JP4725278B2 - キャパシタ - Google Patents

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Description

本発明は、システムパッケージ基板、モジュール基板、その他実装回路基板など、内層や上層にキャパシタが形成されたキャパシタ内蔵回路基板に関する。
電子機器の小型化、軽量化、低コスト化のために、モジュールやパッケージの実装の高密度化が進められている。高密度実装の一つの手段として、キャパシタなどの受動部品をモジュール基板内、実装基板内やトランジスター作製後の半導体ウェハ上に作り込む方法がある。キャパシタの静電容量は層間絶縁膜の誘電率に比例するため、大容量化には誘電率が大きい層間絶縁膜を用いることが有利である。従来、高誘電率無機粒子を樹脂中に分散したペースト組成物を塗布、乾燥、硬化させてキャパシタ用層間絶縁膜を得るという方法が知られている(特許文献1参照)。上記方法による高誘電率無機粒子含有のキャパシタ用層間絶縁膜は、高誘電率無機粒子の充填率を増やすことにより比誘電率を上げることができる。
一方で、多層配線基板において、樹脂製の層間絶縁層と導体パターン間の高い密着力を得る技術として、厚さ0.1〜0.2μmのクロム、ニッケル、チタン、タングステンなどの金属を樹脂製の層間絶縁層上にスパッタリングで形成し、その上に銅めっき層を形成するという技術が知られている(特許文献2〜4参照)。また、金属層をスパッタリング成膜する前に層間絶縁層に逆スパッタリングを行い、金属層の密着力向上させる技術も知られている(特許文献2参照)。また、樹脂絶縁層表面にプラズマ処理を行うことで、樹脂絶縁層と金属層の密着力を高めるという技術も知られている(特許文献4、5参照)。
特開2005−38821号公報(特許請求の範囲) 特開平7−45948号公報(特許請求の範囲) 特開平7−94865号公報(特許請求の範囲) 特開2000−114678号公報(特許請求の範囲) 特開2004−162098号公報(特許請求の範囲)
本発明は、高誘電率無機粒子を含有してなる比誘電率が大きい誘電体組成物を層間絶縁材料とし、層間絶縁材料と金属電極の密着力が大きく、長期信頼性が高く、静電容量が大きいキャパシタを提供することにある。
すなわち本発明は、樹脂と高誘電率無機粒子を含有し、高誘電率無機粒子の含有量が70重量%以上97重量%以下である誘電体組成物と、誘電体組成物に接して設けられたCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む厚さ0.001μm以上0.016μm以下の金属層を有するキャパシタである。
本発明によれば、層間絶縁材料と金属電極間の密着力が大きく、製造時や長期間使用において層間絶縁材料と金属電極間での剥離が起きにくく、半導体パッケージや配線基板に内蔵可能な静電容量が大きいキャパシタを提供することができる。
本発明のキャパシタは樹脂と高誘電率無機粒子を含有しており、高誘電率無機粒子の含有量が70重量%以上97重量%以下である誘電体組成物と、誘電体組成物に接して設けられたCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む第1金属層を有する。
本発明のキャパシタが有する金属層は、電気的には高い導電性を有するものであれば用いることができるが、誘電体組成物との高い密着力を得るためにはCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属を用いることが必要である。なお、金属層は単層でも多層でも良いが、多層の場合、本発明ではCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属層は第1金属層とし、誘電体組成物に直接接する部分に位置する。また、第1金属層上にさらに金属層を積層する場合は、積層される金属層を第2金属層とする。
Cr、Ni、Ti、W、Nb、Zrは、周期律表の第4〜6周期する電子数の多い元素であり、かつ最外殻のd軌道が閉殻でないため相互作用が強いが、p軌道は閉殻であるためイオン性は強くなく安定ではあるが、無機材料や硬化した樹脂材料とファンデアワールス力などによる相互作用力が強い。このため、第1金属層は樹脂と高誘電率無機粒子からなる誘電体組成物と高い密着力を得ることができる。
本発明において高誘電率無機粒子含有量は誘電体組成物全体に対し、70重量%以上97重量%以下であり、好ましくは85重量%以上、90重量%以下である。高誘電率無機粒子の含有量が70重量%以上では、誘電体組成物の比誘電率が大きくなりやすく、キャパシタの層間絶縁材料として用いた場合に、大きな静電容量のキャパシタを実現しやすくなる。高誘電率無機粒子の含有量が85重量%以上では、誘電体組成物表面構造への粒子の与える影響が大きくなり、表面積が大きくなり、Cr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属層との密着力が大きくなりやすい。高誘電率無機粒子の含有量が90重量%以下の場合、樹脂含有量が多いため高誘電率無機粒子を覆う樹脂の材料の厚さが大きくなり、Cr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属層と誘電体組成物の界面に応力がかった場合に、樹脂の伸び量の絶対値が大きくなるため界面剥離がおきにくい。高誘電率無機粒子の含有量が97重量%以下の場合、樹脂の含有量が十分に多いために、膜の強度を強くしやすい。
本発明においてCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属層(以下、第1金属層という)の厚さは、0.001μm以上0.016μm以下であることが好ましく、0.002μm以上0.01μm以下がより好ましい。第1金属層の厚さが0.001μm以上となると第1金属層が島状でなく層状に形成されやすいため、第1金属層と誘電体組成物との接着面積が大きくなり、その間の密着力を大きくしやすくなる。第1金属層の厚さが0.002μm以上となると、誘電体組成物の表面の平滑性が十分でない場合でも、第1金属層が島状でなく層状に形成されやすくなるため、第1金属層と誘電体組成物との接着面積が大きくなり、その間の密着力を大きくしやすくなる。第1金属層の厚さが0.016μm以下となると、第1金属層の厚さ方向の抵抗が小さくなり、キャパシタ動作時の損失が小さくなる。第1金属層の厚さが0.01μm以下となると、第1金属層の膜の内部応力が小さくなるため、第1金属層と誘電体組成物の層間にかかる応力も小さくなり、第1金属層と誘電体組成物間の層間剥離がおきにくくなる。
誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の量は、第1金属層と誘電体組成物の界面の物質間の本質的な密着力の大きさに影響を及ぼす因子である。一方、層状に形成された第1金属層の厚さは、第1金属層の内部応力の大きさに影響を及ぼす。第1金属層の内部応力は、第1金属層と誘電体組成物の界面に常に応力を与えるため、第1金属層と誘電体組成物との界面の物質間に存在する本質的な密着力から第1金属層と誘電体組成物の界面に働く応力分を除した分が、外部からの応力に対する密着力となる。つまり、高誘電率無機粒子の量による効果と第1金属層の厚さによる効果は、独立に働くものであるため、両方がそれぞれ好ましい範囲にある場合に、外部からの応力に対する密着力が大きくなり、第1金属層と誘電体組成物間の層間剥離が起きにくくなる。誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の量の好ましい範囲とは、誘電体組成物全体に対し、高誘電率無機粒子が70重量%以上97重量%以下であり、好ましくは85重量%以上、90重量%以下である。第1金属層の厚さの好ましい範囲とは、0.001μm以上0.016μm以下であり、より好ましくは、0.002μm以上0.01μm以下である。
本発明において、第1金属層の形成方法は特に限定されないが、無電解めっき法、スパッタリング法、加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。金属層が多成分からなる場合にも金属層の組成制御が容易で、かつ成膜速度が速いことなどからスパッタリング法を好ましく用いることができる。スパッタリング法の中でも、成膜速度が速いことからマグネトロンスパッタリング法を好ましく用いることができる。
第1金属層を形成する前に、第1金属層を形成する誘電体組成物表面に表面処理を施しても良い。表面処理としては、第1金属層と誘電体組成物の密着力を向上させる方法であれば特に限定されないが、プラズマ処理、紫外光照射処理、カップリング剤処理などを挙げることができる。プラズマ処理には、アルゴン、酸素、窒素、フッ素などのガスをプラズマ励起したものに誘電体組成物表面を曝すことにより、行うことができる。カップリング剤としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系などの各種カップリング剤などを挙げることが出来る。
キャパシタの金属層を多層化する場合は、本発明ではCu、Al、Auのいずれかを含有する金属層(以下、第2金属層という)を、誘電体組成物に接して設けられた第1金属層上に接して設けることが好ましい。第1金属層に比べ、より導電性が高い第2金属層を設けることで、金属層の厚さ(第1金属層の厚さ+第2金属層の厚さ)を厚くすることができ、かつ金属層全体の導電性や強度を上げることができる。第2金属層の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。第2金属層の厚さが、1μm以上となると十分高い導電性を得ることができる。第2金属層の厚さが、100μm以下となると工業的に許容される時間での製造が容易になる。Cu、Al、Auは導電性が高く、工業的にも利用しやすい。第2金属層の形成方法は特に限定されず、電解めっき法、スパッタリング法、加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。第1金属層との界面の清浄性や第1金属層との高い密着性を得るため、例えば第1金属層をスパッタリング成膜により形成した場合は、第1金属層形成後の真空状態を保ったまま続いて第2金属層のスパッタリング成膜を行っても良い。また、さらには第2金属層の一部をスパッタリング成膜で形成した後、残りの第2金属層を電解めっき等のより製造コストや生産性に優れる方法を用いて形成しても良い。
形成直後の第1金属層および/または第2金属層は、内部応力を持っている場合がある。このため、第1金属層および/または第2金属層に対し、これらの層の形成後に50℃以上300℃以下の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理によって金属層の内部応力を取り除く、もしくは低減することができる。熱処理の他に、室温で長時間放置しておくことで同様の効果が得られる場合もあるが、50℃以上の熱処理を行うと短時間で内部応力の取り除きや低減を図ることができる。熱処理温度が300℃以上となると、誘電体組成物中の樹脂の分解、蒸発、溶出などがおき、誘電体組成物の性能が低下するもしくはキャパシタが破壊する。熱処理方法は特に限定されないが、オーブン、電気炉、ホットプレートなどを用いて行うことができる。熱処理時の雰囲気は、第1金属層、第2金属層、誘電体組成物やその他のキャパシタ構成材料の物性などに合わせて適宜選択することができる。
本発明で用いられる樹脂は、特に限定されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、アラミド樹脂などを用いることができる。
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、フッ素樹脂などを用いることができる。
また、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ポリイミド、アクリル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などのほか、一般的にプリント配線板の絶縁層に使用される樹脂を用いることができる。はんだ耐熱性などの点から、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、特に、熱硬化収縮性、粘性などの点からエポキシ樹脂が好ましく使用される。
ここで、エポキシ樹脂とは、分子構造中にエポキシ基(オキシラン環)を2個以上含むプレポリマーを有する樹脂である。エポキシ樹脂には未硬化の状態で室温において液状のものから固形のものまで幅広く存在し、目的に応じて適宜選択することができる。また、エポキシ樹脂には必要に応じて硬化剤を添加することができる。硬化剤には、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などの硬化剤を用いることができる。さらに、硬化剤と共に硬化促進剤も用いることができる。このような硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、トリフェニルホスフィン、トリス(2,4−ペンタジオナト)コバルトなどの金属キレート化合物などが挙げられる。
