JP4744786B2 - 高周波電力増幅モジュール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の無線通信装置の送信部に使われる高周波電力増幅器に係り、特にバイアス制御回路を備えた高周波電力増幅モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信システムにおける携帯電話等の無線通信装置で使用される高周波電力増幅器は、大きく分けて高周波電力を増幅する高周波電力増幅部と同増幅部に直流電圧を供給するバイアス制御部の2つに分けられる。そして、これらを1個のモジュール基板に搭載し、高周波電力増幅モジュールとして構成することが一般的に行なわれている。
【0003】
バイアス制御部は、温度変化等の環境の変化に対し高周波電力増幅部が安定した高周波特性を維持するように同増幅部の動作電流、動作電圧等を制御する役割を担っており大変重要である。高周波電力増幅部の制御は、通常、同増幅部を構成する半導体素子の入力側のバイアス電圧を変えることによって行なわれる。
【0004】
バイアス電圧は、バイアス制御部からバイアス供給線路を経て、高周波電力増幅部に供給される。このとき、バイアス供給線路を通ってバイアス制御部に高周波信号が漏洩すると、バイアス制御部は、その漏洩信号によって動作不安定になり、漏洩量が多いと誤動作を起こすに至る。
【0005】
高周波信号によるそのような誤動作を抑えるため、バイアス供給線路に直列インダクタンスを挿入することが行なわれる。それによって、バイアス供給線路が高周波信号の周波数において高インピーダンスになり、バイアス制御部に到達する高周波信号が減衰する。従来、このインダクタンスに、チップ素子や、半導体素子中に形成したスパイラル構造が用いられてきた。
【0006】
なお、モジュール基板上に形成した配線用のボンディングワイヤをインダクタンスとして用いる例がある。バイアス供給線路用ではないが、半導体増幅素子の配線の一部にこのようなボンディングワイヤによるインダクタンスを用いた例が特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−224660号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
バイアス供給線路に直列インダクタンスを挿入する高周波電力モジュールは、例えば図10に示すように構成することができる。バイアス制御部104から2段増幅の高周波電力増幅部103へのバイアス供給が、インダクタ908,909によるバイアス供給線路を介して行なわれる。
【0009】
ところで、携帯電話等の無線通信装置に用いる高周波電力増幅モジュールは、現在小型軽量化が急速に進んでいる。そのような状況の中で、インダクタ908,909に従来技術で説明したチップインダクタンス部品を使用する場合、小型化が進むモジュール基板上に比較的大きいインダクタンスチップ部品を載せる為に他の部品搭載の自由度が制限される等の問題がある。
【0010】
また、インダクタ908,909に、半導体素子中に形成したスパイラル構造のインダクタを用いる場合は、インダクタンス値を一定量得ようとすると細いパターンで形成することになってインダクタンスの抵抗成分が増加するため、バイアスの電圧降下が発生し、更には半導体面積が大きくなってチップ価格が上昇する等の問題がある。
【0011】
更に、インダクタ908,909にボンディングワイヤを利用する場合は、モジュール基板上で確保可能な長さに制限があるため、十分なインダクタンスの値が取れず、高周波信号の減衰が不十分とならざるを得ない。
【0012】
本発明の目的は、モジュール基板面積を増大させることなく、バイアス制御部と高周波電力増幅部を結ぶバイアス供給線路において高周波信号に十分な減衰を与える高周波電力増幅モジュールを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、バイアス制御部と高周波電力増幅部を結ぶバイアス供給線路に、接地に対してキャパシタンス成分を持たせた少なくとも1個のボンディングパッドと、該ボンディングパッドを仲介して形成したボンディングワイヤとを用いることによって効果的に解決することが可能である。
【0014】
このような手段を採用すれば、ボンディングパッドによるキャパシタンスとボンディングワイヤによるインダクタンスとで低域通過フィルタが形成されるので、高周波信号に十分な減衰を与えることができるからである。また、ボンディングパッドやボンディングワイヤは、モジュール基板上に自由に配置することができ、占有面積も小であるので、モジュール基板面積を増大させないで済む。なお、接地に対してキャパシタンス成分を持つボンディングパッドは、例えば、ボンディングパッドをモジュール基板上に形成し、更にモジュール基板のボンディングパッドとは反対側の面に接地導体を設けることによって実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高周波電力増幅モジュールを図面に示した発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。なお、図1,2,5〜7,9及び10における同一の符号は、同一物又は類似物を表示するものとする。
