JP4786107B2 - コリネバクテリウム−グルタミカム遺伝子を用いるファインケミカルの製造方法、及びリシンの収率を向上させる方法。 - Google Patents

コリネバクテリウム−グルタミカム遺伝子を用いるファインケミカルの製造方法、及びリシンの収率を向上させる方法。 Download PDF

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    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/90Isomerases (5.)

Description

【0001】
[関連出願]
本願は、2000年6月23日に出願された米国特許出願第09/606740号の一部についての継続出願である。更に本願は、2000年6月23日に出願された米国特許出願第09/603124号の一部についての継続出願である。本願は、先の出願である1999年6月25日出願の米国仮出願第60/141031号、1999年7月2日出願の米国仮出願第60/142101号、1999年8月12日出願の米国仮出願第60/148613号、2000年3月9日出願の米国仮出願第60/187970号、及び1999年7月8日出願のドイツ特許出願第19931420.9号を優先権の基礎とするものである。上述した全ての特許出願の全内容を、参考のため本明細書に特に取り込むものである。
【0002】
[出願の背景]
細胞内の天然の代謝工程による所定の産物および副産物は、食品、飼料、化粧品および医薬業を含む多種産業で用いられる。集合的に「ファインケミカル」と呼ばれるこれらの分子には、有機酸、タンパク質源及び非タンパク質源のアミノ酸、ヌクレオチド及びヌクレオシド、脂質及び脂肪酸、ジオール、炭水化物、芳香族化合物、ビタミン類、補助因子(コファクター)、並びに酵素が含まれる。これらの生産は、特に所望の分子を大量に生産および分泌させるために開発されたバクテリアの大規模な培養により最も簡便に行われる。この目的における特に有用な生物の一種に、グラム陽性、非病原性のバクテリアであるコリネバクテリウム−グルタミカム(コリネバクテリウム−グルタミカム)がある。株(菌種)を選択することにより、多数の変異株が開発されており、これらにより一連の所望の化合物を産生する。しかしながら、特定分子生産のための改良された株の選択は時間のかかる困難な作業である。
【0003】
[発明の要約]
本発明によると、コリネバクテリウム−グルタミカム由来の新規バクテリア核酸分子(配列番号5に示されたヌクレオチド配列、及び配列番号6に示されたアミノ酸配列に係る核酸分子)が提供され、ファインケミカル(例えば、リシン及びメチオニン等のアミノ酸)の製造方法、及びリシンの収率を向上させる方法に用いられる。これらの新規核酸分子は、本明細書で代謝経路(MP)タンパク質と呼ぶタンパク質をコードするものである。
【0004】
C.グルタミカムは、グラム陽性の好気性バクテリアであり、種々のファインケミカルの大量生産を行う産業分野において、および炭化水素(例えば石油中)の分解およびテルペイドの酸化に一般的に使用されている。従って、本発明のMP核酸分子を、ファインケミカルの生産に発酵処理によって生産可能な微生物の識別に使用可能である。本発明のMP核酸の発現の調節、または本発明のMP核酸分子の配列の修飾は、微生物から得られる1種類以上のファインケミカルの生産を調節するため(例えばコリネバクテリウム(Corynebacterium)またはブレビバクテリウム(Brefibacterium)種からの1種類以上のファインケミカルの収率または生産を向上させるため)に使用可能である。好ましい実施形態において、本発明のMP遺伝子を、同一または異なる代謝経路に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせて、微生物から得られる1種以上のファインケミカルを調節する。
【0005】
本発明のMP核酸を、コリネバクテリウム−グルタミカムまたはこれに密接に関連する微生物を識別するため、または微生物の混合集団におけるC.グルタミカムまたはこれに密接に関連する微生物の存在を認識するために用いても良い。本発明は、多数のC.グルタミカム遺伝子の核酸配列を提供するものであり、この配列は、緊縮(ストリンジェント)条件下で、微生物の単独培養体または微生物の混合集団培養体から抽出されたゲノムDNAを、この生物に特有であるC.グルタミカム遺伝子領域に及ぶプローブによって検出し、この生物が存在するか否かを評価可能となる。コリネバクテリウム−グルタミカムそれ自体は非病原性であるが、ヒトにおける病原体種、例えばコリネバクテリウム−ジフテリア(ジフテリアの原因物質)に関連する。従って、かかる微生物の検出は重要な臨床関連性を有する。
【0006】
本発明のMP核酸分子は、C.グルタミカムのゲノムまたは関連する微生物のゲノムの染色体地図作製の参照点として作用する場合がある。
【0007】
同様に、これらの分子、またはこれらの変異体、または一部は、遺伝子工学的に得られたコリネバクテリウムまたはブレビバクテリウム種の標識として作用する場合もある。
【0008】
本発明の新規核酸分子によりコードされるMPタンパク質により、例えば、所定のファインケミカルの代謝に含まれる酵素的な工程を実施可能となり、このファインケミカルには、アミノ酸(例えば、リシン及びメチオニン)、ビタミン類、コファクター(補助因子)、機能性食品(ヌトラセウチカル)、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびトレハロースが含まれる。コリネバクテリウム−グルタミカムに用いられるクローニングベクターの所定の有効性は、例えば、Sinskey等、米国特許第4,649,119号、およびC.グルタミカムおよび関連するブレビバクテリウム種(例えば、lactofermentum)の遺伝子操作に関する技術(Yoshihama等著、J. Bacteriol. 162: 591-597(1985); Katsumata等著、J. Bacteriol. 159: 306-311 (1984); and Santamaria等著、 J. Gen. Microbiol. 130: 2237-2246 (1984))に記載されており、本発明の核酸分子を、この生物の遺伝子操作に用いても良く、これにより1種類以上のファインケミカルの生産が改良されるか、または更に効率的な製造が行われる。
【0009】
ファインケミカルの製造および製造効率の改善は、本発明の遺伝子操作による直接的効果であることも、またはかかる操作の間接的効果であることもある。特に、アミノ酸(例えば、リシン及びメチオニン)、ビタミン類、補助因子、ヌクレオチド、及びトレハロースのC.グルタミカム代謝経路で変性したことにより、この生物から得られる1種以上の所望の化合物の製造全体に直接的な影響を与える場合がある。例えば、リシンまたはメチオニンの生合成(代謝)経路タンパク質の活性を最適化するか、或いはリシンまたはメチオニンの分解経路タンパク質の活性を低減することにより、かかる生物から得られるリシンまたはメチオニンの収率が増大し、または製造効率が向上する。この代謝経路に含まれるタンパク質の変化により、所望のファインケミカルの製造または製造効率に間接的な影響も与える。例えば、所望の分子の製造に必要な中間体に競争する反応を無視しても良いし、或いは所望の雅号物の特定中間体の製造に必要な代謝経路を最適化しても良い。更に、例えばアミノ酸(例えば、リシンまたはメチオニン)、ビタミン、またはヌクレオチドの生合成における調節または分解が、微生物の能力全体が向上して、迅速に成長及び分割するので、培養体中の微生物の数および/または製造能力を増大させ、これにより所望のファインケミカルの可能な収率が向上する。
【0010】
本発明の核酸及びタンパク質分子は、これを単独で、或いは同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の核酸及びタンパク質分子1種以上と組み合わせて用いて、コリネバクテリウム−グルタミカム(例えば、メチオニンまたはリシン)から得られる1種以上の所望のファインケミカルの製造を直接改善するか、または製造効率を直接向上させる場合がある。当該技術者等に周知の組み換え遺伝し技術を用いると、アミノ酸(例えば、リシン及びメチオニン)、ビタミン類、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース用である本発明による1種以上の生合成または分解酵素を、その機能が調節されるように操作しても良い。例えば、生合成酵素の能率(効率)を改良しても良いし、或いはそのアロステリック制御領域が、化合物の製造によるフィードバック阻害を防ぐように破壊する。同様に、置換、欠失、または付加によって分解酵素を欠失または修飾して、その分解活性を、細胞の生存力に害を与えることなく所望の化合物用に低減させても良い。それぞれの場合で、所望のファインケミカルの収率または製造速度全体が向上されうる。
【0011】
本発明によるタンパク質及びヌクレオチド分子のかかる変化により、アミノ酸(例えば、リシン及びメチオニン)、ビタミン類、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、及びトレハロースに他に、他のファインケミカルの生産を間接的な機構によって改善しても良い。いずれか1つの化合物の代謝を必然的に他の生合成や細胞内の分解経路と絡み合い、そして1つの経路で必要な補助因子、中間体、または基質を、別のかかる経路により供給または限定する。したがって、本発明によるタンパク質の1種以上の活性を調節することにより、別のファインケミカル生合成経路または分解経路の活性の生産または効率に影響を与える場合がある。例えば、アミノ酸は、全てのタンパク質の構造単位として機能し、その上、タンパク質合成に関して限定しているレベルで細胞間に存在しうる;したがって、細胞内における1種以上のアミノ酸の生産効率あるいは収率を向上させることにより、生合成タンパク質または分解タンパク質等のタンパク質をさらに容易に合成しうる。同様に、特定の副反応が多かれ少なかれ好適になるように代謝経路酵素における変更(変化)により、所望のファインケミカルの生産に中間体または基質として利用される1種以上の化合物を過剰生産または低生産する場合がある。
【0012】
本発明は、タンパク質(以下、代謝経路(“MP”)タンパク質とする)をコードする新規な核酸分子を提供するものであり、これにより、アミノ酸(例えば、リシン及びメチオニン)、ビタミン類、補助因子、ヌクレオチド及びヌクレオシド、またはトレハロース等の、細胞の一般的な機能に重要な分子の代謝に含まれる酵素工程を実施可能となる。MPタンパク質をコードする核酸分子は、以下、MP核酸分子と称される。好ましい実施形態において、MPタンパク質は、これを単独で、あるいは同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の1種以上のタンパク質と組み合わせて、1種以上の以下のもの:すなわち、アミノ酸(例えば、リシン及びメチオニン)、ビタミン類、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、及びトレハロースの代謝に関連する酵素工程を行うことになる。かかるタンパク質には、例えば表1に示された遺伝子によってコードされるタンパク質が含まれる。
【0013】
従って、本発明は更に、MPタンパク質またはこのうちの生物学的に活性なタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子(例えば、cDNA、DNA、RNA)、並びにMPをコードする核酸(例えば、DNAまたはmRNA)の検出または増幅のためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして適する核酸フラグメントに関する。特に好ましい実施形態において、単離された核酸分子は、配列表中の奇数番号のSEQ ID NO(配列番号)の配列(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:5)により示されるヌクレオチド配列のいずれか、あるいはこの様な配列におけるコード領域または相補性領域を含むものである。他の特に好ましい実施形態において、本発明による単離された核酸分子が、配列表中の奇数番号のSEQ ID NO(例えば、SEQ ID NO:1, SEQ ID NO:3,またはSEQ ID NO:5)として示されているヌクレオチド配列にハイブリダイズ(交雑)するか、あるいは少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上の相同なヌクレオチド配列またはその一部を含む。好ましい他の実施形態において、単離された核酸分子が、配列表中の偶数のSEQ ID NO(例えば、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4, またはSEQ ID NO:6)に示されたアミノ酸配列のいずれかをコードする。本発明によるこの好ましいMPタンパク質は、本明細書に記載のMP活性の少なくとも1種類を有することが好ましい。
【0014】
他の実施形態において、単離された核酸分子は、タンパク質またはタンパク質の一部をコードするが、この場合のタンパク質またはその一部には本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4,またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOの配列)に十分に相同なアミノ酸配列、例えば、タンパク質またはその一部がMP活性を維持するに十分に相同なアミノ酸配列を含む。核酸分子によりコードされたタンパク質またはその一部は、アミノ酸(例えば、リシンまたはメチオニン)、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路での酵素反応を実施するための能力を維持しているのが好ましい。一実施形態において、核酸分子デコードされたタンパク質は、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上の相同な本発明によるアミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4,またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOを有するものから選択されるアミノ酸配列全体)である。他の好ましい実施形態において、タンパク質は、本発明によるアミノ酸配列全体に実質上相同なC.グルタミカムタンパク質全体である(配列表中の奇数のSEQ ID NOに対応するオープン・リーディング・フレーム(open reading frame)によりコードされたもの(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:5)。
【0015】
他の好ましい実施形態において、単離された核酸分子はC.グルタミカム由来のものであり、本発明によるアミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4,またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOのいずれかの配列)のいずれかに少なくとも約50%以上相同な生物学的に活性なドメインを含むタンパク質(例えば、MP融合タンパク質)をコードし且つアミノ酸(例えば、リシンまたはメチオニン)、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース、あるいは表1に示されている1種以上の活性についての代謝経路における反応に触媒作用を及ぼすことが可能であり、そしてこれは、更に非相同ポリペプチドまたは調節領域をコードする非相同核酸配列も含むものである。
【0016】
他の実施形態において、単離された核酸分子の長さは、少なくとも15ヌクレオチドであり、そしてこの核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列を含む核酸分子と緊縮条件下でハイブリダイズする(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:1, SEQ ID NO:3,またはSEQ ID NO:5等の奇数のSEQ ID NOの配列)。単離された核酸分子は、天然に発生する核酸分子に対応するものであることが好ましい。単離された核酸が、天然に発生するC.グルタミカムMPタンパク質、またはその生物学的に活性な部分をコードしていると更に好ましい。
【0017】
更に本発明は、ベクター、例えば本発明による核酸分子を単独で、あるいは同一でもまたは異なっていても良い代謝経路に含まれる1種以上の核酸分子と組み合わせて含む組換え発現ベクター、並びにかかるベクターが組み込まれた宿主細胞に関する。一実施形態においては、宿主細胞は、この様な宿主細胞を適当な培地で培養することによりMPタンパク質を製造するため用いられる。このように製造されたMPタンパク質は培地または宿主細胞から単離される。
【0018】
更に本発明は、1種以上のMP遺伝子を、単独でまたは同一または異なっていても良い代謝経路に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせて導入されているか、または変化している遺伝的に変化した微生物に関するものである。一実施形態において、この微生物のゲノムを、1種以上の野生型または変異型MP配列をコードする本発明による核酸分子をトランス遺伝子として、単独でまたは同一または異なっていても良い代謝経路に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせて導入することにより変化させておく。他の実施形態において、微生物のゲノム中の内因性MP遺伝子1種以上に対して、改変された1種以上のMP遺伝子との相同組換えにより例えば機能的に混乱させる等の変性が行なわれる。他の実施形態において、微生物中の内因性または誘導されたMP遺伝子1種以上を、単独でまたは同一または異なっていても良い代謝経路に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせて、1カ所以上の点変異、欠失、逆位により変化しているにもかかわらず機能性MPタンパク質をコードしている。更に他の実施形態において、微生物における1種以上のMP遺伝子の1つ以上の調節領域(例えば、プロモーター、リプレッサー、インデューサー)を、単独でまたは1種以上のMP遺伝子と組み合わせるか、もしくは同一または異なっていても良い代謝経路の1種以上の遺伝子と組み合わせて、1種以上のMP遺伝子の発現が調節されるように変化している(例えば、欠失、切断、逆位、点変異による)。好ましい実施形態において、この微生物がコリネバクテリウムまたはブレビバクテリウム属に属していると好ましく、コリネバクテリウム−グルタミカムに属していると更に好ましい。好ましい実施形態において、この微生物を、所望の化合物、例えばアミノ酸、特にリシン(リジン)およびメチオニンの製造に使用することも好ましい。特に好ましい実施形態において、MP遺伝子は、metZ遺伝子(SEQ ID NO:1)、metC遺伝子(SEQ ID NO:3)、またはRXA00657遺伝子(SEQ ID NO:5)であり、これを単独で、あるいは本発明による1種以上のMP遺伝子と組み合わせるかまたはメチオニンおよび/またはリシン代謝に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせる。
【0019】
更に本発明は、コリネバクテリウム−ジフテリア(Corynebacterium diphteriae)の存在または活性を認識する方法を提供するものである。この方法は、被検体中の本発明による1種以上の核酸またはアミノ酸分配列(例えば、表1および配列表中にSEQ ID NO.1〜122で示された配列)の検出を含み、これにより、被検体中のコリネバクテリウム−ジフテリアの存在または活性が検出される。
【0020】
また本発明は、単離されたMPタンパク質またはその一部、例えば生物学的に活性な部分に関する。好ましい実施の形態においては、単離されたMPタンパク質またはその一部は、単独であるいは本発明による1種以上のMP遺伝子と組み合わせるかまたは同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の1種以上のタンパク質と組み合わせて、アミノ酸(例えば、リシンまたはメチオニン)、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの1種以上の代謝経路に含まれる酵素反応に触媒作用を及ぼす。他の好ましい実施の形態において、単離されたMPタンパク質またはその一部が、本発明によるアミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOの配列)に対して、このタンパク質またはその一部がアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの1種以上の代謝経路に含まれる酵素反応に触媒作用を及ぼす能力を維持するように十分な相同性を示す。
【0021】
更に本発明では、単離されたMPタンパク質の製造法を提供する。好ましい実施の形態において、MPタンパク質が本発明のアミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOの配列)を含む。他の好ましい実施の形態において、本発明は、本発明による全アミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOの配列)(これに対応する配列表中の、SEQ ID NO:1, SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:5等の奇数のSEQ ID NOに示されたオープン・リーディング・フレームによりコードされている)に実質的に相同な、単離されたタンパク質全体を含む。更に他の実施の形態において、タンパク質は、本発明による全アミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOの配列)に対して少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同である。他の好ましい実施の形態において、単離されたMPタンパク質は、本発明によるアミノ酸配列(例えば、配列表中の、SEQ ID NO:2, SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:6等の偶数のSEQ ID NOの配列)のいずれかに対して少なくとも約50%以上相同アミノ酸配列であり、アミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応に、これを単独で、あるいは本発明による1種以上のMPタンパク質または同一でもまたは異なっていても良い代謝経路のいずれかと組み合わせて触媒作用を及ぼすことが可能となるか、または表1に記載の1種類以上の活性を有するものである。
【0022】
あるいは、単離されたMPタンパク質は、例えば緊縮条件下で配列表に記載された偶数のSEQ ID NOのいずれかのヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされているか、または少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同なヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を含んでもよい。MPタンパク質の好ましい形態は、本明細書に記載の1種類以上のMP生物学的活性を有するものである。
【0023】
MPポリペプチド、またはこのペプチドの生物学的に活性な部分は、非MPポリペプチドと有効に結合して、融合タンパク質を形成する。好ましい実施の形態において、この融合タンパク質がMPタンパク質単独の場合と異なる活性を有する。他の好ましい実施の形態において、この融合タンパク質をアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品のC.グルタミカム代謝経路に導入する場合、この融合タンパク質により、C.グルタミカム由来の所望のファインケミカルの収率および/または製造効率が向上する。特に好ましい実施の形態において、この融合タンパク質を宿主細胞のアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース代謝経路へ導入することにより、この細胞からの所望の化合物の生産を調節することになる。
【0024】
更に、本発明は、タンパク質自体、基質もしくはMPタンパク質の結合対象との相互作用により、または本発明によるMP核酸分子の転写または翻訳を調節することにより、MPタンパク質の活性を調節する分子をスクリーニングする方法を提供する。
【0025】
更に本発明は、ファインケミカルの製造法に関する。この方法では、1種以上のMP核酸分子を単独で、あるいは本発明による1種以上のMP核酸分子または同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の核酸分子のいずれかと組み合わせ、その発現を支配する1種以上のベクターを含む細胞を培養し、これによりファインケミカルを製造する工程を含む。好ましい実施の形態によると、同製造法には更にこの様なベクターを含む細胞を得る工程が含まれ、この工程において、MP核酸の発現を支配するベクターを細胞に移入する(トランスフェクションする)。他の好ましい実施の形態において、更にこの方法は、培養体から得られたファインケミカルを回収する工程を含む。特に好ましい実施の形態において、細胞がコリネバクテリウムまたはブレビバクテリウム属由来であるか、あるいは表3に記載された株から選択されたものである。別の好ましい実施の形態において、MP遺伝子は、metZ遺伝子(SEQ ID NO:1)、metC遺伝子(SEQ ID NO:3)、またはRXA00657遺伝子(SEQ ID NO:5)(表1を参照)であり、これを単独で、あるいは本発明による1種以上のMP核酸分子と組み合わせるかまたはメチオニンおよび/またはリシン代謝に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせる。更に別の好ましい実施形態において、ファインケミカルはアミノ酸、例えばL−リシンおよびL−メチオニンである。
【0026】
更に本発明の方法は、微生物由来の分子の製造を調節する方法に関する。かかる方法では、細胞を、MPタンパク質活性またはMP核酸発現を調節する薬剤と接触させて、細胞に関連する活性を、この薬剤を用いない場合の活性に対して変化させる。好ましい実施形態において、この細胞を、1種類以上のC.グルタミカムのアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース代謝経路用に調節して、この微生物による所望のファインケミカルの収率または製造速度を向上させる。MPタンパク質活性を調節する薬剤としては、MPタンパク質の活性またはMP核酸の発現を刺激する薬剤が使用可能である。MPタンパク質の活性またはMP核酸の発現を刺激する薬剤の例には、小さい分子、活性MPタンパク質、およびMPタンパク質をコードする細胞中に導入された核酸が含まれる。MP活性または発現を阻害する薬剤の例には、小さい分子およびアンチセンスMP核酸分子が含まれる。
【0027】
更に本発明は、別のプラスミドに存在するか、または宿主細胞のゲノムに組み込まれた、野生型もしくは変異型MP遺伝子の細胞への導入を、これを単独で、あるいは本発明による1種以上のMP核酸分子または同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の核酸分子のいずれかと組み合わせて行う工程を含み、こうして得られた細胞からの所望の化合物の収率を調節する方法を含む。ゲノムに組み込まれる場合の導入はランダムであることが可能であり、あるいは天然の遺伝子が導入されたコピーにより代替されるように相同な組換えを行うことも可能であり、これにより調節されるべき細胞から所望の化合物が製造される。好ましい実施の形態において、収率が上昇する。別の好ましい実施形態において、上記ケミカルはファインケミカルである。特に好ましい実施の形態において、得られるファインケミカルはアミノ酸である。このアミノ酸がL−リジンおよびL−メチオニンであると特に好ましい。別の好ましい実施の形態において、上記遺伝子は、metZ遺伝子(SEQ ID NO:1)、metC遺伝子(SEQ ID NO:3)、またはRXA00657遺伝子(SEQ ID NO:5)であり、これを単独で、あるいは本発明による1種以上のMP核酸分子と組み合わせるかまたはメチオニンおよび/またはリシン代謝に含まれる1種以上の遺伝子と組み合わせる。
【0028】
[発明の詳細な説明]
本発明は、アミノ酸(例えば、リシンおよびメチオニン)、ビタミン類、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびトレハロースを含むコリネバクテリウム−グルタミカムにおける所定のファインケミカルの代謝に含まれるMP核酸およびタンパク質分子を提供する。本発明による分子をC.グルタミカム等の微生物から得られるファインケミカルの製造調節に、直接的に(例えば、リシンまたはメチオニン生合成タンパク質の活性の調節が微生物からのリシンまたはメチオニンの製造または製造効率に対して直接的に影響を与える場合)使用しても良く、あるいはこの分子は、所望の化合物の収率または製造効率を結果的に向上させる間接的な影響を及ぼしても良い(例えば、ヌクレオチド生合成タンパク質の活性の調節が、必要な補助因子、エネルギー化合物、または前駆体分子の成長を改善するか、またはこれらの供給を増大させたことが原因で、バクテリアより得られる有機酸又は脂肪酸の製造に影響を与える場合)。MP分子は、これを単独で、あるいは本発明による他のMP分子と組み合わせるか、または同一でもまたは異なっていても良い代謝経路(例えば、リシンまたはメチオニンの代謝)に含まれる他の分子と組み合わせて用いても良い。好ましい実施形態において、MP分子は、metZ(SEQ ID NO:1)、metC(SEQ ID NO:3)、またはRXA00657(SEQ ID NO:5)核酸分子と、これらの核酸分子によりコードされるタンパク質(それぞれSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:6)である。本発明について、以下に更に詳細に説明する。
