JP4806948B2 - 水添石油樹脂を含む発泡壁紙 - Google Patents

水添石油樹脂を含む発泡壁紙 Download PDF

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Description

本発明は、水添石油樹脂を含む発泡壁紙に関する。
従来、発泡壁紙としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂からなる発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮し、発泡樹脂層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂等のハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
具体的には、アクリル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とを含むエマルションにマイクロカプセル型発泡剤を配合した塗料を、紙質基材上に塗工・乾燥後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで樹脂層を発泡後、エンボス版により凹凸模様を賦型してなる発泡壁紙が知られている。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂と熱分解型発泡剤とを含有する組成物からなる未発泡樹脂層を、Tダイ押出し機により紙質基材上に押出し形成後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで未発泡樹脂層を発泡後、エンボス版により凹凸模様を賦型してなる発泡壁紙が知られている。
上記押出し機を用いる発泡壁紙の製造方法では、従来、発泡樹脂層を構成する樹脂には、低温溶融可能な流動性の高い樹脂(分子量の小さい樹脂)を用いる必要がある。これは、溶融温度が高い樹脂を用いる場合には、熱分解型発泡剤が機内発泡するおそれがあり、流動性が低い樹脂を用いる場合には、フィラー等の添加剤との接触により摩擦熱が生じ易く、前記同様に熱分解型発泡剤の機内発泡を助長するおそれがあるためである。
しかしながら、低温溶融可能な流動性の高い樹脂は、常温においても軟らかいため、発泡壁紙の実質的な厚みを担う発泡樹脂層が、当該流動性の高い樹脂で構成される場合には、発泡壁紙の耐スクラッチ性が不十分になる問題がある。樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を用いる場合には、酢酸ビニル含有量を下げることにより、耐スクラッチ性を高めることはできるが、酢酸ビニル含有量を下げると、発泡壁紙がカールし易くなる問題がある。
従って、押出し成形により好適に製造できる、発泡樹脂層を構成する樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であり、酢酸ビニル含有量が少ない場合でも、カールの発生が抑制された発泡壁紙の開発が望まれている。
特開平6−47875号公報 特開2000−255011号公報 特開2001−347611号公報
本発明は、押出し成形により好適に製造できる、発泡樹脂層を構成する樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であり、酢酸ビニル含有量が少ない場合でも、カールの発生が抑制された発泡壁紙を提供する。
本発明は、押出し成形工程を含む、上記発泡壁紙の好適な製造方法も提供する。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、(未)発泡樹脂層に特定の樹脂を共存させる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙及びその製造方法に関する。
1.紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層は、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
(2)発泡樹脂層は、当該発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
ことを特徴とする発泡壁紙。
2.エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレートが、10〜20g/10分である、上記項1に記載の発泡壁紙。
3.前記水添石油樹脂が、完全水添型である、上記項1又は2に記載の発泡壁紙。
4.非発泡樹脂層をさらに有する、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
5.紙質基材上に、非発泡樹脂層A、発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを順に積層してなる、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
6.非発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、上記項4又は5に記載の発泡壁紙。
7.発泡樹脂層のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が架橋している、上記項1〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。
8.押出し成形によって熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層を形成する工程を有する発泡壁紙の製造方法であって、
(1)未発泡樹脂層は、メルトフローレートが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
(2)未発泡樹脂層は、当該未発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
ことを特徴とする製造方法。
