JP4697039B2 - プラズマディスプレイパネルとその製造方法、製造装置 - Google Patents

プラズマディスプレイパネルとその製造方法、製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマディスプレイパネルとその製造方法、製造装置に関し、特に前面基板の保護膜に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と記す)は、対向配置した前面基板と背面基板との周縁部を封着部材によって封着した構造であって、前面基板と背面基板との間に形成された放電空間には、ネオンおよびキセノンなどの放電ガスが封入されている。
前面基板は、ガラス基板の片面にストライプ状に形成された走査電極と維持電極とからなる複数の表示電極対と、これらの表示電極対を覆う誘電体層および保護膜とを備えている。表示電極対は、それぞれ透明電極と、その透明電極上に形成した金属材料からなるバス電極とによって構成されている。
背面基板は、ガラス基板の片面に表示電極対と直交する方向にストライプ状に形成された複数のアドレス電極と、これらのアドレス電極を覆う下地誘電体層と、放電空間をアドレス電極毎に区画するストライプ状の隔壁と、隔壁間の溝に順次塗布された赤色、緑色および青色の蛍光体層とを備えている。
表示電極対とアドレス電極とは直交していて、その交差部が放電セルになる。これらの放電セルはマトリクス状に配列され、表示電極対の方向に並ぶ赤色、緑色および青色の蛍光体層を有する3個の放電セルが、カラー表示のための画素になる。PDPは順次、走査電極とアドレス電極間、および走査電極と維持電極間に所定の電圧を印加してガス放電を発生させ、そのガス放電で生じる紫外線で蛍光体層を励起し、発光させることによりカラー画像を表示している。
ここで、保護膜は、ガス放電時に生じるイオン衝撃(スパッタリング)から誘電体層および電極を保護する役割(耐スパッタ性)と、その放電時に2次電子を放出し電荷を保持する、いわゆるメモリ機能の役割(電子放出特性)を果たす。そのため保護膜は、耐スパッタ性と電子放出特性に優れる酸化マグネシウム(MgO)などの金属酸化膜が一般的に用いられている。
このMgO膜などの金属酸化膜は、成膜過程において酸素欠損や不純物混入により膜物性が変化し、電子放出特性も変化する。そこで成膜の際に、成膜室のガス雰囲気を制御するために、成膜室に導入するガス分圧を一定範囲内に保持し、膜物性を安定させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−50804号公報
しかしながら、近年の画面サイズの大型化および多面取りで、成膜面積が大きくなっているため、特許文献1の成膜室に導入するガス分圧を一定範囲内に制御するだけでは、金属酸化膜の膜厚や膜物性が場所によって異なる場合があった。特に膜厚が薄くなり、保護膜に十分な電荷を保持できず2次電子を放出できないときは、点灯不良や不灯を発生させることもあった。そのため、PDP全面で均一な電子放出特性が得られるように、成膜室の制御をより精密に行う必要があった。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、保護膜である金属酸化膜の電子放出特性をPDP全面で安定させたPDPとその製造方法、製造装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために本発明は、表示電極および誘電体層が形成された基板を成膜室内に搬入し、基板の誘電体層が形成された面に金属酸化膜を成膜するPDPの製造方法であって、金属酸化膜の成膜は、成膜室内にHOを含むガスを導入しながら行うとともに、金属酸化膜の必要膜厚に対して半分以上の厚みが成膜されたときから成膜終了時までの時間の間にHO、OH、Hのうちの少なくとも1つのガスの分圧を少なくとも基板の1辺と直交する基板の中心線近傍と基板の端部近傍との複数箇所で計測し、ガスの分圧に基づいて分圧を計測する複数箇所に対応する複数箇所でHOの導入量を制御する方法である。
このような製造方法とすると、HO、OH、Hのうち少なくとも1つ以上のガスの分圧が成膜終了時付近に、基板全面で精度よく制御されるため、2次電子放出特性の安定した金属酸化膜を基板全面に形成できるPDPの製造方法となる。
