JP4733275B2 - (メタ)アクリル酸エステルの精製方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸エステルの精製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの精製方法および(メタ)アクリル酸エステルに関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル酸メチルの工業的な製造方法としては、アセトンシアンヒドリンを原料とするACH法、炭素数4の化合物の気相接触酸化反応で得られるメタクロレインをさらに気相接触酸化し、得られたメタクリル酸とメタノールのエステル化反応を行うC4酸化法、炭素数4の化合物の気相接触酸化反応で得られるメタクロレインをメタノールと反応させて直接エステル体を得る方法等が知られている。また、これらの方法により得られたメタクリル酸とアルコールとでエステル化反応を行い、または、メタクリル酸メチルとアルコールとでエステル交換反応を行うことによって種々のメタクリル酸エステルが製造される。また、上記の方法により得られたメタクロレインをアルコールと反応させて直接エステル体を得ることでも種々のメタクリル酸エステルを製造できる。
【0003】
また、アクリル酸メチルは、例えば、プロピレンからの気相酸化法、あるいはニッケル触媒の存在下アセチレンと一酸化炭素とメタノールとから合成される(レッペ法)。また、エチレンシアノヒドリンの硫酸とメタノールによる分解によっても合成できる。その他のアクリル酸エステルは、低級エステルの場合はアクリル酸メチルの合成方法と同様で、メタノールの代わりにそのアルコールを用いて合成され、高級アルキルエステルの場合はアクリル酸メチルとのエステル交換反応によって合成される。
【0004】
これらの方法で得られる(メタ)アクリル酸エステルは比較的純度の高い製品とすることができる。しかし、その製造工程において種々の化学反応により生じるケトン類やアルデヒド類、その他の着色不純物がごく微量ではあるが(メタ)アクリル酸エステル中に含まれるため、製品が着色するという問題がある。着色原因物質にはジアセチルのように比揮発度が小さいものもあり、このような不純物は通常の蒸留操作では除去が困難であった。
【0005】
これらの着色不純物を除去するためのメタクリル酸メチルの精製方法としては、例えばポリアミン化合物を添加し加熱・蒸留する方法(特開昭52−23017号公報)や、酸触媒の存在下でメチルメタクリレート中に不純物として存在するジアセチルと反応してその含有量を減らすことが可能な少なくとも1種の非芳香族1,2−ジアミンの存在下で蒸留する方法(特開平8−169862号公報)、ヒドロキシルアミンの鉱酸塩によりオキシム化処理する方法(特開平7−238055号公報)、金属水素錯化合物の水溶液で還元処理する方法(特開平7−258160号公報)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、特開昭52−23017号公報や特開平8−169862号公報に記載の方法では、長期運転するとアミンと着色不純物等とにより生成したアミン化合物も蒸留塔に供給されるため蒸留塔やリボイラーが汚れ、長期間安定運転ができなくなることがあるという問題がある。また、特開平7−238055号公報や特開平7−258160号公報に記載の方法では、工程が煩雑になるだけでなく、着色原因物質の除去が必ずしも十分ではないという問題などがある。(メタ)アクリル酸エステルに含まれる着色不純物を実用的、かつ、簡便に除去でき、しかも長期間安定に運転できる方法が見出されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、効率よく、かつ、簡便な方法で着色不純物を除去でき、さらには長期間安定に運転できる(メタ)アクリル酸エステルの精製方法、および、(メタ)アクリル酸エステルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により解決できる。
(1)少なくとも水を含む(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、
(1a)水を含む(メタ)アクリル酸エステルを蒸留塔(A)に送り、水および若干量の(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸気を塔頂から留出させ、
(1b)蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気を凝縮器(B)により凝縮させ、その凝縮液をデカンター(C)に送り、
(1c)蒸留塔(A)の塔頂(蒸気留出部)からデカンター(C)の間で、蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加し、
(1d)第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加した蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気の凝縮液をデカンター(C)で主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層と主に水からなる下層とに二層分離し、
得られる主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部または全部を蒸留塔(A)の塔頂部へ還流し、
(1e)蒸留塔(A)の塔底から(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液を取り出して蒸留塔(E)に送り、高沸物を塔底より缶出させて除去し、塔頂から(メタ)アクリル酸エステルを留出させる
ことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
【0009】
