JP4725137B2 - エキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Description
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸(以下、TCDAと称すことがある。)についても同様に、Endo体TCDAとExo体TCDAが存在する。
また、酸触媒の存在下、ヒドロキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンを一酸化炭素及び水と反応させることにより、エンド−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸を製造する方法(例えば、特許文献2参照)が示されているが、Endo体純度は最高88%程度である。
従来、TCDCEを製造する方法としては、ヒドロキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンに無機強酸性触媒の存在下で蟻酸を反応させるコッホ反応の蟻酸法(例えば、特許文献3参照)が知られているが、Endo体TCDCEとExo体TCDCEの生成比率は通常ほぼ1:1であり、生成する異性体比について詳細に検討されているわけではない。
ファインケミカル等の分野においてエンド体の純品を必要とする場合には精密蒸留を行う必要があるが、不要留分の有効利用が図られない限り経済的な方法とは言えない。
これらの問題点を解決する方法として、例えば下記の式(3)に示したルートにより、HF中でDHDCPDと一酸化炭素及びアルコールを反応させ、カルボニル化反応とエステル化反応を同時に起こすことにより高収率にTCDCEを得る方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
本発明は、このような状況下で、Endo体純度90%以上である高純度トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸を効率よく、工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、
以下の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする高純度エキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸の製造方法、を提供するものである。
(a)HFの存在下、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンと一酸化炭素を反応温度20℃以上40℃未満の条件下で反応させ、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸フロライドを得るカルボニル化工程。
(b)(a)で得られたトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸フロライドのHF溶液を40〜100℃で3〜24時間保液することにより、エンド−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エキソ−2−カルボン酸フロライドからエキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸フロライドへ異性化反応を行う異性化工程。
(c)(b)で得られたエキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸フロライドと水を反応させることにより、エキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸を得る加水分解工程。
本発明の方法においては、前記のDHDCPDを原料として用い、(a)カルボニル化工程、(b)異性化工程及び(c)加水分解工程が実施される。
このように、本発明においては、DHDCPDのカルボニル化反応は、加水分解反応とは分離して別個に行われる。カルボニル化反応と加水分解反応を同時に行ってしまうと、カルボニル化反応で生成した酸フロライドがすぐに加水分解されてしまう。そのためEndo体/Exo体比を考慮せずにTCDAを得る場合には高収率が得られるが、Endo体/Exo体比9以上でTCDAを得るためには、DHDCPDがカルボニル化を受けた直後でEndo体/Exo体比9以上のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸フロライド(以下、TCD−COFと称すことがある。)の生成が必要となる。上記同時反応の場合、Endo体/Exo体比9以上のTCDAは得られないことが本発明者らの研究で分かった。
(a)工程におけるDHDCPDのカルボニル反応は、HF触媒の存在下で一酸化炭素の加圧下に実施される。この際、一酸化炭素中には窒素やメタン等の不活性ガスが含まれていてもよい。一酸化炭素分圧については特に限定されないが、通常0.5〜5MPa程度である。一酸化炭素分圧が上記範囲にあると、カルボニル化反応が十分に進行し、不均化や重合などの副反応が抑制され、しかもあまり大きな設備費を必要としない。好ましい一酸化炭素分圧は1〜3MPaの範囲である。
この際、HF触媒としては、実質的に無水のものが好ましく用いられる。HFの使用量は、カルボニル化反応が十分に進行し、かつ不均化や重合などの副反応を抑制しうると共に、HFの分離費用や装置容積効率などの点から、原料DHDCPDに対して、通常4〜12倍モル程度、好ましくは6〜10倍モルの範囲で選定される。
反応の形式については特に制限はなく、半連続式及び連続式などのいずれであってもよい。
したがって、本発明においてカルボニル化反応は20℃以上40℃未満、好ましくは25〜35℃の範囲で実施される。
本発明においては、原料DHDCPDを溶解する能力を有し、かつDHDCPD及びHFに対して不活性な反応溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素類等を使用してもよい。この場合には更に重合反応が抑制され収率が向上するが、大量の溶媒を使用すると容積効率が低下すると同時に、分離に要するエネルギー原単位の悪化を招くので、使用の有無・使用量は適宜選択される。
