JP4356293B2 - 高誘電体組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機フィラーと樹脂を有する高誘電体組成物、特に、比誘電率が40以上と高いものであり、コンデンサや、コンデンサとしての機能を有する回路基板材料として好適な特性を示す高誘電率組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、信号の高速化や大容量化の要求に伴って、実装回路部品の高密度化が進んでいることにより、電気的ノイズが増大し、データエラーが発生することが問題になってきている。この電気的ノイズの発生を抑え、半導体デバイスを安定に動作させるためには、半導体デバイスに近い位置から必要量の電流を供給することが重要である。このためには半導体デバイス直下のプリント配線板に容量の大きなコンデンサを配置することが有効である。
【0003】
プリント配線板にコンデンサを配置する方法として、プリント配線板にチップコンデンサなどの外部コンデンサを配置する方法もあるが、プリント配線板の内層に無機フィラーを加え、プリント配線板自体にコンデンサ機能を持たせる方法が小型化の点で有利である。
【0004】
このプリント配線板自体にコンデンサ機能を持たせる方法として、無機フィラーと樹脂を混合した複合体をプリント配線板の内層に用いる方法が特開平5−57852号公報、特開平6−85413号公報などで提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の無機フィラーと樹脂とを混合した複合体の比誘電率は10〜40程度であり、低いものであった。無機フィラーの含有率を増やすことによりある程度までは比誘電率を上げることはできるものの、無機フィラーの含有率が50体積%を越えると無機フィラーの含有率を増加させても比誘電率が上がらない現象がみられた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、比誘電率が40以上の良好な誘電特性を有した高誘電体組成物を提供することを目的とし、下記の構成からなる。
(1)ペロブスカイト型結晶構造を有する無機フィラーと樹脂を有する高誘電体組成物であって、無機フィラーと樹脂の合計量に対する無機フィラーの含有量が50体積%以上であり、組成物中の無機フィラーの分布について、高誘電体組成物の膜厚方向の超薄切片をTEMにより5000倍に拡大観察し、4μm四方の任意の49箇所において全面積に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出したものを単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率としたときに、前記49箇所におけるデータから算出される、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率のばらつきを示す標準偏差が以上である高誘電体組成物。
(2)ペロブスカイト型結晶構造を有する無機フィラーと樹脂を有する高誘電体組成物であって、無機フィラーと樹脂の合計量に対する無機フィラーの含有量が50体積%以上であり、組成物中の無機フィラーの分布について、高誘電体組成物の膜厚方向の超薄切片をTEMにより5000倍に拡大観察し、4μm四方の任意の49箇所において全面積に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出したものを単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率としたときに、前記49箇所におけるデータから算出される、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率の最大値と最小値の比が、2.0以上である高誘電体組成物
(3)無機フィラーの平均粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の高誘電体組成物。
)樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の高誘電体組成物。
)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする上記()記載の高誘電体組成物。
)高誘電体組成物の膜厚が2μm以上20μm未満であることを特徴とする上記(1)〜()のいずれか記載の高誘電体組成物。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、無機フィラーの分散状態と比誘電率の関係を詳細に検討し、無機フィラーが高含有率である領域では、無機フィラーの分散状態が比誘電率に大きな影響を与えていることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明の高誘電体組成物は、組成物中の無機フィラーの分布について、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率のばらつきを示す標準偏差が以上であることを特徴とする高誘電体組成物である。また、組成物中の無機フィラーの分布について、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率の最大値と最小値の比が、2.0以上であることを特徴とする高誘電体組成物である。
【0009】