また、本発明のPDPの製造方法は、金属酸化膜の成膜開始時から金属酸化膜の必要膜厚に対して半分未満の厚みが成膜されるまでの時間の間にガスの分圧を少なくとも基板の1辺と直交する基板の中心線近傍と基板の端部近傍との複数箇所でさらに計測するようにしてもよい。
成膜開始時の上述のガス分圧を計測することで、成膜終了時付近のガス濃度をフィードフォワード制御がかけられるため、金属酸化膜の表面層をより精度よく形成できる。
また、本発明のPDPの製造方法は、ガスの分圧は、HOの分圧が6×10−4Pa〜2×10−3Pa、OHの分圧が2×10−4Pa〜1.6×10−3Pa、Hの分圧が4×10−3Pa〜1×10−2Paのうちの少なくとも1つとしてもよい。
ガス分圧をこのような範囲にすると、得られるMgO膜の2次電子の放出物性は特に優れたものとなる。
さらに本発明のPDPの製造装置は、表示電極および誘電体層が形成された基板の誘電体層が形成された面に金属酸化膜を成膜する成膜室と、基板を成膜室内で所定の一方向に搬送する搬送装置と、成膜室内にHOを含むガスを少なくとも基板の1辺と直交する基板の中心線近傍と基板の端部近傍との複数箇所に導入するガス導入手段と、ガスを導入する複数箇所に対応する複数箇所でHO、OH、Hのうちの少なくとも1つのガスの分圧を検出する分圧検出手段と、分圧検出手段により検出された値に基づきガス導入手段の導入するガス量を制御する制御手段とを備え、ガス導入手段と分圧検出手段とは、成膜室の成膜空間の中央より成膜室から基板を搬出する搬出口側に配置されている構成とすることである。
このような構成のPDPの製造装置とすると、HO、OH、Hのうち少なくとも1つのガスの分圧を、分圧検出手段で少なくとも基板の1辺と直交する基板の中心線近傍と基板の端部近傍に複数検出する。そしてガス導入手段により成膜室内を適正なガス分布にできる。そのため金属酸化膜の表面層は、基板全面で精度よく制御され、2次電子放出特性の安定した金属酸化膜を基板全面に形成できるPDPの製造装置となる。
さらに本発明は、第1のガラス基板上に第1の電極と誘電体膜と誘電体膜を覆う保護膜が形成された第1の基板と、第2のガラス基板上に第2の電極と隔壁と蛍光体層とを備えた第2の基板とが対向配置されたPDPであって、保護膜の中に含まれる水素濃度が、保護膜の中央部と端部とで異なる構成である。
このような構成のPDPとすると、保護膜の中央部と端部とで膜物性が異なっていても、異なる水素濃度が膜物性を均一にし、金属酸化膜である保護膜の電子放出特性をPDP全面で安定させることができる。
また、本発明のPDPは、保護膜の中央部の膜厚より保護膜の端部の膜厚が薄い場合は、保護膜の中に含まれる水素濃度が、保護膜の中央部より端部が高くなってもよい。
このようなPDPであると、保護膜の膜厚が中央部より薄い端部は中央部に比べて2次電子の放出特性が劣るが、保護膜の端部に多く含むようにした水素濃度が膜物性を均一にするため、基板全面で2次電子の放出特性が安定したPDPとなる。
以上のように本発明によれば、基板の複数箇所でガス分圧を検出し、導入ガスを制御するため、保護膜である金属酸化膜の電子放出特性をPDP全面で安定させたPDPとその製造方法、製造装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態によるPDPとその製造方法、製造装置について図面を用いて説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態のPDPの概略構成を示す断面斜視図である。
PDP101の第1の基板である前面板102は、例えばガラスのような透明かつ絶縁性の第1のガラス基板である基板103の一主面上に形成した走査電極104と維持電極105とからなる第1の電極である表示電極106と、その表示電極106を覆う誘電体膜107と、さらにその誘電体膜107を覆う、例えばMgOによる保護膜108とを有する構造である。走査電極104と維持電極105とは、電気抵抗の低減を目的として、透明電極104a、105aに金属材料、例えば銀(Ag)などからなるバス電極104b、105bを積層した構造としている。
