JP4745540B2 - 生分解性水分散系接着剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性水分散系接着剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水分散系接着剤組成物は、取扱いの至便さの点でも、また作業者および作業環境の安全性の点でも溶剤系接着剤組成物に比して優れており、紙、布の接着、屋内外塗装、さらには自動車、航空機などにおけるプラスチックスや金属の接着など広汎に使用されている。しかしながら、水分散系接着剤組成物の主成分が非生分解性であるため、廃棄処理上地球に相応の負担を与えるという問題点を有している。
【0003】
これに対して生分解性の水分散系接着剤組成物の主成分としては、生分解性樹脂の水分散液が提案されている。例えば、WO97/04036にはポリヒドロキシアルカノエートの水分散系が、特開平8−81634号公報にはポリカプロラクトンの水分散系が、特開平10−101911号公報にはポリ乳酸の水分散系が、特開2000−7789号公報には生分解性ポリエステルからなる自己分散型の水分散系が、および特開平11−92712号公報には脂肪族ポリエステルの水分散系が開示されている。また、上記ポリエステル類の水分散系と違って、特開平9−77910号公報には澱粉誘導体の水分散系が開示されている。これらの生分解性樹脂の水分散液を主成分とする接着剤組成物は、生分解性故に廃棄の際に地球を汚染しないという利点を持つだけでなく、加水分解性を有するが故にそれらを用いて作られた加工品のリサイクルを容易にするという利点(リサイクル適性という)も併せ持っている。
【0004】
しかしながら、被着材または基材が多岐にわたり、広義の接着、より詳しくは狭義の接着、あるいはコーティング、含浸、複合化などに要求される様々な要求を過不足なく満たすという意味では、上述諸例の生分解性樹脂の水分散液を主成分とする接着剤組成物だけでは、特に接着強度において不充分であり、実用に至っていない場合が多く見られる。接着剤組成物は、それ自身乾燥した場合に充分な強度を示す必要があるのは勿論であるが、被着材または基材に対して、さらには配合されるそれ自身自立性を持たない、例えばフィラー、微細繊維などに対して充分な接着強度を示すことが必要となるが、生分解性樹脂の水分散系を主成分とした接着剤組成物の接着強度向上方法に関する技術は未だ発表されていない。
【0005】
接着剤組成物の接着強度向上のためにイソシアネート類化合物を添加することは特開昭49−34932号公報以来公知であり、また該イソシアネート類化合物の混和を容易にするためポリアルキレングリコールを反応させて自己乳化型イソシアネートプレポリマーを用いることも、特公平4−15270号公報に開示されているが、これらは非生分解性の水分散系接着剤組成物である。前記のような非生分解性の水分散系接着剤組成物は、多くの場合カルボキシル基、水酸基、アミド基などのイソシアネート類化合物と反応する活性水素を多く持つ樹脂を、該接着剤組成物の主成分としている。従って、ポリイソシアネート類化合物添加の対象となる非生分解性水分散系接着剤組成物の構成は、生分解性水分散系接着剤組成物とは大いに異なっており、上記ポリイソシアネート類化合物添加による接着強度向上効果が同様に期待されうるか、また、その上生分解性が該ポリイソシアネート類化合物添加で損なわれず維持されるか否かは予見出来ない。
【0006】
一方、生分解性ポリマーと、架橋剤と、架橋触媒と、非ハロゲン系溶剤とからなり、該生分解性ポリマーの数平均分子量が15,000以下である生分解性溶剤系塗料組成物が、特開平8−311368号公報に公知である。該組成物は、水系でなく溶剤系の組成物であり、通常の水分散系接着剤組成物が含有する乳化剤を欠く点で組成上大きく異なっている。その上主成分たる生分解性ポリマーは、数平均分子量が15,000以下と小さい。そうした系へのイソシアネート類化合物の添加が生分解性、かつ強靱な最終塗膜を与えたとしても、一般的ではない乳化剤を含み、主成分ポリマーがより大きな分子量を持ち、かつ多くのポリマー鎖が凝集した球状粒子をなす水分散系接着剤組成物に添加されたイソシアネート類化合物が同様に反応し同様の期待効果を発揮するとは予見されない。特に水系接着剤の接着性は一般に溶剤系接着剤の接着性より劣ると考えられておりなおさらである。また、上記二例の場合は、リサイクル適性については言及がない。
【0007】
また、生分解性水分散系接着剤組成物の主成分である生分解性樹脂を良好な水分散化にするのは実用上要望が多く、生分解性樹脂の粒子をミクロンないしサブミクロン領域の微粒子にすることを要する。しかし、粒子のサブミクロン化には、生分解性樹脂の分子量抑制が必要であるが、それは必然的に接着力低下をもたらすので、サブミクロン微粒子の生分解性樹脂を主成分とする生分解性水分散系接着剤組成物は実現されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、生分解性およびリサイクル適性を損なわず、かつ取扱い作業者、作業周辺環境等を汚染しない水分散系を維持した上で、実用上要求される充分な接着強度を常態のみでなく湿潤状態においても示す生分解性水分散系接着剤組成物を提供することにある。
また、本発明のもう一つの目的は、接着力の低下をまねくことなく、サブミクロン領域の微粒子よりなる生分解性水分散系接着剤組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、上記のような従来の課題を解決することができた。すなわち本発明は、脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性ポリエステルの水分散液100重量部(固形分)にポリイソシアネート類化合物1重量部以上を配合してなる生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0010】
また本発明は、生分解性ポリエステルが、下記の繰り返し単位を有することを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0011】
