシートが固くなりすぎて印刷、切断等が困難になる。また、可塑剤量が多すぎるとシートが柔らかくなりすぎてハンドリングが困難になる。また、可塑剤の量はグリーンシートの積層性には影響を与えなかった。
【0047】
【表2】
【0048】
【実施例3】
本実施例においては、本発明を実施する際のペーストの印刷厚の好ましい値を求めるための試験を行った。
実施例1の試料1において、接着性樹脂を含むペーストをスクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に印刷する際に、印刷膜厚を変更した。次に金型で打ち抜き、パンチャーにてスルーホールを形成し、スクリーン印刷機にてWペーストを充填した後に、10μm厚で回路印刷を行った。次に、モールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。
【0049】
焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、積層界面を観察した結果を表3に示す。焼結後のセラミック多層積層体反りも表4に示す。接着性樹脂を含むペーストで形成した表面層の焼結前の厚みが5μmより小さい試料20は積層界面の不特定の部分に大量に剥がれが認められた。一方、10μmより小さく5μmより大きい、試料21では回路印刷部の両脇周辺の部分に小さな剥がれが認められた。回路印刷部によるグリーンシートの凹凸を表面層で充分吸収されていないようであった。一方、表面層厚が10μmより大きい試料は全て積層界面に異常は認められなかった。ただし、表面層厚が30μmより大きい試料24では、焼結体の反りが100μmと急激に増加しており、基板材料やパッケージとして用いるには不適当である。
【0050】
【表3】
【0051】
【実施例4】
本実施例においては、本発明を実施する際のペースト粘度の好ましい値を求めるための試験を行った。
実施例1の試料1において、接着性樹脂を含むペーストをスクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に印刷する際に、ペーストの粘度を変更した。なお、粘度測定はブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。次に金型で打ち抜き、パンチャーにてスルーホールを形成し、スクリーン印刷機にてWペーストを充填した後に、10μm厚で回路印刷を行った。次に、モールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。
【0052】
表4には、上述の工程中に問題があったかどうかを示した。ペースト粘度が1500Pより大きくなると、例えば、スルーホールを形成するときに、グリーンシートとパンチャーの滑りが悪く、グリーンシートを保持するテーブルからグリーンシートが飛び出したり、スクリーン印刷後にグリーンシートがスクリーンに付着する等の問題点が30%以上の確率で発生することが判った。一方ペースト粘度が3000Pを超える試料30では、印刷中にスクリーンヘペーストが日詰まりし、さらには、印刷後グリーンシートがスクリーンヘ貼り付き、印刷を行うことができなかった。また、粘度が50Pより小さい試料25では、印刷はできるものの、印刷膜厚を20μmにするには、5回も印刷、乾燥の工程を繰り返す必要があった。
【0053】
【表4】
【0054】
【実施例5】
本実施例においては、本発明を実施する際の接着性樹脂を含むペーストの塗布工程と回路印刷工程との順序を入れ替えたときに焼結品にどのような影響があるかを試験した。
実施例1の試料1の作製工程において、接着性樹脂を含むペーストを塗布する行程と回路印刷工程との順序を入れ替えた。すなわち、実施例1の試料1と同じグリーンシートを、まず実施例1と同じ金型にて打ち抜き、パンチャーにて直径0.3mmのスルーホールを形成した。スルーホールに実施例1と同じWペーストを用いて、Wペーストを充填した後に、10μm厚となるように回路印刷を行った。
【0055】
次に、実施例1の試料1と同じ接着性樹脂を含むペーストをスクリーン印刷機にて塗布した。塗布したグリーンシートの面は、回路印刷したのと同じ面とした。印刷、乾燥後の膜厚は15μmであった。また、印刷の際には、上下層を導通するビア部にはペーストが塗布されないようなパターニングをしたスクリーンを用いた。
【0056】
次に、モールドにこのシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熟しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。また焼結後の反りは30μmであった。
【0057】
