JP4775929B2 - 基材上に多層複合コーティングを形成するためのコーティングラインおよびプロセス - Google Patents

基材上に多層複合コーティングを形成するためのコーティングラインおよびプロセス Download PDF

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Description

(発明の分野)
本発明は、基材(特に、自動車両基材)上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスおよびこのプロセスが使用されるコーティングラインに関する。
(発明の背景)
多層複合コーティング(例えば、カラー−プラス−カラーコーティング系)(有色(colored or pigmented)下塗りを基材に適用し、その後、この下塗り上に透明またはクリアコートの適用を含む)は、例えば、自動車両を含む多くの消費者製品に対するオリジナルの仕上げとしてますます評判が良くなってきている。カラー−プラス−カラーコーティング系は、顕著な外観特性(例えば、光沢および画像の明確さ)を有し、優秀なコーティング系(例えば、腐食耐性、引っ掻きおよび磨耗耐性、ならびに酸性雨のような有害な環境条件に対する耐性)を提供する。このようなカラー−プラス−カラーコーティング系は、自動車両、航空宇宙基材、床被覆(例えば、セラミックタイルおよび木のフローリング)、パッケージング材料などに対する使用について評判が良くなってきている。
従来の自動車両コーティングプロセスは、代表的に、電着コーティング組成物の連続的適用を包含し、通常は、このプロセスは、カチオン性組成物、電着コーティング上のプライマー表面コーティング組成物、プライマー表面コーティング上の発色向上下塗り組成物および/または効果向上下塗り組成物、ならびに下塗り上の透明またはクリアコーティング組成物の連続的適用を包含する。いくつかの例において、電着コーティングは、ミル適用された溶接可能な熱硬化性コーティング上に適用され、このコーティングは、らせん状の綱金属基材に適用されており、この基材から、オートボディー(またはオートボディー部分(例えば、フェンダー、ドア、およびフード))が形成される。
例えば、上記されるように、ほとんどの自動車両コーティングラインにおいて、オートボディーは、カチオン性電着可能コーティング組成物から通常形成される電着コーティングをまず与えられる。次いで、この電着コーティングは、代表的に、熱的に硬化される。電着コーティングは、基材に対して十分に付着性でなければならず、そして適用される基材の腐食を防止する。従来の電着コーティングにおいて、優秀な付着特性および腐食耐性特性は、芳香族部分を含み得るイオン性フィルム形成樹脂および/または架橋剤の電着可能組成物中の含有に由来し得る。優秀な付着および腐食耐性を提供する一方で、これらの樹脂および/または架橋剤は、後に適用されるコーティング層を通って貫通され得る可視光および/または紫外光による分解に対して感受性であり得る。これらの光分解は、基材からの電着コーティングの層間剥離を生じ得、そのことによって、多層複合コーティング組成物系の壊損が引き起こされる。
プライマー表面コーティング組成物は、代表的に、硬化された電着コーティングに適用され、その後、プライマー表面コーティングは、熱的に硬化される。プライマー表面コーティング組成物は、通常、強靭および可撓性コーティングを提供するポリマー組成物を含み、代表的に、例えば、充填剤顔料(例えば、タルクおよび粘土)で激しく染色され、しばしば、光分解耐性顔料(例えば、カーボンブラック)を含む。硬化されたプライマー表面コーティング層は、100μm程度の大きさのフィルム厚を有し得るが、通常、25μmと50μmとの間である。このように、プライマー表面コーティングは、多層複合コーティング系のチップ耐性を増強し得、そして電着コーティング中に存在する任意の表面欠損をまたマスクし得、それによって、実質的に適用された上塗りの平坦な外見を保証する。さらに、プライマー表面は、可視光および紫外光不透明度を提供し、以前に適用された電着コーティングの光分解を防止する。1つの公知のプライマー表面は、Pittsburgh、PennsylvaniaのPPG Industries,Incから市販されるGPX45379である。
次いで、下塗り組成物(最もしばしば、水性組成物)は、硬化されたプライマー表面コーティングに適用される。下塗り組成物は、通常、発色向上顔料および/または効果向上顔料を含む。
下塗りは、代表的に、過剰の溶媒を追い出すのに十分であるが、下塗り組成物を硬化するのに不十分な温度および時間で、フラッシュベイクを提供される。次いで、透明またはクリアコーティングは、硬化されない下塗りに適用される。これは、ウェットオンウェット適用として通常参照される。クリアコートは、優秀な光沢および画像の区別ならびにひっかき耐性および傷耐性、ならびに過酷な環境条件に対する耐性を提供し得る。
1つの公知のコーティングラインにおいて、基材は、電解コーティングステーションで電解コーティングされ、次いで、プライマー表面の適用のためのプライマーゾーンに移動される。上記されるように、プライマー表面は、代表的に、下にある基材における表面欠損をマスクするための相対的に厚いコーティングである。適用されたプライマー表面層が、硬化され、次いで、硬化されたプライマー表面は、表面欠損を除去し、そしてさらなるコーティングの適用のための平坦な外側表面を提供するために砂で平らにされ得る。しかし、このサンディングプロセスは、小さな粒子のグリットまたはダートを生じ、これらは、基材から払いのけられるかまたはタックオフ(tack off)されなければならず、その後、さらなるコーティングが、適用され得る。このタッキングプロセスの後、基材は、十分に色染色された下塗り組成物が、基材のカットイン部分上に適用される下塗りゾーンに移動される。同じ十分に色染色された下塗り組成物は、1つ以上の続いての下塗りステーションで基材の外側を覆うプライマー表面上に適用される。次いで、適用された下塗り組成物は、下塗りを前乾燥するためにベイクされ、クリアコート組成物は、基材外側上の下塗り上に適用される。代表的に、クリアコート組成物は、カットイン部分における同じ領域の下塗り上に適用されない。
結果として生じる費用節約に起因して、多層組成物コーティングにおける1つ以上のコーティング層の硬化されたフィルムの厚さの減少および/または全体のコーティング工程の1つ以上を削除することは、自動車両コーティングマーケットにおいて最近興味深い。例えば、いくつかの多層コーティングプロセスにおいて、プライマー表面コーティング適用および硬化工程は、削除され得る。すなわち、下塗り組成物は、硬化された電着コーティング上に直接適用される。このような改変されたコーティングプロセスにおいて、電着コーティングおよび下塗りの両方は、ストリンジェントな耐久性、外見、および物理的特性の仕様を満たすことが必要とされる。
さらに、以前に示されたように、いくつかの適用について、溶接可能腐食阻害プライマーコーティングは、金属基材に対してミル適用される。次いで、下塗り組成物は、介在性電着組成物コーティングもプライマー表面コーティングも有さない硬化された溶接可能プライマーコーティングに直接適用され得る。
また、自動車両部およびアクセサリー(例えば、非金属またはエラストマー性オートボディー部分(例えば、バンパーおよび本体横側成型物))は、代表的に、「離れて」コートされ、そして自動車アセンブルプラントに積まれる。このような基材は、上で議論される金属基材とは違い腐食耐性を必要としない。従って、下塗り組成物は、非金属基材表面に、あるいは、以前に適用された介在性付着促進プライマーコーティングに直接適用される。
米国特許第6,221,949 B1号は、多重コートペイント系における使用のためのコーティング処方物を開示し、この処方物は、水で希釈可能なポリウレタン樹脂を含有し、このポリウレタン樹脂は、10〜60の酸価および4000〜25,000の数平均分子量を有する。ポリウレタンは、400〜5000の数平均分子量を有するポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールあるいはこれらのポリエステルおよびポリエーテルポリオールの混合物;ポリイソシアネートまたはその混合物;イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基およびアニオンを形成し得る少なくとも1つの基を有する化合物あるいはこのような化合物の混合物;ならびに、必要に応じて40〜400の分子量ヒドロキシルおよび/またはアミノ含有有機化合物を反応させることによって調製され、そして得られた反応生成物を、少なくとも部分的に中和した。組成物は、顔料および/または充填剤をさらに含有し、結合剤 対 顔料の比が、0.5:1〜1.5:1の間である。このような組成物において、タルクの存在は、顔料の全量の20〜80重量%の量で必要とされる。この組成物は、基材が、必要に応じて前乾燥されたかまたはベイクされた電着コーティングでコートされる多重コートペイント系を形成するためのプロセスにおいて使用され、上記される組成物は、電着コーティングに適用され、必要に応じてベイキングなしに前乾燥され、第2の水性コーティングは、前もって記載された組成物から形成されたコーティングに適用され、必要に応じてベイキングなしに前乾燥され、透明コーティングは、第2の水性組成物から形成されたコーティングに適用され、全ペイント系が、ベイクされる。
米国特許第5,976,343号は、第1の水ベースのポリウレタン樹脂を含むベースラッカー剤からなる、10〜30ミクロンの乾燥厚を有する第2の表面コーティングを適用することによる、ストーブで熱された第1の電着層での基材の多層コートラッカリングのためのプロセス、ならびに7〜15ミクロンの乾燥層厚を有する第3のコーティング剤のウェットオンウェット適用が開示される。第3のコーティング層は、ポリウレタン樹脂を含む第2の水ベースのラッカー剤からなる。次いで、透明なラッカー剤は、第3のコーティング剤のストーブ加熱を有さずに適用され、多層コート系は、第2層、第3層およびクリアラッカー層を相互に硬化するためにストーブで加熱される。第1のベースラッカー剤は、第2のベースラッカー剤より高いポリウレタン樹脂濃度を有する。さらに、この特許は、第1のベースラッカー剤が、適切な量のポリウレタン樹脂を、第2のベースラッカー剤と混合することによって、第2のベースラッカー剤から調製されることを開示する。
米国特許第4,820,555号は、まず電着コーティング組成物を基材に適用し、そして電着コーティング組成物を硬化し、電着コート上に密封コーティング組成物を適用し、そして必要に応じて、密封コーティングをベイキングし、密封コーティング上に金属下塗り組成物を適用し、この金属下塗りを乾燥するか、フラッシュベイキングするか、または硬化するかのいずれかし、この金属下塗り上に透明コーティング組成物を適用し、そして、多層コート系をベイキングすることによって、基材上に多層コート系を形成する方法を開示する。密封コーティング組成物は、溶媒ベースまたは水ベースであり得、そして改善された金属顔料方向、下塗りの平坦さ、および付着を提供する。
公知のコーティングプロセスと関連するいくつかの問題を緩和するための試みにおいて、プライマー表面適用が削除された別のコーティングラインが、開発されてきた。しかし、このプロセスにおいて、コーティングラインの構造および操作は、この変化から生じる問題に適合するように有意に変更されなければならない。例えば、電着コーティングの適用の後、このプロセスにおいて、第1の下塗り組成物は、基材の外部表面上に適用される。この第1の下塗り組成物は、コートされた基材のほぼ所望される最終の色に調節された色であり得る、チップ耐性色染色組成物である。次いで、第1の下塗り組成物は、第1の下塗りを前乾燥するために加熱され、所望される最終色顔料の第2の下塗り組成物は、外部表面上の第1の下塗り組成物上に適用される。カットイン部分は、第1および第2のべースコーティング組成物の適用の間に、第2の下塗り組成物でコートされる。代表的なコーティングプロセスにおいてのように、カットイン部分がまずコートされる場合、可視である色変化領域に起因して、この改変が、必要とされる、しかし、コーティング順序のこの変化は、このプロセスが、外側部分の前の基材のカットイン部分をコートするように設定される現存するコーティングラインに容易に組込まれない。付け加えられた費用は、このプロセスを実施するための新規コーティングラインを構築するかまたは下塗りゾーンの末端に対するカットイン適用を動かすための現存するラインを改変するかのいずれかのために抱えなければならない。
前記を考慮して、多層複合コーティング系を形成するためのプロセスを提供することは、有利であり、この系は、プライマー表面コーティングの適用および硬化を削除し、それによって、第1の下塗り組成物は、電着コーティングに直接適用され得るか、あるいは処理された基材または処理されない基材に直接適用され得;その後、第2のカラー−または効果向上下塗りのウェットオンウェット適用を行い、この下塗りの組成物は、第1の下塗り組成物と同じであっても異なっていてもよく、続いて、クリアコートのウェットオンウェット適用を行う。さらに、このような多層複合コーティング系は、有意な改変なしに従来のコーティングライン上に適用されることが望ましい。
(発明の要旨)
1つの実施形態において、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下:
基材の少なくとも一部上に硬化可能な電着コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティング層を形成する工程;
必要に応じて、電着コーティング層を硬化する工程;
電着コーティング層の少なくとも一部上に直接、水性の硬化可能な下塗り組成物を堆積することによって、電着コーティング層上に下塗り層を形成する工程;
必要に応じて、下塗り層を脱水する工程;
硬化可能な上塗り組成物を堆積することによって、下塗り層上に上塗り層を形成する工程であって、この硬化可能な上塗り組成物は、少なくとも一部の下塗り層上に直接実質的に顔料を含まない、工程;
上塗り層、下塗り層、および必要に応じて、電着コーティング層を同時に硬化する工程、
を包含する。
別の実施形態において、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下:
基材の少なくとも一部上に硬化可能な電着コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティング層を形成する工程;
必要に応じて、電着コーティング層を硬化する工程;
電着コーティング層の少なくとも一部上に直接、水性の硬化可能な第1の下塗り組成物を堆積することによって、電着コーティング層上に第1の下塗り層を形成する工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
第1の下塗り層の少なくとも一部上に直接、第1の下塗り組成物と同じであるかまたは異なる、水性硬化可能な第2の下塗り組成物を堆積することによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
第2の下塗り層の少なくとも一部上に直接、実質的に顔料を含まない硬化可能な上塗り組成物を堆積することによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;ならびに、
上塗り層、第2の下塗り層、第1の下塗り層、および必要に応じて、電着コーティング層を同時に硬化する工程、
を包含する。
本発明はまた、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下:
基材の少なくとも一部上に硬化可能な電着コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティングを形成する工程;
必要に応じて、電着コーティング層を硬化する工程;
電着コーティング層の少なくとも一部上に直接、水性の硬化可能な第1の下塗り組成物を堆積することによって、電着コーティング層上に第1の下塗り層を形成する工程であって、この第1の下塗り組成物は、以下:
(i)第1の樹脂様結合剤、および
(ii)第1の樹脂様結合剤中に分散された、1つ以上の顔料を含有する第1の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
第1の下塗り層の少なくとも一部上に直接、水性硬化可能な第2の下塗り組成物を堆積することによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程であって、この第2の下塗り組成物は、以下:
(i)第1の樹脂様結合剤と同じであるかまたは異なる、第2の樹脂様結合剤、および
(ii)第2の樹脂様結合剤中に分散された1つ以上の発色向上顔料および/または効果向上顔料を含有する第1の顔料組成物とは異なる、第2の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
第2の下塗り層の少なくとも一部上に直接、実質的に顔料を含まない硬化可能な上塗り組成物を堆積することによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;ならびに、
上塗り層、第2の下塗り層、第1の下塗り層、および必要に応じて、電着コーティング層を同時に硬化する工程、
を包含するプロセスであって、ここで、第1の下塗り組成物は、さらに、第2の樹脂様結合剤中に分散された第2の顔料組成物を含有する組成物をさらに含有し、そして、ここで、第2の下塗り組成物は、0.1〜4.0:1の範囲にわたる顔料 対 結合剤比を有する。
さらなる実施形態において、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下:
基材の少なくとも一部上に硬化可能な電着コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティング層を形成する工程;
必要に応じて、電着コーティング層を硬化する工程;
電着コーティング層の少なくとも一部上に直接、水性の硬化可能な第1の下塗り組成物を堆積することによって、電着コーティング層上に第1の下塗り層を形成する工程であって、この第1の下塗り組成物は、以下:
(i)第1の樹脂様結合剤、および
(ii)第1の樹脂様結合剤中に分散された、1つ以上の顔料を含有する第1の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
第1の下塗り層の少なくとも一部上に直接、水性硬化可能な第2の下塗り組成物を堆積することによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程であって、この第2の下塗り組成物は、以下:
(i)第1の樹脂様結合剤と同じであるかまたは異なる、第2の樹脂様結合剤、および
(ii)第2の樹脂様結合剤中に分散された1つ以上の発色向上顔料および/または効果向上顔料を含有する第1の顔料組成物とは異なる、第2の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
第2の下塗り層の少なくとも一部上に直接、実質的に顔料を含まない硬化可能な上塗り組成物を堆積することによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;ならびに、
上塗り層、第2の下塗り層、第1の下塗り層、および必要に応じて、プライマーコーティング層を同時に硬化する工程、
を包含するプロセスであって、ここで、第1の下塗り層は、硬化された場合、15μmのフィルム厚で400nmで測定された5%以下の光透過を有する。
さらに、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、以下:
基材の少なくとも一部上に硬化可能な電着コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティングを形成する工程;
必要に応じて、電着コーティング層を硬化する工程;
電着コーティング層の少なくとも一部上に直接、水性の硬化可能な第1の下塗り組成物を堆積することによって、電着コーティング層上に第1の下塗り層を形成する工程であって、この第1の下塗り組成物は、以下:
(i)第1の樹脂様結合剤、および
(ii)第1の樹脂様結合剤中に分散された、1つ以上の顔料を含有する第1の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
第1の下塗り層の少なくとも一部上に直接、水性硬化可能な第2の下塗り組成物を堆積することによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程であって、この第2の下塗り組成物は、以下:
(i)第1の樹脂様結合剤と同じであるかまたは異なる、第2の樹脂様結合剤、および
(ii)第2の樹脂様結合剤中に分散された1つ以上の発色向上顔料および/または効果向上顔料を含有する、第1の顔料組成物とは異なる、第2の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
第2の下塗り層の少なくとも一部上に直接、実質的に顔料を含まない硬化可能な上塗り組成物を堆積することによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;ならびに、