【化8】
Figure 0004745540
【0012】
(式中、R1およびR2は、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数5または6の脂環式炭化水素基である)
【0013】
また本発明は、生分解性ポリエステルが、下記の繰り返し単位を有することを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0014】
【化9】
Figure 0004745540
【0015】
(式中、R5は、水素、炭素数1〜19のアルキル基または炭素数1〜19のアルケニル基であり、nは1〜約4の値である)
【0016】
また本発明は、生分解性ポリエステルが、少なくとも下記単位
【0017】
【化10】
Figure 0004745540
【0018】
(式中、R3は、ジイソシアネート残基である)
および/または下記単位
【0019】
【化11】
Figure 0004745540
【0020】
を介して前記[化8]に記載の繰り返し単位および/または前記[化9]に記載の繰り返し単位が結合した構造を有する前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0021】
また本発明は、生分解性ポリエステルが、少なくとも下記単位
【0022】
【化12】
Figure 0004745540
【0023】
および/または下記単位
【0024】
【化13】
Figure 0004745540
【0025】
および/または下記単位
【0026】
【化14】
Figure 0004745540
【0027】
(式中、R4は、炭素数2〜6のアルキレン基である)
を介して前記[化8]に記載の繰り返し単位および/または前記[化9]に記載の繰り返し単位が結合した構造を有する前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0028】
また本発明は、生分解性ポリエステルの数平均分子量が、18,000以上であることを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0029】
また本発明は、生分解性ポリエステルを水分散化する際に用いられる乳化剤が、イソシアネート基と反応し化学結合する活性水素を含むことを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0030】
また本発明は、乳化剤が、ポリビニルアルコール類であることを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0031】
また本発明は、ポリイソシアネート類化合物が、水分散性であることを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0032】
また本発明は、ポリイソシアネート類化合物に予め可塑剤および/またはさらにイソシアネート基と反応する活性水素を持たない界面活性剤を加えておくことを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0033】
また本発明は、ポリイソシアネート類化合物を配合した後で、室温下放置または加熱してイソシアネート基濃度が初期より低下することを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0034】
また本発明は、イソシアネート基濃度が、最終的に赤外線分析法において感知されなくなっても接着強度向上を有することを特徴とする前記の生分解性水分散系接着剤組成物を提供するものである。
【0035】
また本発明は、前記の生分解性水分散系接着剤組成物を生分解性材料同士の接着に使用することを特徴とする接着方法を提供するものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明に言う「生分解性」とは、土中、コンポスト中および水中の微生物により自然環境下で最終的に炭酸ガスと水などに分解される性質を意味する。さらに「リサイクル適性」とは、アルカリ水などに浸漬した際に、接着剤の加水分解反応により、被着材を取出し再利用に供することができる性質を意味する。
【0037】
生分解性ポリエステル
本発明に使用される生分解性ポリエステルは、脂肪族ポリエステルであることができ、好ましくは、上記[化1]で示される繰り返し単位を有する生分解性ポリエステル;上記[化2]で示される繰り返し単位を有する生分解性ポリエステル;少なくとも上記[化3]で示される単位および/または[化4]で示される単位を介して上記[化1]の繰り返し単位および/または[化2]の繰り返し単位が結合した構造を有する生分解性ポリエステル;少なくとも上記[化5]で示される単位および/または[化6]で示される単位および/または[化7]で示される単位を介して上記[化1]の繰り返し単位および/または[化2]の繰り返し単位が結合した構造を有する生分解性ポリエステル等が挙げられ、これらのランダムおよび/またはブロック共重合体、ブレンド物も有用である。
【0038】
より具体的には、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートアジペート、または前記ポリエステルをヘキサメチレンジイソシアネートやγ−アミノプロピルトリメトキシシラン等で結合させた反応生成物が生分解性ポリエステルとして例示される。
【0039】
また、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、さらには微生物の産生するポリヒドロキシ酪酸・ポリヒドロキシ吉草酸共重合体、ポリヒドロキシアルカノエートなどが上記[化2]の繰り返し単位を有する生分解性ポリエステルとして例示される。
【0040】
さらに上述の生分解性ポリエステルには、その生分解性が阻害されない範囲において上述以外の構造の結合が許容される。テレフタレート繰り返し単位が40mol%以下のポリブチレンサクシネートテレフタレートやポリエチレンサクシネートテレフタレートはその一例である。