次に、焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、顔層界面を観察した。その結果、積層界面に剥がれ等の異常は全く認められなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミナ以外の窒化アルミニウム等の新しい材料を積層する場合でも、積層時に接着不良が発生しない、セラミック多層積層体を得ることができる。このため、このセラミック多層積層体をIC用の基板、パッケージとして好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はセラミックグリーンシートを複数枚積層し焼成してなるセラミック多層積層体の製造方法に関するものであり、このセラミック多層積層体は、例えば半導体やIC用の基板、パッケージとして使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体やIC用の基板やパッケージに使用されるセラミック多層積層体は、通常、ドクターブレード法等で形成した、アルミナ等からなるセラミックグリーンシートを使用して作製される。次にセラミックグリーンシートを金型にて所定寸法へ打ち抜き、またスルーホールを形成する。さらに、このスルーホールおよびセラミックグリーンシートの主表面にW、Mo等の高融点金属からなるペーストを用いて、所望のパターンを形成した後に、複数枚のセラミックグリーンシートをモールド等にセットし、例えば50℃前後、10MPa等の条件で熱圧着することで積層を行う。このように積層された後に焼成されてセラミック多層積層体となる。
【0003】
積層の際には、各層の接着を確実なものとするために接着剤が用いられる。接着剤としては、溶剤を用いるもの、溶剤と接着剤を混合したものを用いるもの等があるが、特公平2−21157号公報や特開平11−268966号公報に開示されているような、セラミックグリーンシートと同じ無機成分と接着性樹脂とからなるスラリーもしくはペーストをグリーンシートに塗布して接着成分として用いる方法が、低圧力でも接着性が優れているため、積層の際の変形が少なく、かつ他の方法のように層間に空隙を発生することが無いため、積層用の接着剤として最も広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
最近はアルミナ以外に、高熱伝導率を有する窒化アルミニウム等の新しい材料を用いたセラミック多層積層体への要求が高まっている。しかしながら、これらの新しい材料の積層時に、前述のアルミナの場合のようにセラミックグリーンシートと同じ無機成分と接着性樹脂とからなるスラリーもしくはペーストを接着剤として用いる積層方法を適用しても、接着性が悪く、層間に空隙が多数認められ、積層時に接着不良が多発するという問題が生ずることが判った。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、無機成分と接着性樹脂からなるスラリーもしくはペーストを接着剤として用いる積層方法において、アルミナ以外の窒化アルミニウム等の材料を積層する場合でも、積層時に接着不良が発生しない、セラミック多層積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明が提供するセラミック多層積層体の製造方法は、次の構成を有する。
(1)セラミックグリーンシートを積層した後に焼成するセラミック多層積層体の製造方法であって、セラミックグリーンシートの表面に、BET比表面積がセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末の比表面積より小さい無機物粉末と接着性樹脂とを含有する表面層を形成した後、該セラミックグリーンシートを積層し、焼成することを特徴とするセラミック多層積層体の製造方法。
【0007】
(2)前記表面層の無機物粉末としてBET比表面積が3.0m2/g以下の粉末を使用することを特徴とする上記(1)に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
【0008】
(3)前記表面層の無機物粉末としてセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末と実質的に同一の無機物粉末を使用することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
【0009】
(4)前記セラミックグリーンシートを形成している無機物粉末が窒化アルミニウム粉末であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。本発明に用いるセラミックグリーンシート(以下グリーンシート)は、例えば窒化アルミニウムからなっており、この場合は窒化アルミニウムを主成分に、焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ土類金属等の化合物を0.1〜10wt%程度添加したものからなる。成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合後、ドクターブレード法にて作製される。その後、グリーンシートは金型等を用いて、必要な大きさに打ち抜かれる。
【0011】
次に、このグリーンシートに無機物粉末と接着性樹脂からなる表面層を形成する。この表面層は後述する積層時に、積層するグリーンシート間に挟まれるように位置し、グリーンシート間を接着する接着剤の働きをする。この表面層に接着性樹脂だけではなく、無機物粉末が混合されているのは、次の理由による。すなわち、表面層が接着性樹脂だけで形成されていた場合、積層時の加熱、加圧によって、表面層厚は薄くはなるものの、グリーンシート問に一層分、接着性樹脂層が存在することになる。この接着性樹脂層はグリーンシートの脱脂時に焼失し、グリーンシートの層間物質がなくなるために、焼成後にはグリーンシートの層間が剥離することになる。表面層の厚さが極薄くなるように制御した場合は、このような剥離は生じないが、厚みの制御が非常に困難である。一方、表面層に無機物粉末が混合されていた場合は、このような問題が生じないため、層間の剥離は生じない。
