JP2007027101A5 - - Google Patents

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ペースト組成物、誘電体組成物、誘電体シート、およびこれらを用いたキャパシタ内蔵回路基板
本発明は、回路基板などの内層や上層に形成するキャパシタの層間絶縁膜に好適に用いることができるペースト組成物、誘電体組成物、Bステージ誘電体シート、およびこれらを用いたキャパシタ内蔵回路基板に関する。
電子機器の小型化、軽量化、低コスト化のために、モジュールやパッケージの実装の高密度化が進められている。高密度実装の一つの手段として、キャパシタなどの受動部品をモジュール基板内、実装基板内やトランジスター作製後の半導体ウェハ上に作り込む方法がある。キャパシタの静電容量は層間絶縁膜の誘電率に比例するため、大容量化には誘電率が大きい層間絶縁膜を用いることが有利である。従来、高誘電率無機粒子を樹脂中に分散したペースト組成物を塗布、乾燥、硬化させてキャパシタ用層間絶縁膜を得るという方法が知られている(特許文献1参照)。上記方法による高誘電率無機粒子含有のキャパシタ用層間絶縁膜は、高誘電率無機粒子の充填率を増やすことにより比誘電率をあげることができる。
また、キャパシタ用層間絶縁膜に用いるベース樹脂は、耐熱性や信頼性に優れ既存の設備を有効に利用できるといった観点から、熱硬化性樹脂を用いる場合が多い。高周波化に伴う信号減衰の問題から、熱硬化樹脂の中でも低誘電正接である樹脂を用いる場合が多い。しかしながら、低誘電正接である樹脂は、分子の極性を減らすと共に、硬化物の分子骨格および側鎖が剛直で分子の運動性が低くなる構造を有するため、可撓性が低く、取り扱い性、作業性などの物理的特性が不十分である場合がある。
可撓性を有する熱硬化性複合誘電体フィルムを形成する技術としては特許文献2に記載された方法がある。このようなキャパシタ用の層間絶縁層として半硬化または未硬化の熱硬化性樹脂を含むフィルムを回路基板へ作り込む方法としては、銅箔付きの回路基板基材と当該フィルムの積層を加熱プレス成型によって行うのが一般的である。回路基板基材は、ガラスクロスにエポキシなどの樹脂を含浸させたものに銅箔を貼り合わせたものが一般的である。このような基材では、加熱による樹脂硬化の収縮が面内方向ではガラスクロスの存在により大幅に抑制される。しかしながら、特許文献2に記載された誘電体フィルムでは樹脂成分が多いため、加熱硬化時の収縮が大きく、回路基板基材との積層時の加熱プレス成型において、積層界面や熱硬化性誘電体フィルムを硬化させて作製した複合誘電体層に大きな応力が発生する。この応力が原因となり、積層界面の剥離や複合誘電体層にクラックが発生するなどの問題があった。
また、特許文献2に記載された誘電体フィルムでは、樹脂成分が多いため、回路基板基材との積層のための加熱プレス時に流動による膜厚の変動、不均一が起きやすい。キャパシタにおいては層間絶縁膜の膜厚は、静電容量に反比例するパラメーターであるため、この膜厚の変動、不均一はプロセス安定性の点で問題であった。
キャパシタの静電容量は層間絶縁膜の厚さに反比例するため、大静電容量化には層間絶縁膜は薄い方が有利である。しかしながら、特許文献2の誘電体フィルムでは平均粒径が1μmより大きい材料を用いているため、厚さ数μm〜十数μmの層間絶縁膜を均一に形成することが困難である。
また、液状エポキシ樹脂に平均粒径が9〜22μmと大きいチタン酸バリウムなどの粒子を、溶剤を用いずに充填して高比誘電率Bステージシートを形成する方法が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に開示されている技術では、平均粒径が1μm以下の小さい粒子を用いる場合は、エポキシ樹脂と粒子の混合物の粘度が高すぎて粒子を均一に分散させることが困難であり、Bステージシート中に空隙が多量に発生し、Bステージシートの比誘電率を大きくすることができないという問題がある。また、粒子分散樹脂の膜厚を薄くしようする場合、膜厚が粒子径の制限を受けるため、特許文献3に記載されたように径の大きい粒子を用いた材料を層間絶縁材料としてキャパシタを作製する場合、層間絶縁材料の厚さを薄くすることが困難なため、キャパシタの静電容量を大きくできないという問題もある。
また、ペースト組成物を銅箔などの金属ベース基材に直接コーティングして、半硬化状態である銅貼樹脂複合材料を形成する方法も知られている(特許文献4参照)。樹脂複合材料の厚みを均一に制御することが可能であり、誘電特性の安定したキャパシタ用層間絶縁膜を形成することができる。しかしながら、高誘電率無機粒子を高充填した樹脂複合材料を他の基材と十分な密着力を持たせることは困難であった。また、銅張樹脂複合材料を巻き取る際に表面をカバーフィルムなどの保護フィルムで覆うが、樹脂複合材料にタックがないとカバーフィルムと密着せず、巻き取り時に巻きムラが生じるという問題点があった。
特開2005−38821号公報(特許請求の範囲) 特開2002−356619号公報(特許請求の範囲) 特開2001−192536号公報(特許請求の範囲) 特開平8−323916号公報(特許請求の範囲)
かかる状況に鑑み、本発明は、キャパシタ用層間絶縁膜を回路基板やパッケージに内蔵する際に、層間絶縁膜と接する他の材料との界面にかかる応力が小さく、密着力に優れた誘電率が大きいキャパシタ用層間絶縁膜を提供することができるペースト組成物、誘電体組成物、Bステージ誘電体シート、およびこれらを用いたキャパシタ内蔵回路基板を提供する。
すなわち本発明は、(a)エポキシ樹脂、(b)高誘電率無機粒子、(c)溶剤を有し、(a)エポキシ樹脂が分子中に1個以上のシクロヘキサン環を有し、25℃、1.01325×10Paにおいて粘度が150Pa・s以下の樹脂であり、(b)高誘電率無機粒子の平均粒径が0.01μm以上1μm以下の範囲にあって、(b)高誘電率無機粒子の総体積と(a)エポキシ樹脂の総体積の合計体積に対する高誘電率無機粒子の割合Vfが70体積%より大きいものであるペースト組成物である。また本発明は、前記ペースト組成物から得られる誘電体組成物、Bステージ誘電体シート、およびこれらを用いたキャパシタ内蔵回路基板である。
本発明のペースト組成物、誘電体組成物を用いることで、層間絶縁膜と接する他の材料との界面にかかる応力が小さく、絶縁抵抗が大きく、比誘電率が大きく、密着力に優れた回路基板等に内蔵するキャパシタ用層間絶縁膜を提供することができる。また、本発明のBステージ誘電体シートは、カバーフィルムと共にロール状に巻き取った際に巻き取りシワが生じにくく、必要に応じて任意の大きさにカットすることができる。また本発明のBステージ誘電体シートは上記効果の他に、回路基板の任意の場所に容易に仮止めでき、厚みが均一かつ密着力の高いキャパシタ用層間絶縁膜に用いることができる。
本発明のペースト組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)高誘電率無機粒子、(c)溶剤を有し、(a)エポキシ樹脂が分子中に1個以上のシクロヘキサン環を有し、25℃、1.01325×10Paにおいて粘度が150Pa・s以下の樹脂であり、(b)高誘電率無機粒子の平均粒径が0.01μm以上1μm以下の範囲にある。
エポキシ樹脂には固形のものと液状のものがあるが、本発明で用いるエポキシ樹脂は、25℃、1.01325×10Paにおいて粘度が150Pa・s以下であり、液状である。より好ましくは25℃、1.01325×10Paにおいて粘度が50Pa・s以下5mPa・s以上である。25℃、1.01325×10Paにおいてエポキシ樹脂の粘度が150Pa・s以下であり、液状であることにより、高誘電率無機粒子を高充填したBステージ誘電体シートにおいても、十分なタック性、すなわち一時的な固定ができる粘着性が存在する。固形のエポキシを用いた場合は、ペースト作製工程で溶剤に溶かした溶液状とするが、Bステージ化の課程において脱溶剤するためにエポキシ樹脂成分が固形物質に戻り、タック性が存在しなくなる。
25℃、1.01325×10Paにおいてエポキシ樹脂の粘度が50Pa・s以下であることにより、高誘電率無機粒子の総体積とエポキシ樹脂の総体積に対する高誘電率無機粒子の割合Vfが70体積%より大きいBステージ誘電体シートにおいても、一時的な固定ができる粘着性を発現させやすくなる。25℃、1.01325×10Paにおいてエポキシ樹脂の粘度が5mPa・s未満では、高誘電率無機粒子を高充填した誘電体組成物において、十分な硬さが得られず、脆く、壊れやすくなる。
タック性の存在により、Bステージ誘電体シートをカバーフィルムとともにラミネートしつつロール状に巻き取った際に、ラミネート不良による空隙の噛み込みやシワの発生が起きにくくなる。Bステージ誘電体シート表面の汚染、傷の防止の点からカバーフィルムを設けることは、製品製造上重要である。また、回路基板へキャパシタ用層間絶縁膜を形成するためにBステージ誘電体シートを組み込む製造工程において、位置決めのための一時的固定ができるなどの点でも、タック性の存在はメリットがある。
また、液状のエポキシ樹脂を用いるもう1つのメリットは、Bステージ誘電体シートが、固形のエポキシ樹脂を用いた場合に比べ柔軟性の高いものとなることである。フレキシブル基材上に形成することで、クラックの発生なくロール状に巻くことが容易にできる。
エポキシ樹脂がシクロヘキサン環を有すると、エポキシ樹脂の粘度を下げることができる。これにより、高誘電率無機粒子を高充填しやすくなる。さらには、ベンゼン環を有するエポキシ樹脂を用いた場合と比べて、より高い柔軟性、より高い強靱性、より高い接着性などを付与することができる。
液状でシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂に、高誘電率無機粒子を高充填したペースト組成物から形成されたBステージ誘電体シートは、可撓性が高く、銅箔やフィルムなどのフレキシブルな基材上に形成でき、基材と一体化したフレキシブルシートとすることができる。