エポキシ樹脂はビスフェノールA型、水素添加型ビスフェノールA型、ビフェニル骨格、水素添加型ビフェニル骨格のいずれかの構造を有する樹脂であることが好ましい。上記構造を有する樹脂に高誘電率無機粒子を高充填したペースト組成物を用いて形成した膜が、Cr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属層との密着性が高い。また、硬化後の樹脂にビスフェノールA型、水素添加型ビスフェノールA型、ビフェニル骨格、水素添加型ビフェニル骨格のいずれかの構造を有する硬化物であることが好ましく、硬化剤においてもビスフェノールA型、水素添加型ビスフェノールA型、ビフェニル骨格、水素添加型ビフェニル骨格のいずれかの構造を有する硬化剤であることが好ましい。硬化剤が上記構造を有することによって、硬化後の樹脂に含まれるビスフェノールA型、水素添加型ビスフェノールA型、ビフェニル骨格、水素添加型ビフェニル骨格の割合が多くなり、さらに密着性が高い膜を得ることができる。
本発明で用いる高誘電率無機粒子は、ペロブスカイト型結晶構造、あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有するものが比誘電率を大きくしやすいことから好ましい。これらは、例えばチタン酸バリウム系、チタン酸ジルコン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウムネオジム系、チタン酸バリウム錫系、マグネシウムニオブ酸バリウム系、マグネシウムタンタル酸バリウム系、チタン酸鉛系、ジルコン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、マグネシウムニオブ酸鉛系、ニッケルニオブ酸鉛系、タングステン酸鉛系、タングステン酸カルシウム系、マグネシウムタングステン酸鉛系、二酸化チタン系、などを挙げることができる。チタン酸バリウム系とは、チタン酸バリウム結晶内の一部の元素を他の元素で置換したり、結晶構造内に他の元素を侵入させたりした、チタン酸バリウムを母材とする固溶体を含めた総称である。その他のチタン酸ジルコン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウムネオジム系、チタン酸バリウム錫系、マグネシウムニオブ酸バリウム系、マグネシウムタンタル酸バリウム系、チタン酸鉛系、ジルコン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、マグネシウムニオブ酸鉛系、ニッケルニオブ酸鉛系、タングステン酸鉛系、タングステン酸カルシウム系、マグネシウムタングステン酸鉛系もいずれも同様で、それぞれを母材とする固溶体を含めた総称である。
なお、ペロブスカイト型結晶構造、あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有する高誘電率無機粒子は、これらのうち1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いたりすることができる。高い比誘電率を有する誘電体組成物を得る場合には、商業的利便性との両立の点から、主としてチタン酸バリウム系を用いることが好ましい。但し、誘電特性や温度安定性を向上させる目的で、シフター、デプレッサー剤などを少量添加して用いてよい。
本発明で用いられる高誘電率無機粒子の平均粒子径は、0.02μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上1μm以下であることがより好ましい。高誘電率無機粒子の平均粒子径が5μm以下であると、本発明の誘電体組成物からなる層間絶縁膜の厚さを、例えば10μmと比較的薄くすることができ、この層間絶縁膜を有するキャパシタの静電容量を大きくしやすくなる。高誘電率無機粒子の平均粒子径が1μm以下であると、樹脂成分を硬化させる前の流動性がある状態で、高誘電率無機粒子が重力により沈降する現象が起きにくく、組成が均一な誘電体組成物を得やすい。高誘電率無機粒子の平均粒子径が0.02μm以上であると、高誘電率無機粒子を凝集させることなく樹脂に分散させやすくなる。高誘電率無機粒子の平均粒子径が0.05μm以上であると、誘電体組成物からなる層間絶縁膜の表面の粗度を十分に大きくさせやすく、つまり第1金属層と誘電体組成物の界面での接触面積を大きくしやすくなり、第1金属層と誘電体組成物との密着力を大きくしやすい。
本発明では高誘電率無機粒子には、粒子径分布がシャープで、かつ単一ピークを有する高誘電率無機粒子を用いてもよいが、高誘電率無機粒子を高充填率で樹脂に含有させるためには、粒子径分布がシャープで、かつ単一ピークを有する高誘電率無機粒子でそのピーク値が大きく異なる2種類以上のものを混合して用いてもよい。粒子径分布がシャープで、かつ単一ピークを有する高誘電率無機粒子を用いた場合は、高密度に充填すると高誘電率無機粒子と高誘電率無機粒子の間に菱形状の空隙が生じ、この空隙には、他の高誘電率無機粒子が侵入することができない。しかし、この空隙以下の大きさの高誘電率無機粒子であればさらにこの隙間に侵入することができ、高誘電率無機粒子の充填率を向上させやすい。
本発明において高誘電率無機粒子の平均粒子径の測定は、誘電体組成物の硬化薄膜の超薄切片に対するXMA測定、および透過型電子顕微鏡(TEM)観察により行うことができる。この超薄切片には、誘電体組成物の硬化薄膜を、膜厚方向に断面を切り出したものを用いる。高誘電率無機粒子と樹脂では電子線に対する透過率が異なるので、TEM観察像中で高誘電率無機粒子と樹脂はコントラストの違いにより識別できる。複数種の高誘電率無機粒子が使用されている場合の各高誘電率無機粒子の同定は、XMA測定に基づく元素分析および電子線回折像観察による結晶構造解析により行うことができる。TEM観察像の画像解析から、高誘電率無機粒子と樹脂の面積の分布を求め、高誘電率無機粒子の断面を円形と近似して面積から粒子径を算出できる。粒子径の評価は倍率5000倍と40000倍のTEM画像について行えばよい。算出された粒子径の分布を倍率が5000倍のTEM画像において0.1μm刻みのヒストグラム、倍率が40000倍のTEM画像において0.01μm刻みのヒストグラムで表す。得られたヒストグラムの各カラムに対し、その中心値と度数の積を求める。次にそれらの積の和を度数の総和で除したものを平均粒子径とする。なお、粒子径分布の評価は、TEMのかわりに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、上記と同様の解析を行うことによってもできる。