【0029】
[1.ファインケミカル]
「ファインケミカル」という用語は従来の認識どおり、生物により生産され、種々の産業、例えば医薬、農業、化粧品産業(これらに限定されるものではない)に用いられる分子を意味する。かかる化合物には、有機酸、例えば酒石酸、イタコン酸、ジアミノピメリン酸、タンパク質原およびタンパク質原以外のアミノ酸、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド(Kuninaka, A.著、(1996) Nucleotides and related compounds, p. 561-612、(Biotechnology第6巻における論考、Rehm等著、VCH編、Weinheim、および同文献中に記載された参考文献)、脂質、飽和および不飽和脂肪酸(例えば、アラキドン酸)、ジオール(例えば、プロパンジオールおよびブタンジオール)、炭水化物(例えば、ヒアルロン酸およびトレハロース)、芳香族化合物(例えば、芳香族アミン、バニリンおよびインジゴ)、ビタミン類および補助因子(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第A27巻、“Vitamins”, p.443-613 (1996) VCH: Weinheimおよび同文献中に記載された参考文献; Ong, A.S., Niki, E. & Packer, L. 著、(1995) “Nutrition, Lipids, Health, and Disease ”Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia, and the Society for Free Radical Research-Asia(マレーシア、ペナンにおいて1994年9月1〜3日に開催)、(1995))、酵素、ポリケタイド(Cane等著 (1998) Science 282: 63-68)、およびGutcho (1983) Chemicals by Fermentation, Noyes Data Corporation, ISBN: 0818805086および同文献中に挙げられた参考文献中に記載されている他の全ての化学物質がある。これらのファインケミカルの代謝および所定の使用法について以下に詳細に説明する。
【0030】
A.アミノ酸代謝および使用法
アミノ酸はあらゆるタンパク質の塩基性構造単位であるため、全生物の正常な細胞機能に重要である。「アミノ酸」の用語は、従来より公知である。タンパク質源となるアミノ酸(タンパク質生成アミノ酸)は20種類存在し、タンパク質の構造単位としての役割を有し、ペプチド結合により結合する。一方、タンパク質原以外のアミノ酸(数百種類が公知である)はタンパク質内に一般に見出されない(Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第A2巻、p. 57-97 VCH: Weinheim (1985)、参照)。アミノ酸は、D−またはL−光学的立体配置であっても良いが、自然に発生するタンパク質には通常L−アミノ酸のみが存在する。20種類のタンパク質原アミノ酸の各生合成および分解経路は、原核細胞および真核細胞(例えば、Stryer, L. Biochemistry第3版、578-590頁、(1988)、参照)の双方において顕著な特徴を有する。必須アミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンおよびバリン)は、これらが、通常、その複雑な生合成における栄養的必須成分であるためにこのように呼ばれるものであり、これを簡単な生合成経路により残りの11種類の「非必須」アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラテート、ヒスチジン、システイン、グルタメート、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、およびチロシン)に変換される。高等動物は、これらのアミノ酸の幾つかを合成する能力を保持するが、必須アミノ酸は食事から供給されなければならず、これにより、正常なタンパク質合成が起こる。
【0031】
タンパク質合成における機能とは別に、これらのアミノ酸は、本来重要な化学物質であり、多くは食品、飼料、化学、化粧品、農業、医薬の各業界で様々に使用されている。リジンはヒトのみならず、単胃動物、例えば飼鳥類および豚においても栄養的に重要なアミノ酸である。グルタミン酸塩(グルタメート)は最も一般的に使用される香味添加物であり(グルタミン酸モノソーダ(mono-sodium glutamate)、MSG)、アスパラギン酸塩(アスパラテート)、フェニルアラニン、グリシンおよびシステインと同様に食品業界全体で広く使用されている。グリシン、L−メチオニンおよびトリプトファンは、化粧品業界で全て使用されている。グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、アルギニン、プロリン、セリンおよびアラニンは医薬品および化粧品業界の双方で使用されている。スレオニン、トリプトファンおよびD/Lメチオニンは一般的な飼料添加剤である(Leuchtenberger, W.著、(1996) Amino aids-technical production and use, p. 466-502 (Rehm等著 (編) Biotechnology第6巻、第14a章, VCH: Weinheim)。更に、これらのアミノ酸は合成アミノ酸およびタンパク質の合成用前駆体として使用されることがわかっている。この例には、N−アセチルシステイン、S−カルボキシメチル−L−システイン、(S)−5−ヒドロキシトリプトファン、およびUlmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第A2巻、p. 57-97, VCH: Weinheim 1985に記載の他の物質がある。
【0032】
生物、例えばバクテリアにより製造される天然のアミノ酸は顕著な特徴を有する(bacterial amino acid biosynthesis and regulation thereofのレビューに対して, Umbarger, H. E.著、(1978) Ann. Rev. Biochem. 47:533-606、参照)。グルタミン酸塩は、クエン酸回路の中間体であるα−ケトグルタレートの還元的アミン化により合成される。次いで、グルタメートからグルタミン、プロリン、アルギニンがそれぞれ製造される。セリンの生合成は、3−ホスホグリセレート(解糖の中間体)を出発物質として3工程から成り、酸化、アミノ基転移、および加水分解工程を経てこのアミノ酸が得られる。システインおよびグリセリンの双方はセリンから生産され、前者はホモシステインとセリンの縮合により、後者は側鎖β−炭素原子が、セリンのトランスヒドロキシメチラーゼにより触媒される反応において、テトラヒドロ葉酸塩に伝達されることにより製造される。
【0033】
フェニルアラニンおよびチロシンは、プレフェネート合成後の最後の2工程のみが異なる9工程の生合成経路において、解糖経路およびペントースリン酸経路の前駆体のエリトロース4−ホスフェートおよびホスホエノールピルベートから合成される。トリプトファンもこれらの2つの主要な分子から製造されるが、合成は11工程の経路によるものである。チロシンは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼにより触媒される反応においてフェニルアラニンから合成可能である。アラニン、バリンおよびロイシンは、全て、解糖の最終生成物であるピルビン酸(ピルベート)の生合成産物である。アスパラギン酸塩は、クエン酸回路の中間体であるオキサロ酢酸(オキサロアセテート)より形成する。アスパラギン、メチオニン、スレオニン、およびリシンは、アスパレートの転換によってそれぞれ形成する。イソロイシンはスレオニンから生成する。
【0034】
メチオニンを形成する生合成経路は、種々の微生物において研究されている。第1工程はホモセリンのアシル化であり、転移されたアシル基の供給源が異なっていたとしても全ての微生物に共通している。大腸菌(Escherichia coli)およびこれに関連する種類は、スクニシル−CoA(Michaeli, S. and Ron, E. Z. (1981) Mol. Gen. Genet. 182, 349-354)を使用し、一方、Saccharomyces cerevisiae(Langin, T., et al. (1986) Gene 49, 283-293)、Brevibacteriumu flavum(Miyajima, R. and Shiio, I. (1973) J. Biochem. 73, 1061-1068; Ozaki, H. and Shiio, I. (1982) J. Biochem. 91, 1163-1171)、C.グルタミカム(Park, S.-D., et al. (1998) Mol. Cells 8, 286-294)、およびLeptospira meyeri(Belfaiza, J. et al. (1998) 180, 250-255; Bourhy, P., et al. (1997) J. Bacteriol. 179, 4396-4398)は、アシル供与体としてアセチル−CoAを使用する。アシルホモセリンよりホモセリンを形成するのは、2種の異なる方法で起こりうる。大腸菌は、シスタチオニンγ−シンターゼ(metBの産物)およびシスタチオニンβ−リアーゼ(metCの産物)により触媒される硫黄転移経路を使用する。S. cerevisiae(Cherest, H. and Surdin-Kerjan, Y. (1992) Genetics 130, 51-58)、B. flavum(Ozaki, H. and Shiio, I. (1982) J. Miochem. 91, 1163-1171)、Pseudomonas aeruginosa(Foglino, M., et al. (1995) Microbiology 141, 431-439)、およびL. meyeri(Belfaiza, J., et al. (1998) J. Bacteriol. 180, 250-255)では、アシルホモセリンのスルフヒドリラーセ(sulfhydrylase)により触媒される直接スルフヒドリレーション経路を利用する。直接スルフヒドリレーション経路のみ使用する密接に関連したB. flavumと異なり、硫黄移転経路の酵素活性をC.グルタミカム細胞の抽出物において検出し、そしてこの経路を、生物のメチオニン生合成の経路とする(Hwang, B-J., et al. (1999) Mol. Cells 9, 300-308; Kase, H. and Nakayama, K. (1974) Agr. Biol. Chem. 38, 2021-2030; Park, S.-D., et al. (1998) Mol. Cells 8, 286-294)。
【0035】
C.グルタミカムでのメチオニン生合成に関与する遺伝子の幾つかを単離したが、C.グルタミカムのメチオニン生合成の情報は依然として極めて限定されている。metAおよびmetB以外の遺伝子を生物から単離しなかった。C.グルタミカムにおいてメチオニンをもたらす生合成経路を理解するために、本発明者等は、C.グルタミカムのmetC遺伝子(SEQ ID NO:3)およびmetZ遺伝子(metYとも称される)(SEQ ID NO:1)を単離し、そしてこれについて特徴付けた(表1を参照)。
【0036】
細胞のタンパク合成に必要な分を上回るアミノ酸は貯蔵されずに劣化し、細胞の主要な代謝経路における中間体を提供する(Stryer, L. Biochemistry、第3版、 21章、“Amino Acid Degradation and the Urea Cycle” p. 495-516 (1988)、参照)。細胞は不必要なアミノ酸を有用な代謝中間体に変換することができるが、合成によるアミノ酸合成では、エネルギー、前駆物質分子および必要な酵素において高コストとなる。すなわち、アミノ酸生合成がフィードバック阻害により調節されていることは驚くべきことではなく、特別なアミノ酸の存在により、製造速度が低下したり、完全に停止する(アミノ酸生合成経路におけるフィードバックメカニズムについては、Stryer, L. Biochemistry, 第3版. 24章: “Biosynthesis of Amino Acids and Heme” 575-600頁 (1988)を参照されたい)。従って、特定のアミノ酸の放出は、そのアミノ酸の細胞内における存在量により制御されている。
【0037】
B.ビタミン、補助因子、および機能性食品の代謝および使用法
ビタミン、補助因子、および機能性食品には、他の種類の分子が含まれ、バクテリア等の生物によりこれらを簡単に合成することができるが、高等動物はその合成能力を失い、そのため摂取する必要がある。これらの分子は、生物学的に活性な物質そのものであるか、または種々の代謝経路における電子の担体および中間体として作用する生物学的に活性な物質の前駆体である。これらの化合物は栄養的な価値とは別に、着色剤、酸化防止剤、触媒または他の加工助剤としての重要な工業的価値を有する(これらの化合物の構造、活性および工業的用途についは、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、 “Vitamins”, 第A27巻、p.443-613, VCH: Weinheim, (1996) を参照のこと)。「ビタミン」という用語は、従来より認識されているとおりであり、この物質は、生物が通常の機能を得るために必要であるが、生物自身は合成不可能である栄養分を含む。ビタミン群は、補助因子および機能性食品化合物を含む場合がある。「補助因子(コファクター)」という用語は、通常必要な酵素活性を得るための非タンパク質原化合物を含む。かかる化合物は、有機物でも、または無機物でもよいが、本発明のコファクター分子は有機物であると好ましい。「機能性食品」という用語には、動植物、特にヒトの健康に利益を与える補助食品(サプリメント)が含まれる。かかる分子の例は、ビタミン、酸化防止剤、および所定の脂質(例えば、ポリ不飽和脂肪酸)である。
【0038】
これらの物質を製造可能な生物、例えばバクテリアにおけるこれらの分子の生合成は、顕著な特徴を有する(Ullman's Encyclopedia of Industrial Chemistry, “Vitamins” 第A27巻, p. 443-613, VCH: Weinheim, 1996; Michal, G. (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley & Sons; Ong, A.S., Niki, E. & Packer, L. (1995) “Nutrition, Lipids, Health, and Disease” Proceedings of the UNESCO/Confederation of Scientific and Technological Associations in Malaysia, およびthe Society for Free Radical Research Asia(マレーシア、ペナンにおいて1994年9月1〜3日に開催 )、AOCS Press: AOCS Press, Champaign, IL X, 374 S)。
【0039】
チアミン(ビタミンB)は、ピリミジンとチアゾール部分の化学的結合により製造される。リボフラビン(ビタミンB)は、グアノシン−5’−三リン酸(GTP)およびリボース−5’−リン酸から合成される。リボフラビンはフラビンモノヌクレオチド(FMN)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の合成に使用される。集合的に「ビタミンB」と呼ばれる化合物のファミリー(例えば、ピリドキシン、ピリドキシアミン、ピリドオキサ−5’−リン酸、および慣用の塩酸ピリドキシン)の全ては、一般的な構造単位である5−ヒドロキシ−6−メチルピリジンの誘導体である。パントテネート(パントテン酸、(R)−(+)−N−(2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−1−オキソブチル)−β−アラニン)は、化学合成または発酵のいずれかにより製造されうる。パントテネート生合成の最終工程は、β−アラニンとパントイン酸のATPにより稼働する縮合である。パントイン酸またはアラニンへの変換、およびパントテン酸への縮合における生合成工程にかかわる酵素は公知である。パントテン酸の代謝活性形は補酵素Aであり、これを得るために、酵素による5工程の生合成が起こる。パントテネート、ピリドキサル−5’−リン酸、システインおよびATPは、補酵素Aの前駆体である。これらの酵素は、パントテネートの生成を触媒するのみではなく、(R)−パントン酸、(R)−パントラクトン、(R)−パンテノール(プロビタミンB)、パンテテイン(およびその誘導体)および補酵素Aも製造する。
【0040】
微生物中の前駆体物分子ピメロイル−CoAからのビオチン生合成は、詳細に研究されており、関与する数種類の遺伝子が認識されている。対応するタンパク質の多くが、Feクラスター合成に関与することわかっており、nifSタンパク質のメンバーである。リポ酸は、オクタン酸から誘導され、エネルギー代謝の補酵素として作用し、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体およびα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の一部を構成している。葉酸塩(folate)は、葉酸から誘導された全ての誘導体から構成される物質であり、葉酸はL−グルタル酸、p−アミノ安息香酸および6−メチルプテリンから誘導される。葉酸およびこの誘導体の生合成は、代謝中間産物であるグアノシン−5’−酸リン酸(GTP)、L−グルタル酸およびp−アミノ安息香酸を出発するものであり、これについては特定の微生物において詳細に研究されている。
【0041】
コリノイド(例えば、コバラミンおよび特にビタミンB12)およびポルフィリンは、テトラピロール環系により特徴づけられた化学物質の種類に属する。ビタミンB12の生合成は、未だ完全に特徴が把握されていない程非常に複雑であるが、これに関連する酵素および物質は公知である。ニコチン酸(ニコチン酸塩)およびニコチンアミドは、「ナイアシン」とも呼ばれるピリジン誘導体である。ナイアシンは、重要な補酵素NAD(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)およびNADP(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド リン酸(ホスフェート))およびその還元形態の前駆物質である。
【0042】
これらの化合物の大量生産は、細胞を含まない化学合成に大きく依存している。しかしながら、これらの化学物質の一部、例えばリボフラビン、ビタミンB、パントテン酸(パントテネート)およびビオチン等は微生物の大規模培養によっても製造される。ビタミンB12だけは、その合成自体が複雑なことから発酵によってのみ製造される。In vitroの方法では、相当な材料と時間が必要であり、費用が嵩む場合も多い。
【0043】
C.プリン、ピリミジン、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの代謝および使用法
プリンおよびピリミジン代謝遺伝子およびこれに対応するタンパク質は、腫瘍による疾病およびウイルス感染の治療法に用いられる重要な標的である。「プリン」または「ピリミジン」という用語には、核酸、補酵素およびヌクレオチドの構成単位である窒素含有塩基が含まれる。「ヌクレオチド」なる用語には、核酸分子の塩基性構造単位が含まれ、窒素含有塩基、五炭糖(RNAの場合の糖はリボースであり、これはDNAの場合の糖はD−デオキシリボースである)およびリン酸から構成される。「ヌクレオシド」という用語は、ヌクレオチドへの前駆体として作用するが、ヌクレオチドが有するリン酸部分を有さない分子である。これらの分子の生合成または核酸分子を形成するための代謝を阻害することにより、RNAおよびDNAの合成を阻害可能となる。例えばガン細胞に対して標的とする方法でこの様な活性を阻害すれば、腫瘍細胞の分裂と複製の能力を阻害する場合がある。更に、核酸分子を形成しないが、エネルギー源(例えば、AMP)または補酵素(例えば、FADおよびNAD)として作用するヌクレオチドが存在する。
【0044】
複数の文献に、プリンおよび/またはピリミジン代謝に影響を与えることにより、これらの医薬用化学物質を使用する方法が記載されている(例えば、Christopherson, R.I.およびLyons, S.D. 著、(1990) “Potent inhibitors of de novo pyrimidine and purine biosynthesis as chemotherapeutic agents.” Med. Res. Reviews 10: 505-548)。プリンおよびピリミジンの代謝に関与する酵素の研究では、例えば免疫抑制剤または抗増殖剤として使用される新薬の開発に焦点が当てられている(Smith, J.L., (1995) “Enzymes in nucleotide synthesis.” Curr. Opin. Struct. Biol. 5: 752-757; (1995) Biochem Soc. Transact. 23: 877-902)。しかしながら、プリンおよびピリミジン塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、数種類のファインケミカルの生合成の中間体として(例えば、チアミン、S−アデノシル−メチオニン、葉酸またはリボフラビン)、または細胞へのエネルギー担体(例えば、ATPまたはGTP)として、そして化学調味料として一般に使用される薬剤そのもの(例えば、IMPまたはGMP)として、または複数の医学的用途に(例えば、Kuninaka, A.著(1996) Nucleotides and Related Compounds in Biotechnology 第6巻, Rehm等編 VCH: Weinheim, p. 561-612を参照されたい)としての用途がある。更に、プリン、ピリミジン、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの代謝に関与する酵素も標的として、これに対する農作物保護用の化学物質、例えば殺菌剤、除草剤および殺虫剤の開発が進んでいる。
【0045】
バクテリアにおけるこれらの化合物の代謝は、顕著な特徴を有する(例えば、 Zalkin, H. およびDixon, J.E.著、 (1992) “de novo purine nucleotide biosynthesis”(Progress in Nucleic Acid Research and Molecular Biology、第42巻、Academic Pressにおける論考、p. 259-287;、Michal, G.著、(1999) “Nucleotides and Nucleosides”, 第8章(Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, Wiley: New Yorkにおける論考)を参照されたい)。プリン代謝は集中的な研究対象であり、細胞の正常な機能にとって重要なものである。高等生物のプリン代謝が悪影響を受けると、痛風などの深刻な疾患が生ずる。プリンのヌクレオチドは、リボース−5−リン酸から、中間体化合物イノシン−5’−リン酸(IMP)から複数工程を経て、グアノシン−5’−一リン酸(GMP)またはアデノシン−5’−一リン酸(AMP)が製造され、これらからヌクレオチドとして使用される三リン酸が容易に生成する。これらの化合物はエネルギー源としても利用されるので、その分解により、細胞中における多種多様な生化学プロセスのエネルギーを生成する。ピリミジン生合成は、リボース−5−リン酸からのウリジン−5’−モノリン酸(UMP)の生成により行われる。このUMPは、次いでシチジン−5’−三リン酸(CTP)に変換される。これら全てのヌクレオチドのデオキシ形態は、ヌクレオチドの二リン酸リボースからヌクレオチドの二リン酸デオキシリボースへの一工程の還元反応により行われる。これらの分子は加リン酸反応においてDNA合成に関与することがある。
【0046】
D.トレハロースの代謝および使用法
トレハロースは、α,α−1,1結合により結合する2個のグルコース分子から構成される。トレハロースは、食品産業において、甘味料、乾燥または冷凍食品用添加剤として、および飲料用に一般に使用される。しかしながら、トレハロースには、医薬品、化粧品およびバイオテクノロジー業界での用途もある(例えばNishimoto等、(1998) 米国特許第5,759,610号明細書; Singer, M.A. およびLindquist, S.著、 (1998) Trends Biotech. 16: 460-467; Paiva, C.L.A. およびPanek, A.D.著、(1996) Biotech. Ann. Rev. 2: 293-314、およびShiosaka, M.著、 (1997) J. Japan 172: 97-102、参照)。トレハロースは、多種微生物から酵素により産生し、周辺の媒体に自然に放出されるものであり、これを公知方法により回収可能である。
【0047】
[II.本発明の要素および方法]
本発明は、本明細書でMP核酸およびタンパク質分子と称される(表1を参照)新規な分子の発見に少なくとも一部分基づいているものであり、この新規な分子は、1種以上の細胞代謝経路において役割を果す、または機能するものである。一実施形態において、MP分子は、1種以上のアミノ酸(例えば、リシンまたはメチオニン)、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路を含む酵素反応を触媒する。好ましい一実施形態において、アミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの1種以上のC.グルタミカム代謝経路における本発明による1種以上のMP分子の活性は、この分子を単独で、あるいは同一でもまたは異なっていても良い代謝経路(例えば、メチオニンまたはリシンの代謝)に含まれる分子と組み合わせると、この生物による所望のファインケミカルの製造に影響を与える。特に好ましい実施形態において、本発明のMP分子により活性を調節して、本発明によるMPタンパク質を含むC.グルタミカム代謝経路を、効率および産出量の点で調節するが、これはC.グルタミカムによる所望のファインケミカルの製造または製造効率を直接または間接的に調節することによって行われる。好ましい実施形態において、ファインケミカルは、アミノ酸、例えばリシンまたはメチオニンである。別の好ましい実施形態において、MP分子は、metZ、metYおよび/またはRXA00657である(表1を参照)。
【0048】
「MPタンパク質」または「MPポリペプチド」という用語には、1種以上のアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはトレハロースの代謝経路において、例えば酵素反応を触媒する役割を果しているタンパク質が含まれる。MPタンパク質の例には、表1に示されているMP遺伝子によりコードされるそうしたものと、奇数番号の配列識別番号(SEQ ID NO)によりコードされているものが含まれる。「MP遺伝子」または「MP核酸配列」という用語には、コード領域とこれに対応する非翻訳5’および3’配列領域から成る、MPタンパク質をコードする核酸配列が含まれる。MP遺伝子の例には、表1に示された遺伝子が含まれる。「製造(生産)」または「生産性」という用語は当該技術者等に従来から認識されているものであり、所定時間および所定の発酵体積(例えば、1L(リットル)、1時間当たりのkgの生成物)内に形成される発酵生成物(例えば、所望のファインケミカル)の濃度が含まれる。「製造効率」という用語には、達成されるべき生産の特定レベルに必要とされる時間が含まれる(例えば、細胞がファインケミカルの生産量の特定速度を得るためにどのくらいの時間がかかるのかということ)。「収率」または「産物/炭素収率」という用語は当該技術者等に従来から認知されているものであり、生成物(すなわち、ファインケミカル)中への炭素源を変換効率が含まれる。これは、一般に、例えば、炭素源kg当りのkgの生成物(kg産物/kg炭素源)と表記される。化合物の収率あるいは製造を向上させると、回収された分子の量、または所定時間量にわたって所定量の培養においてその化合物の有効に回収された分子の量は増加する。「生合成」または「生合成経路」というという用語は当該技術者等に従来から認識されているものであり、多工程で且つ高度に制御された方法で細胞を用いて中間体より得られる化合物、好ましくは有機化合物の合成が含まれる。「分解」あるいは「分解経路」は当該技術者等に従来から認識されているものであり、多工程で且つ高度に制御された方法で細胞を用いて化合物、好ましくは有機化合物を分解生成物に分解することが含まれる(一般的に言えば、より小さくまたは複雑でない分子)。「代謝」という用語は当該技術者等に従来から認識されているものであり、生物で起こる生化学反応全体が含まれる。特定の化合物の代謝(例えば、グリシン等のアミノ酸の代謝)は、この化合物に関連している細胞における生合成、修飾、および分解経路全体を含む。
【0049】