このとき、前記(1d)の工程においてデカンター(C)で得られる主に水からなる下層の一部を、蒸留塔(A)の塔頂(蒸気留出部)からデカンター(C)の間で、蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に添加して循環させることが好ましい。
(2)少なくとも水を含む(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、
(2a)水を含む(メタ)アクリル酸エステルを蒸留塔(I)に送り、高沸物を塔底より缶出させて除去し、水および(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸気を塔頂から留出させ、
(2b)蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気を凝縮器(J)により凝縮させ、その凝縮液をデカンター(K)に送り、
(2c)蒸留塔(I)の塔頂(蒸気留出部)からデカンター(K)の間で、蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加し、
(2d)第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加した蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気の凝縮液をデカンター(K)で主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層と主に水からなる下層とに二層分離し、
得られる主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は蒸留塔(I)の塔頂部へ還流し、残りの上層は蒸留塔(M)へ送り、
(2e)デカンター(K)で得られる主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層を蒸留塔(M)で蒸留し、低沸物を塔頂から留出させて除去し、蒸留塔(M)の塔底から(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液を取り出し、
(2f)蒸留塔(M)の塔底から取り出した缶出液を蒸留塔(Q)に送り、高沸物を塔底より缶出させて除去し、塔頂から(メタ)アクリル酸エステルを留出させる
ことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
【0010】
このとき、前記(2d)の工程においてデカンター(K)で得られる主に水からなる下層の一部を、蒸留塔(I)の塔頂(蒸気留出部)からデカンター(K)の間で、蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に添加して循環させることが好ましい。
(3)上記(1)または(2)の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法により精製した(メタ)アクリル酸エステル。
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法は、メタクリル酸エステル、特にメタクリル酸メチルの精製において好ましく適用される。
【0012】
【発明実施の形態】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法によれば、効率よく、かつ、簡便な方法で着色不純物を除去でき、しかも、蒸留塔を長期間安定に運転することができる。そして、この精製方法により精製した(メタ)アクリル酸エステルは着色不純物が少なく、重合して樹脂としたとき透明性に優れたものが得られる。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明が精製対象とする(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等に代表される(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルを意味する。本発明は、メタクリル酸エステル、特にメタクリル酸メチルに適用した場合、その効果が顕著である。
【0015】
また、本発明の方法が適用できる(メタ)アクリル酸エステルは、どのような方法によって製造されたものでもよく、特に限定されない。メタクリル酸エステルの工業的な製造方法としては、アセトンシアンヒドリンを原料とするACH法、炭素数4の化合物(イソブタン、イソブチレン等)の気相接触酸化反応で得られるメタクロレインをさらに気相接触酸化し、得られたメタクリル酸とアルコールのエステル化反応を行うC4酸化法、炭素数4の化合物の気相接触酸化反応で得られるメタクロレインをパラジウム含有化合物を用いてアルコールと反応させ直接エステル体を得る方法等が知られている。アクリル酸エステルの工業的な製造方法としては、プロピレンの気相接触酸化反応で得られるアクロレンをさらに気相接触酸化し、得られたアクリル酸とアルコールとのエステル化反応を行う方法等が知られている。
【0016】
このような方法で製造された(メタ)アクリル酸エステルは、通常、着色不純物として、例えば、ジアセチル、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、およびピルビン酸メチル等を含有する。その含有量は、製造方法、製造条件等によって変化するが、通常、5〜200質量ppm程度である。
【0017】
本発明の精製方法は、このような着色不純物を1質量ppm以上または200質量ppm以下、特に10質量ppm以上または100質量ppm以下含む(メタ)アクリル酸エステルに好ましく適用される。本発明の精製方法によれば、効率よく、かつ、簡便に着色不純物の含有量を減らすことができる。
【0018】
次に、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法について説明する。本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法には前記のような2つの方法がある。
