図1は本発明にかかる部品実装装置の第1実施形態の概略構成を示す平面図である。なお、図1および後で説明する図面では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。
この部品実装装置1では、基台11上に基板搬送機構2が配置されており、基板3を所定の搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構2は、基台11上において基板3を図1の右側から左側へ搬送する一対のコンベア21、21を有している。そして、コンベア21、21は基板3を搬入し、所定の実装作業位置(同図に示す基板3の位置)で停止させ、図略の保持装置で基板3を固定し保持する。そして、ヘッドユニット6がヘッド移動機構によって基台11の所定範囲にわたりX軸方向及びY軸方向(X軸及びZ軸方向と直交する方向)に移動させられながら、部品供給部4から供給される電子部品がヘッドユニット6に搭載された実装用ヘッド8により基板3に移載される。そして、基板3に実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、基板搬送機構2は基板3を搬出する。なお、基台11上には、部品認識用カメラ7が配設されている。この部品認識用カメラ7は、照明部およびCCD(Charge Coupled Device)カメラなどから構成されており、ヘッドユニット6の各実装用ヘッド8に保持された電子部品をその下側から撮像するようになっている。
このように構成された基板搬送機構2の前方側(+Y軸方向側)および後方側(−Y軸方向側)には、上記した部品供給部4が配置されている。これらの部品供給部4は多数のテープフィーダ41を備えている。また、各テープフィーダ41には、電子部品を収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、電子部品をヘッドユニット6に供給可能となっている。すなわち、各テープには、集積回路(IC)、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ電子部品が所定間隔おきに収納、保持されている。そして、テープフィーダ41がリールからテープをヘッドユニット6側に送り出すことによって該テープ内の電子部品が間欠的に繰り出され、その結果、ヘッドユニット6の実装用ヘッド8による電子部品の吸着が可能となる。
このヘッドユニット6は、実装用ヘッド8により部品供給部4で吸着した電子部品を保持したまま基板3に搬送するとともに、ユーザより指示された搭載位置に移載するものである。続いて、このヘッドユニット6およびヘッドユニット6が備える実装用ヘッド8の構成について、図2〜図5を用いて説明する。ここで、図2はヘッドユニットの部分等角投影図であり、図3はヘッドユニットの部分側面図である。また、図4は実装用ヘッドに装着された各ノズルに空気圧を供給する機構を示す図である。さらに、図5は実装用ヘッドの部分断面図である。
ヘッドユニット6は、4本の実装用ヘッド8をX方向(水平方向)に一列に並べるとともに、これらを後方(−Y方向)から支持フレーム61で支持した概略構成を備える。具体的には、これら実装用ヘッド8は、支持フレーム61から前方(+Y方向)に延びる2つのアーム61a、61bによって支持されている。なお、4本の実装用ヘッド8は、互いに略共通の構成を有するため、以下の実装用ヘッド8の説明は、基本的に1つの実装用ヘッド8で代表して行い、その他の実装用ヘッド8については相当符号を付して説明を適宜省略する。
実装用ヘッド8は、上下軸(Z軸)方向に延びる長尺のシャフト81を備える。このシャフト81の上下軸方向(Z方向)の下部には、ノズルホルダ51が配置されている。このノズルホルダ51は、図4および図5に示すように、上下軸方向(Z方向)に延設された円柱形状を有しており、その軸芯に沿って上方から穿設された凹部511にシャフト81の下端部が挿入されるとともに、ノズルホルダ51の下方面側からネジやボルトなどの締結部材によってノズルホルダ51に固定されている。
このようにシャフト81の下端部にノズルホルダ51が固定された状態で、これらをアーム61aで支持するため、本実施形態では筒状部材52が用いられている。この筒状部材52は、アーム61aに設けられた4つの貫通孔61a1の内径と同程度の外径を有するとともに、上下軸方向(Z方向)に貫通する貫通孔521を有している。そして、図4に示すように、アーム61aの貫通孔61a1に筒状部材52が嵌入されてアーム61aに支持される。さらに、この筒状部材52の貫通孔521にノズルホルダ51が嵌入されて筒状部材52で支持される。こうして、シャフト81の下端部にノズルホルダ51がアーム61aにより支持される。
なお、本実施形態では、アーム61aは単なる支持部材として機能するのではなく、前方(+Y方向)の側面に第1空気圧供給部53(図5)と接続するための接続部CP1および第2空気圧供給部54(図5)と接続するための接続部CP2を有するとともに、内部に形成されたマニホールド(図示省略)を介して後述するノズルに空気圧を供給する機能を有している。また、こうして供給される空気圧をノズルに供給するために、ノズルホルダ51および筒状部材52に溝や孔部などが設けられてノズル83への空気圧供給機構を構成している。その構成および動作については後で詳述する。
図4に示すように、ノズルホルダ51には上記した凹部511を中心に上下軸(Z軸)の回りに一定間隔を空けて円周状に保持孔512が8個、上下軸方向(Z方向)に貫通して設けられている。そして、各保持孔512に吸着ノズル83が1本ずつ挿入されている。より具体的には、保持孔512の内周面に沿ってノズル83の側面を摺接させながら上下軸方向にノズル83はノズルホルダ51により移動自在に保持されている。また、各保持孔512には1本ずつバネなどの付勢部材82が設けられており、各付勢部材82によりノズル83は上昇方向(+Z方向)に付勢されており、次に説明する押下機構からの押下力が作用しない間、図5中の右側ノズルのように、ノズル83は上昇端位置に位置決めされる。
この押下機構は、これら8本の吸着ノズル83の上下軸方向(Z方向)の上方に設けられて、これらのうちの一つの吸着ノズル83を選択的に押し下げて部品吸着に供させるための機構である。具体的には、この押下機構は、ガイド部材84と、ガイド部材84に対して移動自在な移動部材85と、移動部材85と一体的に移動するノズル押圧部材86と、移動部材85にノズル押圧部材86を結合するリンク部材87とで実現されている。
つまり、シャフト81の上下軸方向(Z方向)の上部には、その中心軸が上下軸方向(Z方向)に平行な円筒形状を有するガイド部材84が配置されている。このガイド部材84は、その中心軸がシャフト81の中心軸と一致するように取り付けられており、さらにその周面には溝Cが形成されている。
ガイド部材84の上下軸方向(Z方向)の下方(図5)には、ガイド部材84に対して上下軸方向(Z方向)に移動自在な移動部材85が設けられている。この移動部材85は、その中心軸が上下軸方向(Z方向)に平行な円筒形状であるとともに、上下軸方向(Z方向)に貫通する円柱状の孔が中空部として形成されている。移動部材85の中空部の直径はガイド部材84の直径よりやや大きく、移動部材85は、その中空部にガイド部材84が嵌った状態で、ガイド部材84に対して上下軸方向(Z方向)に移動自在となっている。
また、移動部材85(の中空部)の内壁から内向きに突出するピン形状の2つの移動子851が、移動部材85の中心軸を中心として互いに180°だけずれた位置に設けられている。具体的には、各移動子851に対応して、移動部材85の外壁から内壁までを貫通する小径孔が形成されており、各移動子851は対応する小径孔に移動自在に嵌っている。さらに、各移動子851の両端のうち移動部材85外壁側の端は、当該移動子851を付勢する板バネに当接している。つまり、板バネの下端部は移動部材85の外壁に固定される一方、板バネの上端は自由端となっており、この自由端に移動子851が当接している。そして、この板バネによって、移動子851が内向き(ガイド部材84側)に付勢されている。