本発明で用いることができる(a)分子中に1個以上のシクロヘキサン環を有し、25℃、1.01325×10Paにおいて粘度が150Pa・s以下のエポキシ樹脂は、エピコートYX8000、エピコートYX8034、エピコートL6753、エピコートYL6800、エピコートYL7040(以上商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、セキサロイド2021、EHPE 3150CE(以上商品名、いずれもダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化が著しく進む温度よりも低い温度で脱溶剤することによって得られる本発明のBステージ誘電体シートは、他の基材との密着性が高い。また本発明のBステージ誘電体シートを硬化し、誘電体組成物とし、キャパシタの層間絶縁膜を得ることができる。なお、本発明において「Bステージ」とは、ペースト組成物を硬化が著しく進む温度よりも低い温度で脱溶剤することによって得られるものであり、エポキシ樹脂が未硬化状態または、エポキシ樹脂の硬化率が50%以下の状態にあることを指す。誘電体組成物は、ペースト組成物を脱溶剤、固化し、エポキシ樹脂の硬化率が80%以上となったものを指す。
本発明のエポキシ樹脂の硬化率は、以下のようにして求めることができる。エポキシ樹脂の硬化反応は、エポキシ環の開環反応であるため、硬化反応によるエポキシ環の減少割合から硬化率を定義することができる。即ち、硬化反応後のエポキシ環の量を、硬化反応前のエポキシ環の量で除したもの硬化率として求めることができる。具体的には、エポキシ樹脂を含む材料の硬化反応前、硬化反応後の両方試料の表面に対する、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)・ATR(Attenuated Total Reflection)法によるスペクトル測定を利用する。エポキシ環に由来する赤外吸収ピークは、波数915cm−1付近に存在するため、硬化反応前と硬化反応後の両方の試料それぞれのこの波数のピークを用いて評価することができる。硬化率は、硬化後の試料の波数915cm−1付近の赤外吸収ピークの相対強度を、硬化前の試料の波数915cm−1付近の赤外吸収ピークの相対強度で除したものとすることができる。相対強度は、波数915cm−1付近の赤外吸収ピーク強度を基準赤外吸収ピークの強度で除したものである。基準赤外吸収ピークには、用いているエポキシ樹脂の赤外吸収ピークであって、エポキシ樹脂以外のいずれの含有成分にも吸収されない波数のものを用いる。
本発明の(a)エポキシ樹脂に、液状のエポキシ樹脂が有する上記のタック性、柔軟性という特徴を阻害しない範囲であれば固形のエポキシ樹脂を混合してもよい。液状エポキシ樹脂の含有量が、エポキシ樹脂全量の80重量%未満となると、Bステージ誘電体シート中の高誘電率無機粒子の総体積と樹脂の総体積に対する高誘電率無機粒子の割合Vfが70%より大きい場合に、タック性が十分でない場合があり、カバーフィルムのラミネート時に不良が生じる場合がある。本発明において、ペースト組成物、及び誘電体組成物における樹脂の総体積とは、溶剤等の揮発成分と高誘電率無機粒子を除く、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤などの化合物の総体積である。
(a)エポキシ樹脂は一般式(1)または(2)で表される構造を有する樹脂であることがより好ましい。一般式(1)または(2)で表される構造を有する樹脂は可撓性が高く、高誘電率無機粒子を高充填したペースト組成物を用いて形成した膜においても可撓性が高い。また、一般式(1)または(2)で表される構造を有するエポキシ樹脂に高誘電率無機粒子を高充填した誘電体組成物は、他のエポキシ樹脂を用いた場合と比べて、絶縁抵抗が高い。さらに、Bステージ誘電体シートは、他の基材との密着性が高いため電極との接着性も良く、キャパシタを容易に形成することができる。
Figure 2007027101
は、水酸基および/またはエーテル基を含む炭素数1〜10までの有機基を示す。Rは上述の有機基から選択され、水酸基を有する有機基の具体的な例としては、−CH−CHOH−CH−、−CH−CH−CHOH−CH−CH−などが挙げられる。エーテル基を有する有機基の具体的な例としては、−O−、−O−CH−CH−CH−O−、−CH−CH−CH−O−などが挙げられる。Rは水酸基および/またはエーテル基を含む炭素数1〜10までの有機基より選ばれる基を組み合わせて構成される。さらに好ましいRの具体的な例としては、−O−CH−CHOH−CH−O−、−O−CH−CHOH−O−などが挙げられる。R、Rは各々独立に水素原子、メチル基から選択される。nは1〜10の範囲を示す。
一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有するエポキシ樹脂においては、エポキシ基は、主鎖、側鎖のいずれに含まれていても良い。2官能タイプで主鎖が側鎖に比べ長い構造のエポキシ樹脂の場合は、反応性が高くなる点から、主鎖の両末端にエポキシ基を有するものが好ましい。
一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する樹脂としては、エピコートYX8000、エピコートYX8034、エピコートYL6753(以上商品名、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
また、(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量が100g/eq以上300g/eq以下であることが好ましい。より好ましくは150g/eq以上250g/eq以下であることが好ましい。エポキシ当量が100g/eqより小さい場合は、硬化反応で生成する水酸基が多く、水酸基濃度が高いため、吸湿率が高くなり、パッケージ中の吸湿成分が急激に熱膨張することによりハンダクラックが発生するおそれがある。エポキシ当量が150g/eqより小さい場合は、極性基が多いため誘電正接が大きくなる場合がある。エポキシ当量が300g/eqより大きい場合は、架橋密度が小さくなり、内部応力の上昇に伴う密着性や耐クラック性の低下をきたす場合がある。エポキシ当量が250g/eqより大きい場合は、25℃、1.01325×10Paにおいて固形、又は半固形のものが多く、成形性、作業性において自由度が低くなるおそれがある。また、未硬化状態の膜を積層した場合に、他の基材との密着性が低下する。
本発明は、必要に応じて硬化剤が添加される。例えば、一般にエポキシ樹脂に使用されている硬化剤を添加することができる。このような硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などが例示される。また、これらの硬化剤は相互に併用してもよい。
さらに、硬化剤と共に硬化促進剤を用いることができる。このような硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、トリフェニルホスフィン、トリス(2,4−ペンタジオナト)コバルトなどの金属キレート化合物などが挙げられる。
本発明で用いられる(b)高誘電率無機粒子の平均粒径が0.01μm以上1μm以下であることが必要である。
本発明では、高誘電率無機粒子には、原料として複数種の高誘電率無機粒子を混合して用いても良い。複数種用いる場合、高誘電率無機粒子のそれぞれの原料時の平均粒径が異なっていても良く、高誘電率無機粒子のそれぞれの原料時の組成が異なっていても良い。平均粒径が0.01μm以上では、分散後の再凝集が起こりにくく、ペーストの分散安定性が良い。また、それらの高誘電率無機粒子どうしが二次凝集しにくくなるために、凝集体を解し、分散させやすい。平均粒径が1μmより大きくなると、この粒子を有するペースト組成物中で、高誘電率無機粒子が沈降しやすくなり、十分な保存安定性を確保しにくくなる。また、Bステージ誘電体シートを他の基材とプレスなどにより密着させる際に、膜厚や形状が変化しやすい。さらに、この粒子を有するペースト組成物を硬化して得られる誘電体組成物をキャパシタの層間絶縁層とした場合に、薄い層を得ることが困難であり、キャパシタの静電容量がこの層の厚さに反比例するため、大きな容量のキャパシタを得ることが困難になる。
高誘電率無機粒子がマルチモーダルであると、高誘電率無機粒子をエポキシ樹脂に対して高充填化しやすくなり好ましい。マルチモーダルとは、対象とする粒子の粒径分布において、複数の極大値を有するような粒子群の状態を言う。マルチモーダル状態にある粒子を高密度に充填しようとすると、大きな粒子が形成する間隙に小さい粒子が入り込むことが幾何学的に可能となり、単一粒径を有する粒子群に比べ理論的な限界充填密度が向上する。一方、マルチモーダルに対し、粒径分布中に一つの極大値しか有しない粒子群の状態をユニモーダルと言う。粒径分布の最大値(極大値)が異なっているユニモーダル状態にある粒子群を複数種類混合して用いることで、マルチモーダル状態にある粒子群を容易に得ることができる。例えば、粒径分布の最大値(極大値)が異なっている2種類の粒子を混合して得られる粒子群の状態をバイモーダルと言う。本発明の誘電体組成物を得るための樹脂を硬化させる熱処理温度(例えば300℃以下)では、セラミックスを作製する場合のような高温(例えば1000℃)ではないため、高誘電率無機粒子の焼結や粒成長はおきない。このため、ペースト組成物、誘電体組成物、Bステージ誘電体シートのいずれの状態においても、原料に用いた高誘電率無機粒子の一次粒径は変化せず、保持される。すなわち、原料に用いる高誘電率無機粒子がマルチモーダル状態にあれば、ペースト組成物、誘電体組成物、Bステージ誘電体シートにおいても高誘電率無機粒子はマルチモーダル状態となる。一次粒径とは、凝集を解した状態における粒子の粒径を言う。
しかしながら、平均粒径が0.01μm未満の高誘電率無機粒子を用いると、粒子の凝集がおこりやすく、実質的に小さい粒子とならないために、高充填率化が進まず、小さい粒子を用いる効果が得にくくなる。平均粒径が1μmより大きい高誘電率無機粒子を用いると、高誘電率無機粒子を有するペースト組成物中で、高誘電率無機粒子が沈降しやすくなり、十分な保存安定性を確保しにくくなる。さらには、高誘電率無機粒子の比表面積が小さくなるため、体積当たりの樹脂との相互作用が小さくなり、Bステージ誘電体シートに、回路基板基材との積層のための加熱プレスなど行うと、Bステージ誘電体シートが流動してしまい、大きな膜厚の変動や不均一が起きてしまうことがある。