【0041】
本発明に使用する生分解性ポリエステルの数平均分子量は、必要な接着強度を得る点から18,000以上が、より望ましくは20,000以上が好ましい。そのために生分解性ポリエステルをウレタン基[化3]、炭酸エステル基[化4]、さらにはシリケート含有基[化5]、[化6]および[化7]を介して結合させうる。高分子化合物自身の引張強さは、一般に分子量の増加と共に初め大きく後ゆるやかに向上するが、大きくなると自身の強さとは逆に被着材への接着強度が減少したり、あるいは微粒子として水分散化するのが困難になるばかりか、生分解性やリサイクル適性がある程度損なわれる場合がある。従って本発明に使用する生分解性ポリエステルの数平均分子量の上限は、使用実態に則して決められる。
【0042】
乳化剤
本発明に使用する生分解性ポリエステルを水分散液とするには、乳化剤を使用する方法、あるいは使用しない方法により調製され得る。
例えば、乳化剤を使用して生分解性ポリエステルの水分散液を得る方法は、生分解性ポリエステルを乳化剤の働きにより水中に微粒子状に分散させ、かつ分散状態で安定に存在させることができ、生分解性ポリエステルの加熱溶融および/または溶剤添加などにより流動状化する工程、これに乳化剤および水を混和する工程が骨子となる。混和順序により初期油中水滴(W/O)型から転相を経て水中油滴(O/W)型になる場合、初めからO/W型で得られる場合とがある。
【0043】
本発明に使用する乳化剤としては、界面活性剤(陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性イオン性)および水溶性天然高分子、半合成および合成水溶性高分子であり、接着強度向上のために配合されるポリイソシアネート類化合物のイソシアネート基と反応し化学結合しうる活性水素を含有することが望ましい。すなわち水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基などを親水性基として持つ界面活性剤または水溶性高分子化合物が望ましいが、中でもポリビニルアルコール類、例えば部分鹸化ポリビニルアルコール、陰イオン性または陽イオン性を賦与された部分鹸化ポリビニルアルコールが望ましい。あるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと澱粉とのブロック共重合物、さらに脂肪族ポリエステルとポリエチレンオキシドとのブロック共重合物などが望ましい。なお、また本発明の趣旨から、生分解性を損なわないようとの観点も乳化剤の選択には重要であり、疎水部にフェニル基、分枝炭化水素残基を持つ界面活性剤は避けた方がよい。添加する乳化剤の配合量は、生分解性ポリエステル100重量部に対して、2〜20重量部が好ましい。
【0044】
一方、乳化剤を添加物として用いないで生分解性ポリエステルの水分散液を得る方法は、生分解性ポリエステルを予め変性しておく工程(生分解性ポリエステルの自己水分散可能化工程)とそれに水を添加する工程からなる。最初の工程は、生分解性ポリエステルに多くの場合カルボキシル基を多数含有させる工程で、例えば生分解性ポリエステルに多価カルボン酸、同無水物などを付加反応させる、あるいはカルボキシル基を含んだポリオール(例えばジメチロールプロピオン酸)から生分解性ポリエステルを合成、次にアルカリ(例えばアルキルアミン)を加えて上記カルボキシル基を中和することを内容とする。水を加えて混和撹拌する次なる工程により生分解性ポリエステルの水分散液が得られる。この方法の詳細は特開2000−7789号公報に「生分解性ポリエステルからなる自己水分散性粒子およびその製法」として開示されている。
【0045】
ポリイソシアネート類化合物
本発明で使用するポリイソシアネート類化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する脂肪族、脂環式、芳香族ポリイソシアネートおよびその誘導体であり、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびそのトリマータイプ、ビューレットタイプ、TMPアダクトタイプなど、さらにはイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートが例示される。これらのポリイソシアネート類化合物の多くは水と反応する上、水と混和し難いので、予め可塑剤に溶解しておいてから生分解性ポリエステルの水分散系に添加することができる。このような方法は、特開昭49−34932号公報に開示されている。
【0046】
一方、上記の予め可塑剤に溶解する方法を行わなくてもよい水分散可能なポリイソシアネート類化合物が以下に開示されている。その多くは脂肪族、脂環式、芳香族ポリイソシアネートと、イソシアネート基と反応しうる活性水素を1個以上有する親水性界面活性剤とを反応して得られる。上記親水性界面活性剤としては、例えばポリエチレンオキシド誘導体(特公平4−15270号公報、特開平4−159260号公報、特開平10−204380号公報)、エチレン性不飽和結合含有イオン性界面活性剤誘導体(特開2000−169547号公報、特開2000−191743号公報)が挙げられる。
【0047】
しかし、ポリイソシアネート類化合物の生分解性ポリエステルの水分散液100重量部(固形分)に対する配合量は、1重量部以上でなければならない。1重量部未満では、所望の接着強度向上効果が得られない。配合量の必要以上の増加は、発泡による作業上のトラブル、生分解性の低下、価格上昇の点から好ましくない。配合最適量は、通常1.0〜10重量部/生分解性ポリエステルの水分散液100重量部(固形分)で充分である。
【0048】
