JP4737885B2 - モジュール用基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱量の大きな半導体素子を搭載するためのモジュール用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やSIT(静電誘導トランジスタ)のような動作時に多量の発熱を伴う電力用半導体素子を実装する基板として、絶縁性基板と放熱板とを備えた放熱特性に優れるモジュール用基板が用いられている。
【0003】
図4は、この種のモジュール用基板が用いられたパワーモジュールを模式的に示した断面図である。
このパワーモジュール40では、絶縁性基板42の一主面に導体回路45が形成されるとともに、応力緩和層47の上に半田層48を介して半導体素子46が搭載されており、導体回路45と半導体素子46とは、ワイヤー45aを用いたワイヤーボンディングにより接続されている。
また、モジュール用基板400は、絶縁性基板42と、放熱板41と、両者を接合するためのニッケルメッキ層44と接合層(図示せず)とから構成されている。
【0004】
従来、このようなパワーモジュール40を構成する部材には熱伝導率に優れる材料が使用されており、具体的には、導体回路45用の金属としては銅が使用されており、絶縁性基板42としては窒化アルミニウム基板が使用されており、放熱板41としては炭化珪素とアルミニウムとの複合体等が使用されていた。
このような材料からなるパワーモジュール40は、スイッチング等の動作により半導体素子46に多量の熱が発生すると、この発生した熱は、絶縁性基板42及び放熱板41を介して外部に放散され、半導体素子46の過度の温度上昇を防止することができるようになっている。
【0005】
しかしながら、このような構造からなる従来のパワーモジュールは、放熱板と半導体素子との間の熱交換をスムーズに行うことができず、半導体素子の冷却効率が充分なものとはいい難かった。そのため、例えば、上記半導体素子が自動車用のIGBTのように容量が大きく、発熱量の大きなものである場合、上述したような構造の従来のパワーモジュールでは、上記半導体素子で発生する熱を充分に冷却させることができず、上記半導体素子が高温化して熱破壊されることがあった。
【0006】
また、放熱板と絶縁性基板との間の接着強度も充分なものではなかったため、半導体素子の半田付け等の工程や、使用時の半導体素子の発熱等により温度サイクルを受けたとき、放熱板と絶縁性基板との熱膨張係数の差に起因する熱応力により、放熱板と絶縁性基板との間にクラックが発生することがあった。
さらに、このように放熱板と絶縁性基板との間にクラックが発生すると、半導体素子で発生した熱が、ますます冷却されにくくなり、半導体素子の温度が過度に上昇して熱破壊されやすくなっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、放熱部材及び/又は放熱板の熱伝導率が充分に高く、放熱部材又は放熱板と絶縁性基板との接着強度にも優れ、かつ、半導体素子の冷却効率に優れるため、発熱量の大きい半導体素子を搭載するための基板に好適に用いることができるモジュール用基板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明は、一主面に導体回路が形成された絶縁性基板と、上記絶縁性基板の他の主面に接着層を介して接合された放熱部材とを含む、半導体素子を搭載するためのモジュール用基板であって、
上記放熱部材は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなり、上記接着層との界面に粗化面が形成されるとともに、空冷による放熱手段を備えていることを特徴とするモジュール用基板である。
【0009】
また、第二の本発明は、一主面に導体回路が形成された絶縁性基板と、上記絶縁性基板の他の主面に接着層を介して接合された放熱板とを含む、半導体素子を搭載するためのモジュール用基板であって、
上記放熱板は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなるとともに、上記接着層との界面に粗化面が形成されており、上記放熱板の下方には空冷による放熱手段を備えた放熱部材が配置されていることを特徴とするモジュール用基板である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、第一の本発明のモジュール用基板について説明する。
第一の本発明のモジュール用基板は、一主面に導体回路が形成された絶縁性基板と、上記絶縁性基板の他の主面に接着層を介して接合された放熱部材とを含む、半導体素子を搭載するためのモジュール用基板であって、
上記放熱部材は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなり、上記接着層との界面に粗化面が形成されるとともに、空冷による放熱手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
第一の本発明のモジュール用基板では、放熱部材を構成する金属又は合金の常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上と非常に高く、また、空冷による放熱手段が備えられているため、上記モジュール用基板の上部に搭載した半導体素子と上記放熱部材との熱交換を非常にスムーズに行うことができ、その結果、上記半導体素子の過度の温度上昇を防止することができ、上記半導体素子の冷却効率に優れたものとなっている。
【0012】
