JP3918528B2 - (メタ)アクリル酸の精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は(メタ)アクリル酸の精製方法、詳しくは予備精製工程を経た粗(メタ)アクリル酸を、高吸水性樹脂の製造などに用い得る高純度の(メタ)アクリル酸に精製する方法に関するものである。なお本明細書において(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸の両者を意味する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル酸の製造方法としては、対応するニトリル化合物を加水分解する方法などもあるが、現在では対応する炭化水素、すなわちプロピレン又はイソブチレンの気相接触酸化法が主として行われている。最近ではオレフィンの代りにより安価な対応するアルカンを原料とする気相接触酸化法も検討されている。
【0003】
気相接触酸化法による(メタ)アクリル酸の製造では、先ず(メタ)アクリル酸を含む反応生成ガスを吸収溶剤、例えば水と接触させて、ガス中の(メタ)アクリル酸を(メタ)アクリル酸溶液として回収する。この溶液中には、(メタ)アクリル酸以外に、気相接触酸化に際して副生した種々の不純物、例えばアクリル酸の場合であれば酢酸、マレイン酸、アクロレイン、フルフラール、ベンズアルデヒド、アセトンなども含まれている。この(メタ)アクリル酸溶液から精製された(メタ)アクリル酸を回収する方法はいくつも提案されているが、その主流をなしているのは(メタ)アクリル酸溶液から予備精製工程で吸収溶剤及び不純物の一部を除去して、実質的に(メタ)アクリル酸とその二量体その他の重質成分から成る粗(メタ)アクリル酸とし、次いでこれを精製工程で精製して所望の品位の製品とする方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、(メタ)アクリル酸の用途の一つである高吸水性樹脂の生産量が増加しているが、この用途には従来の(メタ)アクリル酸エステル用をしのぐ極めて高純度の(メタ)アクリル酸が要求されている。従って本発明は、このような高純度の(メタ)アクリル酸を効率よく製造する方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、気相接触酸化法で得られた(メタ)アクリル酸を、予備精製して不純物が一応除去された粗(メタ)アクリル酸としたのち、第1〜第3の3個の蒸留塔から成る精製系で下記のプロセスで蒸留精製することにより、高吸水性樹脂の製造にも好適な極めて高純度の(メタ)アクリル酸とすることができる。
【0006】
第1蒸留塔に粗(メタ)アクリル酸及び第3蒸留塔の塔頂留出物を供給して蒸留する。
第1蒸留塔の塔頂留出物はアルデヒド除去処理を施すか又はこれにアルデヒド除去剤を加えて第2蒸留塔に供給して蒸留し、第2蒸留塔の塔頂留出物は製品として回収する。
【0007】
第1蒸留塔の塔底液及び第2蒸留塔の塔底液は第3蒸留塔に供給して蒸留し、その塔頂留出物は第1蒸留塔に供給し、塔底液は系外に排出する。好ましくは、この塔底液を熱分解装置にかけて分解し、生成した(メタ)アクリル酸を含む軽沸成分は予備精製工程に供給し、重質成分は外部に排出することにより、(メタ)アクリル酸の回収率を向上させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では気相接触酸化及びそれに続く予備精製は常法により行えばよい。例えばアクリル酸であれば、プロピレンを直接アクリル酸にまで酸化する一段酸化法、及びプロピレンをアクロレインとし、アクロレインをアクリル酸に酸化する二段酸化法が知られているが、いずれの方法によることもできる。また、気相接触酸化により生成したアクリル酸は通常は水で吸収してアクリル酸水溶液とするが、このアクリル酸水溶液からの粗アクリル酸の回収も常法に従って行えばよい。例えば共沸蒸留により脱水したのち、更に蒸留して酢酸その他の低沸点成分を除去する方法に依ることができる。このようにして得られた粗(メタ)アクリル酸の純度は、通常は少なくとも85重量%以上、多くの場合に90重量%以上である。当然のことながら、この粗(メタ)アクリル酸の純度は高い方が好ましい。この粗(メタ)アクリル酸に含まれている不純物は、(メタ)アクリル酸の二量体その他の重質成分であり、低沸点成分は実質上含まれていない。
【0009】
