JP2004189628A - レジスト用モノマーの精製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、不純物を簡便かつ効果的に低減させ、金属含有量の極めて少ないレジスト用モノマーを提供すること。
【解決手段】水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーの精製において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄することを特徴とするレジスト用モノマーの精製方法。
【選択図】 なし
【解決手段】水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーの精製において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄することを特徴とするレジスト用モノマーの精製方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用モノマーの精製方法に関する。レジスト用モノマーとして、例えば、一般式(II)
【0002】
【化3】
【0003】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表す。)
で示されるラクトン骨格含有化合物[以下、これをラクトン(II)と称する]が挙げられる。
【0004】
【従来の技術】
ラクトン(II)として、例えば、式(III)
【0005】
【化4】
【0006】
で示される3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンが知られており、その製造方法として、式(IV)
【0007】
【化5】
【0008】
で示される5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を、テトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液を水素化ホウ素ナトリウムのテトラヒドロフラン懸濁液に滴下して還元反応させた後、反応液に塩酸を加えて濃縮し、残査に塩化メチレンを加えて抽出し、抽出液を水および食塩水で洗浄し、乾燥した後、溶媒を濃縮し、残渣をエーテルで再結晶する方法[以下、これを従来法と称する]が報告されている(非特許文献1参照)。
【0009】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー パーキン トランザクション 1(J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1)、1977年、1305頁
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
微細加工用のレジストには様々な材料があるが、一般に、レジストに不純物が多く含まれている場合にはレジスト性能が低下するため、精製したポリマーを原料としてレジスト液が調製されている。しかしながら、ポリマーの精製では除去されない不純物も多く存在する。例えば、水素化ホウ素ナトリウムを用いたモノマーの製造過程では、水素化ホウ素ナトリウム由来のナトリウムおよびホウ素が不純物として混入する。特に、半導体加工用のレジスト材料は、微量の金属不純物が不良品の原因となるため、場合により、原料モノマー中の不純物を、その製造段階で数ppm〜数10ppbオーダーという非常に低いレベルにまで低減させる必要がある。その原料モノマーの精製手段として、通常用いられる再結晶、抽出洗浄の方法を採用するのみでは、上記レベルまで微量金属不純物を除去することは困難である。
【0011】
上記の従来法では、後処理での洗浄に重曹水や食塩水を用いており、かかる洗浄操作後に再結晶する場合、結晶中にナトリウムやホウ素などの軽金属を取り込み易く、レジスト用モノマーに要求される高品質を達成することは困難である。高品質を達成するには、多量の吸着材を用いる吸着処理により、ナトリウム、ホウ素のような軽金属不純物を除く工程が必須とされる。しかしながら、多量の吸着材を用いる方法は、大量のモノマーを精製する際には、過大な設備が必要な上、廃棄物が多いため操作性や経済性が悪く、工業的に実施するには不適当である。
【0012】
本発明の目的は、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、不純物を簡便かつ効果的に低減させることができる精製方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、金属含有量が極めて少ないレジスト用モノマーを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーの精製において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄することを特徴とするレジスト用モノマーの精製方法である。
上記の方法の好適な実施形態において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄した後、晶析する。
【0014】
本発明は、上記の方法で精製されたレジスト用モノマーであり、その好適な形態として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるレジスト用モノマーが挙げられる。
【0015】
また、上記の方法の好適な実施形態として、一般式(I)
【0016】
【化6】
【0017】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4は前記定義のとおりである。 )
で示される酸無水物骨格含有化合物[以下、これを酸無水物(I)と称する]を水素化ホウ素塩を用いて還元し、得られた反応混合物を本発明の上記の方法により精製することを特徴とするラクトン(II)の製造方法が挙げられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