また第2の基板である背面板109は、例えばガラスのような絶縁性の第2のガラス基板である基板110の一主面上に形成した第2の電極であるアドレス電極111と、そのアドレス電極111を覆う下地誘電体膜112と、下地誘電体膜112上の隣り合うアドレス電極111の間に相当する場所に位置する隔壁113と隔壁113間の蛍光体層114R、114G、114Bとを有する構造である。
そして、前面板102と背面板109とは、隔壁113をはさんで、表示電極106とアドレス電極111とが直交するように対向配置され、画像表示領域外の周囲が図示していない封着部材により封止されている。前面板102と背面板109との間に形成された放電空間115には、例えばNe−Xe10%の放電ガスを66.5kPa(500Torr)の圧力で封入している。そして、放電空間115の表示電極106とアドレス電極111との交差部が放電セル(単位発光領域)116として動作する。
次に、上述したPDP101について、その製造方法を同じく図1を参照しながら説明する。
前面板102は、基板103上にまず、走査電極104および維持電極105を形成する。具体的には、基板103上に、例えばITOによる膜を蒸着やスパッタなどの成膜プロセスにより形成し、その後、フォトリソ法などによってパターニングして透明電極104a、105aを形成する。さらにその上から、例えばAgによる膜を蒸着やスパッタなどの成膜プロセスにより形成し、その後、フォトリソ法などによってパターニングすることでバス電極104b、105bを形成する。以上により、走査電極104および維持電極105からなる表示電極106を得ることができる。
次に、以上のようにして形成した表示電極106を誘電体膜107で被覆する。誘電体膜107は、ガラス材料を含むペーストを、例えばスクリーン印刷で塗布した後、焼成することによって形成する。次に、以上のようにして形成した誘電体膜107を、金属酸化膜、例えばMgOによる保護膜108で被覆する。
背面板109は、基板110上に、アドレス電極111を形成する。具体的には基板110上に、例えばAg材料などによる膜を、蒸着やスパッタなどの成膜プロセスにより形成し、その後、フォトリソ法などによってパターニングしてアドレス電極111を形成する。さらに、アドレス電極111を下地誘電体膜112により被覆した後、隔壁113を形成する。
そして、隔壁113間の溝に、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の蛍光体粒子により構成される蛍光体層114R、114G、114Bを形成する。具体的には、各色の蛍光体粒子と有機バインダとからなるペースト状の蛍光体インキを塗布し、焼成して有機バインダを焼失させることによって各蛍光体粒子が結着してなる蛍光体層114R、114G、114Bを形成する。
以上のようにして作製した前面板102と背面板109とを、前面板102の表示電極106と背面板109のアドレス電極111とが直交するように重ね合わせるとともに、周縁に封着用ガラスによる封着部材を介挿し、これを焼成した気密シール層(図示せず)で封着する。そして、一旦放電空間115内を高真空に排気した後、放電ガス(例えば、He−Xe系、Ne−Xe系の不活性ガス)を所定の圧力で封入することによってPDP101を作製する。
次に、上述したPDP101の製造装置であるMgO膜の保護膜108の成膜装置および製造方法を説明する。
まず、成膜装置の構成を説明する。図2は、本発明の実施の形態のPDP101の保護膜108を形成するための成膜装置201の概略構成を示す縦断面図であり、図3は図2の成膜装置201の平面図である。
成膜装置201は、金属酸化膜を成膜する蒸着室(成膜室)202およびその前後の基板投入室203、基板取出室204より構成されている。蒸着室202は、PDP101の基板103に対してMgOを蒸着してMgO薄膜である保護膜108を形成する成膜室である。また基板投入室203では、蒸着室202に基板103を投入する前に基板103を予備加熱するとともに、予備排気を行う。基板取出室204では、蒸着室202での蒸着が終了後、取り出された基板103を冷却する。
以上の、基板投入室203、蒸着室202、基板取出室204の各々は、内部を真空雰囲気にできるように密閉構造となっており、各室毎に独立して排気手段である真空排気系205a、205b、205cをそれぞれ備えている。