このように構成された移動部材85の移動子851はガイド部材84の溝Cに嵌りながら、板バネの付勢力によって溝Cに押圧されている。そして、この状態で、移動部材85がガイド部材84に対して上下軸方向(Z方向)に移動する。この際、移動子851が溝Cに沿って移動するように、移動部材85の移動はガイド部材84によって案内される。これにより、移動部材85は、上下軸方向(Z方向)に直線的に下降する動作の他、上下軸方向(Z方向)へ往復移動した際にはガイド部材84の案内により上下軸(Z軸)回りに回転動作を行なう。
移動部材85の上下軸方向(Z方向)の下端にはリンク部材87を介してノズル押圧部材86が固定されている。このノズル押圧部材86は、上下軸方向(Z方向)に延びる棒状の部材で、移動部材85と一体的に移動する。したがって、移動部材85と一体的に上下軸方向(Z方向)に下降する動作の他、移動部材85と一体的に上下軸(Z軸)回りに回転する動作も実行可能である。そして、このノズル押圧部材86によって、8本の吸着ノズル83の一つが選択的に上下軸方向(Z方向)に押し下げられて、部品吸着に供する。
つまり、8本の吸着ノズル83のそれぞれは、部品吸着に供しない場合は、付勢部材82の付勢力によって上下軸方向の上方(+Z方向)に引き上げられる一方、部品吸着に供する場合は、ノズル押圧部材86によって付勢力に抗して上下軸方向の下方(−Z方向)に押し下げられる。この際、ノズル押圧部材86は、上下軸(Z軸)回りに回転することで、8本の吸着ノズル83の上方で8本の吸着ノズル83それぞれに対応して上下軸(Z軸)回りに並ぶ8個のノズル上方位置(ここでは、各吸着ノズル83の上下軸方向(Z方向)真上の位置)に選択的に移動する。そして、選択された吸着ノズル83に対応するノズル上方位置からノズル押圧部材86が下降して、当該吸着ノズル83を押し下げる。こうして押し下げられた吸着ノズル83がその先端部で部品を吸着する。ちなみに、図2では、これらの図の左側から3本目の実装用ヘッド8が備える8本の吸着ノズル83の1本が押し下げられている。
以上が、実装用ヘッド8の構成である。続いて、実装用ヘッド8を駆動する2種類の駆動機構(Z軸駆動機構62、R軸駆動機構63)について説明する。上述のとおり、実装用ヘッド8では、移動部材85がノズル押圧部材86と一体的に上下軸方向(Z方向)に移動することで、吸着ノズル83の押下動作が実行される。そこで、Z軸駆動機構62は、この移動部材85を上下軸方向(Z方向)に駆動する手段として設けられたものである。このZ軸駆動機構62は、支持フレーム61と実装用ヘッド8の間に設けられるとともに、支持フレーム61から前方(+Y方向)に延びる2つのアーム61b、61cによって支持されている。
より具体的には、Z軸駆動機構62では、上下軸方向(Z方向)に延びるボールネジ軸621と、ボールネジ軸621の上下軸方向(Z方向)上方に配置されてボールネジ軸621を回転駆動するZ軸モータ622と、ボールネジ軸621に螺合する可動部材623とが設けられている。そして、Z軸モータ622がボールネジ軸621を上下軸(Z軸)回りに正逆回転させることで、可動部材623が上下軸方向(Z方向)に昇降する。この可動部材623は、移動部材85とノズル押圧部材86を結合するリンク部材87を、ボールベアリング88を介して支持している。こうして、可動部材623が、移動部材85、ノズル押圧部材86およびリンク部材87を上下軸(Z軸)回りに回転自在に支持するとともに、可動部材623が上下軸方向(Z方向)に昇降するのに伴って、移動部材85、ノズル押圧部材86、ボールベアリング88およびリンク部材87が上下軸方向(Z方向)に昇降する。このように、Z軸駆動機構62によって、移動部材85およびノズル押圧部材86を一体的に上下軸方向(Z方向)に移動させることができる。
また、上述のとおり、実装用ヘッド8では、移動部材85、リンク部材87、ノズル押圧部材86および複数の吸着ノズル83を伴ってシャフト81が上下軸(Z軸)回りに回転するように構成されている。そこで、R軸駆動機構63は、シャフト81を上下軸(Z軸)回りに回転駆動するために設けられたものである。具体的には、R軸駆動機構63は、シャフト81の上端に取り付けられたR軸モータ631を備えており、R軸モータ631の回転駆動力によってシャフト81が上下軸(Z軸)回りに正逆回転可能となっている。
また、ヘッドユニット6では、4本の実装用ヘッド8が水平方向(X方向)に一列に並ぶとともに、これら実装用ヘッド8それぞれに対して、Z軸駆動機構62およびR軸駆動機構63が配置されている。この際、4個のZ軸駆動機構62も水平方向(X方向)に一列に並んで、かつ4個のR軸駆動機構63も水平方向(X方向)に一列に並ぶ。しかも、4個のZ軸駆動機構62の列と4個のR軸駆動機構63の列とは上下軸方向(Z方向)から見て互いに並列に配置されている。このような構成では、部品実装装置1の各構成部材(実装用ヘッド8、Z軸駆動機構62、R軸駆動機構63)をコンパクトに配置することができ、部品実装装置1を小型化できる。特に、4個のZ軸駆動機構62の列と4個のR軸駆動機構63とを並列に配置するレイアウトとしたため(Z軸駆動機構62とR軸駆動機構63を一つずつ隣り合わせて一列に並べた直列配置と比べて)、水平方向(X方向)に隣り合う実装用ヘッド8の距離、延いては、各実装用ヘッド8が備えるノズル群(8本の吸着ノズル83からなる群)の間の距離を狭めることができる。
次に、各ノズル83に空気圧を供給するための空気圧供給機構の構成および動作について図4ないし図6を参照しつつ説明する。図6はノズルに設けられる流通孔と保持部に設けられる連通孔との接続関係を模式的に示す図である。各ノズル83は図5に示すように上下軸方向(Z方向)に延設されており、ノズル内部にはノズル83の軸芯に沿って空気圧導入通路831が設けられ、その下方端がノズル先端部まで延設されている。また、図6に示すように、ノズル83の側面から水平方向に2つの流通孔FH1、FH2が空気圧導入通路831に延設されている。なお、この第1実施形態では、流通孔FH1、FH2は空気圧導入通路831の上端部と繋がっており、上下軸方向において流通孔FH1が流通孔FH2よりも下方に位置するように上下一列に配設されている。
このように構成されたノズル83は保持孔512の内周面に沿ってノズル側面を摺接しながら上下軸方向(Z方向)に昇降移動させられる。また、各ノズル83を昇降させるのに伴い、後述するように負圧または正圧を流通孔FH1、FH2を介して空気圧導入通路831に供給するために、ノズルホルダ51の側面には2種類の連通孔CH1、CH2が各保持孔512にそれぞれ1組ずつ連通されており、流通孔FH1、FH2と同様に、保持孔512ごとに上下軸方向(Z方向)において連通孔CH1が連通孔CH2よりも下方に位置するように上下一列に配設されている。このように第1実施形態では、ノズル83に2つの流通孔FH1、FH2が設けられるとともに、ノズルホルダ51に2つの連通孔CH1、CH2が設けられているが、それらの配設位置はノズル83の昇降移動に関連して次の関係を満足するように設定されている。
ここでは、1つのノズル83に着目して上記関係を説明する。ノズル83が上昇端まで上昇移動させられると、図6(a)に示すように、上側流通孔FH2が上側連通孔CH2と完全に対向して上側連通孔CH2が上側流通孔FH2を介して空気圧導入通路831と繋がり空気圧を供給可能となる。一方、下側流通孔FH1は保持孔512の内周面で塞がれるとともに、下側連通孔CH1がノズル83の側面で塞がれ、下側連通孔CH1を用いた空気圧の供給は行われない。なお、このときのノズルホルダ51に対するノズル83の位置を「上昇端位置」と称するが、これは本発明の「第2の位置」に相当する。