上塗り層、第2の下塗り層、第1の下塗り層、および必要に応じて、電着コーティング層を同時に硬化する工程、
を包含するプロセスであって、
ここで、第2の下塗り組成物は、0.1〜4.0:1の範囲にわたる顔料 対 結合剤比を有し、
第1の樹脂様結合剤および第2の樹脂様結合剤の両方は、同じであるか異なるポリウレタンポリマーを含み、
ここで、第1の下塗り層は、硬化された場合、15μmのフィルム厚で400nmで測定された5%以下の光透過を有し、そして、
ここで、第1の下塗り組成物は、第2の樹脂様結合剤中に分散された第2の顔料組成物を含有する組成物をさらに含有し、この組成物は、電着コーティング層上への直接的な第1の下塗り組成物の堆積の直前に、第1の下塗り組成物と混合される。
一つの特定の実施形態において、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するプロセスに関し、このプロセスは以下の工程を包含する:
基材の少なくとも一部にわたって、硬化可能な電着可能コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティング層を形成する工程;
必要に応じて、電着コーティング層を硬化する工程;
水性の硬化可能な、第1の下塗り組成物を、電着コーティング層の少なくとも一部に直接堆積させることによって、電着コーティング層上に第1の下塗り層を形成する工程であって、
ここで、第1の下塗り組成物は:
(i)第1の樹脂結合剤、および
(ii)第1の樹脂結合剤中に分散された1つ以上の顔料を含有する第1の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
水性の硬化可能な、第2の下塗り組成物を、第1の下塗り層の少なくとも一部に直接堆積させることによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程であって、
ここで、第2の下塗り組成物は:
(i)第1の樹脂結合剤と同じであるかまたは異なる、第2の樹脂結合剤、および
(ii)第1の顔料組成物とは異なり、第2の樹脂結合剤中に分散された1つ以上の発色向上顔料および/または効果向上顔料を含有する第2の顔料組成物、
を含有する、工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
実質的に、顔料を含まない硬化可能な上塗り組成物を、第2の下塗り層の少なくとも一部に直接堆積させることによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;
上塗り層、第2の下塗り層、第1の下塗り層および、必要に応じて、電着コーティング層を、同時に硬化する工程であって、
ここで、第1の下塗り組成物は、第2の樹脂結合剤に分散された第2の顔料組成物を含有する組成物をさらに含有み、そして
ここで、第1の樹脂結合剤および第2の樹脂結合剤の両方は、同じポリウレタンポリマーまたは異なるポリウレタンポリマーを含有し、前記ポリウレタンポリマーは、第1の下塗り組成物に、第2の下塗り組成物に存在する前記ポリウレタンポリマーの濃度と等しいか、またはそれより少ない濃度で存在し、ここでこの濃度は、第1および第2の下塗り組成物に存在する総樹脂固体に基づく、工程。
本発明はさらに、基材上に多層複合コーティングを形成するプロセスに関し、このプロセスは以下の工程を包含する:
介入プライマサーフェーサ(primer−surfacer)層を有さない基材の少なくとも一部にわたって、水性の硬化可能な第1の下塗り組成物を堆積することによって、基材上に第1の下塗り層を形成する工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
水性の硬化可能な第2の下塗り組成物を、第1の下塗り層の少なくとも一部の上に直接堆積することによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程であって、ここで、この第2の下塗り組成物は、第1の下塗り組成物と同じであるか、または異なる、工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
実質的に顔料を含まない、硬化可能な上塗り組成物を、第2の下塗り層の少なくとも一部の上に直接堆積することによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;および
上塗り層、第2の下塗り層、および第1の下塗り層を同時に硬化する工程。
一つの実施形態において、本発明は、車両基材に複合コーティングを適用する方法を提供し、この方法は以下の工程を包含する:
(a)車両基材の少なくとも一部分にわたって、電着コーティングを適用する工程;
(b)第1の樹脂結合剤および第1の顔料組成物を含有する、第1の水性下塗り組成物を提供する工程;
(c)第2の樹脂結合剤および第2の顔料組成物を含有する第2の水性下塗り組成物を提供する工程であって、ここで第2の顔料組成物は、第1の顔料組成物とは異なる、工程;
(d)車両基材の内部カットイン(cut−in)部分の上に第2の下塗り組成物を適用する工程;
(e)電着コーティング上に第1の下塗り組成物を適用する工程;および
(f)第1の下塗り組成物の脱水なしに、第2の下塗り組成物を、第1の下塗り組成物上にウェットオンウェット(wet−on−wet)で直接適用し、第1の下塗り層および第2の下塗り層を有する複合下塗りを形成する工程。
本発明はさらに、自動車両基材上に多層複合コーティングを形成する改良プロセスを提供し、このプロセスは以下の連続工程を包含する:
(1)コーティングライン上に位置する電気コーティングステーションに伝導性自動車両基材を移動する工程;
(2)電気回路において荷電電極として機能する基材を電気コーティングする工程であって、この電気回路は前記電極および反対に荷電した対電極を含み、前記電極は前記電極間の一時的な電流を含む水性電着組成物中に浸され、この工程は、これらの電極間に電流を流し、電着コーティングの実質的に連続したフィルムとして基材上の電着可能な組成物の堆積を引き起こすことを包含する、工程;
(3)工程(2)のコーティング基材を、コーティングラインに配置された電着コーティング熱硬化オーブンに通過させ、基材上の電着可能な組成物を硬化して、その上に電着コーティング層を形成する、工程;
(4)工程(3)のコーティング基材を、コーティングラインに配置されたプライマサーフェーサコーティングステーションに移動する工程;
(5)プライマサーフェーサコーティング組成物を、電着コーティング層の少なくとも一部に直接適用し、その上にプライマサーフェーサコーティング層を形成する工程;
(6)工程(5)のコーティング基材を、コーティングラインに配置されたプライマサーフェーサ熱硬化オーブンに通過させ、プライマサーフェーサコーティング層を硬化する工程;
(7)工程(6)のコーティング基材を、コーティングラインに配置された下塗りステーションに移動する工程;
(8)水性下塗り組成物を、プライマサーフェーサコーティング層の少なくとも一部に直接適用し、その上に下塗り層を形成する工程;
(9)必要に応じて、工程(8)のコーティング基材を、コーティングラインに配置されたフラッシュオーブンに通過させ、下塗り層を脱水するが、硬化しない工程;
(10)工程(8)または必要に応じて工程(9)のコーティング基材を、コーティングラインに配置されたクリアコーティングステーションに移動する工程;
(11)実質的に顔料を含まないコーティング組成物を、下塗り層の少なくとも一部に直接適用し、その上にクリアコーティング層を形成する工程;
(12)工程(11)のコーティング基材を、コーティングラインに配置された上塗り硬化ステーションに通過させ、下塗り層およびクリアコーティング層を同時に硬化する工程。改良は、以下を包含する:工程(3)のコーティング基材を、コーティングラインに配置された下塗りステーションに直接移動する工程、ウェット−オン−ウェット適用において、各々の連続下塗り組成物の任意の脱水を有する分離した、複数の水性下塗り組成物を、電着コーティング層の少なくとも一部に直接、連続的に適用し、電着コーティング層と下塗り層との間のプライマサーフェーサコーティング層を干渉することなく、その上に多層コーティングを形成する工程、コーティング基材をコーティングラインに配置されたクリアコーティングステーションに移動する工程、連続的な顔料を含まないコーティング組成物を、多層下塗りの少なくとも一部上に直接適用し、その上にクリアコーティング層を形成する工程、およびコーティング基材を、硬化ラインに配置された上塗り硬化ステーションに通過させ、多層下塗りおよびクリアコーティング層を同時に硬化する工程。
本発明はまた、コーティングラインに関し、これは以下を含む:
少なくとも1つの電着浴を含む電気コーティングゾーン;
電気コーティングゾーンの下流かつ電気コーティングゾーンに隣接した下塗りゾーンであって、この下塗りゾーンは、カットインステーション、第1の下塗りステーション、および第2の下塗りステーションを含む;ならびに
下塗りゾーンの下流かつ下塗りゾーンに隣接した上塗りゾーン。
本発明はまた、基材上に多層複合コーティングを形成するプロセスに関し、このプロセスは以下を包含する:
基材の少なくとも一部にわたって、硬化可能な電着可能コーティング組成物の電着によって、基材上に電着コーティング層を形成する工程;
必要に応じて、コーティング基材を、電着コーティング層を硬化するために十分な温度および時間で加熱する工程;
水性の硬化可能な第1の下塗り組成物を、電着コーティング層の少なくとも一部に直接堆積させることによって、電着コーティング層上に第1の下塗り層を形成する工程;
必要に応じて、第1の下塗り層を脱水する工程;
水性の硬化可能な第2の下塗り組成物を、第1の下塗り層の少なくとも一部に直接堆積させることによって、第1の下塗り層上に第2の下塗り層を形成する工程であって、ここで第2の下塗り組成物は、第1の下塗り組成物と同じであるかまたは異なる、工程;
必要に応じて、第2の下塗り層を脱水する工程;
実質的に、顔料を含まない硬化可能な上塗り組成物を、第2の下塗り層の少なくとも一部に直接堆積させることによって、第2の下塗り層上に上塗り層を形成する工程;および
上塗り層、第2の下塗り層、第1の下塗り層および、必要に応じて、電着コーティング層を、同時に硬化する工程であって、
ここで、第1の下塗り組成物は、モノマー混合物から調製された高分子微小粒子の1つ以上の水性分散物を含み、このモノマー混合物は、反応性エチレン性不飽和の2つ以上の部位および/または相互反応基を有する2つの異なるモノマーの組み合わせを有する、工程。
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、空間または方向の用語(例えば、「内側」、「外側」、「左」、「右」、「上」、「下」、「水平」、「垂直」など)は、図面に示されるように、本発明に関連する。しかし、本発明は、様々な代替の方向性を想定し得、従って、このような用語は、制限として理解されるべきではないことが理解される。本明細書中で使用される場合、用語「堆積する(deposited over)」、「適用する(applied over)」、または「提供する(provided over)」は、堆積、適用、または提供するが、表面と接触する必要はないことを意味する。例えば、基材「にわたって堆積された」物質は、堆積された物質と基材との間に配置された、同じかまたは異なる組成物の1つ以上の材料の存在を除外する。従って、用語「上流」または「下流」とは、記載されたコーティングプロセスにおける基材の動きの方向を言う。
作動例において以外、または他に示される場合、成分の量、反応条件および明細書および特許請求の範囲で使用される全ての数は、すべての例において、用語「約」により改変されるように理解されるべきである。従って、それと反対に示されない場合、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において示される数値パラメーターは、本発明により得られることが見出される所望の特性に基づいて変化され得る近似である。最低限でも、および特許請求の範囲に対する同等物の原則の適用を制限することを試みるようにではなく、各数値パラメーターは、報告された有意な数字の数という観点で、そして普通の四捨五入の技術を適用することによって、少なくとも構築され得る。
本発明の幅広い範囲に示される数値範囲および数値パラメーターが近似であるにも関わらず、特定の実施例に示される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定において見出される、標準偏差から必ず生じる本質的に特定の誤差を含む。
また、本明細書中で列挙される任意の数値範囲は、本明細書中に包含される、全てのサブ範囲を含むことが意図される。例えば、1インチ〜10インチの範囲は、列挙される最小値1および列挙される最大値10の間かつそれを含む、全てのサブ範囲を含むことが意図され、すなわち、1と等しいか、それより大きな最小値および10と等しいか、それより小さな最大値を有する。
また、本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、オリゴマーおよびホモポリマーとコポリマーの両方を言うことを意味する。他に規定されない場合、本明細書中および特許請求の範囲において使用されるように。分子量は、「Mn」として示される重合体材料に対する数平均分子量であり、当該分野で認められた様式で、ポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより得られる。
本発明の例示的な実行を詳細に記載する前に、本発明の特徴を組みこむ、例示的なコーティングライン(コーティングシステム)が、簡単に記載される。
図1は、本発明の特徴を組みこむ、コーティングシステム10を模式的に示す。このシステム10は、バッチプロセスまたは連続的なプロセスにおいて、基材(例えば、金属または重合体基材)のコーティングに適切である。バッチプロセスにおいて、各処置工程の間、基材は定常であるが、連続プロセスにおいては、基材はコーティングラインに沿って、連続運動する。本発明の例示的なプロセスは、最初に連続コーティングラインにおいて、基材をコーティングすることに関して考察される。
本発明の方法に従って、コーティングされ得る有用な基材は、金属性基材、ポリマー性基材(例えば、熱硬化性材料および熱可塑性材料)、ならびにこれらの組合せを含む。この基材は、自動車両(自動車、トラックおよびトラクターを含むがこれらに限定されない)を作製するための成分として使用され得る。この基材は、任意の形状を有し得るが、1つの実施形態において、自動車ボディー構成要素(例えば、自動車両のためのボディー(フレーム)、フード、ドア、フェンダー、バンパー、および/またはトリム)の形態である。
図1を参照して、金属基材12は、前処理ゾーン14において洗浄および脱脂され得る。前処理コーティング(例えば、CHEMFOS 700(登録商標)リン酸亜鉛またはBONAZINC(登録商標)亜鉛リッチ前処理(各々、Pennsylvania、PittsburghのPPG Industriesから市販される)は、金属基材12の表面上に堆積され得る。
代替的にまたは追加的に、1つ以上の任意の電着コーティング組成物は、任意の電着ゾーン16において金属基材12の少なくとも一部分上に電着され得る。1つの適切な電着コーティングは、Pennsylvania、PittsburghのPPG Industriesから市販されるPOWER PRIME(登録商標)コーティングである。有用な電着方法および電着コーティング組成物としては、従来のアニオン性電着可能コーティング組成物またはカチオン性電着可能コーティング組成物(例えば、エポキシまたはポリウレタンベースのコーティング)が挙げられる。適切な電着可能コーティングは、米国特許第4,933,056号;同第5,530,043号;同第5,760,107号および同第5,820,987号(これらは、本明細書中において参考として援用される)において考察される。任意の電着コーティングは、さらなる処理の前に、乾燥デバイス(例えば、オーブン18)で、必要に応じて乾燥または硬化され得る。あるいは、以下に記載されるさらなるコーティングは、電着コーティング上にウェット−オン−ウェットで適用され得る。
従来のコーティングラインとは異なり、本発明のコーティングラインは、プライマー−サーフェイサーの適用、硬化および/またはサンディング(sanding)のためのプライマー−サーフェイサーゾーンを含まない。プライマー−サーフェイサーの必要性を削除することによって、プライマー−サーフェイサーの適用に必要とされるコーティング機器(例えば、コーティングブース、コーティングアプリケーター、乾燥オーブン、サンディング機器、およびトラッキング機器)もまた削除され得る。さらに、プライマー−サーフェイサーの削除はまた、コーティングプロセス全体を加速し、そして基材12をコーティングするために必要とされる床面積を減少する。
多層下塗りは、1つ以上のコーティングステーションを含む下塗りゾーン20で、多工程の方法において、基材12上に適用され得る。下塗りゾーン20は、電着ゾーン16の下流か、および/またはこれに隣接して配置され得る。本明細書中で使用され得る場合、用語「〜に隣接した」とは、隣接するステーションの間に、介在コーティングステーションも主要な処理ステーションも配置されないことを意味する。図1に示される実施形態において、基材12は、カットイン22に運ばれ、このカットインステーション22は、1つ以上の従来のコーティングアプリケーター24(例えば、従来のベルアプリケーターまたはガンアプリケーター)を有する。自動車のコーティングの当業者に理解されるように、代表的にベルアプリケーターは、回転性キャップを有する本体部分またはベルを含む。ベルは、高電圧供給源に接続され、ベルと基材の間の静電場を提供する。静電場が、ベルから円錐型原型に放出される、荷電し、微粒化されたコーティング材料を形成し、この形状は、ベル上の成型空冷環から追い出された空気を形成することによって変化され得る。適切な従来のベルアプリケーターの非限定的な例としては、Behr Systems Inc.(Auburn Hills,Michigan)から市販される、Eco−BellアプリケーターまたはEco−M Bellアプリケーター;ABB/Ransburg Japan Limited(Tokyo,Japan)から市販のMeta−Bellアプリケーター;ABB Flexible Automation(Auburn Hills,Michigan)から市販のG−1 Bellアプリケーター;あるいはSames(Livonia,Michigan)から市販されるSames PPH 605 またはSames PPH 607などが挙げられる。
アプリケーター24は、下塗り組成物の供給源26と流体連絡している。一つの実施形態において、供給源26における下塗り組成物は、以下に詳細に記載される「第2の下塗り組成物」である。別の実施形態において、供給源26は、以下に記載される「第1および第2の下塗り組成物」の混合物を含む。カットインステーション22において、供給源26に由来する下塗り組成物は、基材12のカットイン部分に適用される。自動車のコーティングの当業者に理解されるように、用語「カットイン部分」とは、通常腐食性雰囲気状態への曝露に供されない基材の領域をいう。カットイン部分の例としては、内部ドアジャム、トランクの蓋の内部などが挙げられる。任意の乾燥デバイス(例えば、オーブン28またはフラッシュチャンバー)は、カットインステーション22の下流および/またはそれに隣接して配置され得、必要に応じて、さらなるコーティングの前に、カットイン部分上に適用されるコーティングをフラッシュ、乾燥または硬化する。
カットインステーション22の後で、基材12が、1つ以上の従来のアプリケーター32(例えば、ベルアプリケーターまたはガンアプリケーター)を有する隣接した第1の下塗りステーション30に運ばれ得、このアプリケーターは、以下により詳細に記載されるような、第1の下塗り材料または組成物の供給源34と接続されるか、または流体連絡されている。第1の下塗り組成物は、基材12上に、1つ以上のアプリケーター32により、第1の下塗りステーション30で、1つ以上のスプレーパスにおいて適用(例えば、スプレー)され、基材12上に第1の下塗り層を形成する。以下により詳細に記載されるように、第1の下塗り組成物は、第1の樹脂結合剤およびこの第1の樹脂結合剤に分散された1つ以上の顔料を含む第1の顔料組成物を含む。
任意の乾燥デバイス(例えば、オーブン36またはフラッシュチャンバー)は、第1の下塗りステーション30の下流および/またはこれに隣接して配置され得、必要に応じて、さらなるコーティングの前に、第1の下塗りステーション30に適用されるコーティング(そして、必要に応じて、カットイン部分に適用されるコーティング)をフラッシュ、乾燥、または硬化する。乾燥デバイス中の温度および湿度は、制御され、堆積された第1の下塗り組成物からの蒸発を制御し、十分な含水量または「湿り気」を有する第1の下塗り層を形成し得、その結果、実質的に滑らかな、実質的に均一な厚さの実質的なレベルフィルムが、たわむことなしに得られる。一つの実施形態において、以下に記載される第2の下塗り組成物の適用前に、適用された第1の下塗り組成物の脱水はない。
