JP4692976B2 - 中通し竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は釣竿、特に、内部に釣糸が挿通される中通し竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の中通し竿は、釣用リールが装着される元竿と、元竿に振出形式で順次連結される元上竿、中竿、穂先竿等を備えている。この元竿の穂先側周面にはリールからの釣糸を釣糸通路に導入するための釣糸導入口が設けられ、各竿体の内部は釣糸が通過可能な釣糸通路となっており、穂先竿の穂先側端部にはトップガイドが装着されている。そして、リールからの釣糸は釣糸導入口から竿体内へ導入され順次穂先側へ釣糸通路を挿通してトップガイドより外部へ導出されることになる。
【0003】
このような中通し竿では、内部の釣糸通路における釣糸の摺動抵抗を低減するために、各竿体の内周面に釣糸支持突起を竿体と一体的に形成する工夫が為されている。この釣糸支持突起は、竿体を構成する繊維強化樹脂(プリプレグ)を一部螺旋状に径内方向に突出するように配置して、竿体自体を構成するプリプレグ層と一体的に焼成して形成されるのが一般的である。具体的には、芯材に螺旋状に釣糸支持突起形成用のプリプレグテープを巻回し、プリプレグテープの隙間には剥離テープを配置し、その上に竿体自体を構成する為のプリプレグを巻回し、これらを焼成し、その後芯材を引き抜き、剥離テープを剥離して竿体を製造する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように釣糸支持突起を形成する必要があるのは、釣糸が竿体内を挿通する部分、即ち、釣糸導入口より穂先側に位置する部分である。とすれば、釣糸導入口が設けられている元竿においては、その釣糸導入口より穂先側にのみ釣糸支持突起を形成すれば足りることになる。
【0005】
しかし、一本の筒状の竿体において部分的に釣糸支持突起を内周面に形成するのは煩雑かつ複雑な工程が要求され事実上困難である(何故なら、上述の剥離テープを剥離するためには、剥離テープが竿体の端面に現れている必要がある)。とすれば、元竿の軸方向途中に釣糸導入口を形成する場合においては、実際には形成する必要がない部分を含めた元竿内周面全体に釣糸支持突起を形成せざるを得ない。このような不要な釣糸支持突起は、製造コストの上昇を招くと共にゴミが溜まりやすい等の問題ともなり得る。
【0006】
本発明の課題は、必要な部分のみに釣糸支持突起を有しており製造が容易な中通し竿を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る中通し竿は、内部に釣糸が挿通可能な中通し竿であって、穂先側端部の外周面に釣糸導入口を有すると共に内周面が実質的に平滑に形成され、釣糸導入口から釣糸が導入される元竿と、元竿の穂先側に挿入され固定された内周面に釣糸支持突起が形成され、釣糸が内部を挿通する元上竿と、元上竿の穂先側に振出形式で連結される内周面に釣糸支持突起を有する複数の竿体からなり、釣糸が内部を挿通する竿体ユニットとを備え、元上竿と元竿の連結部分には、連結部分の外周面に、連結部分を跨ぐようにプリプレグ層または樹脂層が設けられ、元上竿と前記元竿とは一体化されている。
【0008】
この中通し竿では、穂先側端部に釣糸導入口が形成されており釣糸が内部を挿通することのない元竿においては釣糸支持突起が形成されておらず、内部に釣糸が挿通することが予定される元上竿及び竿体ユニットに釣糸支持突起が形成される。このように、釣糸支持突起を必要とする部分と設けることが不要な部分とを別個の竿体として構成することで、製造工程の簡易化及びコストの削減が可能である。また、元上竿が元竿に直接固定されているので、魚を釣り上げる際にもっとも強度が要求される釣糸導入口穂先側付近の耐久性にも優れる。
また、この中通し竿では、プリプレグ層または樹脂層が元上竿と元竿との連結を強固なものとしており、魚を釣り上げる際にもっとも強度が要求される釣糸導入口穂先側付近の耐久性にさらに優れる。
【0009】
発明2に係る中通し竿は、内部に釣糸が挿通可能な中通し竿であって、周面にリールシートが設けられ内周面が実質的に平滑な第1元竿と、第1元竿の穂先側に振出形式に連結され、穂先側端部の外周面に釣糸導入口を有すると共に内周面が実質的に平滑に形成され、釣糸導入口から釣糸が導入される第2元竿と、第2元竿の穂先側に挿入され固定される内周面に釣糸支持突起が形成され、釣糸が内部を挿通する元上竿と、元上竿の穂先側に振出形式で連結される内周面に釣糸支持突起を有する複数の竿体からなり、釣糸が内部を挿通する竿体ユニットとを備え、第2元竿は、竿元側外周面及び釣糸導入口の竿元側の外周面が第1元竿の嵌合雌部に嵌合可能な嵌合雄部になっており、第1元竿内に収納された収納状態と第1元竿より穂先側に引き出された延伸状態との何れにおいても第1元竿に振出嵌合可能であり、元上竿と第2元竿の連結部分には、連結部分の外周に、連結部分を跨ぐようにプリプレグ層または樹脂層が設けられ、元上竿と第2元竿とが一体化されている。