本発明によるMP分子を、本発明による1種以上のMP分子か、あるいは1種以上の同一でもまたは異なっていても良い代謝経路と組み合わせて、所望のファインケミカルの収率を向上させても良い。好ましい実施形態において、ファインケミカルはアミノ酸、例えばリシンまたはメチオニンである。あるいは、または更に、望ましくない副生成物を、MP分子または代謝分子(例えば、リシンまたはメチオニンの代謝に含まれる分子)の組み合わせまたは分解によって低減させても良い。同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の他の分子と組み合わせるMP分子は、そのヌクレオチド配列を変更しても良いし、そしてこれに対応するアミノ酸配列を変更して、緊縮条件下での活性を変更し、所望のファインケミカルの生産性および/または収率を向上させても良い。他の実施形態において、MP分子の最初の形態または上述したMP分子の変更形態を、同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の他の分子(ヌクレオチド配列が変更されている)と組み合わせて、緊縮条件下における活性を、所望のファインケミカル、例えばメチオニン又はリシン等のアミノ酸の生産性および/または収率が向上するように変更する。
【0050】
別の実施形態において、本発明のMP分子は、この分子を単独で、あるいは同一でもまたは異なっていても良い代謝経路の1種以上の分子と組み合わせると、C.グルタミカム等の微生物中で、ファインケミカル等の所望の分子の生産を調節することができる。組換え遺伝子技術を使用して、1種以上の、アミノ酸(リシンまたはメチオニン)、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはトレハロースの本発明による生合成酵素または分解酵素を操作して、その機能が調節されるようにしても良い。例えば、生合成酵素の効率を向上させるか、あるいはそのアロステリック制御領域を破壊して、化合物の製造におけるフィードバック阻害を防いでも良い。同様に、分解酵素を置換、欠失、または付加によって欠失または修飾して、細胞の生存率に害を与えることなく、酵素の分解活性を所望の化合物用に低減しても良い。それぞれの場合で、これら所望のファインケミカルの1つについての全収率または全製造速度を向上させることが可能である。
【0051】
本発明によるタンパク質およびヌクレオチド分子におけるかかる変更により、アミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびトレハロース以外のその他のファインケミカルの製造を改善する場合がある。いずれか1つの化合物の代謝は、他の生合成および細胞内の分解経路と必然的に絡み合い、そして1つの経路で必要な補助因子、中間体、または基質を、別のかかる経路により供給または限定する。したがって、本発明によるタンパク質の1種以上の活性を調節することにより、別のファインケミカル生合成経路または分解経路の活性の生産または効率に影響を与える場合がある。例えば、アミノ酸は、全てのタンパク質の構造単位として機能し、その上、タンパク質合成に関して限定しているレベルで細胞間に存在しうる;したがって、細胞内における1種以上のアミノ酸の生産効率あるいは収率を向上させることにより、生合成タンパク質または分解タンパク質等のタンパク質をさらに容易に合成しうる。同様に、特定の副反応が多かれ少なかれ好適になるように代謝経路酵素における変更により、所望のファインケミカルの生産に中間体または基質として利用される1種以上の化合物を過剰生産または低生産する場合がある。
【0052】
本発明の単離された核酸配列は、ATCC 13032として認識される、American Type Culture Collectionにより市販されているコリネバクテリウム−グルタミカム株のゲノム内に含まれている。単離されたC.グルタミカムMP DNAのヌクレオチド配列が配列表の奇数のSEQ ID NOとして、C.グルタミカムMPタンパク質において予想された(predicted)アミノ酸配列が配列表の偶数のSEQ ID NOとしてそれぞれ示されている。コンピューターにより解析して、これらのヌクレオチド配列を、代謝経路のタンパク質、例えばメチオニンまたはリシンの代謝経路に含まれるタンパク質をコードする配列として分類および/または同定する。
【0053】
本発明は、本発明によるアミノ酸配列に実質的に相同なアミノ酸配列(例えば、配列表中の偶数のSEQ ID NOによる配列)を有するタンパク質に関する。本明細書では、選択されたアミノ酸配列に対して実質的に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質が、選択されたアミノ酸配列、例えば選択されたアミノ酸配列全体に対して少なくとも約50%相同である。選択されたアミノ酸配列に対して実質的に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質は、選択されたアミノ酸配列に対して、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同である。
【0054】
本発明によるMPタンパク質、または生物学的に活性な部分またはそのフラグメントは、これを単独で、あるいは1種以上の同一でもまたは異なっていても良い代謝経路と組み合わせて、1種以上のアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応を触媒可能であり、あるいは表1に記載の1種類以上の活性を有する(例えば、メチオニンまたはリシンの生合成における代謝)。
【0055】
本発明の実施形態の詳細について、以下に更に説明する。
【0056】
A.単離された核酸分子
本発明は、MPポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸分子、並びにMPをコードする核酸(例えば、MP DNA)の認識(同定)または増幅のために用いられるハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用可能な核酸分子フラグメントを含む。本明細書では、「核酸分子」なる用語を、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)およびヌクレオチドの類似体を用いて生成したDNAおよびRNAの類似体を含む意図で使用する。この用語は、遺伝子のコード領域の3’および5’末端双方に存在する未翻訳の配列、すなわち遺伝子のコード領域の5’末端から上流の少なくとも約100ヌクレオチドの配列、および遺伝子のコード領域の3’末端から下流の少なくとも約20ヌクレオチドの配列も含む。核酸分子は1本鎖または2本鎖であるが、2本鎖のDNAであることが好ましい。「単離された」核酸分子は、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。「単離された」核酸分子は、生物のゲノムDNAに由来し、天然にはこのゲノムDNAの核酸の側方に位置する配列(すなわち核酸の5’末端および3’末端に配置された配列)を有さないことが好ましい。例えば、種々の実施の形態において、単離されたMP核酸分子は、天然の状態では、この核酸を誘導する細胞(例えば、C.グルタミカム細胞)のゲノムDNAの側方に位置し、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満の長さのヌクレオチド配列から構成されうる。更に、「単離された」核酸分子、例えばDNA分子は、他の細胞材料、組換え技術により製造された場合に用いられた培地を実質上含まず、または化学的に合成された場合も化学的前駆体や他の化学物質を実質上含まない。
【0057】
本発明の核酸分子、例えば配列表の奇数のSEQ ID NOのヌクレオチド配列を有する核酸分子またはその一部は、標準的な分子生物学による技術により単離され、配列情報は本明細書に記載する。例えば、C.グルタミカムMP DNAは、ハイブリダイゼーションプローブおよび標準的なハイブリダイゼーション技術として、配列表の奇数のSEQ ID NO配列のいずれかの全体または一部を用い、C.グルタミカムライブラリから単離可能である(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E.F., and Maniatis, T. 共著、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に開示されている)。更に、本発明の核酸配列によるいずれか(例えば奇数のSEQ ID NO)の、全体または一部を含む核酸分子を、この配列に基づき設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により単離可能である(例えば、本発明による核酸配列のいずれか(例えば、配列表の奇数のSEQ ID NO)の、全体または一部を含む核酸分子は、同様の配列に基づき設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により単離可能である)。例えば、mRNAは、通常の内皮細胞から単離され(例えば、Chirgwin等著、 (1979) Biochemistry 18: 5294-5299に記載のグアニジニウム−チオシアン酸抽出操作による)、そしてDNAは、逆転写酵素を用いて製造される(例えば、Gibco/BRL、Bethesda, MD製、Moloney MLV 逆転写酵素、または Seikagaku America, Inc., St. Petersburg, FL製AMV逆転写酵素)。ポリメラーゼ連鎖反応による増幅に用いられる合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列表に記載のいずれかのヌクレオチド配列に基づき設計されうる。本発明の核酸は、テンプレートとしてのcDNAまたはゲノムDNAと、標準的なPCR増幅技術において適当とされるオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて増幅される。このように増幅された核酸は、適当なベクターにクローンされ、そしてDNA配列分析により特徴付けが行われる。更に、MP核酸配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的合成技術により、例えば自動DNA合成機器を用いて製造される。
【0058】
好ましい実施の形態において、本発明の単離された核酸分子は、配列表に記載されたヌクレオチド配列のいずれかを含む。配列表に記載された本発明の核酸配列は、本発明のコリネバクテリウム−グルタミカムMP DNAに相当する。このDNAには、MPタンパク質をコードする配列(すなわち配列表における奇数のSEQ ID NOの配列に示されている「コード領域」)、並びに配列表の奇数のSEQ ID NOの配列に示されている5’未翻訳配列および3’未翻訳配列を含む。あるいは、この核酸分子は、配列表の核酸配列のいずれかのコード領域のみを含むものであってもよい。
【0059】
本願の目的のために、配列表に記載されたMP核酸およびアミノ酸配列の一部には、「RXA」、「RXN」、「RXS」または「RXC」の表示と、その後の5桁の数値とを含む識別用のRXA、RXN、RXSまたはRXC番号が付けられている(例えば、RXA、RXN、RXS、またはRXC)。各核酸配列は、3個までの部分、すなわち5’上流領域、コード領域、下流領域を含む。これらの3領域は、混乱を防ぐため、それぞれ共通の(同一の)RXA、RXN、RXS、またはRXC表示により識別される。「配列表における奇数の配列のいずれか」という表現は、異なるRXA、RXN、RXS、またはRXC表示により認識可能な、配列表中の核酸配列のいずれかであることを示している。各配列のコード領域は、配列表に偶数のSEQ ID NOとして、すなわち対応する核酸配列のすぐ下に記載されている対応のアミノ酸配列に翻訳される。例えば、RXA00115のコード領域はSEQ ID NO: 69に示され、これがコードするアミノ酸配列はSEQ ID NO: 70に記載されている。本発明による核酸分子配列は、これらがコードするアミノ酸分子と同じRXA、RXN、RXS、またはRXCの表示により識別されて、相関性が容易に読みとれる。例えば、RXA00115と表示したアミノ酸配列は、核酸分子RXA00115のヌクレオチド配列のコード領域を翻訳したものであり、RXN00403と表示したアミノ酸配列は、RXN00403のヌクレオチド配列におけるコード領域を翻訳したものであり、およびRXS03158と表示したアミノ酸配列は、RXS03158のヌクレオチド配列におけるコード領域を翻訳して得られたものである。本発明のRXA、RXN、RXS、およびRXCによるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列と、これらの割り当てられたSEQ ID NOとの対応関係は、表1に示されている。
【0060】
本発明における数種類の遺伝子は、「F表示(指示)遺伝子(F-designated genes)」である。F表示遺伝子は、RXA、RXN、RXS、またはRXCの表示の前に「F」を有し、表1に記載の遺伝子を含む。例えば、表1に記載されているようにSEQ ID NO: 77 は、「F RXA00254」というF表示遺伝子である。表1には、metZ(またはmetY)およびmetC遺伝子(それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:3と示されている)についても列挙されている。metZおよびmetC遺伝子によりコードされる対応のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4と示されている。
【0061】
一実施の形態において、本発明の核酸分子は、表2に記載されたものは含まなくてもよい。
【0062】
他の好ましい実施の形態において、本発明の単離された核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列のいずれか(例えば、配列表の奇数のSEQ ID NOの配列)に相補性を有する核酸分子、またはその一部を含む。本発明のヌクレオチド配列のいずれかに相補性のある核酸分子は、配列表に示されたヌクレオチド配列のいずれか(例えば、奇数のSEQ ID NOの配列)に対し十分な相補性を有し、これにハイブリダイズし、安定な二本鎖を形成する。
【0063】
更に他の実施の形態において、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上、本発明のヌクレオチド配列(配列表の奇数のSEQ ID NOの配列)またはその一部に相同である。上記各値の中間値により示される値の範囲(例えば、70%〜90%同一または80〜95%同一)も本発明に含まれる。例えば、上限値および/または下限値として記載された上述の値のいずれを組み合わせて値の範囲としてもよい。更に他の好ましい実施の形態において、本発明の単離された核酸分子が、ハイブリダイズする、例えば緊縮条件下で、本発明のヌクレオチド配列またはその一部のいずれかとハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を含む。
【0064】
更に、本発明の核酸分子は、配列表の奇数のSEQ ID NOのいずれかの配列におけるコード領域の一部のみ、例えばプローブもしくはプライマーとして使用可能なフラグメント、またはMPタンパク質の生物学的に活性な部分をコードするフラグメントのみから成ってもよい。C.グルタミカム由来のMP遺伝子のクローニングにより決定されたヌクレオチド配列により、他種の細胞および生物に相同なMP並びに他のコリネバクテリアまたは関連種由来のMP類似体を認識および/またはクローニングで使用するために設計されたプローブまたはプライマーの生成が行われる。プローブ/プライマーは、通常、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。このオリゴヌクレオチドは、一般に、緊縮条件下で少なくとも約12、好ましくは約25、更に好ましくは40、50または75の連続した、本発明によるヌクレオチド配列のいずれか(例えば、配列表の奇数のSEQ ID NOのいずれかの配列)におけるセンス鎖ヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列領域、この配列のいずれかにおけるアンチセンス配列、または天然に発生するこれらの変異体を含む。本発明のヌクレオチド配列に基づくプライマーをPCR反応に使用して、MP相同体のクローンを可能となる。MPヌクレオチド配列に基づくプローブを使用して、転写により得られた配列(転写物)、または同配列または相同なタンパク質をコードするゲノム配列を検出する。好ましい実施の形態において、更にプローブは、これに付されたラベルグループを有している。このラジオグループの例は、放射性同位体、紫外線化合物、酵素、酵素補助因子である。かかるプローブは、例えば細胞サンプル中のMPコード核酸のレベルを、例えばMPmRNAレベルの検出またはゲノムMP遺伝子の変異または欠失を確認して測定することにより、MPタンパク質の誤発現を行う細胞を認識するための医療(診断)用テストキットの一部として使用される。
【0065】
一実施の形態において、本発明の核酸分子は、本発明のアミノ酸配列(例えば配列表の偶数のSEQ ID NOの配列)に、タンパク質またはその一部(タンパク質部分)がアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応を触媒する能力を維持するために十分な程度に相同なアミノ酸配列を含むタンパク質またはタンパク質部分をコードする。本明細書における「十分に相同」という表現は、本発明のアミノ酸配列と同一または等価(例えば、配列表の偶数のSEQ ID NOのいずれかの配列におけるアミノ酸残基と類似する側鎖を有するアミノ残基)である最小数のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有するタンパク質またはその一部分を意味して、このタンパク質またはその一部分がC.グルタミカムのアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒可能となる。この様な代謝経路のタンパク質メンバーは、本明細書に記載のとおり、1種類以上のアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの生合成または分解を触媒するための機能を有する。従って、「MPタンパク質の機能」は、1種以上の代謝経路の機能全体に関与し、そして1種以上のファインケミカルの収率、製造および/または製造効率に直接的または間接的に関与するものである。MPタンパク質活性の例を表1に記載する。
【0066】
他の実施の形態において、タンパク質は、本発明のアミノ酸の配列全体(例えば配列表の偶数のSEQ ID NOによる配列)に対して、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同である。
【0067】
本発明のMP核酸分子によりコードされたタンパク質部分は、MPタンパク質のいずれかにおける生物学的に活性な部分であることが好ましい。本明細書中、「MPタンパク質の生物学的に活性な部分」という表現は、1種類以上のC.グルタミカムのアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒するか、あるいは表1に記載の活性を有する部分、例えばMPタンパク質のドメイン/モチーフを含むものである。MPタンパク質またはその生物学的に活性な部分がアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロース代謝経路における酵素反応を触媒可能であるかどうかを判断するために、酵素活性の評価を行う。この様な評価方法は当該技術者等に公知であり、その具体例は実施例8に詳細に記載されている。
【0068】
MPタンパク質の生物学的に活性な部分をコードしている他の核酸フラグメントは、本発明のアミノ酸配列(例えば配列表の偶数のSEQ ID NO)のいずれかの一部を単離することにより製造され、MPタンパク質またはペプチドのコードされた部分を発現し(例えばin vitroでの組換え発現による)、MPタンパク質またはペプチドのコードされた部分の活性を評価する。
【0069】
更に本発明は、遺伝子コードの縮重により本発明のヌクレオチド配列(例えば配列表の奇数のSEQ ID NOの配列)(およびその一部)とは異なる配列を有し、本発明のヌクレオチド配列によりコードされていると同じMPタンパク質をコードしている核酸分子を含む。他の実施の形態において、本発明の単離された核酸分子が配列表に記載のアミノ酸配列(例えば偶数のSEQ ID NO)を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有していると好ましい。更に他の実施の形態において、本発明の単離された核酸分子は、本発明のアミノ酸配列に対して実質的に相同なC.グルタミカムタンパク質の全体をコードする(配列表中の奇数のSEQ ID NOに示されたオープン・リーディング・フレームによりコードされている)。
【0070】
一実施の形態において、本発明の配列は、本発明より以前に得られた表2に記載のGenbank配列等の従来技術による配列を含まないことは当該技術者等には明白である。一実施の形態において、本発明は、従来技術による配列(例えば、表2に記載のGenbank配列(またはかかる配列によりコードされるタンパク質))と比較して、本発明のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に同一な部分の割合が大きいヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を含む。例えば、本発明は、RXA00657という表示によるヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5)に45%以上同一なヌクレオチド配列を含む。当該技術者等により、本発明の所定の配列に対する同一性の割合の下限は、この所定配列についてヒットした表4に記載の上位3つに関してGAPにより計算された同一性割合のスコアを検討し、そしてGAPにより計算された最高の同一性割合の値(%)を100%から差し引くことにより、計算可能となった。このように計算された下限値よりも高い同一性割合を有する核酸およびアミノ酸配列(例えば、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上同一)が、本発明に含まれることは、当該技術者等には明白に理解される。
【0071】
奇数のSEQ ID NOとして配列表に記載されているC.グルタミカムMP核酸配列の他に、個体群(例えば、C.グルタミカム個体群)中にMPタンパク質のアミノ酸配列の変化を起こすDNA配列多形性(polymorphism)が存在し得ることも当該技術者等には理解される。MP遺伝子におけるこの様な遺伝的多形性は、天然の変異に起因して個体群の個体に存在することもある。本明細書で用いられる「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、MPタンパク質、好ましくはC.グルタミカムMPタンパク質をコードするオープン・リーディング・フレームを含む核酸分子を意味する。かかる天然の変異により、MP遺伝子のヌクレオチド配列において、通常は1〜5%変動する。MPにおける、上述のような、または他の全てのヌクレオチドの変動(変異)およびこれにより得られるアミノ酸の多形性は、天然の変異の結果であり、MPタンパク質の機能的活性を変化させるものではなく、本発明に含まれるものである。
【0072】
本発明のC.グルタミカムMP DNAの天然変異体および非−C.グルタミカム相同体に対応する核酸分子は、C.グルタミカム、またはこれらの一部に関して上述したC.グルタミカムMP核酸に対する相同性に基づいて、緊縮ハイブリダイゼーション条件下の標準的ハイブリダイゼーション技術によりハイブリダイゼーションプローブとして単離される。従って、他の実施の形態において、本発明の単離された核酸分子は、15以上の長さのヌクレオチドから成り、配列表の奇数のSEQ ID NOのヌクレオチド配列を含む核酸分子に対し、緊縮条件下でハイブリダイズする。他の実施の形態において、核酸分子は、少なくとも30、50、100、または250以上の長さのヌクレオチドを有する。本明細書で使用される「緊縮条件下でハイブリダイズする」なる用語は、相互に60%以上相同なヌクレオチド配列が相互にハイブリッドした状態を保つ、ハイブリダイゼーションとウォッシングの条件を示す目的で使用する。この条件は、少なくとも約65%、更に好ましくは少なくとも約70%、および更に好ましくは少なくとも約75%以上相互に相同な配列が相互にハイブリッドした状態を保つ条件であることが好ましい。かかる緊縮条件は当該技術者等に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6.に記載されている。
【0073】
緊縮ハイブリダイゼーション条件の好ましい例(これに限定されない)は、6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)にて約45℃でハイブリダイズした後、0.2 X SSC、0.1% SDS で、50〜65℃にて1回以上洗浄したことによるハイブリダイゼーションである。緊縮条件下で本発明のヌクレオチド配列にハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然に発生する核酸分子に対応していることが好ましい。本明細書で、「天然に発生する」核酸分子とは、天然に起こるヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子(例えば、天然のタンパク質をコードしている)を意味する。一実施の形態において、核酸は、天然のC.グルタミカムMPタンパク質をコードするものである。
【0074】
個体群中に存在する可能性のあるMP配列の天然に発生する変異体の他に、本発明のヌクレオチド配列に変異による変化が生じ、これからコードされたMPタンパク質のアミノ酸配列に変化が生じ、その際MPタンパク質の機能上の能力には変化が起こらないことも、当該技術者等には理解される。例えば、「非必須」アミノ酸残基におけるアミノ酸の置換を引き起こすヌクレオチドの置換は、本発明のヌクレオチド配列中で起こり得る。「非必須」アミノ酸残基は、MPタンパク質のいずれかの野生型配列(例えば、配列表の偶数のSEQ ID NO)から変化が生じうる残基であり、その際このMPタンパク質の活性には変化のないものである。一方、「必須」アミノ酸残基は、MPタンパク質活性に必要なアミノ酸残基である。しかしながら、他のアミノ酸残基(例えば、MP活性を有するドメインで保存されていないか、または半保存状態であるアミノ酸)は活性に必須でないこともあるため、MP活性に変化のない状態で変化を受けやすい。
【0075】
従って、更に本発明は、MP活性に必須ではないアミノ酸残基中に変化を含むMPタンパク質をコードする核酸分子に関する。かかるMPタンパク質のアミノ酸配列は、配列表の偶数のSEQ ID NOの配列とは異なるが、本明細書中に記載した1種類以上のMP活性を含むものである。一実施の形態において、単離された核酸分子は、本発明のアミノ酸配列に少なくとも約50%相同なアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応を触媒可能であるか、あるいは表1に記載の1種類以上の活性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。核酸分子にコードされるタンパク質は、本発明によるいずれかのアミノ酸配列に対して、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同であることが好ましい。
【0076】
2種類のアミノ酸配列(例えば、本発明のアミノ酸配列のいずれかと、この変異形)または2種類の核酸の相同な割合を測定するため、最適な比較が可能なように配列が決定される(例えば、一方のタンパク質または核酸の配列と他方のタンパク質または核酸との最適な位置(アライメント)を得るためにギャップを設けることができる)。アミノ酸残基またはヌクレオチドとの、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置同士を比較する。一方の配列の位置(例えば、本発明のアミノ酸配列の一つ)に、他方の配列(例えば、アミノ酸配列の変異形)の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドが存在する場合、この位置で分子は相同である(すなわち、本発明で使用されるアミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と等価である)。2つの配列間の相同性割合は、これらの配列間に占める同一な位置の数に対する関数である(すなわち、相同性(%)=同一位置の数/位置の総数×100)。
【0077】
本発明のタンパク質配列(例えば、配列表の偶数のSEQ ID NOの配列)に相同なMPタンパク質をコードしている単離された核酸分子は、本発明のヌクレオチド配列へ1個以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失によって起こり、これによりコードされたタンパク質に1個以上のアミノ酸の置換、付加、欠失が生ずることにより生成する。標準的技術、例えば特定部位の突然変異誘発およびPCR仲介突然変異等により、本発明のいずれかのヌクレオチド配列の変異が生ずる。保存的アミノ酸置換が、1種類以上の予測された非必須アミノ酸残基上で起こるのが好ましい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されることを意味する。類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香性側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。従って、MPタンパク質中の予測された非必須アミノ酸が、同じ側鎖ファミリーに属する他のアミノ酸残基により代替されることが好ましい。あるいは、他の好ましい実施の形態において、MPコード配列の全てまたは一部に対して、飽和変異生成(saturation mutagenesis)等によりランダムに変異が生じ、これにより得られた変異体の上記MP活性をスクリーニングし、変異体がMP活性を保持していることを確認する。配列表の奇数のSEQ ID NOのいずれかのヌクレオチド配列の変異生成により、これによりコードされたタンパク質は組換えによる発現を行うため、このタンパク質の活性を、例えば本明細書に記載の(具体例として実施例8を参照)評価法により評価する。