第2の下塗りステーション40は、第1の下塗りステーション30の下流および/またはこれに隣接して配置され得、そして、1つ以上の従来のアプリケーター42(例えば、ベルアプリケーターまたはガンアプリケーター)を有し得、このアプリケーターは、以下に詳細に記載されるような第2の下塗り組成物の供給源46と結合されるか、または流体連絡されている。第2の下塗り組成物は、1つ以上のスプレーパスにおける第2の下塗りステーション40で、1つ以上のアプリケーター42により、1つ以上の第1の下塗り組成物において適用(例えば、スプレー)され、第1の下塗り上に第2の下塗り層を形成する。一つの実施形態において、第2の下塗り組成物は、「ウェット−オン−ウェット」で、第1の下塗り組成物上に適用される(すなわち、第2の下塗り組成物の適用前に、適用された第1の下塗り組成物の脱水がない)。従って、多層複合下塗りは、1つ以上の第1の下塗り層に適用された1つ以上の第2の下塗りにより、形成され得る。本明細書で使用される場合、用語「層」とは、一つ以上のスプレーパスにより適用され得る、一般的なコーティング領域またはコーティングエリアを言うが、隣接した層間に明確なまたは急激な干渉があることを必ずしも意味しない(すなわち、第1の下塗り層と第2の下塗り層との間に成分の幾分かの移動が存在し得る)。より詳細に以下に記載されるように、第2の下塗り組成物は、第2の樹脂結合剤(第1の樹脂結合剤と同じか、または異なり得る)を含む。第2の下塗り組成物はまた、第2の顔料組成物(第1の顔料組成物と同じか、または異なり得る)を含む。
従来の乾燥デバイス(例えば、オーブン50)は、第2のコーティングステーション40の下流および/またはこれに隣接して配置され得、ここで、コーティングステーション22、および/または第1のコーティングステーション30、および/または第2のコーティングステーション40において適用されるコーティングは、乾燥され得るか、または硬化され得る。水系下塗りに関して、「乾燥」とは、適用された組成物からの水がほとんど完全に存在しないことを意味する。下塗りを乾燥することは、以下に記載されるような、連続した保護用の上塗りまたはクリアコートの適用を可能にし、その結果、クリアコートの質が、下塗りをさらに乾燥することによる悪い影響を受けない。非常に多くの水が、下塗りに存在する場合、連続して適用されたクリアコートは、クリアコートの乾燥の間、ひびわれ得るか、泡立ち得るか、または「はじかれ」得る。なぜなら、下塗りからの水蒸気が、クリアコートを通り抜けるからである。オーブン50は、従来の乾燥オーブンまたは乾燥装置(例えば、BGK−ITW Automotive Group(Minneapolis,Minnesota)から市販される赤外線照射オーブン)であり得る。
基材12上の下塗り組成物が、オーブン50内で、必要に応じて乾燥(そして所望の場合、硬化および/または冷却)された後、1つ以上の従来のクリアコートまたは上塗りが、1つ以上のクリアコートステーション54を含むクリアコートゾーン52で、下塗り上に適用され得る。各クリアコートステーションは、クリアコート材料の供給源58と結合されるか、または流体連絡している、1つ以上の従来のアプリケーター56(例えば、ベルアプリケーター)を含む。
図1に示される実施形態において、乾燥ステーション60は、クリアコートステーション54の下流および/またはこれに隣接して配置され得、適用されたクリアコート材料および/または必要に応じて1つ以上の以前に適用された下塗り組成物を乾燥および/または硬化する。本明細書中で使用される場合、「硬化」とは、材料の任意の架橋可能な成分が、以下により詳細に考察されるように、実質的に架橋されていることを意味する。この硬化工程は、任意の従来の乾燥技術(例えば、熱空気オーブン(例えば、Durr,HadenまたはThermal Engineering Corporationから市販される自動車放射壁/対流オーブン)を使用する熱空気対流乾燥)または、所望の場合、赤外線加熱)により実行され得、その結果、液体クリアコート材料の任意の架橋可能な成分が、自動車産業がクリアコートを損傷することなく、コーティングされた自動車本体の輸送するために十分に完全であるとしてコーティング方法を容認する程度まで架橋され得る。一般的に、液体クリアコート材料は、120℃〜150℃の温度に、20〜40分の期間加熱され、液体クリアコートを硬化する。
あるいは、1つ以上の下塗り組成物が、液体クリアコートを適用する前に硬化されない場合、下塗り組成物および液体クリアコート材料の両方が、下塗り組成物および液体クリアコート材料の両方を硬化するために、従来の装置を用いて、熱空気対流および/または赤外加熱を適用することにより、一緒に硬化され得る。
図2は、本発明の実施で使用され得る代替の下塗りゾーン20aを例示する。点線で示されるように、この実施形態において、カットインステーション22は、必要に応じて、第1の下塗りステーション30と第2の下塗りステーション40との間(すなわち、第1の下塗りステーション30の下流)に位置し得る。あるいは、このカットインステーション22は、第2の下塗りステーション40の下流に位置し得る。任意の乾燥デバイス(図示せず)もまた、必要に応じて、第1の下塗りステーション30、カットインステーション22、および/または第2の下塗りステーション40(必要な場合)のうちの1つ以上の下流に位置し得る。
本発明の例示的なコーティングシステムを記載してきたが、本発明の例示的なコーティングプロセスをここで記載する。
上記のように、1つの実施形態において、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関する。このプロセスは、以下の工程を包含する:硬化性電着可能コーティング組成物を、基材の少なくとも一部に電着することによって、この基材上に電着コーティング層を形成する工程;必要に応じて、この電着コーティング層を硬化するのに十分な温度まで、この硬化のために十分な時間、このコーティング基材を加熱する工程;水性硬化性下塗り組成物を、この電着コーティング層の少なくとも一部に堆積することによって、この電着コーティング層上に下塗り層を形成する工程;必要に応じて、この下塗り層を脱水する工程;硬化性上塗り組成物(これは、実質的に顔料を含まない)を、この下塗り層の少なくとも一部に直接堆積することによって、この下塗り層上に上塗り層を形成する工程;ならびにこれらの上塗り層、下塗り層、および必要に応じて電着コーティング層を同時に硬化する工程。
この電着コーティング組成物は、裸の金属または前処理された金属の基材のいずれかに塗布され得る。「裸の金属」とは、前処理組成物(例えば、従来のリン酸化溶液、重金属リンスなど)で処理されていない未処理の金属基材を意味する。さらに、本発明の目的のために、「裸の金属」基材は、基材の非エッジ表面(non−edge surface)上に他の処理をされ、そして/またはコーティングされている、この基材のカットエッジ(cut edge)を含み得る。
任意の処理または任意のコーティング組成物の塗布の前に、この基材は、必要に応じて、製造物品に形成され得る。1つより多い金属基材の組合せが、一緒に構築されて、このような製造物品を形成し得る。
電着コーティング組成物が堆積される「基材」は、以下に記載されるものを含む任意の導電性基材を含み得、この基材の上には、1つ以上の前処理コーティングおよび/またはプライマーコーティングが、予め塗布されている。例えば、「基材」は、金属製基材、およびこの基材表面の少なくとも一部の上の溶接可能プライマーコーティングを含み得る。上記の電着可能コーティング組成物が、次いで、電着され、そしてその少なくとも一部が硬化される。以下で詳細に記載されるような1つ以上の上塗り組成物は、次いで、この硬化された電着コーティングの少なくとも一部に塗布される。
例えば、基材は、上記の導電性基材およびこの基材の少なくとも一部に塗布された前処理組成物、1つ以上のIIIBもしくはIVB族元素含有化合物を含む溶液を含む前処理組成物、またはこれらの混合物(これらは、キャリア媒体、代表的には、水性媒体中で可溶化されているかまたは分散されている)のいずれかを含み得る。IIIB族およびIVB族の元素は、CAS元素周期表(例えば、Handbook of Chemistry and Physics(第60版、1980)で示される)によって定義される。遷移金属化合物および希土類金属化合物は、代表的に、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウムおよびセシウム、ならびにそれらの混合物の化合物である。代表的なジルコニウム化合物は、ヘキサフルオロジルコン酸、アルカリ金属およびそれらのアンモニウム塩、アンモニウムジルコニウムカルボネート、ジルコニルニトレート、ジルコニウムカルボキシレートおよびジルコニウムヒドロキシカルボキシレート(例えば、ヒドロキシフルオロジルコン酸)、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、アンモニウムジルコニウムグリコレート、アンモニウムジルコニウムラクテート、アンモニウムジルコニウムサイトレート、およびそれらの混合物から選択され得る。
前処理組成物キャリアはまた、フィルム形成樹脂(例えば、1つ以上のアルカノールアミンと、少なくとも2つのエポキシ基を含むエポキシ官能性物質との反応生成物(例えば、米国特許第5,653,823号に開示されるもの))を含み得る。他の適切な樹脂としては、水溶性および水分散性のポリアクリル酸(例えば、米国特許第3,912,548号および同第5,328,525号に開示されるもの);フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(米国特許第5,662,746号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるような);水溶性ポリアミド(例えば、WO95/33869に開示されるもの);マレイン酸またはアクリル酸とアリルエーテルとのコポリマー(カナダ国特許出願2,087,352に記載されるような);ならびに水溶性および水分散性の樹脂(エポキシ樹脂、アミノプラスト、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、タンニンおよびポリビニルフェノール(米国特許第5,449,415号で考察されるような)を含む)が挙げられる。
さらに、非鉄金属製基材および鉄および含鉄金属製基材が、有機リン酸塩または有機ホスホン酸塩(例えば、米国特許第5,294,265号および同第5,306,526号に記載されるもの)の非絶縁性層で前処理され得る。このような有機リン酸塩または有機ホスホン酸塩の前処理剤は、PPG Industries,Inc.から、NUPAL(登録商標)との商品名で市販されている。非導電性コーティング(例えば、NUPAL)の基材への塗布は、代表的に、この基材を脱イオン水でリンスし、その後コーティングを合体させる工程の後に続く。このことは、非導電性コーティングが、非絶縁性であるのに十分に薄い(すなわち、非導電性コーティングが基材の電気伝導性を妨害しないよう十分に薄い)ことを保証し、その後の電着可能コーティング組成物の電着を可能にする。この前処理コーティング組成物は、この基材の湿潤性を改善するための補助剤として機能する界面活性剤をさらに含み得る。一般に、界面活性剤材料は、この前処理コーティング組成物の全重量を基準にして、約2重量%未満の量で存在する。キャリア媒体中の他の任意の材料としては、消泡剤および基材湿潤剤が挙げられる。
環境問題に起因して、この前処理コーティング組成物は、クロム含有材料を含まず、すなわち、約2重量%未満のクロム含有材料(CrOとして表わされる)、代表的には、約0.05重量%未満のクロム含有材料を含む。
前処理プロセスにおいて、この金属基材の表面にこの前処理組成物を堆積する前に、通常は、その表面を充分に洗浄し脱脂することにより、この金属表面から異物が除去される。この金属基材の表面は、物理的手段または化学的手段(例えば、この表面を機械的に研磨すること、または当業者に周知の市販のアルカリ性または酸性洗浄剤(例えば、メタケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム)を使って洗浄/脱脂すること)により、洗浄できる。適切な洗浄剤の非限定的な例には、CHEMKLEEN(登録商標) 163があり、これは、PPG Pretreatment and Specialty Products of Troy,Michiganから市販されているアルカリベースの洗浄剤である。酸性洗浄剤もまた使用され得る。洗浄工程の後、この金属基材は、通常、任意の残留物を除去するために、水でリンスされる。この金属基材は、この基材を高温に軽く曝露することにより水をフラッシュすることによって、またはこの基材をスキージーロールの間に通すことによって、エアナイフを使用して風乾され得る。この前処理コーティング組成物は、金属基材の外面の少なくとも一部に堆積され得る。好ましくは、この金属基材の外面全体が、前処理組成物で処理される。前処理フィルムの厚みは、変化し得るが、一般的には、約1マイクロメートル、好ましくは約1〜約500ナノメートルの範囲、より好ましくは約10〜約300ナノメートルの範囲である。
この前処理コーティング組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで、任意の通常の塗布技術(例えば、噴霧、浸漬またはロール塗装)により、この基材の表面に塗布される。塗布時の前処理コーティング組成物の温度は、代表的には、約10℃〜約85℃、好ましくは、約15℃〜約60℃である。塗布時の前処理コーティング組成物のpHは、一般に、約2.0〜約5.5であり、代表的には、約3.5〜約5.5である。媒体のpHは、鉱酸(例えば、フッ化水素酸、フッ化ホウ酸、リン酸など(それらの混合物を含む));有機酸(例えば、乳酸、酢酸、クエン酸、スルファミン酸またはそれらの混合物);および水溶性または水分散性の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、アンモニア、またはトリエチルアミン、メチルエチルアミンのようなアミン、またはそれらの混合物)を使用して調整され得る。
連続工程は、典型的には、コイルコーティング工業で使用され、また、ミル塗布に使用される。この前処理コーティング組成物は、これらの通常の工程のいずれかにより、塗布され得る。例えば、コイル工業では、この基材は、洗浄されリンスされ、次いで、通常、化学コーターを使ったロールコーティングにより、この前処理コーティング組成物と接触される。処理したストリップは、次いで、加熱により乾燥され、そして通常のコイル塗装工程により、焼き付けられる。
前処理組成物のミル塗布は、浸漬、噴霧またはロール塗装により、新たに製造した金属ストリップに塗布できる。過剰な前処理組成物は、典型的には、リンガロールにより、除去される。この前処理組成物をこの金属表面に塗布した後、その金属は、脱イオン水でリンスされ得、室温または高温で乾燥して、処理した基材の表面から過剰の水分を除去し、そして任意の硬化性コーティング組成物を硬化して、この前処理コーティングを形成し得る。あるいは、処理した基材は、65℃〜125℃で、2〜30秒間加熱して、その上にこの前処理コーティング組成物の乾燥残留物を有するコーティング基材が生成され得る。この基材が、既に、ホットメルト製造工程によって加熱されている場合、乾燥を促進するために処理基材に塗布後に熱を加える必要はない。このコーティングを乾燥する温度および時間は、コーティング中の固形分の割合、コーティング組成物の成分および基材のタイプのような変数に依存している。
この前処理組成物の残留物のフィルム適用範囲は、一般に、1平方メートルあたり、約1〜約10,000ミリグラム(mg/m)であり、通常は、10〜400mg/mである。
溶接可能プライマーの層もまた、基材が前処理されていてもされていなくても、基材に塗布され得る。適切な溶接可能プライマーの非限定的な例としては、米国特許第5,580,371号;同第5,652,024号;同第5,584,946号;および同第3,792,850号に記載されるものが挙げられる。この溶接可能プライマーは、反応性官能基含有フィルム形成ポリマー(例えば、ポリエポキシドポリマーまたはエポキシ官能基を有するアクリルポリマー);およびこのフィルム形成ポリマーの官能基と反応するように適合された架橋剤を含み得る。溶接可能プライマー組成物は、1つ以上の伝導性顔料(例えば、カーボンブラック)をさらに含み、この顔料は、硬化されたプライマーを溶接可能にするのに十分な量で存在する。代表的な溶接可能プライマーは、BONAZINC(登録商標)であり、これは、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,Pennsylvania)から市販されている亜鉛富化ミル塗布有機フィルム形成組成物である。BONAZINCは、少なくとも1マイクロメートルの厚さ、代表的には、3〜4マイクロメートルの厚さまで塗布され得る。他の溶接可能プライマー(例えば、鉄ホスフィド富化プライマー)が、市販されている。
本発明の任意のプロセスの任意の電着工程は、導電性基材を、水性電着可能組成物の電着浴に浸漬する工程を包含し得、この基材は、カソードおよびアノードを備える電気回路において、カソードとして働く。十分な電流が、電極間に適用され、実質的に連続した電着可能コーティング組成物の接着フィルムが、導電性基材の表面の少なくとも一部の上(ontoまたはover)に堆積される。また、本明細書中で使用される場合、「基材」の少なくとも一部の「上に」に形成される電着可能組成物または電着可能コーティングとは、基材表面の少なくとも一部の上に直接形成される組成物、およびこの基材の少なくとも一部に予め塗布された任意のコーティングまたは前処理材料の上に形成された組成物またはコーティングをいうことが理解されるべきである。電着は、通常、1ボルト〜数千ボルトの範囲、代表的には、50ボルトと500ボルトとの間の一定の電圧で実施される。電流密度は、通常、1.0アンペア/平方フィートと15アンペア/平方フィートとの間(10.8〜161.5アンペア/平方メートル)であり、電着プロセスの間迅速に減少する傾向があり、このことは、連続的な自己絶縁フィルムの形成を示す。
一旦、電着可能コーティング組成物(以下に詳細に記載される)が、上記のようにして塗布され、それにより、基材上に電着コーティング層が形成されると、この電着コーティング層は、必要に応じて、この電着コーティング層を硬化するのに十分な温度まで、かつこの硬化に十分な時間、加熱される。このコーティングされた基材は、250℃〜450°F(121.1℃〜232.2℃)、頻繁には、250°F〜400°F(121.1℃〜204.4℃)、代表的には、300°F〜360°F(148.9℃〜180℃)の範囲の温度まで加熱され得る。硬化時間は、硬化温度、および他の変数(例えば、電着されるコーティングのフィルムの厚さ、組成物に存在する触媒のレベルおよびタイプなど)に依存し得る。本発明の目的のために、この時間が、基材に対する電着されたコーティングを硬化するのに十分であることが、必ず必要である。例えば、硬化時間は、10分〜60分、代表的には10〜30分の範囲であり得る。得られる硬化された電着コーティングの厚さは、通常、15〜50ミクロンの範囲である。
本明細書中で使用される場合、組成物と共に使用される用語「硬化」(例えば、「硬化された組成物」とは、組成物の任意の架橋可能成分が少なくとも部分的に架橋されていることを意味する。本発明の特定の実施形態において、架橋可能成分の架橋密度(すなわち、架橋度)は、完全な架橋の5%〜100%の範囲である。他の実施形態において、この架橋密度は、完全な架橋の35%〜85%の範囲である。他の実施形態において、この架橋密度は、完全な架橋の50%〜85%の範囲である。当業者は、架橋度(すなわち、架橋密度)が、種々の方法(例えば、窒素下で実施されるTA Instruments DMA 2980 DMTAアナライザーを使用する動的機械式熱分析(DMTA))によって決定され得ることを理解する。この方法は、コーティングまたはポリマーのフリーフィルム(free film)のガラス転移温度および架橋密度を決定する。硬化された材料のこれらの物理的特性は、架橋されたネットワークの構造に関連する。
本発明のプロセスにおいて用いられる電着可能コーティング組成物は、当該分野で周知のアニオン性またはカチオン性の電着可能コーティング組成物のいずれかであり得る。上記のように、電着可能カチオン性組成物は、代表的に、金属製の自動車または自動車の基材の電気コーティング(electrocoating)において使用される。
電着可能コーティング組成物は、通常、水性媒体中に分散された樹脂相を含み、この樹脂相は、(a)非ゲル化活性水素基含有イオン性樹脂、および(b)(a)の活性水素基と反応性の官能基を有する硬化剤、を含む。このような電着可能コーティング組成物は、代表的に、電着浴の形態である。
「非ゲル化」とは、樹脂が、架橋を実質的に含まず、適切な溶媒に溶解された場合、固有粘度(例えば、ASTM−D1795またはASTM−D4243に従って決定される)を有することを意味する。反応生成物の固有粘度は、その分子量の指標である。一方、ゲル化反応生成物は、本質的に高い固有分子量を有するため、測定するには高すぎる固有粘度を有する。本明細書中で使用される場合、「実質的に架橋を含まない」反応生成物とは、ゲル透過クロマトグラフィーにより決定された場合、1,000,000未満の重量平均分子量(Mw)を有することを意味する。
用語「活性水素」とは、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY、第49巻、3181頁(1927)に記載されるようにしてZerewitnoff試験によって決定されるように、イソシアネートと反応性の基をいう。例えば、活性水素は、ヒドロキシル基、1級アミン基および/または2級アミン基に由来し得る。