上記の一般式において、R1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの低級アルキル基が好ましい。
【0019】
酸無水物(I)のうち、一般式(I)においてR1 、R2 、R3 およびR4 が水素原子を表す化合物である5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物[これは式(IV)で示される化合物に相当する]は、例えば、シクロペンタジエンと無水マレイン酸をディールス−アルダー環化付加反応させることにより得ることができる[ジャスタス リービッヒス アナーレン ヒェミエ(Justus Liebigs Ann.Chem. )、460巻、98頁(1928年)参照] 。
【0020】
本発明における水素化ホウ素塩を用いる反応の代表例として、還元反応が挙げられる。次に、酸無水物(I)の水素化ホウ素塩による還元反応について説明する。
【0021】
水素化ホウ素塩としては、酸無水物(I)をラクトン(II)へと変換できるものであれば特に限定されないが、ラクトン(II)のラクトン部位が、還元剤によりさらに還元されるなどの副反応を起こし難いものとして、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、反応速度、反応成績、工業的な入手性などを考慮すれば、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。水素化ホウ素塩の使用量は、酸無水物(I)1モルに対して0.5モル以上であればよいが、1.0〜10.0モルの範囲であるのが好ましい。
【0022】
還元反応は反応溶媒の存在下に行うのが好ましい。溶媒としては、アルコール、水などのプロトン性溶媒、またはこれらのプロトン性溶媒を含んだエーテル系溶媒および炭化水素系溶媒が好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの1級アルコール;2−プロパノール、2−ブタノール、3−ペンタノールなどの2級アルコール;tert−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノールなどの3級アルコールなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。エーテル系溶媒および/または炭化水素系溶媒とプロトン性溶媒の混合割合は、例えば、前者/後者(重量比)が5/95〜95/5の範囲であるのが好ましく、50/50〜90/10の範囲であるのがより好ましい。プロトン性溶媒の割合が重量比で5%より低い場合には、水素化ホウ素塩の溶媒に対する溶解性が低下し、反応効率が低下する傾向にあり、好ましくない。また、エーテル系溶媒および/または炭化水素系溶媒の割合が重量比で5%より低い場合には、酸無水物(I)の溶媒に対する溶解性が低下し、反応効率が低下する傾向にあり、好ましくない。溶媒としては、水素化ホウ素塩および酸無水物(I)の溶解性、反応温度、溶媒の除去性などを考慮すれば、テトラヒドロフラン−水混合溶媒を使用するのが好ましい。溶媒の使用量は特に制限されないが、反応の効率、操作性、経済性などを考慮すれば、酸無水物(I)に対して1〜20倍重量の範囲であるのが好ましい。
【0023】
反応温度は、−20〜100℃の範囲であるのが好ましく、−10〜80℃の範囲であるのがより好ましい。反応温度が−20℃未満である場合には、反応の進行が極めて遅くなり、反応効率が悪くなる傾向にあり、また反応温度が100℃を超える場合には、生成物のラクトン(II)が逆ディールスアルダー反応により分解する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。
【0024】
還元反応は、水素化ホウ素塩を酸無水物(I)と反応溶媒との混合物に投入するか、または水素化ホウ素塩と反応溶媒との混合物に酸無水物(I)を投入して行う。大量にラクトン(II)を製造する際の設備面、操作性および安全性を考慮すれば、水素化ホウ素塩の水溶液またはアルカリ水溶液を、酸無水物(I)と反応溶媒の混合物に逐次添加して、仕込みを行うのが好ましい。水素化ホウ素塩のアルカリ水溶液を用いる場合、アルカリとしては、水素化ホウ素塩の安定性を保持できれば特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウムを、水素化ホウ素塩1モルに対して0.005〜5モルの範囲で用いるのが好ましい。
【0025】
反応時間は、0.1〜20時間の範囲であるのが好ましく、1〜10時間の範囲であるのがより好ましい。反応時間が0.1時間未満である場合には、反応が十分に進行せず、反応効率が低くなる傾向にあり、また20時間を超える場合には、抑制すべき逆ディールスアルダー反応を併発する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。
【0026】
反応は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行ってもよいが、反応の進行と共に水素が発生し、抑制すべき逆ディールスアルダー反応が生起することを考慮すれば、常圧下で行うのが好ましい。
【0027】
反応終了後、反応混合物は常法により後処理する。例えば、還元反応の終了後、反応系に存在する過剰の水素化ホウ素塩を塩酸、硫酸などの酸で分解し、その後、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基でpH調整を行い、酢酸メチル、酢酸エチルなどの溶媒で抽出する。
【0028】
本発明では、上記の後処理後の反応混合物(反応生成物)を、アミン類を含有する水溶液(アミン類含有水溶液)で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄する。
【0029】