【0016】
図1に、モジュール基板に2段増幅の高周波電力増幅部を搭載した実施形態を示す。図1において、110はモジュール基板、103は、増幅を初段及び後段を経て行なう2段増幅の高周波電力増幅部、104は高周波電力増幅部103に直流バイアスを供給するバイアス制御部、108,109は、バイアス制御部104と高周波電力増幅部103を結ぶバイアス供給線路を示す。以上の各部をモジュール基板110に搭載して高周波電力増幅モジュールが構成される。なお、高周波電力増幅部103及びバイアス制御部104は、それぞれ半導体集積回路により構成される。
【0017】
高周波信号は、高周波入力端子(RF IN)101から入力され高周波電力増幅部103で増幅され高周波出力端子(RF OUT)102から出力される。バイアス制御部104用直流電圧は、直流入力端子(Vbias)107から入力される。同直流電圧は、バイアス制御部104で2段増幅の初段バイアス、後段バイアスに変換され、各々バイアス供給線路109,108を通って高周波電力増幅部103の初段及び後段に供給される。
【0018】
バイアス供給線路108,109は、接地に対してキャパシタ成分を持つボンディングパッド106を仲介して形成したボンディングワイヤ105からなり、ボンディングワイヤ105がインダクタンスを呈する。ボンディングワイヤ105がボンディングパッド106をたどることによって丁度縫い目のような形状が形成されるので、以下では、バイアス供給線路を改めて「ステッチ(stitch:縫い目)構造インダクタンス」と称することとする。
【0019】
このステッチ構造インダクタンス108、109の詳細を図2に示す。ボンディングワイヤ105と接地に対してキャパシタ成分を持つボンディングパッド106を誘電体基板503上に一組以上直列接続することでステッチ構造インダクタンスが構成される。誘電体基板503のボンディングパッド106とは反対側の面に接地導体505が設けられる。
【0020】
図3にこのステッチ構造インダクタンスの等価回路を示す。ここでボンディングワイヤ105はインダクタンス601で表され、接地導体505とボンディングパッド106間で形成される容量がキャパシタンス606で表される。また、接地導体505が接地605で表される。
【0021】
図3の等価回路は、直列接続のインダクタンスの接続点と接地の間にキャパシタンスを接続した低域通過フィルタを構成している。従って、ステッチ構造インダクタンスを通過する高周波信号に対して十分な減衰を与えることができる。このことは、ステッチ構造インダクタンスが等価的に、同じ減衰を与える単体のインダクタ、即ちインダクタンス値が大きい、高インピーダンスのインダクタになったと言い換えることができる。
【0022】
図2及び図3で説明した回路では、図1の高周波電力増幅器部103とステッチ構造インダクタンス108、109との接続部分、及びバイアス制御部104とステッチ構造インダクタンス108、109との接続部分がボンディングワイヤ105となっているが、図4に別の構造のステッチ構造インダクタンスの等価回路を示す。ここでは、両端がパッド部分とグランド部分1005で構成されるキャパシタンス1007を有した構造となっている。構造の中間は、インダクタンス1001とキャパシタンス1006で構成される。
【0023】
図2及び図3に示したステッチ構造インダクタンスは、図1に示した構成の他に、図5〜図7に示すように構成することが可能である。
【0024】
図5は、高周波電力増幅部103の後段にのみステッチ構造インダクタンス108を用いた例である。初段は信号のレベルが低いので、初段から漏洩する高周波信号が問題にならない場合があり、図5の構成はそのような場合に適用される。
【0025】
図6は、ステッチ構造インダクタンス108を半導体集積回路による高周波電力増幅部103の半導体基板上に形成した例である。この場合は、ステッチ構造インダクタンス108のキャパシタンスは、半導体基板に形成した絶縁層を挟んで形成される。なお、ステッチ構造インダクタンス108のパッド106は、上記とは別に半導体基板上とモジュール基板110上とに分けて設けても良い。
【0026】
図7は、ステッチ構造インダクタンス108を半導体集積回路によるバイアス制御部104の半導体基板上に形成した例である。半導体基板には、バイアス制御回路本体404が搭載される。
【0027】
また、図示していないが、高周波電力増幅部とバイアス制御部を同一の半導体基板に形成した半導体集積回路として構成する場合は、ステッチ構造インダクタンスは同半導体基板上に形成される。
【0028】
なお、ステッチ構造を実現するために、全てステッチ構造が同一基板内で構成されるのでなく、図8に示すように、ステッチ構造を持つ第1の誘電体基板(サブ基板)703から第2の誘電体基板基板702への相互の接続とすることも可能である。第1の誘電体基板703にボンディングパッド704及び接地導体707が形成され、第2の誘電体基板702にボンディングパッド705及び接地導体706が形成され、各ボンディングパッド間にボンディングワイヤ701が接続される。
【0029】