【0019】
本発明の第一の方法は、水を含む(メタ)アクリル酸エステルを蒸留し、塔頂から留出する水および若干量の(メタ)アクリル酸エステル、低沸物を含有する蒸気の凝縮液を第1級および/または第2級アミノ基含有化合物により処理して主に水からなる層を分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる層の一部または全部を蒸留塔の塔頂部へ還流し、蒸留塔の塔底から(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液を取り出し、この缶出液をさらに蒸留して高沸物を除去して(メタ)アクリル酸エステルを留出させるものである。
【0020】
本発明の第二の方法は、水を含む(メタ)アクリル酸エステルを蒸留して高沸物を除去し、塔頂から留出する水および(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸気の凝縮液を第1級および/または第2級アミノ基含有化合物により処理して主に水からなる層を分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる層の一部は蒸留塔(I)の塔頂部へ還流し、残りの上層はさらに蒸留して低沸物を除去して蒸留塔の塔底から(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液を取り出し、この缶出液をさらに蒸留して高沸物を除去して(メタ)アクリル酸エステルを留出させるものである。
【0021】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法はいずれも、蒸留塔の塔頂から留出する水および(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸気の凝縮液を、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物で処理し、デカンターで二層分離して(メタ)アクリル酸エステルと水とを分離する工程を有するものである。第一の方法では、低沸物の除去のための蒸留により留出する蒸気の凝縮液を第1級および/または第2級アミノ基含有化合物で処理し、第二の方法では、高沸物の除去のための蒸留により留出する蒸気の凝縮液を第1級および/または第2級アミノ基含有化合物で処理する。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルに第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加すると主にアセチル基を有する着色不純物がアミノ基含有化合物と反応し、その反応物は水に溶解するのでデカンテーションで(メタ)アクリル酸エステルと水とを分離することにより除去される。
【0023】
本発明で用いる第1級および/または第2級アミノ基含有化合物としては、
【0024】
【化1】
Figure 0004733275
【0025】
を有していれば特に限定されず、脂肪族、芳香族アミンのいずれでもよく、1分子中に複数個のアミノ基を有するアミン類、アンモニア、ヒドラジンおよびその誘導体、さらにはヒドロキシルアミンおよびその無機酸塩等の化合物が含まれる。第1級および/または第2級アミノ基含有化合物としては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、フェニレンジアミン、ベンジルアミン等が挙げられる。特にトリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンを用いることが好ましい。第1級および/または第2級アミノ基含有化合物は1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0026】
第1級および/または第2級アミノ基含有化合物の添加量は、着色不純物を十分に除去できるので処理する(メタ)アクリル酸エステルに対して0.0001質量%以上、特に0.001質量%以上が好ましく、処理する(メタ)アクリル酸エステルに対して5質量%以下、特に1質量%以下が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルを第1級および/または第2級アミノ基含有化合物により処理する温度は、着色不純物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物との反応速度が速く、十分に着色成分を除去できるので20℃以上、特に30℃以上が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルの重合を抑え、収率が低下するのを回避し、工程を安定運転する観点から100℃以下、特に80℃以下が好ましい。
【0028】
処理時間は、1分以上、特に5分以上が好ましく、300分以下、特に180分以下が好ましい。
【0029】
第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物による処理工程の方法としては、回分式、連続式いずれの方法で行ってもよいが、通常、デカンターで所定時間、所定温度で保持して処理すればよい。
【0030】
第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加する場所は、蒸留塔塔頂の蒸気留出部からデカンターの間であり、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物が蒸留塔へ流入しないことが肝要である。蒸留塔へ第1級および/または第2級アミノ基含有化合物や着色不純物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とが反応して生成したアミン化合物が流入すると、蒸留塔あるいはリボイラーに汚れが付着し、長期間安定に運転することが難しくなることがある。しかし、本発明によれば、過剰の第1級および/または第2級アミノ基含有化合物やアミン化合物はほとんど全てデカンターで水層へ溶解し、水層とともに系外へ除去されるので、蒸留塔を長期間安定に運転することができる。