このような第2元竿を延伸状態,収納状態の何れかの状態で第1元竿に振出嵌合させることで、リールと釣糸導入口との軸方向長さを調整すると共に状況に応じて釣竿の長さを変化させながら釣りを行うことも可能となる。
【0011】
この中通し竿では、プリプレグ層または樹脂層が元上竿と第2元竿との連結を強固なものとしており、魚を釣り上げる際にもっとも強度が要求される釣糸導入口穂先側付近の耐久性にさらに優れる。
【0012】
発明3に係る中通し竿は、発明1又は2の中通し竿であって、元上竿の竿元側端部に配置された硬質リングをさらに備える。
【0013】
この中通し竿では、元竿と元上竿との連結部分において内径差が生じることになり、ここに釣糸導入口から元竿内導入された釣糸が接触する恐れがあるが、硬質リングが係る部分に配置されることで、釣糸と竿体との不要な接触を回避して、相互に傷付けあうのを防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態を採用する中通し竿は、第1元竿1aと第2元竿1bとからなる元竿1と、元竿1の穂先側に竿元側端部が挿入された状態で連結され固定されている元上竿2と、元上竿2の穂先側に順次振出形式で連結される第1中竿3,第2中竿4,穂先竿5とを有している。これら元竿1〜穂先竿5は、それぞれ先細りテーパ状に形成された筒状部材である。炭素繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化樹脂(プリプレグ)から形成される先細筒状部材である。
【0015】
元竿1は、竿元側に配置される第1元竿1aとその穂先側に振出形式に連結される第2元竿1bとからなる。第1元竿1aの外周面には、リール(図示せず)が脱着自在に装着可能なリールシート6が形成されており、竿元側端部には尻栓7が着脱自在に装着されている。
【0016】
また、図2に詳しく示すように、第2元竿1bの穂先側端部外周には釣糸導入口8が形成されており、この釣糸導入口8上には、釣糸導入口を軸方向に跨ぐように釣糸導入ガイド9が配置されている。釣糸導入ガイド9は金属または合成樹脂から構成される部材であり、両端部がそれぞれ釣糸導入口8の穂先側・竿元側において第2元竿1bの周面に巻糸等で固定されている。この釣糸導入ガイド9にはセラミックス等の硬質部材からなるガイドリング9a,9bがはめ込まれており、このガイドリング9a,9bをリールからの釣糸が挿通して釣糸導入口8へと導かれる。また、釣糸導入口8の開口周縁には別途セラミックス製の部材Pをはめ込んでおいてもよい。
【0017】
この元竿1を構成する第1元竿1a,第2元竿1bの内周面には後述する釣糸支持突起が形成されておらず実質的にその内周面は平滑である(図2参照)。また、第1元竿1aの穂先側端部内周面は嵌合雌部となっており、第2元竿1bは竿元側外周面及び釣糸導入口8の竿元側の周面部分がそれぞれ嵌合雄部となっている。そして、第2元竿1bは第1元竿1a内に収納された状態及び穂先側に引き出された状態の何れにおいても第1元竿1aの嵌合雌部に嵌合固定可能となっている(図3参照)。
【0018】
図2に詳しく示すように、元上竿2は先細り筒状部材であり、第2元竿1bの穂先側に連結され固定されている。第2元竿1bと元上竿2とは、例えば、接着剤によって固定することも可能であり、または、これらの連結部分の外周面に両者を跨ぐようにプリプレグ素材を巻回し焼成して第2元竿1bと元上竿2とを一体化させて固定したり、熱硬化性樹脂を塗布して焼成して第2元竿1bと元上竿2とを一体化させることも可能である。
【0019】
また、この元上竿2の内周面には軸方向全体にわたって釣糸支持突起2aが螺旋状に元上竿2自体と一体的に形成されている。この釣糸支持突起2aは、周知の手法によって形成すれば足りる。例えば、釣糸支持突起2a形成用のプリプレグテープを芯材に巻回し、その隙間に剥離テープを巻回し、その外周に元上竿2自体を形成するプリプレグを巻回して焼成し、芯材を引き抜き、剥離テープを剥離する等の方法が挙げられる。この元上竿2の穂先側端部内周面は嵌合雌部となっており、第1中竿3が振出形式で嵌合固定可能となっている。
【0020】
さらに、元上竿2の竿元側端部(詳しくは、元上竿2と第2元竿1bとの内径差が生じる部分)には硬質セラミックスリング100が接着固定されている。このセラミックスリング100はその内径が元上竿2の竿元側端部内径よりやや小径である。
【0021】