ここでいうばらつきを示す標準偏差、および、最大値と最小値の比の測定は、高誘電体組成物の断面組織を観察することによって行う。高誘電体組成物から膜厚方向における超薄切片を切り出し、5000倍にて拡大観察したTEM像写真を用いる。この写真から4μm四方の微小部を任意に49箇所抽出する。その各微小部49箇所において、全面積(16μm2)に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出し、これをもって、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率とする。次に、無機フィラーの含有率の49個のデータについて、統計学計算により、ばらつきを示す標準偏差、または、最大値と最小値の比を算出する。
【0010】
すなわち、本発明においては、無機フィラーの分散状態を制御された不均一状態にすることが重要である。従来は、無機フィラーが高含有率で、かつ、樹脂中に均一に分散しているのが好ましいとされてきた。しかしながら、本発明者らは、無機フィラーの分散状態と比誘電率の関係を詳細に検討し、無機フィラーが高含有率である領域では、無機フィラーの分散状態が制御された不均一状態にある場合に高誘電率が得られることを見出した。その作用の詳細は不明であるが以下のように推察している。無機フィラーが樹脂中に均一に分散している場合、無機フィラーの容量成分と無機フィラー間を埋める樹脂の容量成分が電気等価回路で直列的につながった状態になり、複合体の比誘電率は比誘電率が低い樹脂に大きく影響されてしまい、無機フィラーを増加させても比誘電率の向上は小さい。むしろ、不均一に分布させ、無機フィラーが膜厚方向に連続して分布する状態で、無機フィラーの容量成分と樹脂成分の容量成分が電気等価回路で並列的につながった状態になり、無機フィラーの高誘電率が活かされる。
【0011】
このような制御された不均一状態を実現するために、種々検討した結果、無機フィラー全てを一次粒子まで粉砕せず、二次粒子の凝集体を残すことが有効であった。
【0012】
本発明の高誘電体組成物においては、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率にばらつきがあることが重要であり、このばらつきを示す標準偏差が4以上であることが重要である。さらに好ましくは、ばらつきを示す標準偏差が7以上、最も好ましくは、9以上である。また、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率の最大値と最小値の比が1.3以上であることが重要であり、さらに好ましくは、1.5以上、最も好ましくは、2.0以上である。
【0013】
本発明の高誘電体組成物を得る方法として、例えば、無機フィラーと樹脂を有するペーストを基板上に塗布し、製膜する方法が挙げられる。
【0014】
本発明で用いられる無機フィラーは、比誘電率が50〜20000のものを用いることが好ましい。さらに好ましくは、比誘電率が100〜10000のものである。比誘電率が50未満の無機フィラーを用いると比誘電率が十分高い高誘電体組成物が得られない。また、比誘電率が20000より大きい無機フィラーでは、温度特性が悪くなる傾向があるため、好ましくない。
【0015】
無機フィラーとして、好ましくは、ペロブスカイト型結晶構造を有するものを用いるのがよい。例えば、二酸化チタン系、チタン酸バリウム系、チタン酸ジルコン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウムネオジウム系、チタン酸バリウム錫系、マグネシウムニオブ酸バリウム系、マグネシウムタンタル酸バリウム系、チタン酸鉛系、ジルコン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、マグネシウムニオブ酸鉛系、ニッケルニオブ酸鉛系、タングステン酸鉛系、タングステン酸カルシウム系、マグネシウムタングステン酸鉛系などのペロブスカイト型結晶構造、あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有するフィラーを用いることができ、これらのうち1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いたりすることができる。また、誘電特性や温度安定性を向上させる目的で、シフター、デプレッサー剤などを添加して用いることも可能である。
【0016】
無機フィラーの平均粒径は0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm、さらに好ましくは、0.3〜0.7μmのものを用いることができる。粒径が小さいフィラーを用いると、フィラーの表面積が大きくなるため、樹脂と混合してペーストを作製した際に再凝集しやすくなり、ペースト粘度が異常に高くなって混練や塗布加工が困難になることが多い。また、フィラーの体積に対して表面積が大きくなり結晶が不安定になって、高誘電相が得られにくく、高誘電体組成物の比誘電率が低くなる。一方、粒径の大きなフィラーを用いると、ペースト中でフィラーが沈降しやすくなったり、高誘電体組成物を薄膜化したときに表面粗さが大きくなる課題がある。
【0017】
無機フィラーの形状は、球形、楕円形、三角状、長方形状、針状などのいずれでもよく、それらを取り合わせて用いることも可能である。
【0018】
無機フィラーを作製する方法は、固相法、水熱合成法、超臨界水熱合成法、ゾルゲル法、蓚酸法など従来の方法を用いることが出来る。
【0019】