【0078】
上述のMPタンパク質をコードする核酸分子の他に、本発明は、これに対してアンチセンスな、単離された核酸分子に関する。「アンチセンス」な核酸とは、所定のタンパク質をコードする「センス」核酸に相補性を有するヌクレオチド配列、例えば2本鎖DNA分子のコードストランドまたはmRNA配列に対する相補性を有するヌクレオチド配列を意味する。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は全MPコードストランドに対して相補性を有することも、その一部にのみ相補性を有することも可能である。一実施の形態において、アンチセンスヌクレオチド分子は、MPタンパク質をコードするヌクレオチド配列のコードストランドの「コード領域」にアンチセンスである。「コード領域」とは、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を意味する(例えば、SEQ ID NO.: 1(metZ)のコード領域全体は、ヌクレオチド363〜1673を含む)。他の実施の形態において、アンチセンス核酸分子はMPをコードするヌクレオチド配列のコード鎖(コードストランド)の「非コード領域」にアンチセンスである。「非コード領域」とは、アミノ酸に翻訳されない、コード領域の側方に存在する5’および3’配列を意味する(すなわち、5’および3’未翻訳領域とも称される)。
【0079】
本発明に開示されたMPをコードする所定のコード鎖配列(例えば、配列表の奇数のSEQ ID NOに示された配列)として、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソンとクリックによる塩基対のルールにより設計することができる。アンチセンス核酸分子は、MPmRNAの全コード領域に相補性を有してもよいが、MPmRNAのコード領域または非コード領域の一部のみにアンチセンスなオリゴヌクレオチドでると好ましい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、MPmRNAの翻訳開始サイト(部位)を取り巻く領域に相補性を有することも可能である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長とされうる。本発明のアンチセンス核酸は、当該分野で公知の手法により化学合成および酵素的結合反応により構成される。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に発生するヌクレオチドを用いて化学的に合成可能であり、あるいは分子の生物学的安定性を向上させるため、もしくはアンチセンスとセンス核酸、例えばホスホロチオエート誘導体とアクリジン置換ヌクレオチドとの間で形成する2本鎖の物理的安定性を向上させるために設計された種々の修飾を有するヌクレオチドを使用可能である。アンチセンス核酸の生成に使用されうる修飾されたヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキノシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キノシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンである。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸を発現ベクターにアンチセンス方向にサブクローニングしたものを用いて生物学的に製造可能でもある(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的の核酸に対してアンチセンスな方向に配置される。これについては以下に更に詳細に説明する。)。
【0080】
本発明のアンチセンス核酸分子は、MPタンパク質をコードする細胞のmRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズまたは結合するように、一般的には細胞に投入されるか、または現場で生成され、転写および/または翻訳を阻害する等によりタンパク質の発現が阻害される。このハイブリダイゼーションは、安定な2本鎖を形成する本来のヌクレオチドの相補性により行うことができるが、DNA2本鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合等には、二重らせんに結合する主溝での特異的相互作用により行うことも可能である。アンチセンス分子は、所定の細胞表面の受容体または同細胞表面で発現する抗原に特異的に結合するように、例えば細胞表面上の受容体または抗原と結合するペプチドまたは抗体にアンチセンス核酸分子を結合するなどして修飾されうる。アンチセンス核酸分子を、本発明に開示されているベクターを用いて細胞に導入することも可能である。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を得るために、原核細胞、ウイルス性または真核細胞のプロモータの強力な制御下に、アンチセンス核酸分子が配置されたベクター構成体が好ましく用いられる。
【0081】
他の実施の形態において、本発明のアンチセンス核酸分子として、α−アノマー核酸分子が用いられる。α−アノマー核酸分子は、相補性RNAと特異的な2本鎖ハイブリッドを形成し、この場合、通常のβユニットと異なり、各ストランドが互いに平行に伸長する(Gaultier等著、(1987) Nucleic Acids. Res. 15: 6625-6641)。アンチセンス核酸分子は、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue等著、(1987) Nucleic Acids Res. 15: 6131-6148)、またはキメラRNA-DNA類似体(Inoue等著、(1987) FEBS Lett. 215: 327-330)を含んでもよい。
【0082】
他の実施の形態において、本発明のアンチセンス核酸がリボザイムであってもよい。リボザイムは触媒活性を有するRNA分子であり、相補性領域を有する1本鎖核酸、例えばmRNAを切断可能なリボヌクレアーゼ活性を有する。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッドリボザイム(HaselhoffおよびGerlach著、 (1988) Nature 334: 585-591に記載))を用いて、MPmRNAの転写体を触媒的に切断し、MPmRNAの翻訳を阻害することができる。MPコード核酸に対する特異性を有するリボザイムは、本明細書に記載のMPDNA(例えばSEQ ID NO: 1 (metZ))のヌクレオチド配列に基づき設計可能である。例えば、テトラヒメナL-19 IVS RNAの誘導体は、活性部位のヌクレオチド配列がMPコードmRNAにおいて切断可能なヌクレオチド配列に対して相補性を有する構成とされうる。これについては、例えばCech等、米国特許第4,987,071号、およびCech等、米国特許第5,116,742号の各明細書を参照されたい。あるいは、MPmRNAを用いて、RNA分子のプールより特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒活性RNAを選択することもできる。これについては、Bartel, D.およびSzostak, J.W. 共著 (1993) Science 261: 1411-1418を参照されたい。
【0083】
あるいは、MPヌクレオチド配列の調節領域(例えば、MPプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補性を有するヌクレオチド配列を標的とすることによりMP遺伝子の発現を阻害して、標的細胞中におけるMP遺伝子の転写を防ぐ三重らせん構造を形成可能となる。これについては、Helene, C. (1991) Anticancer Drug Des. 6(6): 569-84; Helene, C. 等著、(1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660: 27-36、およびMaher, L.J.等著 (1992) Bioassays 14(12): 807-15を参照されたい。
【0084】
更に本発明は、メチオニンおよび/またはリシンの代謝に関与する遺伝子の組み合わせ、そして本発明の方法においてメチオニンおよび/またはリシンの代謝に関与する遺伝子の組み合わせの使用法に関する。組み合わせとしては、metZと、metC、metB(シスタチオニンシンターゼをコードする)、metA(ホモセリン−O−アセチルトランスフェラーゼをコードする)、metE(メチオニンシンターゼをコードする)、metH(メチオニンシンターゼをコードする)、hom(ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする)、asd(アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする)、lysC/ask(アスパラトキナーゼをコードする)およびrxa00657(本明細書で、SEQ ID NO.:5と示されている)、dapA(ジヒドロジピコリン酸シンターゼをコードする遺伝子)、dapC(2,3,4,5−テトラヒドロピリジン−2−カルボン酸N−スクシニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子)、dapD/argD(アセチルオルニチントランスアミナーゼをコードする遺伝子)、dapE(スクシニルジアミノピメリン酸デスクシニラーゼをコードする遺伝子)、dapF(ジアミノピメリン酸エピメラーゼをコードする遺伝子)、lysA(ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子)、ddh(ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子)、lysE(リシンエクスポーター(lysine exporter)についてコードする遺伝子)、lysG(エクスポーター調節剤についてコードする遺伝子)、hsk(ホモセリンキナーゼをコードする遺伝子)、並びに補充反応に関与する遺伝子、例えばppc(ホスホエノンピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子)、ppcK(ホスホエノンピルピン酸カルボキシキナーゼをコードする遺伝子)、pycA(ピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子)、aacD、accA、accB、accC(アセチル−CoA−カルボキシラーゼのサブユニットについてコードする遺伝子)、並びにペントース−リン酸経路の遺伝子、グルコース−6−リン酸−デヒドロゲナーゼをコードするgpdh遺伝子、opcA、pgdh(6−ホスホグルコネート−デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子)、ta(トランスアルドラーゼをコードする遺伝子)、tk(トランスケトラーゼをコードする遺伝子をコードする遺伝子)、pgl(6−ホスホグルコノラクトナーゼをコードする遺伝子)、rlpe(リブロースリン酸3−エピメラーゼをコードする遺伝子)、rpe(リブロース5−リン酸エピメラーゼをコードする遺伝子)との組み合わせか、またはペントースリン酸経路に関して上述した遺伝子の組み合わせか、または本発明による他のMP遺伝子との組み合わせが好ましい。
【0085】
この遺伝子のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列を変化させて(変更して)誘導体を形成し、これにより生理学上の条件下でその活性を変化させて、所望のファインケミカル、例えばアミノ酸(例えば、メチオニンまたはリシン)の生産性および/または収率を向上させても良い。かかる変化または誘導体の種類の1つとして、アスパラトキナーゼをコードするask遺伝子のヌクレオチド配列が周知である。この変化により、アミノ酸のリシンおよびメチオニンによるフィードバック阻害を除去し、その後のリシンの過剰生産をもたらす。好ましい実施の形態において、metZ遺伝子またはこの変更形をコリネバクテリウム株において、ask、hom、metAおよびmetHまたはこれらの遺伝子の誘導体と組み合わせて使用する。別の好ましい実施形態において、metZ遺伝子またはこの変更形をコリネバクテリウム株において、ask、hom、metAおよびmetEまたはこれらの遺伝子の誘導体と組み合わせて使用する。更に好ましい実施形態において、metZ組み合わせ遺伝子またはmetZ遺伝子の変更形を、ask、hom、metAおよびmetHまたはこれらの遺伝子の誘導体と組み合わせるか、あるいはmetZをask、hom、metAおよびmetEまたはこれらの遺伝子の誘導体とコリネバクテリウム株において組み合わせ、そして硫黄源、例えばスルフェート、チオスルフェート、スルフィト、更に還元硫黄源、例えばHSおよびスルフィド並びに誘導体を成育培地で使用する。更に、硫黄源、例えばメチルメルカプタン、メタンスルホン酸、チオグリコレート、チオシアネート、チオ尿素、アミノ酸(例えば、システイン)含有硫黄および他の硫黄含有化合物を使用可能である。更に本発明は、コリネバクテリウム株における上述した遺伝子組み合わせの使用法に関し、遺伝子導入前または導入後、当該技術者等に周知の放射線または突然変異化学によって突然変異を起こさせ、そして高濃度である所望のファインケミカル、例えばリシンまたはメチオニン、または所望のファインケミカルの類似物、例えばメチオニン類似エチオニン、メチルメチオニン、またはその他のものに対する耐性について選択する。別の実施形態において、上述した遺伝子組み合わせは、特定の遺伝子破壊を含むコリネバクテリウム株において発現可能である。所望の代謝物への炭素フラックスに適当であるタンパク質をコードする遺伝子破壊が好ましい。メチオニンが所望のファインケミカルである場合、リシンの形成が望ましくない場合がある。かかる場合、上述した遺伝子の組み合わせが、lysA遺伝子(ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼをコードする)またはddh遺伝子(テトラヒドロピコリネートのメソジアミノピメリン酸への変換を触媒するメソ−ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼをコードする)についての遺伝子破壊を含むコリネバクテリウム株において発生しなければならない。好ましい実施の形態において、上述した遺伝子の好ましい組み合わせを完全に変更して、この遺伝子生成物について、所望のファインケミカルの形成する生合成経路の最終生成物または代謝物によってフィードバック阻害を起こさせないようにする。所望のファインケミカルがメチオニンである場合、遺伝子の組み合わせを突然変異誘発性薬剤もしくは放射線で予め処理した株(菌株)において発現させ、そして上述した耐性に関して選択する。更に、株を、1種以上の上述した硫黄源を含む成育培地で成育する必要がある。
【0086】
本発明の別の実施形態において、遺伝子は、仮説転写調節タンパク質についてコードする遺伝子とて、コリネバクテリウム−グルタミカムのゲノム由来と同一であった。この遺伝子はRXA00657と示されている。RXA00657のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5に対応する。RXA00657のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に対応する。RXA00657遺伝子、並びに実施例に開示されている上流および下流調節領域をコリネバクテリウム−グルタミカムで折り曲げ可能なベクターにクローンし、そしてATCC13286等のリシン生成株に変換および発現し、この株により、上述したヌクレオチドフラグメント(断片)RXA00657を有さない同一のプラスミドで変換した株と比較して、更にリシンを製造する。リシンの滴定濃度を上述した株で増大させた観察結果の他に、これにより製造されたリシンのモル量で測定した選択率が、消費したスクロースのモル量と比較して、増大していた(実施例14、参照)。lysC、dapA、dapB、dapC、dapD、dapF、ddh、lysE、lysG、およびlysR等のリシンの特定経路に直接的または間接的に関与する、他の遺伝子の過発現(overexpression)と組み合わせるRXA00657の過発現により、RXA00657単独である場合と比較して、リシンの生産量が増大する。
【0087】
B.組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明は、MPタンパク質(またはその一部)をコードする核酸、あるいは少なくとも1種の遺伝子がMPタンパク質についてコードする遺伝子の組み合わせを含むベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で用いられる「ベクター」という用語は核酸分子を意味し、この核酸分子が結合している他の核酸を運搬する能力のある分子を意味する。ベクターの一例には、「プラスミド」があるが、これは、他のDNA部分を結紮可能な環状の2本鎖DNAループである。ベクターの他の例はウイルスベクターであり、このウイルスゲノムに他のDNAセグメントを結紮可能である。所定のベクターを宿主細胞に導入すると、この宿主細胞において自律的な複製が可能とされる(例えば、複製によるバクテリア由来のバクテリアベクターおよびエピソーム上の哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、エピソーム以外の哺乳類ベクター)を、宿主細胞に導入することにより宿主細胞のゲノムに組み込み、そして宿主ゲノムと共に複製する。更に、ある種のベクターは、これが協同的に結合している遺伝子の発現を支配可能である。かかるベクターを、本明細書では「発現ベクター」という。一般に、DNA組換え技術において使用される発現ベクターは、プラスミドの形態をとることが多い。本明細書においては、「プラスミド」と「ベクター」は相互変換可能に用いられるが、これは、プラスミドがベクターの最も頻繁に使用される形態だからである。しかしながら、本発明は、同様の機能を有する他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む。
【0088】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適する形態で本発明による核酸を含む。この組換え発現ベクターは、発現に使用される宿主細胞を基準に選択された1種類以上の調節配列を含み、発現すべき核酸配列に協同的に結合されている。組換え発現ベクターにおいて、「協同的に結合された」とは、ヌクレオチド配列の発現が可能なように調節配列に(例えば、in vitro転写/翻訳系で、または宿主細胞にベクターが導入される場合は宿主細胞中で)結合されていることを意味する。この「調節配列」という用語は、プロモーター、理プレッサー結合部位、活性化因子結合部位、エンハンサー、および他の発現調節要素(例えば、ターミネーター、ポリアデニル化シグナル、またはmRNA二次構造のその他の要素)を含む意図で使用する。この様な調節配列については、例えばGoeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。調節配列は、多くの種類の宿主細胞中におけるヌクレオチド配列の構成発現を支配するものと、所定の宿主細胞中においてのみのヌクレオチド配列の発現を支配するものとを含む。好ましい調節配列は、例えばcos-, tac-, trp-, tet-, trp-tet-, lpp-, lac-, lpp-lac-, lacIq, T7-, T5-, T3-, gal-, trc-, ara-, SP6-, arny, SPO2, λ-PR- または λ-PL等のプロモーターであり、これらはバクテリアにおいて好ましく使用される。他の調節配列の例は、ADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH等の酵母および菌類由来のプロモーター、CaMV/35S、SSU、OCS、lib4、usp, STLS1, B33等の植物由来のプロモーター、nosまたはユビキチン−もしくはファセオリン−プロモーターである。人工のプロモーターを使用することも可能である。発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択等の要因、所望のタンパク質の発現程度等により変化することは、当該技術者等に理解されることである。本発明の発現ベクターは宿主細胞に導入可能であり、これにより、本発明に開示された核酸によりコードされた融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチド(例えば、MPタンパク質、MPタンパク質の変異形、融合タンパク質等)が製造される。
【0089】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物または真核生物の各細胞におけるMPタンパク質の発現を行うために設計されうる。例えば、MP遺伝子は、C.グルタミカム等のバクテリア細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクター使用による)、酵母および他の菌類の細胞(Romanos, M.A. 等著、(1992) “Foreign gene expression in yeast: a review”, Yeast 8: 423-488; van den Hondel、 C.A.M.J.J. 等著、(1991) “Heterologous gene expression in filamentous fungi” (More Gene Manipulations in Fungiにおける論考、J.W. Bennet & L.L. Lasure編、p. 396-428: Academic Press: San Diego, およびvan den Hondel, C.A.M.J.J. & Punt, P.J. (1991) “Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi(Applied Molecular Genetics of Fungiにおける論考)Peberdy J.F. 等編、p. 1-28, Cambridge University Press: Cambridge、参照)、藻類および多細胞植物の細胞(Schmidt, R. 、Willmitzer, L.共著 (1988) High efficiency Agrobacterium tumefaciens mediated transformation of Arabidopsis thaliana leaf and cotyledon explants” Plant Cell ReP.: 583-586、参照)、または哺乳類細胞において発現可能である。適当な宿主細胞については、Goeddel, Gene Expression Technology: Method in Enzymology185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に詳細な説明がある。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモータ調節配列およびT7ポリメラーゼ等を用いることにより、in vitroで転写および翻訳することもできる。
【0090】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を支配する構成性または誘導性プロモーターを含むベクターにより行われるのが最も一般的である。融合ベクターは、ここでコードされるタンパク質に対して、通常は組換えタンパク質のアミノ末端はかりでなくC末端に多数のアミノ酸を付加するか、またはタンパク質の適当な領域内で融合する。かかる結合ベクターは、一般に3つの役割を果たす。すなわち、1)組換えタンパク質の発現を増大させる、2)組換えタンパク質の溶解性を向上させる、および3)親和精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製を補助する。融合発現ベクターにおいて、融合部分と組換えタンパク質の結合部分にタンパク質分解切断部位を導入して、融合タンパク質の精製を行うことにより融合部分を組換え部分から分離することを可能とすることも頻繁に行われている。かかる酵素およびそのコグネイト認識配列の例には、Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼがある。
【0091】
典型的な融合発現ベクターの例は、pGEX (Pharmacia Biotech Inc; Smith, D.B.、Johnson, K.S.共著、(1988) Gene 67: 31-40)、pMAL (New England Biolabs, Beverly, MA) およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)であり、それぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはタンパク質Aを目的の組換えタンパク質に融合させる。一実施の形態において、MPタンパク質のコード配列はpGEX発現ベクターにクローンされて、N末端からC末端に向かって、GST−トロンビン切断部位−Xタンパク質を順に含む、融合タンパク質をコードするベクターが製造される。融合タンパク質は、グルタチオン−アガロース樹脂を用いたアフィニティー・クロマトグラフィーにより精製されうる。GSTへの融合から除去された組換えMPタンパク質は、融合タンパク質の、トロンビンによる切断により回収可能である。
【0092】
誘導性非融合E.coli発現ベクターの適例には、pTrc (Amann等著、(1988) Gene 69: 301-315) pLG338、 pACYC184、 pBR322、 pUC18、 pUC19、 pKC30、 pRep4、 pHS1、 pHS2、 pPLc236、 pMBL24、 pLG200、 pUR290、 pIN-III 113-B1、λgt11、 pBdC1、およびpET 11d (Studier等著、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89、およびPouwels等編、 (1985) Cloning Vectors. Elsevier: New York IBSN 0 444 904018)がある。pTrcベクターによる標的遺伝子の発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写により行われる。PET 11dベクターによる標的の遺伝子の発現は、協同発現するウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gnl)により仲介されたT7 gn10-lac融合プロモータによる転写により行われる。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモータの転写支配下にT7gn1遺伝子を含む定住λプロファージによる宿主株 BL21(DE3) またはHMS174(DE3) から供給される。他の多種のバクテリアの形質転換では、適当なベクターを選択することが可能である。例えば、プラスミドpIJ101、 pIJ364、 pIJ702 および pIJ361はストレプトマイセスの形質転換に有効であることが公知であり、一方、プラスミドpUB110、 pC194またはpBD214はバキュラス種の形質転換に適している。遺伝情報をコリネバクテリウムに移送するために使用される数種類のプラスミドの例は、pHM1519、 pBL1、 pSA77、またはpAJ667 (Pouwels等編、(1985) Cloning Vectors. Elsevier: New York IBSN 0 444 904018)である。
【0093】
組換えタンパク質の発現を最大限に行う1つの方法としては、組換えタンパク質のタンパク質分解的切断を行う能力に欠陥を有する宿主バクテリア中でタンパク質を発現させることである(Gottesman, S.著、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego、California (1990) 119-128)。他の方法(戦略)は、発現ベクターに挿入されるべき核酸の核酸配列を変化させて、各アミノ酸に対応する個々のコドンが、発現で選択される所定のバクテリア、例えばC.グルタミカムで優先的に使用することである(Wada等、(1992) Nucleic Acids Res. 20: 2111-2118)。この様な本発明による核酸配列の変更は、標準的なDNA合成技術により行われうる。
【0094】