平均粒径が1μm以下の場合、高誘電率無機粒子の比表面積が大きくなり、体積当たりの樹脂との相互作用が大きく、抵抗が増すため、膜厚の変動、不均一を抑制することができる。さらに、平均粒径が1μmより大きくなると、この粒子を有するペースト組成物を硬化して得られる誘電体組成物をキャパシタの層間絶縁層とした場合に、薄い層を得ることが困難であり、キャパシタの静電容量がこの層の厚さに反比例するため、大きな容量のキャパシタを得ることが困難になる。
本発明のペースト組成物、誘電体組成物、Bステージ誘電体シート及びその誘電体組成物中に含まれる平均粒径の測定は、誘電体組成物を形成し、その薄膜の膜厚方向に膜断面を切り出した超薄切片に対してXMA測定、および透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行うことにより測定できる。高誘電率無機粒子と樹脂で電子線に対する透過率が異なるので、TEM観察像中で高誘電率無機粒子と樹脂はコントラストの違いにより識別できる。複数種の高誘電率無機粒子が使用されている場合の各高誘電率無機粒子の同定はXMA測定に基づく元素分析および電子線回折像観察による結晶構造解析を行うことにより可能である。このようにして得られた高誘電率無機粒子と樹脂の面積の分布を画像解析により求め、高誘電率無機粒子の断面を円形と近似して面積から粒径を算出できる。粒径の評価は倍率5000倍と40000倍のTEM画像について行えばよい。算出された粒径の分布を倍率が5000倍のTEM画像において0.1μm刻みのヒストグラム、倍率が40000倍のTEM画像において0.01μm刻みのヒストグラムで表す。得られたヒストグラムの各カラムに対し、その中心値と度数の積を求める。次にそれらの積の和を度数の総和で除したものを平均粒径とする。なお、粒径分布の評価法としては上記の方法でTEMのかわりに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いても良い。
また、他の手法として、高誘電率無機粒子のブラウン運動による散乱光の揺らぎを測定する動的光散乱法、高誘電率無機粒子を電気泳動したときの散乱光のドップラー効果を測定する電気泳動光散乱法などによって平均粒径を測定することができる。レーザー回折、散乱式の粒度分布測定装置としては例えば(株)堀場製作所製LA−920や(株)島津製作所製SALD−1100、日機装(株)製MICROTRAC−UPA150等がある。
高誘電率無機粒子の誘電特性としては、比誘電率が50〜30000のものを用いることが好ましい。比誘電率が50未満の高誘電率無機粒子を用いると比誘電率が十分大きい誘電体組成物が得られない。また、比誘電率が30000を越えるものでは、比誘電率の温度特性が悪くなる傾向がある。ここでいう高誘電率無機粒子の比誘電率とは、高誘電率無機粒子を原料粉末として、加熱、焼成して得られる焼結体の比誘電率をさす。焼結体の比誘電率は、例えば以下の手順によって測定する。高誘電率無機粒子をポリビニルアルコールのようなバインダー樹脂、有機溶剤もしくは水を混合して、ペースト状組成物を作製したのち、ペレット成型器の中に充填して、乾燥させ、ペレット状固形物を得る。そのペレット状固形物を、例えば900〜1200℃程度で焼成することにより、バインダー樹脂を分解、除去し、高誘電率無機粒子を焼結させ、無機成分のみからなる焼結体を得ることができる。このとき、焼結体の空隙は十分小さく、理論密度と実測密度から計算した空隙率が1%以下となっていることが必要である。この焼結体ペレットに上下電極を形成し、静電容量および寸法の測定結果から、比誘電率を計算する。
高誘電率無機粒子は、ペロブスカイト型結晶構造、あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有するものが比誘電率を大きくしやすいことから好ましい。これらは、例えばチタン酸バリウム系、チタン酸ジルコン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウムネオジム系、チタン酸バリウム錫系、マグネシウムニオブ酸バリウム系、マグネシウムタンタル酸バリウム系、チタン酸鉛系、ジルコン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、マグネシウムニオブ酸鉛系、ニッケルニオブ酸鉛系、タングステン酸鉛系、タングステン酸カルシウム系、マグネシウムタングステン酸鉛系、二酸化チタン系、などを挙げることができる。チタン酸バリウム系とは、チタン酸バリウム結晶内の一部の元素を他の元素で置換したり、結晶構造内に他の元素を侵入させたりした、チタン酸バリウムを母材とする固溶体を含めた総称である。その他のチタン酸ジルコン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸カルシウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸バリウムネオジム系、チタン酸バリウム錫系、マグネシウムニオブ酸バリウム系、マグネシウムタンタル酸バリウム系、チタン酸鉛系、ジルコン酸鉛系、チタン酸ジルコン酸鉛系、ニオブ酸鉛系、マグネシウムニオブ酸鉛系、ニッケルニオブ酸鉛系、タングステン酸鉛系、タングステン酸カルシウム系、マグネシウムタングステン酸鉛系もいずれも同様で、それぞれを母材とする固溶体を含めた総称である。
なお、ペロブスカイト型結晶構造、あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有する高誘電率無機粒子は、これらのうち1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いたりすることができる。高い比誘電率を有する誘電体組成物を得る場合には、商業的利便性との両立の点から、主としてチタン酸バリウムからなる化合物を用いることが好ましい。但し、誘電特性や温度安定性を向上させる目的で、シフター、デプレッサー剤などを少量添加して用いてよい。
高誘電率無機粒子の作製方法は、固相反応法、水熱合成法、超臨界水熱合成法、ゾルゲル法、しゅう酸塩法などの方法が挙げられる。最大の平均粒径を有する高誘電率無機粒子の作製方法としては、高い比誘電率と品質安定性の点から、固相反応法、あるいはしゅう酸塩法、水熱合成法を用いることが好ましい。また、最小の平均粒径を有する高誘電率無機粒子の作製方法は、小粒径化が容易であるという理由から、水熱合成法、超臨界水熱合成法、ゾルゲル法、アルコキシド法のいずれかを用いることが好ましい。
高誘電率無機粒子の形状は、球状、略球状、楕円球状、針状、板状、鱗片状、棒状、立方体(サイコロ)状などが挙げられるが、特に、球形あるいは略球形であることが好ましい。球状あるいは略球状の高誘電率無機粒子は、最も比表面積が少ないために充填時に高誘電率無機粒子凝集や樹脂流動性低下などを生じにくいからである。これらのうち1種を単独で用いたり、2種以上を混合して用いることができる。
低線膨張係数、および高比誘電率を得るためには、これらの高誘電率無機粒子を高充填率で樹脂に含有させることが望ましい。
本発明のペースト組成物、及び誘電体組成物に含まれる高誘電率無機粒子と樹脂の割合としては、高誘電率無機粒子の総体積と樹脂の総体積の合計体積に対する高誘電率無機粒子の割合Vfが、70体積%より大きく90体積%以下であることが好ましい。Vfが70体積%より大きい場合、少なくとも2種類の平均粒径を有する高誘電率無機粒子を用いた効果が顕著になり、大きい比誘電率が得られる。
また、Bステージ誘電体シートを完全に硬化する際に、樹脂成分の硬化反応に伴う体積収縮が起こり、回路基板基材などの他の材料と誘電体組成物の界面において応力が発生し、界面において剥離やクラックが生じやすい。しかしながら、高誘電率無機粒子含有率が70%より大きい場合、硬化による体積変動がない高誘電率無機粒子が多量に含まれることによって、硬化反応時の体積収縮を大幅に抑制することができ、回路基板基材などの他の材料と誘電体組成物の界面にかかる応力を低減し、剥離やクラックを生じにくくすることができる。また、誘電体組成物の比誘電率が大きくなるばかりでなく、熱膨張係数が十分小さくなりやすい。このような誘電体組成物をキャパシタの層間絶縁膜として用いると、層間絶縁膜と金属電極や、層間絶縁膜とキャパシタを組み込む回路基板、あるいは層間絶縁膜とシリコン基板との各々の熱膨張係数差が小さくなり、キャパシタの信頼性や安定性の高いものを得やすくなる。
一方、Vfが90体積%以下の場合、長期の保存時でも接着性が低下しにくい。また、Vfが90体積%より大きくなると、Bステージ誘電体シートのタック性や柔軟性が十分でなくなることがある。また、製膜時の成形性が難しく、高誘電率無機粒子の分散が制御しにくい。
本発明のペースト組成物は、(c)溶剤を有する。(c)溶剤を有することによって、平均粒径が1μm以下の高誘電率無機粒子がエポキシ樹脂中に均一に分散でき、さらにVfが70体積%より大きい高誘電率無機粒子の高充填が容易となる。平均粒径が1μm以下の高誘電率無機粒子は比表面積が大きいために、溶剤なしでエポキシ樹脂に高充填すると、ペースト組成物の粘度が増加し、流動性が低くなり、高誘電率無機粒子をエポキシ樹脂中に均一に分散することが困難となる。また、上記ペースト組成物を用いて製膜、脱溶剤、固化して得られた誘電体組成物は、成形性が困難な上に、誘電体組成物中の空隙率が大きくなり、大きな比誘電率を得にくい。さらに高誘電率無機粒子の平均粒径が0.5μm以下の場合は、その影響が顕著となり、流動性のあるペースト組成物を得るのが困難となる。
本発明で用いられる(c)溶剤は、少なくともその1種が、ラクトン構造を有し、その含有量が、溶剤全量に対し10重量%以上100重量%以下であることが好ましい。ラクトン構造を有する溶剤のうち、最も好ましい溶剤はγ−ブチロラクトンである。ラクトン構造を有する溶剤の含有量が、10重量%以上100重量%以下であると、誘電体組成物中の空隙率が小さくなるため、誘電特性の安定性の阻害要因となる水分吸着サイト量が小さくなることから好ましい。誘電体組成物中の空隙率がより小さくなり、高誘電率無機粒子を高充填した場合に比誘電率が大きくなる効果が顕著になることから、ラクトン構造を有する溶剤の含有量が50重量%以上100重量%以下であることがより好ましい。