次に、本発明で用いられる樹脂は、熱可塑性、熱硬化性樹脂のいずれでも良いが、はんだ耐熱性などの点から、好ましくは熱硬化性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂では、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、フッ素樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、アクリル樹脂などの一般的にプリント配線板の絶縁層に使用される樹脂を用いることができる。特に、熱硬化収縮性、粘性などの点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂とは分子構造中にエポキシ基(オキシラン環)を2個以上含むプレポリマーおよび、それと硬化剤とを組合せた樹脂である。また、この硬化剤には、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、アミノトリアジン化合物、ナフトール化合物など、従来から用いられている硬化剤を用いることができる。
【0020】
本発明で用いられる無機フィラーと樹脂の割合は、無機フィラーと樹脂の合計量を100体積%としたとき、無機フィラーの含有量は好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上である。本発明によれば、無機フィラーの含有量を増やすに従って、高い比誘電率を有する高誘電体組成物を得ることができる。
【0021】
本発明で用いられる無機フィラーの樹脂への分散は、超音波分散、3本ロールミル、クレアミックス、ホモジナイザー、メディア分散機など、従来の方法を用いることができるが、分散状態の制御性の点で3本ロールミル、メディア分散機を用いるのが好ましい。
【0022】
本発明では分散状態を制御された不均一状態にすることが重要である。従って、この分散状態の制御のため、無機フィラーの分散性を適切に制御しなければならない。一般的に無機フィラーの分散性を向上させる、すなわち、無機フィラーを樹脂中に均一に分散させるための方法として、無機フィラー表面の修飾、分散剤の添加、溶剤の添加などが行われる。しかしながら、本発明では、無機フィラーを不均一に分布させ、無機フィラーが膜厚方向に連続して分布する状態としなければならない。従って、無機フィラーの表面の修飾としてはロジン処理、酸性処理、塩基性処理など、また、分散剤としてはノニオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤、多価カルボン酸などの湿潤剤、両親和性物質、高立体障害の置換基を有する樹脂などが挙げられるが、これらの使用については分散状態を過度に均一化しないものを選択する必要がある。また、溶剤の添加によって分散時または分散後の系の極性を制御する場合においても、その選択、使用量については、分散状態を過度に均一化しないものを選択する必要がある。
【0023】
また、分散時間、分散濃度、分散粘度などについても、分散状態を過度に均一化しないようにしなければならない。
【0024】
以上のようにして、無機フィラーと樹脂、さらに適宜、溶剤、分散剤などを有するペースト溶液を基板上に塗布し、製膜することによって本発明の高誘電体組成物が得られる。
【0025】
ペーストを基板上に塗布する方法としては、スピンナー、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーターなどが挙げられる。
【0026】
このようにして、塗布した膜をホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて、溶剤の除去や熱硬化を行う。
【0027】
基板は有機系基板、無機系基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものから選択できる。有機系基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ガラス布・エポキシ銅張積層基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。無機系基板の例としては、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例としては、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や無機フィラーなどを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
【0028】
本発明で得られる高誘電体組成物の形態は、膜状、棒状、球状など、用途に合わせて選択することができるが、特に膜状であることが好ましい。ここでいう膜とは、フィルム、シート、板、ペレットなども含まれる。もちろん、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、または、放熱機能付与など、用途にあわせたパターン形成を行うこともできる。
【0029】
膜として用いる場合の膜厚は、0.5μm以上20μm未満であることが好ましい。さらに好ましくは、2μm以上20μm未満のものである。コンデンサとして大きな静電容量を確保するには膜厚が薄い方が好ましいが、0.5μmより薄い場合にはピンホールなどが発生しやすく、電気的絶縁が得られにくくなる。また、膜厚が20μm以上であるとコンデンサの静電容量が低下し、十分なコンデンサ性能が得られない。
【0030】