他の実施の形態においては、MPタンパク質発現ベクターとして酵母発現ベクターが用いられる。酵母S. cerevisiaeにおける発現を行うベクターの例としては、pYepSec1 (Baldari等、(1987) Embo J. 6: 229-234)、2μ、pAG-1、Yep6、 Yep13、pEMBLYe23、pMFa(Kurjan、Herskowitz共著、(1982) Cell 30: 933-943)、pJRY88 (Schultz等著、(1987) Gene 54: 113-123)、およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)が挙げられる。繊維状細菌等の他の菌類に好ましく使用されるベクターを構成するために用いるベクターおよび方法については、van den Hondel, C.A.M.J.J. & Punt, P.J. (1991) “Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi”、(Applied Molecular Genetics of Fungi)J.F. Peberdy等編、p. 1-28, Cambridge University Press: Cambridge、およびPouwels等編、(1985) Cloning Vectors. Elsevier: New York (IBSN 0 444 904018)に詳細に記載されている。
【0095】
あるいは、本発明のMPタンパク質は、バキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞において発現可能である。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現が利用可能なバキュロウイルスベクターの例は、pAc系(Smith等著、(1983) Mol. Cell. Biol. 3:2156-2165)およびpVL系(LucklowおよびSummers共著、(1989) Virology 170: 31-39)である。
【0096】
他の実施の形態において、本発明のMPタンパク質は、単細胞植物の細胞(例えば藻類)または高等植物由来の植物細胞(例えば、農作物等の種子植物)において発現可能である。植物発現ベクターについては、Becker, D., Kemper, E., Schell, J. およびMasterson, R.著、(1992) “New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border”, Plant Mol. Biol. 20: 1195-1197; およびBevan, M.W.著、(1984) “Binary Agrobacterium vectors for plant transformation”, Nucl. Acid. Res. 12: 8711-8721に詳細に記載されており、更にpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004、およびpDH51 (Pouwels等編、(1985) Cloning Vectors. Elsevier: New York IBSN 0 444 904018)が、例として挙げられる。
【0097】
更に別の実施形態においては、本発明の核酸は、哺乳類発現ベクターを用いて哺乳類細胞において発現される。哺乳類発現ベクターの例は、pCDM8 (Seed, B. (1987) Nature 329:840) およびpMT2PC (Kaufman等著、(1987) EMBO J. 6: 187-195)である。哺乳動物の細胞中で使用される場合の発現ベクターの制御機能は、ウイルスの調節要素により形成されることが多い。例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマウイルス属、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40由来のものである。原核細胞および真核細胞の双方における他の適する発現システムについては、Sambrook, J., Fritsh, E.F.およびManiatis, T.著、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、第16 、17章、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989を参照されたい。
【0098】
他の実施の形態において、組換えによる哺乳類発現ベクターは、特定の細胞種に選択的な核酸の発現を支配可能である(例えば、この様な核酸の発現には、組織特異的調節要素を用いる)。組織特異的調節要素は、当該分野で公知である。組織特異的プロモータとしては、アルブミンプロモーター(肝臓特異的: Pinkert等著、(1987) Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame、Eaton共著、(1988) Adv. Immunol. 43: 235-275)、特にT細胞受容体の特定のプロモーター(Winoto、Baltimore共著、(1989) EMBO J. 8: 729-733)、および免疫グロブリン(Banerji等著、(1983) Cell 33: 729-740、QueenおよびBaltimore共著、(1983) Cell 33: 741-748)、ニュウロン特異的プロモータ(例えば、ニュウロフィラメントプロモーター、ByrneおよびRuddle共著、(1989) PNAS 86: 5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund 等著、(1985) Science 230: 912- 916)、および乳腺特異的プロモータ(例えば、乳漿プロモーター、米国特許第4,873,316号明細書およびヨーロッパ特許出願公開第264,166号公報)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。発育中に調節されるプロモーターの例としては、ネズミ(マウス)のホックスプロモーター(KesselおよびGruss共著、(1990) Science 249: 374-379)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman共著、(1989) Genes Dev. 3: 537-546)が挙げられる。
【0099】
更に本発明は、発現ベクターにアンチセンス方向にクローンされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供するものである。すなわち、DNA分子は、MPmRNAに対してアンチセンスなRNA分子の(DNA分子の転写による)発現が可能なように、調節配列に協同的に結合している。アンチセンス方向にクローンされた核酸に協同的に結合する調節配列を選択して、これが種々の細胞種におけるアンチセンスRNA分子の連続的な発現を支配する。調節配列の例には、ウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーがある。或いは、アンチセンスRNAの構成性の組織特異的または細胞種類に特異的な発現を支配する調節配列を選択してもよい。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸を高効率の調節領域の支配下に産生する組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒化ウイルスの形態であってもよい。この場合の活性はベクターが導入された細胞の種類によって決定する。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節に関しては、Weintraub, H.等著、Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis, Reviews Trends in Genetics, Vol. 1(1) 1986を参照されたい。
【0100】
更に本発明は、本発明による組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」の双方の表現は、本明細書では相互変換可能に使用される。これらの表現は、特定の細胞のみならず、次世代細胞および後世代の細胞に発達する可能性のあるものに対しても用いる。変異または環境的な影響のいずれかにより後の世代に所定の修飾が起こる可能性があるため、この様な後の世代は実際には親細胞とは同一ではないこともあるが、この場合も本明細書で使用される上述の表現に含まれるものとする。
【0101】
宿主細胞はいかなる原核細胞または真核細胞であってもよい。例えば、MPタンパク質は、C.グルタミカム等のバクテリア細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞)で発現可能である。他の適当な宿主細胞は、当該技術者等に公知のものである。本発明による核酸およびタンパク質分子分子に従来の宿主細胞として用いられていたコリネバクテリウム−グルタミカムに関連する微生物を表3に記載する。
【0102】
慣用の形質転換または形質移入技術により、ベクターDNAを原核細胞または真核細胞に導入可能である。本明細書で、「形質転換(トランスフォーメーション)」および「形質移入(トランスフェクション)」、並びに「接合」および「形質導入」という用語は、外来核酸(例えば、鎖状DNAまたはRNA(例えば、直鎖化ベクターまたはベクターを有さない遺伝子構成部分のみ)またはベクター状の核酸(例えば、プラスミド、ファージ、ファスミド、ファージミド、トランスポロンまたは他のDNA))を宿主細胞に導入する従来から認識されている種々の技術を意味する意図で使用され、これには、例えば、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共同沈降法、DEAE−デキストラン仲介トランスフェクション、リポフェクション、自然受容能(natural competence)、化学物質仲介トランスフェクション、またはエレクトロポレーションが含まれる。宿主細胞の形質転換または形質移入についての適当な方法は、Sambrook等著、(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、および他の研究マニュアルに記載されている。
【0103】
哺乳類細胞の安定な形質移入では、使用する発現ベクターと形質移入技術により、細胞の小部分によってのみ外来DNAがゲノム中に統合されることもあることが公知である。これらの構成要素全体を認識し選択するため、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質に対する耐性)を所望の遺伝子と共に宿主細胞に導入するのが一般的である。選択可能なマーカーとしては、薬剤に対して耐性を付与するもの、例えばG418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートが好ましい。選択可能なマーカーをコードする核酸は、宿主細胞中に、MPタンパク質をコードするベクターと同一のベクターに導入可能であるが、他のベクターに導入することもできる。導入された核酸により安定に形質移入された細胞は、薬物の選択により認識されうる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子が導入された細胞は生き残るが、他の細胞は死滅する)。
【0104】
相同な組換え微生物を得るためには、欠失、付加または置換が導入されたMP遺伝子の少なくとも一部を含むベクターを形成し、これによりMP遺伝子を、例えば機能的な混乱等により変化させる。このMP遺伝子は、コリネバクテリウム−グルタミカムMP遺伝子であることが好ましいが、関連するバクテリアまたは哺乳動物、酵母または昆虫に相同なものであってもよい。好ましい実施の形態において、ベクターは、相同な組換えの上、内因性MP遺伝子が機能的に混乱するように設計されていることが好ましい(すなわち、機能的タンパク質をコードしないように設計される。これは「ノックアウト」ベクターとも呼ばれる)。あるいは、相同な組換えの上、内因性MP遺伝子が変異またはその他の方法で変化しているが、機能性タンパク質をコードしている状態を保つ(例えば、上流の調節領域を変化させて、これにより内因性MPタンパク質の発現を変化させる)ようにベクターを設計することも可能である。相同な組換えベクターにおいて、MP遺伝子の5’および3’末端側方に、付加的な核酸が配置し、改変部分が得られる。このベクターによりもたらされた外因性MP遺伝子と微生物における内因性MPの間で相同組換えが可能とされる。この付加的に側方に位置するMP核酸は、十分な長さを有し、外因性遺伝子による十分に相同な組換えを可能としている。通常、数kb(キロベース)の側方配置DNA(5’末端および3’末端の双方において)がベクターに含まれている(Thomas, K.R.およびCapecchi, M.R.共著、(1987) Cell 51: 503 for a description of homologous recombination vectorを参照されたい)。ベクターを微生物に導入し(例えば、エレクトロポレーションにより)、そして導入したMP遺伝子と内因性MP遺伝子との組み合わせを有する細胞が公知技術により選択される。
【0105】
他の実施の形態において、導入された遺伝子の調節された発現を可能とする選択された系を有する組換え微生物が製造される。MP遺伝子をベクター上に、lacオペロンの支配下に導入することにより、IPTGが存在する場合のみMP遺伝子の発現を可能にする。かかる調節システムは、従来から周知である。
【0106】
他の実施の形態において、宿主細胞における内因性MP遺伝子を、これから得られたタンパク質産物が発現しないように混乱させる(例えば、相同組換えまたは従来技術による他の遺伝子上の手段による)。他の実施の形態において、宿主細胞中における内因性または導入されたMP遺伝子が、1カ所以上の点変異、欠失または逆位により変化しているが、機能性MPタンパク質を依然としてコードしている。更に他の実施の形態において、微生物におけるMP遺伝子の1カ所以上の調節領域(例えば、プロモーター、リプレッサー、またはインデューサー)が、MP遺伝子の発現を調節するように変化させられている(例えば、欠失、切断、逆位、点変異による)。当該技術者等によると、2種類以上の上述したMP遺伝子とタンパク質の修飾を含む宿主細胞は、本発明の方法により容易に製造され、これらも本発明に含まれるものであることが容易にわかる。
【0107】
本発明の宿細胞、例えば培養体における原核細胞または真核細胞を用いて、MPタンパク質を製造する(すなわち発現させる)ことができる。従って、更に本発明は、本発明による宿主細胞を使用してMPタンパク質を製造する方法を提供するものである。一実施形態において、この方法は、MPタンパク質が得られるまで、本発明の宿主細胞(MPタンパク質をコードしている組換え発現ベクターが導入されているか、ゲノムが導入され、野生型または改変型MPタンパク質をコードしている細胞)を適する培地中で培養する。他の実施の形態において、本発明の方法は、培地または宿主細胞からMPタンパク質を単離する工程を含んでいる。
【0108】
C.単離されたMPタンパク質
更に本発明は、単離されたMPタンパク質、およびその生物学的に活性な一部に関する。「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、組換えDNA技術で製造された場合に細胞質材料を実質的に含まず、あるいは化学的に合成された場合には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という用語は、天然または組換え技術により製造された、細胞における細胞成分から分離したMPタンパク質の調製を意味する。一実施の形態において、「細胞材料を実質的に含まない」とは、非MPタンパク質(本明細書で「汚染タンパク質」(contaminating protein)ともいう)を約30%未満(乾燥重量で)、好ましくは約20%未満、更に好ましくは約10%未満、最も好ましくは5%未満含むMPタンパク質の調製を意味する。MPタンパク質またはこの生物学的に活性な部分が組換えにより製造される場合、培地を実質的に含まないことが好ましい。すなわち、培地が、タンパク質の調製の容量に対して20%未満、更に好ましくは約10%未満、特に好ましくは約5%未満であることが好ましい。「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という用語は、タンパク質がタンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されたMPタンパク質の調製を意味する。一実施の形態において、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、約30%(乾燥重量)未満、好ましくは約20%未満、更に好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または非MP化学物質を含むMPタンパク質の調製を意味する。好ましい実施の形態において、単離されたタンパク質またはこの生物学的に活性な部分は、このMPタンパク質が誘導された同じ生物からの汚染(源)タンパク質を含まない。一般に、かかるタンパク質を、C.グルタミカム等の微生物におけるC.グルタミカムMPタンパク質等の組換え発現により製造する。
【0109】
本発明の単離されたMPタンパク質またはその一部は、アミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応を触媒可能であるか、あるいは表1に記載の1種以上の活性を有する。好ましい実施形態において、タンパク質またはその一部は、本発明によるアミノ酸配列(例えば、配列表中の偶数のSEQ ID NOによる配列)に対して十分に相同なアミノ酸配列を含んで、このタンパク質またはその一部が、アミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応を触媒する能力を維持している。タンパクの一部が、本明細書で開示した生物学的に活性な部分であると好ましい。他の好ましい実施の形態において、本発明のMPタンパク質は、配列表中の偶数のSEQ ID NOによるアミノ酸配列を有している。他の好ましい実施の形態において、MPタンパク質は、本発明によるヌクレオチド配列(例えば、配列表中の奇数のSEQ ID NOによる配列)とハイブリダイズする、例えば緊縮条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされているアミノ酸配列を有している。更に他の好ましい実施の形態において、MPタンパク質は、本発明による核酸配列のいずれかまたはその一部に対して、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同なヌクレオチド配列によりコードされているアミノ酸配列を有する。上記各値の中間値により示される値の範囲(例えば、70〜90%同一または80〜95%同一)も本発明に含まれる。例えば、上限値および/または下限値として記載された上述の値のいずれを組み合わせて値の範囲としてもよい。本発明のMPタンパク質は、本明細書に記載された少なくとも1種類のMP活性を有することが好ましい。例えば、本発明のMPタンパク質は、本発明によるヌクレオチド配列とハイブリダイズする、例えば緊縮条件下でハイブリダイズし、そしてアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースの代謝経路における酵素反応を触媒可能であるか、あるいは表1に示された1種以上の活性を有しているヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列を含むのが好ましい。
【0110】
他の実施の形態において、MPタンパク質は、上述した第I欄で詳細に記載したように、本発明によるアミノ酸配列(例えば、配列表中の偶数のSEQ ID NOによる配列)と実質的に相同であり、且つ天然の変化もしくは変異生成によるアミノ酸配列が異なるものの、本発明によるアミノ酸配列のいずれかからなるタンパク質の機能的活性を保持するものである。従って、他の実施の形態において、MPタンパク質は、本発明のアミノ酸配列の全体に対して、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%、更に好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%、または91%、92%、93%、94%、および更に好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.7%またはそれ以上相同なアミノ酸配列を含み、且つ本発明に記載したMP活性のいずれかを含むタンパク質である。上記各値の中間値により示される値の範囲(例えば、70〜90%同一または80〜95%同一)も本発明に含まれる。例えば、上限値および/または下限値として記載された上述の値のいずれを組み合わせて値の範囲としてもよい。別の実施の形態において、本発明は、本発明のアミノ酸配列全体に対して実質的に相同なC.グルタミカムタンパク質の全体に関する。
【0111】
MPタンパク質の生物学的に活性な部分は、MPタンパク質のアミノ酸配列から誘導されたアミノ酸配列(例えば、配列表中の偶数のSEQ ID NOによるアミノ酸配列)、またはMPタンパク質に相同なタンパク質のアミノ酸配列から誘導されたアミノ酸配列(MPタンパク質全体よりも少ないアミノ酸を含むか、あるいはMPタンパク質に相同なタンパク質全体を含む)を含み、そしてMPタンパク質の少なくとも1種類の活性を示す。一般的に、生物学的に活性な部分(ペプチド、例えば5、10、15、20、30、35、 36、37、38、39、40、50、100以上のアミノ酸長のペプチド)は、MPタンパク質の少なくとも1種類の活性を有するドメインまたはモチーフを含む。更に、タンパク質の他の領域が欠失している、生物学的に活性な他のタンパク質を組換え技術により製造し、そして本明細書に記載された1種類以上の活性についての評価を行うことも可能である。MPタンパク質の生物学的に活性な部分は、生物学的活性を有する1種類以上の選択されたドメイン/モチーフまたはその一部である。
【0112】
MPタンパク質は、組換えDNA技術により製造されることが好ましい。例えば、タンパク質をコードしている核酸分子を発現ベクターにクローンし(上記参照)、この発現ベクターを宿主細胞に導入し(上記参照)、そしてこのMPタンパク質を宿主細胞中で発現させる。その後、MPタンパク質を、標準的なタンパク質精製技術を用いた適当な精製方法により細胞から単離可能である。組換え発現以外の方法では、標準的なペプチド合成法を用い、MPタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを化学的に合成する。更に、例えば、本発明によるMPタンパク質またはそのフラグメントを用いる標準的な技術により製造可能な、抗MP抗体を使用し、未変性MPタンパク質を細胞(例えば内皮細胞)から単離することができる。
【0113】
本発明は、MPキメラタンパク質または融合タンパク質も提供する。本明細書で使用されるMP「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」とは、非MPポリペプチドに協同的に結合するMPポリペプチドを含む。「MPポリペプチド」とは、MPに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味し、一方、「非MPポリペプチド」とは、MPタンパク質に実質的な相同性を有さないタンパク質、例えばMPタンパク質と異なり且つ同一または異なっていても良い生物から誘導されたタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。融合タンパク質に関して、「協同的に結合した」という用語は、MPポリペプチドと非MPポリペプチドがインフレームで相互に融合していることを意味している。非MPポリペプチドは、MPポリペプチドのC末端またはN末端に融合可能である。一実施の形態において、例えば、この融合タンパク質は、MP配列がGST配列のC末端に結合(融合)したGST−MP融合タンパク質である。かかる融合タンパク質は、組換えMPタンパク質の精製に有効に用いられる。他の実施の形態において、融合タンパク質として、N末端に非相同のシグナル配列を含むMPが用いられる。所定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、MPタンパク質の発現および/または分泌は、非相同シグナル配列を使用することにより改善されうる。
【0114】
本発明のMPキメラタンパク質または融合タンパク質は、標準的組換えDNA技術により製造されるのが好ましい。例えば、異なるポリペプチド配列をコードしているDNAフラグメントは、慣用の技術によりインフレーム(in-frame)と共に結紮される。これは、例えば、結紮に平滑末端(ブラントエンド処理:blunt-ended)または付着末端(stagger-ended)を用いた処理、適当な末端を形成するための制限酵素による消化、適当な粘着末端を得るための充填、不適当な結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素による結紮により行われることが好ましい。他の実施の形態において、融合遺伝子は、自動DNA合成機の使用等による慣用の技術により合成可能である。あるいは、2本の平行する(連続的な)遺伝子フラグメント間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を行う。この場合の2本の遺伝子フラグメントは、後にアニーリングし、そして再増幅してキメラ遺伝子配列を生成する(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel等編、John Wiley & Sons: 1992を参照)。更に、予め融合部分をコードしている多種の発現ベクターが市販されている(例えば、GSTポリペプチド)。MPをコードしている核酸は、上述のような発現ベクターに、融合部分がMPタンパク質に対してインフレームに結合するようにクローンされうる。
【0115】
MPタンパク質の相同体は、変異生成、例えばMPタンパク質の散在点変異または切断により生成する。本明細書で使用される「相同体」という用語は、MPタンパク質活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用するMPタンパク質の変異形を意味する。MPタンパク質のアゴニストは、MPタンパク質と同等の生物学的活性またはサブセットを実質的に維持することができる。MPタンパク質のアンタゴニストは、例えばMPタンパク質を含むMPカスケードの下流または上流メンバーに競争的に結合することにより、MPタンパク質の天然に発生する形態での1種類以上の活性を阻害することができる。従って、本発明のC.グルタミカムMPタンパク質およびその相同体により、MPタンパク質がこの微生物中で役割を果たす1種以上の代謝経路の活性を調節する場合がある。
【0116】
他の実施の形態において、MPタンパク質の相同体は、MPタンパク質アゴニストまたはアンタゴニスト活性を得るための、MPタンパク質の変異体、例えば切断型変異体の組み合わせライブラリーをスクリーニングすることにより同定されうる。一実施の形態において、MP変異体の異形ライブラリは、核酸レベルでの組み合わせ変異生成により得られ、そして異形遺伝子ライブラリによりコードされる。MP変異体の異形ライブラリは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列中に、MP配列を構成する可能性のある一連の変性体が個々のポリペプチドとして、或いは一連のMP配列を含む大きな融合タンパク質(例えば、ファージディスプレー)として発現可能であるように、酵素的結紮により製造されうる。変性したオリゴヌクレオチド配列からMP相同体を構成する可能性のあるライブラリーを形成するためは、種々の方法が使用される。分解(変性)した遺伝子配列の化学的合成は自動DNA合成機中で行われ、その後、合成された遺伝子は、適当な発現ベクターに結紮させられる。分解された遺伝子をセットとして使用することにより、MP配列を構成する可能性のある所望のセットをコードする全ての配列が混合物として提供される。分解されたオリゴヌクレオチドの合成方法は、当該分野において公知である(例えば、Narang, S.A.著、(1983) Tetrahedron 39: 3、Itakura等著、(1984) Annu. Rev. Biochem. 53: 323、Itakura 等著、(1984) Science 198: 1056、Ike等著、(1983) Nucleic Acid Res. 11: 477を参照されたい)。
【0117】
更に、MPタンパク質コードのフラグメントライブラリを用いて、MPタンパク質の相同体のスクリーニングと次の選択を行う、MPフラグメントの異形個体群を製造することが可能である。一実施の形態において、コード配列フラグメントのライブラリーは、以下の方法で得られる。すなわち、MPコード配列の2本鎖PCRフラグメントを、分子ごとに約1回だけニッキングが起こる条件下で、ヌクレア―ゼで処理し、2本鎖DNAを変性させ、異なるニッキングを起こした産物からセンス/アンチセンス対を含むDNAが2本鎖DNAを形成するようにDNAを復元し、再形成された2本鎖から、S1ヌクレアーゼでの処理により1本鎖タンパク質を除去し、そしてこれにより得られたフラグメントライブラリを発現ベクターに結紮する。この方法により、発現ライブラリーは、種々の大きさMPタンパク質のN末端、C末端および内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを誘導可能となる。
【0118】