アミン類含有水溶液による洗浄処理により、反応混合物中に含まれる未反応原料[酸無水物(I)]やラクトン(II)の分解物、オリゴマー、その他の水溶性不純物、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などの重金属および水素化ホウ素塩由来のホウ素が効率よく除去される。また、イオン交換水または蒸留水による洗浄処理により、水素化ホウ素塩に由来するか、または反応器や使用薬剤に極僅かに含まれるリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の不純物が効率よく除去される。これらの洗浄操作により、簡便にレジスト用モノマーに求められる高純度品を得ることができる。
【0030】
アミン類としては、酸無水物(I)やラクトン(II)の分解物、重金属、ホウ素化合物などと反応して水溶性の化合物を与えるアミン類であればよく、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。これらの中でも、操作性を考慮すれば、アンモニア、トリエチルアミンが好ましい。アミン類の使用量は、水素化ホウ素塩1モルに対し0.1〜5.0モルの範囲であるのが好ましく、0.5〜2.0モルの範囲であるのがより好ましい。アミン類の使用量が水素化ホウ素塩に対して5.0倍モルを超える場合には、ラクトン(II)のラクトン部位とアミン類が反応し、アミドを形成する傾向にあり、また0.1倍モルより少ない場合には、不純物の除去が効果的に行われず、いずれの場合も好ましくない。
【0031】
洗浄処理の回数は、1回でもよく複数回でもよいが、2回以上が好ましく、2〜10回程度がより好ましい。洗浄液の使用量は、洗浄処理1回当たり、被洗浄物(反応混合物)100重量部に対して5〜200重量部の範囲であるのが好ましく、10〜100重量部の範囲であるのがより好ましい。洗浄処理の温度は、10〜80℃程度の範囲であるのが好ましい。洗浄処理する際の温度が高すぎる場合、ラクトン(II)が逆ディールスアルダー反応により分解する恐れがあり、また温度が低すぎる場合、不純物の溶解度が低くなって不純物の洗浄除去が効果的に行われず、いずれの場合も好ましくない。
【0032】
イオン交換水または蒸留水による洗浄処理については、その回数は、1回でもよく複数回でもよいが、1〜5回程度が好ましい。洗浄液の使用量は、洗浄処理1回当たり、被洗浄物(反応混合物)100重量部に対して5〜200重量部の範囲であるのが好ましく、10〜100重量部の範囲であるのがより好ましい。洗浄処理の温度は、10〜80℃程度であるのが好ましい。洗浄処理する際の温度が高すぎる場合、ラクトン(II)が逆ディールスアルダー反応により分解する恐れがあり、また温度が低すぎる場合、不純物の溶解度が低くなって不純物の洗浄除去が効果的に行われず、いずれの場合も好ましくない。
【0033】
上記の洗浄処理により、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるラクトン(II)を得ることが可能となる。
【0034】
本発明では、ラクトン(II)を含む反応生成物を晶析操作により精製するのが好ましい。晶析溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
晶析溶媒の使用量は、溶媒の種類によっても異なるが、ラクトン(II)100重量部に対して20〜1000重量部の範囲であるのが好ましく、30〜500重量部の範囲であるのがより好ましい。晶析操作は、例えば、30〜80℃程度の温度から−20〜10℃程度の温度まで冷却することによって行われる。冷却時間は、0.1〜10時間の範囲であるのが好ましく、0.3〜6時間の範囲であるのがより好ましい。熟成時間は、0.5〜15時間の範囲であるのが好ましく、1〜5時間の範囲であるのがより好ましい。
【0036】
晶析処理により、酸無水物(I)やラクトン(II)由来の副生物などを効率よく除去でき、高純度のラクトン(II)を得ることができる。
【0037】
晶析処理後、得られた結晶を溶媒でリンス(洗浄)することにより、より高純度のラクトン(II)を取得することができる。リンスは、例えば、前記結晶とリンス溶媒(洗浄溶媒)との混合液を攪拌することにより行う。リンス溶媒としては、例えば、晶析溶媒と同じ溶媒を使用するのが好ましい。リンス溶媒の使用量は、ラクトン(II)100重量部に対して10〜1000重量部の範囲であるのが好ましく、30〜400重量部の範囲であるのがより好ましい。リンス温度は、ラクトン(II)の品質および回収効率を考慮すれば、0〜10℃の範囲であるのが好ましい。
【0038】
晶析により得られた結晶またはリンスを施した結晶の乾燥は、ラクトン(II)の品質および作業効率を損なわない範囲で適宜実施され、例えば、10〜80℃程度、好ましくは10〜60℃程度の温度で、常圧下または減圧下、例えば、0.1〜760mmHg(13.3〜101000Pa)程度の圧力下で行う。乾燥時間は、0.1〜24時間程度であるのが好ましい。乾燥は、窒素などの不活性ガス気流中で行ってもよい。晶析で得られる母液およびリンス処理液から、蒸留または蒸発により溶媒を回収することができ、回収した溶媒は再利用が可能である。
【0039】
本発明の精製方法により、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるレジスト用モノマーを得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0041】
実施例1
攪拌器、滴下ロートおよび温度計を装着した内容積300mLの三ツ口フラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物30.0g(183mmol)およびテトラヒドロフラン90gを仕込み、攪拌した。得られた混合液を1℃に冷却し、撹拌しながら、該溶液に水素化ホウ素ナトリウム9.1g(240mmol)および水酸化ナトリウム0.06g(2.4mmol)のイオン交換水45gの溶液を0.5時間を要して滴下した。この際のフラスコ内温は15℃以下に保った。滴下終了後、フラスコ内温を1℃に降温し、1時間撹拌を続けた。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比) 、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99%であり、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は87%であった。
