JP4697845B2 - 接着剤用の水性エマルジョン及びその組成物 - Google Patents
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Description
従来この接着剤に使用されている水性エマルジョンとしてはポリビニルアルコールを分散剤とする酢酸ビニルエマルジョンまたはエチレン-酢酸ビニルエマルジョンなどが知られている。
これに対して、従来から使用されている酢酸ビニルエマルジョンまたはエチレン-酢酸ビニルエマルジョンでは、常態接着性、初期接着性は良好であるものの、耐煮沸接着性が十分でないという問題を有している。これは、酢酸ビニルエマルジョン、またはエチレン-酢酸ビニルエマルジョンの耐水性不良に起因していると言われている。
しかしながら、これらで開示されたエマルジョンはポリビニルアルコール系重合体を保護コロイドとして乳化重合を行ったエマルジョンであるため、初期接着性は改良されるものの、先に挙げた酢酸ビニルエマルジョン、エチレン-酢酸ビニルエマルジョンと同様に、現在求められている初期接着性と耐煮沸接着性との高度なバランスを図ることはできていない。
本開示エマルジョンは初期接着性、耐煮沸接着性は良好なものの、木材の多様化、特にヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着に関しては記載がなく、また、それを示唆する記載もない。特許文献3のエマルジョンでは上記課題を解決することは十分でなかった。
以上の様に従来の接着用の水性エマルジョンは、ポットライフ、常態接着性、耐煮沸接着性、耐熱接着性、初期接着性、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着を全て満足するものはなかった。
すなわち、本発明は、
1.芳香族ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体ならびにヒドロキシル基含有ビニル単量体、不飽和カルボン酸単量体および架橋性単量体とを含み、架橋性単量体の含有割合が0.02〜3重量%である単量体組成物を界面活性剤を用いて乳化重合して得られた平均粒子径が200〜600nmである水性エマルジョン(1)と、イソシアネート系化合物(2)とを含むことを特徴とする接着剤用の水性エマルジョン組成物、
2.ヒドロキシル基含有ビニル系単量体が全単量体組成中0.5〜5質量%である上記1に記載の接着剤用の水性エマルジョン組成物である。
本発明の水性エマルジョン(1)は、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、及びヒドロキシル基含有ビニル系単量体、不飽和カルボン酸単量体及び架橋性単量体とを含む単量体組成物を界面活性剤を用いて乳化重合して得られる。
本発明の水性エマルジョン(1)に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
また、本発明の水性エマルジョン(1)中に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートである。
また、本発明の水性エマルジョン(1)中に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはそのモノエステル、フマル酸またはそのモノエステル、イタコン酸またはそのモノエステルなどが挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリ酸、イタコン酸の不飽和カルボン酸単量体であり、さらに好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体としては、例えばジビニルベンゼン等のラジカル重合性の二重結合を2個以上有している芳香族化合物、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート等のポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート等のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート等のジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のトリオールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等のテトラオール(メタ)アクリレート等の2個以上の(メタ)アクリル酸とのエステル化合物等を挙げることができる。
上記単量体に加えて、本発明の水性エマルジョン(1)に要求される様々な品質・物性を改良するために、上記以外の単量体成分を使用することができる。上記以外の単量体として、例えば(イ)アミド基含有ビニル単量体、(ロ)シアノ基含有ビニル単量体、(ハ)その他のエチレン性不飽和単量体等を挙げることができる。
(イ)アミド基含有ビニル単量体としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等を挙げることができる。
(ロ)シアノ基含有ビニル単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
またその他の単量体(ハ)も使用できる。例えば、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基などの官能基を有する各種のビニル単量体、さらには酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなども所望に応じて使用できる。
本発明の水性エマルジョン(1)に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体は全単量体中5〜80質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体が5質量%以上で常態接着性に問題がなく、80質量%以下で耐煮沸接着性に問題がない。好ましくは、10〜60質量%である。
本発明のエマルジョン(1)に用いられるヒドロキシル基含有ビニル系単量体は全単量体中0.5〜5質量%である。0.5質量%以上で常態接着性に問題なく、且つポットライフ、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性も良好であり、かつ初期接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着が優れるため好ましい。また、5質量%以下でポットライフに問題なく、常態接着性、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性も良好であり、かつ初期接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着が優れるため好ましい。好ましくは1〜4質量%である。
本発明のエマルジョン(1)に用いられる架橋性単量体は全単量体中0.01〜5重量%である。0.01重量%以上で耐煮沸接着性に問題なく、5重量%以下で常態接着性に問題ない。好ましくは0.05〜3重量%である。
本発明の水性エマルジョン(1)のガラス転移温度Tgは-40℃〜40℃が好ましい。-40℃以上で耐煮沸接着性に問題がなく、40℃以下で常態接着性に問題がない。好ましくは-30℃〜30℃である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