それ以外の本発明で用いられる溶剤は、樹脂を溶解するものを適宜選択することができる。溶剤は、例えば、メチルセロソルブ、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン、トリクロロエチレン、ベンジルアルコール、メトキシメチルブタノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびそのアセテートなどや、これらのうちの1種類以上を含有する有機溶剤混合物が好ましく用いられる。
また沸点160℃以上の溶剤を用いることが好ましい。溶剤の沸点が160℃以上では、空隙の発生が抑制されて、誘電体組成物の比誘電率を高くしやすい。沸点が160℃より低いと、溶剤の揮発速度が速いため、熱処理時の物質移動による緻密化が追いつかず、空隙部が増加し、誘電体組成物の比誘電率が低下することが多くなる。より好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上である。また、本発明で用いられる溶剤は、沸点300℃以下であることが好ましく、より好ましくは280℃以下である。沸点が280℃より高くなると、脱溶剤のための処理が高温となり、高温化によって樹脂が分解し、誘電特性の劣化などが起こる。また300℃より大きくなると、樹脂の分解がより激しくなり、機械強度の低下が起きる。本発明のペースト組成物に使用する溶剤は、沸点160℃以上のもの1種のみでもよいが、沸点160℃以上の溶剤を含有していれば、それ以外の溶剤を含んでいても良い。
沸点160℃以上の溶剤は、メシチレン、アセトニルアセトン、メチルシクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルフェニルケトン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソホロン、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクタム、エチレングリコールアセテート、3−メトキシ3−メチルブタノールおよびそのアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、シュウ酸エステル、マロン酸ジエチル、マレイン酸エステル、炭酸プロピレン、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール等がある。
本発明でいう沸点とは、1気圧、即ち1.01325×10N/mの圧力下での沸点である。沸点の測定は公知の技術を用いて行うことができ、特に限定されないが、例えば、Swietoslawskiの沸点計を用いることで測定できる。
本発明のペースト組成物は必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、溶解調整剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
本発明のペースト組成物中の全溶剤量は、ペースト組成物全量の40重量%以下であることが好ましい。より好ましくは35重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、さらにより好ましくは25重量%以下である。また5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。溶剤量が40重量%以下では、製膜時に5μm以上の膜厚を得やすく、凹凸の大きい基材に塗布した場合に連続膜が得られ、リークが起こりにくく、絶縁抵抗値を大きくすることが容易となる。また、溶剤量が35重量%以下では、乾燥時の溶剤揮発による空隙の発生が抑制されて、誘電体組成物の比誘電率を高くすることができる。また吸湿の原因となりうる空隙量が小さいために、湿度、水分の影響による物性変化が小さくできる。さらに保存耐久性が優れている。溶剤量が35重量%より多いと、溶剤を除去する乾燥工程および熱硬化工程で空隙部が増加し、誘電体組成物の比誘電率が低下することが多い。溶剤量が5重量%以上では、溶剤量が十分であるために、ペースト組成物の粘度や均一性を得やすくなる。溶剤量が1重量%未満では溶剤が少ないため、0.5μm以下の無機フィラーを高充填化した際に半固形状となり、ペースト組成物の粘度や均一性が損なわれる。
なお、高誘電率無機粒子の充填率が高くなるにつれて、上記溶剤量による影響は大きくなり、高誘電率無機粒子がペースト組成物に含まれる溶剤を除く成分の総重量の80重量%以上の場合に、本発明の効果が特に大きい。
本発明のペースト組成物は、高誘電率無機粒子を樹脂と溶剤を有する溶液へ分散することによって得られる。例えば、液状樹脂、もしくは樹脂溶液に高誘電率無機粒子を加えて混合分散する方法や、予め高誘電率無機粒子を適当な溶剤中に分散した分散液を作製し、その分散液と液状樹脂、もしくは樹脂溶液を混合するレットダウン法などによって作製される。また、液状樹脂、もしくは樹脂溶液または溶剤中へ高誘電率無機粒子を分散させる方法は特に限定されず、例えば、超音波分散、ボールミル、ロールミル、クレアミックス、ホモジナイザー、メディア分散機などの方法を用いることができるが、特に、分散性の点でボールミル、ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高誘電率無機粒子分散の際、分散性を向上させるために、例えば、高誘電率無機粒子の表面処理、分散剤の添加、界面活性剤の添加、溶剤の添加などを行っても良い。高誘電率無機粒子の表面処理としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系などの各種カップリング剤、脂肪酸、リン酸エステルなどによる処理のほか、ロジン処理、酸性処理、塩基性処理などが挙げられる。また、分散剤の添加の例としては、リン酸、カルボン酸、脂肪酸、およびそれらのエステル類などの酸基を有する分散剤などが挙げられ、特に、高誘電率無機粒子表面の水酸基と反応し、粒子表面を覆うことができることから、リン酸エステル骨格を有する化合物が好ましく用いられる。そのほか、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤、多価カルボン酸などの湿潤剤、両親和性物質、高立体障害の置換基を有する樹脂などの添加が挙げられる。また、分散時または分散後の系の極性は、溶剤の添加で制御することができる。また、ペースト組成物は必要に応じて、安定化剤、分散剤、沈降防止剤、可塑剤、酸化防止剤などを含有してもよい。
本発明の誘電体組成物を得る方法として、例えば、まず、高誘電率無機粒子を樹脂と溶剤を有する溶液に混合させたペースト組成物を作製し、そのペースト組成物をある被着体(例えば基板)に塗布し、脱溶剤し、樹脂硬化のための熱処理(固化ともいう)を行うことにより、誘電体組成物を得る方法が挙げられる。但し、本発明の誘電体組成物は焼結体ではないので、樹脂を完全に分解、除去する必要はなく、電子部品の耐熱温度範囲内、例えば、500℃以下の温度で加熱することが好ましい。より好ましくは250℃以下の温度で加熱することが好ましい。また、塗布する被着体は、リジッド基板に限定されず、フィルムや銅箔などのフレキシブル基板でもよい。
また、本発明のBステージ誘電体シートはペースト組成物を銅箔又はフィルムといった基材上に塗布し、脱溶剤する方法が挙げられ、基材は必要に応じ使用されても、除去されても良い。例えばペースト組成物を銅箔に塗布し、脱溶剤してBステージ状の膜(Bステージ誘電体シート)を作製し、この銅箔付きBステージ誘電体シートをモジュール基板内、実装基板内やトランジスター作製後の半導体ウェハ上に転写、硬化することにより、誘電体組成物と電極を基板内に作り込んでもよい。また、銅箔付きBステージ誘電体シートにPETなどのフィルムでラミネートしてカバーフィルム付きの銅箔付きBステージ誘電体シートを作製し、使用時にカバーフィルムを剥がして、使用してもよい。
また、必要に応じて上記、ペースト組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を混合しても良い。また、その他の高誘電率無機粒子などを添加することもできる。
さらにシリコンウェハなどの下地基板との接着性を高めるために、シランカップリング剤などをペースト組成物のワニスに0.5〜10重量%添加したり、下地基板をこのような薬液で前処理したりすることもできる。
ペースト脂組成物に上記薬液を添加する場合、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、などのシランカップリング剤、アルミキレート剤をワニス中のポリマーに対して0.5〜10重量%添加する。
基板を処理する場合、上記で述べたカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶剤に0.5から20重量%溶解させた溶液をスピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面処理をする。場合によっては、その後50℃から300℃までの温度をかけることで、基板とカップリング剤との反応を進行させる。
次に、本発明のペースト組成物を用いて樹脂組成物のパターンを形成する方法について説明する。
ペースト組成物を塗布する被着体は、例えば、基板としてはシリコンウェハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものから選択できるが、これらに限定されない。有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。
また、無機系回路基板の例は、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例は、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
ペースト組成物を被着体に塗布する方法としてはスピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーターなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが通常、乾燥後の膜厚が、0.5から20μmになるように塗布される。