また、基板投入室203、蒸着室202および基板取出室204を貫いて、搬送ローラ、ワイヤー、チェーンなどによる搬送装置206を配置している。そして、外気と基板投入室203との間、基板投入室203と蒸着室202との間、蒸着室202と基板取出室204との間、基板取出室204と外気との間それぞれを開閉可能な仕切壁207a、207b、207c、207dで仕切っている。さらに搬送装置206の駆動と仕切壁207a、207b、207c、207dの開閉との連動によって、基板投入室203、蒸着室202、基板取出室204のそれぞれの真空度の変動を最小限にしている。
その結果、基板103を成膜装置201外から基板投入室203、蒸着室202、基板取出室204を順に通過させて、それぞれの室での所定の処理を行い、その後、成膜装置201外に搬出することが可能となり、複数枚の基板103に対して連続してMgOを成膜することができる。
また、基板投入室203、蒸着室202の各室には、基板103を加熱するための加熱ランプ208a、208bをそれぞれ設置している。なお、基板103は基板保持具216に保持し、搬送装置206で一方向220に搬送される。
次に、成膜室である蒸着室202について説明する。蒸着室202には、蒸着源209であるMgOの粒を入れたハース210、電子銃211、磁場を印加する偏向マグネット(図示せず)などを設けている。電子銃211から照射した電子ビーム212を、偏向マグネットにより発生する磁場によって偏向して蒸着源209に照射し、蒸着源209であるMgOの蒸気流213を発生させる。そして、発生させた蒸気流213を、基板保持具216に保持させた基板103の表面に堆積させてMgOの保護膜108を形成する。
また、蒸着源209と基板保持具216に保持させた基板103との間には、上流側遮断壁214および下流側遮断壁215が設けられている。
さらに蒸着室202の出口付近に、基板103の1辺と直交する基板103の中心線近傍221と基板103の端部近傍222、223とに、それぞれ酸素ガス導入手段217a、217b、217cとHOガス導入手段218a、218b、218cとが設けられている。また、酸素ガス導入手段217a、217b、217cには、それぞれ酸素ガス導入量制御手段317a、317b、317cが、HOガス導入手段218a、218b、218cにはそれぞれHOガス導入量制御手段318a、318b、318cが接続されている。また、蒸着室202の搬出口側224および搬入口側225には、それぞれ成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段219a、219b、219c、成膜過程開始時間付近のガス分圧検出手段320a、320b、320cが設けられている。
ここで成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段219a、219b、219c、および成膜過程開始時間付近のガス分圧検出手段320a、320b、320cの位置は、酸素ガス導入手段217a、217b、217cとHOガス導入手段218a、218b、218cのガスを導入する箇所に対応する箇所であり、基板103の中心線近傍221と基板103の端部近傍222、223とである。また、酸素ガス導入手段217a、217b、217c、HOガス導入手段218a、218b、218cは、蒸着室202の搬出口側224に配置されている。
なお、ここで成膜過程開始時間付近とは、MgO膜の成膜開始時から必要膜厚に対して半分未満の厚みが成膜されるまでの時間であり、成膜過程終了時間付近とは、MgO膜の必要膜厚に対して半分以上の厚みが成膜された時間から成膜終了時までの時間範囲である。
次に、保護膜108の製造方法を詳細に説明する。基板投入室203で予備加熱された基板103は、蒸着室202で加熱ランプ208bにより加熱されて一定温度に保たれる。この温度は、基板103上にすでに形成されている表示電極106や誘電体膜107が熱劣化することがないように、100℃から400℃程度に設定される。そして、上流側遮断壁214と下流側遮断壁215とを閉じた状態で、電子銃211から電子ビーム212を蒸着源209に照射して予備加熱することにより、不純ガスの脱ガスを行う。