第1中竿3〜穂先竿5もプリプレグから形成される先細り筒状部材であり、順次振出形式で連結され竿元側の竿体内へ収納可能となっている。これらの内周はそれぞれ釣糸が挿通可能な釣糸通路となっており、それぞれ軸方向全体にわたって釣糸支持突起が、元上竿2と同様に各竿体と一体的に形成されている。そして、穂先竿5の穂先側端部にはトップガイド10が脱着自在に装着されている。
【0022】
このように構成された中通し竿では、使用時には、元上竿2の穂先側に順次第1中竿3〜穂先竿5を引き出して振出形式に連結して一本の釣竿として用いられる。そして、リールからの釣糸は釣糸導入ガイド9を介して釣糸導入口8から第2元竿1b・元上竿2内へ導入され、順次穂先側へと竿体内を挿通して穂先竿5のトップガイド10より穂先側へ導かれる。そして、この中通し竿は、釣糸が内部を挿通することのない元竿1(第1元竿1a・第2元竿1b)においては釣糸支持突起が形成されておらず、内部に釣糸が挿通することが予定される元上竿2及びその穂先側に位置する各竿体の内周面にはそれぞれ釣糸支持突起(2a等)が形成される。
【0023】
こうして、釣糸支持突起を必用とする部分と設けることが不要な部分とを別個の竿体として構成することで、製造工程の簡易化及びコストの削減が可能である。さらに、第2元竿1bと元上竿2とは固定されており、魚を釣り上げる際にもっとも強度が要求される釣糸導入口8の穂先側付近の耐久性にさらに優れる。
【0024】
また、この中通し竿は、収納時においては、穂先竿5〜第1中竿3を順次竿元側の竿体内に収納してコンパクトな状態とすることも可能である。
さらに、第2元竿1bを延伸状態,収納状態の何れかの状態で第1元竿1aに振出嵌合させることで、リールシート6と釣糸導入口8との軸方向長さを調整可能であると共に、釣竿全体の長さも調整可能であり、状況に応じて釣竿の長さを変化させながら釣りを行うことも可能となる。
【0025】
[他の実施形態]
(a)連結する竿体の本数は上記実施形態に限定されるものではない。
(b)上記実施形態においては、元竿1を2つの竿体より構成して長さ調整可能としているが、一つの竿体からのみこれを構成してもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係る中通し竿は、必要な部分のみに釣糸支持突起を有し、不要な製造工程を排除できるので製造が容易であると共にそのコストも削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用する中通し竿の全体図。
【図2】図1の中通し竿の釣糸導入口付近の拡大図。
【図3】図1の中通し竿の第1元竿1aと第2元竿1bとの関係を示した参照図。
【符号の説明】
1a 第1元竿
1b 第2元竿
2 元上竿
2a 釣糸支持突起
3 第1中竿
8 釣糸導入口
9 糸導入導入ガイド
100 セラミックスリング
Claims (3)
- 内部に釣糸が挿通可能な中通し竿であって、
穂先側端部の外周面に釣糸導入口を有すると共に内周面が実質的に平滑に形成され、前記釣糸導入口から前記釣糸が導入される元竿と、
前記元竿の穂先側に挿入され固定される内周面に釣糸支持突起が形成され、前記釣糸が内部を挿通する元上竿と、
前記元上竿の穂先側に振出形式で連結される内周面に釣糸支持突起を有する複数の竿体からなり、前記釣糸が内部を挿通する竿体ユニットとを備え、
前記元上竿と前記元竿の連結部分には、前記連結部分の外周面に、前記連結部分を跨ぐようにプリプレグ層または樹脂層が設けられ、
前記元上竿と前記元竿とは一体化されている、中通し竿。 - 内部に釣糸が挿通可能な中通し竿であって、
周面にリールシートが設けられ内周面が実質的に平滑な第1元竿と、
前記第1元竿の穂先側に振出形式に連結され、穂先側端部の外周面に釣糸導入口を有すると共に内周面が実質的に平滑に形成され、前記釣糸導入口から前記釣糸が導入される第2元竿と、
前記第2元竿の穂先側に挿入され固定される内周面に釣糸支持突起が形成され、前記釣糸が内部を挿通する元上竿と、
前記元上竿の穂先側に振出形式で連結される内周面に釣糸支持突起を有する複数の竿体からなり、前記釣糸が内部を挿通する竿体ユニットとを備え、
前記第2元竿は、竿元側外周面及び釣糸導入口の竿元側の外周面が前記第1元竿の嵌合雌部に嵌合可能な嵌合雄部になっており、前記第1元竿内に収納された収納状態と前記第1元竿より穂先側に引き出された延伸状態との何れにおいても前記第1元竿に振出嵌合可能であり、
前記元上竿と前記第2元竿の連結部分には、前記連結部分の外周に、前記連結部分を跨ぐようにプリプレグ層または樹脂層が設けられ、
前記元上竿と前記第2元竿とが一体化されている、中通し竿。 - 前記元上竿の竿元側端部に配置された硬質リングをさらに備える、請求項1又は2に記載の中通し竿。
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