【0031】
このような趣旨により、精製するメタクリル酸エステルが水を含有していてもさらに水を添加してもよい。
【0032】
精製する(メタ)アクリル酸エステルに含まれる水の量としては、(メタ)アクリル酸エステルの種類やデカンテーションする際の温度により異なるが、通常、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対し、水5質量部以上、または、200質量部以下が好ましい。精製する(メタ)アクリル酸エステルが水を含まない場合、または、水の含有量が少ない場合には、通常、上記のような範囲の水の量を含有するように(メタ)アクリル酸エステルに水を添加することが好ましい。水を添加する場合、その添加する場所は特に限定されず、あらかじめ蒸留塔へ供給する前に(メタ)アクリル酸エステルに添加してもよいし、デカンターへ添加してもよい。
【0033】
本発明で精製する(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸をエステル化して得られる(メタ)アクリル酸エステルである。具体的にいうと、例えば、イソブタン、イソブチレン、第3級ブチルアルコール、メタクロレイン等を気相接触酸化反応して得られるメタクリル酸を抽出や蒸留等の手段により精製し、該メタクリル酸をアルコールとエステル化反応させ、得られたメタクリル酸エステルから未反応のアルコールを抽出除去したメタクリル酸エステル等が用いられる。
【0034】
デカンテーションは公知の方法で行えばよく、通常、第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物による処理をデカンターで行うので、デカンターでの滞在時間は1分以上、特に5分以上が好ましく、300分以下、特に180分以下が好ましく、処理温度は20℃以上、特に30℃以上が好ましく、100℃以下、特に80℃以下が好ましい。
【0035】
本発明で使用される蒸留塔の型式としては一般的に使用される蒸留塔であれば特に限定はなく、例えばトレイ式や充填式等の蒸留塔が挙げられる。その運転条件は特に限定されず、公知の方法に従い適宜決めればよい。
【0036】
蒸留操作を行う際の圧力としては常圧から減圧で行うことが好ましく、モノマーの重合を抑制するためにも減圧下で行うことがさらに好ましい。
【0037】
本発明の第一の方法で使用できる(メタ)アクリル酸エステルの精製装置の一例を図1に示し、図を用いて本発明の第一の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法の説明を行う。
【0038】
精製対象の水を含む(メタ)アクリル酸エステルはライン(1)から蒸留塔(A)へ供給され、ここで、主に水、低沸物および若干量の(メタ)アクリル酸エステルを含有する留出物と、(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液とに分離する。蒸留塔(A)の操作条件は(メタ)アクリル酸エステル中の低沸不純物を除去できればよく適宜決めればよい。
【0039】
蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気(留出物)は、ライン(2)から供給される第1級および/または第2級アミノ基含有化合物およびライン(3)から供給される後述のデカンター(C)下層と混合され、凝縮器(B)で凝縮される。
【0040】
なお、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物およびデカンター(C)下層は、デカンター(C)の前であれば蒸留塔(A)塔頂から留出させた蒸気を凝縮した後に添加してもよい。
【0041】
凝縮液はデカンター(C)に導かれ、デカンター(C)で主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層と主に水からなる下層とに二層分離される。主に水からなるデカンター下層の一部はライン(3)から蒸留塔(A)塔頂から留出させた蒸気と再び混合され、残りの下層はライン(4)から系外へ除去される。
【0042】
これにより、過剰の第1級および/または第2級アミノ基含有化合物や、着色不純物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とが反応して生成したアミン化合物は、ほとんど全てデカンター下層へ溶解するので、下層とともに系外へ除去される。
【0043】
未反応の第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を有効に利用するために、下層の一部を蒸留塔(A)塔頂からの留出物と再び混合することが好ましいが、すべて系外へ除去してもよい。下層の一部を添加する場所は、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物や、着色不純物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とが反応して生成したアミン化合物が蒸留塔へ流入しなければ、蒸留塔(A)の塔頂からデカンター(C)の間であればどこでもよい。
【0044】
また、留出物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とを効率的に接触させるために攪拌装置、充填物層等を設けてもよい。
【0045】
一方、主に(メタ)アクリル酸エステルからなるデカンター(C)の上層のほとんど全ては蒸留塔(A)塔頂部へ還流され、残りの上層は非水溶性の低沸物の蓄積を回避するために必要な量をライン(5)から系外へ抜き出す。非水溶性の低沸物を除去する必要がなければ、すべて蒸留塔(A)塔頂部へ還流してもよい。
【0046】