【0042】
フラスコ内温が1℃の状態で、反応系内に35%塩酸28.0gを加えてpH1とし、続いて同温度で25%アンモニア水7.8gを加えてpH6に調整した。フラスコ内温を25℃に昇温し、イオン交換水32gおよび酢酸エチル100gを加え、反応混合物を撹拌し、静置した後、有機層を分離した。水層をさらに2回同量の酢酸エチルで抽出した。抽出液を5%アンモニア水32gを用いて25℃で2回洗浄した後、イオン交換水32gで1回洗浄し、分離した有機層を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比)、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は74%であった。
【0043】
上記の有機層を、30℃で減圧下に濃縮し、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンのスラリー液(33重量%酢酸エチル溶液)60gを得た。得られたスラリー液を液温が30℃から冷却し、次いで、氷冷下で2時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、氷冷した酢酸エチル10gでリンスした。得られた結晶を真空乾燥することにより、白色の3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オン16.2gを得た。得られた3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの純度は99.0%であった。不純物の金属成分であるアルカリ金属、アルカリ土類金属および重金属の含有量はいずれも1ppm以下であり、ホウ素の含有量は7ppmであった。また、晶析収率(晶析後の洗浄工程を含む)は84%であった。
【0044】
比較例1
攪拌器、滴下ロートおよび温度計を装着した内容積300mLの三ツ口フラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物30.0g(183mmol)およびテトラヒドロフラン90gを仕込み、攪拌した。得られた混合液を1℃に冷却し、撹拌しながら、該溶液に水素化ホウ素ナトリウム9.1g(240mmol)および水酸化ナトリウム0.06g(2.4mmol)のイオン交換水45gの溶液を0.5時間を要して滴下した。この際のフラスコ内温は15℃以下に保った。滴下終了後、フラスコ内温を1℃に降温し、1時間撹拌を続けた。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比) 、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99%であり、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は87%であった。
【0045】
フラスコ内温が1℃の状態で、反応系内に35%塩酸28.0gを加えてpH1とし、続いて同温度で25%アンモニア水7.8gを加えてpH6に調整した。フラスコ内温を25℃に昇温し、イオン交換水32gおよび酢酸エチル100gを加え、反応混合物を撹拌し、静置した後、有機層を分離した。水層をさらに2回同量の酢酸エチルで抽出した。抽出液をイオン交換水32gで3回洗浄し、分離した有機層を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比)、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は76%であった。
【0046】
上記の有機層を、30℃で減圧下に濃縮し、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンのスラリー液(33重量%酢酸エチル溶液)60gを得た。得られたスラリー液を液温が30℃から冷却し、次いで、氷冷下で2時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、氷冷した酢酸エチル10gでリンスした。得られた結晶を真空乾燥することにより、白色の3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オン17.4gを得た。得られた3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの純度は99.0%であった。不純物の金属成分であるアルカリ金属、アルカリ土類金属および重金属の含有量はいずれも1ppm以下であったが、ホウ素の含有量は841ppmであった。また、晶析収率(晶析後の洗浄工程を含む)は84%であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、不純物を簡便かつ効果的に低減させ、金属含有量の極めて少ないレジスト用モノマーを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用モノマーの精製方法に関する。レジスト用モノマーとして、例えば、一般式(II)
【0002】
【化3】
【0003】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表す。)
で示されるラクトン骨格含有化合物[以下、これをラクトン(II)と称する]が挙げられる。
【0004】
【従来の技術】
ラクトン(II)として、例えば、式(III)
【0005】
【化4】
【0006】