次にペースト組成物を塗布した基板を乾燥して、Bステージの膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレートなどを使用し、例えば、室温から150℃の範囲で1分から数時間行う。
さらに、例えば50℃から200℃の温度を加えて誘電体組成物にする。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温してもよいし、ある温度範囲を選び連続的に昇温してもよい。
誘電体組成物の空隙率は、30体積%以下であることが重要であり、好ましくは20体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下である。空隙率が30体積%より大きい場合、膜体積中に占める高誘電率無機粒子の割合が低くなり、比誘電率が50以上の誘電体組成物が得られにくい。また絶縁抵抗の低下やリーク電流の増大、曲げ強さの低下などが起こるため好ましくない。
ここで、空隙率を30体積%以下にする方法としては、例えば、エポキシ樹脂、高誘電率無機粒子、溶剤を上記した中から適宜選択することで達成可能である。具体的には、例えばペースト組成物が、沸点160℃以上の溶剤を少なくとも1種含む、かつ、全溶剤量がペースト組成物全量の35%以下とすることで達成することができる。
誘電体組成物の空隙率の測定方法は、ガス吸着法、水銀圧入法、陽電子消滅法、小角X線散乱法など、用途に合わせて適宜選択することができるが、本発明では、誘電体組成物の密度から、下記(1)〜(3)の手順で空隙率を求める。
(1)重さを量った定形基板上にペースト組成物を塗布、脱溶剤、固化して得られた誘電体組成物の重さを量る。
(2)基板の重さをW1、基板と誘電体組成物の重さをW2、誘電体組成物の密度をD、体積をVとすると、誘電体組成物の密度D=(W2−W1)/Vとなる。
(3)熱重量測定装置(TGA)を用いて、該誘電体組成物を大気雰囲気中、昇温速度10℃/分にて、900℃まで昇温、900℃で30分間保持して脱バインダーを行い、誘電体組成物中に含まれる高誘電率無機粒子と樹脂の割合を測定した。高誘電率無機粒子の体積をWc、比重をρc、樹脂の体積をWp、比重をρp、空隙率をPとすると、空隙率Pは、以下の式で求められる。
空隙率P(体積%)={(V−Wc/ρc−Wp/ρp)/V}×100 。
本発明のペースト組成物から得られる誘電体組成物の形態は特に限定されず、膜状、棒状、球状など、用途に合わせて選択することができるが、特に膜状であることが好ましい。ここでいう膜とは、フィルム、シート、板、ペレットなども含まれる。もちろん、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、または、放熱機能付与など、用途にあわせたパターン形成を行うこともできる。
誘電体組成物の膜厚は、静電容量が所望の値を満たす範囲内で任意に設定することができるが、0.5μm以上であることが好ましく、さらに2μm以上が好ましい。また20μm以下であることが好ましい。キャパシタとして大きな静電容量を確保するには膜厚が薄い方が好ましいが、0.5μmより薄い場合にはピンホールなどが発生しやすく、電気的絶縁が得られにくくなる。また、2μm以上では、耐久性促進テストであるPCT(プレッシャークッカーテスト)後に誘電正接が増大しにくい。また、膜厚が20μmを越えると、十分なキャパシタ性能を得るために大きな比誘電率が必要となる上、実装密度向上が難しくなることがある。
本発明のペースト組成物及び誘電体組成物、Bステージ誘電体シートの用途は特に限定されないが、例えば、プリント配線基板の内蔵キャパシタ用層間絶縁材料に用いられる他、多層基板の層間絶縁膜、周波数フィルター、無線用アンテナ、電磁シールド、光配線材料など、多種の電子部品、装置への適用が可能である。
誘電体組成物を用いてキャパシタ用層間絶縁材料を形成する方法は特に限定されない。
本発明の誘電体組成物を用いて作製したキャパシタ用層間絶縁膜の面積あたりの静電容量としては、5nF/cm以上の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、10nF/cm以上の範囲にあることが好ましい。5nF/cmより小さい静電容量では、デカップリングキャパシタとして用いた場合に、システム全体の電源系との分離を十分に行うことができず、デカップリングキャパシタとして十分な機能を果たすことができない。
静電容量の温度変化、面内ばらつきは、小さい方が回路設計上好ましい。温度変化についても、できるだけ小さい方が好ましく、例えば、X7R特性(−55〜125℃において静電容量の温度変化率が±15%以内)を満たすことが好ましい。静電容量の面内ばらつきは、平均値に対して5%以下(静電容量の平均値−5%≦静電容量≦静電容量の平均値+5%)であることが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。接続信頼性試験及び誘電特性等の評価は下記の方法に従って測定した。
(1)接続信頼性試験
接続信頼性試験は、熱衝撃試験と耐湿性試験を行った。熱衝撃試験は、回路基板を−55℃の雰囲気に15分間放置し、続いて125℃の雰囲気に15分間放置するというサイクルの操作を1000回行い、接続抵抗が100mΩ以下であれば、良好な接続がなされているとして、良好とした。上記したサイクルを1000回行う前に接続抵抗が100mΩより大きくなる場合を不良とした。
耐湿性試験は、温度85℃、湿度85%で168時間吸湿後にパッケージ剥離が発生しないかどうかを目視で評価した。この耐湿性試験は、JEDECレベル1に相当する。JEDECレベル1とは、米国のJEDEC(共同電子機器技術委員会)におけるパッケージ標準委員会が定める半導体パッケージを基板実装する際の条件水準である。
(2)誘電特性
誘電体組成物の比誘電率、誘電正接はJIS K 6911に準じて測定した。面積6cm×6cm、厚さ0.3mmのアルミニウム基板上の全面に誘電体組成物からなる塗膜を形成する。塗膜上に蒸着法により測定用電極を形成する。測定用電極は直径10mmの円形パターン、塗膜の膜厚は10μm〜20μmの範囲とする。測定用電極とアルミニウム基板に挟まれた部分が測定対象領域となる。測定対象領域の1MHzにおける静電容量をインピーダンスアナライザ4294Aおよびサンプルホルダー16451B(共にアジレントテクノロジー社製)を用いて、JIS K 6911に準じて測定した。
(3)折り曲げ試験
ペースト組成物をNS−VLP銅箔(三井金属鉱業(株)製)上に塗布し、120℃×160秒で脱溶剤し、銅箔付きBステージ誘電体シートを作製した。このBステージ誘電体シートに定規を当て水平状態から折り曲げて、90°を越えてもBステージ誘電体シートにクラックや割れが発生しないものを、可撓性を有していると判断し、良好とした。逆に90°以内でBステージ誘電体シートにクラックや割れが生じたものを不良とした。
(4)絶縁抵抗
誘電体組成物について絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗計6517A型(ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用いて、反転電圧(5V)を5回印加した場合の平均の電流値を使用した。
(5)膜厚
塗膜の膜厚は、サーフコム1400(東京精密(株)製)を用いて触針法により測定した。
また実施例、比較例で用いるエポキシ樹脂の詳細について、以下に示す。
Figure 2007027101
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実施例1
チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製、BT−05:平均粒径0.5μm)124.6重量部、チタン酸バリウム(Cabot,Inc.社製、K−Plus16:平均粒径0.06μm)43.8重量部、γ−ブチロラクトン30重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)1.7重量部をホモジナイザーを用いて混練し、分散液A−1を得た。エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)8.6重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン8.3重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−1を得た。エピコートYX8000はエポキシ当量205g/eq、25℃、1.01325×10Paで、粘度が1.8Pa・sの液状エポキシ樹脂である。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−1をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−1を作製した。
このペースト組成物C−1をNS−VLP銅箔(三井金属鉱業(株)製)上に塗布し、120℃×160秒で脱溶剤し、銅箔付きBステージ誘電体シートを作製し、折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生せずに良好であった。
また、このペースト組成物C−1を厚さ300μmのアルミ基板上にダイコーターを用いて塗布し、オーブンを用いて、80℃×15分間で乾燥させた後、175℃×4時間で硬化させ、膜厚10μmの誘電体組成物(硬化膜)を得た。この絶縁抵抗は9.42×1014Ω・cmであった。この誘電体組成物上にアルミ電極を形成し、誘電特性評価サンプルとした。1MHzにおける比誘電率は92であった。Bステージの膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。