アニオン性電着浴組成物で使用するために適切なフィルム形成樹脂の例は、塩基可溶化カルボン酸含有ポリマー(例えば、乾性油または半乾性脂肪酸エステルとジカルボン酸または無水物との反応生成物または付加物;および脂肪酸エステル、不飽和酸または無水物の反応生成物、ならびに任意のさらなる不飽和改変材料(これはポリオールとさらに反応される))である。不飽和カルボン酸のヒドロキシ−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および少なくとも1つの他のエチレン性不飽和モノマーの少なくとも部分的に中和されたインターポリマーもまた適切である。なお別の適切な電着可能樹脂は、アルキド−アミノプラストビヒクル(すなわち、アルキド樹脂およびアミン−アルデヒド樹脂を含むビヒクル)を含む。さらに別のアニオン性電着可能樹脂組成物は、樹脂性ポリオールの混合エステルを含む。これらの組成物は、米国特許第3,749,657号の第9欄、1〜75行および第10欄、1〜13行(この全ては本明細書中で参考として援用される)に詳細に記載される。他の酸性官能性ポリマー(例えば、当業者に周知のリン酸塩化ポリエポキシドまたはリン酸塩化アクリルポリマー)もまた、使用され得る。
電着可能コーティング組成物において使用するのに適切なカチオン性ポリマーは、このポリマーが、「水分散性」である、すなわち、水中で可溶化、分散または乳化されるように適合されている限り、当該分野で周知の多数のカチオン性ポリマーの任意のものを含み得る。このようなポリマーは、正電荷を与えるためのカチオン性官能基を含む。
カチオン性フィルム形成樹脂の適切な例としては、アミン塩の基を含有する樹脂(例えば、米国特許第3,663,389号;同第3,984,299号;同第3,947,338号;および同第3,947,339号に記載されるもののような、ポリエポキシドと1級アミンまたは2級アミンの酸可溶化反応生成物)が挙げられる。通常、これらのアミン塩の基を含有する樹脂は、ブロック化イソシアネート硬化剤と組み合わせて使用される。イソシアネートは、上記の米国特許第3,984,299号に記載されるようにして完全にブロックされ得るか、またはイソシアネートは、米国特許第3,947,338号に記載されるような樹脂骨格で部分的にブロックされ、反応され得る。また、米国特許第4,134,866号およびDE−OS No.2,707,405に記載されるような一成分組成物が、フィルム形成樹脂として使用され得る。エポキシ−アミン反応生成物に加えて、フィルム形成樹脂がまた、カチオン性アクリル樹脂(例えば、米国特許第3,455,806号および同第3,928,157号に記載されるもの)から選択され得る。
アミン塩の基を含有する樹脂に加えて、4級アンモニウム塩の基を含有する樹脂もまた、用いられ得る。これらの樹脂の例は、有機ポリエポキシドを3級アミン塩と反応させることにより形成される。このような樹脂は、米国特許第3,962,165号;同第3,975,346号;および同第4,001,101号に記載される。他のカチオン性樹脂の例は、3級スルホニウム塩の基を含有する樹脂、および4級ホスホニウム塩の基を含有する樹脂(例えば、それぞれ、米国特許第3,793,278号および同第3,984,922号に記載されるもの)である。また、例えば、欧州出願番号12463に記載されるようにして、エステル交換反応により硬化するフィルム形成樹脂が、使用され得る。さらに、Mannich塩基から調製されるカチオン性組成物(例えば、米国特許第4,134,932号に記載のもの)が使用され得る。
最も頻繁には、樹脂(a)は、1級および/または2級のアミン基を含む正に荷電した樹脂である。このような樹脂は、米国特許第3,663,389号;同第3,947,339号;および同第4,116,900号に記載される。米国特許第3,947,339号において、ポリアミンのポリケチミン誘導体(例えば、ジエチレントリアミンまたはトエチレンテトラアミン)が、ポリエポキシドと反応される。この反応生成物が、酸で中和され、そして水中に分散される場合、遊離1級アミン基が、生成する。また、等価な生成物が、ポリエポキシドを過剰のポリアミン(例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラアミン)と反応させ、そしてこの過剰なポリアミンを、反応混合物から真空ストリップした場合に、形成される。このような生成物は、米国特許第3,663,389号および同第4,116,900号に記載される。
上記の活性水素含有イオン性電着可能樹脂は、電着浴の全重量を基準にして、1〜60重量%、頻繁には5〜25重量%の範囲の量で、本発明のプロセスにおいて使用される電着浴に存在し得る。
本発明のプロセスにおいて使用するために適切な電着浴の樹脂相は、すぐ上で記載されたイオン性電着可能樹脂(a)の活性水素基と反応するように適合された硬化剤(b)をさらに含む。ブロック化有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤の両方が、本発明における使用に適切であるが、ブロック化イソシアネートは、代表的に、カソード電着に使用される。
アミノプラスト樹脂(代表的に、アニオン性電着のための硬化剤として使用される)は、アミンまたはアミドとアルデヒドとの縮合生成物である。適切なアミンまたはアミドの例は、メラミン、ベンゾグアナミン、ウレアおよび類似の化合物である。一般的に、使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒドであるが、生成物は、他のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒドおよびフルフラル)から生成され得る。この縮合生成物は、用いられる特定のアルデヒドに依存して、メチロール基または類似のアルキロール基を含む。好ましくは、メチロール基は、アルコールとの反応によってエステル化される。用いられる種々のアルコールとしては、1〜4個の炭素原子を含む1級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノール)が挙げられ、メタノールが好ましい。アミノプラスト樹脂は、CytecからCYMELとの商品名で、そしてSolutiaからRESIMENEとの商品名で市販されている。
アミノプラスト硬化剤は、代表的に、約5重量%〜約60重量%、好ましくは約20重量%〜約40重量%(この割合は電着浴中の樹脂固形分の全重量に基づく)の範囲の量で、活性水素含有アニオン性電着可能樹脂と共に用いられる。
代表的に、カソード電着に使用される硬化剤としては、ブロック化有機ポリイソシアネートが挙げられる。このポリイソシアネートは、米国特許第3,984,299号、第1欄、1〜68行、第2欄、および第3欄、1〜15行に記載されるように、完全にブロックされ得るか、または米国特許第3,947,338号、第2欄、65行〜68行、第3欄、および第4欄、1〜30行に記載されるように、ポリマー骨格で部分的にブロックされ、反応される(これらの米国特許は、本明細書中で参考として援用される)。「ブロックされた(blocked)」とは、得られるブロック化イソシアネート基が、周囲温度で活性水素に対して安定であるが、高温(通常は、90℃と200℃との間)では、フィルム形成ポリマー中の活性水素と反応性であるように、イソシアネート基がある化合物と反応されていることを意味する。
適切なポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む)が挙げられ、そして代表的な例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)(これらの混合物を含む)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合物が挙げられる。トリイソシアネートのような高級ポリイソシアネート(例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートが使用され得る。ポリオール(例えば、ネオペンチルグリコールおよびトリメチロールプロパン)およびポリマーポリオール(例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール)と共に調製されるイソシアネートプレポリマー(1より大きいNCO/OH当量)もまた、使用され得る。
ポリイソシアネート硬化剤は、代表的に、活性水素含有カチオン性電着可能樹脂と共に、5重量%〜60重量%、代表的には20重量%〜50重量%の範囲の量(この割合は、電着浴の樹脂固形分の全重量に基づく)で、使用され得る。
水性電着可能コーティング組成物は、水性分散物の形態である。用語「分散物」は、樹脂が分散相に存在し、そして水が連続相に存在する、二相の、透明か、半透明かまたは不透明な樹脂系であると考えられる。樹脂相の平均粒子サイズは、一般に、1.0ミクロン未満、通常は0.5ミクロン未満、好ましくは0.15ミクロン未満である。
水性媒体中の樹脂相の濃度は、水性分散の総重量に基づいて、少なくとも1重量%であり、そして通常2〜60重量%である。本発明の組成物が、樹脂濃縮物の形態である場合、この組成物は、一般に水性分散の重量に基づいて、20〜60重量%にわたる樹脂固体含量を有する。
本発明の1つの特定の実施形態において、電着可能コーティング組成物は、以下の(1)および(2)を含む樹脂相を含む光分解耐性組成物である:(1)カソード上に電着可能な、1つ以上のゲル化しない、活性水素含有カチオン性アミン塩の基を含有する樹脂、および(2)1つ以上の少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート硬化剤。カチオン性樹脂(1)のアミン塩の基は、以下の構造(I)または(II)を有するペンダントアミン基および/または末端アミン基から誘導される:
Figure 0004775929
ここでRは、HまたはC〜C18アルキルを表し;R、R、RおよびRは、同じでも異なっていてもよく、各々が独立してHまたはC〜Cアルキルを表し;そしてXおよびYは、同じでも異なっていてもよく、各々が独立してヒドロキシル基またはアミン基を表す。
「末端および/またはペンダント」とは、1級アミノ基および/または2級のアミノ基が、ポリマー性骨格の末端位置から垂れ下がるか、または末端位置にあるか、あるいはポリマー骨格から垂れ下がり、そして/または末端である基の末端置換基である置換基として存在していることを意味する。換言すると、カチオン性アミン塩の基が誘導されるアミノ基は、ポリマー骨格内にない。
「アルキル」とは、アルキルおよびアラルキル、環式または非環式の、直鎖または分岐鎖の1価の炭化水素基を意味する。このアルキル基は、無置換でも、1つ以上のヘテロ原子(例えば、1つ以上の酸素原子、窒素原子または硫黄原子のような、非炭素、非水素原子)で置換されてもよい。
上の構造(I)および(II)により表されるペンダントアミノ基および/または末端アミノ基は、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、およびその混合物からなる群より選択される化合物から誘導され得る。これらの化合物の1つ以上は、上記のポリマー(例えば、ポリエポキシドポリマー(この場合、エポキシ基は、ポリアミンとの反応を介して開環し、これにより末端アミノ基および2級ヒドロキシル基を生じる)、またはグリシジルメタクリレートのような、エポキシ官能性のエチレンに不飽和モノマーから誘導される、エポキシ官能基を有するアクリルポリマー)のうちの1つ以上と反応する。
本発明の1つの特定の実施形態において、カチオン性塩の基を含有するポリマーは、上の構造(II)を有する1つ以上のペンダントアミノ基および/または末端アミノ基から誘導されるアミン塩の基を含み、その結果、電着可能なコーティング組成物が電着され、硬化される場合、少なくとも2つの電子求引性基(以下に詳細に記載されるような)は、硬化された電着コーティング中に存在する実質的に全ての窒素原子に対してβ位で結合される。本発明のさらなる実施形態において、電着可能なコーティング組成物が電着され、硬化される場合、3つの電子求引性基が、硬化された電着コーティング中に存在する実質的に全ての窒素原子に対してβ位で結合される。硬化された電着コーティング中に存在する「実質的に全て」の窒素原子とは、カチオン性アミン塩の基を形成するのに用いられるアミンから誘導される硬化された電着コーティング中に存在する全窒素原子の少なくとも65%、そして代表的に少なくとも90%を意味する。
以下で考察されるように、本目明細書中で言及される電子求引性基は、構造(II)中に描かれる窒素原子に対してβ位で結合される、この構造中のXおよびYにより表されるペンダントおよび/または末端のヒドロキシル基および/またはアミノ基とポリイソシアネート硬化剤との反応により形成される。電着可能組成物の硬化されたフリーフィルム中に存在する遊離アミン窒素または結合していないアミン窒素の量は、以下のように決定され得る。硬化されたフリーコーティングフィルムは、低温で粉砕され、酢酸に溶解され、次いで酢酸を含む過塩素酸で電位差滴定で滴定され、サンプルの総塩基含量を決定し得る。サンプルの1級アミン含量は、滴定することが出来ないアゾメチンを形成するサリチルアルデヒドとの1級アミンの反応により決定され得る。次いで、未反応の任意の2級アミンおよび3級アミンは、過塩素酸での電位差滴定により決定され得る。総塩基性度とこの滴定との間の差は、1級アミンに相当する。サンプルの3級アミン含量は、1級アミンおよび2級アミンが無水酢酸と反応し、対応するアミドを形成した後、過塩素酸を用いて電位差滴定により決定され得る。
本発明の1実施形態において、末端アミノ基は、構造(II)を有し、ここでXおよびYの両方は、1級アミノ基(例えば、アミノ基が、ジエチレントリアミンから誘導される)を含む。この場合において、ポリマーと反応の前に、1級アミノ基がブロックされ(例えば、メチルエチルケトンのようなケトンとの反応により)、ジケトイミンを形成し得ることが理解されるはずである。このようなケトイミンは、米国特許番号4,104,147号、6欄、23行〜7欄、23行に記載されるものである。このケトイミン基は、水中でアミン−エポキシ反応生成物を分散する際に分解し得、これにより硬化反応部位として遊離一級アミン基を提供する。
少量(例えば、組成物中に存在する全アミン窒素の5%以下に相当する量)の、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、およびトリアルキルアミンならびに混合アリール−アルキルアミンのようなヒドロキシル基を含まないアミン、またはヒドロキシル以外の基で置換されたアミンは、このようなアミンを含有することが、硬化された電着コーティングの光分解耐性に悪影響を与えないことを条件とする。特定の例としては、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ジココアミンおよびN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
ポリマー上のエポキシド基との上記のアミンの反応は、アミンとポリマーとを混合すると起こる。このアミンが、ポリマーに加えられ得るか、または逆もまた同じである。この反応は、ニートか、またはメチルイソブチルケトン、キシレン、もしくは1−メトキシ−2−プロパノ−ルのような適切な溶媒の存在下で行なわれ得る。この反応は、一般に発熱であり、冷却が所望されることがある。しかし、約50℃〜150℃の適度な温度に加熱することが、反応を促進するために行なわれ得る。
電着可能組成物中に用いられる活性水素含有カチオン性塩の基を含有するポリマーは、ポリマーおよび生じる硬化された電着組成物の光分解耐性を最大化するように選択される成分から調製される。いかなる理論によっても束縛されることを意図しないが、硬化された電着コーティングの光分解耐性(すなわち、可視光分解および紫外線分解に対する耐性)は、活性水素含有カチオン性アミン塩の基を含有する樹脂の分散のために用いられる窒素含有カチオン性基の位置および性質と相関され得ると考えられる。
本発明の目的のために、ペンダントアミノ酸および/または末端アミノ基が誘導されるアミンは、1級アミン基および/または2級アミン基を含み、その結果、このアミンの活性水素が、少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート硬化剤との反応により消費され、硬化反応の間に尿素基または結合を形成する。硬化反応の間に形成される尿素基は、硬化された電着コーティングの光分解耐性に対して、有意な悪影響を及ぼさないようである。
本発明の1実施形態において、ポリエポキシドポリマーは、過剰のアンモニアで「脱官能基化され(defunctionalized)」得、1つ以上の以下の構造単位(III)を含むポリマーを生じる。続いて、カチオン性塩の基が、水中の分散を促進するためにこのようなポリマーを適切な可溶化酸と混合することにより形成され得る。
Figure 0004775929
本発明の代替の実施形態において、カチオン性ポリマー(1)は、1級アミン基(ここからカチオン性アミン塩が形成され得る)を含むペンダントアミノ基および/または末端アミノ基を有するポリエポキシドポリマーを含み得る。このようなポリマーは、例えば、ジエチレントリアミンビスケタミン(ketamine)をエポキシ基含有ポリマー反応と反応させて、次いで加水分解してケトイミンを分解することにより調製され得る。このようなポリマーは、1つ以上の以下の構造単位(IV)を含み得る:
Figure 0004775929
構造単位における3級窒素の存在にもかかわらず、このようなポリマーを含む電着された組成物が、改善された光分解耐性を示すことが、見出された。理論により束縛されることを意図することなく、このことは、3級窒素に対してβ位に結合した2つの強い電子求引性基(この場合、尿素基)がポリイソシアネート硬化剤との硬化反応の間に形成することに起因すると考えられる。
同様に、窒素に対してβ位にイソシアネート反応性基を有する他の構造単位を含むポリマーがまた、類似の光分解耐性を示し得ることが見出された。このようなポリマーは、例えば、以下の構造単位(V)および(VI)を含み得る:
Figure 0004775929
1つ以上の構造単位(VI)を有するポリマーとポリイソシアネート硬化剤との反応において、電子求引性ウレタン基が、ペンダントアミノ基および/または末端アミノ基から誘導される3級窒素原子に対してβ位で形成される。同様に、1つ以上の構造単位(V)を有するポリマーとポリイソシアネート硬化剤との反応において、電子求引性のウレタン基および尿素基が、ペンダントアミノ基および/または末端アミノ基から誘導される3級窒素原子に対してβ位で形成される。
本明細書中で使用される場合、「電子求引性基」とは、アミン窒素原子から電子または電気陰性の電荷を吸引する傾向があり、これによりアミン窒素の塩基性を低下させる基(例えば、ウレタン基または尿素基)を意味する。このような電子求引性基は、ポリイソシアネート硬化剤とヒドロキシル基および/またはアミノ基(上の構造(II)においてXおよびYにより表され、樹脂から垂れ下がるかおよび/または末端である)との反応から誘導され得る。さらに、本発明の目的のために、ポリイソシアネート硬化剤とポリマー骨格上のヒドロキシル基、および/またはエポキシ基の開環の際に形成される2級ヒドロキシル基との反応から誘導されるウレタン基は、用語「電子求引性基」の意味の範囲内にあるよう意図されないことが、理解されるべきである。
以下の構造単位(VII)および/または(VIII)(ここで、Rは、無置換のアルキル基を表す)のような構造単位を主に含むポリマーが、すぐ上で考察されるポリマーに比べて有意に乏しい光分解耐性を示すことが見出された。理論により束縛されることを意図することなく、構造単位(VII)および/または(VIII)を主に含むこのようなポリマーのより乏しい光分解耐性は、塩基性窒素がポリマーの骨格に存在しており、(そしてこの塩基性窒素が、ポリマー骨格に関して垂れ下がらず、そして/または末端でない)そして/またはポリイソシアネート硬化剤と反応して塩基性アミン基に対してβ位において2つの電子求引性基を生じないということに帰し得ると考えられる。
Figure 0004775929
多数の構造単位(VII)および(VIII)を含むカチオン性エポキシの概して乏しい硬化応答から、(VII)の骨格上のフェノキシ基に対してβ位のヒドロキシル、および構造単位(VIII)の末端近くのフェノキシ基に対してβ位のヒドロキシル基が、効果的に硬化に関与しないこと、すなわち、これらのヒドロキシル基が、硬化工程の間に電子求引性ウレタン基に完全に変換されないことが、当業者により推測され得る。また、本明細書中で、ポリイソシアネート硬化剤との反応による塩基性窒素の消費の程度が、上記の様な硬化工程後の低温で粉砕された電着可能組成物の滴定により測定され得ることが、留意されるべきである。
所望される場合、少量の、構造単位(VII)および/または(VIII)を有するポリマーは、このようなポリマーが、硬化された電着コーティングの光分解耐性に悪影響を与えるのに十分な量では存在しないという条件で、本発明の電着可能なコーティング組成物中に含まれ得る。