異性化工程における反応温度は、反応速度、TCD−COFの分解の抑制及び他の異性体への異性化の抑制などを考慮すると、40〜100℃の範囲、好ましくは45〜70℃の範囲で選定される。
この加水分解反応は、生成したカルボン酸生成物の分解抑制や、装置の腐食性などの面から、通常20℃以下、好ましくは−20〜10℃の範囲の温度で実施される。
このようにして得られたカルボン酸生成物からHFを留去したのち、蒸留などの常法に従い精製することにより、Endo体純度90%以上のTCDAを得ることができる。
Cu−Cr水添触媒を用い、市販のDCPDを水素圧2MPa、反応温度90℃で、水素の吸収が認められなくなるまで約5時間反応させた。濾過によりCu−Cr水添触媒を取り除き、次いで蒸留により精製し、原料のDHDCPDを得た。(純度98.5%)
ナックドライブ式攪拌機と上部に3個の入口ノズル、底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を抑制できる内容積1000mlのステンレス製オートクレープを用いて実験を行った。
まずオートクレープ内部を一酸化炭素で置換した後、フッ化水素256g(12.8モル)を導入し、液温30℃とした後、一酸化炭素にて2MPaまで加圧した。
反応温度を30℃に保持し、かつ反応圧力を2MPaに保ちながら、DHDCPD214.7g(1.60モル)を溶解させたn−ヘプタン溶液358gをオートクレープ上部より供給してカルボニル化反応を行った。DHDCPDの供給終了後、一酸化炭素の吸収が認められなくなるまで約10分間攪拌を継続した。
得られた反応液の一部を氷水中にサンプリングし、油相と水相とを分離した。油相を中和、水洗した後、得られた油相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、Endo体/Exo体比は0.53であった。
引き続き、反応圧力を2MPaに保ちながら反応液温度を55℃に昇温し、8時間この温度を維持し、異性化反応を行った。8時間保持後、反応液温度を−10℃に冷却し、水をオートクレープ上部より28.8g(1.60モル)供給して、攪拌下にて1時間加水分解を行った。
反応液をオートクレープ底部より氷水中に抜き出し、油相と水相を分離した後、油相を2質量%水酸化ナトリウム水溶液100mlで2回、蒸留水100mlで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウム10gで脱水した。得られた液を内部標準法によりガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、TCDA収率51.5%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=10.3の反応成績が得られた。
さらに、得られた液を理論段数20段の精留塔を用いて精留を行ったところ、主留部分としてEndo体TCDA90.24質量%、Exo体TCDA8.76質量%(Endo体/Exo体比=10.3)のものが蒸留収率86.6%で得られた。蒸留による異性体比率の変動はなかった。
異性化の反応温度を30℃、保持時間を72時間とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた油相を分析したところ、TCDA収率51.7%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=6.4の反応成績が得られた。
発明温度より低かったので、72時間保持しても、異性化が不十分であった。
カルボニル化の反応温度を70℃とし、異性化反応は行わなかった。得られた油相を分析したところ、TCDA収率35.0%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=10.1の反応成績が得られた。
異性化反応は行わなかったので、実施例1と比較し、大きく収率が低下した。
異性化の反応温度を65℃、保持時間を3時間とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた油相を分析したところ、TCDA収率47.5%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=11.5の反応成績が得られた。
異性化の反応温度を45℃、保持時間を24時間とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた油相を分析したところ、TCDA収率50.3%(DHDCPD基準)、Endo体/Exo体比=14.3の反応成績が得られた。
Claims (1)
- 以下の(a)〜(c)の工程を含むことを特徴とする高純度エキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸の製造方法。
(a)HFの存在下、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3−エンと一酸化炭素を反応温度20℃以上40℃未満の条件下で反応させ、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸フロライドを得るカルボニル化工程。
(b)(a)で得られたトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−2−カルボン酸フロライドのHF溶液を40〜100℃で3〜24時間保液することにより、エンド−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エキソ−2−カルボン酸フロライドからエキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸フロライドへ異性化反応を行う異性化工程。
(c)(b)で得られたエキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸フロライドと水を反応させることにより、エキソ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−エンド−2−カルボン酸を得る加水分解工程。
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