ペースト組成物C−1をマイクロバーコーター(井上金属工業(株)製)を用いて、ロール状の銅箔(三井金属鉱業(株)製、TQ−VLP)上に塗布後の膜厚が10μmとなるように塗布後、脱溶剤し、さらに膜表面はカバーフィルムをラミネートし、ロール状のBステージ誘電体シートを作製した。カバーフィルムは12μm厚のポリプロピレンフィルムを用いた。銅箔の搬送速度は1.5m/分、乾燥温度は120℃とした。ロール状のBステージ誘電体シートは、タック性があり、カバーフィルムとよく密着し、ロール状に巻き取った際にムラ、クラックや割れは生じなかった。
次に、銅貼りFR−4基板の表面銅層にパターンエッチングによりキャパシタ下部電極を形成した。この後この下部電極表面を黒化処理で粗化した。次いでロール状のBステージ誘電体シートを所望の大きさにカットし、カバーフィルムを剥がして、Bステージ誘電体シートがキャパシタ下部電極に接するように貼り合わせた。これを175℃で1時間加熱しながらプレスし、硬化させた後に、誘電体組成物上の銅箔部をエッチングし、上部電極パターンを形成した。さらにソルダーレジストパターン、ニッケルめっき、金めっきを行い、キャパシタが内蔵された回路基板を作製した。このキャパシタが内蔵された回路基板を用いて、接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
実施例2
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)6.9重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YL7040)1.7重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン8.3重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−2を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−2をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−2を作製した。エピコートYL7040はシクロヘキサン環を有する構造で表される樹脂であり、エポキシ当量205g/eq、25℃、1.01325×10Paで白色固体のエポキシ樹脂である。
実施例1と同様にして、ペースト組成物C−2から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は90、絶縁抵抗は5.78×1013Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−2に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。また、Bステージの膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−2に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムとよく密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
実施例3
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YL6800)8.6重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン8.3重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−3を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−3をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−3を作製した。エピコートYL6800はシクロヘキサン環を有し、エポキシ当量が205g/eq、25℃、1.01325×10Paで、粘度が20Pa・sの液体エポキシ樹脂である。
実施例1と同様にして、ペースト組成物C−3から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は95、絶縁抵抗は、2.76×1012Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−3に換えた以外は実施例1と同様にしてBステージの銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。また、Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−3に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例1
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)26.8重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)15.7重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)4.3重量部、γ−ブチロラクトン11.9重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−4を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−4をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−4を作製した。実施例1と同様にしてペースト組成物C−4から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は25で、絶縁抵抗は、1.82×1014Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−4に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。また、Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.5μm以上と大きな値であった。またペースト組成物をC−4に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった
施例
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)4.3重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YL7040)4.3重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン8.3重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−6を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−6をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−6を作製した。実施例1と同様にして、ペースト組成物C−6から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は93で、絶縁抵抗は、6.32×1013Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−6に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、85°折り曲げたところではクラックは発生しなかったが、90°以上折り曲げるとクラックが発生した。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−6に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られた誘電体シートは密着性があり、ムラのない良好なロール状シートが得られた。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に、ロール状のBステージ誘電体シートを所望の大きさにカットし、カバーフィルムを剥がして、Bステージ誘電体シートがキャパシタ下部電極に接するように貼り合わせた。これを175℃で1時間加熱しながらプレスし、硬化させた後に、誘電体組成物上の銅箔部をエッチングし、上部電極パターンを形成したが、エッチング時にいくつかのサンプルで、上部電極パターンが剥離した。さらにソルダーレジストパターン、ニッケルめっき、金めっきを行い、キャパシタが内蔵された回路基板を得た。しかし、ニッケルめっき時に一部のサンプルで膨れが生じた。剥離、膨れの生じなかった回路基板を用いて、接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YL7040)8.6重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン9.5重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−7を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−7をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−7を作製した。実施例1と同様にして、ペースト組成物C−7から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は90で、絶縁抵抗は、2.6×1012Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−7に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−7に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性がなく、カバーフィルムとほとんど密着せず、ロール状シートがムラになった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩより大きくなり不良であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)828XA)8.6重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン9.5重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−8を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−8をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−8を作製した。エピコート828XAはエポキシ当量が197〜215g/eq、25℃、1.01325×10Paで粘度が15〜23Pa・sの液体エポキシ樹脂である。