また上記配合について、ポリイソシアネート類化合物が水分散可能の場合には、これを直接あるいはこれに予め水を加え水分散液としてから、生分解性ポリエステルの水分散液に加え撹拌することで達成される。一方、ポリイソシアネート類化合物が水分散可能に変性されていない場合には、これを先述したように予め可塑剤に溶解してから、あるいはさらにそこへイソシアネート基と反応する活性水素を持たない界面活性剤を加え均一に撹拌してから、生分解性ポリエステルの水分散液に加え撹拌、均質化することで達成される。そのような可塑剤としては、例えばアジピン酸ジアルキルエステル、セバシン酸ジアルキルエステル、ジエチレングリコールジベンゾエート、アセチルリシノール酸メチル、フタル酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。また上目的の界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤の末端水酸基をアシル化してアルキルエステルとしたポリオキシエチレンアルキルエーテルアルキレート、あるいはポリオキシエチレンの両末端水酸基が一塩基性脂肪酸でエステル化した形のポリオキシエチレンジアルキレートなどが挙げられる。
【0049】
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物中のイソシアネート基濃度は、貯蔵中に水と反応してイソシアネート基濃度を減少する。接着強度向上には、このイソシアネート基濃度の大きい方が好都合と予想されるが、必ずしもそうではない場合もあることが見出された。さらにイソシアネート基濃度の減少が進み、赤外線分析法ではその存在を有意に感知出来なくなった場合でも接着強度向上の認められる場合のあることも見出された。ポリイソシアネート類化合物中のイソシアネート基の反応相手が、生分解性水分散系接着剤組成物中の生分解性ポリエステル(粒子表面および内部)、乳化剤、水などとまたもちろん被着体をも加えて多岐にわたり、あるいは水との反応生成物のポリ尿素が反応性フィラーになりうることも考えると、そうした接着強度向上が現われることも了解される。この場合、イソシアネート基による生分解性ポリエステルの単なる増粘の接着への寄与は小さい。すなわち、生分解性ポリエステル粒子が中心となり、それに乳化剤や上述ポリ尿素が化学結合されてその粒子間隙が埋められ強固な接着剤層が出来上がる。あるいは、その接着剤層がイソシアネート基によってさらに被着体と化学結合され一層強固な接着層が形成される。換言すれば、多成分化学結合型接着層が接着を支えていると考えられる。なおまた現今市場にある生分解性ポリエステルが結晶性ポリマーであることを考えると、それらを中心に形成される上記多成分化学結合型接着層は、含有する結晶性領域に由来する独特な強靭性や熱的性質を持ち、非晶性非生分解性ポリマーを主成分とする汎用水分散系接着剤組成物とは異なる接着性能を発現すると期待される。
従って、本発明の生分解性水分散系接着剤組成物の接着強度向上効果を最大限に、しかも経済的に発揮するためには、生分解性ポリエステルの水分散液にポリイソシアネート類化合物を添加し、該組成物を調製してから被着材または基材上への塗布までの放置時間を最適範囲に保つことが重要である。生分解性ポリエステルの水分散液にポリイソシアネート類化合物を添加し、該組成物を調製後、水系のままで約24時間置いてから被着材または基材上に塗布した時、接着強度向上効果が最大となった例もある(実施例2)。ポリイソシアネート類化合物中のイソシアネート基は、24時間放置中に、水>乳化剤>生分解性ポリエステル(粒子表面)の順に反応し、その後イソシアネート基が消費されていくが、結果として上述多成分化学結合型接着層形成を招来したと考えられる。
【0050】
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物は、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、フィラー、顔料、分散安定剤、増粘剤、粘性調節剤、さらには芳香剤、防虫剤、医薬、農薬などの薬剤を含有することができる。
【0051】
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物の使用方法は、刷毛、スプレー、各種コーターなど実際の作業条件に見合った公知の装置による被着材、あるいは基材への塗布に始まる。次いで、もう一つの被着材を上記塗布面に載置させてから乾燥することにより接着は達成される。木、板、紙、布の接着、植毛や不織布製造など被着材の少なくとも一方が多孔質材料の場合がその例である。それに対し被着材が非多孔質材料の場合には、先ず少なくとも一方の被着材に本発明の生分解性水分散系接着剤組成物を塗布し直ちに乾燥し、次いでもう一方の被着材をそのまま、あるいは同様に生分解性水分散系接着剤組成物を塗布し直ちに乾燥してから重ね、熱圧することで接着は達成され得る。いわゆるヒートシールによる接着であり、セロファン、PETシート、ナイロンシート、またはアルミ箔、銅箔などの金属箔など、それにもちろん紙、布などの多孔質材料などの接着に適用され得る。
【0052】
これに対し基材に本発明の生分解性水分散系接着剤組成物を塗布し、乾燥することで目的が達成され得る場合がある。紙へ適用した印刷用紙、強光沢紙、耐溶剤紙、防湿紙、磁気記録紙などの作製、木工塗装、建築塗装、船舶塗装などコーティングと呼ばれる場合である。農薬、肥料、殺虫剤、害虫忌避剤などの徐放化のためのコーティングも同様に適用され得る。
【0053】
その他パルプモールド、紙含浸、さらには木材パルプ、繊維屑、皮屑などの水分散液へ接着剤を添加してシートを得る内添法などに本発明の生分解性水分散系接着剤組成物を使う場合も上記手順の変態で、添加、乾燥で行われる。
さらにまた、狭義の接着とは異なるが、本発明の生分解性水分散系接着剤組成物から成形品を造ることもできる。セラミックス製の手袋型に本発明の接着剤組成物を薄層に塗布し、回転しつつ乾燥・熱処理後脱型して得られる、廃棄処理に問題を残さない樹脂手袋はその一例である。
しかし、本発明の生分解性水分散系接着剤組成物の使用方法で行われる乾燥は、該組成物の主成分樹脂をなす脂肪族ポリエステルを主体とする生分解性ポリエステルの融点以上の温度で行い、同ポリエステルを溶融せしめて生分解性水分散系接着剤組成物層を均質な固相とすることが必要である。
【0054】
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物を用いて作られた加工品試料は、生分解性およびリサイクル適性(アルカリ水または酸性水、あるいは単なる水に対する崩壊性)に優れており、例えば以下に示す。