コンデンサの単位面積あたりの静電容量としては、1〜20nF/cm2の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、5〜20nF/cm2の範囲にあることが好ましい。また、電気的ノイズを減らすためには、誘電正接は0.01〜5%の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、0.01〜1%の範囲にあることである。これらの電気特性は、周波数20k〜1GHzでの測定とする。
【0031】
本発明で得られる高誘電体組成物は、粗密があるために、耐電圧性に劣る場合があるが、それを避けるために補強層で補うことができる。具体的には、膜の上層、あるいは下層、もしくは上下層に耐電圧性に優れた絶縁膜を形成する方法をとることができる。例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリイミドなどの絶縁膜で補なう構造をとることができる。
【0032】
また、本発明で得られる高誘電体組成物は、粗密があるために、膜強度に劣る場合があるが、それを避けるために補強膜で補うことができる。具体的には、膜の上層、あるいは下層、もしくは上下層に強度に優れた絶縁膜や金属膜を形成するなどの方法をとることができる。例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性樹脂フィルムや銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔などのキャリアテープで支持する構造をとることができる。
【0033】
本発明で得られる高誘電体組成物は、高誘電体層としてプリント配線基板の内蔵コンデンサ作製に用いられる他、多層基板の層間絶縁膜、周波数フィルター、無線用アンテナ、電磁シールドなど、多くの電子部品、装置への適用が可能である。
【0034】
【実施例】
実施例1
主ポリマーとしてエポキシ樹脂(日本化薬(株)製、”フェノライト”EPPN−502H)10重量部、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、TD−2131)10重量部、溶剤としてγ−ブチロラクトン50重量部を混合し、樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液に、無機フィラーとして、チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製、BT−05)313重量部を混合して、樹脂組成物を調整した。このとき、無機フィラーと樹脂の合計量を100体積%としたとき、無機フィラーの含有量は約75体積%であった。次に、この樹脂組成物を3本ロールミルにて混練を行ったのち、厚さ300μmのアルミ基板上にダイコーターを用いて塗布し、オーブンを用いて、80℃×15分間で乾燥させた後、175℃×1時間で硬化させ、膜厚10μmの高誘電体組成物を得た。
【0035】
次に、この高誘電体組成物にアルミ電極を蒸着法により形成し、1MHzにおける誘電特性をインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製、HP4284A、HP16451B)を用いて、JIS K 6911に準じて測定した結果、比誘電率は220、誘電正接は0.9%であり、面積あたりの静電容量は19.5nF/cm2であった。
【0036】
また、この高誘電体組成物の断面組織の観察を行った。膜厚10μmの高誘電体組成物を基板とともにエポキシ樹脂(ビューラー社製、エポキシレジン)に埋込んだ後、膜厚方向における超薄切片(厚さ:100nm)を切り出し、5000倍にて拡大観察しTEM像写真(図1)を得た。この写真から4μm四方の微小部を任意に49箇所抽出し、その各微小部について、全面積(16μm)に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出した。具体的には、コンピューター画像解析法により、TEM像の白黒写真を2値化し(256階調)、その強度を計算した(図2)。なお、図2において3つのピークが見られるが、階調20〜30のピークAは無機フィラー、階調180のピークBは樹脂、そして、階調220のピークCは超薄切片作製時に脱落した無機フィラー痕に帰属される。従って、ピークAとCが無機フィラーに帰属されるものである。これらのピーク分離はピークの谷、すなわち極小部を境界とした。このようにして、各微小部の無機フィラーに相当する面積の比率を算出し、これをもって、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率とした。次に、無機フィラーの含有率の49個のデータについて、統計学計算の結果、ばらつきを示す標準偏差は7.1、また、最大値と最小値の比は2.4であった(図3)。
比較例1
硬化剤としてビスフェノールA型ノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、”フェノライト”VH−4150)を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚5μmの高誘電体組成物を得た。
そして、実施例1と同様にして、誘電特性を測定した結果、比誘電率は85、誘電正接は1.2%であり、面積あたりの静電容量は15.0nF/cm であった。