また、バイアス制御部104は、具体的には図9に示すように、直流入力端子107から入力される直流電圧をトランジスタ素子を用いてバイアス電圧に変換する回路で構成される。なお、本発明はこのような回路に限定することなく、直流電流を出力するバイアス制御回路等どのような回路形式であっても有効である。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、バイアス制御部と高周波電力増幅部を結ぶバイアス供給線路が等価的に低域通過フィルタを形成するので、バイアス制御部への高周波信号の漏洩が抑えられ、従って、バイアス制御部の安定動作が得られる。それにより、高周波電力増幅部の高周波特性を良好に保つことができる。また、キャパシタンスを持つボンディングパッドを仲介して形成する併用したボンディングワイヤの採用により、インダクタンスチップ部品やスパイラルインダクタを用いた場合、或いは、ボンディングワイヤ単体で構成した場合のような実装面積の増加が回避されるので、小型軽量で低コストの高周波電力モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波電力増幅モジュールの発明の実施の形態を説明するためのブロック図。
【図2】本発明の高周波電力増幅モジュールに使用するステッチ構造インダクタンスを説明するための図。
【図3】図5のステッチ構造インダクタンスの等価回路を説明するための回路図。
【図4】別の構成のステッチ構造インダクタンスを説明するための回路図。
【図5】本発明の高周波電力増幅モジュール回路の他の実施例を示すブロック図である。
【図6】本発明の高周波電力増幅モジュールの別の発明の実施の形態を説明するためのブロック図。
【図7】本発明の高周波電力増幅モジュールの更に別の発明の実施の形態を説明するためのブロック図。
【図8】本発明の高周波電力増幅モジュールに使用する別の構成のステッチ構造インダクタンスを説明するための図。
【図9】本発明の高周波電力増幅モジュールに使用するバイアス制御部の例を説明するためのブロック図。
【図10】バイアス供給線路をインダクタ単体で構成した高周波電力増幅モジュールの例を説明するためのブロック図。
【符号の説明】
101…高周波入力端子、102…高周波出力端子、110…モジュール基板、103…高周波電力増幅部、104…バイアス制御部、108,109…ステッチ構造インダクタンス、107…直流入力端子、105…ボンディングワイヤ、106…ボンディングパッド、503…誘電体基板、505…接地導体、601…インダクタンス、606…キャパシタンス。

Claims (6)

  1. モジュール基板と、高周波信号を電力増幅かつ、上記モジュール基板上に配置された高周波電力増幅部と、該高周波電力増幅部の動作をバイアス電圧によって制御かつ、上記モジュール基板上に配置されたバイアス制御部と、該バイアス制御部から上記高周波電力増幅部にバイアス電圧を供給するためのバイアス供給線路とを具備し、
    上記バイアス制御部は、入力される直流電圧をトランジスタ素子によってバイアス電圧に変換して出力するバイアス電圧出力回路を備え、
    上記高周波電力増幅部と上記バイアス電圧出力回路とは上記バイアス供給線路によって互いに接続され、
    上記バイアス供給線路は、接地に対してキャパシタンス成分を持つ複数のボンディングパッドと、該複数のボンディングパッドを仲介して互いに直列に接続するように形成され複数のボンディングワイヤとによって構成され、
    上記バアス供給線路は、上記バイアス電圧出力回路と共に上記高周波電力増幅部から上記バイアス制御部へ漏洩する高周波信号に対して減衰を与える低域通過フィルタとして作用することを特徴とする高周波増幅モジュール。
  2. 上記高周波電力増幅部は、半導体素子基板に形成した半導体集積回路として構成されており、上記バイアス供給線路は、該半導体素子基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波増幅モジュール。
  3. 上記バイアス制御部は、半導体素子基板に形成した半導体集積回路として構成されており、上記バイアス供給線路は、該半導体素子基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波増幅モジュール。
  4. 上記高周波電力増幅部及び上記バイアス制御部は、同一の半導体素子基板に形成した半導体集積回路として構成されており、上記バイアス供給線路は、該半導体素子基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波増幅モジュール。
  5. 上記バイアス供給線路は、上記モジュール基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波増幅モジュール。
  6. 上記モジュール基板上に更にサブ基板を有し、上記少なくとも1個のボンディングパッドの内の複数のボンディングパッドにおいて、該複数のボンディングパッドの一部が上記モジュール基板上に形成され、該複数のボンディングパッドの残りの一部が上記サブ基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波増幅モジュール。
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