JP3672818B2 - (メタ)アクリル酸エステルの精製方法 - Google Patents
(メタ)アクリル酸エステルの精製方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル酸メチルの工業的な製造方法としては、硫安の副生を伴うACH法、硫安副生のない改良ACH法、C4酸化法、C4酸化で得られるメタクロレインとメタノールから直接エステル体を得る方法およびメチルアセチレンのカルボニル化法等が知られている。また、これらの方法により得られたメタクリル酸とアルコールとでエステル化反応を行ない、または、メタクリル酸メチルとアルコールとでエステル交換反応を行ない、このメタクリル酸エステルを含む反応液を抽出や蒸留等により精製することによって種々のメタクリル酸エステルが製造される。
【0003】
アクリル酸メチルは、例えば、プロピレンからの気相酸化法、あるいはニッケル触媒の存在下アセチレンと一酸化炭素とメタノールとから合成される(レッペ法)。また、エチレンシアノヒドリンの硫酸とメタノールによる分解によっても合成できる。その他のアクリル酸エステルは、低級エステルの場合はアクリル酸メチルの合成方法と同様で、メタノールの代わりにそのアルコールを用いて合成され、高級アルキルエステルの場合はアクリル酸メチルとのエステル交換反応によって合成される。
【0004】
これらの方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステルは、その製造過程において強い酸化剤や高温に曝されることにより、無視することのできない量の着色原因物質を含有している。メタクリル酸エステルに関しては、着色原因物質の含有量はその商品価値を大きく左右するものである。一般に、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とした(メタ)アクリル系樹脂は、耐候性、透明性、表面光沢、機械的強度、成型性等に優れた特性を有し、光学材料、看板、照明カバー、機械装置の窓、水族館水槽、あるいは各種表示装置用部材など多くの用途に使用されているが、着色原因物質を多く含有すると切断面等の着色が外観上問題になることがある。特に光ファイバーなどに用いる場合には、着色原因物質の存在が特定波長の光の透過率を損なうという重要な問題を生ずることがある。
【0005】
メタクリル酸エステルに含有される着色原因物質の除去方法としては、高い段数の塔により高還流比で蒸留分離する方法、活性炭により吸着処理を行う方法、特公昭60−18964号公報で提案されているアルミナ等の固体吸着剤上を通過させる方法、EP206,230号明細書に記載されている芳香族ジアミン等で処理する方法などが知られている。また、特開平7−238055号公報にはヒドロキシルアミンの鉱酸塩によりオキシム化処理する方法が、特開平7−258160号公報には金属水素錯化合物の水溶液で還元処理する方法が、特開平7−258161号公報にはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属化合物の水溶液で洗浄処理する方法が提案されている。さらには、特開昭63−2952号公報には、ごく微量の有機酸を含むメタクリル酸メチルを弱塩基性アニオン交換樹脂で処理する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、例えば、蒸留による方法では、ジアセチルのように比揮発度が小さい着色原因物質を完全に除去するには膨大なエネルギーを必要とするという問題がある。また、活性炭、アルミナ等の固体吸着剤を用いる方法においても、固体吸着剤が処理される着色原因物質に対して多量に要するという欠点がある。さらに、ヒドロキシルアミンの鉱酸塩によるオキシム化処理、金属水素錯化合物水溶液による還元処理、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属化合物の水溶液による洗浄処理等の方法は、工程が煩雑になるだけではなく、着色原因物質の除去が十分でないという問題もある。(メタ)アクリル酸エステルに含まれる着色原因物質を実用的、かつ、簡便に除去できる方法が見出されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、効率よく、かつ、簡便な方法で着色原因物質を除去できる(メタ)アクリル酸エステルの精製方法であり、かつ着色原因物質が少なく、透明性に優れた(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル樹脂を得る為に有用な(メタ)アクリル酸エステルの精製方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により解決できる。
(1)(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、(メタ)アクリル酸エステルを第1級および/または第2級アミノ基含有化合物によって処理する工程と、(メタ)アクリル酸エステルを強酸性イオン交換樹脂によって処理する工程とを有する(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