また、上記以外にも、高誘電率無機粒子のブラウン運動による散乱光の揺らぎを測定する動的光散乱法、高誘電率無機粒子を電気泳動したときの散乱光のドップラー効果を測定する電気泳動光散乱法などによって平均粒子径を測定することができる。レーザー回折式、レーザー散乱式の粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製LA−920や(株)島津製作所製SALD−1100、日機装(株)製MICROTRAC−UPA150等がある。
高誘電率無機粒子の誘電特性としては、比誘電率が50〜30000のものを用いることが好ましい。比誘電率が50未満の高誘電率無機粒子を用いると比誘電率が十分大きい誘電体組成物が得られない。また、比誘電率が30000を越えるものでは、比誘電率の温度特性が悪くなる傾向がある。ここでいう高誘電率無機粒子の比誘電率とは、高誘電率無機粒子を原料粉末として、加熱、焼成して得られる焼結体の比誘電率をさす。焼結体の比誘電率は、例えば以下の手順によって測定する。高誘電率無機粒子をポリビニルアルコールのようなバインダー樹脂、有機溶剤もしくは水を混合して、ペースト状組成物を作製したのち、ペレット成型器の中に充填して、乾燥させ、ペレット状固形物を得る。そのペレット状固形物を、例えば900〜1200℃程度で焼成することにより、バインダー樹脂を分解、除去し、高誘電率無機粒子を焼結させ、無機成分のみからなる焼結体を得ることができる。このとき、焼結体の空隙は十分小さく、理論密度と実測密度から計算した空隙率が1%以下となっていることが必要である。この焼結体ペレットに上下電極を形成し、静電容量および寸法の測定結果から、比誘電率を計算する。
高誘電率無機粒子の作製方法は、固相反応法、水熱合成法、超臨界水熱合成法、ゾルゲル法、しゅう酸塩法、アルコキシド法などの方法が挙げられる。粒子径が小さく大きさが揃った高誘電率無機粒子の作製が容易であるという理由から、水熱合成法、超臨界水熱合成法、ゾルゲル法、のいずれかを用いることが好ましい。
高誘電率無機粒子の形状は、球状、略球状、楕円球状、針状、板状、鱗片状、棒状、立方体(サイコロ)状などが挙げられるが、特に、球形あるいは略球形であることが好ましい。球状あるいは略球状の高誘電率無機粒子は、最も比表面積が少ないために充填時に高誘電率無機粒子凝集や樹脂流動性低下などを生じにくいからである。これらのうち1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いることができる。
誘電体組成物を得る方法として、例えば、まず、高誘電率無機粒子を液状樹脂もしくは樹脂溶液に分散させたペースト組成物を作製し、そのペースト組成物を被着体(例えば基板)などに塗布し、脱溶媒、固化を行うことにより、誘電体組成物を得る方法が挙げられる。このとき、固化の方法として、熱、光などによる固化が挙げられる。但し、加熱によって固化を行う場合は、本発明の誘電体組成物は焼結体ではないので、樹脂を完全に分解、除去する必要はなく、ペースト組成物と同時に加熱行う被着体や電子部品などの耐熱温度範囲内、例えば、500℃以下の温度で加熱することが好ましい。より好ましくは250℃以下の温度で加熱することが好ましい。また、塗布する被着体は、リジッド基板に限定されず、フィルムや銅箔などのフレキシブル基板でもよい。
本発明において誘電体組成物の空隙率は、30体積%以下であることが好ましい。より好ましくは20体積%以下であり、さらにより好ましくは10体積%以下である。空隙率が30体積%以下であると、空隙によるレーリー散乱などを小さくすることができ透過率を大きくしやすい。空隙率が20体積%以下となると絶縁耐圧を大きくしやすい。空隙率が10体積%以下であるとリーク電流を小さくしやすい。
ここで、空隙率を30体積%以下にする方法としては、例えば、樹脂、高誘電率無機粒子、溶剤を上記した中から適宜選択することで達成可能である。具体的には、例えばペースト組成物が、沸点160℃以上の溶剤を少なくとも1種含むことで達成することができる。
誘電体組成物の空隙率の測定方法は、ガス吸着法、水銀圧入法、陽電子消滅法、小角X線散乱法、アルキメデス法など、用途に合わせて適宜選択することができる。
ペースト組成物から得られる誘電体組成物の形態は特に限定されず、膜状、棒状、球状など、用途に合わせて選択することができるが、特に膜状であることが好ましい。ここでいう膜とは、フィルム、シート、板、ペレットなども含まれる。もちろん、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、または、放熱機能付与など、用途にあわせたパターン形成を行うこともできる。
誘電体組成物を膜状にしたときの膜厚は、誘電体組成物を層間絶縁膜としたキャパシタの目的とする静電容量の値を満たす範囲内で任意に設定することができるが、0.05μm以上20μm以下であることが好ましい。キャパシタとして大きな静電容量を確保するには膜厚が薄い方が好ましいが、膜厚が0.05μm以上の場合にはピンホールなどが発生しにくく、電気的絶縁を得やすくなる。膜厚が20μm以下であると、キャパシタとして十分大きな静電容量を得やすい。
ペースト組成物は、例えば、高誘電率無機粒子を液状樹脂や樹脂溶液に加えて、混合分散する方法や、予め高誘電率無機粒子を適当な溶媒中に分散した分散液を作製し、その分散液と液状樹脂もしくは樹脂溶液を混合するレットダウン法などによって作製される。また、樹脂または溶媒中へ高誘電率無機粒子を分散させる方法は特に限定されず、例えば、超音波分散、ボールミル、ロールミル、クレアミックス、ホモジナイザー、ビーズミル、メディア分散機などの方法を用いることができるが、特に、分散性の点でボールミル、ホモジナイザー、ビーズミルを用いるのが好ましい。
高誘電率無機粒子分散の際、分散性を向上させるために、例えば、高誘電率無機粒子の表面処理、分散剤の添加、界面活性剤の添加、溶剤の添加などを行っても良い。