また、ノズル83が上昇端位置から下降移動すると、ノズル下降に伴って上側連通孔CH2に対する上側流通孔FH2の対向範囲が徐々に狭まるが、同図(b)に示すように、下降途中で上側連通孔CH2に対して上側流通孔FH2が部分的に対向しながら下側連通孔CH1に対して下側流通孔FH1が部分的に対向する。このため、この位置では、両連通孔CH1,CH2を介して空気圧の供給が可能となっている。そして、次に説明するようにノズル83がさらに下降すると、空気圧の供給経路、つまりエアー回路がさらに切り替えられる。このように同図(b)に示す位置は、エアー回路の切替位置として機能しており、本明細書では、このときのノズルホルダ51に対するノズル83の位置を「回路切替位置」と称するが、これは本発明の「第3の位置」に相当する。
さらに、ノズル83が回路切替位置から下降移動して部品供給部4からの部品の吸着や基板3への部品の載置を行う高さ位置(上下軸方向における位置)まで移動すると、同図(c)および(d)に示すように、両流通孔FH1、FH2とも下側連通孔CH1と完全に対向し、下側連通孔CH1が流通孔FH1、FH2を介して空気圧導入通路831と繋がり空気圧を供給可能となる。一方、上側連通孔CH2はノズル83の側面で塞がれ、上側連通孔CH2を用いた空気圧の供給は行われない。なお、同図(c)に示すように部品吸着を行うときのノズルホルダ51に対するノズル83の位置を「部品吸着位置」と称する一方、同図(d)に示すように部品搭載を行うときのノズルホルダ51に対するノズル83の位置を「部品搭載位置」と称するが、これらが本発明の「第1の位置」に相当する。また、部品吸着位置や部品搭載位置は部品サイズなどに応じて上下軸方向(Z方向)に多少異なることがあるため、本実施形態では、下側連通孔CH1については上下軸方向に延設された長孔形状としている。さらに、その上下軸方向の長さとしては、部品実装装置1で実装可能な最大部品の寸法などに基づき設定することができる。また、上記したように部品吸着位置や部品搭載位置で下側連通孔CH1に対して流通孔FH1、FH2ともに完全に対向させるために、上下軸方向(Z方向)における流通孔FH1、FH2の間隔よりも長い長孔形状とするのが望ましい。
ここでは、1本のノズル83が上昇端から部品吸着位置や部品搭載位置に下降する場合を例示して説明したが、部品吸着位置や部品搭載位置から上昇端に上昇する場合にも、ノズルホルダ51に対するノズル83の位置に応じて連通孔CH1、CH2と流通孔FH1、FH2との接続関係は下降時と逆の順序となる。
また第1実施形態では、1つのノズルホルダ51に対して8本のノズル83がそれぞれ1本ずつ交互に昇降移動するため、ノズルホルダ51には8個の連通孔CH1と8個の連通孔CH2とが設けられている。そこで、各連通孔CH1、CH2を介して空気圧をノズル側に供給可能とするため、図4に示すように、ノズルホルダ51の外周面に2本の円環状の溝LT1、LT2が設けられている。すなわち、溝LT1が8個の下側連通孔CH1を連結するようにノズルホルダ51の外周面に設けられるとともに、溝LT1の上方側で溝LT2が8個の上側連通孔CH2を連結するようにノズルホルダ51の外周面に設けられている。そして、ノズルホルダ51が筒状部材52の貫通孔521に嵌入されることで、貫通孔521の内周面と下側溝LT1とで挟まれた円環状空間が形成され、この円環状空間を介して各下側連通孔CH1に対して空気圧を供給可能となる。この点に関しては、上側溝LT2についても全く同様である。つまり、貫通孔521の内周面と上側溝LT2とで形成される円環状空間を介して各上側連通孔CH2に対して空気圧を供給可能となる。
筒状部材52には、2つの空気圧供給孔SH1、SH2が設けられている。これらの空気圧供給孔SH1、SH2は、貫通孔521にノズルホルダ51が嵌入されたときにそれぞれ円環状溝LT1、LT2と対向し、しかもアーム61aの貫通孔61a1に筒状部材52が嵌入されたときにそれぞれ接続部CP1、CP2と接続されるように、配設されている。
これら2つの接続部のうち接続部CP1には、図5に示すように、負圧(P1-)を発生する負圧源531、正圧(P1+)を発生する正圧源532および切替バルブ533を備えた空気圧供給部53が接続されている。この空気圧供給部53では、負圧源531および正圧源532が切替バルブ533に接続されており、装置全体を制御する制御ユニット(図示省略)からの切替指令に応じて切替バルブ533は負圧(P1-)または正圧(P1+)を選択的にノズル側に供給可能となっている。したがって、次に説明するように部品搭載を行う際には正圧を供給するように切替バルブ533は切り替わる一方、それ以外では負圧を供給するように切替バルブ533は切り替わる(なお、図5では、負圧供給状態を図示している)。一方、接続部CP2には、負圧(P2-)を発生する負圧源541を備えた空気圧供給部54が接続されており、常時、負圧(P2-)が空気圧供給孔SH2を介して上側連通孔CH2に供給される。
次に、上記のように構成された装置1における空気圧切替動作を部品実装動作(主としてノズル83の昇降動作)に関連付けて図6を参照しつつ説明する。図1に示す部品実装装置1は、サーバ−PCなどの外部制御装置(図示省略)から与えられる生産プログラムを制御ユニットの記憶部に記憶しており、制御ユニットは記憶部から生産プログラムを読み出し、当該生産プログラムに基づき装置各部を駆動制御して以下のようにノズル83を昇降移動させるとともに、その昇降移動に応じて空気圧の供給経路、つまりエアー回路の切替動作を行う。なお、ここでは、ノズル83の昇降移動に関連するエアー回路の切替動作の理解を容易なものとするため、実装用ヘッド8に装着された8本の吸着ノズル83のうちの選択された吸着ノズル83による動作に絞って説明する。
部品供給部4の部品吸着位置に繰り出された部品の直上位置に実装用ヘッド8の吸着ノズル83が位置するように、ヘッドユニット6が部品供給部4の上方に移動させられる。なお、この時点では全吸着ノズル83は図6(a)に示すように上昇端位置に移動させられており、連通孔CH2が流通孔FH2と連通されて空気圧供給部54から所定の負圧(P2-)が空気圧導入通路831に供給されている。なお、空気圧供給部53の切替バルブ533は負圧供給状態となっており、空気圧供給部54よりも大きな負圧(P1-)、つまり|P1-|>|P2-|を満足するように連通孔CH1への負圧供給が実行されるが、連通孔CH1がノズル83の側面で塞がれているため、空気圧供給部53からの空気圧導入通路831への負圧供給は行われない。
そして、部品の吸着保持のために吸着ノズル83の下降を開始し、回路切替位置まで下降すると、連通孔CH2と流通孔FH2との連通が維持されたまま、連通孔CH1が流通孔FH1と流通し、空気圧供給部53および空気圧供給部54の2箇所から負圧が空気圧導入通路831に供給される(図6(b))。ただし、吸着ノズル83が回路切替位置から下降させられると、ノズル下降とともに流通孔FH2が下方に移動して連通孔CH2はノズル側面で塞がれて空気圧供給部54による空気圧導入通路831への負圧供給が停止される。そのため、空気圧供給部53からの負圧のみが流通孔FH1を介して空気圧導入通路831に供給される。
また、吸着ノズル83がさらに下降して部品吸着位置に移動させられると、図6(c)に示すように、連通孔CH1に対して流通孔FH1だけでなく、流通孔FH2も対向して連通される。その結果、各流通孔FH1、FH2の断面積の合計(有効断面積)が大きくなり、部品吸着時の負圧が一気にノズル83の空気圧導入通路831に供給され、ノズル先端部での部品吸着がより確実に行われる。