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物の生分解性により、上記加工品試料を望まれるサイズにした上で、土壌、コンポスト、酵素水溶液中などに入れ、放置すれば生分解反応が進行し、被着材または基材も生分解性の場合には、最終的には痕跡を残さないことができる。
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物のリサイクル適性により、被着材または被加工基材が紙、アルミなどの場合は、上記加工品試料をアルカリ水に浸漬し、場合によっては加温することにより生分解性水分散系接着剤組成物層中の樹脂分(生分解性ポリエステル)を加水分解して紙、アルミなどだけを回収し、それらをリサイクル使用に供することができる。
【0055】
本発明の生分解性水分散系接着剤組成物は、連続相が水よりなり、作業の容易さ、作業環境汚染の少ないことで溶剤系接着剤と異なり優れている。また、本発明の生分解性水分散系接着剤組成物には、ポリイソシアネート類化合物が配合されているため、それから形成される接着層またはコーティング層はそれら自身強靱化され、さらに被着材または基材に強固に接着し、ポリイソシアネート類化合物が配合されていない生分解性水分散系接着剤組成物の場合に比べて優れた接着強度性能が発揮される。さらに、本発明の生分解性水分散系接着剤組成物は、脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性ポリエステルの水分散液(固形分)を主体とするため、廃棄された場合に環境中の微生物によって分解、消失され、地球に余分な負荷を与えない利点を有する。被着材および基材が生分解性材料の場合には接着加工物またはコーティング加工物が問題なく廃棄することができるので好ましい。
なお、本発明の生分解性水分散系接着剤組成物は、アルカリ水崩壊性を有し被加工基材のリサイクル適性を可能とする点で、省資源という社会ニーズにも応えるものである。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、それらは例示であって、本発明を限定するものではない。なお、特記しない限り、%は重量百分率である。
【0057】
生分解性試験:特記しない限り、生分解性試験はISO−14855の方法によった。ただし、試料は本発明の生分解性水分散系接着剤組成物をシリコーン離型紙上へ8ミルのアプリケーターで流涎し、直ちに融点+30℃の熱風循環式乾燥機で3分間乾燥し、1時間後、塗膜付シリコーン離形紙を被着体上に置き、6±/MPa(60±10kg/cm2)、融点+30〜40℃、3分間熱圧着したものである。但し、融点60℃の場合、この加圧は省略した。
【0058】
固形分濃度;105℃、2時間乾燥させた時の蒸発残分(%)を固形分濃度とした。
【0059】
粘度;B型粘度計(BM型またはBH型、K.K.東京計器製)の12rpm(BM型)または10rpm(BH型)における測定値を粘度とした。
【0060】
pH;pHメーター(pHメーターF−12、K.K.堀場製作所製)における測定値をpHとした。
【0061】
平均粒子径;動的光散乱法(マイクロトラック分析計FRA、リーズアンドノースラップ社製)により得られる体積平均値を平均粒子径とした。
【0062】
数平均分子量;以下条件によるGPC法による値である。測定装置;Shodex System−11、カラム;Shodex GPC K−801およびK−806M(2本)、溶離液;クロロホルム、検出器;Shodex RI、標準ポリマーPMMA(Shodex Standard M−75)、操作条件;試料濃度0.2%、流速1.0ml/min、注入量100μl、温度40℃。
【0063】
90°剥離接着強度;15mm巾の試料を引張試験機(テンシロンRTA100、オリエンテック社製)に装置し、試料と剥離面が90°となるように300mm/minで引っ張った時(以下、90°剥離試験という)の接着力を90°剥離接着強度とした。
【0064】
(実施例1)
ポリブチレンサクシネート・アジペート水分散液(ポリブチレンサクシネート・アジペートのジイソシアネートによる増粘品;数平均分子量=4.62×104、融点=95℃、ビオノーレ#3050、昭和高分子 K.K.製。乳化剤;部分鹸化ポリビニルアルコール、平均重合度=2,000、鹸化度=88モル%、クラレポバール220E、K.K.クラレ製。固形分濃度=53.0%、平均粒子径=1.50μm、粘度=2,500mPa・s/23℃、pH=5.3)100gに水分散性脂肪族ポリイソシアネート(イソシアネート含有率=20.0%、アクアネートAQ110、日本ポリウレタン工業 K.K.製)3gを予め1gの水を加えて乳濁状として加え、撹拌棒でよく撹拌し生分解性水分散系接着剤組成物を調製した。1時間後、この組成物をセロファン(厚さ=17μm、レンゴー K.K.製)上に3ミルのアプリケーターで塗布し、直ちに130℃の熱風循環式乾燥機で3分間乾燥した。1時間後、得られた組成物の塗膜付セロファン2枚を塗布面同士を向き合わせヒートシールテスター(TP−701−Bヒートシールテスター、テスター産業 K.K.製)で130℃、0.2MPa、10s熱圧着してヒートシール加工品試料を得た。この試料を20℃、65%RH中に24時間放置し、90°剥離試験を行ったところ、セロファンが切断し、充分な接着強度が得られた。また生分解性は38.0%(24日後)であった。
【0065】
(比較例1)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない他は、実施例1と同様にして実験したところ、得られたヒートシール加工品試料の90°剥離接着強度は100g/15mm巾、生分解性は64.4%(24日後)であった。
【0066】
(実施例2)