低沸物と水が除去された(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸留塔(A)の缶出液はライン(6)から蒸留塔(E)へ供給される。蒸留塔(E)は精製塔である。蒸留塔(A)の缶出液の一部は、リボイラー(D)を通して蒸留塔(A)へ還流される。そして、蒸留塔(E)塔頂から留出させた蒸気は凝縮器(F)で凝縮され、その一部は蒸留塔(E)の塔頂部へ還流され、残りはライン(7)から取り出されて高純度の精製(メタ)アクリル酸エステルが得られる。一方、重合物等の高沸物を含む缶残液は、一部はリボイラー(H)を通して蒸留塔(E)へ還流され、残りは系外へ除去してもよく、または、更に缶残液から(メタ)アクリル酸エステルを回収する工程へ移してもよい。蒸留塔(E)の操作条件は適宜決めればよい。
【0047】
本発明の第二の方法で使用できる(メタ)アクリル酸エステルの精製装置の一例を図2に示し、図を用いて本発明の第二の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法の説明を行う。
【0048】
精製対象の水を含む(メタ)アクリル酸エステルはライン(8)から蒸留塔(I)へ供給され、ここで、主に水、低沸物および(メタ)アクリル酸エステルを含有する留出物と、重合物等の高沸物を含む缶残液とに分離する。缶残液は、一部はリボイラー(L)を通して蒸留塔(I)へ還流され、残りは系外へ除去してもよく、または、更に缶残液から(メタ)アクリル酸エステルを回収する工程へ移してもよい。蒸留塔(I)の操作条件は適宜決めればよい。
【0049】
蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気(留出物)は、ライン(9)から供給される第1級および/または第2級アミノ基含有化合物およびライン(10)から供給される後述のデカンター(K)下層と混合され、凝縮器(J)で凝縮される。
【0050】
なお、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物およびデカンター(K)下層は、デカンター(K)の前であれば蒸留塔(I)塔頂から留出させた蒸気を凝縮した後に添加してもよい。
【0051】
凝縮液はデカンター(K)に導かれ、デカンター(K)で主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層と主に水からなる下層とに二層分離される。主に水からなるデカンター下層の一部はライン(10)から蒸留塔(I)塔頂から留出させた蒸気と再び混合され、残りの下層はライン(11)から系外へ除去される。
【0052】
これにより、過剰の第1級および/または第2級アミノ基含有化合物や、着色不純物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とが反応して生成したアミン化合物は、ほとんど全てデカンター下層へ溶解するので、下層とともに系外へ除去される。
【0053】
未反応の第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を有効に利用するために、下層の一部を蒸留塔(I)塔頂からの留出物と再び混合することが好ましいが、すべて系外へ除去してもよい。下層の一部を添加する場所は、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物や、着色不純物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とが反応して生成したアミン化合物が蒸留塔へ流入しなければ、蒸留塔(I)の塔頂からデカンター(K)の間であればどこでもよい。
【0054】
また、留出物と第1級および/または第2級アミノ基含有化合物とを効率的に接触させるために攪拌装置、充填物層等を設けてもよい。
【0055】
一方、主に(メタ)アクリル酸エステルからなるデカンター(K)の上層の一部は蒸留塔(I)塔頂部へ還流され、残りの上層はライン(12)から蒸留塔(M)へ供給される。
【0056】
主に(メタ)アクリル酸エステルからなるデカンター(K)の上層は、蒸留塔(M)で、主に低沸物を含有する留出物と、(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液とに分離する。蒸留塔(M)の操作条件は適宜決めればよい。
【0057】
蒸留塔(M)の塔頂から留出させた蒸気(留出物)は凝縮器(N)で凝縮され、そのほとんど全ては蒸留塔(M)塔頂部へ還流され、残りは低沸物の蓄積を回避するために必要な量をライン(13)から系外へ抜き出す。
【0058】
低沸物が除去された(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸留塔(M)の缶出液はライン(14)から蒸留塔(Q)へ供給される。蒸留塔(Q)は精製塔である。蒸留塔(M)の缶出液の一部は、リボイラー(P)を通して蒸留塔(M)へ還流される。そして、蒸留塔(Q)塔頂から留出させた蒸気は凝縮器(R)で凝縮され、その一部は蒸留塔(Q)の塔頂部へ還流され、残りはライン(15)から取り出されて高純度の精製(メタ)アクリル酸エステルが得られる。一方、重合物等の高沸物を含む缶残液は、一部はリボイラー(T)を通して蒸留塔(Q)へ還流され、残りは系外へ除去してもよく、または、更に缶残液から(メタ)アクリル酸エステルを回収する工程へ移してもよい。蒸留塔(Q)の操作条件は適宜決めればよい。
【0059】
このような本発明の精製方法によって得られる(メタ)アクリル酸エステルは、着色不純物の含有量が十分小さい。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0061】
実施例では、(メタ)アクリル酸エステルの代表としてメタクリル酸メチルを用い、(メタ)アクリル酸エステルの着色不純物の一つであるジアセチルの濃度を測定した。ジアセチルの濃度は、ガスクロマトグラフィー(GC;島津製作所社製GC−17A)を使用し、絶対検量線法で測定した。実施例において%およびppmは特に記載がない場合を除き、それぞれ質量%および質量ppmを表す。