(2)(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、第一の蒸留塔(A)により水および(メタ)アクリル酸エステルを塔頂から留出させ、その凝縮液を第一のデカンタで二層分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は第一の蒸留塔(A)の塔頂部へ還流し、残りの上層は第二の蒸留塔(B)へ導き、第二の蒸留塔(B)により(メタ)アクリル酸エステルを含む水を塔頂から留出させ、その凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加して処理し、この溶液を第二のデカンタで二層分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は第二の蒸留塔(B)の塔頂部へ還流し、残りの上層は強酸性イオン交換樹脂によって処理した後、第一の蒸留塔(A)へ還流させ、第二の蒸留塔(B)の塔底部より(メタ)アクリル酸エステルを得る(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
【0009】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法は、メタクリル酸エステル、特にメタクリル酸メチルの精製において好ましく適用される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法によれば、効率よく、かつ、簡便な方法で着色原因物質を除去できる。そして、この精製方法により精製した(メタ)アクリル酸エステルは着色原因物質が少なく、重合して樹脂としたとき透明性に優れたものが得られる。
【0011】
以下、本発明について詳細に述べる。
【0012】
本発明が精製対象とする(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等に代表される(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートを意味する。本発明は、メタクリル酸エステル、特にメタクリル酸メチルに適用した場合、その効果が顕著である。
【0013】
また、本発明の方法が適用できる(メタ)アクリル酸エステルは、どのような方法によって製造されたものでもよく、特に限定されない。メタクリル酸エステルの工業的な製造方法としては、アセトンシアンヒドリンを原料とし硫安の副生を伴うACH法、同じアセトンシアンヒドリンを原料とし硫安副生のない改良ACH法、炭素数4の化合物(イソブタン、イソブチレン等)の気相接触酸化反応で得られるメタクロレインをさらに気相接触酸化し、得られたメタクリル酸とアルコールとのエステル化反応を行うC4酸化法、炭素数4の化合物の気相接触酸化反応で得られるメタクロレインをアルコールとパラジウム含有化合物とを用いて直接エステル体を得る方法、一酸化炭素およびアルコールを用いたメチルアセチレンのカルボニル化による方法等が知られている。アクリル酸エステルの工業的な製造方法としては、プロピレンをの気相接触酸化反応で得られるアクロレンをさらに気相接触酸化し、得られたアクリル酸とアルコールとのエステル化反応を行う方法等が知られている。
【0014】
このような方法で製造された(メタ)アクリル酸エステルは、通常、着色原因物質として、例えば、2,5−ジメチルフラン、ジアセチル、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、およびピルビン酸メチル等を含有する。その含有量は、製造方法、製造条件等によって変化するが、通常、5〜100質量ppm程度である。
【0015】
本発明の精製方法は、このような着色原因物質を1〜200質量ppm、特に10質量ppm以上または100質量ppm以下含む(メタ)アクリル酸エステルに好ましく適用される。着色原因物質が2,5−ジメチルフランの場合、通常、30質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下、また、ジアセチルの場合は、1質量ppm以下であれば、(メタ)アクリル酸エステルを重合したときに十分な透光性が得られるが、本発明の精製方法によれば、効率よく、かつ、簡便にこの範囲にまで着色原因物質の含有量を減らすことができる。
【0016】
次に、第一の本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法について説明する。
【0017】
第一の本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法は、(メタ)アクリル酸エステルを第1級および/または第2級アミノ基含有化合物によって処理する工程と、(メタ)アクリル酸エステルを強酸性イオン交換樹脂によって処理する工程とを有するものである。(メタ)アクリル酸エステルを第1級および/または第2級アミノ基含有化合物によって処理することにより主にアセチル基を有する着色原因物質がアミノ基含有化合物と反応し、その反応物が蒸留により、または、水を加えて二層分離することにより除去される。(メタ)アクリル酸エステルを強酸性イオン交換樹脂によって処理することにより着色原因物質が強酸性イオン交換樹脂を触媒に反応し、その反応物が蒸留により除去される。
【0018】
本発明で用いる第1級および/または第2級アミノ基含有化合物としては、特に限定されず、脂肪族アミン、芳香族アミンのいずれでもよく、1分子中に複数個のアミノ基を有するアミン類、アンモニア、ヒドラジンおよびその誘導体、さらにはヒドロキシルアミンおよびその無機酸塩等の化合物が含まれる。第1級および/または第2級アミノ基含有化合物としては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、アニリン、トルイジン、N−エチルアニリン、N−プロピルアミン、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、N−メチルフェニレンジアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アニシジン等が挙げられる。特にカルボニル系不純物は第1級アミンとの反応性が高いのでエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンを用いることが好ましい。