【0012】
アルミナ等のグリーンシートを用いた場合、このように無機物粉末と接着性樹脂を混合した表面層を形成することによって、良好な積層体を得ることができる。しかしながら、実験を進めた結果、例えば、窒化アルミニウムのグリーンシートを用いた場合、必ずしも良好な結果が得られないことが判った。この原因を調査した結果、グリーンシートの微構造が大きな影響を与えていることが判った。すなわち、低真空走査電子顕微鏡を用いて、良好な積層体を得ることができたアルミナと得られなかった窒化アルミニウムのグリーンシート表面を観察した結果、アルミナグリーンシートの場合は、1.5〜2μmのアルミナ粒が比較的間隔が空いた状態で配置しているのに対して、窒化アルミニウムグリーンシートの場合、1μm前後の窒化アルミニウム粒が緻密に配置していることが判った。
【0013】
ところで、積層時にグリーンシート同士が接着されるメカニズムは2つ考えられる。1つはグリーンシート中の樹脂結合剤や、形成した表面層の接着性樹脂が、積層時の加熱により軟化し、接着力が発現することにより接着されるメカニズムである。もう1つが、グリーンシートのセラミック粒子が、積層される他方のグリーンシートヘ食い込むことにより接着されるアンカー効果のメカニズムである。脱脂時には樹脂成分が焼失するため、積層後だけでなく、脱脂後も良好な接着を維持するために重要となるのがアンカー効果である。窒化アルミニウムは、グリーンシート表面が前述のように緻密であるため、窒化アルミニウム粒子が他方のグリーンシートヘ食い込むアンカー効果が期待できないため、無機物粉末と接着性樹脂とを混合した表面層を形成しても、良好な積層体が得られなかったことが判った。
【0014】
このように、窒化アルミニウムのような緻密なグリーンシートでも充分なアンカー効果を得るためには、アルミナのような粗い粒子によりグリーンシートを成形すればよい。しかしながら、粗い粒子は焼結性に劣るため、良好な焼結体を得ることができなかった。そこで、積層時に充分なアンカー効果が得られ、かつ焼結性も確保できる方法を種々検討した結果、形成する無機物粉末と接着性樹脂を混合した表面層の無機物粉末の粒子のみに粗い粒子を用いればよいことが判った。このようにすれば、表面層の粗い粒子が他方のグリーンシートヘ食い込んでアンカー効果を得ることができ、焼結時もグリーンシートの細かい粒子が焼結を促進するので、良好な焼結体を得ることができる。
【0015】
表面層を形成する無機物粒子は、グリーンシートを形成する無機物粒子より粒径が粗ければよい。例えば、窒化アルミニウムの場合、グリーンシートに用いる窒化アルミニウム粒子は、焼結性等を考慮して平均粒径が0.8μm等、1.0μm以下の粒子を使用するのが一般的である。これに対して、表面層に用いる窒化アルミニウム粒子は1.5μm等、1.0μmより平均粒径が大きい必要がある。
【0016】
また、さらに調査を進めた結果、良好な積層性を確保するためには、平均粒径に着目するよりも、BET比表面積に着目する方が、良い相関関係が得られることが判った。これは、BET比表面積は粒形も考慮された値となるが、粒形とアンカー効果とも密接な関係があることを示唆している。すなわち、表面層を形成する無機物粒子のBET比表面積は、少なくともグリーンシートを形成する無機物粒子のBET比表面積より小さくなければならない。例えば、窒化アルミニウムの場合、グリーンシートに用いる窒化アルミニウム粒子のBET比表面積は3.3m2/g等が一般的である。これに対して、表面層に用いる窒化アルミニウム粒子のBET比表面積は2.8m2/g等、3.3m2/g以下のものを用いる必要がある。
【0017】
さらに、表面層に用いる無機物粉末のBET比表面積は3.0m2/g以下であることが好ましい。表面層に3.0m2/gより大きな無機物粉末を用いても、前述のようにグリーンシートを形成する無機物粒子のBET比表面積より小さな無機物粉末であれば、良好な積層焼結体を得ることはできる。しかしながら、積層時に、圧力を極端に高くしたり、温度も高くしなければ、積層界面に部分的な剥離等が生じる場合がある。一方、表面層にBET比表面積が3.0m2/g以下の無機物粉末を用いると、後述するょうな通常の積層条件でも良好な積層焼結体を得ることができる。
【0018】
表面層に用いる無機物粉末は、基本的にはグリーンシートを形成する無機物と実質的に同じ成分であればよい。例えば、窒化アルミニウムのグリーンシートを用いた場合、表面層も窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末を、グリーンシートと同じ割合で混合したものを用いればよい。ただし、グリーンシート上に形成する表面層は薄いため、窒化アルミニウムと焼結助剤の割合が少々グリーンシートと異なっていても、場合によっては、焼結助剤を含まない窒化アルミニウムだけで構成されていても、焼結中にグリーンシートから焼結助剤が移行してくるために、問題なく使用できる。また、意図的にグリーンシートを構成する無機物と表面層の無機物粉末とを、異なる成分とすることで、異材料の積層構造を得ることも可能である。