Tg:単量体1、2・・・よりなる重合体のガラス転移温度(゜K)
W1、W2・・:単量体1、単量体2、・・の質量分率
ここでW1+W2+・・=1
Tg1、Tg2・・:単量体1、単量体2、・・のホモ重合体のガラス転移温度(゜K)
計算に使用する単量体のホモ重合体のTg(゜K)は、例えばポリマーハンドブック(Jhon Willey & Sons)に記載されている。本願において用いた数値を例示する。カッコ内の値がホモ重合体のTgを示す。ポリスチレン(373゜K)、ポリメチルメタクリレート(378゜K)、ポリブチルアクリレート(219゜K)、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート(205゜K)、ポリアクリル酸(379゜K)、ポリメタクリル酸(403゜K)、ポリアクリロニトリル(373゜K)、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート(258゜K)、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(328゜K)である。
界面活性剤の使用方法は特に限定されず、例えば乳化重合時に全量使用しても、また乳化重合後にさらに必要量を添加してもよい。
本発明の水性エマルジョン(1)の平均粒子径は200〜600nmにコントロールする。平均粒子径が200nm以上でポットライフに問題がなく且つ常態接着性、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性も良好であり、かつ初期接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着が優れるため好ましい。また、600nm以下で初期接着性に問題がなく、且つポットライフ、常態接着性、耐煮沸接着性及び耐熱接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着が優れるため好ましい。好ましくは平均粒子径が300〜500nmである。
本発明の水性エマルジョン、及び組成物には性能を向上させるために、以下の材料を配合してもよい。例えば、水溶性樹脂、溶剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、着色剤、耐水化剤、潤滑剤、pH調整剤、防腐剤、無機顔料、有機顔料、界面活性剤、イソシアネート系化合物以外の架橋剤、例えばエポキシ系化合物、多価金属化合物などが挙げられる。
無機または有機の顔料としては例えば、無機顔料ではマグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛などの各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩または珪酸化合物などが挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイトなどである。有機顔料ではポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの固体高分子微粉末などが挙げられる。
各特性は次のようにして求めた。
(1)粒子径:
光散乱法により測定を行った。
測定装置は粒径測定装置(LEED&NORTHRUP社製、MICROTRACTMUPA150)を用い、体積平均粒子径を測定した。
下記に示す配合組成の主剤100質量部に、イソシアネート化合物としてMR−100(日本ポリウレタン(株)製、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート)(登録商標)を10〜25部配合し、激しく5分間攪拌を行う。
その後、20℃に放置し、ゲル化するまでの時間を観測する。90分以上を合格とする。なお、ゲル化の判定は、15分毎にスパチュラで軽く攪拌を行い、攪拌できなくなった時点とした。
主剤の配合組成 水性エマルジョン(固形分50%) 60質量部
ポリビニルアルコール(固形分15%) 20質量部
炭酸カルシウム 20質量部
ポリビニルアルコールは(株)クラレ製PVA217(登録商標)を用いた。なお、主剤の製法は以下の通り。先ず、エマルジョンを攪拌しながら炭酸カルシウムを投入し、10分間攪拌を行う。次いで、ポリビニルアルコールを攪拌下に添加し、さらに10分間攪拌を行った。
a.初期接着強さ/常態接着強さ (2)のポットライフ試験に用いた配合品(イソシアネート混合後10分以内に使用)を接着剤として使用した。試験片の作製条件はJISK6806:2003 5.11.1に準拠した。
初期接着強さは、除圧後速やかに測定を行い、常態接着強さは除圧後14日静値後測定を行った。
b.耐煮沸接着強さ:JISK6806:2003 5.11.1に準拠した。但し、沸騰水浸漬は次の条件とした。試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60±3℃の空気中で20時間乾燥し、更に沸騰水に4時間浸漬する。その後再度60±3℃の空気中で20時間乾燥し、更に沸騰水に4時間浸漬し、その後濡れたままの状態で試験を行った。
c.耐熱接着強さ:JISK6806:2003 5.11.1に準拠して作製した試験片を120℃の雰囲気下に120時間放置し、その後20℃に24時間放置し、試験を行った。
d.接着性阻害成分含有木材を用いたときの接着強さ:市販ロジン樹脂を10%トルエン/ミネラルスピリット混合溶液とし、接着性試験に用いる木材表面に刷けで2回塗布した。常温で1週間放置した。これを接着性阻害成分含有木材とした。その後、b.と同様に試験片を作製し、耐煮沸接着強さを測定した。
水性エマルジョン10は、水性エマルジョン1〜8と同様にプレ乳化液を作製した。反応容器には150nmの粒子径エマルジョン(スチレン/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート=10/40/45(質量比)系重合体 固形分50%)を20質量部投入した。その後の操作は水性エマルジョン1〜8と同様に行った。
表2に記載のエマルジョンを用いた主剤配合品を作製し、評価を行った。その評価結果も合わせて表2に示す。
表3に記載のエマルジョンを用いた主剤配合品を作製し、実施例と同様に評価を行った。その評価結果も合わせて表3に示す。
比較例1では架橋性単量体を使用していないので、接着性阻害成分含有木材を用いたときの接着強さが不良であり、比較例2では粒子径が小さいためポットライフが不良であり、比較例3では粒子径が大きいため初期接着性が不良であった。
Claims (2)
- 芳香族ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体ならびにヒドロキシル基含有ビニル単量体、不飽和カルボン酸単量体および架橋性単量体とを含み、架橋性単量体の含有割合が0.02〜3重量%である単量体組成物を界面活性剤を用いて乳化重合して得られた平均粒子径が200〜600nmである水性エマルジョン(1)と、イソシアネート系化合物(2)とを含むことを特徴とする接着剤用の水性エマルジョン組成物。
- ヒドロキシル基含有ビニル系単量体が、全単量体組成中0.5〜5質量%である請求項1に記載の接着剤用の水性エマルジョン組成物。
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