【0019】
第1級および/または第2級アミノ基含有化合物の添加量は、着色原因物質を十分に除去できるので(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.0001質量部以上、特に0.001質量部以上が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して1質量部以下、特に0.8質量部以下が好ましい。
【0020】
第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物による処理工程の方法としては、たとえば(メタ)アクリル酸エステルにアミノ基含有化合物を添加して所定の温度に加熱した後、好ましくはこの混合物を撹拌しながら一定時間保持する方法が用いられる。処理温度は20℃以上、特に30℃以上が好ましく、100℃以下、特に80℃以下が好ましい。処理時間は5分以上、特に15分以上が好ましく、5時間以下、特に3時間以下が好ましい。
【0021】
また、このとき水を添加してもよい。水の添加量は(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して200質量部以下が好ましい。
【0022】
本発明で用いる強酸性イオン交換樹脂の種類としては特に限定されず、交換容量、架橋度なども特に規定されない。強酸性イオン交換樹脂としては、アンバーリスト15E(ロームアンドハース社製)、アンバーリストXH−2071(ロームアンドハース社製)等が好ましく挙げられる。
【0023】
強酸性イオン交換樹脂による処理工程の方法としては、回分式、連続式いずれの方法で行ってもよいが、中でも、固定床にて流通反応を行わせる方法が操作の簡便さ等の点から好ましい。
【0024】
回分式では、強酸性イオン交換樹脂の使用量は、フラン系の着色原因物質を十分に除去できるので(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1質量部以上、特に1質量部以上が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して50質量部以下、特に30質量部以下が好ましい。連続式では、(メタ)アクリル酸エステルの流通量は、着色原因物質を十分に除去できるので強酸性イオン交換樹脂に対して空間速度で0.01hr-1以上、特に0.05hr-1以上が好ましく、10hr-1以下、特に5hr-1以下が好ましい。
【0025】
強酸性イオン交換樹脂による処理工程における反応処理温度は、回分式、連続式いずれの方法でも、20℃以上、特に30℃以上が好ましく、100℃以下、特に80℃以下が好ましい。処理時間は、回分式、連続式いずれの方法でも、5分以上、特に15分以上が好ましく、5時間以下、特に3時間以下が好ましい。
【0026】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法は、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物による処理工程と強酸性イオン交換樹脂による処理工程とをどのような順序で行ってもよい。
【0027】
第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物による処理工程を行った後の反応液はそのままで次の処理工程に通してもよいが、強酸性イオン交換樹脂の寿命が伸びるので、反応液と水とを混合してアミノ基含有化合物や着色原因物質とアミノ基含有化合物との反応物を水層へ除去した後に次の処理工程を行うことが好ましい。添加する水の量は、アミノ基含有化合物や着色原因物質とアミノ基含有化合物との反応物が十分除去されるので(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して5質量部以上、特に20質量部以上が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して200質量部以下、特に120質量部以下が好ましい。
【0028】
また、強酸性イオン交換樹脂による処理工程後の反応液はそのままで次の処理工程に通してもよく、あるいは、蒸留して着色原因物質を除去した後に次の処理工程を行ってもよい。回分式の場合は、デカンテーション等によりイオン交換樹脂を除去した後に反応液を次の処理工程に通す。
【0029】
通常、最終的に処理液は常法の蒸留によって未反応の処理剤や、処理剤と着色原因物質との反応物を分離し、(メタ)アクリル酸エステルが得られるが、このとき(メタ)アクリル酸エステルが重合するのを防止するためにフェノチアジン、ベンゾフェノチアジン等の重合禁止剤を添加しておくことが好ましい。
【0030】
この精製方法による(メタ)アクリル酸エステルの回収率は、通常、90〜98%程度である。ここで、回収率は
回収率(%)=B/A×100
A:仕込みの(メタ)アクリル酸エステルの質量
B:処理後の精製(メタ)アクリル酸エステルの質量
により定義される。
【0031】
次に、第二の本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法について説明する。
【0032】