【0019】
上記において述べてきた表面層は、無機物粉末と接着性樹脂と溶剤を混合してペースト状に加工した後、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗り、リバースコーターなど周知の方法を適用することによって形成することができる。また、接着性樹脂としては、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂等を好適に用いることができる。一般的にペーストの樹脂結合剤として用いられるエチルセルロースやメチルセルロースは接着力が弱いため、用いない方が好ましい。また、溶剤としては、ブチルカルビトール、テルピネオール等の一般的なペーストに用いられる溶剤を用いることができる。
【0020】
また、表面層の接着性樹脂のガラス転移温度に基づく軟化温度を、グリーンシートの軟化温度より低くすることにより、グリーンシートの変形を最小限に押さえた積層が可能となる。すなわち、積層時の温度を表面層の軟化温度より高く、かつグリーンシートの軟化温度より低くすればよい。
【0021】
表面層を形成するためのペーストにおいて、接着性樹脂の含有量は、ペースト中の無機物粉末を100重量部としたときに、10重量部以上、30重量部以下であることが望ましい。接着性樹脂の含有量が10重量部より少なければ、接着性が充分でなく、積層界面に剥離等が生じやすくなる。一方、30重量部より多ければ、接着性が向上しすぎ、以後の工程で不具合が生じる。例えば、スルーホールを形成するためにパンチャーを使用したり、ビアを形成するためにスクリーン印刷したりするが、それぞれの工程の治具等にグリーンシートの一部が付着し、グリーンシートの浮きが生じたり、機械からグリーンシートが脱落する等の問題が生じる。ただし、工程を工夫し、表面層の形成を積層直前に変更すれば、これらの問題は無くなる。しかし、ビア部分へ表面層を形成しないようにする等、表面層形成の際にパターンニングが必要になる。さらに、接着性樹脂の含有量が80重量部より多くなると、ペースト中の無機物粉末の含有量が減少するため、前述の接着性樹脂単体を塗布したときと同様な現象が生じ、脱脂後に積層界面に剥離が生じる。
【0022】
ここで述べた接着性樹脂の含有量は、ペースト単独での理想的な結果である。しかし、実際に使用する時には、表面層がグリーンシートの樹脂結合剤量の影響も受けることが判った。そこで、これらの関係を検討した結果、グリーンシート中の無機成分を100重量部としたときの、グリーンシートの樹脂結合剤量と、表面層を形成するペースト中の接着性樹脂量の和が20重量部以上、40重量部以下であることが望ましいことが判った。なお、ペースト中の接着性樹脂量が、この範囲に無いときに生じる現象は上述したことと同じである。すなわち、その和が20重量部より少なければ、接着性が充分でなく、積層界面に剥離等が生じやすくなる。一方、40重量部より多ければ、接着性が向上しすぎ、以後の工程で不具合が生じる。
【0023】
また、スクリーン印刷等でグリーンシート上に形成される表面層厚は、印刷後、脱脂・焼成前で5μm以上、30μm以下の範囲であることが望ましい。表面層厚が5μmより小さい場合は、接着性が充分でなく、積層界面に剥離等が生じやすくなる。一方、表面層厚が30μmより大きい場合は、焼結後に反りやうねりが生じやすくなる。これは、グリーンシート中の無機物が占める密度より、スクリーン印刷等で形成した表面層の無機物粉末密度の方が小さいことに起因する。このような密度の異なる層は、焼成時の収縮率が異なるために、反りやうねりが生じやすいのである。
【0024】
また、表面層厚は、好ましくは10μm以上であることが望ましい。通常、積層される他方のグリーンシート表面には、後述するようにスクリーン印刷等により導体層が形成されていることが多い。この導体層厚は5〜10μm程度あり、グリーンシート表面は、この導体層により凹凸が生じている。積層時はこの凹凸を吸収しなければ、積層界面に空隙部が生じることになる。凹凸の吸収は、表面層とグリーンシートの両方で行われるが、無機物粉末密度の低い表面層の方が、容易に変形するため、表面層で凹凸を吸収させた方が、確実に積層界面の空隙部の発生を無くすことができる。そのためには、表面層厚は少なくとも10μmであることが必要となる。
【0025】
また、表面層を形成するときのペーストの粘度は50P以上、3000P以下であることが好ましい。粘度の値は測定機器により若干の差が認められるが、この範囲に収まればよく、ここではブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した粘度値を記している。ペーストの粘度が50Pより小さいと、印刷後の表面層厚を厚くすることが困難である。印刷、乾燥を数回に亘って繰り返すことにより、表面層厚を厚くすることは可能であるが、工程が煩雑になるため好ましくない。一方、ペーストの粘度が3000Pより高くなると、印刷自体が困難になる。表面層を形成するペーストには、前述のように接着性樹脂が用いられている。接着性樹脂は通常ペーストに用いられている樹脂結合剤に比べて、接着力が高い一方で、接着力が高い裏返しで印刷後スクリーンに貼り付いたり、印刷時に樹脂の伸びが激しく糸を引いたりする。この現象は粘度が高くなるほど激しくなり、2000Pより粘度が高くなると、ついには印刷ができなくなるのである。