9.紙質基材上に、非発泡樹脂層A、熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを当該順且つ非発泡樹脂層Aが紙質基材と接触するように押出し成形により同時積層後、前記発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする発泡壁紙の製造方法であって、
(1)未発泡樹脂層は、メルトフローレートが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
(2)未発泡樹脂層は、当該未発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
ことを特徴とする製造方法。
10.非発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、上記項9に記載の製造方法。
11.前記水添石油樹脂が、完全水添型である、上記項9又は10に記載の製造方法。
12.押出し成形が、Tダイ押出し機による3層同時押出し成形である、上記項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
13.発泡剤を加熱する前に、未発泡樹脂層に電子線を照射する、上記項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
1.発泡壁紙
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層は、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
(2)発泡樹脂層は、当該発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、ことを特徴とする。
以下、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は「EVA」と略記する。また、メルトフローレートは「MFR」と略記する。
紙質基材
紙質基材は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
発泡樹脂層
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に、発泡樹脂層を有する。
発泡樹脂層は、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のEVAをマトリックス樹脂とする。
EVAの酢酸ビニル含有量は10〜15重量%であればよいが、10〜13重量%が好ましい。
発泡樹脂層は、当該発泡樹脂層を構成する前記EVA100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する。かかる範囲の量の水添石油樹脂を含有することにより、EVAの酢酸ビニル含有量が10〜15重量%と低い場合でも、EVAの結晶化を阻害し、発泡壁紙のカールを抑制する。EVAの結晶化が進行すると発泡壁紙はカールし易くなる。
また、EVAの酢酸ビニル含有量が10〜15重量%と低いため、発泡壁紙は良好な耐スクラッチ性を有する。
EVAのMFRは特に限定されないが、常温での発泡樹脂層の硬度を考慮すると、MFRは低いことが望ましい。MFRは、10〜20g/10分程度が好ましく、10〜15
g/10分程度がより好ましい。かかる範囲内のMFRを有するEVAを採用する場合には、常温での発泡樹脂層の硬度を十分に担保できるため、耐スクラッチ性をより高められる。
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類に応じて適宜設定できる。
発泡樹脂層は、無機充填剤、顔料、難燃剤、熱安定剤等の添加剤を含んでもよい。
上記のうち、無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、発泡樹脂層を構成するEVA樹脂100重量部に対して、0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
顔料については、次のものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。
添加剤としては、上記のものに限定されず、他の公知の添加剤も使用できる。添加量は、発泡壁紙の種類に応じて幅広い範囲から選択できる。
発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、300〜800m程度が好ましく、500〜700μm程度がより好ましい。
樹脂層の具体的構成
本発明の発泡壁紙は、前記発泡樹脂層以外に非発泡樹脂層を有してもよい。即ち、樹脂層を複層とし、当該複層のうちの少なくとも1層を発泡樹脂層としてもよい。なお、発泡樹脂層が2層以上となる場合には、発泡樹脂層の総厚みが前記300〜800μmであればよい。
樹脂層を複層とする場合には、例えば、樹脂層を3層とし、当該3層のうちの芯層を発泡樹脂層とする構成が好ましい。具体的には、紙質基材上に、非発泡樹脂層A、発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Bが順に積層される構成である。この場合、非発泡樹脂層Aは5〜20m程度、発泡樹脂層300〜750μm程度、非発泡樹脂層Bは5〜30μm程度とすることが好ましい。当該3層構造の場合には、非発泡樹脂層Aの形成により、発泡樹脂層と紙質基材との密着性が高まる。
非発泡樹脂層を構成する樹脂の種類は限定的ではないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が好ましい。EVAは、電子線照射により架橋する特性がある。
非発泡樹脂層を構成する樹脂としてもEVAを採用する場合には、EVAのMFR及び酢酸ビニル含有量の説明は、前記発泡樹脂層の場合と同じである。本発明の発泡壁紙は、樹脂層を構成する樹脂としてもEVAを採用し、少なくとも発泡樹脂層のEVAが架橋されていることが好ましい。
絵柄模様層
本発明の発泡壁紙は、前記樹脂層に加えて、絵柄模様層を有してもよい。例えば、紙質基材上に前記樹脂層を有し、その上に絵柄模様層を有する構造が挙げられる。