その後、酸素ガス導入手段217a、217b、217cから酸素ガスを、HOガス導入手段218a、218b、218cからHOを含むガスを導入する。そしてこれらのガスは、蒸着室202の成膜場において成膜過程終了時の分圧が一定範囲内、かつ基板103の1辺と直交する基板103の中心線近傍221と基板103の端部近傍222、223で所望量となるように制御される。これは、例えば蒸着室202に対して、真空排気系205bにより排気しながら、酸素ガス導入手段217a、217b、217cから酸素ガスを、HOガス導入手段218a、218b、218cからHOを含むガスを導入し、制御手段である酸素ガス導入量制御手段317a、317b、317cおよびHOガス導入量制御手段318a、318b、318cでそれぞれの量を調整し、排気と平衡させることで行われる。なお、成膜場とは蒸着室202内のハース210と基板103との間の空間を指す。
そして、この状態で上流側遮断壁214と下流側遮断壁215とを開けると、MgOの蒸気流213が基板103に向けて噴射される。その結果、基板103に飛翔した蒸着材料により基板103上にはMgO膜による保護膜108が形成される。
ここで基板103は、一定速度(例えば、約800mm/min)で蒸着室202内を搬送されているので、基板103上に形成されたMgOの蒸着膜である保護膜108の膜厚が所定の値(例えば約0.9μm)に達し、仕切壁207cを通じて基板103は基板取出室204へ搬送される。以上において、成膜室である蒸着室202内の真空度は、2×10−2Pa程度になるように、酸素ガスの導入量と排気量を制御している。
次に、MgO膜の成膜時に酸素ガス分圧と、HOを含むガス分圧とを制御した理由について述べる。
保護膜108であるMgO膜の物性は、その成膜過程での酸素欠損、不純物混入、および膜の厚みにより変化することが知られている。特に、成膜過程でも成膜終了時間付近での酸素欠損、不純物混入によるMgO膜の物性の変化が、保護膜108の特性である2次電子放出性能に影響を与えることを本発明者らは検討により確認している。例えばMgOにおいて、膜表層の酸素が欠損すると、MgO膜内のMg原子とO原子との結合に乱れが生じ、これにより発生する結合に関与しない未結合手(ダングリングボンド)の存在によってMgOのエネルギーバンドに影響を与え、2次電子放出の状態が変化するためであると考えられる。
そこで、MgO膜の物性を安定させ、保護膜108の特性を安定的に確保することを目的として、MgO膜内の特に表層部分の未結合手の量を制御するために、成膜時に、各種のガスを成膜室に導入してその雰囲気を制御することが考えられる。この場合、各種のガスとしては、例えば酸素欠損を防止し未結合手の量を制御するという目的からは、酸素ガスを挙げることができる。また、積極的にHやOHの不純物を膜中に混入させて未結合手に、HやOHを結合させることでMgOのエネルギーバンドに影響を与えるという目的からは、水を含むガスを挙げることができる。
しかしながら、上述のような蒸着室202の雰囲気を制御して成膜する場合、特に成膜終了時間付近での蒸着室202の酸素ガスと水を含むガスの状態により、保護膜108の特性に影響を及ぼす膜物性が大きく変化する。そこで、保護膜108の特性を安定にするためには、それらのガス状態を成膜過程において適正に制御することが必要となる。
ここで、本発明者らは検討の結果、成膜室である蒸着室202でのそれらのガス状態の適正な制御として、蒸着室202での特に成膜終了時間付近でのガスの分圧を一定範囲内に保ちながら成膜を行うと、安定して良質な金属酸化膜が形成できることを確認している。
また、酸素ガス導入手段217a、217b、217cと、HOガス導入手段218a、218b、218cとは、それぞれ酸素ガス導入量制御手段317a、317b、317cとHOガス導入量制御手段318a、318b、318cとでガス導入量が制御されている。そして、酸素ガス導入量制御手段317a、317b、317cとHOガス導入量制御手段318a、318b、318cとは、成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段219a、219b、219cの計測値に基づいてガス導入量が決定される。このようにして酸素ガスと、水を含むガスの分圧を一定範囲内、かつ基板103の1辺と直交する基板103の中心線近傍221と基板103の端部近傍222、223の複数箇所で所望量に保った状態にしてMgO膜の蒸着を行うことができる。