活性水素含有、末端アミノ基含有ポリマーは、酸を用いて少なくとも部分的に中和することにより、カチオン性でかつ水に分散可能にされる。適切な酸としては、蟻酸、酢酸、乳酸、リン酸、ジメチロールプロピオン酸、およびスルファミン酸のような有機酸および無機酸が挙げられる。酸の混合物が、用いられ得る。中和の程度が、関与する特定の反応生成物で変わる。しかし、十分な酸が、水中に電着可能な組成物を分散させるのに用いられるべきである。代表的に、用いられる酸の量は、完全な理論上の中和の少なくとも30%を提供する。過剰な酸がまた、100%完全な理論上の中和のために必要な量を超えて用いられ得る。
カチオン性塩の基を形成する程度は、ポリマーが水性媒体および他の成分と混合される場合に、電着可能組成物の安定な分散が形成されるような程度であるべきである。「安定な分散」とは、沈殿しないか、またはいくらかの沈殿が生じる場合に、容易に再分散するものをいう。さらに、分散は、水性分散中に浸されたアノードとカソードとの間に電位が設定される場合、分散された粒子がカソードに移動し、そしてカソード上に電着されるという十分なカチオン性特質を有するものであるべきである。
一般に、カチオン性ポリマーは、ゲル化せず、ポリマー固体の1グラム当たりのカチオン性塩の基の約0.1〜3.0ミリ当量(millequivalent)、好ましくは約0.1〜0.7ミリ当量を含む。
カチオン性ポリマーに付随する活性水素は、約93℃〜204℃、好ましくは、約121℃〜177℃の温度範囲内でイソシアネートと反応性の任意の活性水素を含む。代表的に、活性水素は、ヒドロキシルならびに一級アミノおよび二級アミノからなる群(ヒドロキシルおよび1級アミノのような混合した基を含む)から選択される。好ましくは、このポリマーは、ポリマー固体の1グラム当たり、約1.7〜10ミリ当量、より好ましくは約2.0〜5ミリ当量の活性水素の活性水素含量を有する。
カチオン性塩の基を含有するポリマーは、カチオン性塩の基を含有するポリマーおよび硬化剤の樹脂固体を合わせた全量に基づいて、20〜80重量%にわたる量で、しばしば30〜75重量%にわたる量で、および代表的に50〜70重量%にわたる量で、本発明のプロセスにおいて用いられる光分解耐性電着可能組成物中に存在し得る。
上述のように、光分解耐性電着可能コーティング組成物の樹脂相は、直前に記載したカチオン性の電着可能な樹脂の活性水素基と反応するよう適合される硬化剤(2)をさらに含む。本発明の1実施形態において、硬化剤は、1つ以上の少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネートを含む。この実施形態において、少量(すなわち、組成物中に存在する硬化剤の総樹脂固体の10重量%未満、好ましくは5重量%未満)の芳香族ポリイソシアネートは、この芳香族ポリイソシアネートが硬化した電着組成物の光分解耐性に有害に作用するのに十分な量で存在しない場合、含まれ得る。
脂肪族ポリイソシアネートは、米国特許第3,984,299号1欄1行〜68行、2欄および3欄1行〜15行に記載されるように完全にブロックされ得るか、または米国特許第3,947,338号2欄65行〜68行、3欄および4欄1行〜30行に記載されるように部分的にブロックされ得、そしてポリマーバックボーンと反応され得る。本発明の1実施形態において、ポリイソシアネート硬化剤は、遊離のイソシアネート基を実質的に全く含まない、完全にブロックされたポリイソシアネートである。
より高級なポリイソシアネートが、ジイソシアネートの代わりに、またはジイソシアネートと併せて用いられ得るが、ジイソシアネートが代表的に用いられる。硬化剤としての使用に適切な脂肪族ポリイソシアネートの例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ビス−(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ポリマー1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、三量体形成したイソフォロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、およびその混合物のような脂環式ポリイソシアネートおよびアラリファティック(araliphatic)ポリイソシアネートが挙げられる。本発明の特定の実施形態において、硬化剤は、ポリマー1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、およびその混合物から選択される完全にブロックされたポリイソシアネートを含む。本発明の別の実施形態において、ポリイソシアネート硬化剤は、Bayer CorporationからDesmodur N3300(登録商標)として入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートの完全にブロックされた三量体を含む。
本発明の1つの実施形態において、脂肪族ポリイソシアネート硬化剤は、1,2−アルカンジオール(例えば、1,2−プロパンジオール)、1,3−アルカンジオール(例えば、1,3−ブタンジオール)、ベンジル型アルコール(例えば、ベンジルアルコール)、アリル型アルコール(例えば、アリルアルコール)、カプロラクタム、ジアルキルアミン(例えば、ジブチルアミン)、およびその混合物から選択される少なくとも1つのブロック剤で少なくとも部分的にブロックされる。本発明のさらなる実施形態において、脂肪族ポリイソシアネート硬化剤は、3つ以上の炭素原子を有する少なくとも1つの1,2−アルカンジオール(例えば、1,2−ブタンジオール)で少なくとも部分的にブロックされる。
所望される場合、ブロック剤は、脂肪族、脂環式、または芳香族のアルキルモノアルコールまたはフェノール化合物(例えば、低級脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、およびn−ブタノール);脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール);芳香族アルキルアルコール(例えば、フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノール);およびフェノール化合物(例えば、フェノール自体および置換フェノール(ここで、置換基はコーティング操作に影響しない)(例えば、クレゾールおよびニトロフェノール))のような少量の他の周知のブロック剤をさらに含み得る。グリコールエーテルおよびグリコールアミンはまた、ブロック剤として用いられ得る。適切なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。他の適切なブロック剤としては、オキシム(例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシム)が挙げられる。上述されるように、これらの従来のブロック剤は、これらのブロック剤が硬化された電着コーティングの光分解耐性に悪影響を及ぼすのに十分な量で存在しない条件で、少量で用いられ得る。
少なくとも部分的にブロックしたポリイソシアネート硬化剤(2)は、本発明のプロセスにおいて使用される光分解耐性電着可能組成物中に、カチオン性塩の基を含有するポリマーと硬化剤とを合わせた樹脂固体の総重量に基づいて、80〜20重量パーセント、しばしば75〜30重量パーセント、そして代表的には70〜50重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
適切な光分解耐性電着コーティング組成物は、米国特許出願番号10/005,830(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
本発明のプロセスにおける使用に適切な任意の電着可能コーティング組成物は、代表的には他の任意成分をさらに含む。例えば、樹脂質バインダーは、主に水を含む水性媒体中に分散される。水に加えて、水性媒体は、合着(coalescing)溶媒(例えば、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトン(例えば、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレングリコールおよびプロピレングリコールならびにエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびエチレングリコールモノヘキシルエーテル))を含み得る。顔料組成物(例えば、下塗り組成物に関して以下に記載されるもの)、および所望の場合、種々の添加剤(例えば、界面活性剤、湿潤剤、または触媒)もまた、分散中に含まれ得る。他の成分としては、腐食防止物質(例えば、希土類金属化合物(例えば、(とりわけ、イットリウム、ビスマス、ジルコニウム、およびタングステンのような)希土類金属の可溶性塩、不溶性塩、有機塩および無機塩))が挙げられ得る。また、ヒンダードアミン光安定化剤および/または紫外線吸収剤が、電着可能コーティング組成物中に含まれ得る。
本発明のプロセスにおいて、上記の硬化可能な電着可能コーティング組成物のいずれも、任意の種々の電導性基材(種々の金属基材を含む)の少なくとも一部上に電気泳動的に電着され得る。適切な金属基材としては、鉄金属および非鉄金属が挙げられ得る。適切な鉄金属としては、鉄、鋼、およびその合金が挙げられる。有用な鋼材料の非限定的な例としては、冷間圧延鋼、亜鉛めっき(すなわち、亜鉛で被覆した)鋼、電気亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、酸洗い鋼、鋼上にコーティングされたGALVANNEAL(登録商標)、GALVALUME(登録商標)およびGALVAN(登録商標)亜鉛−アルミニウム合金、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。有用な非鉄金属としては、伝導性炭素被覆材料、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの合金が挙げられる。冷間圧延鋼もまた、金属リン酸塩溶液、少なくとも1つのIIIB族またはIVB族の金属を含む水溶液、有機リン酸溶液、有機ホスホン酸溶液および上記の組み合わせのような溶液で以下に考察されるように前処理した場合に適切である。鉄金属および非鉄金属の組み合わせまたは複合材もまた使用され得る。
一実施形態において、本発明のプロセスは、水性の硬化可能な下塗り組成物を、電着コーティング層の少なくとも一部の上に直接堆積させることにより、電着コーティング層上に下塗りを形成する工程をさらに包含する。この下塗り組成物は、代表的には、当該分野で周知の任意の水性下塗り組成物のような水性下塗り組成物を含む。
本明細書中で使用される場合、基材または以前に形成されたコーティング層の少なくとも一部「(の)上に」または「直接〜(の)上に」組成物を適用するとは、その組成物が、基材またはコーティング層上に塗布され、そして介在するコーティング層なしに基材またはコーティング層と表面接触していることを意味する。
本発明のプロセスにおいて有用な水性下塗り組成物は、代表的には、(i)代表的に反応性官能基を含む、ポリマーを含む樹脂質バインダー;および(ii)この樹脂質バインダー(i)中に分散された1つ以上の顔料を含む顔料組成物を含む。このポリマーは、この下塗り組成物の主要なフィルム形成ポリマーとして作用し得るか、顔料粉砕ビヒクルとして作用し得るか、またはその両方として作用し得る。
第1の樹脂バインダー(i)(または以下に記載されるような第2の樹脂質バインダー)を含むポリマーは、当該分野で公知の任意の種々のポリマー(例えば、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリエポキシドポリマー、ケイ素含有ポリマー、これらの混合物、およびそのコポリマー(例えば、「ハイブリッド」樹脂バインダー((以下に詳細に記載されるような)ポリエステルポリマーの存在下で、1つ以上のエチレン性不飽和モノマー(例えば、以下に記載されるもののいずれか)を共重合させることにより調製されるポリマー))からなる群から選択されるポリマー)から選択され得る。本明細書中で使用される場合、「ケイ素含有ポリマー」は、1つ以上の−SiO−単位を骨格に含むポリマーを意味する。このようなケイ素ベースのポリマーは、ハイブリッドポリマー(例えば、骨格に1つ以上の−SiO−単位を有する有機ポリマーブロックを含むポリマー)を含み得る。樹脂質バインダー(i)はまた、通常、フィルム形成ポリマーの官能基と反応性の官能基を有する硬化剤を含む。
ポリマーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、1級アミン基、2級アミン基、アミド基、カルバメート基、ウレア基、ウレタン基、ビニル基、不飽和エステル基、マレイミド基、フマレート基、アンヒドリド基、ヒドロキシアルキルアミド基、エポキシ基、およびこのような基の混合物から選択される少なくとも1つの反応性官能基を含み得る。例えば、適切なヒドロキシ基含有ポリマーとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、およびその混合物が挙げられ得る。
適切なヒドロキシル基および/またはカルボキシル基含有アクリルポリマーは、重合可能なエチレン性不飽和モノマーから調製され得、そして代表的には、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸のヒドロキシルアルキルエステルと1つ以上の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる)、およびビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、およびビニルトルエン))とのコポリマーである。本明細書中で使用される場合、「(メタ)アクリレート」および同様の用語は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含むことを意図される。
本発明の一実施形態において、アクリルポリマーは、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーから調製され得る。このようなモノマーは、エチレン性不飽和酸官能性モノマー(例えば、モノカルボン酸(例えば、アクリル酸))と、不飽和酸モノマーとのフリーラジカル開始重合に関与しないエポキシ化合物との反応から誘導され得る。このようなエポキシ化合物の例としては、グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルが挙げられる。適切なグリシジルエーテルとしては、アルコールおよびフェノールのグリシジルエーテル(例えば、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなど)が挙げられる。適切なグリシジルエステルとしては、Shell Chemical CompanyからCARDURA Eの商品名で市販されるもの;およびExxon Chemical CompanyからGLYDEXX−10の商品名で市販されるものが挙げられる。あるいは、β−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、エチレン性不飽和のエポキシ官能性モノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテル)、および飽和カルボン酸(例えば、飽和モノカルボン酸(例えば、イソステアリン酸))から調製され得る。
エポキシ官能基は、オキシラン基含有モノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテル)を、他の重合可能なエチレン性不飽和モノマー(例えば、上で考察したもの)と共重合させることにより、重合可能なエチレン性不飽和モノマーから調製されたポリマーに組み込まれ得る。このようなエポキシ官能性アクリルポリマーの調製は、米国特許第4,001,156号第3〜6欄(本明細書中に参考として援用される)に詳細に記載される。
カルバメート官能基は、例えば、上記のエチレン性不飽和モノマーを、カルバメート官能性ビニルモノマー(例えば、メタクリル酸のカルバメート官能性アルキルエステル)と共重合させることにより、重合可能なエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマーに組み込まれ得る。有用なカルバメート官能性アルキルエステルは、例えば、ヒドロキシアルキルカルバメート(例えば、アンモニアとエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートとの反応生成物)と、無水メタクリル酸とを反応させることにより調製され得る。他の有用なカルバメート官能性ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート、およびヒドロキシプロピルカルバメートの反応生成物;またはヒドロキシプロピルメタクリレート、イソホロンジイソシアネート、およびメタノールの反応生成物が挙げられる。なお他のカルバメート官能性ビニルモノマーが使用され得、例えば、イソシアン酸(HNCO)とヒドロキシ官能性アクリルモノマーまたはメタクリルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)との反応生成物、および米国特許第3,479,328号(本明細書中に参考として援用される)に記載されるものである。カルバメート官能基はまた、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーと低分子量アルキルカルバメート(例えば、メチルカルバメート)とを反応させることにより、アクリルポリマーに組み込まれ得る。ペンダントカルバメート基もまた、「カルバモイル交換」反応によりアクリルポリマーに組み込まれ得、このカルバモイル交換反応において、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーは、アルコールまたはグリコールエーテルから誘導された低分子量カルバメートと反応する。カルバメート基は、ヒドロキシル基と交換して、カルバメート官能性アクリルポリマーおよび元のアルコールまたはグリコールエーテルを生じる。また、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーは、イソシアン酸と反応してペンダントカルバメート基を生じ得る。同様に、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーは、尿素と反応してペンダントカルバメート基を生じ得る。
重合可能なエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマーは、適切な触媒(例えば、有機過酸化物またはアゾ化合物(例えば、過酸化ベンゾイルまたはN,N−アゾビス(イソブチロニトリル))の存在下で、溶液重合技術により調製され得、この技術は、当業者に周知である。この重合は、当該分野で慣用の技術によりモノマーが可溶である有機溶液中で行われ得る。あるいは、これらのポリマーは、当該分野で周知の水性乳化重合または分散重合により調製され得る。反応物の比および反応条件は、所望のペンダント官能基を有するアクリルポリマーを生じるように選択される。
ポリエステルポリマーもまた、フィルム形成ポリマーとして本発明のコーティング組成物において有用である。有用なポリエステルポリマーとしては、代表的に、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合生成物が挙げられる。適切な多価アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールが挙げられ得る。適切なポリカルボン酸としては、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、およびヘキサヒドロフタル酸が挙げられ得る。上述のポリカルボン酸に加えて、無水物のような酸の機能的等価体(存在する場合)または酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル)が使用され得る。また、少量のモノカルボン酸(例えば、ステアリン酸)が使用され得る。反応物の比および反応条件は、所望のペンダント官能基(すなわち、カルボキシル官能基およびヒドロキシル官能基)を有するポリエステルポリマーを生じるように選択される。
例えば、ヒドロキシル基含有ポリエステルは、ジカルボン酸の無水物(例えば、無水ヘキサヒドロフタル酸)とジオール(例えば、ネオペンチルグリコール)とを1:2のモル比で反応させることにより調製され得る。風乾を増強することが望ましい場合、適切な乾性油脂肪酸が使用され得、これらとしては、亜麻仁油、ダイズ油、硬化ひまし油、または桐油から誘導されたものが挙げられる。
カルバメート官能性ポリエステルは、最初に、ポリエステルを形成する際に使用されるポリ酸およびポリオールと反応し得るヒドロキシアルキルカルバメートを形成することにより調製され得る。あるいは、末端カルバメート官能基は、イソシアン酸とヒドロキシ官能性ポリエステルとを反応させることによりポリエステルに組み込まれ得る。また、カルバメート官能基は、ヒドロキシルポリエステルと尿素とを反応させることによりポリエステルに組み込まれ得る。さらに、カルバメート基は、カルバモイル交換反応によりポリエステルに組み込まれ得る。適切なカルバメート官能基含有ポリエステルの調製は、米国特許第5,593,733号第2欄第40行〜第4欄第9行(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