また、上記放熱部材の接着層との界面に形成されている粗化面も、上記半導体素子の冷却効率の向上に寄与している。即ち、上記放熱部材の接着層との界面に粗化面が形成されていると両者の接触面積が大きくなり、その結果、上記放熱部材と接着層との間を熱が伝導しやすくなるのである。
さらに、上記粗化面が形成されることで、上記放熱部材と接着層との間にアンカー効果が働き、上記放熱部材と上記接着層との接着強度が非常に優れたものとなっているため、上記接着層にクラックが発生することもない。
【0013】
図1は、第一の本発明のモジュール用基板の一主面に半導体素子が搭載されたパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
【0014】
図1に示したように、第一の本発明のモジュール用基板100は、その下面に放熱フィン130が設けられた放熱部材13と、その上に接着層14を介して配置された板状の絶縁性基板12と、両者を接合させるための接着層14とから構成され、この絶縁性基板12の上には導体回路15が形成されている。また、図示はしないが、放熱部材13の接着層14との界面には粗化面が形成されている。そして、第一の本発明に係るパワーモジュール10は、モジュール用基板100の導体回路15が形成された面に応力緩和層17を介して半導体素子16が搭載され、この半導体素子16と導体回路15とが、ワイヤー15aを用いたワイヤーボンディングにより接続されている。
【0015】
放熱部材13は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなるものである。
放熱部材13の常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K未満であると、放熱部材13と半導体素子16との間の熱交換をスムーズに行うことができず、モジュール用基板100に発熱量の大きい半導体素子16を搭載したパワーモジュール10において、半導体素子16を好適に冷却させることができない。放熱部材13の熱伝導率は、200W/m・K以上であることがより望ましい。
【0016】
このような熱伝導率を有する金属又は合金としては特に限定されず、例えば、Cu、Al及びSi等の金属や、これらの金属にZr、Fe、P及びZn等が含まれた合金を挙げることができる。
これらのなかでは、Cuを主成分とする合金又はアルミニウムであることが望ましい。熱伝導率に優れ、半導体素子16との間で良好に熱交換することができるからである。具体的には、上記Cuを主成分とする合金はCuとZrとからなる合金であることが望ましい。
【0017】
また、放熱部材13の接着層14との界面には粗化面が形成されている。
上述した通り、このように放熱部材13に粗化面が形成されることで、放熱部材13と接着層14との間にはアンカー効果が働き、放熱部材13と接着層14との接着強度が非常に優れたものとなる。従って、半導体素子16の半田付け等の工程や、使用時の半導体素子16の発熱等により冷熱サイクルを受けた場合であっても、放熱部材13と接着層14との間にクラックが発生することがない。
また、放熱部材13と接着層14との接触面積が大きくなるため、放熱部材13と接着層14との間を熱が伝導しやすくなり、放熱部材13による半導体素子16の冷却効率が優れたものとなる。
上記粗化面の面粗度としては、JIS B 0601に規定されるRaで0.01〜0.5μm程度であることが望ましい。放熱部材13と接着層14との間に好適なアンカー効果を得ることができる範囲だからである。
【0018】
上記粗化面は、黒化還元処理、研磨処理、エッチング処理及びメッキ処理のいずれかの方法により形成されることが望ましい。
なお、これらの具体的な方法については、後述する第一の本発明のモジュール用基板の製造方法において詳しく説明する。
【0019】
また、放熱部材13の下面には、真っ直ぐな溝状の凹部が等間隔に並設された構造の放熱フィン130が形成されているため、放熱部材13は、その表面積が大きくなり、半導体素子16の冷却効率が優れたものとなっている。即ち、放熱部材13を常に低温状態に保つことができ、モジュール用基板100に搭載した半導体素子16が過度に温度上昇しないように制御することができる。
【0020】
また、放熱フィン130の形状は、図1に示したような真っ直ぐな溝状の凹部が等間隔に並設されたものに限定されることはなく、放熱部材の表面積を大きくすることができる形状であれば、例えば、同心円状や螺旋状の凹部が形成された構造や、多数の突起部が形成されたような構造等であってもよい。このような放熱フィンの表面積等は、その熱伝導率や搭載する半導体素子16の発熱量等に併せて適宜決定される。
【0021】
さらに、モジュール用基板100は、図示しない冷却ファンにより、放熱部材13が冷却されるように構成されていることが望ましい。放熱部材13の冷却効率が非常に優れたものとなるため、確実に放熱部材13を低温状態に保持し、半導体素子16が過度に加熱されることを防止することができるからである。
【0022】
接着層14は、放熱部材13と絶縁性基板12との間に設けられ、これらを接合する役割を果たしているのであるが、このような接着層14を構成する材料としては特に限定されず、例えば、金属やセラミック等の接合の際に通常に用いられる半田、ろう材、接着剤等を挙げることができる。なお、接着層14を構成する材料が半田やろう材である場合、その成分中にCuを含むものであることが望ましい。熱伝導率に優れ、放熱部材13との馴染みがよいからである。
また、接着層14の厚さとしては特に限定されず、放熱部材13及び絶縁性基板12の材質、及び、これらの熱伝導率等を考慮して適宜決定されるが、なるべく薄い方が好ましい。