ポリカプロラクトン水分散液(ポリカプロラクトン;数平均分子量=5.90×104、融点=60℃、セルグリーンPH−5、ダイセル化学工業 K.K.製。乳化剤;部分鹸化ポリビニルアルコール、鹸化度=79モル%、平均重合度=2,000、K.K.クラレ製。固形分濃度=57.1%、平均粒子径=1.9μm、粘度=10,300mPa・s/21℃、pH=5.3)100gに上記実施例1と同じ水分散性脂肪族ポリイソシアネート3gを予め1gの水を加えて乳濁状として加え、充分撹拌して生分解性水分散系接着剤組成物を調製した。調製後から塗布までの放置時間を1時間、24時間および38日とし、実施例1と同様に、ただし温度は90℃にしてセロファンのヒートシールを行い、得られたヒートシール加工品試料を実施例1と同条件で90°剥離試験を行い、測定した90°剥離接着強度と、塗布時生分解性水分散系接着剤組成物のイソシアネート基濃度(PHR/生分解性水分散系接着剤組成物の固形分)と共に表1に示す。
【0067】
【表1】
Figure 0004745540
【0068】
生分解性は、74.0%(24日後)であった。なお、上記ヒートシール加工品試料を3×5cmに切り出したものを土壌に埋め込んで測定した生分解性は64%(24日後)であった。ただし、土壌は茨城県東茨城郡羽鳥美野里町由木のSDSみのり農場の土壌(火山灰灰土)を最大容水量の50%含水比として、試料と試験土壌との重量比は1:400とし、25℃での重量減少率から生分解性を測定した。
【0069】
(比較例2)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない他は、実施例2と同様に実験したところ、得られたヒートシール加工品試料の90°剥離接着強度は200g/15mmとなり、また生分解性は100%(8日後)となった。以上の値は、接着剤組成物調製後から塗布までの放置時間を1時間、24時間および38日後と変えても変動しなかった。
【0070】
(実施例3)
ポリブチレンサクシネート・アジペート水分散液(ポリブチレンサクシネート・アジペート;数平均分子量=18,600、融点=95℃、ビオノーレ#3050のジイソシアネート未増粘品、昭和高分子 K.K.製。乳化剤;ポリエチレンオキシドアルキレンアルキルエーテル、融点=50℃、ノイゲンDKS NL−85、第一工業製薬 K.K.製。固形分濃度=31.5%、平均粒子径=1.3μm、粘度=3,560mPa・s/20℃、pH=5.4)100gにヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー(パーノックDN−990、大日本インキ化学工業 K.K.製)1g、アジピン酸ジアルキルエステル(アデカサイザーRS−107、旭電化工業 K.K.製)1g、および活性水素を持たないポリエチレンオキシド系非イオン性界面活性剤(ノイゲンEA−160アセチル化物、第一工業製薬 K.K.製)0.1gの混合物を加えホモミキサー(T.K.ロボミキサー、特殊機化工 K.K.製)にて強制撹拌混合し、生分解性水分散系接着剤組成物を調製した。1時間放置後、これを上質紙(米坪量70g/m2)上に3ミルのアプリケーターで塗布し、直ちに105℃に調整した熱風循環式乾燥機で3分間乾燥した。1時間後、この塗布面にもう一枚の上記と同じ上質紙を重ね、実施例1と同様の条件によりヒートシールテスターで熱圧着した。得られたヒートシール加工品試料を実施例1と同一条件で測定したところ、90°剥離試験では紙層が破れた。さらに上記ヒートシール加工品試料を20℃の水に10分間浸漬しても接着部分に剥離は見られなかった。また生分解性は49.7%(24日後)、さらにまた実施例2と同一条件で行った土壌中の生分解性は93.0%(49日後)であった。
【0071】
(比較例3)
上記ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーを用いない他は、実施例3と同様に実験したところ、得られたヒートシール加工品試料の90°剥離試験では紙破、ただし試料の水浸漬後には接着部分が自然剥離した。また生分解性は84.0%(24日後)であった。
【0072】
(実施例4)
ポリ乳酸水分散液(ポリ乳酸;数平均分子量=7.58×104、融点=175.6℃、ラクティ5000、SPM71215−24、K.K.島津製作所製。ロジン系タッキファイヤー;スーパーエステルA−110、融点約100℃、荒川化学工業K.K.製をポリ乳酸に20PHR添加。乳化剤;スルホン酸変性部分鹸化ポリビニルアルコール、平均重合度=1,500、鹸化度=88モル%、クラレSポバール、K.K.クラレ製。固形分濃度=31.3%、平均粒子径=2.2μm、粘度=10,500mPa・s、pH=5.0)100gに水分散性脂肪族ポリイソシアネート(イソシアネート含有率=17.4%、バイヒジュール3100、住友バイエルウレタン K.K.製)2gを予め1gの水を加えて乳濁状として加え、充分撹拌して生分解性水分散系接着剤組成物を調製した。1時間後、この組成物をPETフィルム(厚さ=50μm、東洋紡エステルフィルムE−5100、東洋紡績 K.K.製)上に3ミルのアプリケーターで塗布し、直ちに205℃に調整した熱風循環式乾燥機に3分間入れ乾燥した。1時間後、この塗布面にもう一枚のPETフィルムを重ね、実施例1と同様の条件(但し温度は180℃)によりヒートシールテスターで熱圧着した。得られたヒートシール加工品試料を実施例1と同一条件で測定したところ、90°剥離試験でPETが破断した。生分解性は84.0%(24日後)となった。続いて上記ヒートシール加工品試料を5cm角に切り、0.1N苛性ソーダ水溶液中に室温下一昼夜浸漬したところ、PETフィルムが剥離して得られた。
【0073】
(比較例4)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない他は、実施例4と同様に実験したところ、得られたヒートシール加工品試料は自然剥離した。生分解性は94.0%(8日後)であった。
【0074】
(実施例5)