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
絵柄模様層は、例えば、前記の構造例では、樹脂層のおもて面に絵柄模様を印刷することにより形成できる。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、ビヒクル、溶剤を含む公知の印刷インキが使用できる。
着色剤としては、前記顔料が使用できる。
ビヒクルは、紙質基材の種類に応じて設定できるが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
印刷インキに含まれる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
絵柄模様層の厚みは絵柄模様の種類より異なるが、0.1〜10μm程度が好ましい。
エンボス模様
本発明の発泡壁紙は、任意のエンボス模様をさらに有してもよい。
エンボス模様は、例えば、公知のエンボス版により付与できる。例えば、前記樹脂層の表面から加熱しながらエンボス版を押圧することにより、発泡壁紙に任意のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
2.発泡壁紙の製造方法
本発明の発泡壁紙の製造方法は特に限定されないが、押出し成形によって熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層を形成する工程を有する発泡壁紙の製造方法であって、
(1)未発泡樹脂層は、MFRが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のEVAをマトリックス樹脂とし、
(2)未発泡樹脂層は、当該未発泡樹脂層を構成する前記EVA100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
ことを特徴とする製造方法、により好適に製造できる。
当該製造方法は、押出し成形によって熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層を形成する工程を有する。押出し成形方法は特に限定されないが、例えば、未発泡樹脂層形成用組成物をTダイ押出し機により押出しする方法が挙げられる。押出し温度は、前記組成物中に含まれる樹脂の溶融温度以上且つ熱分解型発泡剤が機内発泡しない温度範囲で調整できる。具体的には、シリンダー温度90〜120℃程度、ダイス温度90〜120℃程度が好ましい。
未発泡樹脂層形成用組成物は、前記未発泡樹脂層を構成するEVAの溶融物、熱分解型発泡剤及び水添石油樹脂の混合物である。
前記未発泡樹脂層を構成するEVAは、MFRが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のEVAである。
MFRは10〜20g/10分であればよく、この中でも10〜15g/10分程度が好ましい。酢酸ビニル含有量は10〜15重量%であればよく、特に10〜13重量%程度が好ましい。
熱分解型発泡剤は、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡剤の含有量は、未発泡樹脂層を構成するEVA100重量部に対して、1〜20重量部程度が好ましい。
水添石油樹脂の含有量は、未発泡樹脂層を構成するEVA100重量部に対して、10〜35重量部である。この中でも、10〜20重量部程度が好ましい。かかる範囲内の量の石油樹脂を含有することにより、EVAのMFRが10〜20g/10分と小さくても押出し時の良好な樹脂流動性を確保できる。当該製造方法は、水添石油樹脂を特定量共存させることにより、押出し成形時の樹脂流動性を確保し、熱分解型発泡剤の機内発泡を確実に防止できる。水添石油樹脂は、完全水添型と部分水添型の2種類があるが、EVAの相溶性を考慮すると、完全水添型が好ましい。
未発泡樹脂層形成用組成物は、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤については前記の通りである。その他、発泡セル調整剤、熱安定剤、難燃剤等を配合できる。これらの配合量については、発泡壁紙の種類に応じて適宜設定できる。
未発泡樹脂層は、紙質基材上に直接押出し成形してもよく、予め紙質基材上とは別に形成後、熱ラミネートにより紙質基材上に密着させてもよい。紙質基材上に直接押出し成形する場合には、溶融熱により未発泡樹脂層は接着性を有するため、紙質基材と密着する。
未発泡樹脂層を紙質基材上に形成後は、発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする。
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される限り限定されない。加熱温度は、180〜240℃程度が好ましく、210〜230℃程度がより好ましい。加熱時間は、20〜60秒程度が好ましく、25〜40秒程度がより好ましい。
前記加熱処理の前に、未発泡樹脂層に電子線照射を行ってもよい。これにより、EVAを架橋できるため、発泡程度を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋助剤を含有してもよい。
架橋助剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよく、例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋助剤は、EVA100重量部に対して、0〜10重量部程度が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。
絵柄模様層を有する発泡壁紙を製造する場合には、加熱前に未樹脂層表面に形成すればよい。絵柄模様層の具体的な形成方法は、前記の通りである。
以下に、より具体的な層構成を有する本発明の発泡壁紙を作製する手順を例示する。
例えば、紙質基材上に、非発泡樹脂層A、発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを順に積層してなる発泡壁紙であれば、下記の製造方法により好適に製造できる。