【0023】
絶縁性基板12は、その一主面に導体回路15が形成されるとともに、半導体素子16が搭載され、導体回路15及び半導体素子16間の絶縁性を確保し、また、導体回路15及び半導体素子16と放熱部材13との絶縁性も確保する役割を果たしている。
【0024】
絶縁性基板12は、絶縁材料で、高い熱伝導率を有するものであることが望ましい。
このような材料としては特に限定されず、例えば、窒化物セラミック、炭化物セラミック、金属酸化物等のセラミック材料等を挙げることができる。
【0025】
上記窒化物セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化チタン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、上記炭化物セラミックとしては、例えば、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
また、上記金属酸化物としては、例えば、アルミナ等を挙げることができる。
これらのなかでは、絶縁性基板12を構成する材料は、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素及び金属酸化物から選択される少なくとも1種のセラミックであることが望ましく、窒化アルミニウムからなることが最も望ましい。熱伝導率が150W/m・Kと最も大きいからである。
【0028】
なお、絶縁性基板12を構成する材料として炭化物セラミックを使用した場合、必要により、絶縁層を形成してもよい。炭化物セラミックは特に高純度化しない限り導電性を有しているからである。
【0029】
上記絶縁層としては、酸化物セラミックが望ましく、具体的には、シリカ、アルミナ、ムライト、コージェライト、ベリリア等を使用することができる。
このような絶縁層としては、アルコキシドを加水分解重合させたゾル溶液を絶縁性基板にスピンコートして乾燥、焼成を行ったり、スパッタリング、CVD等で形成してもよい。また、絶縁性基板表面を酸化処理して酸化物層を設けてもよい。
【0030】
このような絶縁層は、絶縁性基板12の表面全体に形成されていてもよいが、少なくとも絶縁性基板12と、導体回路15及び半導体素子16との間に形成されていればよい。導体回路15及び半導体素子16間の絶縁性を確保することができるとともに、導体回路15及び半導体素子16と放熱部材13との絶縁性も確保することができるからである。
【0031】
また、図3は異なる形状の絶縁性基板を有するパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
絶縁性基板は、図3に示したように、導体回路15と半導体素子16が搭載された部分とに形成されたものであってもよい。
このような構造の絶縁性基板32は、図1に示した絶縁性基板12と同様の効果を得ることができるとともに、放熱部材13と絶縁性基板32とが重なる領域が小さくなるため、放熱部材13と絶縁性基板32との熱膨張係数の相違に起因して接着層14に蓄積される熱応力も少なくなり、より接着層14にクラックが発生しにくくなる。
なお、以下の第一の本発明のモジュール用基板の説明において、単に絶縁性基板という場合は、絶縁性基板12及び絶縁性基板32の両方を指すものとする。
【0032】
この場合、少なくとも導体回路15が形成された部分の絶縁性基板32は、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素及び金属酸化物から選択される少なくとも1種のセラミック、又は、絶縁性樹脂であることが望ましく、半導体素子16が搭載された部分の絶縁性基板32は、上記セラミックからなることが望ましい。
導体回路15が形成された部分の絶縁性基板32は、さほど高温に加熱されることがないが、半導体素子16が搭載された部分の絶縁性基板32は、半導体素子16により高温に加熱されるため、絶縁性とともに耐熱性にも優れた材料である必要があるからである。
なお、絶縁性基板32が上述したようなセラミック材料からなる場合、絶縁性基板32は、窒化アルミニウムからなることが最も望ましい。熱伝導率が150W/m・Kと最も大きいからである。
【0033】
上記絶縁性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
【0034】
上記熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0035】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0037】
また、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン等が挙げられる。
さらに、絶縁性基板32は、これらの熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体(樹脂複合体)であってもよい。
【0038】
また、導体回路15が形成された部分の絶縁性基板32が上記絶縁性樹脂からなるものである場合、この絶縁性樹脂は、粗化面を形成することができる樹脂組成物からなることが望ましい。導体回路15をその表面に形成する際、絶縁性基板32と導体回路15との接着強度が優れたものとなるからである。
【0039】
また、接着層14に面した絶縁性基板の界面にも粗化面が形成されていることが望ましい。絶縁性基板と接着層14との間にアンカー効果が働き、これらの接着強度が非常に優れたものとなるとともに、絶縁性基板と接着層14との接触面積が大きくなるため、絶縁性基板及び接着層14間の熱の伝導が良好に行われるからである。