ポリブチレンサクシネート・アジペート水分散液(ポリブチレンサクシネート・アジペート;数平均分子量=7.0×104、融点=95℃、ビオノーレ#3001、昭和高分子 K.K.製。乳化剤;部分鹸化ポリビニルアルコール;数平均重合度=2,000、鹸化度=88モル%、クラレポバール220E、K.K.クラレ製。固形分濃度=57.0%、平均粒子径=1.2μm、粘度=80,100mPa・s/20℃、pH=5.6)100gに水分散性脂肪族ポリイソシアネート(イソシアネート含有率=17.0%、アクアネートAQ−210、日本ポリウレタン工業 K.K.製)2gを予め1gの水を加えて乳濁状として加え、充分撹拌して生分解性水分散系接着剤組成物を調製した。1時間後にこの組成物をコットンデニム(270g/m2)上に12ミルのアプリケーターで塗布し、レーヨンパイル(1.5デニール、0.6mm長)を5万ボルトアップ方式により全面植毛した。しかる後110℃、5分、続いて130℃、5分間熱処理し植毛加工品試料を得た。JIS L−1084(45R法)による植毛強さ試験は、1000回摩擦後で、常態時、湿潤時共に外観変化は認められなかった。生分解性は36.0%(24日後)であった。
【0075】
(比較例5)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない以外は、実施例5と同様に実験したところ、得られた植毛加工品試料の植毛強さは、常態時では1000回摩擦後外観変化なし、湿潤時は100回摩擦でパイルの剥落が認められた。生分解性は56.0%(24日後)であった。
【0076】
(実施例6)
実施例5の生分解性水分散系接着剤組成物を綿ブロード#40にコーティングバー#72で塗布し、その上に同じく綿ブロード#40を重ね、重さ約6kgのゴムローラーを5往復後、130℃に調整した熱風循環式乾燥機に3分間入れ、乾燥熱処理して綿ブロード接着試料を得た。この試料の90°剥離試験、および引張試験(ただし何れもクロスヘッドスピード=300mm/min、オリエンテック製テンシロンRTA100による)の結果は、共に綿ブロードが切断し、充分な接着が行われていた。
【0077】
(比較例6)
水分解性脂肪族ポリイソシアネートを用いない以外は、実施例6と同様に実験したところ、得られた綿ブロード接着試料は90°剥離接着強度=400g/10mm、抗張力=1,300g/10mmであり、綿ブロードの破壊には至らなかった。
【0078】
(実施例7)
実施例2の生分解性水分散系接着剤組成物にさらにクレー、スターチ、ピロリン酸ソーダおよび水を加えて撹拌混合し、印刷用紙用の塗工液を調製した。その処方は次の通りである。実施例2の生分解性水分散系接着剤組成物53.7g、クレー250g、スターチ10%水溶液150g、ピロリン酸ソーダ10%水溶液1g、水284gである。この塗工液を調製し、1時間後(実施例2の生分解性水分散系接着剤組成物調製24時間後)にバーコーター#18で上質紙(70g/m2)上に塗布し、直ちに105℃、3分、次いで130℃、3分間熱処理し、キャレンダー処理(97〜99℃、4MPa、2回通し)後、20℃、65%RH中に一昼夜放置後に印刷用紙塗工試料を得た。試料の印刷用紙性能を評価し、その結果は表2に示すように、アルカリ水加水分解によるパルプ分リサイクル適性を損なうことなく印刷時塗工層強度を示すIGTピック値および耐水性で優れていた。
【0079】
【表2】
Figure 0004745540
【0080】
(比較例7)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない以外は、実施例7と同様に実験し、表2に示すような結果を得た。
【0081】
(実施例8)
実施例1および実施例2の生分解性水分散系接着剤組成物それぞれにタルク(ハイトロン、竹原化学工業K.K.製)を固形分単位で等量加え、水を加えて有効成分40%の防湿加工用塗工液を調製した(それぞれ実施例8の1および実施例8の2とする)。1時間後、2ミルのアプリケーターを用い上質紙(70g/m2)上にこれを塗布し、熱風循環式乾燥機で130℃、3分間乾燥熱処理した。次いでこれを平板プレスで熱圧し、防湿加工用塗工試料とした。この試料をJISZ−0208によって透湿性を測定し、その結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
Figure 0004745540
【0083】
(比較例8)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない他は、実施例8と同様に実験し、得られた試料の透湿性を測定した。透湿性の測定結果は表3の通りであった。ただし、実施例1の生分解性水分散系接着剤組成物を用いて、上記水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない場合を比較例8の1、実施例2の生分解性水分散系接着剤組成物に対応する場合を比較例8の2とした。
【0084】
(実施例9)
実施例1のポリブチレンサクシネート・アジペート水分散液、および実施例2のポリカプロラクトン水分散液のそれぞれに、同上実施例で用いた水分散性脂肪族ポリイソシアネートを上記水分散液の固形分に対し10PHRになるように加え、充分攪拌し、さらに水を加えて有効成分10%なる含浸用液を調製した(それぞれ実施例9の1および実施例9の2とする)。10分後、ここへ含浸用原紙(米坪量104g/m2、ノーサイズ紙)を2分間浸漬し、引き上げて自然流下分を除き、直ちに130℃の熱風循環式乾燥機で5分間、乾燥熱処理し、生分解性ポリエステル含浸紙を得た。20℃、65%RH中に24時間放置後、JISP−8115による耐折強さを、またJIS P−8113による引張強さを同上雰囲気中で測定し、表4に示す結果を得た。
【0085】
【表4】
Figure 0004745540
【0086】
(比較例9)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない他は、実施例9と同様に実験し、表4に示す結果を得た。なお、実施例1の生分解性ポリエステルの水分散液を用いて、上記水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いない場合を比較例9の1、実施例2の生分解性ポリエステルの水分散液に対応する場合を比較例9の2とした。
【0087】
(実施例10)