高誘電率無機粒子の表面処理としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系などの各種カップリング剤、脂肪酸、リン酸エステルなどによる処理のほか、ロジン処理、酸性処理、塩基性処理などが挙げられる。また、分散剤の添加の例としては、リン酸、カルボン酸、脂肪酸、およびそれらのエステル類などの酸基を有する分散剤などが挙げられ、特に、リン酸エステル骨格を有する化合物が好ましく用いられる。そのほか、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤、多価カルボン酸などの湿潤剤、両親和性物質、高立体障害の置換基を有する樹脂などの添加が挙げられる。また、溶剤の添加によって、分散時または分散後の系の極性を制御することができる。溶剤としては、樹脂を溶解するものを適宜選択すれば良いが、例えば、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、イソブチルアルコール、メトキシメチルブタノールなどのアルコール類、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエステル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、アニソールなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラヒドロフラン、イソホロン、トリクロロエチレン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどや、これらのうちの1種類以上を含有する有機溶剤混合物を用いることができる。
また沸点160℃以上の溶剤を用いることが好ましい。溶剤の沸点が160℃以上では、誘電体組成物内での空隙発生が抑制されて、誘電体組成物の比誘電率を高くしやすい。沸点が160℃より低いと、溶剤の揮発速度が速いため、熱処理時の物質移動による緻密化が追いつかず、空隙部が増加し、誘電体組成物の比誘電率が低下することが多くなる。より好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上である。また、本発明で用いられる溶剤は、沸点300℃以下であることが好ましく、より好ましくは280℃以下である。沸点が280℃より高くなると、脱溶剤のための処理が高温となり、高温化によって樹脂が分解し、誘電特性の劣化などが起こる。また300℃より大きくなると、樹脂の分解がより激しくなり、機械強度の低下が起きる。本発明において、ペースト組成物に使用する溶剤は、沸点160℃以上のもの1種のみでもよいが、沸点160℃以上の溶剤を含有していれば、それ以外の溶剤を含んでいても良い。また、ペースト組成物には必要に応じて、安定化剤、分散剤、沈降防止剤、可塑剤、酸化防止剤、架橋剤、架橋促進剤、溶解調整剤、界面活性剤、消泡剤などの添加剤などを含有してもよい。
沸点160℃以上の溶剤は、メシチレン、アセトニルアセトン、メチルシクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルフェニルケトン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソホロン、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクタム、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、3−メトキシ3−メチルブタノールおよびそのアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、シュウ酸エステル、マロン酸ジエチル、マレイン酸エステル、炭酸プロピレン、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール等がある。
本発明でいう沸点とは、1気圧、即ち1.01325×10N/mの圧力下での沸点である。沸点の測定は公知の技術を用いて行うことができ、特に限定されないが、例えば、Swietoslawskiの沸点計を用いることで測定できる。
なお、高誘電率無機粒子の充填率が高くなるにつれて、上記溶剤量による影響は大きくなり、高誘電率無機粒子がペースト組成物に含まれる溶剤を除く成分の総重量の80重量%以上の場合に、本発明の効果が特に大きい。
次に、ペースト組成物をある被着体に塗布する方法は特に限定されない。例えば、スピンナー、スクリーン印刷、ブレードコーター、スピンコーターなどが挙げられる。塗布後の膜をホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて、脱溶媒や熱硬化を行う。
ペースト組成物を塗布する被着体(例えば基板)としては、例えば、有機系基板、無機系基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものから選択できる。有機系基板の例としては、樹脂基板、紙・フェノール銅張積層板、紙・エポキシ銅張積層板、紙・ポリエステル銅張積層板などの紙基材銅張積層板、ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス布・ポリイミド銅張積層板、ガラス布・テフロン(登録商標)銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、紙・ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド基板、ポリエーテルケトン基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ポリカーボネート基板、ポリイミド基板、ポリエステルなどの樹脂基板、ポリエステルフィルム、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミド銅張フィルム基板、各種液晶ポリマーフィルムなどのフレキシブル基板が挙げられる。
また、無機系基板の例としては、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板、そのほか、ガラス基板、シリコン基板、石英基板などが挙げられる。
回路の構成材料の例としては、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
本発明では誘電体組成物の表面粗さRaは0.03μm以上0.2μm以下であることが好ましい。誘電体表面粗さRaが0.03μm以上であると誘電体組成物と第1金属層との界面の接触面積が大きくなりやすく、第1金属層と誘電体組成物との密着力を大きくしやすい。表面粗さRaが0.2μm以下であると、誘電体組成物の凹凸が静電容量分布の均一性に影響を与えにくくなり、静電容量分布が均一なキャパシタを得やすい。
誘電体組成物からなる層間絶縁膜の表面の粗度を十分に大きくさせやすく、つまり第1金属層と誘電体組成物との界面での接触面積を大きくしやすく、第1金属層と誘電体組成物との密着力を大きくしやすい。
誘電体組成物の表面の表面粗さRaは、算術平均粗さであり、抽出曲線から基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線をX軸、縦倍率の方向をY軸として抽出曲線をy=f(x)で表したときに、下記数式(1)で求めることができる。表面凹凸の抽出曲線のモデル図を図1に示す。