【0040】
絶縁性基板の接着層14との界面に形成される粗化面の面粗度としては、上述した放熱部材13に形成される粗化面と同様であることが望ましい。
また、このような絶縁性基板の粗化面は、絶縁性基板の表面に研磨処理、エッチング等を施すことにより形成することができる。
【0041】
さらに、絶縁性基板の接着層14との界面には、スパッタリング処理、メッキ処理等によりメタライズ処理が施されていることが望ましい。絶縁性基板と接着層14との馴染みがよくなるからである。
上記メタライズ処理に使用される金属としては特に限定されず、例えば、Cu、Ni等が挙げられる。
【0042】
また、導体回路15は、絶縁性基板の表面に単層で形成されていてもよく、絶縁性基板の内部に複数層に分かれて形成されていてもよい。
このような導体回路15の材料としては、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられるが、比較的高い導電率を有するとともに変形抵抗の小さいアルミニウムが好ましい。
また、絶縁性基板と導体回路15との接合は、例えば、Al−Siを含むろう材、半田、接着剤等を用いて行うことができる。
【0043】
半導体素子16としては特に限定されないが、本発明のモジュール用基板100は、放熱特性に特に優れたものであるため、動作時に発熱量の多い半導体素子であることが望ましく、このような半導体素子としては、例えば、IGBT、SIT等が挙げられる。
このような半導体素子16は、上述した絶縁性基板と導体回路15との接合において用いることができるろう材で接合することができる。
【0044】
また、半導体素子16と絶縁性基板との間には、図示したような、応力緩和層17が形成されていることが望ましい。パワーモジュール10の動作時において、半導体素子16は発熱源となるため、半導体素子16と絶縁性基板との熱膨張係数に起因して上記ろう材にクラックが発生しやすくなるが、半導体素子16と絶縁性基板との間に応力緩和層17を設けることで、上記ろう材にクラックが発生することを確実に防止することができる。
このような応力緩和層17を構成する材料としては特に限定されず、例えば、モリブデン等を挙げることができる。
【0045】
以上説明した通り、第一の本発明のモジュール用基板を構成する放熱部材は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなり、接着層との界面に粗化面が形成されるとともに、空冷による放熱手段を備えている。
従って、放熱部材と接着層との間にはアンカー効果が働き、これらの接着強度が非常に優れたものとなる。
また、放熱部材と接着層との接触面積が大きくなるため、放熱部材と接着層との間を熱が伝導しやすくなり、空冷による放熱手段によって低温状態に保たれた放熱部材と半導体素子との間の熱交換をスムーズに行うことができ、半導体素子の冷却効率が優れたものとなる。
【0046】
次に、第一の本発明のモジュール用基板を製造する方法について説明する。
第一の本発明のモジュール用基板を構成する放熱部材は、例えば、上述した金属又は合金からなる板状体に、切削加工を施して、例えば、溝状の凹部を多数並設することで、図1に示したような、空冷による放熱手段(放熱フィン)を備えた放熱部材を作製することができる。このとき、上記切削加工の加工条件は、目的とするモジュール用基板に搭載する半導体素子の発熱量や、上記金属又は合金の熱伝導率等を考慮して適宜決定される。
【0047】
次に、この放熱部材の一方の主面(上記放熱フィンに対向する面)に粗化面を形成する。
上記粗化面を形成する方法としては特に限定されず、例えば、黒化還元処理、研磨処理、エッチング処理及びメッキ処理等を挙げることができる。
【0048】
上記黒化還元処理としては、例えば、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)を含む水溶液からなる黒化浴(酸化浴)、及び、例えば、NaOH(2.7g/l)、NaBH4(1.0g/l)を含む水溶液からなる還元浴を用いて粗化面を形成する方法が望ましい。
【0049】
上記研磨処理としては、例えば、ヤスリ、サンドペーパー等により放熱部材表面を機械的に研磨する方法が挙げられる。
【0050】
また、上記メッキ処理としては、硫酸銅(1〜40g/l)、硫酸ニッケル(0.1〜6.0g/l)、クエン酸(10〜20g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10〜100g/l)、ホウ酸(10〜40g/l)、界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(0.01〜10g/l)を含むpH=9の無電解メッキ浴にて無電解メッキを施し、Cu−Ni−P合金からなる粗化面を形成する方法が望ましい。
この範囲で析出する被膜の結晶構造は針状構造になるため、アンカー効果に優れるからである。この無電解メッキ浴には上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
【0051】
また、上記エッチング処理としては、第二銅錯体及び有機酸からなるエッチング液を酸素共存下で作用させ、放熱板表面を粗化する方法が望ましい。
【0052】
このような方法により放熱部材表面に形成する粗化面の面粗度は、JIS B 0601に規定されるRaで0.01〜0.5μm程度であることが望ましい。放熱部材と、後述する接着層との間に好適なアンカー効果を得ることができる範囲だからである。
【0053】