即ち、紙質基材上に、非発泡樹脂層A、熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを当該順且つ非発泡樹脂層Aが紙質基材と接触するように押出し成形により同時積層後、前記発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする発泡壁紙の製造方法であって、
(1)未発泡樹脂層は、MFRが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のEVAをマトリックス樹脂とし、
(2)未発泡樹脂層は、当該未発泡樹脂層を構成する前記EVA100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
ことを特徴とする製造方法、により好適に製造できる。
未発泡樹脂層については、前記の通りである。
前記押出し成形による同時積層には、例えば、Tダイ押出し機による3層同時押出しが好適に利用できる。当該製造方法では、例えば、3種の溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイが好適に使用できる。
具体的には、非発泡樹脂層Aを形成するための組成物、未発泡樹脂層形成用組成物及び非発泡樹脂層B形成用組成物を各々別個のシリンダー中に入れて、3種3層を同時押出成形(成膜・積層)すればよい。
非発泡樹脂層A形成用組成物は、非発泡樹脂層Aを構成する樹脂の溶融物である。非発泡樹脂層B形成用組成物は、非発泡樹脂層Bを構成する樹脂の溶融物である。これら非発泡樹脂層を構成する樹脂の種類は限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、発泡樹脂層がEVAをマトリックス樹脂とすることも考慮するとEVAが好ましい。非発泡樹脂層を構成するEVAのMFR及び酢酸ビニル含有量は特に限定されないが、発泡壁紙の耐スクラッチ性を高める観点からは、酢酸ビニル含有量は少ない方が好ましい。具体的には、酢酸ビニル含有量は、10〜15重量%が好ましく、特に10〜13重量%が好ましい。各組成物には、公知の樹脂用添加剤を適宜配合できる。
当該製造方法では、同時押出し積層体は、紙質基材上に同時積層(成膜)する。紙質基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、溶融熱により接着性を有するため紙質基材と接着される。
同時押出し積層後は、前記の通り、発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする。
電子線照射、絵柄模様層の形成、エンボス模様の賦型等については、前記と同様である。
本発明の発泡壁紙は、発泡樹脂層が水添石油樹脂を特定量含有するため、発泡樹脂層を構成する樹脂がEVAであり、酢酸ビニル含有量が少ないにも関わらず、カールの発生が抑制されている。また、発泡樹脂層を構成する酢酸ビニル含有量が少ないため、発泡壁紙の耐スクラッチ性が良好である。
本発明の発泡壁紙の製造方法は、未発泡樹脂層が水添石油樹脂を特定量含有するため、発泡樹脂層を構成する樹脂がEVAであり、MFRが小さいにも関わらず、押出し成形時の樹脂流動性が良好である。また、MFRが小さいため、溶融張力が高く、発泡剤を加熱して未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする際の発泡性が良好である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
非発泡樹脂層Aを形成するために、EVA(製品名「エバテートCV5053」、MFR:70g/10分、酢酸ビニル含有量:20重量%、住友化学製)を用意した。
非発泡樹脂層Bを形成するために、EVA(製品名「エバテートD4010」、MFR:10g/10分、酢酸ビニル含有量:10重量%、住友化学製)を用意した。
未発泡樹脂層を形成するために、下記表1に記載の成分を含む組成物を用意した。
Figure 0004806948
上記樹脂及び樹脂含有組成物を溶融し、3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて厚み110μmの紙質基材(坪量70g)上に3層同時押出し積層した。Tダイ押出し機は、シリンダー温度100℃、ダイス温度100℃とした。
同時押出し積層は、紙質基材と非発泡樹脂層Aとが接するように、非発泡樹脂層A/未発泡樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に積層した。各層の厚みは、前記の順に15μm/100μm/10μmとした。
積層後、非発泡樹脂層Bの上から電子線(175kV、5Mrad)を照射して樹脂架橋後、非発泡樹脂層Bのおもて面にコロナ放電処理を施した。
次いで、非発泡樹脂層Bのおもて面にEVA系水性エマルションを2g/m塗工してプライマー層を形成後、グラビア印刷により布目絵柄の絵柄印刷層を形成した。印刷インクは、水性インク(製品名「ハイドリック」大日精化工業製)を用いた。
次いで、当該積層体をギアオーブン中、220℃で30秒間加熱した。これにより、熱分解型発泡剤が分解し、未発泡樹脂層を発泡樹脂層とした。
次いで、非発泡樹脂層Bのおもて面から、発泡体に対してエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型した。
以上の過程を経て、発泡壁紙を作製した。
比較例1
水添石油樹脂の含有量を35重量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
比較例2
水添石油樹脂の含有量を35重量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
比較例3
未発泡樹脂層形成用組成物のEVAを種類の異なるEVA(製品名「エバテートD5020」、MFR:75g/10分、酢酸ビニル含有量:10重量%、住友化学製)とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
試験例1(押出し加工性)