で示される3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンが知られており、その製造方法として、式(IV)
【0007】
【化5】
【0008】
で示される5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を、テトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液を水素化ホウ素ナトリウムのテトラヒドロフラン懸濁液に滴下して還元反応させた後、反応液に塩酸を加えて濃縮し、残査に塩化メチレンを加えて抽出し、抽出液を水および食塩水で洗浄し、乾燥した後、溶媒を濃縮し、残渣をエーテルで再結晶する方法[以下、これを従来法と称する]が報告されている(非特許文献1参照)。
【0009】
【非特許文献1】
ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー パーキン トランザクション 1(J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1)、1977年、1305頁
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
微細加工用のレジストには様々な材料があるが、一般に、レジストに不純物が多く含まれている場合にはレジスト性能が低下するため、精製したポリマーを原料としてレジスト液が調製されている。しかしながら、ポリマーの精製では除去されない不純物も多く存在する。例えば、水素化ホウ素ナトリウムを用いたモノマーの製造過程では、水素化ホウ素ナトリウム由来のナトリウムおよびホウ素が不純物として混入する。特に、半導体加工用のレジスト材料は、微量の金属不純物が不良品の原因となるため、場合により、原料モノマー中の不純物を、その製造段階で数ppm〜数10ppbオーダーという非常に低いレベルにまで低減させる必要がある。その原料モノマーの精製手段として、通常用いられる再結晶、抽出洗浄の方法を採用するのみでは、上記レベルまで微量金属不純物を除去することは困難である。
【0011】
上記の従来法では、後処理での洗浄に重曹水や食塩水を用いており、かかる洗浄操作後に再結晶する場合、結晶中にナトリウムやホウ素などの軽金属を取り込み易く、レジスト用モノマーに要求される高品質を達成することは困難である。高品質を達成するには、多量の吸着材を用いる吸着処理により、ナトリウム、ホウ素のような軽金属不純物を除く工程が必須とされる。しかしながら、多量の吸着材を用いる方法は、大量のモノマーを精製する際には、過大な設備が必要な上、廃棄物が多いため操作性や経済性が悪く、工業的に実施するには不適当である。
【0012】
本発明の目的は、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、不純物を簡便かつ効果的に低減させることができる精製方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、金属含有量が極めて少ないレジスト用モノマーを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーの精製において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄することを特徴とするレジスト用モノマーの精製方法である。
上記の方法の好適な実施形態において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄した後、晶析する。
【0014】
本発明は、上記の方法で精製されたレジスト用モノマーであり、その好適な形態として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるレジスト用モノマーが挙げられる。
【0015】
また、上記の方法の好適な実施形態として、一般式(I)
【0016】
【化6】
【0017】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4は前記定義のとおりである。 )
で示される酸無水物骨格含有化合物[以下、これを酸無水物(I)と称する]を水素化ホウ素塩を用いて還元し、得られた反応混合物を本発明の上記の方法により精製することを特徴とするラクトン(II)の製造方法が挙げられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
上記の一般式において、R1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの低級アルキル基が好ましい。
【0019】
酸無水物(I)のうち、一般式(I)においてR1 、R2 、R3 およびR4 が水素原子を表す化合物である5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物[これは式(IV)で示される化合物に相当する]は、例えば、シクロペンタジエンと無水マレイン酸をディールス−アルダー環化付加反応させることにより得ることができる[ジャスタス リービッヒス アナーレン ヒェミエ(Justus Liebigs Ann.Chem. )、460巻、98頁(1928年)参照] 。
【0020】
本発明における水素化ホウ素塩を用いる反応の代表例として、還元反応が挙げられる。次に、酸無水物(I)の水素化ホウ素塩による還元反応について説明する。
【0021】
水素化ホウ素塩としては、酸無水物(I)をラクトン(II)へと変換できるものであれば特に限定されないが、ラクトン(II)のラクトン部位が、還元剤によりさらに還元されるなどの副反応を起こし難いものとして、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、反応速度、反応成績、工業的な入手性などを考慮すれば、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。水素化ホウ素塩の使用量は、酸無水物(I)1モルに対して0.5モル以上であればよいが、1.0〜10.0モルの範囲であるのが好ましい。