次に、その一主面に導体回路が形成され、半導体素子を搭載するための絶縁性基板を作製する。
上記第一の本発明のモジュール用基板において説明した通り、上記絶縁性基板を構成する材料としては、窒化物セラミック、炭化物セラミック及び金属酸化物等のセラミック材料を挙げることができる。
【0054】
上記絶縁性基板を作製するには、まず、セラミック粉末に、必要に応じてイットリア(Y2O3)やB4C等の焼結助剤、Na、Caを含む化合物、バインダー等を配合してスラリーを調製した後、このスラリーをスプレードライ等の方法で顆粒状にし、この顆粒を金型に入れて加圧することにより板状等の所定の形状に成形することで、生成形体(グリーン)を作製する。
【0055】
次に、この生成形体を加熱、焼成して焼結させ、セラミック製の板状体を製造する。この後、所定の形状に加工することにより、絶縁性基板を作製するが、焼成後にそのまま使用することができる形状としてもよい。加圧しながら加熱、焼成を行うことにより、気孔のない絶縁性基板を製造することが可能となる。加熱、焼成は、焼結温度以上であればよいが、窒化物セラミックや炭化物セラミックでは、1000〜2500℃であり、酸化物セラミックでは、1500〜2000℃であることが望ましい。
【0056】
また、上記絶縁性基板を、少なくとも導体回路を形成する部分と、半導体素子を搭載する部分とに形成し、上記導体回路を形成する部分の絶縁性基板が上述した絶縁性樹脂からなる場合、この絶縁性基板を作製するには、上述した熱硬化性樹脂や樹脂複合体からなる未硬化の樹脂層を形成するか、又は、熱可塑性樹脂からなる樹脂層を形成することが望ましい。
【0057】
上記未硬化の樹脂層は、未硬化の樹脂をロールコータ−、カーテンコータ−等により塗布して形成してもよく、また、未硬化(半硬化)の樹脂フィルムを熱圧着して形成してもよい。
また、熱可塑性樹脂からなる樹脂層は、フィルム状に成形した樹脂成形体を熱圧着することにより形成することが望ましい。
【0058】
上記未硬化の樹脂を塗布する場合には、樹脂を塗布した後、加熱処理を施す。上記加熱処理を施すことにより、未硬化の樹脂を熱硬化させることができる。
【0059】
また、この絶縁性基板の、後述する接着層に面する主面に粗化面を形成することが望ましい。絶縁性基板と接着層との間でアンカー効果を得ることができるため、これらの接着強度が非常に優れたものとなるとともに、絶縁性基板と接着層との接触面積が大きくなるため、絶縁性基板及び接着層間の熱の伝導が良好に行われるからである。粗化面は、研磨処理またはエッチング処理により形成することができる。
【0060】
次に、上記放熱部材と上記絶縁性基板とを接着層を介して接合する。
上記第一の本発明のモジュール用基板において説明した通り、上記接着層を構成する材料としては、半田、ろう材、接着剤等を挙げることができる。
ここで、上記放熱部材と絶縁性基板とを半田で接合するには、上記放熱部材に形成した粗化面に半田ペーストを塗布した後、上記絶縁性基板を上記半田ペースト上に載置して加熱リフローすればよい。また、上記絶縁性基板に粗化面を形成した場合には、絶縁性基板の粗化面が上記半田ペーストと当接するように、上記絶縁性基板を半田ペースト上に載置する。
このようにして放熱部材と絶縁性基板とを接合することで、上記放熱部材と上記接着層との間の接触面積が大きなものとなり、両者の接着強度は非常に優れたものとなる。
【0061】
そして、上記絶縁性基板の接着層を接合した反対面に、銅、アルミニウム等で所定の導体回路を形成することで、本発明のモジュール用基板を製造する。
上記導体回路は、例えば、絶縁性基板がAlN等のセラミック材料からなる場合、Al−Siを含むろう材を用いて、上記絶縁性基板の表面に接合することができる。
【0062】
次に、第二の本発明のモジュール用基板について説明する。
第二の本発明のモジュール用基板は、一主面に導体回路が形成された絶縁性基板と、上記絶縁性基板の他の主面に接着層を介して接合された放熱板とを含む、半導体素子を搭載するためのモジュール用基板であって、
上記放熱板は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなるとともに、上記接着層との界面に粗化面が形成されており、上記放熱板の下方には空冷による放熱手段を備えた放熱部材が配置されていることを特徴とする。
【0063】
第二の本発明のモジュール用基板では、放熱板を構成する金属又は合金の常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上と非常に高く、また、上記放熱板の下方に設けられた放熱部材は、空冷による放熱手段を備えているため、常に上記放熱板を低温状態に保つことができ、その結果、上記モジュール用基板の上部に搭載した半導体素子と上記放熱板との熱交換を非常にスムーズに行うことができ、上記半導体素子の冷却効率に優れたものとなっている。
【0064】
また、上記放熱板の接着層との界面に形成されている粗化面も、上記半導体素子の冷却効率の向上に寄与している。即ち、上記放熱板の接着層との界面に粗化面が形成されていると両者の接触面積が大きくなり、その結果、上記放熱板と接着層との間を熱が伝導しやすくなるのである。
さらに、上記粗化面が形成されることで、上記放熱板と接着層との間にアンカー効果が働き、上記放熱板と上記接着層との接着強度が非常に優れたものとなっている。
【0065】
図2は、第二の本発明のモジュール用基板の一主面に半導体素子が搭載されたパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
【0066】