Figure 0004725278
表面粗さRaの測定、及び抽出曲線の特定方法は、触針式の段差計、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡など、用途に合わせて適宜選択することができる。
また、誘電体組成物上に例えば金属層などその他の材料が積層形成されている場合などは、上記のような方法による誘電体組成物の表面形状の測定が困難である。そのような場合は、誘電体組成物の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)などにより観察し、誘電体組成物とその他の積層材料との界面から抽出曲線を特定することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)観察のみからでは、誘電体組成物とその他の積層材料のコントラスト差が小さく界面が特定できない場合は、断面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて組成分析することによって界面位置を特定し、抽出曲線を特定することも可能である。
誘電体組成物を層間絶縁膜としたキャパシタの静電容量の温度変化、面内ばらつきは、小さい方が回路設計上好ましい。温度変化についても、できるだけ小さい方が好ましく、例えば、X7R特性(−55〜125℃において静電容量の温度変化率が±15%以内)を満たすことが好ましい。静電容量の面内ばらつきは、平均値に対して5%以下(静電容量の平均値−5%≦静電容量≦静電容量の平均値+5%)であることが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。誘電特性等、膜厚、表面粗度、金属層と誘電体組成物の密着力を評価するピール強度は下記の方法に従って測定した。
(1)誘電特性
誘電体組成物の静電容量、比誘電率、誘電正接は以下のようにして測定した。面積6cm×6cm、厚さ0.3mmのアルミニウム基板上の全面に誘電体組成物の塗膜を形成した。この塗膜はスピンコートしたペースト組成物を適宜加熱し、溶媒蒸発、樹脂硬化させることにより形成した。続いてこの塗膜上に蒸着法によりアルミニウム電極を形成した。アルミニウム電極は、直径10mmの円形パターンの測定用電極と内径11.5mmのリング状パターンのガード電極である。誘電体組成物の膜厚は10μm〜20μmの範囲とした。測定用電極とアルミニウム基板に挟まれた部分が測定対象領域となる。測定対象領域の1MHzにおける静電容量をインピーダンスアナライザ4294Aおよびサンプルホルダー16451B(共にアジレントテクノロージー(株)製)を用いて測定した。比誘電率は静電容量と測定対象領域の寸法から算出した。
(2)膜厚
誘電体組成物の膜厚は、サーフコム1400(東京精密(株)製)を用いて触針法により測定した。4ヶ所で測定を行い、その平均値を膜厚とした。
(3)表面粗度
誘電体組成物の表面粗度(Ra)は、サーフコム1400(東京精密(株)製)を用いた触針法による測定と、断面TEM観察による評価の2種の方法で行った。
(4)ピール強度
誘電体組成物上の第2金属層と第1金属層からなる金属層のピール強度は以下のようにして測定した。銅張り基板上にペースト組成物をスピンコーターを用いて塗布後、適宜加熱し、溶剤蒸発、樹脂硬化させることによって、誘電体組成物を形成した。続いてこの塗膜表面にプラズマ処理を施した後、所望の膜厚の第1金属層をスパッタリング成膜し、さらに所望の膜厚の第2金属層をスパッタリング法と電解めっきを法により作製した。その際、第2金属層の総厚みが9±1μmとなるように調整した。片刃を用いて金属層に切り込みを入れ、2mm幅のラインパターンを作製した。この2mm幅のラインパターン金属層のピール強度を、引っ張り試験器を用いて90°剥離により測定した。引っ張り速度は50mm/分とした。
実施例1
チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製、BT05:平均粒子径0.5μm)532重量部、γ−ブチロラクトン95重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)5.3重量部をウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)を用いて混練し、分散液A−1を得た。エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)44重量部、硬化剤(大日本インキ工業(株)製、フェノライト(商品名)VH4150)25.7重量部、硬化促進剤(トリフェニルホスフィン)0.7重量部、γ−ブチロラクトン32重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−1を得た。エピコートYX8000は水素添加型ビスフェノールA型の構造を有する樹脂である。また、フェノライトVH4150はビスフェノールA型の構造を有する樹脂である。分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−1を25重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−1を作製した。C−1を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、88重量%である。
このペースト組成物C−1をスピンコーターを用いて銅張りガラスエポキシ基板上に塗布し、オーブンを用いて80℃で15分間乾燥させた後、175℃で4時間硬化させた。スピン速度を調整し、膜厚10μmの誘電体組成物(硬化膜)を得た。続いて、塗膜表面にプラズマ処理を施した。プラズマ処理は、リアクティブイオンエッチング装置(RIN−10型、サムコインターナショナル(株)製)を用い、Ar雰囲気中において圧力0.3Paで、20Wで3秒間処理を行った。プラズマ処理後の表面粗度は0.04μmであった。さらに第1金属層としてクロム(Cr)を0.005μm厚となるようにスパッタリング成膜し、第2金属層として銅(Cu)を厚さ100nmスパッタリング成膜し、さらにその上に電解めっきを行い銅を堆積させキャパシタを得た。第2金属層の厚みは9μmとなった。この誘電体組成物と金属層との間のピール強度は2.6N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は3.4N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