上記のようにして部品吸着が完了すると、吸着ノズル83は元の上昇端位置まで上昇させられる。この上昇移動中では、下降移動中におけるエアー回路切替と逆の切替動作が実行される。したがって、上昇移動中においても、空気圧供給部53および/または空気圧供給部54により負圧が空気圧導入通路831に供給され、これによりノズル先端で部品を吸着保持した状態のまま吸着ノズル83は上昇端まで移動する。そして、上昇端位置では空気圧供給部54による負圧供給により部品を吸着保持した状態が維持され、他の吸着ノズル83による部品吸着が完了するまで上昇端位置で待機している。
次に、各吸着ノズル83による部品吸着が完了すると、ヘッドユニット6が部品供給部4の上方から基板3の部品搭載位置の上方に移動させられる。このとき、ヘッドユニット6は部品認識用カメラ7の上方を通過し、部品認識用カメラ7により各吸着ノズル83に保持された部品がその下側から撮像され、従来より周知の方法で部品認識が行われる。
部品搭載位置へのヘッドユニット6の位置決めが完了すると、部品の搭載のために吸着ノズル83の下降を開始する。このように基板3への部品搭載のために下降する場合も、部品吸着のための下降動作時と同様に、吸着ノズル83の下降動作に伴ってエアー回路が切り替えられるが、その下降動作中においては空気圧供給部53および/または空気圧供給部54により負圧が空気圧導入通路831に供給されるため、ノズル先端で部品を吸着保持した状態のまま吸着ノズル83は部品搭載位置まで下降する。したがって、この下降移動中に部品が吸着ノズル83から落下するのを確実に防止することができる。
こうして吸着ノズル83が部品搭載位置に達すると、空気圧供給部53は制御ユニットからの動作指令にしたがって切替バルブ533を正圧供給サイドに切り替え、正圧を連通孔CH1、流通孔FH1、FH2を介して空気圧導入通路831に供給してノズル先端からエアーブローする。これによってノズル83に吸着保持された部品をノズル先端から容易に離脱させることができ、所望の部品搭載位置に部品を搭載することができる。そして、部品搭載完了後は、吸着ノズル83は上昇移動させられ、回路切替位置を経由して上昇端位置に移動する。この上昇移動を開始する直前または回路切替位置に達する前までに、制御ユニットからの動作指令にしたがって切替バルブ533は負圧供給サイドに戻され、空気圧導入通路831に負圧が供給される。なお、この実施形態では、部品搭載後に空気圧導入通路831を負圧に戻しているが、空気圧導入通路831を大気圧解放するように構成してもよい。
なお、これらの動作により部品搭載が完了すると、次の部品を基板3に搭載するため、上記一連の動作を繰り返して行う。
以上のように、第1実施形態では、吸着ノズル83に2つの流通孔FH1、FH2を設ける一方、吸着ノズル83を保持するノズルホルダ51に2つの連通孔CH1、CH2を設けている。そして、部品吸着位置へのノズル下降および上昇端へのノズル上昇によって、連通孔CH1、CH2と、流通孔FH1、FH2との連通接続を切り替えて空気圧導入通路831を介して吸着ノズル83の先端に供給される負圧を調整している。したがって、従来技術に比べて簡素な構成で吸着ノズル83に供給される空気圧を切り替えることが可能となっている。
また、上記実施形態では、互いに異なる負圧を供給する空気圧供給部53、54を設け、ノズル83の昇降移動に応じて吸着ノズル83に供給する負圧の大きさを変更しているため、吸着ノズル83から部品を落下させることなく、その部品を基板側に移動させることができる。しかも、第1実施形態では、空気圧供給部53から供給する負圧(P1-)と、空気圧供給部54から供給する負圧(P2-)とをそれぞれ部品吸着に適した値および部品搬送に適した値に設定しているため、部品吸着を確実に行うことができるとともに、ノズル83またはヘッドユニット6の移動中にノズル先端から部品が脱落するのを確実に防止することができる。
また、連通孔CH1が上下軸方向(Z方向)に伸びる長孔形状となるように構成しているため、連通孔CH1を介して負圧を供給可能な範囲、つまり部品吸着位置および部品搭載位置の範囲が上下軸方向(Z方向)に広がる。そのため、各種部品の高さ寸法等によりバラツキが部品を吸着し、また基板3に搭載する高さ位置が上下軸方向に変動したとしても、何の支障もなく部品を吸着ノズル83で吸着保持可能となっている。
さらに、上記第1実施形態では、図4に示すように、各保持孔512では凹部511の反対側に流通孔FH1、FH2を設け、円環状溝LT1により流通孔FH1を連通して空気圧供給部53から空気圧供給孔SH1を介して空気圧(負圧および正圧)を全吸着ノズル83に供給可能に構成するとともに、LT2により流通孔FH2を連通して空気圧供給部54から空気圧供給孔SH2を介して空気圧(負圧)を全吸着ノズル83に供給可能に構成している。したがって、本実施形態のようにノズル83が複数本であったとしても、空気圧供給部53および空気圧供給部54をそれぞれ1つずつ設けることで、単純な構造で各ノズル83にノズル位置に応じた空気圧を供給可能となっている。
このように、第1実施形態においては、流通孔FH1、FH2がそれぞれ本発明の「第1の流通孔」、「第2の流通孔」に相当し、連通孔CH1、CH2がそれぞれ本発明の「第1の連通孔」、「第2の連通孔」に相当している。また、空気圧供給孔SH1、SH2がそれぞれ本発明の「第1の空気圧供給孔」、「第2の空気圧供給孔」に相当している。また、Z軸駆動機構62および付勢部材82が本発明の「ノズル移動機構」として機能する。また、ノズルホルダ51が本発明の「保持部」に相当する。また、正圧(P1+)、負圧(P1-)および負圧(P2-)がそれぞれ本発明の「第1の正圧」、「第1の負圧」および「第2の負圧」も相当する。また、切替バルブ533が本発明の「第1の切替手段」に相当する。さらに、円環状溝LT1、LT2はそれぞれ本発明の「第1の環状溝」および「第2の環状溝」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第1実施形態では、第1の流通孔FH1および第1の連通孔CH1がそれぞれ第2の流通孔FH2および第2の連通孔CH2の下方に配置されているが、これらの配置関係に限定されるものではなく、例えば図7に示すように上下関係を入れ替えて配置してもよい(第2実施形態)。ただし、この第2実施形態における部品吸着位置では、同図(c)に示すように、流通孔FH1のみが連通孔CH1と対向しており、他の流通孔FH2は保持孔512の内周面で塞がれて何れの連通孔CH1、CH2とも連通されない。また、同図への図示を省略しているが、吸着ノズル83が部品搭載位置に移動したときも、部品吸着位置に移動したとき(同図(c))と同様である。なお、この点に関しては、以下の説明する第3実施形態ないし第5実施形態においても同様である。
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、2個の流通孔FH1、FH2を吸着ノズル83に設けているが、流通孔の個数はこれに限定されるものではなく、任意であり、例えば図8に示すように上下軸方向(Z方向)に伸びる長孔形状の流通孔FHのみで構成してもよい(第3実施形態)。この第3実施形態では、保持孔512の内周面と対向する側の上下軸方向における流通孔FHの開口長さは、連通孔CH1、CH2の離間間隔よりも長く、同図(b)に示すように、吸着ノズル83が回路切替位置に移動させられたとき、流通孔FHが両連通孔CH1、CH2を跨って各連通孔CH1、CH2に同時に連通する。その結果、ノズル83が上昇端位置と、部品吸着位置および部品搭載位置との間を移動している間も、常にノズル83に負圧が供給され、ノズル83の移動中にも部品がノズル83に吸着保持されて部品の落下を確実に防止することができる。また、流通孔FHを最小個数とすることで製造コストの低減を図ることができる。