以上の成膜装置および製造方法で成膜された保護膜について、図面を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態のPDPの保護膜の縦断面図である。基板103に成膜される保護膜108は、成膜装置201内での中央部、例えば図3に示すように、基板保持具216に基板103が1枚保持されている場合、基板103の中央部の膜厚が厚く、端部が薄くなる傾向があり、膜厚が厚いほうが2次電子の放出特性が良好となることが知られている。また、膜中にHO起因のHなどの不純物が混入したりすると2次電子の放出特性が良好となることを、上述のとおり本発明者らは検討により確認している。
そこで、蒸着室202において、基板103の中央部でHを含むガスの分圧が低く、端部でHを含むガスの分圧が高くなるようにした。すなわち、基板103の中央部の成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段219aの情報に基づき、酸素ガス導入量制御手段317a、HOガス導入量制御手段318aにより酸素ガス導入手段217a、HOガス導入手段218aからのガス導入量を少なくなるように制御を行った。また、基板103の端部の成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段219b、219cの情報に基づき、酸素ガス導入量制御手段317b、317c、HOガス導入量制御手段318b、318cにより、それぞれ酸素ガス導入手段217b、217c、HOガス導入手段218b、218cからのガス導入量を多くなるように制御を行った。その結果、保護膜108中に含まれる水素原子401の濃度を制御することができ、得られるMgO膜の物性が膜厚に差異があった場合でも、PDP全面で均一な2次電子の放出特性を得ることができる。
なお、保護膜108中に含まれる水素原子401の濃度の制御は、成膜終了時間付近での蒸着室202でのガスの状態により、保護膜108の特性に影響を及ぼす膜物性が大きく変化するため、保護膜108表面から300nmの間であることが好ましい。
また、図3に示すように蒸着室202内での成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段219a、219b、219cに加えて、成膜過程開始時間付近のガス分圧検出手段320a、320b、320cを設けてもよい。この場合、基板保持具216に保持された基板103が成膜過程開始時間付近のガス分圧検出手段320a、320b、320c付近を搬送装置206により搬送されている際、基板保持具216および基板103に吸着していた水を含むガスの量を計測できる。そして、その計測した値をHOガス導入量制御手段318a、318b、318cへフィードフォワードすることにより、予め成膜終了時間付近のガスの分圧を制御しておくことができる。
さらに、基板投入室203のガス分圧を検出する基板投入室ガス分圧検出手段321a、321b、321cを設けてもよい。この場合、基板保持具216に保持された基板103が基板投入室ガス分圧検出手段321a、321b、321c付近を搬送装置206により搬送されている際、基板保持具216および基板103に吸着していた水を含むガスの量を計測できる。そして基板投入室ガス分圧検出手段321a、321b、321cで検出した値を図示していない記憶手段に格納し、基板保持具216に保持された基板103が蒸着室202内に搬送装置206により搬送された際、記憶手段に格納された値をHOガス導入量制御手段318a、318b、318cへフィードフォワードすることにより、予め成膜終了時間付近のガスの分圧を制御しておくことができる。
また、成膜室である蒸着室202内でHO、OH、Hのうち少なくとも1つのガスの分圧を、HO(ガス状態)の分圧では6×10−4Pa〜2×10−3Pa、OHの分圧では2×10−4Pa〜1.6×10−3Pa、Hの分圧では4×10−3Pa〜1×10−2Paとなるように、HOガス導入手段218a、218b、218cから導入されるHOの導入量と真空排気系205bによる排気量とを制御すれば、得られるMgO膜の物性は特に良好となり好ましい。