本発明では、この粗(メタ)アクリル酸を、第1〜第3の3個の蒸留塔を備えた精製系で蒸留精製して、高吸水性樹脂用途に好適な高純度の(メタ)アクリル酸を回収する。先ず第1蒸留塔に粗アクリル酸及び第2蒸留塔の塔頂留出物を供給して蒸留する。第1蒸留塔に供給される両者の比率は、精製系の操作条件、特に第1蒸留塔の塔頂留出物のうちいくらを第2蒸留塔に供給するかにより異なる。第1蒸留塔としては通常は理論段数5〜20段程度のものを用い、かつ減圧で操作して、(メタ)アクリル酸を塔頂から留出させる。この(メタ)アクリル酸は、通常は99.5重量%以上、多くの場合に99.7重量%以上の純度であり、(メタ)アクリル酸エステル用としては十分な純度を有しているが、未だフルフラールやベンズアルデヒドなどのアルデヒド成分を含有しており、このままでは高吸水性樹脂の原料としては不十分である。
【0010】
本発明では第1蒸留塔の塔頂留出物をアルデヒド除去剤で処理するか、又はアルデヒド除去剤と共に第2蒸留塔に供給して蒸留する。アルデヒド成分を含む(メタ)アクリル酸をアルデヒド除去剤で処理してアルデヒド成分を除去することは、特開2001−58970号公報や特開2001−213839号公報にも記載されているように公知である。アルデヒド除去剤としてはこれらの公開公報に記載されている1級アミンやヒドラジン類などの外に、メルカプタン類、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等を用いることもできる。この場合にはメルカプタン類を添加したのち引続いてスルホン酸型陽イオン交換樹脂で処理する。1級アミンやヒドラジン類によるアルデヒド成分の除去は、第1蒸留塔の塔頂留出物を第2蒸留塔に供給する前に行ってもよいし、またアルデヒド除去剤を塔頂留出物と共にもしくは別個に第2蒸留塔に供給して塔内でアルデヒド除去反応を行わせてもよい。またメルカプタン類を用いる場合には、スルホン酸型陽イオン交換樹脂を充填した樹脂塔に、第1蒸留塔の塔頂留出物にメルカプタン類を添加したものを20〜90℃、SV=0.1〜10hr-1で通すことによりアルデヒド成分の除去を行うことができる。通液はダウンフロー方式でもアップフロー方式でもよい。アルデヒド除去剤はアルデヒド成分に対して通常は1〜8モル倍用いる。第2蒸留塔としては通常は理論段数1〜5段のものを用い、かつ減圧で操作して(メタ)アクリル酸を塔頂から留出させる。例えばアクリル酸の場合であれば塔底液が50〜100℃で、かつ塔内における滞留時間が1〜2時間程度となるようにするのが好ましい。また塔底液の濃縮率、すなわち塔底から流出させる液に対する供給される第1蒸留塔塔頂液の重量比は2〜25が好ましい。第2蒸留塔の塔頂留出液は極めて高純度、通常は99.8重量%以上、多くの場合に99.9重量%以上であり、かつアルデヒド類も含んでいないので高吸水性樹脂の原料として好適である。
【0011】
第2蒸留塔の塔底液及び第1蒸留塔の塔底液には未だ多量の(メタ)アクリル酸が含まれているので、これらを第3蒸留塔に供給して蒸留し、その塔頂から(メタ)アクリル酸を留出させて第1蒸留塔に供給する。これにより精製系外に排出される(メタ)アクリル酸の量を減少させ、(メタ)アクリル酸の回収率を向上させることができる。第3蒸留塔の塔頂留出物は第1蒸留塔で更に蒸留されるので、塔頂留出物中に(メタ)アクリル酸以外の重質成分が飛沫同伴等で含まれていても障害とはならない。第3蒸留塔としては薄膜式蒸発装置を用いるのが好ましい。この装置には周知のように、縦型のものと横型のものとがあるが、典型的にはいずれもジャケットを有する円筒の内部に回転する撹拌翼やワイパーが設置されており、円筒の内面に供給液の薄膜を形成して蒸発させるようになっている。なかでもスミス式薄膜蒸発装置やLuwa型薄膜蒸発装置などのような縦型のものを用いるのが好ましい。第3蒸留塔も減圧下、例えばアクリル酸の場合であれば67Pa〜40KPa程度の圧力下で操作するのが好ましい。これにより操作温度を低下させて(メタ)アクリル酸の重合等を抑制することができる。
【0012】
本発明の好ましい一態様では、第3蒸留塔の塔底液を熱分解装置に供給して熱分解する。この塔底液は、蒸発しきれなかった(メタ)アクリル酸、その二量体、アルデヒド除去剤、マレイン酸及びその他の不純物から成っているので、熱分解により(メタ)アクリル酸を回収することができる。(メタ)アクリル酸の蒸留精製において、塔底液を熱分解して(メタ)アクリル酸を回収することは公知であり、本発明においてもこの公知の方法に準じて行えばよい。例えば温度は通常110〜250℃、特に120〜230℃が好ましく、分解所要時間は低温の場合は通常10〜50時間、高温の場合は0.5〜10時間である。圧力は常圧、減圧のいずれでもよい。熱分解で得られた(メタ)アクリル酸を含む軽沸留分は、低沸点成分などを含んでいるので、予備精製工程の低沸点成分除去段階以前の段階に供給する。重質成分は系外に排出して焼却する。
【0013】