実施例及び比較例において、3層同時積層する際の押出し加工性を評価した。
樹脂流動性が良好であり、機内発泡等の異常が認められない場合を○と評価した。また、樹脂流動性、機内発泡等について異常が一つでも認められるものを×と評価した。
試験例2(発泡樹脂層の発泡状態)
実施例及び比較例において、発泡樹脂層の発泡状態を評価した。
発泡セルの崩壊、粗いセルの発生等が認められないものを○と評価した。それ以外は×と評価した。
試験例3(耐スクラッチ性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙の耐スクラッチ性を評価した。
試験・評価は、日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して行った。具体的には、次の手順に従って試験・評価を行った。
学振摩耗試験機(JIS L0849 摩耗試験機II型)に試験片(発泡壁紙)を取り付けた。試験機の摩擦子として同部会指定の金属製爪を用いて、金属爪先端に200g荷重をかけて試験片上を5往復させた。試験片の試験後の表面状態を肉眼観察した。
前記規定における耐スクラッチ性の評価は、5級:変化なし、4級:表面に少し変化あり、3級:表面が破けて見える、2級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm未満)、1級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm以上)の5段階である。
試験例3では、上記5〜4級に該当するものを○と評価し、3級に該当するものを△と評価し、2〜1級に該当するものを×と評価した。
試験例4(耐カール性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙の耐カール性を評価した。
肉眼でカールが確認できないものを○と評価した。また、肉眼でカールが確認できるものを×と評価した。
上記試験の結果を下記表2に示す。
Figure 0004806948

Claims (13)

  1. 紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
    (1)発泡樹脂層は、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
    (2)発泡樹脂層は、当該発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
    ことを特徴とする発泡壁紙。
  2. エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレートが、10〜20g/10分である、請求項1に記載の発泡壁紙。
  3. 前記水添石油樹脂が、完全水添型である、請求項1又は2に記載の発泡壁紙。
  4. 非発泡樹脂層をさらに有する、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
  5. 紙質基材上に、非発泡樹脂層A、発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを順に積層してなる、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
  6. 非発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、請求項4又は5に記載の発泡壁紙。
  7. 発泡樹脂層のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が架橋している、請求項1〜のいずれかに記載の発泡壁紙。
  8. 押出し成形によって熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層を形成する工程を有する発泡壁紙の製造方法であって、
    (1)未発泡樹脂層は、メルトフローレートが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
    (2)未発泡樹脂層は、当該未発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
    ことを特徴とする製造方法。
  9. 紙質基材上に、非発泡樹脂層A、熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層、及び非発泡樹脂層Bを当該順且つ非発泡樹脂層Aが紙質基材と接触するように押出し成形により同時積層後、前記発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする発泡壁紙の製造方法であって、
    (1)未発泡樹脂層は、メルトフローレートが10〜20g/10分、且つ、酢酸ビニル含有量が10〜15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をマトリックス樹脂とし、
    (2)未発泡樹脂層は、当該未発泡樹脂層を構成する前記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部に対して、水添石油樹脂を10〜35重量部含有する、
    ことを特徴とする製造方法。
  10. 非発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、請求項に記載の製造方法。
  11. 前記水添石油樹脂が、完全水添型である、請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. 押出し成形が、Tダイ押出し機による3層同時押出し成形である、請求項9〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 発泡剤を加熱する前に、未発泡樹脂層に電子線を照射する、請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。
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