<実施例1>
イソブチレンの気相接触酸化反応で得られたメタクリル酸を抽出および蒸留により精製し、得られたメタクリル酸とメタノールのエステル化反応を行い、その反応液から抽出、蒸留により粗製メタクリル酸メチルを得た。得られた粗製メタクリル酸メチルには水4.7%、ジアセチル20ppm、その他の化合物22.0%が含まれており、色数を表すAPHAは6であった。
【0062】
この粗製メタクリル酸メチルを図1のような(メタ)アクリル酸エステルの精製装置を用いて精製した。
【0063】
得られたメタクリル酸メチルを塔頂部に凝縮器およびデカンターを備えた30段のオールダーショウ型蒸留塔(低沸除去塔)へ1000g/hで供給し、低沸物除去を行った。低沸除去塔は、塔底温度86℃、操作圧力25kPa、缶出速度995g/hで運転した。
【0064】
塔頂から留出させた蒸気に、トリエチレンテトラミンを0.2g/hで供給し、後で得られるデカンター下層を32.9g/hで供給した後、凝縮器で凝縮し、この凝縮液をデカンターへ導いた。そして、デカンターでの滞在時間が1時間になるように調節し、40℃で1時間処理をした。得られた主に水からなるデカンター下層は32.9g/hで蒸留塔の塔頂から留出させた蒸気に添加して循環させた。主にメタクリル酸メチルからなるデカンター上層は全量蒸留塔の塔頂部へ還流した。
【0065】
一方、蒸留塔塔底から得られる低沸物を除去したメタクリル酸メチルを10段のオールダーショウ型蒸留塔(精製塔)で精製し、精製メタクリル酸メチルを得た。精製塔は、供給速度995g/h、塔頂温度56℃、操作圧力20kPa、留出速度711g/hで運転した。
【0066】
得られた精製メタクリル酸メチル中のジアセチル濃度は3ppmであり、色数はAPHA0であった。また、15日間運転を行ったが、蒸留塔およびリボイラーに付着物等の汚れは確認されなかった。
<実施例2>
トリエチレンテトラミンの代わりにエチレンジアミンを用いた以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸メチルの精製を行ったところ、精製メタクリル酸メチルが705g/hで得られた。
【0067】
得られた精製メタクリル酸メチル中のジアセチル濃度は2ppmであり、色数はAPHA0であった。また、15日間運転を行ったが、蒸留塔およびリボイラーに付着物等の汚れは確認されなかった。
<比較例1>
実施例1において蒸留塔(低沸除去塔)塔頂から留出させた蒸気に供給していたトリエチレンテトラミンをエステル化反応により得られたメタクリル酸メチルにあらかじめ混合した以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸メチルの精製を行ったところ、精製メタクリル酸メチルが703g/hで得られた。
【0068】
得られた精製メタクリル酸メチル中のジアセチル濃度は3ppmであり、色数はAPHA0であった。しかし、運転開始から5日後に蒸留塔およびリボイラーに付着物が確認され、15日間の運転終了後には、蒸留塔およびリボイラーには汚れがかなり付着していた。
<実施例3>
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを図2のような(メタ)アクリル酸エステルの精製装置を用いて精製した。
【0069】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを塔頂部に凝縮器およびデカンターを備えた30段のオールダーショウ型蒸留塔(高沸除去塔)へ1000g/hで供給し、高沸物除去を行った。高沸除去塔は、塔頂温度45℃、操作圧力19kPa、缶出速度212g/hで運転した。
【0070】
塔頂から留出させた蒸気に、トリエチレンテトラミンを0.2g/hで供給し、後で得られるデカンター下層を35.7g/hで供給した後、凝縮器で凝縮し、この凝縮液をデカンターへ導いた。そして、デカンターでの滞在時間が1時間になるように調節し、40℃で1時間処理をした。得られた主に水からなるデカンター下層を35.7g/hで蒸留塔の塔頂から留出させた蒸気に添加して循環させた。
【0071】
一方、主にメタクリル酸メチルからなるデカンター上層の一部を360g/hで高沸除去塔の塔頂部へ還流し、残りの上層は730g/hで30段のオールダーショウ型蒸留塔(低沸除去塔)へ供給し、低沸物除去を行った。低沸除去塔は、塔底温度82℃、操作圧力47kPa、缶出速度721g/hで運転した。
【0072】
そして、低沸除去塔塔底から得られる缶出液を721g/hで10段のオールダーショウ型蒸留塔(精製塔)へ供給して精製し、699g/hでメタクリル酸メチルを得た。精製塔は、塔頂温度56℃、操作圧力20kPaで運転した。
【0073】
得られた精製メタクリル酸メチル中のジアセチル濃度は2ppmであり、色数はAPHA0であった。また、15日間運転を行ったが、蒸留塔およびリボイラーに付着物等の汚れは確認されなかった。
<比較例2>
実施例3において蒸留塔(高沸除去塔)塔頂から留出させた蒸気に供給していたトリエチレンテトラミンをエステル化反応により得られたメタクリル酸メチルにあらかじめ混合した以外は実施例3と同様にしてメタクリル酸メチルの精製を行ったところ、精製メタクリル酸メチルが695g/hで得られた。
【0074】
得られた精製メタクリル酸メチル中のジアセチル濃度は3ppmであり、色数はAPHA0であった。しかし、運転開始から4日後に蒸留塔およびリボイラーに付着物が確認され、15日間の運転終了後には、蒸留塔およびリボイラーには汚れがかなり付着していた。
【0075】
【発明の効果】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法により、効率よく、かつ、簡便な方法で着色不純物を除去でき、さらには蒸留塔やリボイラーの汚れを低減させることができるのでプロセスの長期安定運転が可能になる。また、着色不純物の含有量の少ない(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステルの精製装置の一例である。