また、上記実施形態では、第1の流通孔FH1および第2の流通孔FH2が上下軸方向に一列に配置されるとともに、第1の連通孔CH1および第2の連通孔CH2が上下軸方向に一列に配置されているが、流通孔および連通孔の配置関係はこれに限定されるものではなく、ノズル83の昇降移動に伴い流通孔FH1、FH2の連通孔側開口(図6〜図8における左側開口)が移動する軌跡上に連通孔CH1、連通孔CH2の流通孔側開口(図6〜図8における右側開口)が位置するように配置すればよい。
また、第1実施形態ないし第3実施形態では、流通孔FH1、FH2および連通孔CH1、CH2が吸着ノズル83に対して同一方向側(図6〜図8中の左手側)に配置されているが、例えば図9に示すように吸着ノズル83を挟んで互いに反対側に配置してもよい(第4実施形態)。また、この第4実施形態では、流通孔FH1、FH2は、上下軸方向(Z方向)において略同一位置で、かつ上下軸方向周りの周方向において互いに離間して設けられている。そして、吸着ノズル83が部品吸着位置に移動させられるとき、同図(c)に示すように流通孔FH1のみが連通孔CH1のみと連通し、流通孔FH2は保持孔512の内周面で塞がれて何れの連通孔とも連通しない。
このように構成された第4実施形態では、部品吸着や部品搭載に適した空気圧(負圧P1-や正圧P1+)は流通孔FH1の形成位置に対応した方向(同図中の右手側)から供給される一方、部品搬送に適した空気圧(負圧P2-)は流通孔FH2の形成位置に対応した方向(同図中の左手側)から供給され、このように空気圧の供給方向は上下軸方向周りの周方向において互いに異なる。したがって、空気圧をノズルホルダ51に供給するための空気圧配管や空気圧供給源などをノズル周囲でずらして配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。また、同図に示すように流通孔FH1、FH2が上下軸方向において略同一位置に配置されているため、上下軸方向(Z方向)において流通孔FH1、FH2の間隔が狭められ、上下軸方向にノズルホルダ51を小型化することができる。さらに、上記間隔の狭小化に応じてノズル83とノズルホルダ51との嵌合範囲も狭まり、嵌合精度出しが容易となり、製造コストの低減が可能となる。
また、上記第4実施形態では、流通孔FH1、FH2を上下軸方向において略同一位置に配置しているが、流通孔FH1、FH2に代えて連通孔CH1、CH2を第4実施形態のように構成してもよい(第5実施形態)。つまり、図10に示すように、上下軸方向周りの周方向において互いに離間し、かつ孔中心が上下軸方向において略同一位置となるように、連通孔CH1、CH2をノズルホルダ51に設けてもよい。この場合も、連通孔CH1、CH2を介した空気圧の供給方向がそれぞれ上下軸方向周りの周方向において異なるため、上記第4実施形態と同様に、空気圧をノズルホルダ51に供給するための空気圧配管や空気圧供給源などをノズル周囲でずらして配置することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。
また既に言及したように、第1の負圧と第2の負圧との関係は任意であるが、上記実施形態では部品吸着を確実なものとすることを重要視して|P1-|>|P2-|の関係が満足されるように構成されている。すなわち、ノズル先端により部品を吸着したノズルを比較的低速で移動させる装置では、ノズルを移動させる際に要求される吸着力については、部品吸着開始時のような吸着力は必要とされないという技術背景に基づくものである。一方、装置の高速化を図る場合には、ノズルの最高移動速度を高く設定する必要があり、ノズルの加減速時や停止の瞬間にノズル先端に吸着されている部品に作用する慣性力が大きくなる。このような装置では、当該慣性力に打ち勝つための第2の負圧|P2-|が、吸着時における摩擦力等に打ち勝つための第1の負圧|P1-|より大きくしなければならない。このような事情は従来より周知の表面実装装置全般に共通しているが、特に上記実施形態の実装用ヘッド8では、例えば図2に示すように8本のノズル83がロータリー状に並べて搭載されているため、搭載本数の増大によりロータリー半径が大きくなり、実装用ヘッド8の回転の加減速度が大きくなる場合には、|P1-|<|P2-|の関係が満足されるように構成するのが望ましい(第6実施形態)。
また、上記実施形態では、複数のノズル83を有するとともに、各ノズル83への正圧または負圧の供給切替をノズル本数よりも少ない切替バルブ(上記実施形態では、単一の切替バルブ533)で行っている。この場合において、ノズルを移動させる際に要求される吸着力と、部品吸着開始時のような吸着力とを同等程度にすれば良い場合には、単一の負圧源を有する負圧発生装置(例えば後で説明する図19参照)を用いて各ノズル83に負圧を供給する、つまり|P1-|=|P2-|の関係が満足されるように構成してもよい(第7実施形態)。この場合、上記他の実施形態と同様、部品吸着時および部品運搬時には、全ノズル83に負圧を与える一方、部品を基板に実装する時には、次のように負圧/正圧の切替を行うことができる。つまり、下降しているノズル83で実装のために負圧から正圧に切り替えるために切替バルブ533を使用しつつ、上昇位置にあるノズル83に負圧を作用させるためであれば、上昇位置にあるノズル83に負圧を作用させるための空気回路と、下降位置での切替バルブ533に連通した空気回路とを切り替えるスプール弁の一部として、ノズル自身が機能するように構成してもよい。
また、下降しているノズル83で実装のために負圧から正圧に切り替えるために切替バルブ533を使用しつつ、上昇位置にあるノズル83に負圧を作用させるためであれば、上昇位置での負圧を導く空気回路と、下降位置での切替バルブ533に連通した空気回路とをノズル自身がスプール弁の一部として機能するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、空気圧供給部54は負圧源541のみで構成されているが、空気圧供給部53と同様に、正圧源および切替バルブをさらに備えて負圧のみならず正圧(P2+)も選択的に供給するように構成してもよい。このように構成された装置では、第2の連通孔CH2を介して負圧(P2-)または正圧(P2+)を選択的に保持孔512に供給することができる。このため、例えば吸着ノズル83が部品を吸着しないまま上昇端位置に移動させられたとき、ノズル83に与える圧力を負圧(P2-)から正圧(P2+)に切り替えることで、エアーパージによってノズル83の空気圧導入通路831およびノズル先端をエアー洗浄することができる。また、正圧(P1+)の空気圧供給は部品離脱用エアーブローとして用いられることを考慮すると、エアーブロー用の正圧(P1+)の絶対値がエアーパージ用の正圧(P2+)の絶対値よりも小さくなるように構成するのが望ましい。というのも、Z軸駆動機構62により吸着ノズル83を下降させて部品を実装する際、ノズル83から部品を離脱させるときのエアーブローの正圧を無用に大きくしないで済むからである。また、正圧源532の正圧供給能力を低減させることができるという効果もある。
また、上記実施形態は、8本の吸着ノズル83を円周状に配置した、いわゆるロータリー方式(あるいはレボルバー方式)の実装用ヘッド8に適用しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、例えば他の方式により複数本の吸着ノズル83を装備する実装用ヘッドにより部品実装を行う部品実装装置に対して適用可能である。また、吸着ノズル83ごとに空気圧を切替ながら供給する部品実装装置に対して本発明を適用することができる。