【0026】
また、ペースト粘度は、より好ましくは1500P以下であることが好ましい。ペーストの粘度が1500Pより高くなると、表面層の極表面に分布するペースト中の接着性樹脂が多くなり、以後の工程で不具合が生じる。例えば、スルーホールを形成するためにパンチャーを使用したり、ビアを形成するためにスクリーン印刷したりするが、それぞれの工程の治具等にグリーシシートの一部が付着し、グリーンシートの浮きが生じたり、機械からグリーンシートが脱落する等の問題が生じる。
【0027】
このように、表面層を形成したグリーンシートは必要に応じて、パンチ等を用いてビアホールを形成する。このビアホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用すればよい。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用すればよい。
【0028】
前述のスルーホールに充填するペーストは、導体粉末、樹脂結合剤、溶剤からなる。例えば窒化アルミニウムのグリーンシートを用いた場合、導体粉末としては、W、Mo、Ta等から選ばれた1種類以上の金属を用いることができる。導体粉末は窒化アルミニウムと同時に焼結しなければならないため、このような高融点金属を使用する必要がある。また、このビアペーストは、表面層を形成するペーストとは異なり、導体粉末をエチルセルロース、ニトロセルロース等の樹脂結合剤を用いるのが一般的である。これらをブチルカルビトール、テルピネオール等の溶剤に、ポットミル、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて分散させることによってビアペーストは作製される。通常樹脂結合剤は、W粉末を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。
【0029】
このようなペーストをグリーンシートのスルーホールに充填した後、必要に応じて回路印刷を行う。回路印刷もビア形成と同様にスクリーン印刷等の方法を用いることができる。ペースト組成はビア形成に用いたペーストと同一組成のものを用いることができるが、ペースト粘度はビアペーストより低くするのが一般的である。この時の回路印刷したパターンの膜厚は、前述のように5〜10μm程度である。また、回路印刷するグリーンシート面であるが、前述した積層時の接着用の表面層を形成した面と逆の面に行う。
【0030】
このように回路印刷した後、グリーンシートを積層する。積層はシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50〜80℃程度に熱しながら、1〜10MPaの圧力を10〜20分かけることにより、熱圧着する。なお、積層時の加熱温度はグリーンシートの軟化温度より低く、表面層の軟化温度より高く設定することにより、グリーンシートの変形を最小限に押さえることができる。また、圧力については、表面層に使用する無機物粉末のBET比表面積によっては、100MPa以上の圧力が必要になる場合もある。ただし、グリーンシートの変形を最小限に押さえ、焼結時の反り、ゆがみを防止するという観点では、できるだけ積層時の圧力は低い方が好ましい。
【0031】
また、これまで述べてきた方法では、積層時の接着用表面層をまず形成してからスルーホールの形成等を行ったが、必要に応じて、積層の直前に表面層の形成を行ってもよい。表面層を形成するグリーンシートの面は、回路印刷した面でも良いし、逆面でも良い。表面層を回路印刷と逆面に形成した場合において、積層時に他方のグリーンシートの回路印刷に伴った凹凸の吸収メカニズムは、前述した表面層をまず形成する方法と同じである。しかし表面層を回路印刷面に形成した場合は、印刷後の乾燥中に生じるレベリング時に主に凹凸を吸収することになる。そのため、表面層の厚みは少なくとも回路印刷部の厚みより厚くする必要がある。また、これらの両方の場合において、上下層の導通を確保するためにビア周辺には印刷しないようなパターニングを行う必要がある。さらには、積層するグリーンシートの形状か異なる場合も、それに応じたパターニングを行う必要がある。このパターニングは例えばスクリーン印刷の場合は、所望のパターニングを形成したスクリーンを用いることになる。また、表面層の形成時に、位置ずれ等が生じる可能性があるので、ビアやグリーンシート形状に対して、クリアランスを持ったパターニングを行う必要がある。
【0032】
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、グリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの接着剤や樹脂結合剤を除去するために、例えば300〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。脱脂処理の雰囲気はグリーンシートや表面層に用いている無機物粉末の種類によって決定される。例えば、窒化アルミニウムの場合は非酸化性雰囲気中で脱脂処理するのが好ましい。焼結条件もグリーンシートや表面層に用いている無機物粉末の種類によって決定される。例えば、窒化アルミニウムの場合は、非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウムの熱膨張率、熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1700〜2000℃であり、焼結時間は1〜5時間程度に設定される。