また、成膜終了時間付近の分圧を一定範囲に保つとともに、成膜室である蒸着室202の真空度を一定範囲に保つことは、成膜レートを一定とし良質な膜を効率的に得るという観点から好ましい。この場合、図2に示す成膜装置201の蒸着室202に対して、成膜場での真空度を検出する真空度検出手段(図示せず)を設ければよい。この真空度検出手段の真空度の情報を考慮して、酸素ガス導入手段217a、217b、217c、HOガス導入手段218a、218b、218cからのガス導入量と、真空排気系205bによる排気量とを制御し、蒸着室202内での成膜終了時間付近の酸素およびHOガスの分圧が一定範囲内とし、かつ真空度も一定範囲内となるようにすればよい。このとき、真空度を一定範囲内と調整する方法としては、例えばアルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)などの不活性ガスを用いれば、成膜されるMgOの物性に影響を与えずに、真空度の調整を行うことが可能となる。不活性ガスは、MgO膜に対し化学的な作用を与えることがないので、MgO膜の物性に影響を与えずに真空度の調整のみに作用させることができ好ましい。
また、以上の説明の各種ガスは、その純度が100%のものだけをさすものではなく、通常、一般的に入手できる程度の、例えば99.9%程度の純度で一部不純物を含むガスを含むものでよい。
また、成膜装置201の構成としては、上述したもの以外に、例えば基板103の温度プロファイルの設定条件に応じて、基板投入室203と蒸着室202との間に基板103を加熱するための基板加熱室が1つ以上あるものや、また蒸着室202と基板取出室204との間に基板冷却室が1つ以上あるものでもよい。
また、基板103に対する、蒸着室202内でのMgOの蒸着は、基板103の搬送を停止して静止した状態で行っても、搬送しながら行ってもどちらでもよい。
また、成膜装置201の構造も、上述のものに限らず、タクト調整などのために各室間にバッファー室を設けた構成や、加熱・冷却のためのチャンバー室を設けた構成、バッチ式で成膜を行う構造のものなどに対してでも、本発明による効果を得ることができる。
また、複数のガスを成膜室である蒸着室202に導入する場合、その導入方法としては、個々のガス毎に酸素ガス導入手段217a、217b、217c、HOガス導入手段218a、218b、218cを設け、そこから導入する方法や、予め複数のガスを混合する混合室(図示せず)を設け、そこで混合した後、ガス導入手段を通じて導入する方法などが挙げられる。
また、本発明の実施の形態において、個々のガス毎に酸素ガス導入手段217a、217b、217c、HOガス導入手段218a、218b、218cを設置したが、ガス導入手段は少なくとも2個設置すればよい。
また、以上の説明においては、保護膜108をMgOにより蒸着で形成する例を用いて説明したが、本発明はMgOや蒸着に限るものではなく、金属酸化膜を成膜する場合に対して、同様の効果を得ることができる。
本発明は、保護膜である金属酸化膜の電子放出特性をPDP全面で安定させたPDPとその製造方法、製造装置を提供でき、表示性能に優れたプラズマディスプレイ装置などを実現することができる。
本発明の実施の形態のPDPの概略構成を示す断面斜視図 同PDPの保護膜を形成するための成膜装置の概略構成を示す縦断面図 図2の成膜装置の平面図 本発明の実施の形態のPDPの保護膜の縦断面図
符号の説明
101 PDP(プラズマディスプレイパネル)
102 前面板(第1の基板)
103 基板(第1のガラス基板)
104 走査電極
104a,105a 透明電極
104b,105b バス電極
105 維持電極
106 表示電極(第1の電極)
107 誘電体膜
108 保護膜
109 背面板(第2の基板)
110 基板(第2のガラス基板)
111 アドレス電極(第2の電極)
112 下地誘電体膜
113 隔壁
114R,114G,114B 蛍光体層
115 放電空間
116 放電セル(単位発光領域)
201 成膜装置
202 蒸着室(成膜室)
203 基板投入室
204 基板取出室