【図2】本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステルの精製装置の一例である。
【符号の説明】
A、E、I、M、Q 蒸留塔
B、F、J、N、R 凝縮器
C、K デカンター
G、O、S 液分配器
D、H、L、P、T リボイラー
1〜16 ライン

Claims (6)

  1. 少なくとも水を含む(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、
    (1a)水を含む(メタ)アクリル酸エステルを蒸留塔(A)に送り、水および若干量の(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸気を塔頂から留出させ、
    (1b)蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気を凝縮器(B)により凝縮させ、その凝縮液をデカンター(C)に送り、
    (1c)蒸留塔(A)の塔頂からデカンター(C)の間で、蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加し、
    (1d)第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加した蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気の凝縮液をデカンター(C)で主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層と主に水からなる下層とに二層分離し、得られる主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部または全部を蒸留塔(A)の塔頂部へ還流し、
    (1e)蒸留塔(A)の塔底から(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液を取り出して蒸留塔(E)に送り、高沸物を塔底より缶出させて除去し、塔頂から(メタ)アクリル酸エステルを留出させる
    ことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
  2. 前記(1d)の工程においてデカンター(C)で得られる主に水からなる下層の一部を、蒸留塔(A)の塔頂からデカンター(C)の間で、蒸留塔(A)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に添加して循環させることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
  3. 少なくとも水を含む(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、
    (2a)水を含む(メタ)アクリル酸エステルを蒸留塔(I)に送り、高沸物を塔底より缶出させて除去し、水および(メタ)アクリル酸エステルを含有する蒸気を塔頂から留出させ、
    (2b)蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気を凝縮器(J)により凝縮させ、その凝縮液をデカンター(K)に送り、
    (2c)蒸留塔(I)の塔頂からデカンター(K)の間で、蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加し、
    (2d)第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加した蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気の凝縮液をデカンター(K)で主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層と主に水からなる下層とに二層分離し、得られる主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は蒸留塔(I)の塔頂部へ還流し、残りの上層は蒸留塔(M)へ送り、
    (2e)デカンター(K)で得られる主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層を蒸留塔(M)で蒸留し、低沸物を塔頂から留出させて除去し、蒸留塔(M)の塔底から(メタ)アクリル酸エステルを含有する缶出液を取り出し、
    (2f)蒸留塔(M)の塔底から取り出した缶出液を蒸留塔(Q)に送り、高沸物を塔底より缶出させて除去し、塔頂から(メタ)アクリル酸エステルを留出させる
    ことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
  4. 前記(2d)の工程においてデカンター(K)で得られる主に水からなる下層の一部を、蒸留塔(I)の塔頂からデカンター(K)の間で、蒸留塔(I)の塔頂から留出させた蒸気またはその凝縮液に添加して循環させることを特徴とする請求項3に記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
  5. 精製前の(メタ)アクリル酸エステルが着色不純物としてジアセチル、メタクロレイン、クロトンアルデヒドおよびピルビン酸メチルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
  6. (メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸メチルである請求項1〜5のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
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