第二の本発明の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法は、(メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、第一の蒸留塔(A)により水および(メタ)アクリル酸エステルを塔頂から留出させ、その凝縮液を第一のデカンタで二層分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は第一の蒸留塔(A)の塔頂部へ還流し、残りの上層は第二の蒸留塔(B)へ導き、第二の蒸留塔(B)により(メタ)アクリル酸エステルを含む水を塔頂から留出させ、その凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加して処理し、この溶液を第二のデカンタで二層分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は第二の蒸留塔(B)の塔頂部へ還流し、残りの上層を強酸性イオン交換樹脂によって処理した後、第一の蒸留塔(A)へ還流させ、第二の蒸留塔(B)の塔底部より(メタ)アクリル酸エステルを得るものである。第二のデカンタの下層(水層)には、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物、第1級および/または第2級アミノ基含有化合物と不純物の水溶性反応物が含まれており、下層は適宜系外に取り出し処理される。そして、第二の蒸留塔(B)の塔底部より得られる(メタ)アクリル酸エステルから第三の蒸留塔(C)により高沸物を除去し、塔頂部から(メタ)アクリル酸エステルを得ることが好ましい。
【0033】
また、アミノ基含有化合物で処理する前に強酸性イオン交換樹脂で処理することも可能である。
【0034】
第二の方法では、通常、(メタ)アクリル酸をエステル化して得られる反応液(以下、エステル化反応液という。)をそのまま用いて精製する。具体的にいうと、例えば、イソブタン、イソブチレン、第3級ブチルアルコール、メタクロレイン等を気相接触酸化反応して得られるメタクリル酸を抽出や蒸留等の手段により精製し、該メタクリル酸をメタノールとエステル化反応させ、得られたメタクリル酸メチルから未反応のメタノールを抽出除去した粗製メタクリル酸メチル等が用いられる。
【0035】
製造される(メタ)アクリル酸エステル(エステル化反応液)は、通常、水を含有し、本発明がそのまま適用できるが、必要に応じて水を添加してもよい。(メタ)アクリル酸エステルに対する水の量は特に限定されないが、気相酸化法で得られたメタクリル酸メチルの場合、通常、3〜30質量%程度、好ましくは5質量%以上または10質量%以下である。また、気相酸化法で得られたアクリル酸メチルの場合、通常、3〜30質量%程度、好ましくは5質量%以上または10質量%以下である。
【0036】
本発明で使用される第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物としては、第一の方法と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。その添加量の好ましい範囲も第一の方法と同様である。
【0037】
第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物による処理工程の方法としては、回分式、連続式いずれの方法で行ってもよいが、連続式が操作の簡便さ等の点から好ましい。また、特に混合槽等を設ける必要はなく、混合溶液が所定時間、所定温度になるようにラインを加熱すればよい。
【0038】
また、このとき水も添加することが好ましい。水の添加量は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して5質量部以上、特に20質量部以上が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して200質量部以下、特に100質量部以下が好ましい。
【0039】
アミノ基含有化合物は水溶液として添加してもよいし、直接添加してもよい。
【0040】
第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物による処理工程における処理温度は20℃以上、特に30℃以上が好ましく、100℃以下、特に80℃以下が好ましい。処理時間は1分以上、特に5分以上が好ましく、5時間以下、特に3時間以下が好ましい。
【0041】
本発明で用いる強酸性イオン交換樹脂の種類としては、第一の方法と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。その使用量、または、(メタ)アクリル酸エステルの流通量の好ましい範囲も第一の方法と同様である。
【0042】
強酸性イオン交換樹脂による処理工程の方法としては、回分式、連続式いずれの方法で行ってもよいが、中でも、固定床にて流通反応を行わせる方法が操作の簡便さ等の点から好ましい。
【0043】
強酸性イオン交換樹脂による処理工程における反応処理温度は20℃以上、特に30℃以上が好ましく、100℃以下、特に80℃以下が好ましい。処理時間は5分以上、特に15分以上が好ましく、5時間以下、特に3時間以下が好ましい。
【0044】
本発明の第二の方法で使用される蒸留塔の型式としては、一般的に使用される蒸留塔であれば特に限定はなく、例えばトレイ式や充填式等の蒸留塔などが挙げられる。その運転条件は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0045】
本発明の第二の方法で使用できる(メタ)アクリル酸エステルの精製装置の一例を図1に示し、図を用いて本発明の説明を行う。
【0046】
精製対象の(メタ)アクリル酸エステル(エステル化反応液)はライン(1)から第一の蒸留塔(A)へ供給され、高沸除去される。その操作条件は高沸不純物の量や種類によって適宜決めればよい。缶残液は、主に(メタ)アクリル酸であり、一部はリボイラー(L)を通して第一の蒸留塔(A)へ還流され、残りは系外へ除去される。蒸留塔(A)塔頂部から得られる蒸気(一部水を含む(メタ)アクリル酸エステル)は、第一の凝縮器(D)で凝縮される。該凝縮液は第一のデカンタ(G)に導かれ、主に水からなるデカンタ(G)下層はライン(2)から系外へ除去される。