また、このペースト組成物C−1を厚さ300μmのアルミ基板上にスピンコーターを用いて塗布し、オーブンを用いて、80℃で15分間乾燥させた後、175℃で4時間硬化させ、誘電体組成物(硬化膜)を得た。この誘電体組成物上にアルミ電極を形成し、誘電特性評価サンプルとした。周波数1MHzにおける比誘電率は40であった。
実施例2
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてクロムを0.01μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は2.8N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
実施例3
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてクロムを0.015μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は1.8N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は2.4N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった
施例
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてニッケル(Ni)とクロム(Cr)の元素重量比が8:2の合金を0.005μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2.6N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は3.4N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
実施例
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてニッケル(Ni)とクロム(Cr)の元素重量比が9:1の合金を0.005μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は3.2N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
実施例
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000)103重量部、硬化剤(日本化薬(株)製、カヤハード(商品名)KTG−105)36重量部、硬化促進剤(トリフェニルホスフィン)1.4重量部、γ−ブチロラクトン92重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−2を得た。NC3000はビフェニル型の構造を有する樹脂である。また、カヤハードKTG−105はフェノールノボラックの構造を有する樹脂である。分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−2を29重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−2を作製した。C−2を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、88重量%である。
ペースト組成物C−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は1.5N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は2.3N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。誘電体組成物の周波数1MHzにおける比誘電率は42であった
施例
分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−1を29.9重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−8を作製した。C−8を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、86重量%である。
ペースト組成物C−8を用いた以外は、実施例1と同様にして、誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2.3N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は2.5N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。誘電体組成物の周波数1MHzにおける比誘電率は32であった。
実施例
分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−1を27.4重量部をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−9を作製した。C−9を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、87重量%である。
ペースト組成物C−9を用いた以外は、実施例1と同様にして、誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2.5N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は3.3N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。誘電体組成物の周波数1MHzにおける比誘電率は38であった。
実施例
分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−1を22.7重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−10を作製した。C−10を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、89重量%である。
ペースト組成物C−10を用いた以外は、実施例1と同様にして、誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2.5N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は3.2N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。誘電体組成物の周波数1MHzにおける比誘電率は43であった