【0022】
還元反応は反応溶媒の存在下に行うのが好ましい。溶媒としては、アルコール、水などのプロトン性溶媒、またはこれらのプロトン性溶媒を含んだエーテル系溶媒および炭化水素系溶媒が好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどの1級アルコール;2−プロパノール、2−ブタノール、3−ペンタノールなどの2級アルコール;tert−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノールなどの3級アルコールなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。エーテル系溶媒および/または炭化水素系溶媒とプロトン性溶媒の混合割合は、例えば、前者/後者(重量比)が5/95〜95/5の範囲であるのが好ましく、50/50〜90/10の範囲であるのがより好ましい。プロトン性溶媒の割合が重量比で5%より低い場合には、水素化ホウ素塩の溶媒に対する溶解性が低下し、反応効率が低下する傾向にあり、好ましくない。また、エーテル系溶媒および/または炭化水素系溶媒の割合が重量比で5%より低い場合には、酸無水物(I)の溶媒に対する溶解性が低下し、反応効率が低下する傾向にあり、好ましくない。溶媒としては、水素化ホウ素塩および酸無水物(I)の溶解性、反応温度、溶媒の除去性などを考慮すれば、テトラヒドロフラン−水混合溶媒を使用するのが好ましい。溶媒の使用量は特に制限されないが、反応の効率、操作性、経済性などを考慮すれば、酸無水物(I)に対して1〜20倍重量の範囲であるのが好ましい。
【0023】
反応温度は、−20〜100℃の範囲であるのが好ましく、−10〜80℃の範囲であるのがより好ましい。反応温度が−20℃未満である場合には、反応の進行が極めて遅くなり、反応効率が悪くなる傾向にあり、また反応温度が100℃を超える場合には、生成物のラクトン(II)が逆ディールスアルダー反応により分解する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。
【0024】
還元反応は、水素化ホウ素塩を酸無水物(I)と反応溶媒との混合物に投入するか、または水素化ホウ素塩と反応溶媒との混合物に酸無水物(I)を投入して行う。大量にラクトン(II)を製造する際の設備面、操作性および安全性を考慮すれば、水素化ホウ素塩の水溶液またはアルカリ水溶液を、酸無水物(I)と反応溶媒の混合物に逐次添加して、仕込みを行うのが好ましい。水素化ホウ素塩のアルカリ水溶液を用いる場合、アルカリとしては、水素化ホウ素塩の安定性を保持できれば特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウムを、水素化ホウ素塩1モルに対して0.005〜5モルの範囲で用いるのが好ましい。
【0025】
反応時間は、0.1〜20時間の範囲であるのが好ましく、1〜10時間の範囲であるのがより好ましい。反応時間が0.1時間未満である場合には、反応が十分に進行せず、反応効率が低くなる傾向にあり、また20時間を超える場合には、抑制すべき逆ディールスアルダー反応を併発する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。
【0026】
反応は、常圧下、加圧下または減圧下のいずれで行ってもよいが、反応の進行と共に水素が発生し、抑制すべき逆ディールスアルダー反応が生起することを考慮すれば、常圧下で行うのが好ましい。
【0027】
反応終了後、反応混合物は常法により後処理する。例えば、還元反応の終了後、反応系に存在する過剰の水素化ホウ素塩を塩酸、硫酸などの酸で分解し、その後、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基でpH調整を行い、酢酸メチル、酢酸エチルなどの溶媒で抽出する。
【0028】
本発明では、上記の後処理後の反応混合物(反応生成物)を、アミン類を含有する水溶液(アミン類含有水溶液)で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄する。
【0029】
アミン類含有水溶液による洗浄処理により、反応混合物中に含まれる未反応原料[酸無水物(I)]やラクトン(II)の分解物、オリゴマー、その他の水溶性不純物、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などの重金属および水素化ホウ素塩由来のホウ素が効率よく除去される。また、イオン交換水または蒸留水による洗浄処理により、水素化ホウ素塩に由来するか、または反応器や使用薬剤に極僅かに含まれるリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の不純物が効率よく除去される。これらの洗浄操作により、簡便にレジスト用モノマーに求められる高純度品を得ることができる。
【0030】
アミン類としては、酸無水物(I)やラクトン(II)の分解物、重金属、ホウ素化合物などと反応して水溶性の化合物を与えるアミン類であればよく、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。これらの中でも、操作性を考慮すれば、アンモニア、トリエチルアミンが好ましい。アミン類の使用量は、水素化ホウ素塩1モルに対し0.1〜5.0モルの範囲であるのが好ましく、0.5〜2.0モルの範囲であるのがより好ましい。アミン類の使用量が水素化ホウ素塩に対して5.0倍モルを超える場合には、ラクトン(II)のラクトン部位とアミン類が反応し、アミドを形成する傾向にあり、また0.1倍モルより少ない場合には、不純物の除去が効果的に行われず、いずれの場合も好ましくない。
【0031】