図2に示した通り、第二の本発明のモジュール用基板200は、その下面に放熱フィン230が設けられた放熱部材23と、放熱部材23上に形成された放熱板21と、その上に接着層24を介して配置された板状の絶縁性基板22と、両者を接合するための接着層24とから構成されており、この絶縁性基板22の上には導体回路25が形成されている。また、放熱部材23と放熱板21とは、放熱板21の底面に設けられたネジ部28とナット29とにより固定されており、さらに、図示はしないが、放熱板21の接着層24との界面には粗化面が形成されている。
そして、第二の本発明に係るパワーモジュール20は、モジュール用基板200の導体回路25が形成された面に応力緩和層27を介して半導体素子26が搭載され、この半導体素子26と導体回路25とが、ワイヤー25aを用いたワイヤーボンディングにより接続されている。
【0067】
即ち、第二の本発明のモジュール用基板200は、上述した第一の本発明のモジュール用基板100の放熱部材13と略同じ構造の放熱部材23の上に放熱板21が形成され、この放熱板21上に接着層24を介して絶縁性基板22が形成された構造となっており、第一の本発明のモジュール用基板100と第二の本発明のモジュール用基板200との相違点は、放熱板21の有無のみである。従って、ここでは、主に放熱板21について説明することとする。
【0068】
放熱板21は板状であり、このような放熱板21を構成する材料は、第一の本発明のモジュール用基板100で説明した放熱部材13と同様の材料を挙げることができる。また、放熱板21の接着層24との界面には、第一の本発明のモジュール用基板100の放熱部材13と同様の粗化面が形成されている。
【0069】
また、第二の本発明のモジュール用基板200において、放熱板21から突出した突起部が、放熱部材23に設けられた開口に嵌合されることにより、放熱部材23が放熱板21に固定されていることが望ましい。放熱部材23と放熱板21との熱膨張係数にある程度差がある場合であっても、放熱部材23と放熱板21とをしっかりと固定することができるからである。
具体的には、図2に示したように、放熱部材23の上面に設けた開口(図示せず)に、放熱板21の底面に設けたネジ部28(突起部)を差し込み、ナット29で締め付けることで、放熱部材23と放熱板21とを固定することができる。なお、第二の本発明のモジュール用基板200において、放熱部材23と放熱板21との固定方法は、これに限定されることはなく、例えば、両者を半田、ろう材、接着剤等により固定してもよい。
【0070】
さらに、モジュール用基板200は、図示しない冷却ファンにより、放熱部材23が冷却されるように構成されていることが望ましい。放熱部材23の冷却効率が非常に優れたものとなるため、確実に放熱部材23を低温状態に保持し、半導体素子26が過度に加熱されることを防止することができるからである。
【0071】
以上説明した通り、第二の本発明のモジュール用基板を構成する放熱板は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなり、接着層との界面には粗化面が形成されているとともに、その下方に空冷による放熱手段を備えた放熱部材が配置されている。
従って、放熱板と接着層との間にはアンカー効果が働き、これらの接着強度が非常に優れたものとなる。
また、放熱板と接着層との接触面積が大きくなるため、放熱板と接着層との間を熱が伝導しやすくなり、放熱板の下方配置された放熱部材に形成された空冷による放熱手段によって比較的低温状体に保たれた放熱板と半導体素子との間の熱交換をスムーズに行うことができ、半導体素子の冷却効率が優れたものとなる。
【0072】
次に、第二の本発明のモジュール用基板の製造方法について説明する。
第二の本発明のモジュール用基板を構成する放熱部材は、上述した第一の本発明のモジュール用基板において説明した放熱部材と同様にして作製することができる。
【0073】
次に、上記放熱部材と同様の材料を所定の大きさの板状に加工することで放熱板を作製し、その主面に粗化処理を施す。
上記粗化処理としては、上記第一の本発明のモジュール用基板の製造方法において説明した方法と同様の方法を採用することができるため、ここではその説明を省略する。この場合、放熱板は、板状体であるため粗化処理を容易に行うことができる。
そして、このようにして作製した放熱板と、上記放熱部材とをろう付け、半田付け、溶接等により接合する。
なお、上記放熱板に粗化面を形成する工程は、この放熱板と冷却部材とを接合した後に行ってもよい。
【0074】
また、上記放熱板から突出した突起部が、上記放熱部材に設けられた開口に嵌合することにより、上記放熱部材が上記放熱板に固定されることが望ましい。
具体的には、例えば、上記放熱部材をネジにより上記放熱板に固定するには、まず、放熱部材に開口を形成し、放熱板の上記放熱部材と接合する面にネジ溝を有するネジ部を設ける。そして、上記放熱部材に形成した開口に、放熱板に設けたネジ部を挿入し、放熱部材の上記開口を形成した面の反対面からナット等を用いて、上記ネジ部を締め付けることにより、放熱部材と放熱板とを固定することができる。
なお、上記放熱部材及び放熱板に設けた開口とネジ部とは、放熱部材と放熱板とを重ね合わせた際、互いに対向する位置に設けられている。
【0075】
その後、上記第一の本発明のモジュール用基板の製造方法と同様にして、絶縁性基板を製造し、この絶縁性基板と上記放熱板とを接着層を介して接合した後、上記絶縁性基板の一の主面に導体回路を形成することで、第二の本発明のモジュール用基板を製造することができる。
【0076】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