図11は本発明にかかる部品実装装置の第8実施形態を示す側面図である。この第8実施形態では、第1実施形態と同様に、基台11上に基板搬送機構2(図1参照)が配置されるとともに、基板搬送機構2の前方(+Y)側および後方(−Y)側には、上記した部品供給部4(図1参照)が配置されている。そして、基板搬送機構2により基板3が所定の実装作業位置に搬送され、図略の保持装置により固定された後、ヘッドユニット6がヘッド移動機構によって基台11の所定範囲にわたりX軸方向及びY軸方向に移動させられながら部品供給部4で吸着ノズル830により吸着した電子部品を保持したまま基板3に搬送するとともに、ユーザより指示された搭載位置に移載する。ただし、第8実施形態では、ヘッドユニット6は第1実施形態と異なり、8本の吸着ノズル83を水平方向(X方向)に一列に並んで配列している。以下、ヘッドユニット6の構成および動作を中心に図11ないし図18を参照しつつ説明する。
図12はヘッドユニットの正面図であり、前方カバーを外した状態を図示している。また、図13は図12に示すヘッドユニットの部分断面図である。この第8実施形態では、ヘッドユニット6は、X軸方向に延びる実装ヘッド支持部材91に対して支持フレーム61がX軸に沿って移動可能に支持されている。この支持フレーム61の前方(+Y)部を構成する支持プレート61Aの両側部には、サイドプレート64が固定されている(なお、図12では(−X)側のサイドプレートのみを図示している)。また、支持プレート61Aの上方端部にトッププレート65が固定されるとともに、下方端部には本発明の「保持部」に相当するブラケット66が固定されている。
このヘッドユニット6では、図11に示すように、8個の実装ヘッド800がX軸方向に一列に配列されている。これらの実装ヘッド800はともに同一構成を有しており、各実装ヘッド800では、上下軸方向(Z方向)に延設されたノズルシャフト810が軸受ユニット820により回転可能、且つ上下軸方向に摺動可能に支持されている。つまり、支持プレート61Aの前方(+Y)面に対し、8個の軸受ユニット820が等間隔でX軸方向に一列で配列されて固定されている。各軸受ユニット820では、図13に示すように、軸受ユニット本体821の内部にノズルシャフトガイド軸822が上下軸回りに回転自在に配置されている。また、そのノズルシャフトガイド軸822の中央部には、スプライン孔が上下軸方向に貫通して設けられており、当該スプライン孔に対してノズルシャフト810が上下軸方向に摺動可能にスプライン嵌合されつつ挿通されて支持されている。
また、各ノズルシャフトガイド軸822の下方端部は軸受ユニット本体821の下端面よりも下方に延設されており、さらに当該下方端部に対してドリブン歯車841が装着されている。このように8個のドリブン歯車841が左右方向(X軸方向)に一列に配列されている。そして、R軸モータ842の駆動力を各ドリブン歯車841に伝達してノズルシャフトガイド軸822を回転させることによって、ノズルシャフト810がR軸方向に回転させられる。すなわち、吸着ノズル830が装着されたノズルシャフト810をR軸方向に回転させるノズル回転機構は、次のように構成されている。R軸モータ842はサイドプレート64にモータステー843で取り付けられている。また、このR軸モータ842の出力軸の下方端部にはピニオン844が取り付けられ、両端をラックガイド845により左右方向(X軸方向)に摺動可能に支持されたラック846を介してドリブン歯車841を回転駆動する。これにより、部品実装動作に入った実装ヘッド800のノズルシャフト810の下端に装着される吸着ノズル830を実装位置毎に設定された部品実装方向と一致する回転角度に位置させる。
トッププレート65には、8個のノズルシャフト810の上方位置にノズル移動機構の駆動源861が1つずつ設けられている。本実施形態では、駆動源861としてリニアモータを用いており、各リニアモータ861の出力軸862の下方端部はカップリング863にネジ嵌合し、またカップリング863はノズルシャフト810の上方端部を軸受864を介して回転可能に支持する。このように、カップリング863は、回転不可能且つ上下動するリニアモータ861の出力軸862に対してノズルシャフト810を回転可能に連結する機能を果たしている。なお、ノズル駆動機構の構成はこれに限定されるものではなく、出力軸862を回転不可能且つ上下動させる構成のもの、例えば中空モータ、ボールナットおよびボールネジ機構を用いたノズル駆動機構を採用してもよい。
また、ブラケット66は、左右方向(X軸方向)に並列配置されたノズルシャフト810の下方端部を回転可能、且つ上下に摺動可能に支持する。以下、図14ないし図17を参照しつつブラケット66の構造について詳述する。
図14はブラケットの構成を示す部分断面図である。また、図15は図14中のA−A線矢視断面図であり、図16は図15中のB−B線矢視断面図であり、図17は図15中のC−C線矢視断面図である。ブラケット66には、左右方向(X軸方向)に一定間隔を空けて直線状に保持孔が8個、上下軸方向(Z方向)に貫通して設けられている。そして、各保持孔にノズルシャフト810の下方端部が1本ずつ挿入されている。より具体的には、保持孔の内周面に沿ってノズルシャフト810の下方端部側面を摺接させながら上下軸方向にノズルシャフト810は回転可能、かつ上下に移動自在に保持されている。
また、ブラケット66の内部では、図14および図15に示すように、上下軸方向(Z方向)における第1の高さ位置P1では、保持孔を水平方向に円環状に拡幅した第1の連通チャンバ部CH1aが8個の保持孔に対して1つずつ設けられている。また、第1の高さ位置P1の上方側、つまり第2の高さ位置P2でも、第1の連通チャンバ部CH1aと同様にして、8個の第2の連通チャンバ部CH2aが設けられている。このように各保持孔に対し、2種類の連通チャンバ部CH1a、CH2aが設けられ、それぞれ異なる高さ位置P1、P2で保持孔に連通している。
さらに、ブラケット66の内部では、第1の高さ位置P1で第1の連通チャンバ部CH1aを相互に連通する連通孔CH1bが設けられている。この連通孔CH1bの(−X)側端部は、図16に示すように、ブラケット66の(−X)側端面まで延設されている。一方、第2の高さ位置P2においても、上記と同様に、連通孔CH2bが設けられている。つまり、図17に示すように、連通孔CH2bは第2の連通チャンバ部CH2aを相互に連通するとともに、その(−X)側端部がブラケット66の(−X)側端面まで延設されている。
図18は連通孔に対する負圧発生装置および切替バルブの接続状態を示す図である。上記のように構成された連通孔のうち連通孔CH1bの(−X)側端部は切替バルブ55に接続されており、装置全体を制御する制御部(図示省略)からの切替指令に応じて切替バルブ55が空気回路を切り替えると、その切替に応じて大気あるいは負圧配管561を介して負圧発生装置57の第1の負圧源571に連通する。なお、同図では、連通孔CH1bの(−X)側端部は切替バルブ55および負圧配管561を介して第1の負圧源571に接続されており、この場合、第1の負圧源571から負圧(P1-)が第1の連通チャンバ部CH1aを介して保持孔に供給される。また、大気開放する代わりに、第1実施形態と同様に、正圧源と接続して正圧(P1+)を供給するように構成してもよい。
また、連通孔CH1bの(−X)側端部は負圧配管562を介して負圧発生装置57の第2の負圧源572に連通されている。このため、第2の負圧源572から負圧(P2-)が第2の連通チャンバ部CH2aを介して保持孔に供給される。