【0033】
また、このように作製されたセラミック基板表面の配線を形成する金属化層や接続端子が取り付けられる金属化層の表面には、耐食性を向上させたり、ろう材や半田の濡れ性を向上させて接合強度を高めるために、NiやAu等の導電性金属を電気めっき、無電解めっき等の手段により被覆してもよい。さらに、基板表面の金属化層にリード、ピン、半田ボール等の接続端子をろう材や半田で接続してもよい。このようにして、セラミック多層積層体を用いた、半導体やIC用の基板やパッケージを得ることができる。
【0034】
前記の如く、本発明のセラミック多層積層体の製造方法によれば、窒化アルミニウム等の新しい材料からなるグリーンシートを用いても、積層時や脱脂・焼結時に積層界面での剥離等の接着不良が発生しない、さらには反りやうねりの少ないセラミック多層積層体を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
初めに、BET比表面積が3.3m2/gの窒化アルミニウム粉末を97重量%とY2O3粉末を3重量%混合した無機物成分100重量部に対して、約100℃で軟化するポリビニルブチラールを樹脂結合剤とし、ジブチルフタレートを可塑剤として、それぞれ10重量部、5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。
【0036】
次に、様々なBET比表面積を持つ窒化アルミニウム粉末97重量%とY2O3粉末を3重量%混合した無機物成分100重量部に対して、接着性樹脂として約50℃で軟化するポリビニルブチラールを12重量部と、溶剤としてブチルカルビトールを混合して粘度800Pのペーストを作製した。使用した窒化アルミニウム粉末のBET比表面積は後掲の表1に示す通りであり、実施例1では5種類のペーストを作製した。粘度測定はブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。
【0037】
このペーストをスクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に印刷した。印刷時の膜厚は20μmであった。次に、このグリーンシートを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜き、パンチャーにて直径0.3mmのスルーホールを形成した。このスルーホールにWペーストをスクリーン印刷機にて充填した。WペーストはW粉末を100重量部として、5重量部の樹脂結合剤であるエチルセルロースと、5重量部の溶媒であるブチルカルビトールに分散させて作製した。さらに、同じペーストに5重量部のブチルカルビトールを混合し、粘度を低下させ、スクリーン印刷機にて325メッシュ、乳剤厚20μmのスクリーンを用いて回路印刷を行った。回路印刷後の回路部の膜厚は10μmであった。
【0038】
次に、印刷後のシートを5枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで行った。次に、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行い、得られた焼結体を試料1〜5とした。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。また焼結後の反りは30μmであった。
【0039】
次に、焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断した後、研磨した。その切断・研磨面を500倍の電子顕微鏡にて、積層界面に異常があるかどうかを観察した。結果を下記の表1に示す。
【0040】
表1から明らかなように、BET比表面積が3.0m2/gより大きな窒化アルミニウム粉末を用いたペーストで表面層を形成した後に積層したセラミック多層積層体では、積層界面に部分的な剥がれが認められた。この剥がれがビア周辺に生じている場合もあり、この場合、上下層の導通抵抗が高くなったり、導通が失われたりしていた。一方、BET比表面積が3.0m2/g以下の窒化アルミニウム粉末を用いたペーストで表面積を形成した後に、積層したセラミック多層積層体では、積層界面に異常は全く認められなかった。
【0041】
また、積層界面の剥がれが認められた試料4及び試料5の作製に用いたペーストを使用して、積層圧力を100MPaに大きくして積層を行った。その他の条件は試料1〜5の作製において用いたのと同様にして焼結体を得た。得られた
焼結体を試料6、7とした。焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、積層界面を観察した結果を併せて表1に示す。
【0042】