本発明の一実施形態において、第1の下塗り組成物は、1つ以上のポリエステルポリマー(例えば、直前に記載したもののいずれか)の存在下で、1つ以上の重合可能なエチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリルポリマーに関して以前に考察したもののいずれか)を共重合させることにより調製されるハイブリッド樹脂を、50重量パーセント未満含み得、40重量パーセント未満含み得、そして30重量パーセント未満含み得る。
末端イソシアネート基またはヒドロキシ基を含むポリウレタンポリマーはまた、本発明のコーティング組成物におけるポリマー(d)として使用され得る。使用され得るポリウレタンポリオールまたはNCO末端ポリウレタンは、ポリオール(ポリマー性ポリオールを含む)とポリイソシアネートとの反応によって調製されるものである。使用され得る末端イソシアネート基または第1級もしくは第2級アミン基を含むポリ尿素は、ポリアミン(ポリマー性ポリアミンを含む)とポリイソシアネートとの反応によって調製されるものである。ヒドロキシル/イソシアネート当量比またはアミン/イソシアネート当量比は、調整され、反応条件を選択して、所望の末端基を得る。適切なポリイソシアネートの例としては、米国特許第4,046,729号、第5欄26行〜第6欄28行(これは、本明細書で参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。適切なポリオールの例としては、米国特許第4,046,729号、第7欄52行〜第10欄35行(これは、本明細書で参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。適切なポリアミンの例としては、米国特許第4,046,729号、第6欄61行〜第7欄32行および米国特許第3,799,854号、第3欄13行〜50行(これは、本明細書で参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。
カルバメート官能基は、ポリイソシアネートと、ヒドロキシ官能性を有しかつペンダントカルバメート基を含むポリエステルとを反応させることによって、ポリウレタンポリマーへと導入され得る。あるいは、ポリウレタンは、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールおよびヒドロキシカルバメートまたはイソシアン酸とを反応させることによって、別個の反応物として調製され得る。適切なポリイソシアネートの例は、芳香族イソシアネート(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネート)、ならびに脂肪族ポリイソシアネート(例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)である。環状脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,4−シクロヘキシルジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート)もまた、使用され得る。
適切なポリエーテルポリオールの例としては、例えば、以下の構造式(IX)または(X):
Figure 0004775929
を有するポリアルキレンエーテルポリオールが挙げられ、
ここで、置換基Rは、水素、または混合置換基を含む1〜5個の炭素原子を含む低級アルキル基であり、そして、nは、代表的に、2〜6の範囲の値を有し、mは、8〜100以上の範囲の値を有する。ポリアルキレンエーテルポリオールの例としては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコール、およびポリ(オキシ−1,2−ブチレン)グリコールが挙げられる。
種々のポリオール(例えば、グリコール(例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなど)、または他の高級ポリオール(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど))のオキシアルキル化から形成されるポリエーテルポリオールもまた、有用である。示されるように利用され得る高官能性のポリオールは、例えば、化合物(例えば、スクロースまたはソルビトール)のオキシアルキル化によって作製され得る。1つの一般的に利用されるオキシアルキル化法は、酸触媒または塩基触媒の存在下での、ポリオールとアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシド)との反応である。ポリエーテルの特定の例としては、E.I.Du Pont de Nemours and Company,Inc.から入手可能な商品名TERATHANEおよびTERACOLの下で販売されているポリエーテルが挙げられる。
硬化剤を参照して以下に記載されるようなポリエポキシドもまた、使用され得る。
本発明の1つの特定の実施形態において、樹脂結合剤(i)は、少なくとも2000の数平均分子量(Mn)を有するポリウレタンポリマーを含む。ポリウレタンポリマーの数平均分子量は、2000〜500,000の範囲、代表的には、3000〜200,000の範囲であり得る。
フィルム形成ポリマーは、下塗り組成物における全樹脂固体の重量に基づいて、少なくとも2重量%、通常少なくとも5重量%、そして代表的には、少なくとも10重量%の量で下塗り中に存在し得る。また、反応性官能基を有するポリマーは、コーティング組成物における全樹脂固体の重量に基づいて、80重量%未満、通常60重量%未満、代表的には、50重量%未満の量で、本発明の下塗り中に存在し得る。本発明の下塗り組成物中に存在するフィルム形成ポリマーの量は、詳述された値を含む、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
前述のように、官能基含有ポリマーに加えて、本発明のプロセスにおいて使用される下塗り組成物はさらに、ポリマーの官能基と反応性の官能基を有する少なくとも1つの硬化剤を含み得る。
フィルム形成ポリマーの反応性官能基に依存して、この硬化剤は、アミノプラスト樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化イソシアネート、ポリエポキシド、ポリ酸、無水物、アミン、ポリオール、および上述の任意の混合物から選択され得る。1つの実施形態において、少なくとも1つの硬化剤は、アミノプラスト樹脂およびポリイソシアネートから選択される。
ヒドロキシル、カルボン酸、およびカルバメート官能基含有材料のための硬化剤としてのアミノプラスト樹脂(フェノプラストを含み得る)は、当該分野で周知である。適切なアミノプラスト樹脂(例えば、上述のような樹脂)は、当業者に公知である。アミノプラストは、ホルムアルデヒドとアミンまたはアミドとの縮合反応から得られ得る。アミンまたはアミドの非限定的な例としては、メラミン、尿素、またはベンゾグアナミンが挙げられる。他のアミンまたはアミドとの縮合物が、使用され得る;例えば、グリコルリル(glycoluril)のアルデヒド縮合物であり、これは、粉末コーティングにおいて有用な高融点結晶性生成物を与える。使用されるアルデヒドは、最もしばしばホルムアルデヒドであるが、他のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、およびベンズアルデヒド)が、使用され得る。
アミノプラスト樹脂は、イミノ基およびメチロール基を含み、特定の例において、メチロール基の少なくとも一部分は、アルコールによりエーテル化され、硬化応答を変化させる。任意の一価アルコール(メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソブタノール、およびヘキサノールを含む)が、この目的のために使用され得る。
アミノプラストの非限定的な例としては、メラミン縮合物、尿素縮合物、またはベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物が挙げられ、特定の例において、単量体であり、そして1〜4個の炭素原子を含む1つ以上のアルコールにより少なくとも部分的にエーテル化されている。適切なアミノプラスト樹脂の非限定的な例は、例えば、Cytec Industries,Inc.からCYMEL(登録商標)の商標の下で、そしてSolutia,Inc.からRESIMENE(登録商標)の商標の下で市販されている。
本発明のなお別の実施形態において、硬化剤は、ポリイソシアネート硬化剤を含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリイソシアネート」は、ブロック化(キャップ化)イソシアネート、ならびに非ブロック化(ポリ)イソシアネートを含むことを意図される。ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネート、または上述の2つの混合物であり得る。ジイソシアネートが、使用され得るが、より高級なポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネートのイソシアヌレート)は、しばしば、使用される。高級ポリイソシアネートはまた、ジイソシアネートと組み合わせて使用され得る。イソシアネートプレポリマー(例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物)もまた、使用され得る。ポリイソシアネート硬化剤の混合物が、使用され得る。
ポリイソシアネートが、ブロック化、またはキャップ化される場合、当業者に公知の任意の適切な脂肪族一価アルコール、環状脂肪族一価アルコール、または芳香族アルキル一価アルコールは、ポリイソシアネートについてのキャップ剤として使用され得る。他の適切なキャップ剤としては、オキシムおよびラクタムが挙げられる。使用の際、ポリイソシアネート硬化剤は、代表的に、コーティング組成物を形成する他の成分へ加えられる場合、組成物において存在する樹脂固体の全重量に基づいて、0.5〜65重量%の範囲の量で存在し、10〜45重量%の範囲で存在し得、そしてしばしば、15〜40重量%の範囲の量で存在する。
他の有用な硬化剤は、ブロック化イソシアネート化合物(例えば、米国特許第5,084,541号(これは、本明細書で参考として援用される)に詳述されるトリカルバモイルトリアジン化合物)を含む。使用の際、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤は、組成物中の他の成分に加えられる場合、組成物中に存在する樹脂固体の全重量に基づいて、20重量%までの範囲の量で存在し得、1〜20重量%の範囲の量で存在し得る。
ヒドロキシ官能基含有材料のための硬化剤としての無水物はまた、当該分野で公知であり、本発明の下塗り組成物において使用され得る。本発明の組成物における硬化剤としての使用に適切な無水物の非限定的な例としては、モノマーの混合物から誘導される分子あたり少なくとも2つのカルボン酸無水物基を有する無水物が挙げられ、このカルボン酸無水物基は、エチレン性不飽和カルボン酸無水物ならびに少なくとも1つのビニルコモノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)を含む。適切なエチレン性不飽和カルボン酸無水物の非限定的な例としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、および無水イタコン酸が挙げられる。あるいは、無水物は、ジエンポリマーの無水物付加物(例えば、マレイン化ポリブタジエン)またはブタジエンのマレイン化コポリマー(例えば、ブタジエン/スチレンコポリマー)であり得る。これらおよび他の適切な無水物硬化剤は、米国特許第4,798,746号、第10欄16〜50行;ならびに同第4,732,790号、第3欄41〜57行(これらの両方は、本明細書で参考として援用される)に記載される。
カルボン酸官能基含有材料のための硬化剤としてのポリエポキシドは、当該分野で周知である。本発明の組成物における使用に適切なポリエポキシドの非限定的例としては、ポリグリシジルエステル(例えば、グリシジルメタクリレートから誘導されるアクリル)、多価フェノールのポリグリシジルエーテルならびに脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルを含み、これは、アルカリの存在下で、多価フェノール、または脂肪族アルコールの、エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン)によるエーテル化によって調製され得る。これらおよび他の適切なポリエポキシドは、米国特許第4,681,811号、第5欄、33〜58行(これは、本明細書で参考として援用される)に記載される。
エポキシ官能基含有材料のための適切な硬化剤は、ポリ酸硬化剤(例えば、酸基含有アクリル系ポリマー)を含み、これは、少なくとも1つのカルボン酸基ならびにカルボン酸基を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーから調製される。このような酸官能性アクリル系ポリマーは、30〜150の範囲の酸価を有し得る。酸官能基含有ポリエステルは、同様に使用され得る。上記のポリ酸硬化剤は、米国特許第4,681,811号、第6欄、45行から第9欄、54行(これは、本明細書で参考として援用される)にさらに詳細に記載される。
イソシアネート官能基含有材料のための硬化剤として当該分野において周知なものにはまた、ポリオール(すなわち、一分子当たり2つ以上のヒドロキシル基を有する材料)があり、成分(b)がポリオールである場合、成分(b)とは異なる。本発明の組成物で使用するのに適したこのような材料の非限定的な例としては、ポリアルキレンエーテルポリオール(チオエーテルを含む);ポリエステルポリオール(ポリヒドロキシポリエステルアミドを含む);ならびにヒドロキシル含有ポリカプロラクトンおよびヒドロキシ含有アクリルコポリマーが挙げられる。種々のポリオール(例えば、エチレングリコールのようなグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなど、またはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのようなより高次のポリオール)のオキシアルキル化から形成されたポリエーテルポリオールもまた有用である。ポリエステルポリオールもまた、使用され得る。これらおよび他の適切なポリオール硬化剤は、米国特許第4,046,729号、第7欄第52行〜第8欄第9行;第8欄第29行〜第9欄第66行;および米国特許第3,919,315号、第2欄第64行〜第3欄第33行(この両方は、本明細書中において参考として援用される)に記載される。
ポリアミンはまた、イソシアネート官能基含有材料のための硬化剤として使用され得る。適切なポリアミン硬化剤の非限定的な例としては、第1級または第2級のジアミンまたはポリアミンが挙げられ、ここで、この窒素原子に結合したラジカルは、飽和であるかまたは不飽和であり、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族置換脂肪族、脂肪族置換芳香族、および複素環であり得る。適切な脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンの非限定的な例としては、1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。適切な芳香族ジアミンの非限定的な例としては、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン(例えば、o−フェニレンジアミンおよびp−トリレンジアミン)が挙げられる。これらおよび他の適切なポリアミンは、米国特許第4,046,729号、第6欄第61行〜第7欄第26行(これは、本明細書中に参考として援用される)に詳細に記載された。
所望である場合、硬化剤の適切な混合物が使用され得る。下塗り組成物が一成分組成物として処方され得、ここで、アミノプラスト樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物のような硬化剤(例えば、上記されるもの)が他の組成物成分と混合されることが言及される。一成分組成物は、処方される場合、貯蔵安定であり得る。あるいは、組成物は、二成分組成物として処方され得、例えば、ここで、ポリイソシアネート硬化剤(例えば、上記されるもの)が、適用の直前に他の組成物成分の予め形成された混合物に添加され得る。この予め形成された混合物は、上記されるもののようなアミノプラスト樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物のような硬化剤を含み得る。
先に言及したように、本発明のプロセスで有用な下塗り組成物は、さらに、(ii)顔料組成物を含む。顔料組成物(ii)としては、充填剤顔料(例えば、滑石および炭酸カルシウム);色増強顔料(例えば、無機顔料(例えば、二酸化チタン、赤色酸化鉄および黒色酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、およびカーボンブラック)、および/または有機顔料(例えば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン));ならびに効果増強顔料(例えば、金属顔料(例えば、アルミニウムフレーク、銅フレークまたはブロンズフレーク)、および金属酸化物コーティング雲母(micaceous)顔料)が挙げられ得る。本発明のプロセスで使用される任意の下塗り組成物は、一つ以上の充填剤顔料、色増強顔料、および/または効果増強顔料、ならびにその組み合わせを含み得る。
本発明の別の実施形態において、本発明のプロセスで有用な下塗り組成物は、さらに、ポリマー性微粒子(代表的に、架橋ポリマー性微粒子)の水性分散物を含む。このような架橋微粒子が調製され得、例えば、非水性分散方法は、エチレン性不飽和コモノマーの混合物(このコモノマーのうちの少なくとも1つは、架橋コモノマーである)を有機液体中で、重合する工程を包含し、この有機液体において、この混合物が、可溶であるが、得られるポリマーは、不溶である。最もしばしば、本発明の下塗り組成物に使用されるポリマー性微粒子は、当該分野で周知の方法によって水性媒体中で架橋可能モノマーを含み得る、エチレン性不飽和コモノマーの混合物の乳化重合によって調製され得る。エチレン性不飽和コモノマーは、ポリマー(代表的には、疎水性ポリマー(例えば、疎水性アクリル、ポリエステル、および/またはポリウレタンポリマー))の存在下で重合され得る。「架橋可能モノマー」は、分子に少なくとも2つの重合可能エチレン性不飽和結合を有する重合可能エチレン性モノマー、あるいは相互に反応性基を有する2つの異なるモノマーの組み合わせを意味する。このような架橋可能モノマーの特定の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、およびエポキシ官能性モノマーの組み合わせ(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)、ならびにカルボン酸官能性モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸)が挙げられる。ポリマー性微粒子の適切であるが非限定的な例は、米国特許第5,071,904号;同第4,728,545号;同第4,539,363号;および同第4,403,003号に記載されるものである。
本発明のプロセスにおいて有用な第1下塗り組成物および/または第2下塗り組成物は、ポリマー性微粒子(通常、架橋ポリマー性微粒子)の1つ以上の水性分散物を、75重量%までの量、時々、70重量%までの量、時々、60重量%までの量、そして時々、50重量%までの量で含み得る。下塗り組成物はまた、ポリマー性微粒子(polymicroparticle)(通常、架橋ポリマー性微粒子)の1つ以上の水性分散物を、20重量%以上の量、時々、25重量%以上の量、時々、30重量%以上の量、そして時々、35重量%以上の量で含み得る。本発明のプロセスにおいて有用な下塗り組成物中に存在するポリマー性微粒子の水性分散物の量は、上記レベルの任意の間の範囲であり得る(列記された値を含む)。
上記成分に加えて、本発明のプロセスにおいて使用される任意の下塗り組成物は、種々の他の任意の成分を含み得る。所望である場合、他の樹脂材料は、得られる多層複合コーティングが物理的な性能および見かけの特性の点で有害に影響されない限り、上記ポリマー、硬化剤および水性ポリマー微粒子とともに含まれ得る。同様に、下塗り組成物は、添加剤(例えば、レオロジー制御剤、ヒンダードアミン光安定化剤および/または紫外線吸収剤、触媒、充填材、界面活性剤など)を含み得る。
一旦、下塗り組成物は、電着コーティング層の少なくとも一部上に直接塗布されて、その電着コーティング層上に下塗り層を形成すると、下塗り層は、必要に応じて、代表的には、過剰な溶媒(例えば、水)を除くために十分であるが、下塗り層を硬化するには不十分な温度および時間で、加熱することによって脱水される。下塗り層の脱水はまた、コーティング層から溶媒をエバポレートさせるのに十分な時間の間、周囲条件下のフラッシュ期間をこの下塗り基材に与えることによって、達成され得る。適切な脱水条件は、使用される特定の下塗りおよび上塗り組成物、ならびに周囲の湿度に依存するが、一般的に、80°F〜250°F(20℃〜121℃)の温度で1〜5分の脱水時間が十分である。フラッシュ期間が、熱脱水条件の代わりにまたは熱脱水条件と組み合わせて使用される場合、下塗り層は、1〜20分の期間の間、周囲条件に曝され得る。