参考例1(図1参照)
(1)放熱部材の作製
縦:70mm、横:130mm、厚さ:15mmで、その組成がCu90重量%、Zr10重量%である板状体に、溝状の凹部を30本形成することで、その下方に放熱フィン130が形成された放熱部材13を作製した。
この放熱部材13の熱伝導率は270W/m・Kであった。
【0078】
そして、上記実施の形態で説明した方法により、放熱部材13の放熱フィン130非形成側面に黒化還元処理を施し、JIS B 0601によるRaが0.1μmの粗化面を形成した。このとき、粗化面を形成したくない面には保護層を形成しておき、粗化処理を終えた後、保護層を除去した。
【0079】
(2)絶縁性基板の作製
まず、窒化アルミニウム粉末(平均粒径:0.6μm)100重量部、イットリア(平均粒径:0.4μm)4重量部、アクリルバインダー12重量部及びアルコールからなる組成物のスプレードライを行い、顆粒状の粉末を作製した。
【0080】
次に、この顆粒状の粉末を金型に入れ、平板状に成形して生成形体(グリーン)を得た。
【0081】
次に、この生成形体を1800℃、圧力20MPaでホットプレスし、厚さ4mmの窒化アルミニウム基板を製造した。
続いて、この窒化アルミニウム基板の一主面に、厚さ0.4mmのアルミニウムからなる導体回路15を、Al−Siを含有するろう材を用いて接合し絶縁性基板12を製造した。
【0082】
そして、放熱部材13の粗化面を形成した面に半田ペーストを塗布し、この半田ペーストと絶縁性基板12の導体回路15を形成した主面の反対面とが当接するように絶縁性基板12を載置し、上記半田ペーストをリフローすることで、接着層14を形成して放熱板11と絶縁性基板12とを接合し、第一の本発明のモジュール用基板100を製造した。
【0083】
得られたモジュール用基板100を、−55℃に保った後、150℃に保つヒートサイクルを1000回繰り返すヒートサイクル試験に供した後、モジュール用基板100を縦に切断し、放熱部材13と絶縁性基板12との接合状態(接着層14)を顕微鏡で観察したが、クラック等は全く観察されなかった。
【0084】
次に、このモジュール用基板100に、IGBT素子を搭載し、パワーモジュール10を実際に作動させ、IGBT素子の温度を測定したが、IGBT素子は、素子として充分に機能し得る温度を保持していた。
【0085】
参考例2(図2参照)
まず、アルミニウムからなる板状体を、参考例1の(1)の工程と同様の方法で加工して、放熱部材23を作製し、この放熱部材23の放熱板21と接合する面に2個の貫通孔を設けた。
【0086】
次に、その組成がCu:97.67重量%、Fe:2.30重量%、P:0.03重量%、Zn:0.10重量%からなる材料を用いて板状の放熱板21を作製し、放熱板21の一方の主面に上記実施の形態で説明した方法により黒化還元処理を施し、JIS B 0601によるRaが0.1μmの粗化面を形成した。
【0087】
この後、放熱板21の上記粗化面を形成した反対面であって、放熱部材23に形成した貫通孔に対向する位置に、ネジ溝を形成したネジ部を2個ろう付けした。そして、放熱部材23に設けた貫通孔に、放熱板21にろう付けしたネジ部を挿入し、ナットを用いて上記ネジ部を締め付けることで、放熱部材23を放熱板21に固定した。
これらの部材の熱伝導率は262W/m・Kであった。
【0088】
そして、その後、参考例1の(2)と同様の工程を行い、第二の本発明のモジュール用基板200を製造した。
【0089】
また、得られたモジュール用基板200を参考例1と同条件でヒートサイクル試験したところ、接着層24にはクラックが全く観測されなかった。
【0090】
さらに、参考例1と同様に、このモジュール用基板200に、IGBT素子を搭載し、パワーモジュール20を実際に作動させ、IGBT素子の温度を測定したが、IGBT素子は、素子として充分に機能し得る温度を保持していた。
【0091】
参考例3
絶縁性基板の接着層に面することになる面に、放熱板に形成した粗化面と同様の粗化面を研磨処理により形成したほかは、参考例1と同様にしてモジュール用基板を製造した。
【0092】
得られたモジュール用基板を参考例1と同条件でヒートサイクル試験したところ、接着層にはクラックが全く観測されなかった。
【0093】
さらに、参考例1と同様に、このモジュール用基板に、IGBT素子を搭載し、パワーモジュールを実際に作動させ、IGBT素子の温度を測定したが、IGBT素子は、素子として充分に機能し得る温度を保持していた。
【0094】
実施例4
絶縁性基板を導体回路及び半導体素子が設けられた領域にのみ形成したほかは、参考例1と同様にしてモジュール用基板を製造した。
【0095】
得られたモジュール用基板を参考例1と同条件でヒートサイクル試験したところ、接着層にはクラックが全く観測されなかった。
【0096】
さらに、参考例1と同様に、このモジュール用基板に、IGBT素子を搭載し、パワーモジュールを実際に作動させ、IGBT素子の温度を測定したが、IGBT素子は、素子として充分に機能し得る温度を保持していた。
【0097】
比較例1
放熱板に粗化面を形成しなかったほかは、参考例1と同様にしてモジュール用基板を製造した。
【0098】
得られたモジュール用基板を参考例1と同条件でヒートサイクル試験したところ、接着層にクラックが発生していた。
【0099】
さらに、参考例1と同様に、このモジュール用基板に、IGBT素子を搭載し、パワーモジュールを実際に作動させ、IGBT素子の温度を測定したところ、IGBT素子は、時間の経過とともに温度が上昇し、素子として充分に機能し得る温度を超えてしまった。