【0047】
一方、主に(メタ)アクリル酸エステルからなるデカンタ(G)の上層の一部は第一の蒸留塔(A)塔頂部へ還流され、残りはライン(3)から第二の蒸留塔(B)へ供給され、低沸不純物が除去される。その操作条件は低沸不純物の量や種類によって適宜決めればよい。蒸留塔(B)塔頂部から得られる蒸気(一部(メタ)アクリル酸エステルを含む水)は、第二の凝縮器(E)で凝縮される。
【0048】
該凝縮液は、混合槽(I)において、ライン(4)から供給される第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物とライン(5)から供給される後述のデカンタ(H)下層とによって接触処理され、第二のデカンタ(H)に導かれる。そして、主に水からなるデカンタ(H)下層の一部は第二の蒸留塔(B)塔頂部から得られる蒸気の凝縮液と再び混合され、残りの下層はライン(6)から系外へ除去される。ここで、未反応のアミノ基含有化合物や、主にカルボニル基を有する着色原因物質とアミノ基含有化合物とが反応して生成したアミン化合物は、ほとんど全てデカンタ(H)下層の水層へ溶解しており、系外へ除去される。
【0049】
第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物は蒸留塔(B)の凝縮器(E)上部からデカンタ(H)の間で添加すればよい。また、未反応の第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物を有効に利用するために、下層の一部を第二の蒸留塔(B)塔頂部からの留出物と再び混合することが好ましいが、すべて系外へ除去してもよい。また、留出物と第1級および/または第2級のアミノ基含有化合物とを効率的に接触させるために攪拌装置、充填物層等を設けてもよい。
【0050】
一方、主に(メタ)アクリル酸エステルからなるデカンタ(H)の上層の一部は第二の蒸留塔(B)塔頂部へ還流され、残りは強酸性イオン交換樹脂層(K)へ通液して処理する。強酸性イオン交換樹脂層(K)による処理は回分式で行なってもよい。着色原因物質は強酸性イオン交換樹脂を触媒に反応し、蒸留により除去しやすい化合物となる。そして、強酸性イオン交換樹脂層(K)を通液したデカンタ(H)の上層は、再び第一の蒸留塔(A)へ供給される。
【0051】
第二の蒸留塔(B)の缶出液は、ライン(8)から第三の蒸留塔(精製塔)(C)へ供給され、高沸除去される。その操作条件は適宜決めればよい。蒸留塔(C)は必ずしも必要ではないが、蒸留塔(C)を用いて、さらに高沸不純物を除去することで、より高純度に精製された(メタ)アクリル酸エステルが得られる。
【0052】
この精製方法による(メタ)アクリル酸エステルの回収率は、通常、90〜98%程度である。
【0053】
このような第一、第二の本発明の精製方法によって得られる(メタ)アクリル酸エステルは、着色原因物質の含有量が十分小さく、ポリマーとしたときに十分な透光性が得られる。本発明の(メタ)アクリル酸エステルの着色原因物質の含有量は、2,5−ジメチルフランは30質量ppm以下、特に10質量ppm以下、ジアセチルは1質量ppm以下であることが好ましい。
【0054】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルは、単独で、または、他のモノマーとともに重合して(メタ)アクリル樹脂となる。メタクリル樹脂は、光学材料、看板、照明カバー、機械装置の窓、水族館水槽、各種表示装置用部材、光ファイバー等の様々な用途に使用される。(メタ)アクリル樹脂は、繊維、塗料等の様々な用途に使用される。
【0055】
重合性不飽和単量体混合物中の(メタ)アクリル酸エステル、好ましくはメタクリル酸メチルは十分な透明性が得られるので50質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。また、切断面の黄色着色防止の観点からは特に(メタ)アクリル酸エステル単独、さらにはメタクリル酸メチル単独の場合が好ましい。
【0056】
本発明で使用されるラジカル重合開始剤としては公知のものが使用でき、例えばアゾ化合物あるいは有機過酸化物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤として用いられるアゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が、また有機過酸化物としては、ターシャリブチルパーオキシアセテート、ターシャリブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。重合開始剤は1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0057】
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、重合性不飽和単量体混合物100質量部に対して0.0001〜0.5質量部程度、好ましくは0.0002質量部以上または0.05質量部以下である。
【0058】
重合は公知の方法で行なえばよい。重合する際の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類により異なるが、通常、40〜90℃程度である。また、重合に要する時間を短縮することを目的に単量体溶液中の空間雰囲気の酸素量をできるだけ少なくすることが好ましく、酸素濃度を10ppm以下に制御することが好ましい。重合時間は、通常、0.5〜10時間である。
【0059】
本発明の(メタ)アクリル樹脂、好ましくはメタクリル樹脂、さらに好ましくはメタクリル酸メチル樹脂である。
【0060】