点変異または切断により得られた組合わせライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングし、そして所定の性質を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーのスクリーニングを行うための複数の技術が当該分野で公知である。かかる技術は、MP相同体の組合わせ変異生成により得られた遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合可能である。この最も広く用いられている技術は、大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングを行うための高速処理分析に基づくものである。この技術では、一般に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローンし、適当な細胞を形質転換してベクターのライブラリーを得て、所望の活性の検出により遺伝子をコードするベクターが単離され、遺伝子からの産物が検出される条件下で、組換え遺伝子を発現させる。ライブラリーにおける帰納的変異体の発生率を向上させる新しい技術、すなわち帰納的集合変異生成(REM: recursive ensemble mutagenesis)を、MP相同体を同定するためのスクリーニング法と組み合わせて用いることができる(Arkin、Yourvan共著 (1992) PNAS 89: 7811-7815、Delgrave等著、(1993) Protein Engineering 6(3): 327-331)。
【0119】
他の実施の形態において、細胞を基準とする分析が行われ、公知方法を用いて異形MPライブラリを分析することができる。
【0120】
D.本発明の方法および使用法
本明細書に記載されている核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体、融合タンパク質、プライマー、ベクター、および宿主細胞は、以下の1種類以上の方法により用いられる。すなわち、C.グルタミカムおよび関連する生物の同定(認識);C.グルタミカムに関連する生物のゲノムマップ作成;所望のC.グルタミカム配列の同定および存在位置の確認;進化の研究;機能を得るために必要なMPタンパク質領域の決定;MPタンパク質活性の調節;MP経路の活性調整;および所望の化合物、例えばファインケミカルの細胞による産生の調節において用いられる。
【0121】
本発明のMP核酸分子は種々の用途を有する。まず、同分子はコリネバクテリウム−グルタミカムまたはこれに密接に関連する生物を同定するために使用される。更に、MP核酸分子は、微生物の混合個体群におけるC.グルタミカムまたはこれに密接に関連する生物の存在を認識するために使用される。更に、本発明は、微生物の単独種類の個体群または混合個体群の培養体中の抽出されたゲノムDNAを、緊縮条件下で、C.グルタミカム遺伝子特有の領域をスパニングするプローブを用いて調べることにより、この生物の存在を確認する。
【0122】
コリネバクテリウム−グルタミカム自体にはヒトに対する病原性はないが、コリネバクテリウム−ジフテリア等のヒト病原性種に関連を有する。コリネバクテリウム−ジフテリアはジフテリアの原因物質であり、急速に成長し、局所的および全身性病状の双方に関連する急性かつ熱性の感染を起こす。この疾病では、局所的障害が、上部気道に発生し且つ壊死性損傷を上皮性細胞まで到達させ、桿菌(杆菌)がトキシンを分泌して、障害が体の遠位の敏感な組織まで広がる。これらの組織、例えば心臓、筋肉、末梢神経、副腎、腎臓、肝臓および脾臓におけるタンパク質合成の阻害により変形性変化が生じ、この結果、疾病の全身性病状が示されるようになる。世界の多くの地域、例えばアフリカ、アジア、東ヨーロッパおよび旧ソビエト連邦から独立した国々において、ジフテリアは高発生率を示している。最後に挙げた2つの地域で続くジフテリアの流行により、1990年以来、少なくとも5000人の死亡者が出る結果となった。
【0123】
一実施の形態において、本発明によると、被検体(被検者/患者)におけるコリネバクテリウム−ジフテリアの活性の存在または活性を認識(同定)する方法が提供される。この方法では、本発明による1種以上の核酸またはアミノ酸配列(例えば、配列表の奇数または偶数のSEQ ID NOの配列)を検出して、コリネバクテリウム−ジフテリアの存在または活性を検出する。C.グルタミカムとC.ジフテリアとは関連するバクテリアであり、C.グルタミカムの核酸およびタンパク質分子の多くがC.ジフテリアの核酸およびタンパク質分子と相同であるため、これを用いて被検体C.ジフテリアの検出が可能である。
【0124】
本発明の核酸およびタンパク質分子は、ゲノムの特定領域のマーカーとしての役割も果たす。これはゲノム地図作製のみならず、C.グルタミカムタンパク質の機能に関する研究にも利用される。例えば、特定のC.グルタミカムDNA−結合タンパク質が結合するゲノムの領域を同定するために、C.グルタミカムゲノムを消化可能であるが、フラグメントはDNA−結合タンパク質とインキュベートされる。タンパク質と結合する領域を、本発明の核酸に好ましくは検出が容易なラベルを付けたものを用いて詳細に調べることも可能であり、この様な核酸の遺伝子フラグメントに対する結合により、C.グルタミカムのゲノム地図におけるフラグメントの位置特定が可能となり、更に種々の酵素により複数回試行すれば、タンパク質が結合している核酸配列が迅速に決定される。更に、本発明の核酸分子は、関連種の配列に十分な相同性を有するため、関連するバクテリア、例えばブレビバクテリウム−ラクトフェルメントムにおけるゲノムマップ構造のマーカーとして作用する場合がある。
【0125】
本発明のMPタンパク質分子は進化論的およびタンパク質構造学においても有用である。本発明の分子が関連する代謝の過程は、本発明の核酸分子の配列を他の生物から得られた同様の酵素をコードする分子の配列と比較し、この生物の進化上の関連性を評価することにより種々の原核生物および生物の真角細胞で使用される。同様に、かかる比較により、配列のどの領域が変換され、どの領域が変換されないかの評価が可能となり、酵素の機能に重要なタンパク質領域の特定に利用される。この様な特定方法は、タンパク質工学において重要であり、且つ機能を失わずに変異を行うタンパク質の変異生成では、何に対する耐性が得られるかの指標となる。
【0126】
本発明によるMP核酸分子を操作することにより、野生型MPタンパク質と異なる機能を有するMPタンパク質の製造が可能となる。このタンパク質は、このタンパク質の効率または活性を向上可能であり、通常より多くの細胞に含ませても良く、あるいはこれの効率または活性を低減させても良い。
【0127】
本発により、MPタンパク質の活性を、このタンパク質それ自体もしくは基質と相互作用させるか、またはMPタンパク質のパートナーと結合させることにより、あるいは本発明によるMP核酸分子の転写または翻訳を調節することによって調節する分子のスクリーニング方法を提供する。かかる方法では、本発明による1種以上のMPタンパク質を発現する微生物を1種以上の被験化合物と接触させ、そしてMPタンパク質の活性もしくは発現レベルについての各被験化合物の効果を評価する。
【0128】
C.グルタミカムの大規模発酵培養から単離される所望のファインケミカルがアミノ酸、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、またはトレハロースである場合、本発明による1種以上のタンパク質の活性または活性効率を組み換え遺伝子機構によって調節することにより、このファインケミカルのいずれかの製造に直接影響を与える場合がある。例えば、所望のアミン酸の生合成経路における酵素の場合、酵素の効率または活性を向上することにより(遺伝子の多重コピーの存在を含む)、所望のアミノ酸の製造または製造効率が向上する。合成が所望のアミノ酸の合成と競争状態にあるアミノ酸の生合成経路における酵素の場合、この酵素の効率または活性を低減させることにより(遺伝子の欠失を含む)、中間化合物および/またはエネルギーの競争が低減することに起因して、所望のアミノ酸の製造または製造効率が向上する。所望のアミノ酸の分解経路における酵素の場合、酵素の効率または活性の低減により、その分解が縮小するので、所望の生成物の収率または製造効率が向上する。結論として、所望のアミノ酸の生合成に関与する酵素の突然変異により、この酵素がもはやフィードバック阻害不可能となるので、所望のアミノ酸の収率または製造効率が向上する。同様のことが、ビタミン、補助因子、機能性食品、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびトレハロースの代謝に関与する本発明による生合成および分解酵素にも適用される。
【0129】
同様に、所望のファインケミカルが上述した化合物のいずれかでない場合、本発明によるいずれかのタンパク質の活性を調節することにより、依然としてC.グルタミカムの大規模培養から得られる化合物の収率および/または製造効率に影響を与える場合がある。生物の代謝経路は相互に密接に関連している;すなわち、いずれかの経路で用いられる中間体を、異なる経路で供給する場合も屡々ある。酵素の発現および機能は、異なる代謝処理により得られる化合物の細胞レベルの基づいて調節可能であり、そしてアミノ酸およびヌクレオチド等の、基本成長に必要な分子の細胞レベルによって、大規模培養における微生物の生存力に悪影響を与えうる。従って、アミノ酸の生合成酵素を、例えばフィードバック阻害にもはや応答しなくなるか、あるいはこれにより効率またはターンオーバーが改善されるように調節して、1種以上のアミノ酸の製造レベルを改善する。そして、アミノ酸のプールをこのように改善することにより、タンパク質合成に必要な分子ばかりでなく、他の多くの生合成経路における中間体および前駆体として用いられる分子の供給を改善する。特定のアミノ酸が細胞において限定する場合、その改善された製造により、他の大多数の代謝反応を行うための細胞の能力を向上させる必要があり、この細胞により、全ての種類のタンパク質、あるいは大規模培養においてこの細胞の成長速度全体または生存力を向上させるタンパク質の製造効率の十分に向上させなければならない。生存力を向上させることにより、発酵培養において所望のファインケミカルを製造可能にする多くの細胞を改良することになるので、該化合物の収率が向上する。同様の処理は、本発明による分解酵素の活性を調節して、この酵素が、所望の化合物の生合成に重要であるか、またはこの細胞により大規模培養において効率的に成長および再生産可能となるであろう細胞化合物の分解に、もはや触媒作用を及ぼさなくなるか、または効率を抑えて触媒作用を及ぼすことによって可能となる。これは、本発明による所定の分子の分解活性を最適化するか、または生合成活性を低減させることにより、C.グルタミカム由来の所定のファインケミカルの製造に対して、有益な効果を与えることが明らかになる。例えば、1種以上の中間体に対して所望の化合物の生合成経路と競合する経路において生合成酵素の活性効率を低減することにより、更にこの中間体を、所望の生成物への転換に利用可能となる。同様の状況が、本発明による1種以上のタンパク質の分解能力または効率を改善する場合に要求されるであろう。
【0130】
所望の化合物の収率を結果的に向上させるMPタンパク質についての突然変異生成戦略に関する上記リストは、限定することを意味するものでない。この突然変異生成戦略に関する変更は、当該技術者等に容易に見出されるであろう。この機構により、本発明の核酸およびタンパク質分子を用いて、変異MP核酸およびタンパク質分子を発現するC.グルタミカムまたは関連するバクテリア株を生成し、所望の化合物の収率、製造、および/または製造効率を改善することが可能となる。この所望の化合物はC.グルタミカムの天然の産物であっても良く、その例には、生合成経路の最終生成物および天然に発生する代謝経路の中間体であり、あるいはC.グルタミカムの代謝で天然に発生しないが、本発明によるC.グルタミカム株によって製造される分子が含まれる。コリネバクテリウム−グルタミカム株によって製造される化合物としては、アミノ酸L−リシンおよびL−メチオニンが好ましい。
【0131】
一実施の形態において、シスタチオニンβ−リアーゼ(β−シスタチオナーゼ)をコードするmetC遺伝子、すなわちメチオニン生合成経路における第3の酵素を、コリネバクテリウム−グルタミカムから単離した。この遺伝子の翻訳生成物は、他の生物から得られたmetC遺伝子の生成物と十分な相同を示さなかった。metC遺伝子含有プラスミドをC.グルタミカムに導入することにより、シスタチオナーゼβ−リアーゼの活性が5倍増大した。ここではMetC(SEQ ID NO:4に対応する)と示されるタンパク質生成物は、35574ダルトンのタンパク質生成物をコードし且つ325個のアミノ酸から構成されるものであり、これが、2種類の異なるアミノ酸の存在を除く、事前に報告されているaedD遺伝子(Rossol, I.およびPuhler, A.共著 (1992) J. Bacteriology 174, 2968-2977)と同一である。AedDも同様に、遺伝子多重コピーで含まれる場合、metC遺伝子には、毒性のリシン類似物であるS−(β−アミノエチル)システインに対する耐性が付与される。しかしながら、遺伝子による証拠と生化学的な証拠により、metC遺伝子生成物の天然活性がC.グルタミカムにおけるメチオニン生合成に影響を与えることを示している。metCの突然変異株が形成されて、そしてこの株がメチオニンの原栄養生を示した。突然変異株がその能力を完全に失って、S−(γ−アミノエチル)システインに対する耐性を示す。この結果は、別の生合成経路である硫黄転移の他に、直接的な硫黄転移経路が、メチオニンの平行する生合成経路として、C.グルタミカムにおいて機能的となることを示している。
【0132】
更に別の実施形態において、スルフヒドリレーション経路が更にO−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼによって触媒されることが示されている。この経路の存在によって、対応のmeZ(またはmetY)遺伝子および酵素(それぞれ、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2に対応する)の単離が行われる。真核生物の中で、菌類および酵母菌種が硫黄転移および直接のスルフヒドリレーション経路の両方を有していることが報告されている。これまで、両方の経路を有する原核生物は見出されていなかった。リシンに関する単一の生合成経路のみ有するE.coli(大腸菌)と異なり、C.グルタミカムは、アミノ酸に関する2種類の平行した生合成経路を有している。C.グルタミカムにおけるメチオニンの生合成経路は、リシンの生合成に類似している。
【0133】
遺伝子metZを、メチオニンの生合成における第1工程を触媒する酵素をコードする遺伝子であるmetAの上流領域に存在する(Park, S.-D., et al (1998) Mol, Cells 8, 286-294)。metAの上流領域および下流領域を配列して、他のmet遺伝子を同定した。MetAおよびMetZにより、対応するポリペプチドを過剰生産する。
【0134】
驚くべきことに、metZのクローンは、メチオニンの栄養要求性Escherichia coli met B突然変異株を相補可能である。これは、metZのタンパク質生成物が、metBのタンパク質生成物によって触媒される工程をバイパス可能な工程を触媒することを示している。更にmetZを分解し、そしてとつぜんへいがメチオニン原栄養性を示した。コリネバクテリウム−グルタミカムのmetBおよびmetZ二重変異体を更に形成した。この二重突然変異体は、メチオニンに対して原栄養性を示す。従って、metZはO−アセチル−ホモセリンからホモシステインへの反応(メチオニン生合成のスルフヒドリレーション経路における一工程である)を触媒するタンパク質をコードする。コリネバクテリウム−グルタミカムは、メチオニン生合成の硫黄転移およびスルフヒドリレーション経路の両方を含む。
【0135】
metZをC.グルタミカムに導入することにより、47000ダルトンタンパク質が発現する。metZとmetAをC.グルタミカムに組み合わせて導入することにより、ゾル電気泳動によって示される、metAおよびmetZタンパク質が明らかになる。コリネバクテリウム株がリシンの過剰生産者である場合、metZおよびmetA含有プラスミドを導入することにより、リシンの滴定量が低減するが、ホモシステインとメチオニンの凝集が検出される。
【0136】
別の実施形態において、metZおよびmetAを、アスパレートセミアルデヒドからホモセリンへの転換を触媒する、コリネバクテリウム−グルタミカム株にhom遺伝子(ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする)と共に導入した。異種生物と異なるhom遺伝子を、この実施例用に選択した。コリネバクテリウム−グルタミカムhom遺伝子を、Escherichia coliもしくはBacillus subtilis等の他の原核生物より得られるhom遺伝子、またはSaccharomyces cerevisiae、Shizosaccharomyces probe、Ashbya gossypiiもしくは藻類、遺伝子、植物あるいは動物等の真核生物のhomと同様に使用可能である。このhom遺伝子が、アスパレート等のアスパレートファミリー、リシン、スレオニン、またはメチオニンのアミノ酸生合成経路において発生する代謝物の影響を受けるフィードバック阻害に対して反応しない場合がある。かかる代謝物は、例えば、アスパレート、リシン、メチオニン、スレオニン、アスパルチルホスフェート、アスパレートセミアルデヒド、ホモセリン、シスタチオニン、ホモシステインまたはこの生合成経路で発生する他の代謝物である。この代謝物の他に、ホモセリンデヒドロゲナーゼは、上記代謝物全てによる阻害に対して非感受性な場合があり、またはこの代謝に関与する他の化合物に対してでさえ非感受性である。これは、システイン等の他のアミノ酸、またはビタミンB12等の補助因子およびその全ての誘導体並びにS−アデノシルメチオニンおよびその代謝物と誘導体および類似物が含まれるからである。これら全て、これらの一部、またはこれらの化合物のいずれか1つに対するホモセリンデヒドロゲナーゼの非感受性は、その天然の態度であるか、あるいは化学物質もしくは放射線または突然変異を用いる古典的な突然変異および選択により得られる1種以上の突然変異体から得られた結果である。この突然変異体を、遺伝子技術、例えば部位特異的点突然変異体の導入を用いるか、あるいはMPまたはDNA配列をコードするMPについての上述した方法によって、hom遺伝子に導入可能であった。
【0137】
hom遺伝子をmetZおよびmetA遺伝子と組み合わせて、リシン過剰生産者であるコリネバクテリウム−グルタミカム株に導入する場合、リシンの凝集を低減し、そしてホモセリンとメチオニンの凝集を向上させる。ホモセリンとメチオニンの濃度を更に増大させることが可能となるが、これは、コリネバクテリウム−グルタミカム株を過剰生産するリシンを使用し、ddh遺伝子またはlysA遺伝子の分解を、hom遺伝子とmetZおよびmetAを組み合わせて含むDNAで転写する前に場合に達成しうる。ホモシステインおよびメチオニンの過剰生産は、異なる硫黄源を用いることによって可能となった。スルフェート、チオスルフェート、スルフィトおよびHS等の還元硫黄源およびスルフィド並びに誘導体を使用可能である。更に、メチルメルカプタンなどの有機硫黄源、チオグリコレート、チオシアネート、チオ尿素、システイン等のアミノ酸含有硫黄、および他の硫黄含有化合物を使用して、ホモシステインおよびメチオニンの過剰生産を達成可能である。
【0138】
別の実施形態において、metC遺伝子を、上述した方法によってコリネバクテリウム−グルタミカム株に導入した。metC遺伝子を、metB、metAなどの他の遺伝子とmetAとを組み合わせて、この株に形質転換可能である。hom遺伝子を加えることも可能である。hom遺伝子、metC、metAおよびmetB遺伝子をベクターで組み合わせ、そしてコリネバクテリウム−グルタミカム株に導入する場合、ホモシステインおよびメチオニンの過剰生産が達成された。ホモシステインおよびメチオニンの過剰生産は、異なる硫黄源を用いることによって達成可能であった。スルフェート、チオスルフェート、スルフィトおよびHS等の還元硫黄源およびスルフィド並びに誘導体を使用可能であった。更に、メチルメルカプタンなどの有機硫黄源、チオグリコレート、チオシアネート、チオ尿素、システイン等のアミノ酸含有硫黄、および他の硫黄含有化合物を使用して、ホモシステインおよびメチオニンの過剰生産を可能である。
【0139】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書に記載の参考文献、特許出願、特許、特許公報、表および配列表は、参考のため本明細書に組みこまれているものである。
【0140】
[実施例]
実施例1:コリネバクテリウム−グルタミカム ATCC13032の全ゲノムDNAの製造
コリネバクテリウム−グルタミカム (ATCC13032)の培養は、激しく攪拌したBHI媒体(Difco)中で、30℃にて終夜行なわれた。細胞は遠心分離により回収され、上澄みを処分し、そして細胞は、5mlの緩衝液I(最初の培養容積の5%、すべての示された容積は、100mlの培養容積に対して計算されたものである。)中に再懸濁された。緩衝液Iの組成は、140.34g/L(リットル)のショ糖、2.46g/LのMgSOx7HO、10ml/LのKHPO溶液(100g/L、KOHでpH6.7に調整)、50ml/LのM12濃縮物(10g/Lの(NHSO、1g/LのNaCl、2g/LのMgSOx7HO、0.2g/LのCaCl、0.5g/Lの酵母抽出物(Difco)、10ml/Lのトレース−エレメンツ−ミックス(200mg/LのFeSOxHO、10mg/LのZnSOx7HO、3mg/LのMnClx4HO、30mg/LのHBO、20mg/LのCoClx6HO、1mg/LのNiClx6HO、3mg/LのNaMoOx2HO、500mg/Lの錯化剤(EDTAまたはクエン酸)、100ml/Lのビタミン−ミックス(0.2mg/Lのビオチン、0.2mg/Lの葉酸、20mg/Lのp−アミノ安息香酸、20mg/Lのリボフラビン、40mg/Lのパントテン酸カルシウム、140mg/Lのニコチン酸、40mg/Lの塩酸ピリドキソール、200mg/Lのミオ−イノシトール)であった。リゾチームを最終濃度が2.5mg/mlになるまで懸濁液に加えた。約4時間、37℃での培養後、細胞壁を劣化させ、これにより得られたプロトプラストを遠心分離によって回収した。ペレットを5mlの緩衝液Iで一度、5mlのTE緩衝液(10mMのトリスHCl、1mMのEDTA、pH8)で一度洗浄した。ペレットを4mlのTE緩衝液に再懸濁し、0.5mlのSDS溶液(10%)と0.5mlのNaCl溶液(5M)を加えた。プロテイナーゼKを最終濃度200μg/mlになるまで加えた後、懸濁液を約18時間、37℃で培養した。DNAを標準的な操作で、フェノール、フェノール−クロロホルム−イソアミルアルコールおよびクロロホルム−イソアミルアルコールによる抽出により精製した。それから、DNAを、1/50容積の3M酢酸ナトリウムおよび2容積のエタノールを加えて析出させ、次いで30分間、−20℃でインキュベートし、SS34ローター(Sorvall)を使用した高速遠心分離機において12000rpmで遠心分離を30分間行なった。DNAを20μg/mlのRNアーゼAを含む1mlのTE緩衝液に溶解し、4℃で、少なくとも3時間、1000mlのTE緩衝液に対して透析した。この間、緩衝液を3度交換した。透析したDNA溶液の0.4mlの部分に、0.4mlの2MLiClと0.8mlのエタノールを加えた。30分間、−20℃でインキュベートした後、遠心分離(13000rpm、Biofuge Fresco, Heraeus, Hanau, Germany)によりDNAを集めた。DNAペレットをTE緩衝液に溶解した。この操作により製造されたDNAは、すべての目的、サザンブロット法またはゲノムライブラリーの構築に使用することができた。
【0141】
実施例2:コリネバクテリウム−グルタミカム ATCC13032のEscherichia Coliにおけるゲノムライブラリーの構築
実施例1に記載したように製造されたDNAを用いて、コスミッドおよびプラスミドライブラリーが、公知で、良好に確立された方法に従って構築された(例えば、Sambrook,J等、(1989)'Molecular Cloning:A Laboratory Manual', Cold Spring Harbor Laboratory PressまたはAusubel,F.Mら(1994) 'Current Protocols in Molecular Biology', John Wiley and Sons.を参照)。
【0142】
どのようなプラスミドまたはコスミッドでも使用可能であった。特に、プラスミドpBR322(Sutcliffe, J.G.(1979) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:3737-3741); pACYC177 (Change & Cohen(1978) J.Bacteriol 134:1141-1156), pBS系列のプラスミド(pBSSK+,pBSSK-およびその他;Stratagene LaJolla,USA)、またはSuperCos1(Stratagene, LaJolla, USA)またはLorist6(Gibson, T.J., Rosenthal A. and Waterson, R.H.(1987) Gene 53: 283-286)のコスミッドが使用された。特にC.グルタミカムにおいて使用するための遺伝子ライブラリーは、プラスミドpSL109( Lee, H.S. and A.J.Sinskey(1994) J.Microbiol.Biotechnol.4:256-263)を用いて構築することができる。
【0143】
metCクローンを単離するため、E. coli JE 6839細胞をライブラリーDNAで形質転換し、そしてアンピシリンおよび適当なサプリメントを含むM9最少培養地に載置した。このプレートを37℃で5日間インキュベートした。単離されたmetC遺伝子の完全なヌクレオチド配列を、当該技術者等に周知の方法で決定した。
【0144】
実施例3:DNAシーケンスとコンピューターによる機能解析
実施例2に記載されたゲノムライブラリーを標準的な方法、特にABI377シーケンスマシーンを用いた連鎖停止法(例えばFleischman,R.D.ら(1995)'Whole-genome Random Sequencing and Assembly of Haemophilus Influenzae Rd.',Science, 269:496-512参照)に従ったDNAシーケンスに使用した。以下のヌクレオチド配列のシーケンスプライマーを使用した:
5'-GGAAACAGTATGACCATG-3'(SEQ ID NO.:123)もしくは5'-GTAAAACGACGGCCAGT-3'(SEQ ID NO.:124)。
【0145】
実施例4:生体内突然変異誘発
コリネバクテリウム−グルタミカムの生体内(in vivo)突然変異誘発が、E.coliまたは他の微生物(例えば、Bacillus spp.またはSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母)であって、その遺伝子情報の完全性を保つための能力が減じられているものを通して、プラスミド(または他のベクター)の通過により行うことができた。典型的な突然変異誘発株は、DNA修復システム(例えば、mutHLS, mutD, mutT等; Rupp, W.D. (1996) DNA repair mechanisms, Escherichia coli and Salmonella, p2277-2294, ASM: Washington、参照)の遺伝子に変異を持っていた。かかる株は当該技術者等に周知であった。かかる株の使用法は、例えば、Greener,A. and Callahan, M. (1994) Strategies 7: 32-34に記載されていた。
【0146】
実施例5:Escherichia coli および コリネバクテリウム−グルタミカムの間のDNA転換
数種類のコリネバクテリウムとブレビバクテリウム種は、自律的に複製する(例えば、Martin, J.F.ら(1987) Biotechnology, 5:137-146、参照)内因性プラスミド(例えば、pHM1519またはpBL1)を含んでいた。Escherichia coliとCorynebacuterium glutamicumのシャトルベクターは、E.coliの標準ベクター(Sambrook,J.et al.(1989),'Molecular Cloning:A Laboratory Manual',Cold Spring Harbor Laboratory PressまたはAusubel,F.M.et al.(1994)'Current Protocols in Molecular Biology', John Wiley and Sons)を用いて、これに、開始または複製のおよび適当なコリネバクテリウム−グルタミカム由来のマーカーを加えることで容易に構築することができた。かかる複製の開始点は、好ましくはコリネバクテリウムとブレビバクテリウム種から単離された内因性プラスミドからもたらされた。これらの種の形質転換マーカーとして、カナマイシン耐性の遺伝子(例えば、Tn5またはTn903トランスポゾンから誘導されたもの)またはクロラムフェニコール耐性遺伝子(Winnacker, E.L. (1987) “From Genes to Clones-Introduction to Gene Technology, VCH, Weinheim)を特に用いた。E. coli とC.グルタミカムの双方でおいて複製するシャトルベクターの広範囲に亘る構築についての文献例については、数多くあり、遺伝子過剰発現を含むいくつかの目的に使用できた(例えば、Yoshihama, M. et al. (1985) J. Bacteriol. 162: 591-597, Martin J.F. et al. (1987) Biotechnology, 5: 137-146 およびEikmanns, B.J. et al. (1991) Gene, 102: 93-98、参照)。