表1から分かるように、グリーンシート中の窒化アルミニウム粉末のBET比表面積である3.3m2/gより、小さなBET比表面積の窒化アルミニウム粉末を用いたペーストで表面層を形成した後に積層したセラミック多層積層体である試料6には、積層界面に異常は全く認められなかった。一方、グリーンシート中の窒化アルミニウム粉末のBET比表面積と、同じBET比表面積の窒化アルミニウム粉末を用いた試料7では積層界面に部分的な剥がれが認められた。また、焼結後のセラミック多層積層体、試料6、7の反りは、試料4、5と比べると大きくなっており、50μmであった。
積層圧力を増加させたために、積層時のグリーンシートの変形が大きく、反りが増加したものと考えられた。
【0043】
【表1】
【0044】
【実施例2】
本実施例においては、本発明を実施する際のグリーンシート中の樹脂結合剤量及びペースト中の接着性樹脂量の好ましい値を求めるための試験を行った。
実施例1の試料1の作製に用いたグリーンシート中の、約100℃で軟化する樹脂結合剤であるポリビニルブチラール、可塑剤であるジブチルフタレートの混合量を様々な重量部に変更して作製した。
【0045】
また、同じく実施例1の試料1の作製に用いた接着性樹脂を含むペーストにおいて、約50℃で軟化する接着性樹脂であるポリビニルブチラールの混合量を様々な重量部に変更してペーストを作製した。このペーストを実施例1と同様に、スクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に20μmの厚みで印刷した。次に金型で打ち抜き、パンチャーにてスルーホールを形成し、スクリーン印刷機にてWペーストを充填した後に、10μm厚で回路印刷を行った。次に、モールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。
【0046】
次に、焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、積層界面を観察した結果を後掲の表2に示す。また、表3には、上述の工程中に問題があったかどうかも示した。グリーンシートの無機成分を100重量部としたときの樹脂結合剤量(重量部)と、ペースト中の無機成分を100重量部としたときの接着性樹脂量(重量部)の和が20重量部以上あれば、積層界面には部分的な剥がれ等の不具合点は認められないことが判った。一方、和が40重量部より多くなると工程中に問題が発生することが判った。工程の問題点とは、例えば、スルーホールを形成するときに、グリーンシートとパンチャーの滑りが悪く、グリーンシートを保持するテーブルからグリーンシートが飛び出したり、スクリーン印刷後にグリーンシートがスクリーンに付着したり等の現象である。和が40重量部より多くなると、これらの問題点が50%以上の確率で発生することが判った。
なお、可塑剤であるジブチルフタレートの添加量であるが、樹脂結合剤量によって最適なグリーンシート硬度となるように調整した。一般的に可塑剤の添加量が少なすぎると、グリーンシートが固くなりすぎて印刷、切断等が困難になる。また、可塑剤量が多すぎるとシートが柔らかくなりすぎてハンドリングが困難になる。また、可塑剤の量はグリーンシートの積層性には影響を与えなかった。
【0047】
【表2】
【0048】
【実施例3】
本実施例においては、本発明を実施する際のペーストの印刷厚の好ましい値を求めるための試験を行った。
実施例1の試料1において、接着性樹脂を含むペーストをスクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に印刷する際に、印刷膜厚を変更した。次に金型で打ち抜き、パンチャーにてスルーホールを形成し、スクリーン印刷機にてWペーストを充填した後に、10μm厚で回路印刷を行った。次に、モールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。
【0049】
焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、積層界面を観察した結果を表3に示す。焼結後のセラミック多層積層体反りも表4に示す。接着性樹脂を含むペーストで形成した表面層の焼結前の厚みが5μmより小さい試料20は積層界面の不特定の部分に大量に剥がれが認められた。一方、10μmより小さく5μmより大きい、試料21では回路印刷部の両脇周辺の部分に小さな剥がれが認められた。回路印刷部によるグリーンシートの凹凸を表面層で充分吸収されていないようであった。一方、表面層厚が10μmより大きい試料は全て積層界面に異常は認められなかった。ただし、表面層厚が30μmより大きい試料24では、焼結体の反りが100μmと急激に増加しており、基板材料やパッケージとして用いるには不適当である。
【0050】
【表3】
【0051】
【実施例4】
本実施例においては、本発明を実施する際のペースト粘度の好ましい値を求めるための試験を行った。
実施例1の試料1において、接着性樹脂を含むペーストをスクリーン印刷機にてグリーンシートの表面に印刷する際に、ペーストの粘度を変更した。なお、粘度測定はブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。次に金型で打ち抜き、パンチャーにてスルーホールを形成し、スクリーン印刷機にてWペーストを充填した後に、10μm厚で回路印刷を行った。次に、モールドにシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。