このように各保持孔に対しては、切替バルブ55の切替に応じて、2種類の負圧(P1-)、(P2-)か、大気および負圧(P2-)かが常に供給されている。そして、これらの保持孔に対して8本のノズルシャフト810の下方端部がそれぞれ1本ずつ挿入され、保持孔の内周面に沿って摺接しながら回転可能、且つ上下軸方向に移動可能に保持されている。また、各ノズルシャフト810の下方端部の先端には、吸着ノズル830が取り付けられている。吸着ノズル830の内部には、ノズル軸芯に沿ってノズル先端部まで貫通孔(図示省略)が設けられているが、この貫通孔と連通するように、各ノズルシャフト810の下方端部には、吸着ノズル830まで空気圧導入通路811が設けられている。このようにノズルシャフト810と吸着ノズル830が一体化されて本発明の「ノズル」として機能する。
各ノズルシャフト810には、第1実施形態のノズル83と同様に、ノズル83の側面から水平方向に2つの流通孔FH1、FH2が空気圧導入通路811に延設されており、上下軸方向において流通孔FH1が流通孔FH2よりも下方に位置するように上下一列に配設されている。また、流通孔FH1、FH2の形成態様(大きさおよび上下軸方向の間隔)と、連通チャンバ部CH1a、CH2aの形成態様(大きさおよび上下軸方向の間隔)とは第1実施形態と同一である。したがって、第1実施形態と同様に、部品吸着位置へのノズル下降および上昇端へのノズル上昇によって、連通チャンバ部CH1a、CH2aと、流通孔FH1、FH2との連通接続を切り替えてノズルシャフト810の空気圧導入通路811、吸着ノズル830の貫通孔を介して吸着ノズル83の先端に供給される負圧を調整することができる。したがって、従来技術に比べて簡素な構成で吸着ノズル830に供給される空気圧を切り替えることが可能となっている。
また、第1実施形態と同様に、負圧発生装置57に互いに異なる負圧を発生させる負圧源571、572を設け、ノズル(=ノズルシャフト810+吸着ノズル830)の昇降移動に応じて吸着ノズル83に供給する負圧の大きさを変更しているため、吸着ノズル83から部品を落下させることなく、その部品を基板側に移動させることができる。しかも、負圧源571から供給する負圧(P1-)と、負圧源572から供給する負圧(P2-)とをそれぞれ部品吸着に適した値および部品搬送に適した値に設定しているため、部品吸着を確実に行うことができるとともに、ノズル(=ノズルシャフト810+吸着ノズル830)の上下移動または回転、あるいはヘッドユニット6の移動中にノズル先端から部品が脱落するのを確実に防止することができる。
また、連通チャンバ部CH1aが上下軸方向(Z方向)に伸びる形状となるように構成しているため、連通チャンバ部CH1aを介して負圧を供給可能な範囲、つまり部品吸着位置および部品搭載位置の範囲が上下軸方向(Z方向)に広がる。そのため、各種部品の高さ寸法等によりバラツキが部品を吸着し、また基板3に搭載する高さ位置が上下軸方向に変動したとしても、何の支障もなく部品を吸着ノズル830で吸着保持可能となっている。
また、連通チャンバ部CH1a、CH2aは保持孔を取り囲むように設けられ、しかも連通チャンバ部CH1a、CH2aを介して連通孔CH1b、CH2bが保持孔に連通するように構成している。このため、ノズル(=ノズルシャフト810+吸着ノズル830)の如何なる角度に回転したとしても、連通チャンバ部CH1a、CH2aを介して連通孔CH1b、CH2bが常に保持孔と連通し、上記作用効果が得られる。なお、ノズル(=ノズルシャフト810+吸着ノズル830)を回転させない装置では、連通チャンバ部CH1a、CH2aを省略し、連通孔CH1b、CH2bを保持孔に連通させることも可能である。
さらに、この第8実施形態においても、第1実施形態と同様に、実装ヘッド800が複数本であったとしても、切替バルブ55および負圧発生装置57をそれぞれ、実装ヘッド800の数より少ない1つずつ設けることで、単純な構造で各ノズル830にノズル位置に応じた空気圧を供給可能となっている。
なお、上記第8実施形態では、第1の流通孔FH1および第1の連通チャンバ部CH1aがそれぞれ第2の流通孔FH2および第2の連通チャンバ部CH2aの下方に配置されているが、これらの配置関係に限定されるものではなく、第2実施形態(図7)ないし第5実施形態(図10)で説明したと同様の配置関係を採用してもよい。
また、第8実施形態においても、既に言及したように、第1の負圧と第2の負圧との関係は任意であり、第1実施形態と同様に、部品吸着を確実なものとすることを重要視して|P1-|>|P2-|の関係が満足されるように構成してもよいし、ノズル移動速度、急激な加速、停止を重視して|P1-|<|P2-|の関係が満足されるように構成してもよい。
また、第8実施形態では、複数のノズル830を有するとともに、各ノズル830への正圧または負圧の供給切替をノズル本数よりも少ない1つの切替バルブ55で行っているため、例えば図19に示すように、負圧発生装置57に共通の負圧源573を設け、この負圧源573が負圧配管561および切替バルブ55を介して連通孔CH1bに接続されるとともに負圧配管562を介して連通孔CH2bに接続されるように構成してもよい(第9実施形態)。このように構成することで、|P1-|=|P2-|の関係が満足される。この場合、部品吸着時および部品運搬時には、全ノズル830に負圧を与える一方、部品を基板に実装する時には、次のように負圧/正圧の切替を行うことができる。つまり、下降しているノズル830で実装のために負圧から正圧に切り替えるために切替バルブ55を使用しつつ、上昇位置にあるノズル830に負圧を作用させるためであれば、上昇位置での負圧を導く空気回路(負圧源573−負圧配管562−連通孔CH2b−連通チャンバ部CH2a)と、下降位置での切替バルブ55を含む空気回路(負圧源573−負圧配管561−切替バルブ55−連通孔CH1b−連通チャンバ部CH1a)とを切り替えるスプール弁の一部として、ノズル自身が機能している。
また、ノズル(ノズルシャフト810の下方端部に吸着ノズル830を装着したもの)ごとに空気圧を切替ながら供給する部品実装装置に対して本発明を適用することができる。
以上のように、上記第1実施形態ないし第7実施形態では吸着ノズル83の本数よりも少ない数の切替バルブ533で各ノズル83への負圧/正圧の切替を行う一方、それらの吸着ノズル83に跨る連通孔CH1、CH2を設けることで互いに異なる空気回路を形成するとともに各吸着ノズル83の上下動により空気回路を切り替えて吸着ノズル83に供給する負圧を調整している。また、上記第8実施形態および第9実施形態においても、複数のノズル(ノズルシャフト810の下方端部に吸着ノズル830を装着したもの)の本数よりも少ない数の切替バルブ55で各吸着ノズル830への負圧/正圧の切替を行う一方、ノズルシャフト810に跨る連通孔CH1b、CH2bを設けることで互いに異なる空気回路を形成するとともに各ノズルの上下動により空気回路を切り替えて吸着ノズル830に供給する負圧を調整している。このように、吸着ノズル83、830に要求される負圧がノズル位置に対応しており、ノズルの上下動を利用して負圧切替が可能となっている。したがって、負圧切替を行うための構造が簡単で故障し難く、安価に構成することができるという利点を有している。
ここで、ノズルの上下動を利用して負圧切替を行うという技術的特徴に着目すれば、部品実装装置を次のように構成してもよい。すなわち、特許文献1に記載の装置では、既に説明したように、吸着ノズルに対して負圧側スプールバルブと正圧側スプールバルブとを設けることで吸着ノズルに対する正圧/負圧供給を制御している。したがって、吸着ノズルに要求される負圧をさらに細かく制御するためには、上記負圧側スプールバルブと異なる別の負圧側スプールバルブをさらに追加する必要があり、装置構成が複雑になるとともに、装置の大型化は避けられない。このような課題については、上記実施形態により解決されるが、さらに次のような構成を採用してもよい。以下、図20を参照しつつ別の実施形態について説明する。