(メタ)アクリル樹脂の成形加工法としては、例えば、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、注型法、金型を用いたトランスファーなどがある。
【0061】
また、(メタ)アクリル樹脂には、必要に応じて、他の樹脂成分、ゴム成分、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、核剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを配合してもよい。その配合割合は特に限定されず、適宜決めればよい。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例では、(メタ)アクリル酸エステルの代表としてメタクリル酸メチルを用い、(メタ)アクリル酸エステルの着色原因物質の代表として2,5−ジメチルフランおよびジアセチルの濃度を測定した。2,5−ジメチルフランおよびジアセチルの濃度は、ガスクロマトグラフィー(GC;SHIMADZU社製GC−17A)を使用し、絶対検量線法で測定した。実施例において%およびppmは特に記載がない場合を除き、それぞれ質量%および質量ppmを表す。
<実施例1>
イソブチレンの気相接触酸化反応で得られたメタクロレインをさらに気相接触酸化反応してメタクリル酸を得た後、メタクリル酸とメタノールのエステル化反応によりメタクリル酸メチルを得た。得られたメタクリル酸メチルのGC分析を行ったところ、このメタクリル酸メチル中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は38.6ppm、ジアセチルの濃度は2.3ppmであった。
【0064】
このメタクリル酸メチル100gに重合禁止剤としてフェノチアジン0.05gを添加し、それにエチレンジアミン0.01gを添加して攪拌しながら40℃で2時間処理した。次いで100gの水を添加し、攪拌、静置後、メタクリル酸メチル層と水層とを分離した。そして、分離したメタクリル酸メチルに強酸性イオン交換樹脂アンバーリスト15E(ロームアンドハース社製)2.5gを添加して攪拌しながら60℃で1時間処理した。処理液からデカンテーションによってイオン交換樹脂を取り除いた後、1.3kPa減圧下で単蒸留を行い、精製メタクリル酸メチルを94%の回収率で回収した。この精製メタクリル酸メチル中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は3.2ppm、ジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であった。
【0065】
次に、この精製メタクリル酸メチル100質量部に対してラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.001質量部を添加し、混合溶解した。そして、この混合溶液を600×600×5mmの2枚のガラスの間にポリ塩化ビニル製ガスケットをセットした間隙が5mmのガラスセルに注入し、50℃のウォーターバスで5時間重合した後、120℃のエアーオーブンで2時間熱処理してメタクリル酸メチル樹脂キャスト板を得た。このキャスト板を5(幅)×5(厚さ)×550(長さ)mmに切断した後、各面を研磨し、メタクリル酸メチル樹脂キャスト板の各波長における長辺方向の光透過量を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、用いる強酸性イオン交換樹脂をアンバーリストXH−2071(ロームアンドハース社製)とした以外は実施例1と同様に処理した。その結果、処理後の精製メタクリル酸メチル(回収率93%)中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は2.8ppm、ジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であった。
【0066】
次いで、この精製メタクリル酸メチルを実施例1と同様にキャスト重合し、切断および研磨を行なってメタクリル酸メチル樹脂キャスト板を得、その各波長における長辺方向の光透過量を測定した。結果を表1に示す。
<実施例3>
イソブチレンの気相接触酸化反応で得られるメタクロレインとメタノールとをパラジウム含有化合物を用いて反応させて得られたメタクリル酸メチルを精製対象として実施例1と同様に処理した。その結果、処理前のメタクリル酸メチル中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は41.4ppm、ジアセチルの濃度は7.8ppmであり、処理後の精製メタクリル酸メチル(回収率92%)中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は4.2ppm、ジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であった。
【0067】
次いで、この精製メタクリル酸メチルを実施例1と同様にキャスト重合し、切断および研磨を行なってメタクリル酸メチル樹脂キャスト板を得、その各波長における長辺方向の光透過量を測定した。結果を表1に示す。
<実施例4>
アセトンと青酸を用いるアセトンシアンヒドリン法により得られたメタクリル酸メチルを精製対象として実施例1と同様に処理した。その結果、処理前のメタクリル酸メチル中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は28.4ppm、ジアセチルの濃度は2.8ppmであり、処理後の精製メタクリル酸メチル(回収率93%)中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は3.2ppm、ジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であった。