【0147】
標準的な方法を用いて、上述のように所望の遺伝子をシャトルベクターの一つヘクローンすることが可能であり、またこのようなハイブリッドベクターをコリネバクテリウム−グルタミカム株に導入することが可能であった。C.グルタミカムの形質転換を、プロトプラスト形質転換(Kastsumata, R. et al. (1984) J. Bacteriol. 159306-311)、エレクトロポレーション(Liebl, E. et al. (1989) FEMS Microbiol. Letters, 53: 399-303)、そして特定のベクターを用いた場合には、接合(例えば、Schaefer, A et al. (1990) J. Bacteriol. 172: 1663-1666に記載)によって達成可能であった。C.グルタミカム由来のプラスミドDNAの製造(当該分野で周知の標準的な方法を用いる)およびそのE.Coliへの形質転換によるC.グルタミカムからE.coliへのシャトルベクターの転換も可能であった。この形質転換段階(工程)は、標準的な方法を用いて行うことができるが、Mcr−不足E.coli株、例えばNM522(Gough & Murray (1983) J. Mol. Biol. 166: 1-19)を使用することが有効であった。
【0148】
遺伝子は、pCG1(米国特許番号4617267号)またはその断片、必要によりTN903(Grindley, N.D. and Joyce, C.M. (1980)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77(12): 7176-7180)からのカナマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを用いたC.グルタミカム 株中に過剰発現させることができた。更に、遺伝子は、プラスミドpSL109(Lee, H.-S. and A.J. Sinskey (1994) J. Microbiol Biotechnol. 4: 256-263)を用いてC.グルタミカム株中に過剰発現することができた。
【0149】
複製プラスミドの使用法の他に、遺伝子の過剰発現は、ゲノムへの組み込みによって達成可能であった。C.グルタミカムまたは他のコリネバクテリウムまたはブレビバクテリウム種における遺伝子組み込みは、周知の方法、例えばゲノム領域での相同性組換え、制限エンドヌクレアーゼ仲介の組み込み(REMI)(例えば、ドイツ特許第19823834号)、またはトランスポゾンの使用などによって達成可能であった。調節領域(例えば、プロモーター、レプレッサー、および/またはエンハンサー)を、配列の修飾、挿入、サイト−ダイレクテド法(例えば、相同性組換え)またはランダムイベントに基づく方法(例えばトランスポゾン突然変異誘発またはREMI)による欠失により修飾することにより、所望の遺伝子の活性を調節することも可能であった。転写ターミネーターとして機能する核酸配列は、本発明による1種以上の遺伝子のコード領域へ3’挿入されることも可能であった。かかるターミネーターは、当該分野で周知であり、例えばWinnacker, E.L. (1987) From Genes to Clones-Introduction to Gene Technology. VCH: Weinheimに開示されていた。
【0150】
実施例6:変異タンパク質の発現の評価
形質転換された宿主細胞中の変異タンパクの活性に関する観察は、変異タンパクが野生型タンパクと類似した形態と類似した量で発現されるという事実に基づいていた。変異遺伝子(遺伝子産物に対する転写に用いられるmRNAの量のインジケーター)の転写レベルを確認するために有用な方法は、ノーザン・ブロット法(例えば、Ausubel et al.(1988) Current Protocols in Molecular Biology, Wiley: New York、参照)であり、注目遺伝子に結合するように設計されたプライマーが、検出タグ(通常、放射性または化学ルミネセンス)により、生物の培養の総RNAを抽出し、ゲルに流し、安定マトリックスに移動させ、このプローブでインキュベートする場合、プローブの結合および結合の量がこの遺伝子のmRNAの存在と量を示すようにラベルされていた。この情報は、変異遺伝子の転写程度の証拠であった。全細胞のRNAは、当該分野で周知の数種類の方法、例えば、Bormann, E.R. et al. (1992) Mol. Microbiol. 6:317-326に記載された方法により、コリネバクテリウム−グルタミカムから製造可能であった。
【0151】
このmRNAから翻訳されたタンパクの存在と比較量を評価するために、SDS−アクリルアミドゲル電気泳動等の標準的な技術を用いた。この方法を用いて、コリネバクテリウム−グルタミカムにおいてmetCおよびmetZをmetAと組み合わて過剰生産した。ウェスタン・ブロッド法を用いることも可能であった(例えば、Ausubel et al. (1988) Current Protocols in Molecular Biology, Wiley: New York、参照)。この方法では、全細胞のタンパクは、抽出され、ゲル電気泳動により分離され、ニトロセルロース等のマトリックスに移され、そして抗体等の、所望のタンパク質に特異的に結合するプローブとともにインキュベートされた。このプローブは、一般に、容易に検出可能な化学ルミネセンスまたは比色ラベルでタグ付けされていた。観察されるラベルの存在と量は、細胞中の所望の変異タンパク質の存在と量を示していた。
【0152】
実施例7:遺伝子的に修飾されたコリネバクテリウム−グルタミカムの成長−媒体(培地)および培養条件
E.coli株を、それぞれMBおよびLB培養液においてごく一般的に成長させた(Follettie, M. T., et al. (1993) J. Bacteriol. 175, 4096-4103)。E.coliの最少培養地はM9および修飾されたMCGCであった(Yoshihama, M., et al. (1985) J. Bacteriol. 162, 591-507)。最終濃度1%まで、グルコースを添加した。抗生物質を下記の量だけ添加した(μg/ml):アンピシリン、50;カナマイシン、25;ナリジクス酸、25。アミノ酸、ビタミン、および他のサプリメントを下記の量だけ添加した:メチオニン、9.3mM;ヒスチジン、9.3mM;チアミン、0.05mM。E.coli細胞をそれぞれ37℃でごく一般的に成長させた。
【0153】
遺伝子的に修飾されたコリネバクテリアは、合成または天然成長媒体中で培養された。Corynebacteria(コリネバクテリア)の異なった成長媒体の多くは、周知であり且つ容易に入手可能であった(Lieb et al. (1989) Appl. Microbiol. Biotechnol., 32:205-210; von der Osten et al. (1998) Biotechnology Letters, 11:11-16; Patent DE 4,120,867; Liebl (1992) “The Genus Corynebacterium, in: The Procaryotes, Volume II, Balows, A. et al., eds. Spring-Verlag)。これらの媒体は、一種以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび微量要素から構成されていた。好ましい炭素源は、モノ−、ジ−またはポリサッカライドなどの糖類であった。例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースが極めて良好な炭素源として機能する。糖蜜または砂糖精製による他の副生成物等の複合化合物によって媒体に糖類を供給することも可能であった。異なる炭素源の混合物を供給することも有効な場合があった。他の炭素源として考えうるのは、メタノール、エタノール、酢酸、乳酸などのアルコールおよび有機酸であった。窒素源は、通常、有機または無機の窒素化合物か、またはこれらの化合物を含む材料であった。窒素源として、例えば、アンモニアガス、アンモニウム塩(例えばNHClまたは(NHSO)、NHOH、硝酸塩、尿素、アミノ酸、あるいはコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母抽出物、肉抽出物などの複合窒素源が含まれていた。
【0154】
ホモシステインおよびメチオニン等のアミノ酸を含有する硫黄は、異なる硫黄源を用いて過剰生産可能であった。スルフェート、チオスルフェート、スルフィト、更にHSおよびスルフィド等の還元硫黄源並びに誘導体を使用可能であった。更に、メチルメルカプタン等の有機硫黄源、チオグリコレート、チオシアネート、チオ尿素、システイン等のアミノ酸含有硫黄、および化合物含有の他の硫黄を用いて、ホモシステインおよびメチオニンの過剰生産を達成可能であった。
【0155】
媒体に含まれていたも良い無機塩化合物は、クロリド−、リン酸、硫酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、コバルト塩、モリブデン塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、銅塩、鉄塩であった。金属イオンを溶液中に保持するために、媒体中にキレート化合物を添加可能であった。特に有用なキレート化合物は、カテコールもしくはプロトカテチュエートなどのジヒドロキシフェノール、またはクエン酸などの有機酸であった。培養体は、ビタミンなどの他の成長因子または成長促進剤、例えばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩、ピリドキシンなども含むのが一般的であった。成長因子および塩は、酵母抽出物、糖蜜、コーンスティープリカーなどの複合培養体成分に由来することも屡々あった。培養体化合物の正確な組成は、直接の実験に強く依存し、各々の特定の場合に個々に決定される。培養体の最適化に関する情報は、テキストブック”Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach (eds. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) pp.53-73, ISBN 019 963577 3)から入手可能であった。成長培養体を市販品、例えば標準1(Merck)またはBHI(grain heart infusion, DIFCO)などから選定することも可能であった。
【0156】
すべての培養体成分は、熱(1.5×10Pa、121℃で20分間)またはろ過殺菌法のいずれかにより殺菌された。この成分は、一緒に、または所望により別々に殺菌可能であった。すべての培養体成分は、成長の初期に存在させるか、または必要により連続的にまたは回分式に加えることが可能であった。
【0157】
培養条件を実験ごとに別個に定義した。温度は、15〜45℃の範囲であった。温度を一定に保つか、実験中に変えることが可能であった。培養体のpHは、5〜8.5であり、約7.0であるのが好ましく、培養体に緩衝液を添加することで一定に保つことが可能であった。この目的のために、緩衝液の例は、リン酸カリウム緩衝液であった。MOPS、HEPES、ACESその他の合成緩衝液を代わりに使用することも、あるいはこれらを同時に使用することも可能であった。成長の間に、NaOHまたはNHOHを添加することより一定の培養pHを保つことも可能であった。酵母抽出物などの複合培養体成分を使用する場合、多くの複合成分は高い緩衝能力があるという事実によって、更に別の緩衝液の必要性がなくなる場合があった。微生物の培養に発酵槽を使用する場合、pHはアンモニアガスにより制御可能であった。
【0158】
インキュベート時間は、通常、数時間から数日の範囲であった。この時間は、ブロスの中に蓄積される生成物の量を最大にするように選択された。開示された成長実験は、種々の容器、例えばミクロタイター板、ガラス管、ガラスフラスコ、または種々のサイズのガラスもしくは金属発酵槽等の中で行うことが可能であった。大多数のクローンをスクリーニングするために、微生物をミクロタイター板、ガラス管、振とうフラスコ中で、バッフル付きで、またはなしで培養すべきであった。100mlの振とうフラスコを使用するのが好ましく、必要な成長培養体を10容積%満たした。このフラスコを100〜300rpmの速度範囲を用い、ロータリーシェーカー(ふり幅25mm)で振とうした。蒸発ロスは、湿潤雰囲気中に保つことによって少なくすることが可能であった。あるいは、蒸発ロスの数学的補正を行った。
【0159】
遺伝子的に修飾されたクローンを試験する場合、修飾されていないコントロールクローンまたはいかなる挿入もなされていない基本プラスミドを含むコントロールクローンを更に実験した。培養体を寒天平板上、例えばCMプレート(10g/Lのグルコース、2.5g/LのNaCll、2g/Lの尿素、10g/Lのポリペプトン、5g/Lの酵母抽出物、5g/Lの肉抽出物、22g/Lの寒天、2MのNaOHによりpH6.8としたもの)を30℃でインキュベートしたもので成長させた細胞を用い、0.5−1.5のOD600まで接種した。培養体の接種は、CMプレートからのC.グルタミカム細胞のサリーン懸濁液を導入するか、またはこのバクテリアの前培養液を添加することにより達成された。
【0160】
実施例8:変異タンパクの機能のインビトロ解析
酵素の活性と速度論的パラメーターの測定は、当該分野で良好に確立されていた。所定の変化型酵素の活性を決定するための実験は、当該技術者等の能力の範囲内で、野生種酵素の比活性に対して行なわれなければならない。一般に酵素についての概要、並びに構造、速度論的、原理、方法、適用および多数の酵素活性の測定例に関する特定の詳細は、例えば以下の参照に見出される:Dixon, M., and Webb, E.C., (1979) Enzymes. Longmans: London; Fersht, (1985) Enzyme Structure and Mechanism. Freeman: New York; Walsh, (1979) Enzymatic Reaction Mechanisms. Freeman: San Francisco; Price, N.C., Stevens, L. (1982) Fundamentals of Enzymology. Oxford Univ. Press:Oxford; Boyer, P.D., ed(1983) The Enzymes, 3rd ed. Academic Press: New York; Bisswanger, H., (1994) Enzymkinetic, 2nd ed. VCH: Weinheim (ISBN 3527300325), Bergmeyer, H.U., Bergmeyer, J., Grassl, M., eds. (1983-1986) Methods of Enzymatic Analysis, 3rd ed., vol. I-XII, Verlag Chemie: Weinheim; and Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1987) vol. A9, 'Enzymes'. VCH: Weinheim, p. 352-363。
【0161】
コリネバクテリウム−グルタミカムからの細胞抽出物を、以前から開示されているようにして調製した(Park, S.-D., et al. (1998) Mol. Cells 8, 286-294)。シスタチオニンβ−リアーゼを、以下のように評価した。このアッセイ混合物は、100mMのトリス−HCl(pH8.5)、0.1mMのNADH、1mMのL−シスタチオニン、5単位のL−ラクテートデヒドロゲナーゼ、および適量の粗抽出物を含んでいた。光学変化を340nmでモニターした。S−(β−アミノエチル)システイン(AEC)耐性についての評価を、Rossol, I. and Puehler, A. (1992) J. Bacteriol. 174, 2968-77に記載されているように行った。異なるコリネバクテリウムグルタミカムの抽出物から得られるシスタチオニンβ−リアーゼアッセイの結果、並びに同一の株のAEC耐性アッセイの結果を、以下の表5にまとめる。
【0162】
【表1】
Figure 0004786107
【0163】
a 1%のグルコースを含む最小培養地で定常期(静止期)へ成長によって、酵素を誘導した。細胞を採取し、分解し、そして材料および方法に開示されているように、活性に関して評価した。
b MCGC最小培養地を使用した。成長をプレートでモニターした。
c 細胞を、40mMのS−(β−アミノエチル)システイン(AEC)を含むプレートで5日間成長させた。
d 変異体をこの研究で生成した。
e 測定されなかった
【0164】
シスタチオニンβ−リアーゼを発現するためのmetCクローンの能力を、酵素アッセイによって試験した。プラスミドpSL173を宿しているC.グルタミカムASO19E12細胞から得られた粗抽出物をアッセイした。プラスミドを宿している細胞は、エンプティベクターpMT1(表5)を宿している細胞と比較して、約5倍増大させたシスタチオニンβ−リアーゼの活性を示した。原因としては、明らかに遺伝子効果であった。粗生成物についてのSDS-PAGE解析によって、M約41000である推定上のシスタチオニンβ−リアーゼ帯域が明らかになった。推定上シスタチオニンβ−リアーゼ帯域のそれぞれの強度は、相補性と酵素アッセイデータ(表5)と一致していた。上述したように、metC領域は、以前に報告されているaecDと殆んど同一であることが明らかとなった。aecD遺伝子を、その能力の基づいて単離して、S−(β−アミノエチル)システイン(AEC)、すなわち毒性のリシン類似物に対する耐性を形成するという理由から、本発明者等は、この能力の存在に関して、metCのタンパク質生成物を試験した。表5に示したように、シスタチオニンβ−リアーゼを過剰発現する細胞は、AECに対する耐性が向上していた。metC遺伝子において突然変異する菌株(以下を参照)は、その能力を完全に失って、AECに対して耐性のある表現型を示した。
【0165】
O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼに関するアッセイ(評価)は、以下のように行った(Belfaiza, J., et al. (1998) J. Bacteriol. 180, 250-255; Ravanel, S., M. Groux, and R. Douce (1995) Arch. Biochem. Biophys. 316, 572-584; Foglino, M. (1995) Microbiology 141, 431-439)。0.1mlのアッセイ混合物は、20mMのMOPS−NaOH(pH7.5)、10mMのO−アセチルホモセリン、2mMの、50mMのNaOHにおけるNaSおよび適量の酵素を含んでいた。最後に添加されたNaSの添加直後、反応混合物に50μLの鉱油をかぶせた。30℃で30分インキュベーションした後、3分間混合物を煮沸することによって、反応を停止させた。この反応で製造されるホモシステインを、以前から記載されているように定量した(Yamagata, S. (1987) Method Enzymol. 143, 478-483)。0.1mlの反応混合物を採取し、そして0.1mlのHO、0.6mlの飽和NaCl、0.1mlの、67mMKCN含有1.5MのNaCO、および0.1mlの2%ニトロプルシドと混合した。室温で1分間インキュベーションした後、光密度を520nmで測定した。更に別のmetZ遺伝子種、例えばmetZ遺伝子含有プラスミドを宿しているコリネバクテリウム細胞のmetZ酵素活性は、更に別のmetZ遺伝子を含まないコリネバクテリウム細胞の同一の種類と比較して、十分に高いものであった。
【0166】
DNAと結合するタンパクの活性は、数種の極めて良好に確立された方法、例えばDNAバンド−シフトアッセイ(ゲル遅延アッセイとも呼ばれる)により測定可能であった。他の分子の発現におけるかかるタンパクの効果は、レポーター遺伝子アッセイ(例えば、Kolmar, H. et al. (1995) EMBO J. 14: 3895-3904および引用文献に記載されている)を用いて測定可能であった。レポーター遺伝子試験系は周知であり、β−ガラクトシダーゼ、緑蛍光性タンパクおよびその他数種の酵素を用いて、原核細胞および真核細胞の両方において適用が確立されていた。
【0167】
膜輸送タンパクの活性についての測定は、例えば、Gennis, R.B. (1989) “Pores, Channels and Transporters”, in Biomembranes, Molecular Structure and Function, Springer; Heidelberg, p. 85-137; 199-234; and 270-322に記載されたような技術に従って行なわれた。
【0168】
実施例9:所望の生成物の製造における変異タンパクの影響についての分析
所望の化合物(例えば、アミノ酸)の製造におけるC.グルタミカムの遺伝子修飾に関する効果は、適当な条件(例えば、上述した条件)下に変更した微生物を成長させ、培養地および/または細胞成分を、所望の生成物(例えば、アミノ酸)の改善した製造に関して分析することによって評価可能であった。かかる分析技術は、当該技術者等に周知であり、例として、分光法、薄層クロマトグラフィー、種々の染色法、酵素的および微生物学的方法、ならびに高速液体クロマトグラフィー等の分析的クロマトグラフィー(例えば、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. A2, p. 89-90 and p. 443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A. et al., (1987) 'Applications of HPLC in Biochemistry 'in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, vol. 17; Rehm et al. (1993) Biotechnology, vol. 3, Chapter III: 'Product recovery and purification', page 469-714, VCH: Weinheim; Belter, P.A. et al. (1988) Bioseparations: downstream processing for biotechnology, John Wiley and Sons; Kennedy, J.F. and Cabral, J.M.S. (1992) Recovery processes for biological materials, John Wiley and Sons; Shaeiwitz, J.A. and Henry, J.D.(1988) Biochemical separations, in: Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. B3, Chapter 11, page 1-27, VCH: Weinheim; and Dechow, F.J. (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publicationsを参照されたい)が挙げられる。
【0169】
発酵による最終生成物の測定の他に、所望の化合物の製造に使用される代謝経路の他の成分、例えば中間体および副生成物を分析して、化合物の全製造効率を測定することも可能であった。解析法としては、培養地中の栄養剤(例えば砂糖(糖類)、炭化水素、窒素源、ホスフェート、および他のイオン)レベルの測定、バイオマス組成と成長の測定、生合成経路による一般的な代謝物の製造の解析、および発酵の間に生成したガスの測定を例として挙げることができた。これらの測定に関する標準的な方法は、Applied Micro Physiology, A Practical Approach, P.M. Rhodes and P.F. Stanbury, eds., IRL Press, p. 103-129; 131-163; and 165-192 (ISBN: 0199635773) およびそこでの引用文献に概説してある。
【0170】
実施例10:C.グルタミカム培養より得られる所望の生成物の精製
C.グルタミカム細胞からまたは上述した培養物の上澄み液から得られる所望の生成物の回収は、当該分野で周知の種々の方法により行うことができた。所望の生成物を細胞から分泌しない場合、細胞を培養物から低速遠心分離により回収することができ、この細胞を、機械的な力または超音波等の標準的な技術で溶解可能であった。細胞の破片を遠心分離で取り除き、そして可溶性タンパクを含む上澄み画分を、所望の化合物のさらなる精製用に保持した。生成物をC.グルタミカム細胞から分泌する場合、この細胞を培養物から低速遠心分離により取り除き、そして上澄み画分をさらなる精製用に保持した。
【0171】
何れの精製法から得られる上澄み画分を、適当な樹脂でクロマトグラフィー処理するが、所望の分子がクロマトグラフィー樹脂に保持され、且つサンプル中の多くの不純物が保持されないか、あるいは不純物が樹脂により保持され、且つサンプルが保持されないように樹脂を用いたクロマトグラフィーで処理する。かかるクロマトグラフィー工程は、必要により、同一または異なるクロマトグラフィー樹脂を用いて繰り返すことが可能であった。当該技術者等は、適当なクロマトグラフィー樹脂の選択と、精製される特定の分子への最も効率的な適用に精通していたであろう。精製された生成物は、ろ過または限外ろ過により濃縮し、そして生成物の安定性を最大限にする温度で保存可能であった。
【0172】
広範囲に亘る精製法が当該分野で周知であり、そして上述した精製法は、限定することを意味するものではなかった。かかる精製技術が、例えば、Bailey, J.E. & Ollis, D.F. Biochemical Engineering Fundamentals, McGraw-Hill: New York (1986)に記載されていた。
【0173】
単離した化合物の同定と純度が、当該分野における標準的な技術によって評価可能であった。これらには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光学的方法、染色法、薄層クロマトグラフィー、NIRS、酵素的または微生物学的アッセイが含まれる。かかる解析法は、Petek et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60: 133-140; Malakhova et al.(1996) Biotekhnologiya 11: 27-32; and Schmidt et al. (1988) Bioprocess Engineer. 19: 67-70. Ulmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, (1996) vol. A27, VCH: Weinheim, p. 89-90, p. 521-540, p.540-547, p. 559-566, 575-581 and p. 581-587; Michal, G. (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons; Fallon, A. et al. (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, vol. 17に記載されていた。
【0174】
実施例11:本発明の遺伝子配列の解析
配列の比較と、2種類の配列間における相同割合の決定とは公知の技術であり、数学的アルゴリズム、例えばKarlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87: 2264-68のアルゴリズムで、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-77に記載のように変形されたものなどを使用して行うことが可能であった。かかるアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み入れられていた。BLASTヌクレオチド探索を、NBLASTプログラム、スコア=100、語長=12によって行い、本発明のMP核酸分子に相同なヌクレオチド配列が得られた。BLASTタンパク探索を、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3によって行い、本発明のMPタンパク分子に相同なアミノ酸配列が得られた。比較の目的で、ギャップドアライメント(gapped alignment)を得るために、ギャップドBLASTを、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載のように使用可能であった。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムの使用する場合、当該技術者等は、解析される特定の配列に対して、プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のパラメーターを最適化する方法について知っているであろう。
【0175】
配列の比較に使用される数学的アルゴリズムの他の例は、Meyers とMiller ((1988) Comput. Appln. Biosci. 4: 11-17)のアルゴリズムであった。かかるアルゴリズムを、GCGシーケンスアライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れた。ALIGNプログラムをアミノ酸配列の比較に使用する場合、PAM120重量残渣表、12のギャップ長さペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用可能であった。配列解析に使用される更に別のアルゴリズムが当該分野で公知であり、ADVANCEおよびADAM(Torelli and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci. 10:3-5に記載)および FASTA( Pearson and Lipman (1988) P.N.A.S. 85:2444-8に記載)を含むものであった。