これは、時間の経過とともに放熱板と絶縁性基板とを接合する接着層にクラックが発生したため、放熱板とIGBT素子との間の熱交換がスムーズに行えなくなったからであると考えられる。
【0100】
比較例2
放熱部材を設けずに、放熱板のみを設けたほかは参考例2と同様にしてモジュール用基板を製造した。
【0101】
得られたモジュール用基板を参考例1と同条件でヒートサイクル試験したところ、接着層にクラックは観測されなかった。
【0102】
さらに、参考例1と同様に、このモジュール用基板に、IGBT素子を搭載してパワーモジュールを実際に作動させ、IGBT素子の温度を測定したところ、IGBT素子は、時間の経過とともに徐々に温度が上昇し、最終的には素子として充分に機能し得る温度を超えてしまった。
これは、放熱板と接着層との接着強度は非常に優れていたため、上記接着層にクラックが発生することはなかったものの、上記IGBT素子の冷却効率が劣っていたため、時間の経過とともに、上記IGBT素子の温度が徐々に上昇し、最終的に素子として充分に機能し得る温度を超えてしまったものと考えられる。
【0103】
【発明の効果】
以上、説明した通り、第一の本発明のモジュール用基板は、放熱部材の熱伝導率が充分に高く、放熱部材と絶縁性基板との接着強度にも優れ、かつ、半導体素子の冷却効率に優れるため、温度サイクルに対する耐久性に優れ、発熱量の大きい半導体素子を搭載するための基板として好適に用いることができる。
【0104】
また、第二の本発明のモジュール用基板は、放熱部材及び放熱板の熱伝導率が充分に高く、放熱板と絶縁性基板との接着強度にも優れ、かつ、半導体素子の冷却効率に優れるため、温度サイクルに対する耐久性に優れ、発熱量の大きい半導体素子を搭載するための基板として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の本発明のモジュール用基板の一主面に半導体素子が搭載されたパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
【図2】第二の本発明のモジュール用基板の一主面に半導体素子が搭載されたパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
【図3】異なる構造の絶縁性基板を有するパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
【図4】従来のパワーモジュールの一例を模式的に示した正面図である。
【符号の説明】
10、20 パワーモジュール
12、22 絶縁性基板
13、23 放熱部材
14、24 接着層
15、25 導体回路
15a、25a ワイヤー
16、26 半導体素子
100、200 モジュール用基板
130、230 放熱フィン
21 放熱板
Claims (8)
- 一主面にアルミニウムからなる導体回路が形成され、少なくとも導体回路が形成された部分を含む領域と、半導体素子が搭載される部分を含む領域とに、分割して形成されている絶縁性基板と、前記絶縁性基板の他の主面に接着層を介して接合された放熱部材とを含む、半導体素子を搭載するためのモジュール用基板であって、
前記放熱部材は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなり、前記接着層との界面に、JIS B 0601に規定されるRaで0.01〜0.5μmである粗化面が形成されるとともに、空冷による放熱手段を備え、
前記半導体素子と前記導体回路とは、ワイヤーボンディングにより接続されていることを特徴とするモジュール用基板。 - 一主面にアルミニウムからなる導体回路が形成され、少なくとも導体回路が形成された部分を含む領域と、半導体素子が搭載される部分を含む領域とに、分割して形成されている絶縁性基板と、前記絶縁性基板の他の主面に接着層を介して接合された放熱板とを含む、半導体素子を搭載するためのモジュール用基板であって、
前記放熱板は、常温〜300℃における熱伝導率が100W/m・K以上の金属又は合金からなるとともに、前記接着層との界面に、JIS B 0601に規定されるRaで0.01〜0.5μmである粗化面が形成されており、前記放熱板の下方には空冷による放熱手段を備えた放熱部材が配置され、
前記半導体素子と前記導体回路とは、ワイヤーボンディングにより接続されていることを特徴とするモジュール用基板。 - 放熱板から突出した突起部が、放熱部材に設けられた開口に嵌合されることにより、前記放熱部材が前記放熱板に固定されている請求項2記載のモジュール用基板。
- 放熱部材は、放熱手段として放熱フィンを備えている請求項1〜3のいずれか1記載のモジュール用基板。
- 冷却ファンにより、放熱部材が冷却されるように構成されている請求項1〜4のいずれか1記載のモジュール用基板。
- 放熱部材及び/又は放熱板は、銅を主成分とする合金又はアルミニウムからなる請求項1〜5のいずれか1記載のモジュール用基板。
- 少なくとも導体回路が形成された部分の絶縁性基板は、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素及び金属酸化物から選択される少なくとも1種のセラミック、又は、絶縁性樹脂からなり、半導体素子が搭載される部分の絶縁性基板は、前記セラミックからなる請求項1〜6のいずれか1記載のモジュール用基板。
- 接着層に面した絶縁性基板の界面に、JIS B 0601に規定されるRaで0.01〜0.5μmである粗化面が形成されている請求項1〜7のいずれか1記載のモジュール用基板。
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