このプロセスは、さらに、未硬化下塗り層の少なくとも一部分上に、直接、実質的に顔料を含まない硬化可能上塗り組成物を堆積させる(ウエット−オン−ウェット塗布)ことによって、下塗り層上に上塗り層を形成する工程を包含する。本発明のプロセスのいずれかにおいて使用される実質的に顔料を含まない上塗り組成物は、水性コーティング組成物、溶媒ベースの組成物、および固体粒子形態(すなわち、粉末コーティング組成物)の組成物を含み得る。当該分野で公知の任意の透明またはクリアコーティング組成物が、この目的のために適する。適切な非限定的な例としては、米国特許第4,650,718号;同第5,814,410号;同第5,891,981号;およびWO98/14379に記載されるクリアコーティング組成物が挙げられる。特定の非限定的な例としては、TKU−1050AR、ODCT8000、ならびに商品名DIAMOND COAT(登録商標)およびNCT(登録商標)で入手可能なもの(全て、PPG Industies,Inc.から市販される)が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、「実質的に顔料を含まない」コーティング組成物は、透明なコーティング(例えば、クリアコート)を形成するコーティング組成物を意味する。このような組成物は、得られるコーティングの光学的特性が、重篤に損なわれないために十分に実質的に顔料または粒子を含まない。本明細書中で使用される場合、「透明」とは、硬化されたコーティングが、BYK/Haze Gloss機器を使用して測定した場合、50未満のBYK Hase指数を有することを意味する。
一旦、上塗り層(すなわち、クリアコーティング層)が下塗り層の少なくとも一部分の上に形成されると、コーティング基材は、上塗り層、下塗り層、および必要に応じて、電着層を同時に硬化するのに十分な条件に供される。硬化操作において、溶媒を除き、種々のコーティング層のフィルム形成材料は、各々架橋される。コーティング層の硬化は、任意の公知の硬化方法(熱エネルギー、赤外線、イオン化または化学線、あるいはそれらの任意の組合せを含む)によって達成され得る。一般的に、硬化操作は、50°F〜475°F(10℃〜246℃)の範囲の温度で実施され得るが、架橋機構を活性化するために必要な場合、より低い温度またはより高い温度が使用され得る。硬化は上記の通りである。
別の実施形態において、本発明は、基材上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、基材の少なくとも一部分上に水性硬化可能第1下塗り組成物を堆積することによって基材上に第1下塗り層を形成する工程、必要に応じて、第1下塗り層を脱水する工程、水性硬化可能第2下塗り組成物を、直接第1下塗り層の少なくとも一部分上に堆積することにより、第1下塗り層上に第2下塗り層を形成する工程であって、第2下塗り組成物が、第1下塗り組成物と同じであるかまたは異なる工程、必要に応じて、第2下塗り層を脱水する工程、実質的に顔料を含まない、硬化可能上塗り組成物を第2下塗り層の少なくとも一部分上に直接堆積することによって、第2下塗り層上に上塗り層を形成する工程、ならびに上塗り層、第2下塗り層、および第1下塗り層を同時に硬化する工程を包含する。
この実施形態において、第1下塗り組成物は、介在する電着コーティング層無しで、非金属基材または金属基材の基材表面上に直接塗布され得る。すなわち、第1下塗り組成物は、金属基材(上記される)の「ベア(bare)金属」表面に、あるいは予備処理または溶接可能プライマーコーティング組成物が先に塗布された金属基材(電着コーティング組成物の塗布に関して上記される)に直接塗布され得る。この実施形態の目的のために、第1下塗り組成物を「基材の少なくとも一部上に」塗布することは、先の塗布、および第1下塗り組成物の塗布前の基材の少なくとも一部分上の電着可能コーティング組成物の任意の硬化を妨げないこともまた理解されるべきである。
上記のように、基材はまた、非金属基材(例えば、「エラストマー」基材)を含み得る。適切なエラストマー基材としては、当該分野で周知の任意の熱可塑性または熱硬化性合成材料が挙げられ得る。適切な可撓性エラストマー基材材料の非限定的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリオレフィン(「TPO」)、反応射出成型ポリウレタン(「RIM」)および熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)が挙げられる。
本発明とともに基材として有用な熱硬化性材料の非限定的な例としては、ポリエステル、エポキシド、フェノール樹脂、ポリウレタン(例えば、「RIM」熱硬化性材料)、および上記のいずれかの混合物が挙げられる。適切な熱可塑性材料の非限定的な例としては、熱可塑性ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、プロプロピレン)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(「ABS」)コポリマー、エチレンプロピレンジエンターポリマー(「EPDM」)ゴム、上記の任意のコポリマー、および混合物が挙げられる。
所望である場合、上記エラストマー基材が、任意の多数のコーティング組成物(以下に記載される本発明のコーティング組成物を含む)が塗布され得る基材の表面上に存在する付着促進剤を有し得る。有機コーティングのこのようなポリマー基材への付着を促進するために、基材は、付着プロモーター層またはタイコート(例えば、0.25ミル(6.35ミクロン)の厚みの薄層)を使用して予め処理され得るか、または火炎またはコロナ前処理によって予め処理され得る。
ポリマー基材上で使用するための適切な付着プロモーターとしては、塩素化ポリオレフィン付着プロモーター(例えば、米国特許第4,997,882号;同第5,319,032号;および同第5,397,602号(本明細書中において参考として援用される)に記載されるもの)が挙げられる。他の有用な付着促進コーティングは、米国特許第6,001,469号(末端ヒドロキシル基を有する飽和ポリヒドロキシ化ポリジエンポリマーを含むコーティング組成物)、同第5,863,646号(飽和ポリヒドロキシ化ポリジエンポリマーおよび塩素化ポリオレフィンのブレンドを有するコーティング組成物)ならびに同第5,135,984号(塩素化ポリオレフィン、無水マレイン酸、アクリルもしくはメタクリル改変水素化ポリブタジエン(一分子当たり少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基を含む)、および有機過酸化物を反応させることによって得られた付着促進材料を有するコーティング組成物)(これらは、本明細書中において参考として援用される)に開示される。
基材が、自動車両(自動車、トラックおよびトラクターを含むが、これらに限定しない)を製造するための成分として使用される場合、これらは、任意の形状を有し得、上記の金属基材および/または非金属基材から選択され得る。自動車車体成分の代表的な形状としては、自動車両のための車体側面成型物、フェンダ、バンパー、フードおよびトリムが挙げられ得る。
本発明のプロセスの任意において、第2下塗り組成物は、第1下塗り組成物と同じであっても異なっていても良い。第2下塗り組成物は、(i)第2樹脂結合剤組成物および(ii)第2樹脂結合剤中に分散された第2顔料組成物を含む。第2樹脂結合剤組成物は、第1樹脂結合剤組成物と同じであっても異なっていても良い;同様に、第2顔料組成物は、第1顔料組成物と同じであっても異なっていても良い。
第2樹脂結合剤組成物は、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリエポキシドポリマー、シリコン含有ポリマー、それらの混合物、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されたフィルム形成ポリマー(例えば、第1樹脂結合剤組成物を参照して詳細に上記されるもの)を含み得る。本発明の1つの実施形態において、第1樹脂結合剤組成物および第2樹脂結合剤組成物は、同じかまたは異なるポリウレタンポリマー(例えば、上記ポリウレタンポリマーのいずれか)を含む。代替の実施形態において、第1樹脂結合剤組成物および第2樹脂結合剤組成物は、同じかまたは異なるポリウレタンポリマーを含み、ここで、第1下塗り組成物中のポリウレタンポリマーの濃度は、第2下塗り組成物中に存在するポリウレタンポリマーの濃度以下であり、ここで、濃度は、下塗り組成物中に存在する全樹脂固形分に基づく。
先に記載されたように、第1下塗り組成物および第2下塗り組成物の両方が使用される本発明の任意のプロセスにおいて、第2顔料組成物は、第1顔料組成物と同じであっても異なっていても良い。第2顔料組成物は、第1顔料組成物に関して詳細に上記された充填剤顔料、色増強顔料、および/または効果増強顔料のいずれかを含み得る。1つの実施形態において、第2下塗り組成物は、色増強顔料、および/または効果増強顔料を含む。
さらなる実施形態において、本発明は、先に記載された金属基材のいずれかの上に多層複合コーティングを形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、硬化可能電着可能コーティング組成物(例えば、上記電着可能コーティング組成物のいずれか)を基材の少なくとも一部上に電着させることによって、基材上に電着コーティング層を形成する工程;必要に応じて、電着コーティング層を硬化するのに十分な温度および時間でコーティング基材を加熱する工程;水性硬化可能第1下塗り組成物(例えば、上記下塗り組成物のいずれか)を、直接電着コーティング層の少なくとも一部分上に堆積することにより、電着コーティング層上に第1下塗り層を形成する工程;必要に応じて、第1下塗り層を脱水する工程;水性硬化可能第2下塗り組成物(例えば、上記下塗り組成物のいずれか)を、直接電着コーティング層の少なくとも一部分上に堆積することにより、第1下塗り組成物上に第2下塗り層を形成する工程であって、この第2下塗り組成物が、第1下塗り組成物と同じであるかまたは異なる、工程;必要に応じて、第2下塗り層を脱水する工程;実質的に顔料を含まない、硬化可能上塗り組成物(例えば、上記されるクリアコーティング組成物のいずれか)を該第2下塗り層の少なくとも一部分上に直接堆積することによって、第2下塗り層上に上塗り層を形成する工程;ならびに上塗り層、第2下塗り層、第1下塗り層および必要に応じて電着コーティング層を同時に硬化する工程を包含する。
第1下塗り組成物および第2下塗り組成物、あるいは下塗り組成物が、金属基材上に1つのみの下塗り層を形成するかまたは電着コーティング層上に直接形成されるように使用される例において、0.1〜4.0:1、通常、0.1〜3.0:1、および代表的には、0.1〜2.0:1の範囲の、固体含有量に基づく顔料:結合剤の比を有する。下塗り組成物の顔料:結合剤の比は、組成、顔料型および/または所望の色に依存して、幅広く変動し得ることが理解されるべきである。
また、硬化された第1下塗り層および第2下塗り層(あるいは、適用可能な場合、1つの下塗り層)のフィルムの厚みは、1〜50マイクロメートル、通常、5〜30マイクロメートル、しばしば、10〜25マイクロメートルの範囲であり得る。同様に、硬化された下塗り層のフィルムの厚みは、下塗り組成物および下塗りの色または染色に依存して、幅広く変動し得ることが理解されるべきである。
第1下塗り組成物および第2下塗り組成物が使用される本発明のプロセスのいずれかにおいて、第1下塗り層および第2下塗り層は、色が調和し得る。すなわち、樹脂結合剤および/または顔料組成における組成の違い(このような組成の違いが存在する場合)にも関わらず、硬化された場合、第1下塗り層および第2下塗り組成物は、色において十分に類似し、硬化された第2下塗り層が、多層複合コーティングの見かけの特性に有害に影響すること無く、硬化された第1下塗り層の厚みより有意に小さいフィルムの厚みを有し得る。
本発明の別の実施形態において、硬化された第1下塗り層(あるいは、適用可能な場合、1つの下塗り層)は、15マイクロメートルのフィルムの厚みにおいて400ナノメートルで測定した場合、5%以下の光透過性を有する。本発明の目的のために、光透過性%は、150ミリメートルLap Sphere積分球を備えるPerkin−Elmer Lambda 9走査分光光度計を使用して、14〜16マイクロメートルのフィルムの厚みの範囲のフリー硬化下塗りフィルムの光透過性を測定することによって、決定される。データは、ASTM E903(Standard Test Method for Solar Absorbance,Reflectance,and Transmittance of Materials Using integrating Spheres)に従って、Perkin−Elmer UV WinLabソフトウェアを使用して収集する。
上記第1下塗り組成物のいずれかを基材上にあるいは電着コーティング層の少なくとも一部分上に直接塗布して、その上に第1下塗り層を形成する工程;必要に応じて、第1下塗り層を脱水する工程;および上記第2下塗り組成物のいずれか(第1下塗り組成物と異なる)を第1下塗り組成物上に直接塗布して、その上に第2下塗り層を形成する工程の連続工程を包含する本発明のプロセスのいずれかにおいて、第1下塗り組成物は、さらに、第2樹脂結合剤中に分散された第2顔料組成物を含む組成物をさらに含み得る。第2樹脂結合剤中に分散される第2顔料組成物を含む組成物は、基材上あるいは電着コーティング層上に直接、第1下塗り組成物を堆積する直前に、第1下塗り組成物と混合され得る。この実施形態において、「第2樹脂結合剤中に分散される第2顔料組成物を含む組成物」が、完全に処方された第2下塗り組成物あるいはポリマーを含む第2樹脂結合剤中に分散された第2顔料組成物を含む顔料ペースト組成物(例えば、粉砕ビヒクル(grind vehicle)のいずれかを含み得ることが理解される。この実施形態において、第1下塗り層が、より少ない割合の第2下塗り組成物と混合されている、より多くの割合の第1下塗り組成物を含む第1下塗り組成物から形成され得、その逆も同様であることが理解される。
さらに、本発明の1つの実施形態において、第1下塗り組成物および/または第2下塗り組成物は、下塗り組成物の選択された成分を動的に混合することによって形成され得る。さらに、カットイン(cut−in)ステーションにおいて塗布される下塗り組成物は、第1下塗り組成物および第2下塗り組成物を動的に混合することによって形成され得る。適切な動的混合装置および方法は、米国特許第6,291,018号および同第6,296,706号に記載され、これらは、本明細書中においてその全体が参考として援用される。
本発明のなおさらなる実施形態において、先に記載された任意の下塗り組成物は、基材の少なくとも一部にわたって、または代替的に、先に形成された電着コーティング層(上記のような)の少なくとも一部に直接塗布されて、単一の下塗り層をその上に形成し得る;必要に応じて、この下塗り層は脱水されるが、硬化されない;実質的に顔料を含まない上塗り組成物(例えば、先に塗布された任意のクリアコーティング組成物)が、下塗り層の少なくとも一部の上に直接塗布されて、クリア上塗り層をその上に形成する;そしてコーティングされた基材が、上塗り層、下塗り層、および必要に応じて、電着層を硬化させるために十分な条件に供される。この実施形態において、上塗り組成物は、ウェットオンウェット適用で、1つの下塗り層の上に直接塗布される。
本発明のプロセスは、多層複合コーティングを提供し、このコーティングは、優れた外観および物理的特性を有し、そして特に、自動車(例えば、乗用車およびトラック)のコーティングに適切である。特定の実施形態において、本明細書中に記載される本発明の任意のプロセスによって形成される多層複合コーティングは、ASTM D 3170−01に従って決定される場合に、4〜10、代表的には6〜10の範囲のチップ抵抗評点を有する。
本発明はまた、多層複合コーティングを自動車基材上に形成するための、改善されたプロセスに関し、このプロセスは、以下の工程を包含する:
(1)導電性自動車基材を、コーティングラインに配置された電気コーティングステーションに通す工程;
(2)荷電した電極として働くこの基材を、この電極および逆に荷電した対電極を含む電気回路内で電気コーティングする工程であって、これらの電極は、水性電着組成物(例えば、先に記載された任意の電着コーティング組成物)内に浸漬されており、これらの電極間に電流を通して、この基材上に、電着コーティングの実質的に連続したフィルムとして、電着可能組成物の堆積を引き起こす工程を包含する、工程;
(3)工程(2)においてコーティングされた基材を、コーティングラインに配置された電着コーティング硬化ステーションに通過させて、この基材上の電着可能組成物を硬化させ、電着コーティング層をその上に形成する工程;
(4)工程(3)のコーティングされた基材を、コーティングラインに配置されたプライマー表面コーティングステーションに通す工程;
(5)プライマー表面コーティング組成物を、電着コーティング層の少なくとも一部に直接塗布して、プライマー表面コーティング層をその上に形成する工程;
(6)工程(5)のコーティングされた基材を、コーティングラインに配置されたプライマー表面硬化ステーションに通過させて、プライマー表面コーティング層を硬化させる工程;
(7)工程(6)のコーティングされた基材を、コーティングラインの下塗りステーションに通過させる工程;
(8)水性下塗り組成物を、プライマー表面コーティング層の少なくとも一部に直接塗布して、下塗り層をその上に形成する工程;
(9)必要に応じて、工程(8)のコーティングされた基材を、コーティングラインに位置するフラッシュオーブンに通過させて、ベースラインコーティング層を脱水するが、硬化はさせない工程;
(10)工程(8)、または必要に応じて工程(9)のコーティングされた基材を、コーティングラインに位置するクリアコーティングステーションに通過させる工程;
(11)実質的に顔料を含まないコーティング組成物(例えば、先に記載された任意の透明またはクリアなコーティング組成物)を、下塗り層の少なくとも一部の上に直接塗布して、クリアコーティング層をその上に形成する工程;ならびに
(12)工程(11)のコーティングされた基材を、コーティングラインに位置する上塗り硬化ステーションに通過させて、下塗り層およびクリアコーティング層を同時に硬化させる工程。改善は、工程(3)のコーティングされた基材を、コーティングラインに位置する下塗りステーションに直接通すこと、引き続いて、ウェットオンウェット塗布で、別個に、複数の水性下塗り組成物(例えば、先に記載された任意の下塗り組成物)を、電着コーティング層の少なくとも一部に直接塗布すること、必要に応じて、各連続した下塗り層を脱水して、電着コーティング層と多層下塗りとの間に介在するプライマー表面コーティング層なしで、多層下塗りをその上に形成すること、コーティングされた基材を、コーティングラインに位置するクリアコーティングステーションに通過させること、実質的に顔料を含まないコーティング組成物(例えば、先に記載された任意のクリアコーティング組成物)を、多層下塗りの少なくとも一部の上に直接塗布して、クリアコーティング層をその上に形成すること、ならびにコーティングされた基材を、硬化ラインに位置する上塗り硬化ステーションに通過させて、多層下塗りおよびクリアコーティング層を同時に硬化させることである。
本発明はまた、少なくとも1つの電着浴を備える電気コーティングゾーンを備える、コーティングラインに関する。下塗りは、電気コーティングゾーンの下流におよび隣接して位置するゾーンであり、この下塗りゾーンは、カットイン(cut−in)ステーション、第一の下塗りステーション、および第二の下塗りステーションを備える。上塗りゾーンは、上記下塗りゾーンの下流におよび隣接して位置する。
本発明の説明は、以下の実施例であるが、これらは、本発明をその細部まで限定するとはみなされない。以下の実施例において、ならびに本明細書全体にわたって、全ての部および百分率は、他に示されない限り、重量による。
以下の実施例は、本発明のプロセスを説明する。実施例Aは、中間の灰色の第一下塗り組成物の調製を記載する。比較プロセス実施例1は、従来の銀色のメタリック下塗り組成物の、硬化した電着プライマーへの(2コートでの)塗布、引き続いて、クリアコーティング組成物の塗布を記載する。プロセス実施例2は、実施例Aの第一の下塗り組成物が、硬化した電気コートプライマーに塗布され、引き続いて、従来の銀色のメタリック下塗りの塗布、および引き続く、クリアコーティング組成物の塗布がなされる、本発明のプロセスを記載する。実施例B〜Eは、実施例Aと類似であるが様々なレベルの水保有ポリウレタン樹脂を有する、下塗り組成物の調製を記載する。
(実施例A)
この実施例は、本発明のプロセスにおいて、第一の下塗り層を形成するために使用される、第一の下塗り組成物として適切な、中間の灰色の下塗り組成物の調製を記載する。第一の下塗り組成物を、以下の成分を穏やかな攪拌下で混合することによって、調製した。
Figure 0004775929
CYTEC Industries,Inc.から入手可能なメトキシメチルイミノ官能性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂。