【0176】
2本のアミノ酸配列間における相同割合は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http: //www.gcg.comで入手可能)を用い、Blosum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかと、そして12、10、8、6または4の間隙重さ、および2、3または4の長さ質量を用いて達成可能であった。2本の核酸配列間における相同割合は、標準的なパラメーター、例えばギャップ質量50および長さ質量3を用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムにより達成可能であった。
【0177】
本発明の遺伝子配列と、遺伝子バンクに存在する配列の比較解析が当該分野で公知の技術を用いて行なわれた(例えば、Bexevanis and Ouellette, eds. (1998) Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins. John Wiley and Sons: New York、参照)。本発明の遺伝子配列を、遺伝子バンクに存在する遺伝子と、3段階の工程で比較した。第1段階(第1工程)で、本発明の配列の各々について、遺伝子バンクに存在するヌクレオチド配列に対してBLASTN解析(例えば、ローカルアライメント解析)を行い、最初にヒットした500個についてさらに解析が続け、次にFASTA探索(例えば、ローカルアライメントとグローバルアライメントとの組み合わせ解析で、限定された配列領域を整列させる)を、これらの500個について行った。次いで、本発明による各遺伝子配列を、最初にヒットした3個のFASTAにGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて(標準的なパラメーターを使用して)包括的に整列させた。正確な結果を得るために、遺伝子バンクから抽出された配列の長さを、当該分野で周知の方法により当該配列の長さに調節した。この解析の結果を表4に示した。これにより得られたデータは、遺伝子バンクの参照の各々と比較した本発明の遺伝子の各々においてGAP(グローバル)解析を単独で行なったときに得られるであろう結果と一致したが、このようなデータベースを広げて行なったGAP(グローバル)解析と比較して明らかに計算時間が短縮された。切り捨て値を上回るアライメントが得られなかった本発明の配列を、アライメントの情報なく表4に示した。表4に、“%相同(GAP)”の見出しで記載されたGAPアライメント相同割合は、’,’が小数点を表すヨーロッパの数の形式で列挙されているということは、当該技術者等によってさらに理解されたであろう。例えば、このカラム中の“40,345”の値は、40.345%を表す。
【0178】
実施例12:DNAミクロアレイの構築と操作
本発明の配列を、DNAミクロアレイ(デザイン、方法論、およびDNAアレイの使用法は周知であり、例えばSchena, M. et al. (1995) Science 270: 467-470; Wodicka, L. et al. (1997) Nature Biotechnology 15:1359-1367; DeSaizieu, A. et al. (1998) Nature Biotechnology 16: 45-48;およびDeRisi, J.L. et al. (1997) Science 278: 680-686に記載されている)の構築と適用において更に使用可能であった。
【0179】
DNAミクロアレイは、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、シリコーンまたは他の材料からなる固体(硬質)または軟質支持体である。核酸分子を、整然とした方法で表面に付着させることが可能であった。適当なラベリング後、他の核酸または核酸混合物を固定された核酸分子にハイブリダイズし、そしてこのラベルを用いて、限定領域でハイブリダイズされた分子の個々の信号強度をモニターおよび測定可能であった。この方法論により、適用された核酸サンプルまたは混合物中のすべてあるいは選択された核酸の相対量または絶対量を同時に定量化可能となった。従って、DNAミクロアレイにより、並行して多数の(6800以上)核酸の発現を解析することが可能となった(例えば、Schena, M. (1996) BioEssays 18(5): 427-431、参照)。
【0180】
本発明の配列を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応等の核酸増幅反応によって、1種以上のC.グルタミカム遺伝子の限定領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドプライマーの設計が可能となった。5’または3’オリゴヌクレオチドプライマーあるいは適当なリンカーを選択および設計すると、これにより得られたPCR産物を上述した基質培養地の表面に共有結合可能となった(例えば、Schena, M. et al. (1995) Science 270: 467-470にも記載されている)。
【0181】
核酸ミクロアレイは、Wodicka,L.et al.(1997) Nature Biotechnology 15:1359-1367に記載されたように、その場のオリゴヌクレオチド合成によっても構築可能であった。写真平板法により、マトリックスの正確に限定された領域が露光された。光不安定性保護基は、これによって活性化され、ヌクレオチド付加が進行し、一方、光からマスクされた領域はいかなる修飾も進行しなかった。これに続く保護と光活性化のサイクルにより、限定された位置における異なったオリゴヌクレオチドの合成を可能にした。本発明による遺伝子の、小さく限定された領域を、ミクロアレイ上で、固相オリゴヌクレオチド合成により合成することができる。
【0182】
ヌクレオチドのサンプルまたは混合物中に存在する本発明の核酸分子は、ミクロアレイとハイブリダイズ可能であった。これらの核酸分子は、標準的な方法でラベル可能であった。要するに、核酸分子(例えば、mRNA分子またはDNA分子)は、例えば逆転写またはDNA合成の間、同位元素によりまたは蛍光によりラベルされたヌクレオチドの組み込みによりラベルされた。ラベルされた核酸のミクロアレイへのハイブリダイゼーションは、例えば Schena, M. et al. (1995) supra; Wodicka, L. et al. (1997), supra;およびDeSaizieu A. et al (1998), supraに記載されている。このハイブリダイズされた分子の検出と定量化は、特定の組み込まれたラベルにより行なわれた。放射性ラベルは、例えばSchena, M. et al. (1995) supraに記載されたように検出可能であり、そして蛍光ラベルは、例えばShalon et al. (1996) Genome Research 6: 639-645の方法により検出可能であった。
【0183】
上述したように、本発明の配列をDNAミクロアレイ技術に適用することにより、C.グルタミカムまたは他のコリネバクテリアの異なった株の比較解析が可能となった。例えば、個々の転写の特徴に基づく内部株の変種の研究、並びに特定の株の性質および/または所望の株の性質、例えば病原性、生産性、およびストレス寛容に重要な遺伝子の同定は、核酸アレイ方法論により促進された。更に、発酵反応中における本発明の遺伝子の発現に関する特徴の比較は、核酸アレイ技術を用いることで可能となった。
【0184】
実施例13:細胞タンパク質群(ポピュレーション)の動力学的解析(プロテオミクス)
本発明の遺伝子、組成、および方法は、タンパク質群の相互作用および動力学(プロテオミクスと称する)の研究に適用可能であった。所望のタンパク質群は、C.グルタミカム(例えば、他の生物のタンパク質群と比較して)の全タンパク質群を含む、すなわち、特定の環境または代謝条件下(例えば、高温または高圧で、あるいは高いpHまたは低いpHでの発酵中)で活性なタンパク、あるいは特定の成長および発達段階中に活性なタンパクの全タンパク質群を含むものであったが、これに限定さるものではない。
【0185】
タンパク質群は、種々の周知の技術、例えばゲル電気泳動により解析可能であった。細胞タンパクは、例えば、細胞溶解または抽出によって得られ、そして種々の電気泳動技術を用いて相互に分離可能であった。ドデシル硫酸ナトリウムのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、タンパク質を、その分子量に基づいて大部分分離した。等電点のポリアクリルアミドゲル電気泳動(IEF−PAGE)により、タンパク質を、その等電点(アミノ酸配列を反映するのみならずタンパク質の後翻訳修飾も反映する)により分離した。他の、さらに好ましいタンパク解析方法は、2−D−ゲル電気泳動(例えば、Hermann et al. (1998) Electrophoresis 19: 3217-3221; Fountoulakis et al. (1998) Electrophoresis 19: 1193-1202; Langen et al. (1997) Electrophoresis 18: 1184-1192; Antelmann et al. (1997) Electrophoresis 18: 1451-1463に記載されている)として知られるIEF−PAGEとSDS−PAGEを連続して組み合わせることであった。他の分離技術、例えばキャピラリーゲル電気泳動などもタンパク質の分離に利用可能であり、かかる技術は、当該分野で周知であった。
【0186】
これらの方法論により分離されたタンパク質は、標準的な技術、例えば染色またはラベリングにより可視化可能であった。適当なステインは、当該分野で公知であり、そしてクマシーブリリアントブルー、銀染色、または蛍光染料、例えばSypro Ruby(Molecular Probes)を含む。C.グルタミカムの培養地における、放射性物質によりラベルされたアミノ酸またはその他のタンパク前駆体(例えば、35S−メチオニン、35S−システイン、14C−ラベルされたアミノ酸、15N−アミノ酸、15NOまたは15NH またはC13ラベルされたアミノ酸)の含有物により、その分離前に、これらの細胞から得られるタンパクのラベリングが可能となった。同様に、蛍光ラベルを使用することが可能となった。これらのラベルされたタンパクを、抽出し、単離し、そして上述した技術により分離した。
【0187】
これらの技術により可視化されたタンパクは、さらに、使用された染料またはラベルの量を測定することにより解析可能であった。所定のタンパクの量を、例えば光学的方法を用いて定量的に測定可能であり、そして同一のゲルまたは他のゲル中における他のタンパクの量と比較可能であった。ゲル上でのタンパクの比較は、例えば光学的比較、分光学的、ゲルのイメージスキャンおよび解析、または写真フィルムおよびスクリーンの使用によって行なうことができた。かかる技術は当該分野で周知である。
【0188】
所定のタンパクを同定するために、直接シーケンスまたは他の標準的な技術を使用可能であった。例えば、N−および/またはC末端アミノ酸シーケンス(例えば、エドマン分解)を、質量分光計(特にMALDIまたはESI技術(例えば、Langen et al. (1997) Electrophoresis 18: 1184-1192、参照))として使用することができた。本明細書で提供されたタンパク配列を、これらの技術によりC.グルタミカムタンパクの同定に使用可能であった。
【0189】
これらの方法により得られた情報は、タンパクの存在、活性、種々の生物学的条件(例えば、異なった生物、発酵時点、培養地条件、または異なったビオトープ、その他)からの異なったサンプル間における修飾の様式の比較に使用することができた。かかる実験を単独で、または他の技術との組み合わせにより得られたデータを、様々な適用、例えば所定の(例えば、代謝的)状況にある種々の生物の挙動を比較する、ファインケミカルを産出する株の生産性の向上させる、またはファインケミカルの製造効率を向上させることなどに使用可能であった。
【0190】
実施例14:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いることによる遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム−グルタミカムの配列に相同なヌクレオチド配列または他の菌株の配列に相同なヌクレオチド配列を含む特定のオリゴヌクレオチド、並びに当該分野で周知の制限酵素の認識部位を用いて遺伝子を増幅可能であった(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F., and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989、参照)。これらのオリゴヌクレオチドを使用して、上述した菌株の染色体の一部を含む特定のDNAフラグメントを増幅可能であったが、これは、T. aquaticus DNA−ポリメラーゼ、P. furiosus DNA−ポリメラーゼ、もしくはP. woesei DNA−ポリメラーゼ等のDNA−ポリメラーゼと、製造業者によって記載されている適当なバッファー溶液におけるdNTPsヌクレオチドとを用いることによって可能となった。
【0191】
上述した遺伝子のコード領域に含まれていない適当な上流および下流領域を含むがRXA00657から得られたコード配列などの遺伝子フラグメントを、上述した技術によって増幅可能となった。更に、これらのフラグメントを、取り込まれていないオリゴヌクレオチドおよびヌクレオチドから生成可能であった。DNA制限酵素を使用して、protruding endsを製造可能であった。このprotruding endsは、DNAをSinskey et al., 米国特許第4,649,119号に記載されているベクターに結紮するために使用可能な相補性酵素または相溶性酵素protruding ends、およびC.グルタミカムと関連するブレビバクテリウム種(例えば、lactofermentum)の遺伝子操作に関する技術とで消化されるベクターにDNAフラグメントを結紮するために使用可能であった。上流DNA配列の操作用プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチド、コード領域配列およびRXA00657の下流領域は、下記の通りであった:
TCGGGTATCCGCGCTACACTTAGA(SEQ ID NO: 121)
GGAAACCGGGGCATCGAAACTTA(SEQ ID NO: 122)。
【0192】
量が200ngであるコリネバクテリウム−グルタミカムの染色体DNAを、2.5UのPfu Turbo-PolymeraseTM (StratageneTM)、および200μMのdNTPsヌクレオチドを含む100μLの反応体積のテンプレートとして使用した。以下の温度/時間プロトコールによって、PCR-CyclerTM (Perkin Elmer 2400TM)でPCRを行った:
1サイクル:94℃:2分;
20サイクル:94℃:1分;
52℃:1分、72℃:1.5分;
1サイクル:72℃:5分。
【0193】
これにより得られた増幅DNAフラグメントからプライマーを除去し、そしてこれにより得られたフラグメントを、pBS KS(StratageneTM)の鈍いEcoRV部位にクローンした。制限酵素BamHI/XhoIで消化することによってこのフラグメントを削除し、そしてBamHI SalI消化ベクターpB(SEQ ID NO.:125)に結紮した。これにより得られたベクターを、pB RXA00657と称した。
【0194】
これにより得られた組み換えベクターは、例えば、Sambrook, J., Fritsh, E.F., and Maniatis, T. 共著、Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載の標準的な技術によって解析可能であり、そしてこれを、上述した技術によって、C.グルタミカムに形質転換可能であった。
【0195】
コリネバクテリウム株(ATCC13286)を、上述したように、形質転換するために処理した。C.グルタミカムの形質転換は、プロトプラスト形質転換(Kastsumata, R. et al. (1984) J. Bacteriol. 159306-311)、エレクトロポレーション(Liebl, E. et al. (1989) FEMS Microbiol. Letters, 53: 399-303)によって達成可能であり、特定のベクターを使用する場合には、接合によっても可能であった(例えば、Schaefer, A. et al. (1990) J. Bacteriol. 172: 1663-1666に記載されている)。C.グルタミカム由来のプラスミドDNAを調製し(当該分野で周知の標準的な方法を用いる)、そしてこれをE.coliに形質転換することによって、C.グルタミカムのシャトルベクターをE.coliに転写することも可能であった。この形質転換工程は標準的な方法で行っても良いが、NM522等のMcr-欠如E.coli株を使用するのが有効であった(Gough & Murray (1983) J. Mol. Biol. 166: 1-19)。
【0196】
コリネバクテリウム株(ATCC13286)等のバクテリア菌株の形質転換を、上述したRXA00657のDNA領域(SEQ ID NO.:5)を含むプラスミドpBを用いて行い、その他の場合は、核酸を挿入を更に有していないベクターpB(SEQ ID NO.:)を用いて行った。
【0197】
これにより得られた菌株を培養し、そしてCM-Medium(培養地)(10g/Lのグルコース、2.5g/LのNaCl、2.0gの尿素、10g/LのBacto Peptone(Difco/Becton Dicinson/Sparks USATM)、5g/Lの酵母菌抽出物(酵母エキス)(Difco/Becton Dicinson/Sparks USATM)、22g/LのAgar(Difco/Becton Dicinson/Sparks USATM)、および15μg/mlの硫酸カナマイシン(Serva, Germany)で、NaOHにてpH6.8に調節したもの)から単離した。
【0198】
上述したagar培養地から単離された菌株を、バッファーは含んでいない100mlの振とうフラスコ中、100g/Lのスクロース、50g/Lの(NHSO、2.5g/LのNaCl、2.0g/Lの尿素、10g/LのBacto Peptone(Difco/Becton Dicinson/Sparks USA)、5g/Lの酵母菌抽出物(Difco/Becton Dicinson/Sparks USA)、5g/Lの肉抽出物(Difco/Becton Dicinson/Sparks USA)、および25g/LのCaCO(Riedel de Haen, Germany)を含む液体において10mlで接種した。媒体をNaOHでpH6.8に調節した。
【0199】
菌株を30℃で48時間インキュベート(培養)した。インキュベーションの上澄み液を、EppendorfTMミクロ遠心分離機において12000rpmで20分間(20’)遠心分離することによって調製した。液体の上澄み液を希釈し、そしてアミノ酸解析に付した(この測定に関する標準的な方法について、Appled Microbial Physiology, A Practical Approach, P.M. Rhodes and P.F. Stanbury, eds., IRL Press, p. 103-129; 131-163; and 165-192 (ISBN:0199635773)およびそこでの引用文献に概要が示されている)。
【0200】
結果を以下の表6に示す。
【0201】
【表2】
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【0202】
[同等物]
当該技術者等は、通常の実験だけで、本明細書に開示された本滅名の特定の実施形態に対する多くの同等物(均等物)を認識するか、確認可能となるであろう。かかる同等物は、請求の範囲に含まれる。
【0203】
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【0204】
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【0205】
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【0206】
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【配列表】
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Claims (25)

  1. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含むコリネバクテリウム−グルタミカム由来の単離された核酸分子を含むベクターを含む細胞を培養して、ファインケミカルを製造する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  2. 配列番号6に示されたアミノ酸配列のポリペプチドの自然に発生する対立変異体をコードする単離された核酸分子を含むベクターを含む細胞を培養して、ファインケミカルを製造する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  3. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列に対して90%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むベクターを含む細胞を培養して、ファインケミカルを製造する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  4. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むベクターを含む細胞を培養して、ファインケミカルを製造する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  5. 前記ベクターが、更に1種以上の代謝経路核酸分子を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のファインケミカルの製造方法。
  6. 前記細胞を、硫黄源の存在下で培養する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記方法が、更に前記培養物からファインケミカルを回収する工程を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記ファインケミカルがアミノ酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記アミノ酸がメチオニン又はリシンである請求項に記載の方法。
  10. 前記方法が、更に前記ベクターによってトランスフェクションして、前記ベクター含有細胞を形成する工程を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記細胞がコリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属する請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記細胞が、コリネバクテリウム−グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム−ヘルキュリス(Corynebacterium herculis)、コリネバクテリウム−リリウム(Corynebacterium, lilium)、コリネバクテリウム−アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)、コリネバクテリウム−アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)、コリネバクテリウム−アセトフィラム(Corynebacterium acetophilum)、コリネバクテリウム−アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、 コリネバクテリウム−フジオケンス(Corynebacterium fujiokense)、コリネバクテリウム−ニトリロフィラス(Corynebacterium nitrilophilus)、 ブレビバクテリウム−アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム−ブタニカム(Brevibacterium butanicum)、 ブレビバクテリウム−ジバリカツム(Brevibacterium divaricatum)、ブレビバクテリウム−フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム−ヘアリ (Brevibacterium healii)、ブレビバクテリウム−ケトグルタミカム(Brevibacterium ketoglutamicum)、ブレビバクテリウム−ケトソレダクタム(Brevibacterium ketosoreductum)、ブレビバクテリウム−ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム−リネンス(Brevibacterium linens)、ブレビバクテリウム−パラフィノリツカム(Brevibacterium paraffinolyticum)からなる群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含むコリネバクテリウム−グルタミカム由来の単離された核酸分子を含むことによりゲノムDNAを変異させた細胞を培養する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  14. 配列番号6に示されたアミノ酸配列のポリペプチドの自然に発生する対立変異体をコードする単離された核酸分子を含むことによりゲノムDNAを変異させた細胞を培養する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  15. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列に対して90%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むことによりゲノムDNAを変異させた細胞を培養する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  16. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むことによりゲノムDNAを変異させた細胞を培養する工程を含むファインケミカルの製造方法。
  17. 前記核酸分子のみを含むか、又は前記核酸分子と1種以上の代謝経路核酸分子とを組み合わせて含むことによってゲノムDNAを変異させた細胞を培養する工程を含む請求項13〜16のいずれか1項に記載のファインケミカルの製造方法。
  18. 代謝経路核酸分子が、metZ、metC、metB、metA、metE、metH、hom、asd、lysC、lysC/ask、rxa00657、dapA、dapB、dapC、dapD/argD、dapE、dapF、lysA、ddh、lysE、lysG、lysR、hsk、ppc、pycA、accD、accA、accB、accC、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするgpdh遺伝子、opcA、pgdh、ta、tk、pgl、rlpe、rpe又は上述した遺伝子の組み合わせから選択される請求項17に記載の方法。
  19. 前記代謝経路がメチオニン又はリシンの代謝である請求項17又は18に記載の方法。
  20. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含むコリネバクテリウム−グルタミカム由来の単離された核酸分子を細胞に導入して、細胞からのリシンの収率を向上させる方法
  21. 配列番号6に示されたアミノ酸配列のポリペプチドの自然に発生する対立変異体をコードする単離された核酸分子を細胞に導入して、細胞からのリシンの収率を向上させる方法
  22. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列に対して90%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を細胞に導入して、細胞からのリシンの収率を向上させる方法
  23. 配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を細胞に導入して、細胞からのリシンの収率を向上させる方法
  24. 前記核酸分子を細胞の染色体に組み込む請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記核酸分子をプラスミドで保持する請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
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