洗浄処理の回数は、1回でもよく複数回でもよいが、2回以上が好ましく、2〜10回程度がより好ましい。洗浄液の使用量は、洗浄処理1回当たり、被洗浄物(反応混合物)100重量部に対して5〜200重量部の範囲であるのが好ましく、10〜100重量部の範囲であるのがより好ましい。洗浄処理の温度は、10〜80℃程度の範囲であるのが好ましい。洗浄処理する際の温度が高すぎる場合、ラクトン(II)が逆ディールスアルダー反応により分解する恐れがあり、また温度が低すぎる場合、不純物の溶解度が低くなって不純物の洗浄除去が効果的に行われず、いずれの場合も好ましくない。
【0032】
イオン交換水または蒸留水による洗浄処理については、その回数は、1回でもよく複数回でもよいが、1〜5回程度が好ましい。洗浄液の使用量は、洗浄処理1回当たり、被洗浄物(反応混合物)100重量部に対して5〜200重量部の範囲であるのが好ましく、10〜100重量部の範囲であるのがより好ましい。洗浄処理の温度は、10〜80℃程度であるのが好ましい。洗浄処理する際の温度が高すぎる場合、ラクトン(II)が逆ディールスアルダー反応により分解する恐れがあり、また温度が低すぎる場合、不純物の溶解度が低くなって不純物の洗浄除去が効果的に行われず、いずれの場合も好ましくない。
【0033】
上記の洗浄処理により、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるラクトン(II)を得ることが可能となる。
【0034】
本発明では、ラクトン(II)を含む反応生成物を晶析操作により精製するのが好ましい。晶析溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
晶析溶媒の使用量は、溶媒の種類によっても異なるが、ラクトン(II)100重量部に対して20〜1000重量部の範囲であるのが好ましく、30〜500重量部の範囲であるのがより好ましい。晶析操作は、例えば、30〜80℃程度の温度から−20〜10℃程度の温度まで冷却することによって行われる。冷却時間は、0.1〜10時間の範囲であるのが好ましく、0.3〜6時間の範囲であるのがより好ましい。熟成時間は、0.5〜15時間の範囲であるのが好ましく、1〜5時間の範囲であるのがより好ましい。
【0036】
晶析処理により、酸無水物(I)やラクトン(II)由来の副生物などを効率よく除去でき、高純度のラクトン(II)を得ることができる。
【0037】
晶析処理後、得られた結晶を溶媒でリンス(洗浄)することにより、より高純度のラクトン(II)を取得することができる。リンスは、例えば、前記結晶とリンス溶媒(洗浄溶媒)との混合液を攪拌することにより行う。リンス溶媒としては、例えば、晶析溶媒と同じ溶媒を使用するのが好ましい。リンス溶媒の使用量は、ラクトン(II)100重量部に対して10〜1000重量部の範囲であるのが好ましく、30〜400重量部の範囲であるのがより好ましい。リンス温度は、ラクトン(II)の品質および回収効率を考慮すれば、0〜10℃の範囲であるのが好ましい。
【0038】
晶析により得られた結晶またはリンスを施した結晶の乾燥は、ラクトン(II)の品質および作業効率を損なわない範囲で適宜実施され、例えば、10〜80℃程度、好ましくは10〜60℃程度の温度で、常圧下または減圧下、例えば、0.1〜760mmHg(13.3〜101000Pa)程度の圧力下で行う。乾燥時間は、0.1〜24時間程度であるのが好ましい。乾燥は、窒素などの不活性ガス気流中で行ってもよい。晶析で得られる母液およびリンス処理液から、蒸留または蒸発により溶媒を回収することができ、回収した溶媒は再利用が可能である。
【0039】
本発明の精製方法により、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるレジスト用モノマーを得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0041】
実施例1
攪拌器、滴下ロートおよび温度計を装着した内容積300mLの三ツ口フラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物30.0g(183mmol)およびテトラヒドロフラン90gを仕込み、攪拌した。得られた混合液を1℃に冷却し、撹拌しながら、該溶液に水素化ホウ素ナトリウム9.1g(240mmol)および水酸化ナトリウム0.06g(2.4mmol)のイオン交換水45gの溶液を0.5時間を要して滴下した。この際のフラスコ内温は15℃以下に保った。滴下終了後、フラスコ内温を1℃に降温し、1時間撹拌を続けた。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比) 、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99%であり、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は87%であった。
【0042】
フラスコ内温が1℃の状態で、反応系内に35%塩酸28.0gを加えてpH1とし、続いて同温度で25%アンモニア水7.8gを加えてpH6に調整した。フラスコ内温を25℃に昇温し、イオン交換水32gおよび酢酸エチル100gを加え、反応混合物を撹拌し、静置した後、有機層を分離した。水層をさらに2回同量の酢酸エチルで抽出した。抽出液を5%アンモニア水32gを用いて25℃で2回洗浄した後、イオン交換水32gで1回洗浄し、分離した有機層を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比)、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は74%であった。
【0043】