施例10
ペースト組成物C−1を用いて、スピン速度を調整し、膜厚5μmの誘電体組成物(硬化膜)を得た以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は2.3N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は3N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった
較例1
ぺースト組成物C−1を用い、第1金属層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と、銅層(実施例1における第2金属層)を作製し、評価を行った。ピール強度は0.1N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は0.1N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いたところ、銅層と誘電体組成物界面での剥離発生が認められた。
比較例2
分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−1を40.8重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−13を作製した。C−13を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、68重量%である。
ペースト組成物C−13を用いた以外は、実施例1と同様にして、誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は0.7N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は0.9N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、第1金属層と誘電体組成物界面での剥離発生が認められた。誘電体組成物の周波数1MHzにおける比誘電率は16であった。
比較例3
分散液A−1を150重量部と、エポキシ樹脂溶液B−1を1.9重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−14を作製した。C−14を硬化させて得られる誘電体組成物中の高誘電率無機粒子の含有量は誘電体組成物全量に対し、98重量%である。
ペースト組成物C−14を用いた以外は、実施例1と同様にして、誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。この時のピール強度は0.3N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、第1金属層と誘電体組成物界面での剥離発生が認められた。ピール強度は0.5N/cmであった。さらに温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、第1金属層と誘電体組成物界面での剥離発生が認められた。誘電体組成物の周波数1MHzにおける比誘電率は70であった。
比較例4
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてクロムを0.018μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行ったピール強度は0.8N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は1.8N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
比較例5
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてクロムを0.03μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は0.8N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は1.3N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
比較例6
ペースト組成物C−1を用い、第1金属層としてクロムを0.05μm厚となるようにスパッタリング成膜した以外は実施例1と同様にして誘電体組成物と第1金属層、第2金属層を作製し、評価を行った。ピール強度は0.6N/cmであった。さらに、175℃で4時間熱処理を行った。この時のピール強度は0.8N/cmであった。続いて温度85℃、相対湿度85%環境下に168時間置いた後に再度ピール強度の測定を行ったところ、ピール強度に低下は見られなかった。
Figure 0004725278
Figure 0004725278
抽出曲線のモデル図
符号の説明
1 抽出曲線 f(x)

Claims (7)

  1. 樹脂と高誘電率無機粒子を含有し、高誘電率無機粒子の含有量が70重量%以上97重量%以下である誘電体組成物と、誘電体組成物に接して設けられたCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む厚さ0.001μm以上0.016μm以下の金属層を有するキャパシタ。
  2. 誘電体組成物、Cr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む金属層、Cu、Al、Auのいずれかを含有する金属層が、この順に形成されている請求項1記載のキャパシタ。
  3. 樹脂がエポキシ樹脂を含む請求項1または2記載のキャパシタ。
  4. 高誘電率無機粒子の結晶構造がペロブスカイト構造である高誘電率無機粒子を含有する請求項1〜3のいずれか記載のキャパシタ。
  5. 高誘電率無機粒子の平均粒子径が、0.02μm以上5μm以下である請求項1〜4のいずれか記載のキャパシタ。
  6. 誘電体組成物の表面粗さRaが、0.03μm以上0.2μm以下である請求項1〜5のいずれか記載のキャパシタ。
  7. 樹脂と高誘電率無機粒子を含有し、高誘電率無機粒子の含有量が70重量%以上97重量%以下である誘電体組成物、誘電体組成物に接して設けられたCr、Ni、Ti、W、Nb、Zrのいずれかを含む厚さ0.001μm以上0.016μm以下の金属層、Cu、Al、Auのいずれかを含有する金属層をこの順に形成した後に、50℃以上300℃以下の熱処理を行うキャパシタの製造方法。
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