【0068】
次いで、この精製メタクリル酸メチルを実施例1と同様にキャスト重合し、切断および研磨を行なってメタクリル酸メチル樹脂キャスト板を得、その各波長における長辺方向の光透過量を測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1において、強酸性イオン交換樹脂による処理を行わなかった以外は実施例1と同様に処理した。その結果、精製メタクリル酸メチル(回収率93%)中に含まれるジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であったが、2,5−ジメチルフランの濃度は35.3ppmであり、着色原因物質の除去が不十分であった。
【0069】
次いで、この精製メタクリル酸メチルを実施例1と同様にキャスト重合し、切断および研磨を行なってメタクリル酸メチル樹脂キャスト板を得、その各波長における長辺方向の光透過量を測定した。結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例1において、アミノ基含有化合物による処理を行わなかった以外は実施例1と同様に処理した。その結果、精製メタクリル酸メチル(回収率92%)中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は5.3ppmであったが、ジアセチルの濃度は2.3ppmであり、着色原因物質の除去が不十分であった。
【0070】
次いで、この精製メタクリル酸メチルを実施例1と同様にキャスト重合し、切断および研磨を行なってメタクリル酸メチル樹脂キャスト板を得、その各波長における長辺方向の光透過量を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
この結果より、アミノ基含有化合物による処理だけ、または、強酸性イオン交換樹脂による処理だけでは光透過量があまり増加しておらず、透明性の向上効果が劣ることがわかる。
<実施例5>
イソブチレンを出発原料として気相接触酸化によって得られたメタクリル酸を抽出および蒸留により精製し、得られたメタクリル酸とメタノールとのエステル化反応を行ない、メタクリル酸メチルを得た。得られたメタクリル酸メチルは、水5.2%、2,5−ジメチルフラン39.6ppm、ジアセチル19.1ppm、その他の化合物22.3%を含んでいた。また、このメタクリル酸メチルの色数はAPHA5であった。
【0073】
得られたメタクリル酸メチル1000g/hと、強酸性イオン交換樹脂による処理を行なって還流されてきたメタクリル酸メチル280g/hとを混合し、この混合液を塔頂部に凝縮器およびデカンタを備えた30段のオールダーショウ型蒸留塔(第一の蒸留塔、以下高沸除去塔という)へ1280g/hで供給した。高沸除去塔は、塔頂温度44℃、操作圧力18.7kPa、缶出速度234g/h、留出速度1046g/hで運転した。
【0074】
塔頂から得られる蒸気の凝縮液をデカンタへ導き二層分離を行い、得られた主に水からなるデカンタ下層を系外へ抜き出した。主にメタクリル酸メチルからなる上層の一部は400g/hで蒸留塔へ還流し、残りの上層は塔頂部に凝縮器、混合槽およびデカンタを備えた30段のオールダーショウ型蒸留塔(第二の蒸留塔、以下低沸除去塔という)へ1002g/hで供給した。低沸除去塔は、塔頂温度59℃、操作圧力46.7kPa、缶出速度715g/hで運転した。
【0075】
塔頂から得られる蒸気を凝縮し、凝縮器下部に0.02%エチレンジアミン水溶液を300g/hで供給して凝縮液630g/hと混合した。そして、50℃で1時間攪拌しながら処理した。その後、この処理液をデカンタへ導き二層分離を行い、得られた主に水からなるデカンタ下層を系外へ抜き出した。主にメタクリル酸メチルからなるデカンタ上層のうち350g/hを低沸除去塔塔頂部へ還流し、残りの上層は強酸性イオン交換樹脂アンバーリスト15E(ロームアンドハース社製)を充填した固定床に連続的に流通接触させた。メタクリル酸メチル(上層)の流通量は強酸性イオン交換樹脂に対して空間速度で3hr-1とし、40℃で行なった。その後、この処理液は、新たに供給されるメタクリル酸メチルと混合して再び高沸除去塔へ供給した。
【0076】
一方、低沸除去塔塔底から得られる缶出液を715g/hで10段のオールダーショウ型蒸留塔(第三の蒸留塔、以下精製塔という)で供給した。精製塔は、塔頂温度54℃、操作圧力20.0kPa、缶出速度17g/h、留出速度698g/hで運転した。そして、塔頂から698g/hの精製メタクリル酸メチルを得た。
【0077】
精製メタクリル酸メチル中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は3.4ppm、ジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であった。精製メタクリル酸メチルの色数はAPHA0であった。
【0078】
また、実施例1と同様にキャスト重合させ、製板した結果、黄色着色は認められなかった。
<実施例6>
実施例5において、用いる強酸性イオン交換樹脂をアンバーリストXH−2071(ロームアンドハース社製)とした以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果、精製されたメタクリル酸メチルが702g/hで得られ、その中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は2.9ppm、ジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であった。精製メタクリル酸メチルの色数はAPHA0であった。