また、実施例1と同様にして、この高誘電体組成物の断面組織の観察を行った。高誘電体組成物から膜厚方向における超薄切片(厚さ:100nm)を切り出し、5000倍にて拡大観察しTEM像写真(図4)を得た。この写真から4μm四方の微小部を任意に49箇所抽出し、その各微小部について、全面積(16μm )に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出した。具体的には、コンピューター画像解析法により、TEM像の白黒写真を2値化(256階調)し、その画素数から白黒比を計算した(図5)。各微小部の無機フィラーに相当する面積の比率を算出し、これをもって、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率とした。次に、無機フィラーの含有率の49個のデータについて、統計学計算の結果、ばらつきを示す標準偏差は4.1、また、最大値と最小値の比は1.5であった(図3)。
【0040】
実施例2〜3
表1に示した無機フィラー、樹脂、無機フィラーの含有量に従い、また実施例1の方法に基づき、高誘電体組成物を得た。
【0041】
また、実施例1と同様にして、高誘電体組成物の誘電特性を測定した結果、および断面写真における無機フィラーの含有率のばらつきの測定結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
Figure 0004356293
【0043】
比較例
主ポリマーとしてエポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EPPN−502H)10重量部、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、”フェノライト”TD−2131)10重量部、溶剤としてγ−ブチロラクトン50重量部に加えて、分散剤(アビシア社製、ソルスパース#41000)5重量部を混合したこと以外は実施例1と同様にして、膜厚10μmの高誘電体組成物を得た。
【0044】
そして、実施例1と同様にして、誘電特性を測定した結果、比誘電率は34、誘電正接は2.5%であり、面積あたりの静電容量は3.0nF/cm2であった。
【0045】
また、実施例1と同様にして、この高誘電体組成物の断面組織の観察を行なった結果、無機フィラーの含有率のばらつきを示す標準偏差は3.8、また、最大値と最小値の比は1.2であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明の高誘電体組成物は、無機フィラーと樹脂を有する高誘電体組成物で、比誘電率が40以上と高いものであり、コンデンサや、コンデンサとしての機能を有する回路基板材料として好適な特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のTEM像写真
【図2】実施例1のTEM像写真における階調ごとの強度を示した図
【図3】実施例1、2における無機フィラー含有率のヒストグラム
【図4】実施例2のTEM像写真
【図5】実施例2のTEM像写真における階調ごとの強度を示した図
【符号の説明】
1 ピークA(無機フィラー)
2 ピークB(樹脂)
3 ピークC(超薄切片作製時に脱落した無機フィラー痕)

Claims (6)

  1. ペロブスカイト型結晶構造を有する無機フィラーと樹脂を有する高誘電体組成物であって、無機フィラーと樹脂の合計量に対する無機フィラーの含有量が50体積%以上であり、組成物中の無機フィラーの分布について、高誘電体組成物の膜厚方向の超薄切片をTEMにより5000倍に拡大観察し、4μm四方の任意の49箇所において全面積に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出したものを単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率としたときに、前記49箇所におけるデータから算出される、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率のばらつきを示す標準偏差が以上である高誘電体組成物。
  2. ペロブスカイト型結晶構造を有する無機フィラーと樹脂を有する高誘電体組成物であって、無機フィラーと樹脂の合計量に対する無機フィラーの含有量が50体積%以上であり、組成物中の無機フィラーの分布について、高誘電体組成物の膜厚方向の超薄切片をTEMにより5000倍に拡大観察し、4μm四方の任意の49箇所において全面積に占める無機フィラーに相当する面積の比率を算出したものを単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率としたときに、前記49箇所におけるデータから算出される、単位体積あたりに存在する無機フィラーの含有率の最大値と最小値の比が、2.0以上である高誘電体組成物
  3. 無機フィラーの平均粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1または2記載の高誘電体組成物。
  4. 樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の高誘電体組成物。
  5. 熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項記載の高誘電体組成物。
  6. 高誘電体組成物の膜厚が2μm以上20μm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の高誘電体組成物。
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