実施例1と同様にして、ペースト組成物C−8から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は91で、絶縁抵抗は、5.34×1011Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−8に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、85°折り曲げたところで、一部にクラックが発生した。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−8に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩより大きくなり不良であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例
チタン酸バリウム(共立マテリアル(株)製、BT−HP3、平均粒径1.2μm)124.6重量部、チタン酸バリウム(Cabot,Inc.社製、K−Plus16:平均粒径0.06μm)43.8重量部、γ−ブチロラクトン30重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)1.7重量部をホモジナイザーを用いて混練し、分散液A−2を得た。分散液A−2とエポキシ樹脂溶液B−1をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−9を作製した。
実施例1と同様にして、ペースト組成物C−9から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行った。電気特性評価サンプル作製において、膜表面の凹凸が大きく、10μm平滑膜作製が困難であったため、膜厚20μmの膜を作製し、評価を行った。1MHzにおける比誘電率は65で、絶縁抵抗は、3.68×1013Ω・cmであった。比誘電率が小さいのはサンプル作製中にペースト中の高誘電率無機粒子の沈降が生じてしまったためと考えられる。
ペースト組成物をC−9に換えて、膜厚を20μmとした以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.5μm以上であった。またペースト組成物をC−9に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に、175℃で1時間加熱しながらプレスし、回路基板を得た。しかしながら、加熱プレス時に、大きな膜厚変動、不均一が起こった。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩより大きくなり不良であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例
エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000)9.5重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)4.1重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン9.5重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−9を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−9をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−10を作製した。NC3000はエポキシ当量が278g/eq、25℃、1.01325×10Paで固体エポキシ樹脂である。
実施例1と同様にして、ペースト組成物C−10から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は94、絶縁抵抗は、4.32×1012Ω・cmであった。ペースト組成物をC−10に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、85°折り曲げたところで、一部にクラックが発生した。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−10に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性がなく、カバーフィルムとほとんど密着せず、ロール状シートがムラになった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩより大きくなり不良であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)1001)10.9重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)2.7重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン9.5重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−10を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−10をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−11を作製した。エピコート1001は、エポキシ当量が450〜500g/eq、25℃、1.01325×10Paで固体エポキシ樹脂である。
実施例1と同様にして、ペースト組成物C−11から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は89、絶縁抵抗は、7.07×1012Ω・cmであった。ペースト組成物をC−11に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、85°折り曲げたところで、一部にクラックが発生した。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−11に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性がなく、カバーフィルムとほとんど密着せず、ロール状シートがムラになった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩより大きくなり不良であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例
チタン酸バリウム(共立マテリアル(株)製、BT−HP3、平均粒径1.2μm)177.4重量部、エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロン(商品名)HP7200)12.1重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YL6753)32.3重量部、硬化促進剤として2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン0.46重量部、メチルエチルケトン24.1重量部をホモジナイザーを用いて混練し、ペースト組成物C−12を作製した。エピクロンHP7200は、エポキシ当量が260g/eq、25℃、1.01325×10Paで固体エポキシ樹脂である。エピコート1750は、エポキシ当量が158g/eq、25℃、1.01325×10Paで粘度が1.3Pa・sの液状エポキシ樹脂である。
ペースト組成物をC−12に換えて、膜厚を70μmとした以外は実施例1と同様にして誘電体組成物を得た。電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は22、絶縁抵抗は、1.67×1013Ω・cmであった。ペースト組成物をC−12に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.5μm以上であった。またペースト組成物をC−12に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
実施例1と同様に、175℃で1時間加熱しながらプレスし、回路基板を得た。しかしながら、加熱プレス時に膜厚が大きく変動し、膜厚が不均一になった。得られた回路基板を用いて、接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩより大きくなり不良であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例8
チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製、BT−05:平均粒径0.5μm)174重量部、γ−ブチロラクトン30重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)1.7重量部をホモジナイザーを用いて混練し、分散液A−3を得た。エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)9.4重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5.4重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.15重量部、γ−ブチロラクトン8.6重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−11を得た。分散液A−3とエポキシ樹脂溶液B−11をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−13を作製した。実施例1と同様にしてペースト組成物C−13から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は84で、絶縁抵抗は、3.41×1014Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−13に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−13に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様にして回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった
施例
チタン酸バリウム(戸田工業(株)製、T−BTO−020RF:平均粒径0.02μm)430重量部、γ−ブチロラクトン494.5重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)64.5重量部をホモジナイザーを用いて混練後、さらにウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)混練し、分散液A−5を得た。エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)5.86重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)3.37重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.09重量部、γ−ブチロラクトン3.8重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−13を得た。分散液A−4を59.8重量部とA−5を89.7重量部とエポキシ樹脂溶液B−13を12.6重量部とをボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−15を作製した。実施例1と同様にしてペースト組成物C−15から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は90で、絶縁抵抗は、1.08×1013Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−15に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−15に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様にして回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
実施例
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YL6753)8.2重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライト(商品名)VH−4150)5.4重量部、硬化促進剤(北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン)0.14重量部、γ−ブチロラクトン8.3重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液B−14を得た。分散液A−1とエポキシ樹脂溶液B−14をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物C−16を作製した。実施例1と同様にしてペースト組成物C−16から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は92で、絶縁抵抗は、4.53×1014Ω・cmであった。
ペースト組成物をC−16に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.2μm以内であった。またペースト組成物をC−16に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様にして回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった
較例
チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製、BT−05:平均粒径0.5μm)198.02重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)1.98重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)119.04重量部、酸無水物系の硬化剤(新日本理化(株)製、リカシッドMH700)80.96重量部、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)2.02重量部を3本ロールを用いて混練し、ペースト組成物C−18を作製した。粘度計(東機産業(株)製、モデルRE115H、コントローラーRC105A)を用いてペースト組成物C−18の粘度を測定したが、60Pa・s以上の値を示し、測定することができなかった。実施例1と同様にして、ペースト組成物C−18から誘電体組成物を作製し、電気特性の評価を行ったところ、1MHzにおける比誘電率は11と非常に小さい値であった。絶縁抵抗は、2.19×1013Ω・cmであった。ペースト組成物をC−18に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。
ペースト組成物をC−18に換えた以外は実施例1と同様にして銅箔付きBステージ誘電体シートを得た。Bステージ誘電体シートの折り曲げ試験を行ったところ、90°以上折り曲げてもクラックや割れが発生しなかった。Bステージ膜と誘電体組成物において、硬化前後の膜厚変動は0.5μm以内であった。またペースト組成物をC−18に換えた以外は実施例1と同様にしてロール状のBステージ誘電体シートを作製した。得られたBステージ誘電体シートはタック性があり、カバーフィルムと密着し、ムラのない良好なロール状シートであった。
次いで、得られたロール状のBステージ誘電体シートを用いて、実施例1と同様に回路基板を得た。得られた回路基板の接続信頼性試験を行ったところ、1000サイクル後の接続抵抗が100mΩ以下であった。耐湿性試験後の剥離は見られなかった。
比較例10
チタン酸バリウム(堺化学工業(株)製、BT−05:平均粒径0.5μm)146.53重量部、チタン酸バリウム(Cabot,Inc.社製、K−Plus16:平均粒径0.06μm)51.49重量部、分散剤(リン酸エステル骨格を有する酸基を持つコポリマー、ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−W9010)1.98重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート(商品名)YX8000)9.51重量部、酸無水物系の硬化剤(新日本理化(株)製、リカシッドMH700)6.47重量部、硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.16重量部を3本ロールを用いて混練したが、チタン酸バリウム混合中に流動性が失われ、半固形状の組成物C−19となった。組成物C−17から誘電体組成物を作製しようと試みたが、膜形成することができなかった。
Figure 2007027101
表2の溶剤量はペースト組成物全体量に対する溶剤の含有量である。

Claims (9)

  1. (a)エポキシ樹脂、(b)高誘電率無機粒子、(c)溶剤を有し、(a)エポキシ樹脂が分子中に1個以上のシクロヘキサン環を有し、25℃、1.01325×10Paにおいて粘度が150Pa・s以下の樹脂であり、(b)高誘電率無機粒子の平均粒径が0.01μm以上1μm以下であって、(b)高誘電率無機粒子の総体積と(a)エポキシ樹脂の総体積の合計体積に対する高誘電率無機粒子の割合Vfが70体積%より大きいものであるペースト組成物。
  2. (b)高誘電率無機粒子がペロブスカイト型結晶構造あるいは複合ペロブスカイト型結晶構造を有する請求項1記載のペースト組成物
  3. (a)エポキシ樹脂が一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する請求項1または2記載のペースト組成物。
    Figure 2007027101
    (Rは、水酸基および/またはエーテル基を含む炭素数1〜10までの有機基を示す。R、Rは各々独立に水素原子、メチル基から選択される。nは1〜10の範囲を示す。)
  4. (a)エポキシ樹脂のエポキシ当量が100g/eq以上300g/eq以下である請求項1〜3のいずれか記載のペースト組成物。
  5. さらに分散剤を有する請求項1〜4のいずれか記載のペースト組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載のペースト組成物を脱溶剤、固化して得られる誘電体組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか記載のペースト組成物から得られる薄膜がBステージである誘電体シート。
  8. 銅箔又はフィルム上の少なくとも一面に請求項7記載のBステージ誘電体シートが形成された誘電体シート。
  9. 請求項1〜5のいずれか記載のペースト組成物を膜状に成形し、固化して得られる層間絶縁膜と電極からなるキャパシタが形成されているキャパシタ内蔵回路基板。
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