上記の有機層を、30℃で減圧下に濃縮し、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンのスラリー液(33重量%酢酸エチル溶液)60gを得た。得られたスラリー液を液温が30℃から冷却し、次いで、氷冷下で2時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、氷冷した酢酸エチル10gでリンスした。得られた結晶を真空乾燥することにより、白色の3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オン16.2gを得た。得られた3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの純度は99.0%であった。不純物の金属成分であるアルカリ金属、アルカリ土類金属および重金属の含有量はいずれも1ppm以下であり、ホウ素の含有量は7ppmであった。また、晶析収率(晶析後の洗浄工程を含む)は84%であった。
【0044】
比較例1
攪拌器、滴下ロートおよび温度計を装着した内容積300mLの三ツ口フラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物30.0g(183mmol)およびテトラヒドロフラン90gを仕込み、攪拌した。得られた混合液を1℃に冷却し、撹拌しながら、該溶液に水素化ホウ素ナトリウム9.1g(240mmol)および水酸化ナトリウム0.06g(2.4mmol)のイオン交換水45gの溶液を0.5時間を要して滴下した。この際のフラスコ内温は15℃以下に保った。滴下終了後、フラスコ内温を1℃に降温し、1時間撹拌を続けた。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比) 、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の転化率は99%であり、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は87%であった。
【0045】
フラスコ内温が1℃の状態で、反応系内に35%塩酸28.0gを加えてpH1とし、続いて同温度で25%アンモニア水7.8gを加えてpH6に調整した。フラスコ内温を25℃に昇温し、イオン交換水32gおよび酢酸エチル100gを加え、反応混合物を撹拌し、静置した後、有機層を分離した。水層をさらに2回同量の酢酸エチルで抽出した。抽出液をイオン交換水32gで3回洗浄し、分離した有機層を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、Inertsil ODS−3、カラム温度:40℃、キャリア溶媒:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=2:8(容積比)、流量:1ml/min、検出:210nm)で分析した結果、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの収率は76%であった。
【0046】
上記の有機層を、30℃で減圧下に濃縮し、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンのスラリー液(33重量%酢酸エチル溶液)60gを得た。得られたスラリー液を液温が30℃から冷却し、次いで、氷冷下で2時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、氷冷した酢酸エチル10gでリンスした。得られた結晶を真空乾燥することにより、白色の3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オン17.4gを得た。得られた3a,4,7,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1(3H)−オンの純度は99.0%であった。不純物の金属成分であるアルカリ金属、アルカリ土類金属および重金属の含有量はいずれも1ppm以下であったが、ホウ素の含有量は841ppmであった。また、晶析収率(晶析後の洗浄工程を含む)は84%であった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーから、不純物を簡便かつ効果的に低減させ、金属含有量の極めて少ないレジスト用モノマーを提供することができる。
Claims (6)
- 水素化ホウ素塩を用いる反応を経由して得られたレジスト用粗モノマーの精製において、粗モノマーをアミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄することを特徴とするレジスト用モノマーの精製方法。
- 請求項1記載の精製方法において、アミン類含有水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水または蒸留水で洗浄した後、晶析することを特徴とする精製方法。
- 請求項1または2に記載のいずれかの方法で精製されたレジスト用モノマー。
- 請求項3記載のレジスト用モノマーであって、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるレジスト用モノマー。
- 請求項5記載の方法で製造されたラクトン骨格含有化合物であって、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が1ppm以下であり、重金属の含有量が1ppm以下であり、ホウ素の含有量が10ppm以下であるラクトン骨格含有化合物。
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EP2196445A1 (en) * | 2008-12-15 | 2010-06-16 | Solvay Fluor GmbH | Process for reducing the metal content in organic heavy boiler waste |
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- 2002-12-09 JP JP2002356556A patent/JP2004189628A/ja active Pending
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