ポリブチレンサクシネート・アジペート水分散液(ポリブチレンサクシネート・アジペートのジイソシアネートによる増粘品、数平均分子量=2.2×104、融点=98.5℃、ビオノーレ3050試作品、昭和高分子K.K.製。乳化剤;部分鹸化ポリビニルアルコール、平均重合度2,000、鹸化度=88モル%、クラレポバール220E、K.K.クラレ製。固形分濃度=45.9%、平均粒子径=0.67μm、粘度=1,200mPa・s/23℃、pH=5.6)100gに水分散性脂肪族ポリイソシアネート(イソシアネート含有量=20.0%、アクアネートAQ−110、日本ポリウレタン工業K.K.製)4gを予め1gの水を加えて乳濁状として加え、ガラス棒でよく攪拌し、生分解性水分散系接着剤組成物を調製した。1時間後、この組成物を上質紙(米坪量70g/m2)上に3ミルのアプリケーターで塗布し、直ちに130℃に調整した熱風循環式乾燥機で5分間乾燥熱処理した。24時間後、この塗布面にもう一枚の上質紙を重ね、温度を120℃とした以外は実施例1と同様の条件でヒートシールを行った。1時間後に接着面を剥離したところ、素材の紙層で破壊した。生分解性は、48.2%(24日後)であった。
【0088】
(比較例10)
水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いること以外、実施例10と同様に実験した。接着面は10g/15mmという僅かな抵抗を示すのみで簡単に界面剥離した。生分解性は、81.8%(24日後)であった。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、生分解性およびリサイクル適性を損なわず、かつ取扱い作業者、作業周辺環境等を汚染しない水分散液を維持した上で、実用上要求される充分な接着強度を常態のみでなく湿潤状態においても示す生分解性水分散系接着剤組成物が提供される。
また本発明によれば、接着力の低下をまねくことなく、サブミクロン領域の微粒子よりなる生分解性水分散系接着剤組成物が提供される。

Claims (13)

  1. 脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性ポリエステルの水分散液100重量部(固形分)にポリイソシアネート類化合物1重量部以上を配合してなる生分解性水分散系接着剤組成物。
  2. 生分解性ポリエステルが、下記の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
    Figure 0004745540
    (式中、R1およびR2は、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数5または6の脂環式炭化水素基である)
  3. 生分解性ポリエステルが、下記の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
    Figure 0004745540
    (式中、R5は、水素、炭素数1〜19のアルキル基または炭素数1〜19のアルケニル基であり、nは1〜約4の値である)
  4. 生分解性ポリエステルが、少なくとも下記単位
    Figure 0004745540
    (式中、R3は、ジイソシアネート残基である)
    および/または下記単位
    Figure 0004745540
    を介して請求項2に記載の繰り返し単位および/または請求項3に記載の繰り返し単位が結合した構造を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  5. 生分解性ポリエステルが、少なくとも下記単位
    Figure 0004745540
    および/または下記単位
    Figure 0004745540
    および/または下記単位
    Figure 0004745540
    (式中、R4は、炭素数2〜6のアルキレン基である)
    を介して請求項2に記載の繰り返し単位および/または請求項3に記載の繰り返し単位が結合した構造を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  6. 生分解性ポリエステルの数平均分子量が、18,000以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  7. 生分解性ポリエステルを水分散化する際に用いられる乳化剤が、イソシアネート基と反応し化学結合する活性水素を含むことを特徴とする請求項1に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  8. 乳化剤が、ポリビニルアルコール類であることを特徴とする請求項7に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  9. ポリイソシアネート類化合物が、水分散性であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  10. ポリイソシアネート類化合物に予め可塑剤および/またはさらにイソシアネート基と反応する活性水素を持たない界面活性剤を加えておくことを特徴とする請求項9に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  11. ポリイソシアネート類化合物を配合した後で、室温下放置または加熱してイソシアネート基濃度が初期より低下することを特徴とする請求項1に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  12. イソシアネート基濃度が、最終的に赤外線分析法において感知されなくなっても接着強度向上を有することを特徴とする請求項11に記載の生分解性水分散系接着剤組成物。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の生分解性水分散系接着剤組成物を生分解性材料同士の接着に使用することを特徴とする接着方法。
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