図20は部品実装装置の別の実施形態を模式的に示す図である。この実施形態にかかる部品実装装置は、複数の吸着ノズル830を水平方向(X方向)に一列に並んで配列しており、実装ヘッド800の具体的構成および負圧切替機構が相違する点を除き、基本的には第8実施形態(図11)と同一である。したがって、以下においては、図20を参照しつつ、相違点を中心に説明する一方、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
この実施形態では、3本の実装ヘッド800がX軸方向に一列に配列されている。これらの実装ヘッド800はともに同一構成を有しており、各実装ヘッド800では、上下軸方向(Z方向)に延設されたノズルシャフト810の上方端部が軸受ユニット820により回転可能、且つ上下軸方向に移動可能に支持されるとともに、同ノズルシャフト810の下方端部がブラケット66により回転可能、且つ上下軸方向に移動可能に支持される。そして、装置各部の駆動を制御する駆動制御部900からの指令に応じてR軸モータ842およびリニアモータ861が作動することで、ノズルシャフト810がR軸方向に回転し、また上下軸方向(Z方向)に移動する。なお、発明の理解を容易にするため、図20ではブラケット66、ノズルシャフト810および吸着ノズル830の断面のみを抽出して図示している。また、この実施形態では、3本のノズルシャフト810を1つのブラケット66で支持しているが、ノズル本数は「3」に限定されるものではなく、またノズルシャフト810の本数と同数のブラケットを用意し、各ブラケットで1本ずつノズルシャフト810を支持するように構成してもよい。
各ノズルシャフト810の下方端部には、第8実施形態と同様に、吸着ノズル830まで空気圧導入通路811が設けられるとともに、この空気圧導入通路811に対して吸着ノズル830の貫通孔が連通するようにノズルシャフト810の下方端部に対して吸着ノズル830が取り付けられている。このように、ノズルシャフト810と吸着ノズル830が一体化されて「ノズル」として機能する。また、各ノズルシャフト810には、その側面から水平方向に1つの流通孔FHが空気圧導入通路811に延設されている。
このブラケット66には、左右方向(X軸方向)に一定間隔を空けて直線状に保持孔が3個、上下軸方向(Z方向)に貫通して設けられている。そして、各保持孔にノズルシャフト810の下方端部が1本ずつ挿入されている。より具体的には、保持孔の内周面に沿ってノズルシャフト810の下方端部側面を摺接させながら上下軸方向にノズルシャフト810は回転可能、かつ上下に移動自在に保持されている。
このブラケット66の内部では、保持孔を水平方向に円環状に拡幅した連通チャンバ部CH1aが3個の保持孔に対して1つずつ設けられている。そして、各連通チャンバ部CH1aから連通孔CH1bが独立分離してブラケット66の側面に延設されている。これらの連通チャンバ部CH1aはいずれもノズルシャフト810に設けられた流通孔FHよりも上下軸方向に長く形成されており、その長さの範囲内でノズルが上下軸方向(Z方向)に昇降移動したとしても、流通孔FHは連通チャンバ部CH1aと連通され、連通チャンバ部CH1aおよび流通孔FHを介して次に説明するようにして空気圧導入通路811に正圧および負圧を供給可能となっている。
ブラケット66の前面には各実装ヘッド800毎に圧力切替・調整部58が左右方向に取り付けられており、各連通孔CH1bはそれぞれ各圧力切替・調整部58を介して真空源59に接続されている。この圧力切替・調整部58は、同図(b)に示すように、電空真空レギュレータ581、切替バルブ582および正圧源583を有している。この電空真空レギュレータ581は、真空源59より伝達される真空圧力を所望の負圧に調整するための圧力調整機能を有する。また、切替バルブ582は、駆動制御部900からの動作指令に基づいて空気回路を正圧側および負圧側に切り替える機能を有している。このため、切替バルブ582が正圧源583を連通孔CH1bと接続する正圧側空気回路に切り替えると、当該正圧側空気回路に繋がる吸着ノズル830に正圧が供給される。一方、同図(b)に示すように、切替バルブ582が負圧側に切り替わると、真空源59が電空真空レギュレータ581および切替バルブ582を介して連通孔CH1bと繋がり、当該負圧側空気回路(真空源59−電空真空レギュレータ581−切替バルブ582−連通孔CH1b)に繋がる吸着ノズル830に負圧が供給される。しかも、こうして吸着ノズル830に負圧を供給する際、駆動制御部900からの制御信号に基づいて電空真空レギュレータ581は後で説明するように2段階の負圧に調整する。
また、この実施形態では、実装ヘッド800毎にノズル上下位置センサ901が設けられてノズル(=ノズルシャフト810+吸着ノズル830)の上下軸方向の高さ位置を検出し、その位置情報を駆動制御部900に出力する。一方、駆動制御部900はメモリ902に記憶されている実装プログラムにしたがって装置各部を制御し、以下のように動作させる。
メモリ902には、実装位置に対応する電子部品データや電子部品高さデータ等の各種データが記憶されており、駆動制御部900はこれらのデータに基づいてノズル上下位置センサ901による所定のノズル上下位置(電子部品の底が基板に接触する上下位置)で該当する切替バルブ582を切り替えて正圧/負圧の切替を行う。
さらに、駆動制御部900は、各実装ヘッド800におけるノズル(=ノズルシャフト810+吸着ノズル830)の昇降動作に応じて電空真空レギュレータ581に制御信号を与えて負圧PA、PBの間で切り替える。なお、これら2種類の負圧のうち負圧PAは、部品吸着のためノズルの下降途中あるいは下降端に達した時点から吸着後の部品吸着したノズルを上昇する途中の時点までの間の真空圧である。また、もう一方の負圧PBは、ヘッドユニット6(図11参照)を部品供給部4(図1参照)の上方から基板3の上方位置への移動中、および基板3の上方位置での該当実装ヘッド800の部品実装位置上方への移動中を含め、部品吸着したノズルの上昇端に到達する前から、実装開始のため部品吸着したノズルの下降途中あるいは下降端に到達するまでの間の真空圧である。なお、負圧PA、負圧PBにしなければならない上記期間を除けば、負圧PA、負圧PBいずれにしても良い。
以上のように、この実施形態によれば、吸着ノズル830による部品吸着時における負圧PAと、ヘッドユニット6による部品の運搬中における負圧PBとを、1つの電空真空レギュレータ581で切り替えることができる。したがって、特許文献1に記載の装置に負圧切替機能を付加する場合に比べ、少ない構成要素で負圧切替を行うことができ、装置の大型化も抑制することができる。また、このような作用効果はノズルの上下動を利用して負圧切替を行う第1実施形態ないし第9実施形態においても奏せられる。
なお、吸着ノズル830に負圧を供給する際、駆動制御部900は、電空真空レギュレータ581が電子部品毎に細かく負圧調整するように制御しても良い。すなわち、慣性力の大きな大型の部品には大きな負圧を、慣性力の小さな小型の部品には比較的小さな負圧を、あるいは大きな吸着力を必要とする部品には大きな負圧を、小さな吸着力で済む部品には小さな負圧を、それぞれ部品種に応じて吸着ノズルに作用させる。
さらに、上記実施形態では、複数の実装ヘッド800を備えた部品実装装置に対し、ノズルの上下動作に応じて電空真空レギュレータ581を制御して負圧切替を行うという発明を適用しているが、この発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、単一の実装ヘッドで構成された部品実装装置にも適用可能である。
さらに、上記実施形態では、正圧源や負圧源を装置内部に設けているが、他の装置に設けられた正圧源や負圧源、あるいは装置が設置される工場のユーティリティー(用力)から供給される正圧や負圧を利用するように構成してもよい。また、正圧源の代わりに大気開放するように構成してもよい。