205a,205b,205c 真空排気系(排気手段)
206 搬送装置
207a,207b,207c,207d 仕切壁
208a,208b 加熱ランプ
209 蒸着源
210 ハース
211 電子銃
212 電子ビーム
213 蒸気流
214 上流側遮断壁
215 下流側遮断壁
216 基板保持具
217a,217b,217c 酸素ガス導入手段
218a,218b,218c HOガス導入手段
219a,219b,219c 成膜過程終了時間付近のガス分圧検出手段
220 一方向
221 基板の中心線近傍
222,223 基板の端部近傍
224 搬出口側
225 搬入口側
317a,317b,317c 酸素ガス導入量制御手段
318a,318b,318c HOガス導入量制御手段
320a,320b,320c 成膜過程開始時間付近のガス分圧検出手段
321a,321b,321c 基板投入室ガス分圧検出手段
401 水素原子

Claims (6)

  1. 表示電極および誘電体層が形成された基板を成膜室内に搬入し、前記基板の前記誘電体層が形成された面に金属酸化膜を成膜するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記金属酸化膜の成膜は、前記成膜室内にHOを含むガスを導入しながら行うとともに、前記金属酸化膜の必要膜厚に対して半分以上の厚みが成膜されたときから成膜終了時までの時間の間にHO、OH、Hのうちの少なくとも1つのガスの分圧を少なくとも前記基板の1辺と直交する前記基板の中心線近傍と前記基板の端部近傍との複数箇所で計測し、前記ガスの分圧に基づいて前記分圧を計測する複数箇所に対応する複数箇所でHOの導入量を制御することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  2. 前記金属酸化膜の成膜開始時から前記金属酸化膜の必要膜厚に対して半分未満の厚みが成膜されるまでの時間の間に前記ガスの分圧を少なくとも前記基板の1辺と直交する前記基板の中心線近傍と前記基板の端部近傍との複数箇所でさらに計測することを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  3. 前記ガスの分圧は、
    Oの分圧が6×10−4Pa〜2×10−3Pa、
    OHの分圧が2×10−4Pa〜1.6×10−3Pa
    の分圧が4×10−3Pa〜1×10−2Paのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
  4. 表示電極および誘電体層が形成された基板の前記誘電体層が形成された面に金属酸化膜を成膜する成膜室と、前記基板を前記成膜室内で所定の一方向に搬送する搬送装置と、前記成膜室内にHOを含むガスを少なくとも前記基板の1辺と直交する前記基板の中心線近傍と前記基板の端部近傍との複数箇所に導入するガス導入手段と、前記ガスを導入する複数箇所に対応する複数箇所でHO、OH、Hのうちの少なくとも1つのガスの分圧を検出する分圧検出手段と、前記分圧検出手段により検出された値に基づき前記ガス導入手段の導入するガスの量を制御する制御手段とを備え、前記ガス導入手段と前記分圧検出手段とは、前記成膜室の成膜空間の中央より前記成膜室から前記基板を搬出する搬出口側に配置されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造装置。
  5. 第1のガラス基板上に第1の電極と誘電体膜と前記誘電体膜を覆う保護膜が形成された第1の基板と、第2のガラス基板上に第2の電極と隔壁と蛍光体層とを備えた第2の基板とが対向配置されたプラズマディスプレイパネルであって、前記保護膜の中に含まれる水素濃度が、前記保護膜の中央部と端部とで異なることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  6. 前記保護膜の中央部の膜厚より前記保護膜の端部の膜厚が薄い場合は、前記保護膜の中に含まれる水素濃度が、前記保護膜の前記中央部より前記端部が高いことを特徴とする請求項5記載のプラズマディスプレイパネル。
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