【0079】
また、実施例5と同様にキャスト重合させ、製板した結果、黄色着色は認められなかった。
<比較例3>
実施例5において、強酸性イオン交換樹脂処理を行わなかった以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果、精製されたメタクリル酸メチルは694g/hで得られ、その中に含まれるジアセチルの濃度は定量限界(0.5ppm)以下であったが、2,5−ジメチルフランの濃度は36.2ppmと着色原因物質の除去が不充分であった。精製メタクリル酸メチルの色数はAPHA0であった。
【0080】
また、実施例5と同様にキャスト重合させ、製板した結果、明らかに黄色に着色していた。
<比較例4>
実施例5において、アミノ基含有化合物による処理を行わなかった以外は実施例5と同様の操作を行った。その結果、精製されたメタクリル酸メチルは699g/hで得られ、その中に含まれる2,5−ジメチルフランの濃度は5.3ppmであったが、ジアセチルの濃度は8ppmと着色原因物質の除去が不充分であった。精製メタクリル酸メチルの色数はAPHA2であった。
【0081】
また、実施例5と同様にキャスト重合させ、製板した結果、明らかに黄色に着色していた。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、効率よく、かつ、簡便な方法で(メタ)アクリル酸エステル中に含まれる着色原因物質を除去でき、透明性に優れた(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステルの精製装置の一例である。
【符号の説明】
A 第一の蒸留塔
B 第二の蒸留塔
C 第三の蒸留塔
D 第一の凝縮器
E 第二の凝縮器
F 第三の凝縮器
G 第一のデカンタ
H 第二のデカンタ
I 混合槽
J 液分配器
K 強酸性イオン交換樹脂層
L、M、N リボイラー
1〜10 ライン
Claims (8)
- (メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、
(メタ)アクリル酸エステルを第1級および/または第2級アミノ基含有化合物によって処理する工程と、
(メタ)アクリル酸エステルを強酸性イオン交換樹脂によって処理する工程とを有することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。 - 前記(メタ)アクリル酸エステルを第1級および/または第2級アミノ基含有化合物によって処理する工程が、
第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.0001〜1質量部添加し、20〜100℃で5分〜5時間保持するものである請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。 - 前記(メタ)アクリル酸エステルを強酸性イオン交換樹脂によって処理する工程が回分式であり、
強酸性イオン交換樹脂を(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜50質量部使用し、20〜100℃で5分〜5時間処理するものである請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。 - 前記(メタ)アクリル酸エステルを強酸性イオン交換樹脂によって処理する工程が連続式であり、
(メタ)アクリル酸エステルの流通量が強酸性イオン交換樹脂に対して空間速度で0.01〜10hr-1、20〜100℃で5分〜5時間処理するものである請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。 - (メタ)アクリル酸エステルを精製する方法であって、
第一の蒸留塔(A)により水および(メタ)アクリル酸エステルを塔頂から留出させ、その凝縮液を第一のデカンタで二層分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は第一の蒸留塔(A)の塔頂部へ還流し、残りの上層は第二の蒸留塔(B)へ導き、
第二の蒸留塔(B)により(メタ)アクリル酸エステルを含む水を塔頂から留出させ、その凝縮液に第1級および/または第2級アミノ基含有化合物を添加して処理し、
この溶液を第二のデカンタで二層分離し、主に(メタ)アクリル酸エステルからなる上層の一部は第二の蒸留塔(B)の塔頂部へ還流し、残りの上層は強酸性イオン交換樹脂によって処理した後、第一の蒸留塔(A)へ還流させ、
第二の蒸留塔(B)の塔底部より(メタ)アクリル酸エステルを得る(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。 - 第二の蒸留塔(B)の塔底部より得られる(メタ)アクリル酸エステルから第三の蒸留塔(C)により高沸物を除去し、塔頂部から(メタ)アクリル酸エステルを得る請求項5に記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
- 精製前の(メタ)アクリル酸エステルが着色原因物質として2,5−ジメチルフラン、ジアセチル、メタクロレイン、クロトンアルデヒドおよびピルビン酸メチルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
- 前記(メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸メチルである請求項1〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの精製方法。
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