本発明によれば、粗(メタ)アクリル酸から効率よく、エステル用純度の(メタ)アクリル酸と高吸水性樹脂用純度の(メタ)アクリル酸を併産させることができる。本発明では高吸水性樹脂用純度に向けられる(メタ)アクリル酸のみをアルデヒド除去剤で処理するので、除去剤を節減でき、かつ対象液量が少ないので除去操作が容易である。また高吸水性樹脂用の(メタ)アクリル酸のみを生産する場合でも、第1蒸留塔に比して第2蒸留塔での処理液量は少ないので、第2蒸留塔にアルデヒド除去剤を供給する本発明の利点は引続き維持される。また、本発明では第1蒸留塔と第2蒸留塔との塔底液をそのまま系外に排出せず、第3蒸留塔で蒸留して、これらの塔底液中のアクリル酸をできるだけ回収して第1蒸留塔に循環するので、供給された粗アクリル酸からの精製されたアクリル酸の取得率を高く維持することができる。
【0014】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明する。
図1に示すフローシートに従い、エステル用純度のアクリル酸と高吸水性樹脂用純度のアクリル酸とを併産する。第1蒸留塔に粗アクリル酸(純度93.8重量%)を11052kg/hr、第3蒸留塔の塔頂留出物を2390kg/hrで供給する。第1蒸留塔としては理論段数7段のデュアルフロートレイを備えた蒸留塔を用い、還流比0.7、塔底温度80℃、塔頂圧力20Torrで操作する。第1蒸留塔の塔頂から塔頂留出物10460kg/hr(純度99.8重量%)を取得し、そのうちエステル用に6160kg/hrを振り向け、残りの4300kg/hrにアルデヒド除去剤としてn−ドデシルメルカプタンを10kg/hrで混合し、スルホン酸型陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンPK−216H、ダイヤイオンは三菱化学社の登録商標)の充填塔を通過させたのち第2蒸留塔に供給する。第2蒸留塔としては理論段数9段の充填塔を用い、還流比1、塔底温度70℃、塔頂圧力16Torrで操作し、その塔頂から純度99.94重量%のアクリル酸を3897kg/hrで取得する。このアクリル酸は高吸水性樹脂用のアクリル酸に要求されている品位を十分に満たしている。第1蒸留塔の塔底流出液2993kg/hrと第2蒸留塔の塔底流出液413kg/hrを一緒にして第3蒸留塔に供給する。第3蒸留塔としては縦型の薄膜蒸発器を用い、圧力70Torr、流出ガス温度110℃で操作する。上部から純度89.0重量%のアクリル酸2390kg/hrを回収し、前述のように第1蒸留塔に供給する。第3蒸留塔の塔底液1006kg/hrは熱分解塔に供給し、塔底温度180℃、塔頂圧力500Torr、滞留時間3時間で熱分解し、塔頂からアクリル酸純度91.1重量%の留出物664kg/hrを取出し、これを予備精製工程の低沸点成分除去段階に戻す。熱分解塔の塔底流出液342kg/hrは焼却装置に供給する。このようにすると、長期間に亘り安定してアクリル酸の精製を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するフローシートの1例である。
1 第1蒸留塔
2 第2蒸留塔
3 第3蒸留塔
4 イオン交換樹脂塔
5 熱分解塔
6 粗アクリル酸供給管
7 アルデヒド除去剤供給管
8 精製アクリル酸(エステル用)抜出管
9 精製アクリル酸(高吸水性樹脂用)抜出管
10 熱分解留出物抜出管
11 熱分解残留液抜出管
Claims (4)
- 気相接触酸化法で得られた(メタ)アクリル酸の精製方法であって、第1〜第3の3個の蒸留塔から成る精製系の第1蒸留塔に、予備精製工程を経て不純物が一応除去された粗(メタ)アクリル酸及び第3蒸留塔の塔頂留出物を供給して蒸留すること、第1蒸留塔の塔頂留出物はアルデヒド除去処理を施すか又はこれにアルデヒド除去剤を加えて第2蒸留塔に供給して蒸留し、その塔頂留出物を製品として回収すること、及び第2蒸留塔の塔底液及び第1蒸留塔の塔底液を第3蒸留塔に供給して蒸留し、その塔頂留出物は第1蒸留塔に供給し、塔底留出物は精製系外に排出すること、を特徴とする方法。
- 第3蒸留塔の塔底液を熱分解装置にかけて分解し、生成した(メタ)アクリル酸を含む軽沸成分を予備精製工程に供給し、重質成分は系外に排出することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 第3蒸留塔として薄膜蒸発器を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- 第1蒸留塔に供給される粗(メタ)アクリル酸が85重量%以上の(メタ)アクリル酸を含有しており、かつ残りが(メタ)アクリル酸よりも高沸点の成分であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
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