【0052】
表4には、上述の工程中に問題があったかどうかを示した。ペースト粘度が1500Pより大きくなると、例えば、スルーホールを形成するときに、グリーンシートとパンチャーの滑りが悪く、グリーンシートを保持するテーブルからグリーンシートが飛び出したり、スクリーン印刷後にグリーンシートがスクリーンに付着する等の問題点が30%以上の確率で発生することが判った。一方ペースト粘度が3000Pを超える試料30では、印刷中にスクリーンヘペーストが日詰まりし、さらには、印刷後グリーンシートがスクリーンヘ貼り付き、印刷を行うことができなかった。また、粘度が50Pより小さい試料25では、印刷はできるものの、印刷膜厚を20μmにするには、5回も印刷、乾燥の工程を繰り返す必要があった。
【0053】
【表4】
【0054】
【実施例5】
本実施例においては、本発明を実施する際の接着性樹脂を含むペーストの塗布工程と回路印刷工程との順序を入れ替えたときに焼結品にどのような影響があるかを試験した。
実施例1の試料1の作製工程において、接着性樹脂を含むペーストを塗布する行程と回路印刷工程との順序を入れ替えた。すなわち、実施例1の試料1と同じグリーンシートを、まず実施例1と同じ金型にて打ち抜き、パンチャーにて直径0.3mmのスルーホールを形成した。スルーホールに実施例1と同じWペーストを用いて、Wペーストを充填した後に、10μm厚となるように回路印刷を行った。
【0055】
次に、実施例1の試料1と同じ接着性樹脂を含むペーストをスクリーン印刷機にて塗布した。塗布したグリーンシートの面は、回路印刷したのと同じ面とした。印刷、乾燥後の膜厚は15μmであった。また、印刷の際には、上下層を導通するビア部にはペーストが塗布されないようなパターニングをしたスクリーンを用いた。
【0056】
次に、モールドにこのシートを5枚重ねてセットし、プレス機にて70℃に熟しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで積層を行い、切断機にて積層体の外周部を切り落とした後、実施例1と同じ条件で脱脂・焼結を行った。焼結後のセラミック多層積層体の大きさは60mm×60mm×1.5mmであった。また焼結後の反りは30μmであった。
【0057】
次に、焼結したセラミック多層積層体を10等分になるように切断・研磨した後、500倍の電子顕微鏡にて、顔層界面を観察した。その結果、積層界面に剥がれ等の異常は全く認められなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミナ以外の窒化アルミニウム等の新しい材料を積層する場合でも、積層時に接着不良が発生しない、セラミック多層積層体を得ることができる。このため、このセラミック多層積層体をIC用の基板、パッケージとして好適に用いることができる。
Claims (4)
- セラミックグリーンシートを積層した後に焼成するセラミック多層積層体の製造方法であって、セラミックグリーンシートの表面に、BET比表面積がセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末の比表面積より小さい無機物粉末と接着性樹脂とを含有する表面層を形成した後、該セラミックグリーンシートを積層し、焼成することを特徴とするセラミック多層積層体の製造方法。
- 前記表面層の無機物粉末としてBET比表面積が3.0m2/g以下の粉末を使用することを特徴とする請求項1に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
- 前記表面層の無機物粉末としてセラミックグリーンシートを形成している無機物粉末と実質的に同一の無機物粉末を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートを形成している無機物粉末が窒化アルミニウム粉末であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミック多層積層体の製造方法。
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JP2002199758A JP2004042303A (ja) | 2002-07-09 | 2002-07-09 | セラミック多層積層体の製造方法 |
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JP2006310805A (ja) * | 2005-03-29 | 2006-11-09 | Kyocera Corp | 電子部品の製造方法 |
JP2012080046A (ja) * | 2010-10-06 | 2012-04-19 | Kyocera Corp | ガラスセラミック基板およびコイル内蔵ガラスセラミック配線基板 |
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2002
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