EPON 880(Shell Chemicalsから入手可能な、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル)を、83:17の比でリン酸と反応させることによって調製された、リン酸化エポキシ。
Ciba Specialty Chemicals,Inc.から入手可能な紫外光安定化剤。
Shell Oil and Chemical Co.から入手可能。
70.6%のポリエステル−アクリル(66.7%酢酸ブチル/33.3%ヒドロキシプロピルメタクリレート中52.8%の1,6−ヘキサンジオール、27.2%のイソフタル酸、10%のアジピン酸、10%の無水マレイン酸)、2.4%のエチレングリコールジメタクリレート、20%のスチレン、4.7%のヒドロキシプロピルメタクリレート、2.3%のアクリル酸から調製される、45重量%の固形物含有量を有するラテックス。
53.8%のPOLYMEG 2000(BASFから入手可能)、23.9%のイソホロンジイソシアネート、6.4%のジメチロールプロピオン酸、3.2%のアジピン酸ジヒドラジド、12.7%のポリエステル(54.2%のEMPOL 1008(COGNIS−EMERY Groupから入手可能))、29.8%の1,6−ヘキサンジオール、16.1%のイソフタル酸から調製される、39重量%の固形物含有量を有するポリウレタン樹脂。
37.0%の水保有アクリル樹脂(27.0%の固形物で作製された、8.5%のヒドロキシエチルアクリレート、18.0%のメタクリル酸ブチル、30.0%のスチレン、35.0%のアクリル酸ブチル、8.5%のアクリル酸)、38.4%のアクリル−ポリエステル−ウレタンラテックス[43.5%の固形物で作製された、3.0%のエチレングリコールジメタクリレート、11.0%のメタクリル酸メチル、24%のアクリル酸ブチル、2%のアクリル酸および60%のポリエステル−アクリル−ウレタン(ネオペンチルグリコール、アジピン酸、ヒドロキシエチルアクリレート−アクリル酸ブチル、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)]、ならびに24.6%のポリプロピレングリコール425の樹脂ブレンド中に分散した、ルチル型二酸化チタン(E.I.DuPont de Nemours and CompanyからR900−39として入手可能)。この分散物は、69.5重量%の固形物含有量、および6.71の、結合剤に対する顔料の比を有する。
100%水性アクリル樹脂に分散したMONARCH 1300カーボンブラック顔料(Cabotから入手可能)。この分散物は、24.1重量%の固形物含有量、および0.35の、結合剤に対する顔料の比を有する。
Akzo Nobelから入手可能な、水保有アクリルレオロジー制御剤。この材料は、24%の樹脂固形物含有量で供給される。
10 脱イオン水中50%のジメチルエタノールアミン。
実施例Aの第一の下塗り組成物を、上記のように調製して、40.9%の重量固形物含有量;0.91の顔料対結合剤の比;8.68のpH;および室温で35.6秒の#4 DIN Cup粘度を有する組成物を提供した。
(比較プロセス1)
従来の銀色のメタリック水性下塗り(PPGからNHWB−300146として入手可能)を、2コートで、鋼鉄の基材(PPG ED 5000電気コートをコーティングした、冷時ロールした鋼鉄B952 P60 D1(ACTから入手可能))にスプレー塗布した。得られた下塗りは、0.59ミル(15マイクロメートル)のフィルム厚さを有した。塗布に引き続いて、この銀色下塗りを、176°F(80℃)で10分間脱水した。次いで、クリアコーティング組成物(PPG Indusutries,Inc.からTKU−1050ARとして入手可能)を、脱水した銀色下塗りにスプレー塗布した。得られたクリアコートは、2.06ミル(52マイクロメートル)のフィルム厚さを有した。クリアコーティング組成物の塗布後、コーティングされた基材に、室温での10分間のフラッシュ時間を与え、次いで、285°F(140℃)の温度に30分間加熱した。
(プロセス2)
本発明のプロセスを説明するために、実施例Aの中間の灰色の下塗り組成物を、1コートで、コーティングされた鋼鉄基材(PPG ED 5000電気コートをコーティングした、冷時ロールした鋼鉄B952 P60 D1(ACTから入手可能))にスプレー塗布し、0.61ミル(15マイクロメートルのフィルム厚を提供した。次いで、このコーティングされた基材に、室温で90秒間のフラッシュ期間を与えた。次いで、従来の銀色のメタリック水性下塗り(PPGからNHWB−300146として入手可能)を、1コートでスプレー塗布した。得られた銀色の下塗りは、0.35ミル(9マイクロメートル)のフィルム厚を有した。塗布に引き続いて、この銀色の下塗りを、176°F(80℃)で10分間脱水した。次いで、クリアコーティング組成物(PPG Indusutries,Inc.からTKU−1050AR)を、脱水された銀色下塗りにスプレー塗布した。得られたクリアコートは、1.97ミル(50マイクロメートル)のフィルム厚を有した。クリアコーティング組成物の塗布後、コーティングされた基材に、室温で10分間のフラッシュ時間を与え、次いで、285°F(140℃)の温度に30分間加熱した。
上記プロセスによって調製した多層複合コーティングを、以下のように試験した。得られた多層複合コーティングの20°の推定光沢を、GARDCOによって製造されるNOVO GLOSS統計20°光沢計を使用して測定した。光沢の結果は、0〜100の範囲の値で報告され、より高い値が、より高い光沢を示す。
Dorigon Distinctness of Image(「DOI」)を、Hunter Labによって製造されるDORIGON IIメーターを使用して測定した。より高い値は、より良好なDOIを示す。コーティング表面の長波および短波の値(すなわち、表面のトポグラフィー、平滑さ)を、測定した。以下に報告されるBYK波走査値を、BYK−Gardner WaveScanメーターを使用して測定した。より低い値が、より平滑な表面を示す。
フィルム高度を、Fischerによって製造されるFisherscope H100微小硬度試験システムを使用して、測定した。これらの数を、DIN 50350標準方法を使用して作製する。硬度値は、ニュートン/mmの単位で報告される。より高い値が、より硬いフィルムを示す。アルミニウムフレーク配向、および従って、視角の変化に伴う反射率の変化を、Alescoによって製造されるALCOPE LMR−200 Laser Multiple Reflectometerを使用して測定した。より高い「FF」報告値は、より良好なアルミニウムフレーク配向を示す。
これらの結果を、以下の表1に示す。
Figure 0004775929
上記表1に提供されるデータは本発明の多層複合コーティングを形成するためのプロセスが、少なくとも等価であるかまたは改善された、アルミニウムフレーク配向を有する多層複合コーティングを提供することを示す。
比較プロセス1および本発明のプロセスであるプロセス2によって形成された、2つの代表的な多層複合コーティングの光透過性を、以下のように比較した。自由なフィルム(鋼鉄/電気コート基材なし)を、それぞれのプロセスを使用して調製した。コーティングシステム(以下に記載されるような)を、TEDLAR基材(Electrical Insulation Suppliers of Atlanta,Georgiaから入手可能)に適用した。次いで、自由なフィルムを、TEDLAR基材から剥離し、そして光透過率の百分率を、この自由な塗料を通して測定した。透過率の百分率のデータ測定を、ASTM E 903−82「Standard Test Method for Solar Absorbance,Reflectance,and Transmittance of Materials Using Integrating Spheres」に従って、150mm Labsphere積分球(intefrating sphere)を備えるPerkin Elmer Lambda 9分光光度計を使用して実施した。Perkin−Elmer UVWinLabソフトウェアを、データ収集のために使用した。
比較プロセス1を使用して調製した自由なフィルムは、0.59ミル(15マイクロメートル)のNHWB 300146銀色メタリック下塗り;および2.0ミル(51マイクロメートル)のTKU 1050ARクリアコートを備えた。プロセス2を使用して調製した自由なフィルムは、0.61ミル(15マイクロメートル)の実施例Aの下塗り組成物;0.35ミル(9マイクロメートル)のNHWB 300146銀色メタリック下塗り;および1.98ミル(50マイクロメートル)のTKU 1050ARクリアコートを備えた。下塗り組成物およびクリアコーティング組成物を、一般に上記のように、塗布し、そして加工した。それぞれの多層コーティング系についての、種々の波長で測定された光透過率の百分率は、以下の表2に見出され得る。
Figure 0004775929
上記表2に提示されるデータは、本発明のプロセスを使用して調製された多層複合コーティングが、評価された全ての波長において、0%の光透過率を示し、一方で、比較プロセスによって調製された複合コーティングが、400〜500ナノメートルの波長において、光透過率を示すことを示す。低い光透過率の百分率は、改善された外側耐久性に関連し得ることが、当業者によって理解される。なぜなら、より少ない光が、多層コーティング系の下層(例えば、耐久性の低い電気コーティング層)に達し、これによって、光酸化によるなどのコーティング層分解を引き起こすからである。
(実施例B〜E)
以下の実施例B〜Eは、様々なレベルのポリウレタン樹脂を含有する、中間の灰色下塗り組成物の調製を記載する。実施例Bの組成物は、3.1重量%のポリウレタンの固形物を含有する;実施例Cの組成物は、10.6重量%のポリウレタンの固形物を含有する;実施例Dの組成物は、18.1重量%のポリウレタンの固形物を含有する;そして実施例Eの組成物は、33.1重量%のポリウレタンの固形物を含有する。それぞれの下塗り組成物を、穏やかな攪拌下で、特定された成分を攪拌することによって調製した。
Figure 0004775929
実施例Bの下塗り組成物を、39.96重量%の固形物;0.92の顔料対結合剤の比;8.69のpH;および34.6秒の#4 DINカップ粘度を有するように、調製した。
Figure 0004775929
実施例Cの下塗り組成物を、39.82重量%の固形物;0.92の顔料対結合剤の比;8.70のpH;および33.5秒の#4 DINカップ粘度を有するように、調製した。
Figure 0004775929
実施例Dの下塗り組成物を、39.38重量%の固形物;0.92の顔料対結合剤の比;8.71のpH;および32.6秒の#4 DINカップ粘度を有するように、調製した。
Figure 0004775929
実施例Eの下塗り組成物を、37.76重量%の固形物;0.92の顔料対結合剤の比;8.67のpH;および26.0秒の#4 DINカップ粘度を有するように、調製した。
以下の表2に提示されるデータは、上記実施例B〜Eの下塗り組成物から調製された多層コーティングについて測定された物理的特性を示す。プロセス2を使用して調製されたコーティングは、全て、標準的なプロセス3を使用して作製されたコーティングと等価な外観およびチップ耐性を提供する。
Figure 0004775929
a プロセス番号3は、PPG ED 5000電気コートおよびPPG Industries,Inc.から入手可能な1177225A灰色プライマー表面をコーティングされた、ACTから供給される冷時ロール鋼鉄C710 C18 DIに基材を変更したことを除いて、番号1と同じである。
チップ試験を、ERICHSEN GMBH & CO KGによって製造されるStone Hammer Blow Testing Instrument Model 508を使用して行った。500グラムの破砕した鋼鉄ショットを、2Barの圧力で、各試験パネルに2回適用した。DIN 55996−1からの目視評点スケールを使用して、パネルの評点をつけた。Kennwert評点スケールは、0.5〜5であり、より低い値は、チッピングに対するより良好な耐性を示す。
上記実施形態に対して、その広範な新規概念から逸脱することなく変化がなされ得ることが、当業者によって理解される。従って、本発明は、開示される特定の実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本発明の精神および範囲内である改変を網羅することが意図されることが、理解される。
図1は、本発明の特徴を組みこむ、コーティングシステムの模式的なブロック図(縮小ではない)である。 図2は、本発明の特徴を組みこむ、コーティングシステムの別の実施形態の下塗りゾーンの模式的なブロック図(縮小ではない)である。

Claims (29)

  1. 基材上に多層複合コーティングを形成するための方法であって、以下:
    基材の少なくとも一部分上に硬化可能電着可能コーティング組成物を電着することにより、該基材上に電着コーティング層を形成する工程;
    必要に応じて、該電着コーティング層を硬化するのに十分な温度および時間で該コーティングした基材を加熱する工程;
    ポリマー微粒子の水性分散物の一種以上を含む水性硬化可能第1下塗り組成物を、直接電着コーティング層の少なくとも一部分上に堆積することにより、該電着コーティング層上に該第1下塗り層を形成する工程;
    必要に応じて第1下塗り層を脱水する工程;
    水性硬化可能第2下塗り組成物を、直接該第1下塗り層の少なくとも一部分上に堆積することにより、該第1下塗り層上に該第2下塗り層を形成する工程であって、該第2下塗り組成物が、該第1下塗り組成物と同じであっても異なってもよい、工程;
    必要に応じて第2下塗り層を脱水する工程;
    実質的に顔料を含まない硬化可能上塗り組成物を、第2下塗り層の少なくとも一部分上に直接堆積することにより、該第2下塗り層上に上塗り層を形成する工程;および
    該上塗り層、該第2下塗り層、該第1下塗り層および必要に応じて該電着コーティング層を同時に硬化する工程、
    を包含し、ここで、該硬化された第1下塗り層、該硬化された第2下塗り層および該硬化された上塗り層を通る光透過率が、400nm〜500nmの波長において、3.06(±0.05〜0.10)%以下であり、
    ここで、電着可能コーティング組成物が水性媒体に分散した樹脂相を含む電着可能コーティング組成物を含み、該樹脂相が以下:
    (1)カソード上に電着可能な、1つ以上の非ゲル化活性水素含有カチオン性アミン塩
    の基を含む樹脂であって、該樹脂が以下の(I)または(II)の構造を持つ、ペンダントアミノ基および/または末端のアミノ基に由来するカチオン性アミン塩の基を含み:
    Figure 0004775929
    式中で、R基はHまたはC〜C18アルキル基を示し:
    、R、R、およびRは同じまたは異なり、それぞれが独立にHまたはC〜Cアルキル基であり:ならびに
    XおよびYが同じまたは異なってもいてもよく、それぞれが独立にヒドロキシル基またはアミノ基である樹脂;ならびに
    (2)1つ以上の少なくとも部分的にブロックした脂肪族ポリイソシアネート硬化剤、を含有し、そして、
    ここで、該多層複合コーティングの20°光沢値が90以上である、
    方法。
  2. 前記第1下塗り組成物が以下:
    (i)第1樹脂結合剤、および
    (ii)該第1樹脂結合剤中に分散した1つ以上の顔料を含む、第1顔料組成物
    をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の樹脂結合剤が、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリエポキシドポリマー、シリコン含有ポリマー、それらの混合物、およびそれらのコポリマーからなる群から選択したポリマーを含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1樹脂結合剤がポリウレタンポリマーを含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記第1顔料組成物が、1つ以上の発色向上および/または効果向上顔料を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記第1下塗り組成物中の顔料の結合剤に対する比が4.0未満である、請求項2に記載の方法。
  7. 前記第1下塗り組成物中の顔料:結合剤の比の範囲が0.1〜4.0:1である、請求項2に記載の方法。
  8. 前記ポリマー微粒子が架橋ポリマー微粒子である、請求項2に記載の方法。
  9. 前記第1下塗り層が1〜50μmの厚さの硬化フィルムを有する、請求項1に記載の方法。
  10. 15μmの厚さのフィルムで400nmでの測定により、硬化した場合の前記第1下塗り層が5%以下の光透過率を有する、請求項1に記載の方法。
  11. 前記第1下塗り組成物が、4.0より少ない結合剤に対する顔料の比を有する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記第2下塗り組成物が第1下塗り組成物とは異なる、請求項1に記載の方法。
  13. 前記第2下塗り組成物が以下:
    (i)第2樹脂結合剤であって前記第1樹脂結合剤と同一であるか、または異なる第2樹脂結合剤;および
    (ii)前記第2樹脂結合剤に分散された、前記第1顔料組成物と同一であるか、または異なる第2顔料組成物
    を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記第1樹脂結合剤および第2樹脂結合剤が同一であるか、または異なり、それぞれがアクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリエポキシドポリマー、シリコン含有ポリマー、それらの混合物、およびそれらのコポリマーからなる群から選択したポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記第1樹脂結合剤および第2樹脂結合剤が同一であるか、または異なるポリウレタンポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記第1樹脂結合剤が、2,000〜500,000の範囲の数平均分子量を有するポリウレタンポリマーを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記第1下塗り組成物中に存在するポリウレタンポリマーの濃度が前記第2下塗り組成物中に存在するポリウレタンポリマーの濃度より低いかまたは同じであり、その濃度が組成物中に存在する全樹脂固形分に基づいている、請求項14に記載の方法。
  18. 前記第2顔料組成物が前記第2樹脂結合剤中に分散した1つ以上の発色向上および/または効果向上顔料を含む、請求項13に記載の方法。
  19. 前記第1下塗り組成物がさらに前記第2樹脂結合剤中に分散した第2顔料組成物を含む組成物をさらに含む、請求項13に記載の方法。
  20. 前記第1下塗り層および第2下塗り層が色が調和している、請求項19に記載の方法。
  21. 前記第2下塗り層が50μm以下の硬化フィルム厚さを有する、請求項1に記載の方法。
  22. 樹脂(1)のカチオン性アミン塩の基が、電着可能コーティング組成物が電着されて硬化された場合、少なくとも2つの電子求引性基が実質的に全ての窒素原子に対してβ位に結合しているような構造(II)を有する、1つ以上のペンダントアミノ基に由来する、請求項1に記載の方法。
  23. 前記電子求引性基が、エステル基、尿素基、ウレタン基およびその組み合わせから選択される、請求項22に記載の方法。
  24. 樹脂(1)が、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、およびそれらの混合物から選択した少なくとも1つの化合物に由来するカチオン性アミン塩の基を含む、請求項22に記載の方法。
  25. 前記活性水素含有カチオン性アミン塩の基を含む樹脂(1)が、ポリエポキシドポリマー、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステルポリマー、それらの混合物、およびそれらのコポリマーのうちの少なくとも1つから選択したポリマーを含む、請求項22に記載の方法。
  26. 前記活性水素含有、カチオン性アミン塩の基を含む樹脂(1)が、ポリエポキシドポリマーおよびアクリルポリマーを含む、請求項22に記載の方法。
  27. 前記脂肪族ポリイソシアネート(2)が1,2−アルカンジオール、1,3−アルカデジオール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、カプロラクタム、ジアルキルアミン、およびそれらの混合物から選択した少なくとも1つのブロッキング剤により少なくとも部分的にブロックされている、請求項1に記載の方法。
  28. ASTM D 3170−01に従って決定した場合、多層複合コーティングが4〜10の耐チップ評点を有する、請求項1に記載の方法。
  29. 請求項1に記載の方法であって、前記第1下塗り層および前記第2下塗り層が1.65より大きなアルミニウム配向FF値を有する、方法。
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